「海の美しい無脊椎動物」 スーザン・ミドルトン/著 グラフィック社 [481.7 ミド] 地球上にどれくらいの種類の生き物がいるか知っていますか? 陸上で発見できる陸上動物、植物、菌類、原生生物、バクテリアなどの種の数は約 125 万種発見されています。しかし、海産生物は約 25 万種しか発見、命名されていません。な ぜなら、地球の表面積の 3 分の 2 は海なのですが、海中の生物の本格的な調査は始まった ばかりで海面下の約 5%しか人目に触れていないからです。 海洋生物の専門家によれば、海産生物の種類は微生物を含まない数として 100 万以上、 1000 万になるかもしれないと予測されています。 そして、水は空気よりも体を支える力が物理的に強く、わずかな酸素しか得られません。 海産生物(特に海産無脊椎動物)は驚くべき方法でこれらの条件に適応し、水圧に耐える 骨格、呼吸用の複雑なエラ、効率的な移動方法を編み出したのです。他にも、移動の方法 として、繊毛、触手、ジェット推進、浮遊、吸着も滑走もできる筋肉質の足、様々な遊泳 機器などがあります。このように、海中で私たちの想像もつかないような、様々な体のつ くりを可能にしているのです。 この本は、著者であるスーザン・ミドルトンが、2006 年から 2013 年の 7 年間 ハワイ 諸島のフレンチ・フリゲート環礁、太平洋中部のライン諸島、ワシントン州のサンファン 島の 3 か所で行われた海洋調査に同行し、船上に設置したスタジオで撮影した生物を集め たものです。 どんな動きをするのか専門家の意見を聞き、観察しながら長い時間をかけて撮影が行わ れました。例えば、P74-75 に登場するイソギンチャクは、前進してヒマワリのようなポー ズになるまでを撮影するのに 3 時間以上かかっています。しかし、観察をすることによっ て様々なことを知ることができたそうです。特に、P176 に登場するヒラムシは当初、被写 体としてあまり期待していなかったのですが、水槽に入れしばらく待つとアクロバットな 動きを始め、躍動的な写真が撮影できたそうです。 この本に登場する生物のほとんどは浅い沿岸部に住んでいる生物ですが、まだ名前もな い生物がいくつか初お目見えしています。また、掲載生物の写真と解説があり、写真集と してではなく図鑑としても楽しむことができます。解説を読み、写真を見るとより違った 楽しみ方のできる 1 冊です。 那珂川町図書館(ナマケモノ)
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