2012年10月号 Vol. 京 都 大 学 i P S 細 胞 研 究 所 CiRA Newsletter 11 サイラ 研究成果① 2 研究成果② 4 研究成果③ 6 難病 ALS に対する治療薬シーズを発見 病態解析のツールとしての iPS 細胞 iPS 細胞から肝細胞への分化しやすさ 山中伸弥所長がノーベル生理学・医学賞を受賞! 7 ご支援いただいた皆様への感謝の言葉 8 2012 年ノーベル生理学・医学賞の受賞理由 10 Introduction 11 Landscape 12 CiRA で働く人々 13 CiRA アップデート 14 iPS 細胞研究基金 15 新任教員のご紹介 日本と米国で新たに特許が成立しました! 共通機器を管理する専門家 京都大学基金ホームページリニューアル ル賞受賞決定記念号 ノーベ Editorial info 発行・編集 京都大学 iPS 細胞研究所 (CiRA)国際広報室 〒 606-8507 京都市左京区聖護院川原町 53 Tel: (075)366-7005 Fax: (075)366-7023 Email : [email protected] Web: www.cira.kyoto-u.ac.jp iPS 細胞を使って 難病 ALS に対する 治療薬シーズ (種) を発見 臨床応用研究部門の井上治久准教授と江川斉宏研究員らのグ ループによる研究論文が米国科学誌「Science Translational Medicine 」に発表されました(注 1)。ALS(筋萎縮性側索硬 化症)という運動ニューロン (運動神経細胞)が変性することで 次第に全身が動かなくなる難病に対する治療薬シーズ(種)を発 見しました。井上准教授に研究成果についてお話を伺いました。 制作協力 CiRA 事務部 知財契約管理室 川上雅弘 大阪教育大学科学教育センター 撮影 CiRA 国際広報室 印刷 株式会社北斗プリント社 CiRA ニュースレターは内閣府 「最先端研究開発支援プログラム (FIRST)」の支援を受けています。 本誌の記事・写真・イラストの 転載を禁じます。 再生紙 100%使用 Printed in Japan ALS はいつ頃から研究されて いるのですか? ていただき、iPS 細胞を作製しまし ALS は 1869 年にフランスの病理 た。iPS 細胞から神経細胞を誘導す 学者ジャン・マルタン・シャルコー ると 5 〜 20% は運動神経細胞にな が脊髄が硬くなる原因不明の病気と ります。iPS 細胞から神経細胞をつ して見つけました。その後、米国で くった場合に、高齢になってから発 ルー・ゲーリッグという野球選手が 症する ALS の病態を再現できるの 30 代後半にこの病気にかかり引退 かわかりませんでした。ところが、 を余儀なくされ、2 年後になくなり 実際には細胞の中心部だけではな ました。 現在米国で ALS はルー・ゲー く細 胞 質 の 部 分 にも TDP-43 が た リック病と呼ばれています。1993 年 まっていました。その細胞で異常を に SOD1 という遺伝子が ALS を起 もっと調べてみると本来長く伸びる こしうることが判明しました。1994 はずの突起が伸びていませんでし 年には変異した SOD1 を導入した た。どの遺伝子がどのくらい働いて モデルマウスができました。このモ いるのか、病気ではない人と引き デルマウスに有効な薬剤は見つかり 算をして調べたところ、RNA を作る ましたが、その中で患者さんに投与 遺伝子の量が増えていました。そこ され有効性が確認されたものはあり で RNA の量を調節するものを候補 ません。 として投与してみたところ、アナカ 今回はどのような研究を行っ たのですか? 突起が長くなることを発見しました。 の部分にたまっていることが知られ ています。私達は遺伝性の TDP-43 確かにアナカルジン酸はカシュー 9 割を占めていますが、その殆どで TDP-43 というタンパク質が細胞質 京都大学iPS細胞研究所 発行 ルジン酸という物質で、神経細胞の アナカ ル ジン 酸 は カ シュー ナッツの殻に含まれているそ うですが、食べると治療効果 はありますか? ALS は遺伝性ではない孤発性が 2 異常の患者さんから細胞を採取させ New research 研究成果① 井上准教授(右)と江川研究員(左) ナッツの殻に含まれていますが、カ ります。このように様々な関門があ シューナッツの殻は可食部ではあり るので、シーズができてから実際の ません。カシューナッツの殻を食べ 薬になるのはごくわずかと言われて ても安全かどうか現段階ではわかり います。そこで動物実験などにより ません。アナカルジン酸自体もまだ 関門を通過するかどうか確認すると 安全性や効果の確認など様々な研 ともに、他の候補物質を探しなが 究を行う必要があります。 ら、 TDP-43 の変異以外の原因も探っ 今後はどのように研究を展開 されるのでしょうか? ていく、2つの方向性で研究を進め る必要があると考えています。 のまま人に使用することはできませ 今 回 の 研 究 成 果を発 展させ て、いつ頃までに ALS の薬が できるのですか? ん。まず薬が通るべき様々な関門が 現段階では実際に患者さんに治 体の中にはあり、それをくぐり抜け 療薬を使っていただけるようになる て血液脳関門などをくぐって脳に到 までどのくらい時間がかかるかわか 達する必要があります。それまでに りません。しかし、一刻も早くお届 他の体の部位に害を及ぼさないか け出来るように、最善の方法を選ん 確認することも必要です。どのくら で研究を進めて参ります。 今回見つかったアナカルジン酸 はシーズ(種)ではありますが、そ いが適量なのかも調べる必要があ 運動ニューロンの突起長の比較 (図中のバーは 10μm を示す) 提供:井上治久准教授 コントロール運動ニューロン ALS 運動ニューロン 2012年10月号 3 病態解析ツールとして iPS 細胞を使う 臨床応用研究部門の、中畑龍俊教授(副所長)、齋藤潤准教 授の研究グループの田中孝之研究員らのグループによる、慢性 乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群の病態解析に関する論文が 米国科学雑誌『Blood 』に掲載されました(注 1)。齋藤准教授 に研究成果について聞きました。 CINCA 症 候 群とは、 耳 慣 れ ない病気ですが、どういう特 徴があるのでしょうか? CINCA 症候群は、生後すぐに発 の細胞が何らかの原因で悪影響を 患発症には、NLRP3 遺伝子の変異 及ぼしているのかがはっきりしてい した細胞のみが、深く関わっている ませんでした。 ということです。さらに、これまで の報告から IL-1β 産生を阻害する 今回の研究はどのようなもの ですか? ことが予想される化合物を添加した 器 がダメ ー ジを受 ける 難 病です。 私たちは、慢性乳児神経皮膚関 細胞での IL-1β の産生が抑制され CINCA 症候群の患者さんの中には、 節(CINCA)症候群体細胞モザイク 受精卵から個体へ発生する過程で、 患者さんの皮膚の細胞から iPS 細 NLRP3 遺伝子に変異が生じた結果、 胞を作製し、遺伝子変異のある細 病気を発症される方がおり、その方 胞株と変異のない細胞株とに分け これまで、CINCA 症候群体細胞 の体の中では正常な遺伝子型の細 ることに成 功しました。これらの モザイクの患者さんから、NLRP3 変 胞集団と、変異した遺伝子型の細 iPS 細胞を免疫細胞の一種、マクロ 異をもつマクロファージと変異のな 胞集団が、まだらに混ざった体細 ファージに分化させ、細胞の形や貪 いマクロファージを分けて入手する 胞モザイクの状態にあります。全て 食能力を解析したところ、差がみら 術がなかったため、それぞれの機 の細胞に変異がある方も、体細胞 れませんでした。ところが、CINCA 能を解析して比較することはできま モザイクの方も、同程度の症状が出 症候群の疾患の鍵となる特徴であ せんでした。今回の研究では、単 る た め、 こ れ ま で は、 本 当 に る IL-1β というタンパク質の産生を 一の細胞が増殖して細胞株が樹立 NLRP3 変異細胞のみが疾患を引き 比較したところ、遺伝子変異をもつ される iPS 細胞の性質を生かして、 起こす役割を果たしているのか、そ マクロファージのみで、IL-1β の産 患者さんの皮膚の細胞から作製し れとも、変異の有無に関わらず全て 生が異常に多くなっていました。疾 た iPS 細胞の中から、遺伝子変異 症する慢性自己免疫疾患の 1 つで、 繰り返し生じる炎症により、脳や臓 4 京都大学iPS細胞研究所 発行 ところ、NLRP3 遺 伝 子 変 異をもつ ました。 この研究の特徴は何ですか? 研究成果② New research Glossary 注1 Induced pluripotent stem cells from CINCA syndrome patients as a model for dissecting somatic 中畑教授 齋藤准教授 田中研究員 mosaicism and drug discovery (Takayuki Tanaka, Kazutoshi Takahashi, Mayu Yamane, Shota Tomida, Saori Nakamura, Koichi Oshima, Akira Niwa, をもつ株、もたない株に分離するこ も応用できます。また、今回樹立さ Ryuta Nishikomori, Naotomo Kambe, とができました。このように、iPS 細 れた iPS 細胞は、CINCA 症候群を Hideki Hara, Masao Mitsuyama, 胞を作製することにより、遺伝子変 含むさまざまな NLRP3 遺伝子関連 Nobuhiro Morone, John E. Heuser, 異のある細胞とない細胞を分ける 疾患への治療薬開発のツールとし Takuya Yamamoto, Akira Watanabe, 方法は他の体細胞モザイク疾患に て役立つことを期待しています。 Aiko Sato-Otsubo, Seishi Ogawa, Isao Asaka, Toshio Heike, Shinya Yamanaka, Tatsutoshi Nakahata, and Megumu K. Saito) NLRP3 遺伝子の変異をもつ CINCA 症候群の患者さんから作 製した iPS 細胞由来マクロファージ(提供:田中孝之研究員) 2012年10月号 5 研究成果③ New research ヒト iPS 細胞から肝細胞への 分化のしやすさはドナーによって決まる 当研究所の青井貴之教授らのグループが、ヒト iPS 細胞から 肝細胞への分化のしやすさに関して、iPS 細胞を作製する元とな るドナーの影響を大きく受けるとする研究成果を米国科学アカデ ミー紀要に発表しました。 青井教授 ヒト iPS 細胞から作製した肝細胞 iPS 細胞と一口に言っても、実は やすいかどうかは、由来となる細胞 は、細胞移植治療や医薬品の毒性 それぞれ個性を持っていて、均一な の種類ではなく、ドナーの違いに起 評価などへの利用が期待されてい 細胞とは言えません。iPS 細胞は様々 因するところが大きいと分かりまし ますが、iPS 細胞から成熟した肝細 な種類の細胞から作製できるため、 た。この結果は、今後研究を進め 胞へと分化させる技術は確立されて 皮膚の細胞から作製した iPS 細胞も るにあたって、ヒト iPS 細胞の分化 いません。これまでに様々な方法で あれば血液の細胞から作製した iPS しやすさを比較する際には、ドナー 肝細胞へと分化させることが挑戦さ 細胞もあります。また、iPS 細胞を の違いを考慮することが重要である れてきました。しかし一方で、出発 樹立するために細胞を提供したド ことを強く示しています。 点である iPS 細胞の性質についてあ ナーも様々です。 まり注目されていませんでした。 今回の研究では肝細胞へ分化し 肝細胞様細胞に分化した iPS 細胞(左)、ES 細胞(右)の顕微鏡写真 6 京都大学iPS細胞研究所 発行 Nobel Prize special feature ノーベル賞受賞決定記念特集 山中伸弥所長が英国のジョン・ガードン卿と ノーベル生理学・医学賞を共同受賞! スウェーデンのカロリンスカ研究 され、未分化の幹細胞になることを 所は、日本時間の 10 月 8 日(月) 示しました。そしてこの幹細胞には、 夕方、ノーベル生理学・医学賞を 体の全ての細胞に分化する多能性 山中伸弥 iPS 細胞研究所長(米国 を持つことが確認され、iPS 細胞(人 グラッドストーン研 究 所 上 席 研 究 工多能性幹細胞)と名付けました。 者)に贈ると発表しました。共同受 翌 2007 年には、ヒト iPS 細胞の作 賞者は、ジョン・ガードン卿(英国 製を報告しています。iPS 細胞の作 ケンブリッジ大学ウェルカム・トラス 製は、一度分化した体の細胞に 4 ト / 英国癌研究基金ガードン研究所 つの因子を加えるだけで、未分化 教授)です。受賞理由は動物の分 の状態に戻すことができること(初 化細胞が、多能性幹細胞へと初期 期化)を明らかにした画期的な発 化できることを発見したためです。 見であり、治療法が未だ確立されて 山中所長は、2006 年に発表され いない難病の病気の原因の解明、 た論文で、分化したマウスの細胞 薬の毒性の検査、新しい治療法や に数種類の遺伝子を導入する手法 薬剤の開発に新たな道を開きまし を用いて、分化した細胞が初期化 た。 受賞決定の報せの後、京大にて会見に臨む山中所長(8 日) 2012年10月号 7 多くのご支援をいただきまして、 ありがとうございました。 ノーベル生理学・医学賞を受賞 することは、身に余る光栄に思って おります。これまで、研究を共に行っ ます。多くの先達に心より敬意を表 胞から作られた iPS 細胞を用いて、 します。 新しい薬剤や治療法を開発すること このような名誉ある賞の受賞は、 を、1 日も早く実現するために、仲 てきた多くの研究者仲間、お世話 私を含め同僚の研究者、その他世 間の研究者とともに一生懸命頑張り になった方々、私を支えてくれた家 界中で iPS 細胞を研究している科学 たいと思います。 族に心から感謝します。そして、iPS 者にとって、一層強力に研究に取り 細胞は、長年に渡る細胞核の初期 組むための大きな励みとなります。 化研究の成果の賜物だと思っており 今後も、難病の患者さんの体の細 京都大学 iPS 細胞研究所 山 中 伸 弥 受賞決定後の一日 受賞の報せの後に開かれたに京大での会見について (左:松本紘京大総長) 8 京都大学iPS細胞研究所 発行 深夜、山中所長を仮装で迎えた研究所のメンバーたち Nobel Prize special feature ノーベル賞受賞決定記念特集 取材を受ける山中研の講師たち(左から吉田善紀、沖田圭介、中川誠人) 一夜明けて、グラッドストーン研究所とテレビ会議で 受賞の喜びを分かち合う山中所長(左:妻の知佳さん) 職員からの花束贈呈 ご夫婦で会見に臨む山中所長 10 月 9 日には、山田啓二京都府知事から京都府 特別栄誉賞を授与された 2012年10月号 9 Nobel Prize special feature ノーベル賞受賞決定記念特集 体細胞の初期化の発見が 受賞理由に 今回のノーベル生理学・医学賞 が可能であることを示したのです。 は、不可逆的であると信じられてい また、これらの研究成果を元に、ヒ た動物の分化細胞が、未分化な細 トの細胞でも同様に初期化されるこ 胞に初期化されるということを実験 とが示され、ヒト iPS 細胞の樹立に 的に示した英国のジョン・ガードン も至りました。これらの研究からは、 卿と山中伸弥 iPS 細胞研究所長の 新たな医学研究に道が拓かれ、今 二人が共同受賞しました。 まで全く手が付けられていなかった ガードン卿は、1962 年に紫外線 病気の原因解明や新たな薬の開発、 照射によって核を不活化させた受精 そして新しい病気の治療など、幅広 卵に、オタマジャクシの腸から取り い応用が期待されています。 出した細胞の核を注入し、その受 精卵がカエルに成長したことを報告 しました。いわゆるクローンカエル を誕生させた成果です。当時、分化 細胞の DNA からは、不必要な遺伝 情報が抜け落ちているのではない かとの説もありましたが、この実験 によって、受精卵だけでなく、分化 細胞のDNAにも、カエルの全て の体の細胞に必要な遺伝情報を有 していることが示されました。 ガードン卿と山中所長の革新的 な研究成果は、発生や細胞の分化 といった生命現象に全く新しい知見 を加えることになりました。それま で一度分化した細胞が他の細胞へ と変化することはないと固く信じら れてきましたが、細胞の分化が可 逆的で、異なる細胞に変化すること 2010 年に CiRA を訪れたジョン・ガード ン卿(英国ケンブリッジ大学ウェルカム・ トラスト / 英国癌研究基金ガードン研究 所教授)と山中所長 10 京都大学iPS細胞研究所 発行 Introduction 新任教員からのメッセージ 新しく着任した教員を紹介します 9 月から 10 月にかけて2人の教員が iPS 細胞研究所に加わり ました。研究基盤の整備や、培養技術開発を通して、iPS 細胞 技術の医療応用を目指します。 再生医療・創薬への応用が期待される iPS 細胞。山中 所長がノーベル賞の受賞会見で「日本という国が受賞した 賞」と表現されたこの技術の成果が、日本発でイノベーショ ンを実現し一日も早く社会に還元されるよう研究推進戦略 を検討しています。特に、イノベーションの鍵となるのは、 研究推進に必要な体制・環境の構築、研究支援人材の育成、 知財の確保です。このため、関係府省庁・産業界等との連 携強化や規制の壁を乗り越える新制度の設計などに取り組 みます。 基盤技術研究部門 星野利彦(ほしの・としひこ)教授 / 所長補佐 CiRA には、iPS 細胞の樹立から分化細胞の誘導に至る すべての段階を GMP(Good Manufacturing Practice)基 準で処理することのできる国内最大級の細胞調製施設 FiT (Facility for iPS cell Therapy)が備わっています。私たちは FiT の運用と GMP 培養技術開発を通じて、CiRA 内外の様々 な iPS 細胞治療臨床研究プロジェクトの一翼を担います。 また研究室の主要テーマとして、iPS 細胞の特性を生か した免疫再生治療法の開発に取り組み、腫瘍や感染症、自 基盤技術研究部門 金子新(かねこ・しん)准教授 己免疫疾患、移植関連免疫疾患などに対する新しい治療 法の確立を目指します。 2012年10月号 11 Column ランドスケープ 日本と米国で新たに特許が成立しました! たび晴れて両方とも特許として成立 京都大学が保有する iPS 細 胞技術に関する特許が、日本 で1件、米国で3件、新たに 成立しました。 しました。 今まで一連の特許取得や iPierian 社と京大の特許譲渡交渉に関わっ てきた CiRA 知財契約管理室の高須 直 子 室 長 は、「(譲 渡 後)iPierian 日本で成立した特許は、山中伸 社からダンボール6箱の特許に関 弥教授の研究グループが開発した わる資料が届き、これまで維持管理 技 術 に 基 づ い て い ます。Oct, Klf, してきた。係争になりかけた2件の Sox, Myc のファミリー遺伝子(遺伝 特許が成立し、これでようやく特許 子群)を用いて iPS 細胞を作製する 問題が解決したという思いで感慨深 技術に関するもので、さらにこの い。 」と述べました。 iPS 細胞から分化させて作った細胞 今後も CiRA 知財チームが中心と を使って薬剤候補物質のスクリーニ なり、多くの特許を取得し、iPS ア ング等を行うことにも権利が及びま カデミアジャパン社を通じて非独占 す。今までに取得した特許より広範 的にライセンス許諾することで、企 囲の権利をカバーできます。 業が安心して研究開発に取り組める 米国で成立した特許3件のうち、 環境作りに貢献します。 1件は山中教授らの発明で、2件 は 2011 年 1月に米 国 バイオベン チャーの iPierian 社から京都大学に 譲渡された特許です。山中教授の 特 許と iPierian 社 特 許 1 件 は、 3 遺伝子を用いた iPS 細胞の樹立方 法に関する技術で、あまりにも類似 していたため、どちらに特許権を付 与するかを決める係争に入る可能 性がありました。iPierian 社から特 許譲渡を受け係争を回避し、この 12 京都大学iPS細胞研究所 発行 9 月 18 日に京大で行われた記者会見の様子 (左:山中伸弥所長、右:高須直子知財契約管理室長) CiRA Members CiRA で働く人々 機械の管理から iPS 細胞研究を支える CiRA にはフローサイトメーターという細胞を分ける装置や共 焦点蛍光顕微鏡という細胞を観察する装置など、様々な大型実 験機器が設置されています。これらの機器は CiRA 全体で共有し、 効率良く運用されています。今回は共通機器を管理する、光永 佳奈枝助教をご紹介します。 共通機器室で装置を扱う光永助教 熊本県で生まれ育った光永さん 都大学で働きたいと思っていたそう は、高校生の頃にはコケの生殖細 です。念願かなって着任した CiRA 胞を培養するなど、観察・実験をす では、共通機器管理室の教員として、 るのが大好きな少女だったそうで フローサイトメーターなど様々な機 す。大学卒業後は熊本大学の山村 器の管理を行なっています。 研一先生の下で実験補助の仕事を フローサイトメーターとは蛍光物 しました。ここでマウスの世話をし 質で光るようにした細胞を検出し、 たり、プラスミドをとったりと、分子 必要な細胞のみを回収することが 生物学の基礎を学びました。実験・ 出来る装置で、iPS 細胞研究に欠か 研究をすることに魅力を感じた光永 せません。CiRA には計 8 台のフロー さんは、大学院に入学、博士課程 サイトメーターが設置されています からは阿部訓也先生の下で生殖細 が、毎日予約で一杯です。光永さん 胞を中心とした研究を行いました。 は合間を縫ってメンテナンスをした その後、日本を縦断するように産 り、トラブルが生じたら簡単なもの 業技術総合研究所、自治医科大学、 であれば対応し、場合によっては業 東北大学と様々な研究機関で研究 者を呼んで修理してもらったり、機 を行いました。例えば自治医科大学 器の使い方や解析方法の指導をし では造血幹細胞の数を調節する仕 たり、忙しい日々を過ごしています。 組みについて、産業技術総合研究 今は機器の管理をするのが大変 所では 血 液 細 胞 の 糖 鎖 に関して、 な光永さんですが、ゆくゆくは「独 いずれも主に血液の細胞(単球や 自のテーマを持って、自分の手を動 赤血球)の研究を進めました。 かして実験・研究を進めたい」と語っ 光永さんは熊本大学にいた頃か ら、京都大学にはいろんなタイプの ていました。今後の光永さんの活 躍が期待されます。 面白い研究者がいそうだと思い、京 2012年10月号 13 CiRA アップデート 9/18 CiRA news update 8/4 7/17 京都大学が保有する iPS 細胞基 第 9 回 CiRA カフェ・FIRST を 開 青井貴之教授(基盤技術研究部 本技術に関する特許が、日本で1 催しました。オーボエとピアノの演 門)のグループは、ヒト iPS 細胞の 件、米国で3件、新たに成立しま 奏の後、「血糖値の見張り番 すい臓 肝細胞への分化特性を比較し、分 した。 β 細 胞をつくりた い!」と題して、 化のしやすさはドナーの違いに起因 豊田太郎先生(増殖分化機構研究 するところが大きいとする研究成果 部門)によるお話がありました。 を米国科学アカデミー紀要に発表し 9/3 このほど、初期化機構研究部門 の齊藤博英准教授が第 10 回日本 分子生物学会三菱化学奨励賞の受 賞者に選ばれました。 ました。(6 ページ) 8/1 7/7 井上治久准教授(臨床応用研究 部門)の研究グループは、ALS 患 第 8 回 CiRA カフェ・FIRST を 開 者さんから樹立した iPS 細胞を用い 催しました。バイオリンとピアノの て、ALS のこれまで知られてい な 演奏の後、「軟骨研究こつこつと」 かった病態を解明し、ALS に対する と題して、妻木範行教授(増殖分 (文部科学省科学技術・学術政策 新規治療薬シーズを発見しました。 化機構研究部門) が、約 20 年に 局付併任)が、基盤技術研究部門 この研究成果は米国科学誌に発表 わたる軟骨細胞を作成する研究に 教授兼所長補佐として着任しました。 されました。 ついて話しました。 7/23-25 7/4 9/1 星野利彦前内閣官房内閣参事官 (11 ページ) 9/1 CiRA は、名古屋市中小企業振興 中畑龍俊教授(京都大学 iPS 細 第 10 回 CiRA カフェ・FIRST を開 会館(吹上ホール)で開催された「未 胞研究所副所長)、齋藤潤准教授 催しました。音楽デュオ natura の 来を創造する 新産業フォーラム・ (臨床応用研究部門)の研究グルー 演奏の後、浅香勲准教授(基盤技 未来展 2012」にブース出展しまし プの田中孝之特定研究員は、慢性 術研究部門)が iPS 細胞の標準化 た。 乳児神経皮膚関節(CINCA)症候 について話しました。 7/18-20 群の患者さんから iPS 細胞を作製す ることにより、その病態を詳細に解 平成 24 年度第二回ヒト iPS 細胞 析し、遺伝子変異をもった細胞が 樹立・維持培養実技トレーニングを 疾患の発症に深く関わることを明ら 開催し、エピソーマルベクターを用 かにしたことが、専門雑誌 Blood いたヒト iPS 細胞樹立方法の研修を に掲載されました。(4 − 5 ページ) 行いました。 カフェの参加者に説明する浅香准教授 最 新 情 報 は ホ ー ム ペ ー ジ に! 14 京都大学iPS細胞研究所 発行 www.cira.kyoto-u.ac.jp From CiRA iPS 細胞研究基金 京都大学基金リニューアル このほど、京都大学基金のウェブサイトがリニューアルされましたのでお知 らせします。また、銀行でも利用できる振込用紙が作成されました。これらを 使って iPS 細胞研究基金にご寄附いただけます。新しく追加された機能は、 以下の通りです。 1. 継続寄附が出来るようになりました。京大基金のウェブサイトから、 クレジットカードを使って定期的に寄附金額が引き落とされる機能が 追加されています。毎月、年 1 回、年 2 回とお選びいただけます。 2. インターネットバンキング(ペイジー)がご利用いただけます。 3. ATM 決済(ペイジー)がご利用いただけます。 4. ゆうちょ銀行、郵便局、銀行共通の振込用紙がご利用いただけます。 インターネットからのご寄附のお申し込み方法等の詳細は、京都大学基金 のウェブサイトをご覧ください。 http://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/howto/ インターネットを利用されない場合は、できるだけ FAX(075-366-7023) Glossary 注)ペイジーとは? 金融機関やコンビニの窓口に並ぶこと なく、 パソコンや携帯電話からオンライ ンで各種振込ができるサービスです。詳 細は、下記のサイトをご覧下さい。 http://www.pay-easy.jp/index.html にて振込用紙を請求してください。ご希望枚数の振込用紙をお送りします。 一日も早い iPS 細胞技術の医療応用を目指し、病気や怪我に苦しんでおら れる方々の苦痛を少しでも取り除くことができるよう、研究者、研究支援スタッ フ一同、さらに精進してまいります。ご理解、ご支援を賜りますよう、どうぞよ ろしくお願い申し上げます。 問合せ先:京都大学 iPS 細胞研究基金 事務局 〒 606-8507 京都市左京区聖護院川原町 53 TEL:075-366-7152 FAX:075-366-7023 メール:[email protected] 京大基金ウェブページ 2012年10月号 15 CiRA国際シンポジウム 者 事 従 究 研 2013開催 象 対 日( 月 )∼ 12 日( 火 ) 開 催 日 : 平 成 25 年 3月 11 時計台記念館 会 場:京都大学百周年 国際交流ホール 時計台ホール・ 定 員 : 各 日 50 0名 ページ については、後日CiRAホーム プログラムや申し込み方法 します。 発表 -u.a c.jp /j/i nde x.h tml )上で (h ttp ://w ww .cir a.ky oto 文部科学省再生医療の実現 化 プ ロ ジ ェ ク ト /C iR A共 催 一般の方対象シンポジウム 日(日) 開 催 日 : 平 成 25 年 1月 27 ー 1F 芸 術 劇 場 会 場:神戸芸術センタ 定 員 : 約 1, 00 0名 ページ については、後日CiRAホーム プログラムや申し込み方法 します。 発表 上で ) tml x.h -u.a c.jp /j/i nde (h ttp ://w ww .cir a.ky oto げます。 皆様のご参加をお待ち申し上 京都大学iPS細胞研究所 発行 CiRA サイラ Newsletter October 2012 Vol. © Center for iPS Cell Research and Application, Kyoto University 2012 11
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