果房の遮光および紫外線カットがブドウの成熟期遅延に及ぼす影響 浜名

果房の遮光および紫外線カットがブドウの成熟期遅延に及ぼす影響
○浜名洋司 1,西川祐司 1,山根崇嘉 1,2
(1 広島県立総合技術研究所農業技術センター,
2
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)
Effects of Shading and UV Blocking of Clusters on Grape Maturation Delay
○
1
Yoji HAMANA1, Yuji NISHIKAWA1, and Takayoshi YAMANE1,2
Agricultural Technology Res. Cent., Hiroshima Prefectural Technology Res. Inst.,
2
National Institute of Fruit Tree Science
The effects of shading and ultraviolet (UV) blocking of clusters on the delay of grape maturation
were investigated. Shading treatment was conducted by covering clusters with shading bags. UV blocking
was accomplished by spreading plastic sheets immediately above the clusters. The clusters under the plastic
sheets were covered with conventional light-transmitting bags for protection. Grape clusters subjected to the
shading treatment were less susceptible to ripe rot disease and berry skins had less anthocyanin content than
grape clusters subjected to the UV blocking treatment. The effects of shading of clusters on the delay of
grape maturation were clarified. Further research of the shading treatment is necessary to decrease
susceptibility to ripe rot disease without reducing anthocyanin content.
【目的】遅出しのブドウ産地においては、成熟期遅延による端境期での高単価販売が可能である。
これまで、施設の被覆資材に紫外線カット資材を利用することで、ブドウの成熟期を 3~4 週間遅延
できることが報告されているが、適応品種が限られている。ここでは、遮光袋と紫外線カット笠を
利用した果房の遮光または紫外線カット処理が成熟期遅延に及ぼす効果について明らかにし、低コ
ストに実施できる成熟期遅延技術を解明する。
【方法】4 年生ブドウ‘ピオーネ’および 16 年生ブドウ‘安芸クイーン’各 4 樹を用いた。試験区は、
普通袋区、遮光袋区、および UV カット笠区(普通袋の上に紫外線カット笠を設置)の 3 区とした。
UV カット笠資材は、ダイヤスターUV カット(紫外線 400nm 以下の光線をカット)を加工して使
用した。遮光および UV カット処理は、2008 年 6 月 25 日から収穫時まで実施した。調査は、袋内
温湿度の推移、果実品質について行い、一般的な収穫盛期(‘安芸クイーン’8 月 27 日、‘ピオーネ’9
月 3 日)以降約 50 日経過するまでの間に、2~3 週間間隔で果実品質を調査した。
【結果と考察】‘ピオーネ’では収穫盛期の酒石酸含量は、遮光袋区で他の処理区よりも有意に高かっ
たが、その 2 週間後から他の処理区と同程度に減少し 10 月 15 日では差が無くなった(第 1 表)。糖
度は、いずれの品種においても遮光袋区で低い傾向が見られた。
‘安芸クイーン’では 9 月 24 日以降に遮光袋区以外で急激な晩腐病の発生がみられたが(データ略)、
遮光袋区では、10 月 22 日時点で他区よりも晩腐病の発生が少なく(第 1 表)、その後、発生が増加
した(データ略)。‘ピオーネ’では 9 月 3 日以降に遮光袋区以外で晩腐病が急増したが、10 月 15 日
時点の晩腐病発生果粒数は遮光袋区で有意に低かった。このとき、UV カット笠区においては、晩
腐病の発生および果肉硬度が普通袋と同程度であったことから、遮光資材の形状および吸収波長帯
が晩腐病の発生に及ぼす影響をさらに検討する必要がある。
両品種とも、果皮のアントシアニン含量は遮光袋区と比較して普通袋区で高かった(第 1 表)。ま
た、‘安芸クイーン’において、UV カット笠区のアントシアニン含量は普通袋区と比較して差は見ら
れなかったが,遮光袋区と比較しても差は見られず,UV カットによる影響が考えられた。一方,‘ピ
オーネ’において、UV カット笠区で普通袋区と同等に高いアントシアニン含量を示しているのは、
地表面に反射マルチを敷設している影響が出ていると考えられる。硬度は、いずれの品種において
も遮光袋区で高く、熟期が遅延されていることとの関連性が考えられる。
以上のことから、遮光袋を利用することで、普通袋と比較し、収穫期を過ぎても晩腐病発生が低
く抑えられ、果肉硬度が高いことから、果房を健全に維持できる成熟期遅延効果があることが明ら
かとなった。しかし、今回の遮光処理方法では、普通袋と比較して着色が劣るため、遮光処理方法
の検討が必要である。
なお、本課題は農林水産省委託プロジェクト「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和
および適応技術の開発」(平成 20~22 年)において実施した研究成果である。
Table 1.Effects of shading and UV blocking of clusters on fruit characteristics in‘Pione'and‘Aki Queen'grapes.
Cultivar
Date
9/3
‘Pione’
Cluster
wt.
(g)
450
Control
410
Shading bag
496
UV blocking
Treatment
Berry
wt.
(g)
17.8
14.7
17.2
Number of
ripe rot
berries
0.1
0.0
0.1
Anthocyanin
content
(10-6g・cm-2)
z
76.5 b
31.7 a
64.9 b
Total soluble
solids
(°Brix)
20.0 b
18.6 a
20.1 b
Titratable
acidity
(g100ml-1)
0.54 a
0.61 b
0.54 a
Hardness
of flesh
(kg)
0.30 a
0.43 c
0.34 b
10.5 ab
2.4 a
17.5 b
89.3 b
29.9 a
74.1 b
19.8
18.4
20.1
0.37
0.39
0.36
0.36 a
0.45 b
0.36 a
7.4 b
2.8 a
4.6 ab
21.7
20.3
20.9
0.50
0.49
0.50
0.34 a
0.40 b
0.32 a
7.6 b
3.6 a
5.0 ab
21.1 b
19.0 a
20.9 b
0.33
0.36
0.33
0.36 a
0.43 c
0.40 b
10/15
Control
Shading bag
UV blocking
406
382
363
16.8
14.1
16.4
8/27
Control
Shading bag
UV blocking
367
331
394
13.2
12.8
13.2
‘Aki Queen’
0.6
0.0
0.0
232
13.7
16.8 b
Control
371
13.4
3.1 a
Shading bag
264
14.6
21.3 b
UV blocking
z)Means separated by the Tukey-Kramer test(p≦0.05,n=3~4).
10/22