課題図書の読み方 及び 論文作成に関する講義 大谷大学 入学センター長 大秦 一浩 (文学科 准教授) 1 テキスト批評 テキスト批評は、テキストを批判的に検討する能力を養うと同時に、テ ーマが自由なレポートや論文を書くためのよい準備や練習となります。大 学受験などで文章を読んでから書かせる小論文も、かなり簡略化されてい ますが、テキスト批評の一種と言えます。 テキスト批評は、文学的な著作の注釈として始まりました。私たちは、 文学書を読んで面白いと思うことがありますが、「批評(コメンタリー)」 は、そこから一歩突っ込んで、「どこが、なにが、面白かったのか」、 「どうして面白いと思ったのか」、「これまでの本に比べてどこに特徴が あるのか」など分析的に解説して、その著作の魅力や豊かさを最大限に引 き出そうとする努力のことでした。 こうして文学注釈に始まったテキスト批評は、現在では、著者の主張を 批判的に検討する読解・解釈の仕方として、文学専攻にとどまらず、人文 ・社会科学のさまざまな分野で採用されています。そうしたテキストの批 判的読解を通して、自分なりのテーマと問題を提起して議論する仕方を学 ぶことになります。 (河野哲也『レポート・論文の書き方入門』第3版、慶應義塾大学出版会、2008年4月) 2 テキスト 辻信一『弱虫でいいんだよ』 筑摩書房、平成27(2015)年12月10日 「弱虫」? 「いい」? (↔ 弱虫がいい??) 3 辻信一(つじ・しんいち、文化人類学者) 「文化人類学」(ぶんかじんるいがく、cultural anthropology) 諸民族の文化・社会を比較研究する学問。 アメリカでは,人類学は人間についての総合 的研究であるとして,自然人類学,考古学, 文化人類学,ときには言語学も含めた3ないし 4部門から成るが,文化人類学の占める割合 が大きいことから,人類学としばしば同義に用 いられる。(ブリタニカ国際大百科事典) 4 『弱虫でいいんだよ』 (目次) はじめに 第1章 「弱さ」とは何か? 第2章 動物たちに学ぶ 第3章 野生との和解に向けて 第4章 「弱さ」が輝き始めるとき 第5章 弱虫でいいんだよ おわりに 5 『弱虫でいいんだよ』読解 はじめに 「弱い」・「強い」 問題1:難しい言葉ではない。 問題2:価値判断 “ファリブル(fallible)” 6 『弱虫でいいんだよ』読解 第1章 「弱さ」とは何か? 生物と「弱さ」 ナマケモノ 自然界の強さ・弱さ 7 『弱虫でいいんだよ』読解 第2章 動物たちに学ぶ ナマケモノ → 平和 シャーマンの考え クリー族(狩猟社会) 8 『弱虫でいいんだよ』読解 第3章 野生との和解に向けて 文明と野生(宮沢賢治の童話) 二元論を超えて 自然界と人間界 9 『弱虫でいいんだよ』読解 第4章 「弱さ」が輝き始めるとき 暴力(ニワトリのとも食い) 強い人間vs弱い自然 民主主義 生物と優劣 サルとゴリラ 10 『弱虫でいいんだよ』読解 第5章 弱虫でいいんだよ 弱さと進化・人間 競争を超えて 「フェア」 おわりに 「その弱き者の名は、“人間”」 11 課題図書についてのレポート(小論文) ・テキスト批評 1.本文の読解(著者の主張への理解) → 内容の構成・論点の把握 → 要点・要約文(序論-本論-結論) 2.本文の批評(著者の主張への意見) → 自らの立場・論点の明示 → 具体的な論述(根拠・理由) 12 ご静聴ありがとうございました 13
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