皆さんはパソコンを自作したことがあるだろうか。ほんの少し前まで パソコンを自作することは一部のマニアだけの楽しみであった。しかし、 一般のパソコン雑誌でもパソコンの自作を取り上げるようになり、初心 者をターゲットとした自作用パーツショップも増えたことで、自作パソ コンは急速に身近な存在になりつつある。 とはいえ、何の予備知識もなしに誰でも作れるというものではない。 組み立てるという作業自体はプラモデルより簡単かもしれないが、適切 なパーツを選ぶという難点がある。ここではパーツの一つである『CPU』 について紹介したい。 自作パソコンの構成を考える際、多くの場合は 「CPU に何を使うか」からスタートすることにな るだろう。CPU とは Central Processing Unit の略、 つまりコンピュータの中央処理装置である。メモ リからプログラムやデータを読み込み、それを解 釈し、自身のプログラムに従って結果を出力する のが CPU の役割だ。この CPU が決まれば、マザ ーボードに何を使えば良いのかが自動的に決まっ てくる。マザーボードとはキーボードやマウスの ような標準入力デバイスなど、コンピュータ・シ ステムの中核となる機能を1枚のボードに実装し マザーボード たものだ。このCPU選びでは大きく分けて以下の 二つの問題がある。 かつてのCPU市場と言えばインテルの独占状態 に劣っているとされていたが、Athlon はインテル にあり、他のメーカーの CPU は互換 CPU と呼ば のPentiumIIIよりも高い性能を持っていたのだ。ま れていた。インテルのCPUを使うのが王道で、互 た、最初は不安定な面もあったが、時間の経過に 換 CPU を選ぶのはよほどのマニアか、予算に厳し つれて安定度も向上してきている。 い制限があるときに限られた。しかし、AMD が では、インテルと AMD ではどのような性能の 1999 年にAthlon を発表してから状況が変わり始め 違いがあるのだろうか。インテルには Pentium や た。互換CPUは性能、安定度共にインテルのCPU Celeron、AMD には Athlon や Duron がある。共に 1 vol.48 後者は前者の廉価版であり、性能は劣るが低コス 生や音楽ファイル再生、AMD はビジネスソフト トで購入できるため人気がある。どちらの方が性 やゲームをするのに適している。この二種類の 能が良いと一概に言えないが、インテルは動画再 CPU は用途に応じて選択する必要がある。 高性能のパソコンを作るためには高性能のCPU さらに、最新のCPU はかなり高めの価格設定と を使う、というのは自然な考えだろう。しかし、 なっている。ところが、CPU の価格の下がり方は CPU の性能が高ければすべてにおいて処理速度が 激しく、1年ほど経過すれば同じCPU が半額以下 速くなるわけではない。このCPUの性能の基準と で買える場合が多い。例えば、1998 年7月の時点 してクロック数というものがある。みなさんは では PentiumII 400MHz が最上位の CPU で、10 ∼ 『Pentium 4 1.9GHz』というような表記を見たこ 11万円で販売されていた。それが1年後にはなん とがあるだろうか。この 1.9GHz がクロック数と と、2万円前後で買えるようになったのである。 呼ばれている。一般的にはこの数値が高いほど処 将来性を第一に考え、最新CPU を選ぶというの 理速度が速くなる。しかし、パソコンの性能はク は賢い選択とは言い難い。今はある程度のCPU を ロック数だけによらずに、CPUやメモリといった 買っておき、その性能に不満を感じ始めたら、そ パーツと、OS やアプリケーションソフトの組み の時点である程度のCPU に交換する。このような 合わせで決まる。個々のパーツの性能が高ければ ことができるのも自作パソコンならではだ。 パソコンの処理性能も高くなるはずだが、アプリ 現時点ではインテルの Pentium 4か AMD の ケーションによっては体感できない場合もある。 Athlon XP のどちらかを選ぶことが主流だろう。 例えば、写真加工ソフトの Photoshop で画像の変 コストパフォーマンスを考慮すると全体的に 換テストを行うと、クロック数による処理速度差 Pentium 4より AthlonXP の方が良い。ただ、発熱 はほとんど見られないのだ。この点においても自 などの関係から Pentium 4の方が安定性が高い。 分の用途を考えて CPUを選ぶのが望ましい。 現在、最もクロックが高い CPU の値段は Pentium 値段の面では一般的に2∼3万円のCPUを選ぶ 4 3.06G、Athlon XP 3000+共に約7万円でほぼ同 ことが良いとされている。それはこの価格帯が最 じである。また、予算を抑えたいならば、インテ も性能と価格のバランスがとれていると言われて ルの Celeron か AMD の Duron という選択になる。 いるためである。 Celeron 2Gならば1万円を切るほど安い。 このように CPU といってもいろいろな種類があ る。また、今日の IT 社会においては CPU は日々 進化し続けている。それぞれの特徴を生かし、用 途、財布の中身を確認してから自分に合った世界 でたった一台のパソコンを作ってみてはどうだろ うか。新たな発見があるかもしれない。 (藤岡 宏昌) マザーボードに CPU をはめ込む Apr.2003 2
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