論文集全てを見る - 明治安田厚生事業団

第24回(平成19年度)
研究助成論文集
No.24 2009/3
財団
法人
明治安田厚生事業団
ご 挨 拶
財団創立 周年を記念して発足したこの研究助成制度は、単に寿命の延長だ
けを追求するのではなく、「広く健康の維持増進に活用できる」科学的な研究課
題に対し、若手研究者の育成をめざして、広く助成を行っています。
毎年多数の研究者からご応募をいただき、最近では、毎回 件ちかくの件数
となり、研究内容も年を追って高レベルになってまいりました。
こ の 結果、制度創設以来、第 回 ま で の 助成件数 は、 件、助成総額 は
億 万円に達しております。
このたび、第 回(平成 年度)の助成対象として選ばれた研究の成果論文
を、研究助成論文集にまとめ、ここに発刊の運びとなりました。
ご高覧ご高評賜れば幸甚に存じます。
本誌発刊にあたり、選考委員長 黒田善雄先生はじめ選考委員の諸先生のご尽
力はもちろん、ご後援いただいた日本体力医学会ならびに明治安田生命保険相互
会社、公募に際しご協力いただいたご関係各位に心からお礼申しあげるととも
に、今後も一層のご指導、ご支援をお願い申しあげる次第でございます。
平成 年 月
財団法人 明治安田厚生事業団
理事長 葉 狩 浩 一
選 考 委 員
委員長 東京大学名誉教授
黒
田
善
雄
委 員 東京慈恵会医科大学名誉教授
酒 井 敏 夫
委 員 鹿屋体育大学学長
芝 山 秀太郎
委 員 財団法人 明治安田厚生事業団
体力医学研究所所長
永 松 俊 哉
委 員 ヘルスプロモーション・
フロンティア理事長
福 渡 靖
(敬称略・五十音順)
*職務は選考当時
目 次
〔優秀賞〕
高齢者の Á 日歩数と身体機能および健康関連 ÂÃÄ に関
する横断研究―適正歩数の設定の試み―
冨 岡 公 子 他 ……………………Á
〔優秀賞〕
低温および風雨による寒冷曝露時の熱放散反応に関する
研究
山 根 基 他……………………ÁÅ
高齢者における指の運動機能トレーナビリティの評価
青 木 朋 子 他……………………ÅÁ
内臓脂肪症候群の形成に関与する社会的性差(飲酒習慣)
と生物学的性差の重要度の比較検討
秋 本 紗恵子 他……………………ÆÁ
減量を目的とした有酸素性運動の実践および食事制限が
肥満者の血液流動特性に及ぼす影響
片 山 靖 富 他……………………ÆÇ
老人ホーム向きの転倒骨折予防運動プログラム開発の研
究― Á 年間のコホート内のケースコントロール研究―
牛 凱 軍…………………………ÈÉ
日常生活における身体活動レベルの違いが中高齢女性の
免疫機能に及ぼす影響
清 水 和 弘 他……………………ÊÆ
高齢者における筋発揮張力維持法(ÄËÌ)の筋力増強、
筋肥大効果および安全性の検証
谷 本 道 哉 他……………………ÇÁ
運動療法のための体幹部骨格筋の評価―高速スキャン磁
気共鳴画像法(ÍÎÏ)を利用した筋の活動性の画像化―
俵 紀 行 他……………………Á
交代制勤務者の身体活動と心身の健康に関する研究
東 郷 史 治…………………………É
ヨーガがメンタルヘルスおよびストレス感受性に及ぼす
影響
平 本 哲 哉 他 …………………ÁÅ
高齢者における健康な骨の維持のための身体能力・身体
活動を探る
藤 田 裕 規 他 …………………ÁÁÁ
加齢に伴う活性酸素増加が骨代謝に及ぼす影響
宮 崎 剛 他 …………………ÁÁ
筋の厚さ(量)と硬さ(質)から筋力を推定する方法の開
発
村 木 里 志 他 …………………ÁÅÊ
日内変動における心臓自律神経系活動と反射機能との関
係
山 口 英 峰 他 …………………ÁÆÈ
第 ED 回健康医科学研究助成論文集
平成 ÁU 年度 VV@Á∼ÁÁ(EJJU@G)
〔優 秀 賞〕
高齢者の Á 日歩数と身体機能および健康関連 ÂÃÄ に
関する横断研究 ―適正歩数の設定の試み―
冨 岡 公 子* 羽 崎 完**
岩 本 淳 子*
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大阪電気通信大学 Ã5##!W87<-9 AC *%<#- %!/%>795-?$!Ã5##$!)#;#%@
* ** (E)
ていない。また、EJJF 年にアメリカスポーツ医
緒 言
学会とアメリカ心臓学会が発表した高齢者を対象
身体活動量の減少は、死亡、慢性疾患、機能上
とした身体活動量ガイドライン ÁD)では、中等度
の制限および障害の危険因子として注目されてい
の有酸素運動を週に I 回、Á 回当たり GJ 分間、
。「&7#8-4?!X7 ;87」
(アメリカ)
、
「"47!&7#8-4!
あるいは高強度の有酸素運動を週 G 回、Á 回に EJ
=!-47!O#- %」(イ ギ リ ス)
、
「健 康 日 本 EÁ」
(日
分間実施するよう示されているが、具体的な Á 日
る
Á$ÁK)
本)のように各国の健康施策のなかでも運動習
の歩数は示されていない。
慣、体力づくりの重要性が指摘されている。高齢
そこで、高齢者の身体機能や ÂÃÄ の維持に有
者においては、運動は健康や身体的自立の保持・
効な Á 日歩数を示すことができれば、高齢者の健
ÁD)
向上に有用とされ 、歩行など日常生活における
康増進の指針として役立つと考えられる。
身体活動量の増加が、健康に大きな効果をもたら
本研究では、客観的かつ定量的な指標であり、
すとされている 。Ä#%(!7-!#8@ は、高齢者を対象
その妥当性が検証された加速度計 F)に基づく Á 日
にした前向きコホート調査において、Á 日 Á 時間
の歩数を調査し、これと脚力を中心とした身体機
以上の歩行習慣のある者はない者に比べて有意に
能および健康関連 ÂÃÄ との関連性を横断研究で
死亡リスクが減少していたと報告している U)。
検討し、高齢者の身体機能や ÂÃÄ の維持に有効
一方、高齢者にとって、寿命の長さだけでな
な適正歩数の設定を試みた。
ÁJ)
く、生涯にわたって生活の質(B*#8-?! =!8=7,以
研 究 方 法
下 ÂÃÄ)が保たれ、自立した生活が送れること
が重要であるとされている ÁF)。これまでの研究で
も、習慣的な身体活動が、慢性疾患の予防効果だ
A.対象
奈良県内に在住する独歩可能な KI 歳以上の高
けでなく、健康関連 ÂÃÄ とも関連していると報
齢者 を 対象 と し た ÂÃÄ と 生活機能 に 関 す る コ
告されている E$H$ÁF)。しかし、多くの研究における
ホート研究(藤原京スタディ)のベースライン健
身体活動の調査方法は、質問紙法である。高齢者
診 を 受診 し た GIEG 名(男性 ÁFFG 名,女性 ÁFIJ
は成人に比べて記憶力が衰えており、質問票によ
名)を FI 歳で E 層に分けたうえで、無作為に抽
る方法では正確性に欠けるとの指摘もある 。高
出した EIH 名に歩数調査の依頼をした。ただし、
齢者の ÂÃÄ や身体機能と身体活動との関連を検
歩数調査は歩数計の装着方法や記録の仕方など、
ÁH)
証するうえでは、客観的かつ定量的な指標であ
Á 人 ÁJ 分ほどの説明が必要であったため、高度
り、そ の 妥当性 が 検証 さ れ た 加速度計 や 歩数
難聴者については歩数調査の対象外とした。歩数
計 F$EJ)による調査が必要と考えられる。
調査の依頼をした者のうち、EDK 名から協力が得
高齢者の運動・スポーツの実施には、安全面で
られた。そのうち、歩数計の装着不備や故障など
の配慮が重要になるので、生活活動において最も
によりデータが記録されなかった者を除外した、
基本的な身体動作であり、身近にできる歩行が高
男性 ÁEE 名と女性 ÁÁG 名を解析の対象とした。本
ÁI)
齢者の運動・スポーツとして注目されている 。
研究の実施にあたっては、対象者に研究の趣旨と
"*( 9AÄ <79!#%(!S#557-- の総説
ÁU)
では、健康な成
測定内容を説明して文書による同意を得た。ま
人における歩数計に基づいた身体活動の分類とし
た、本研究は「奈良県立医科大学医の倫理委員
て、具体的な Á 日の歩数を挙げ、Á 日 Á 万歩とい
会」の承認を受けた。
う目標値は、健康な成人にとっては日常活動にお
B.測定項目および測定方法
ける合理的な値で、Á 日 Á 万歩を実践することに
Á.歩数調査
よる健康への好影響を示す研究も出現してきてい
本 研 究 で は、歩 数 計(Ä=7< 9(79!WY,ス ズ ケ
ると述べている。また、Á 日 Á 万歩は、高齢者や
ン)を用いて歩数をはじめとした身体活動量を測
慢性疾患を抱えて生活している者にとっては持続
定した。測定前には、対象者に対して歩数計の脱
が困難なレベルであると指摘しているが、高齢者
着、装着位置などの使用方法について十分な説明
を対象とした具体的な Á 日の歩数や分類は示され
を行い、入浴や水中運動時などの浸水時および睡
(G)
眠時を除く終日装着するよう指示した。対象者へ
作の基盤となるものである。つまり、生活関連動
の説明にはマニュアルを作成し、説明時には、
作は種々の基本動作が連続することによって成り
『この調査は、元気な高齢者の方の日常の運動量
立っている。日常生活活動のなかでは、入浴動作
を調査させていただくものなので、お家のなかの
や靴の着脱動作など下肢を挙上しなければならな
ウロウロも含めて、元気な高齢者の方が Á 日どれ
い場面が多く、その際に必要とされる動作はまた
だけ歩いておられるかを調べます。ですから、起
ぎ動作である EG)。例えば、浴槽のまたぎ動作は要
床直後から就寝直前まで、ずっと腰に着けて下さ
介護者や高齢者で困難な動作の Á つとされてい
い。また、これを着けたからといって、特別に歩
る I)。一方、在宅高齢者の生活支援において日常
いたり運動したりしないで下さい。普段どおりで
生活動作を観察すると、立位姿勢で床から物を拾
お願いします』
『特別な出来事とは、日常の運動
い上げたり、床に置いてある物を扱ったりする、
量に影響するような、例えば病気で Á 日寝込ん
拾い動作が多いと指摘されている ÁE)。そこで、今
だ、毎日歩いておられる方が今日は雨で Á 日家か
回、立位で行われる基本動作としてまたぎ動作と
ら外に出られず歩けなかった、怪我をして動けな
拾い動作を測定した。
かった、法事があった、逆に普段ほとんど歩かれ
またぎ動作は、正面を向いたままバランスを崩
ない方が今日は山登りやハイキングでいつもより
さずにバーのまたぐことのできる高さを測定し、
沢山歩いた、などです』と統一した説明を行い、
身長で補正した。方法は、またぎやすいほうの足
対象者には、調査の趣旨を理解してもらうよう努
か ら と し、最大 KI< ま で 測定 し た。拾 い 動作
めた。そして、装着期間中は、歩数計を終日装着
は、しゃがんだ状態でバランスを崩さずに前方の
することができたかどうか、日常の運動量に影響
ものを拾うことができる距離を測定し、身長で補
するような特別な出来事がなかったかどうか、こ
正した。
れら E 点について日記形式で毎日記録させた。こ
移動能力は、1QÄ に直結し、転倒とも強い関
の記録を基に、その日のデータが、終日装着した
連があるが、現在までに、その指標となる測定方
ものであるか、特別な出来事がない通常歩行で
法が多数提案されている ÁG)。今回の調査では、
あったかどうかを判断した。歩数計の装着期間
ÁJ 全力歩行・最大 Á 歩幅・DJ< 踏み台昇降の
は、D 週間を標準とした。
G つを行う健脚度 EÁ)テストを行った。ÁJ 全力
Ä=7< 9(79 は加速度センサーを内蔵しており、
歩行は、ÁJ の距離をできるだけ速く歩くよう
腰部に装着することで、運動による加速度の変位
に指示し、その速度(Z57<)を算出した。測定
に体重を加味して消費エネルギー量に換算し、記
は、E 回行い、平均値を代表値とした。最大 Á 歩
録する。記録されたデータをコンピュータに取り
幅は、床面に引いた線上に直立姿勢で立ち、左右
込み、専用の解析プログラムによって Á 日ごとの
いずれかの片足を線上に固定した状態で、固定し
歩数と消費エネルギー量が分析できる。本研究で
た足と反対側の足を姿勢やバランスを崩さない範
は Á 日ごとの歩数を解析対象とした。
囲で、できる限り前方向に踏み出してもらい、そ
なお、対象者の記録を基に、Ä=7< 9(79 を着け
の踏み出した足に固定した足を揃えて再び直立姿
忘れた日、装着状況が不良であった日、日常の運
勢をとってもらった。このときの歩幅を最大 Á 歩
動量に影響するような特別な出来事があった日の
幅 と 定義 し、身長 で 補正 し た。測定 は、E 回行
データは解析対象外とした。記録されたデータ
い、平均値を代表値とした。DJ< 踏み台昇降は、
は、Á 日ごとにエクセル上に出力されるので、解
DJ< という階段の約 E 段に相当する踏み台を、
析対象外の日のデータのみを削除することが可能
昇降できるかできないかで評価した。判定基準
である。そして、解析対象となった期間の Á 日歩
は、踏み台を昇降する際に、手を使ったりせず、
数の平均値を本研究の歩数の代表値とした。
ふらつかず真っ直ぐに昇り、台の上に両足を揃え
E.身体機能
て立ち、その後台から降りるという一連の動作が
寝返り、起き上がり、立ち上がりなどの動作の
できるかどうかで、この基準を満たした場合、昇
ことを基本動作と呼ぶが、基本動作は生活関連動
降能力ありとし、満たさなかった場合は昇降能力
(D)
なしとした。
回帰分析を用いて検討した。Á 日歩数と身体機能
G.健康関連 ÂÃÄ
(健康関連 ÂÃÄ)
、および Á 日歩数と ÁJ 全力歩
健康関連 ÂÃÄ は、自記式調査表 と し て GK 項
行との関係については、従属変数を身体機能また
目からなる .4 9-!M 9AGK(.MAGK)日本語版 >79@!
は ÁJ 全力歩行の連続量とし、固定因子に Á 日歩
Á@E を用いた 。.MAGK は、対象者が自分自身の健
数(D 分位のカテゴリー変数)
、変量因子に年齢を
康についてどのように考えているかをみるもの
加え、共分散分析と歩数が最も少ない群を基準と
で、身体機能、日常役割機能(身体)
(以下日常
する Q*%%7-- 法により検討した。
身体とする)
、体の痛み、全体的健康感(以下全
なお統計解析には、.X..!ÁE@J)!= 9!R%( ,5 を
体 健 康 と す る)、活 力、社 会 生 活 機 能(以 下 社
用い、危険率が J@JI 未満の場合に帰無仮説を棄
会生活 と す る)
、日常役割機能(精神)
(以下日
却した。
G)
常精神とする)
、心の健康の H つの下位尺度から
結 果
構成されている EE)。.MAGK の下位尺度のスコアリ
ングおよび全国平均を基準とした偏差得点の算出
A.結果概要
に は、.MAGK!>79!Á@E ス コ ア リ ン グ プ ロ グ ラ ム
対象者の属性と調査結果の概要を性・年齢別に
(WN<78 版)を 使用 し た。偏差得点 は、全国調査
表 Á に示した。歩数計調査の解析対象日数は、前
成績(EJJD 年度までの調査)に基づき、基準値
期および後期高齢者ともに、女性より男性が有意
IJ、標準偏差 ÁJ として標準化された得点とした。
に多かった。
サマリースコアーについては、便宜的に H つの
歩数計による Á 日の歩数(平均値)は前期高齢
下 位 項 目 の 平 均 点 を >79#88!47#8-4A978#-7(!ÂÃÄ
者 で は、男 性 が UEUH@E(.Q=DEJI@D)歩、女 性
(&2ÂÃÄ)5< 97 として算出した 。
EI)
が HEÁK@F(.Q=GEGK@G)歩 で 男女間 に 有意差 は
D.統計解析
なかった。後期高齢者では、男性が FHUH@I(.Q
E 群間の平均値の差には!-!検定、多群間の平均
=GJDÁ@D)歩、女性が IKJJ@Á(.Q=EKHU@G)歩で
値の差には Ã%7A,#?!1OÃP1 および歩数が最も
女性より男性が有意に多かった。歩数計による身
少ない群を基準とする Q*%%7-- 法による多重比較
体活動量は前期および後期高齢者ともに、女性よ
を用いて検証した。割合の差の検定については
り男性が有意に多かった。
M5479 の直接法を用いた。
身体機能検査の結果は、前期高齢者では男女差
Á 日歩数と >79#88!&2ÂÃÄ!5< 97 との関連につ
は認められなかったが、後期高齢者では女性より
いては、性別に X7#95 % の相関分析を行った。
男性が有意に値が良好であった。特に、健脚度項
Á 日歩数については、性・年齢別に D 分位し、
目(ÁJ 全力歩行・最大 Á 歩幅・DJ< 踏み台昇
Á 日歩数 D 分位別の健康関連 ÂÃÄ および身体機
降)では、すべての項目が女性より男性が有意に
能検査結果を、平均値については一元配置分散分
値が良好であった。
析と歩数が最も少ない群を基準とする Q*%%7-- 法
健康関連 ÂÃÄ は、後期高齢者では身体機能と
により、割合については M5479 の直接法を用いて
活力において、女性より男性が有意に値が高かっ
検定した。
た。
前述した一元配置分散分析または M5479 の直接
B.1日歩数と健康関連 QOL との関連の検討
法によって、Á 日歩数と有意な関連が認められた
Á 日歩数 と 健康関連 ÂÃÄ と の 関連 を 性別 に
項目について、適正歩数を検討する際の説明変数
X7#95 % の相関分析を行った結果を図 Á と図 E に
とした。適正歩数の検討には、Á 日歩数を性別に D
示した。
分位し、年齢を調整した値を求めた。Á 日歩数と踏
図 Á では Á 日歩数と >79#88!&2ÂÃÄ!5< 97 との
み台昇降能力との関係については、従属変数を踏
関連を検討した。男性では Á 日歩数と健康関連
み台昇降能力があるか否か、説明変数を連続量で
ÂÃÄ との間に有意な相関関係は認めなかった。
ある Á 日歩数を D 分位としたカテゴリー変数とし
一方、女性では Á 日歩数と健康関連 ÂÃÄ との間
て、年齢を説明変数に加え、多重ロジスティック
に有意な正の相関関係を認めた。
(I)
表 Á .性・年齢別対象者の結果概要
"#687!Á@!C4#9#<-795-<5! =!5*6L7<-5!6?!#:7!#%(!:7%(79@
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FF@G a E@H
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ÂÃÄ
EÁ@F a K@K
ÁH@I a F@E
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ÁHK@K a HÁ@G
ÁÁÁ@J a II@K J@JJJ
FHUH@I a GJDÁ@D IKJJ@Á a EKHU@G J@JJJ
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2 87!;4?5<#8
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IJ@E a F@F
DU@F a H@U
IJ@Á a ÁJ@E
DF@U a ÁJ@I
DH@J a U@Á
IÁ@G a ÁJ@G
J@ÁKH
J@GJH
J@IDF
IJ@D a K@G
DF@J a ÁJ@G
IJ@U a H@U
DÁ@H a ÁD@J
DG@Á a ÁÁ@G
DH@E a ÁJ@K
J@JJJ
J@JIH
J@ÁDU
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2 87!7 - %#8
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IE@J a U@Á
II@F a U@F
IÁ@F a H@G
IJ@U a H@K
IG@H a U@I
IJ@J a ÁJ@J
ID@E a U@F
DU@D a ÁJ@K
IJ@J a H@E
IÁ@H a U@I
J@EIJ
J@GFH
J@ÁHG
J@IGH
J@EIE
IÁ@F a U@Á
IK@I a F@G
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図 E では Á 日歩数と健康関連 ÂÃÄ の下位尺度
好な関連を認めた。特に健脚度のなかでも ÁJ
のなかの身体機能との関連を検討した。男女とも
全力歩行と踏み台昇降能力は、女性高齢者におい
に、Á 日歩数 と 身体機能(健康関連 ÂÃÄ)と の
ては、歩数が多いほど有意に身体機能が良好で
間には有意な正の相関を認めた。
あった。
C.1日歩数を4分位した身体機能と健康関連
QOL の検討
D.適正歩数の検証
Á 日歩数を性別に D 分位した結果を表 D に示し
Á 日歩数を性・年齢別に D 分位した結果を表 E
た。数値は、統計上 D 分位したものであるため、
に示した。表 E で示した D 分位に基づく身体機能
ÁJJ の位を切り上げ、または切り捨てしたわかり
と 健康関連 ÂÃÄ を 検討 し た 結果 を 表 GA# と GA6
やすい値に置き換えたものを並記した。
に示した。健康関連 ÂÃÄ の身体機能では、前期
多重ロジスティック回帰分析による適正歩数を
高齢者の女性および後期高齢者男女において歩数
検証した結果を表 I に示した。Á 日歩数と踏み台
が多いほど健康関連 ÂÃÄ の身体機能が保たれて
昇降能力は女性においてのみ有意な関連が認めら
いた。健康関連 ÂÃÄ の下位尺度では、身体機能
れ、年齢調整したオッズ比は、Á 日歩数が最も少
以外に Á 日歩数と有意な関係を認めたものはな
ない群に比べて下位 E 分位、上位 E 分位、そして
かった。
上位 Á 分位において有意な上昇を認め、歩数が多
身体機能検査では、男性においては歩数と健脚
いほどオッズ比も上昇していた。
度に有意な関連はなかったが、女性においては、
共分散分析による適正歩数を検証した結果を表
前期および後期ともに歩数が多いほど健脚度が良
K に示した。男性においては、 >79#88!&2ÂÃÄ、
(K)
Male
Female
Overall HRQOL score
60
Overall HRQOL score
60
45
45
30
30
15
15
r=0.123 ( =0.180)
n=122
○: Age 65 − 74
×: Age 75 and over
0
r=0.300 ( =0.002)
R2=0.090
n=122
○: Age 65 − 74
×: Age 75 and over
0
0
5000 10000 15000 20000
Daily step count
0
5000 10000 15000 20000
Daily step count
図 Á .Á 日歩数と健康関連 ÂÃÄ との関係
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Male
Female
60
HRQOL
(Physical functioning)
HRQOL
(Physical functioning)
60
45
30
15
r=0.214 ( =0.018)
R2=0.044
n=122
○: Age 65 − 74
×: Age 75 and over
0
45
30
15
r=0.497 ( <0.001)
R2=0.179
n=112
○: Age 65 − 74
×: Age 75 and over
0
0
5000 10000 15000 20000
Daily step count
0
5000 10000 15000 20000
Daily step count
図 E .Á 日歩数と健康関連 ÂÃÄ(身体機能)との関係
M:@E@!278#- %54;!67-,77%!(#8?!5-7;!< *%-5!#%(!-47!&2ÂÃÄ(X4?5<#8!=*%<- %%:)@
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表 E .Á 日歩数を性・年齢別に D 分位した内訳(数値は % 数)
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表 GA#.性・年齢別の Á 日歩数 D 分位別解析結果(体格および健康関連 ÂÃÄ)
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(H)
表 GA6.性・年齢別の Á 日歩数 D 分位別解析結果(身体機能検査および活動能力)
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5!7-4 (@
表 D .Á 日歩数を性別に D 分位した内訳(数値は % 数)
"#687!D@!"47!697#( ,%! =!= *9!B*#9-875!= 9!(#8?!5-7;!< *%-5!6?!:7%(79@(M:*975!54 ,!-47!%*679! =!5*6L7<-5)
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(U)
表 I .Á 日歩数と踏み台昇降能力との関係
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表 K .Á 日歩数と健康関連 ÂÃÄ および ÁJ 全力歩行との関係
"#687!K@!278#- %!67-,77%!(#8?!5-7;!< *%-5!#%(!47#8-4A978#-7(!ÂÃÄ$!#%(!(#8?!5-7;!< *%-5!#%(!=#5-75-!,#8%:!= 9!ÁJ@
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]J@G^ fJ@JÁ ÂE$ÂG$ÂD
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身体機能(健康関連 ÂÃÄ)および ÁJ 全力歩行
本調査も同様の結果であった。一方、3#5*%#:#!
のいずれも、Á 日歩数との間に関連を認めなかっ
7-!#8@ の 研究 EI)で は、本調査 と 同様 に .MAGKEE)を
た。一方、女性では、 >79#88!&2ÂÃÄ、身体機能
用 い て 性 別 に 高 齢 者 の 健 康 関 連 ÂÃÄ( >79#88!
(健康関連 ÂÃÄ)および ÁJ 全力歩行のすべて
&2ÂÃÄ)と加速度計に基づく身体活動との関連
において、Á 日歩数との間に有意な関連を認め
を検討しているが、男女ともに身体活動量が最も
た。また、Á 日歩数が最も少ない群に比べて、
少ない群において健康関連 ÂÃÄ が最も低く、歩
>79#88!&2ÂÃÄ では、上位 E 分位と上位 Á 分位に
数と健康関連 ÂÃÄ との関連も男女ともに有意な
おいて、身体機能(健康関連 ÂÃÄ)および ÁJ
正の相関があったが、相関係数は女性より男性
全力歩行では、下位 E 分位、上位 E 分位、および
の ほ う が 大 き か っ た と 報告 し て い る。Ä77!#%(!
上位 Á 分位において有意差が認められた。
2*55788 の報告 ÁÁ)でも、女性高齢者において身体
考 察
活動量が少ない群より多い群のほうが健康関連
ÂÃÄ が良好であったと報告している。本調査の
本調査結果から、身体活動量は女性より男性が
結果は、女性高齢者では 3#5*%#:#!7-!#8@EI)や Ä77!
有意に多く、Á 日歩数と身体機能および健康関連
#%(!2*55788!ÁÁ)の報告と同様であったが、男性高齢
ÂÃÄ との関連については、男性高齢者では関連
者では 3#5*%#:#!7-!#8@ の報告と異なっていた。こ
が認められず、女性高齢者において有意な関連が
れについては、本調査の男性高齢者集団において
認められた。これまでの研究においても、女性高
は、健康関連 ÂÃÄ を規定する要因として、身体
齢者より男性高齢者のほうが身体活動量が有意に
活動以外の要因があると推測される。しかし、そ
多いことが報告されており D$K$ED$EI)、この点では、
の要因については、現段階では不明である。今
(ÁJ)
後、更に分析を深め、また対象者数も増やし、男
K)
による FJ 歳以上の女性における歩数の現
調査」
性高齢者の健康関連 ÂÃÄ に関連する要因を検証
状値 GUÁF 歩を約 ÁIJJ 歩上回った値であり、健康
していきたいと考えている。また、身体機能と歩
日本 EÁ において国が推奨する女性高齢者の目標
数との関連についても、年齢調整した解析結果に
値を DJJ 歩下回るものであった。国の目標値を下
おいて、女性高齢者においては有意な関連が認め
回ったものの、ほぼ同レベルであると考えられる
られたが、男性高齢者では関連が認められなかっ
だろう。国の目標値は、国民健康・栄養調査にお
た。これについては、身体機能検査の内容が、男
いて実測した値に、実現可能な歩数を加算したも
性高齢者にとって比較的容易な検査が多く、集団
のであるが、女性高齢者に限定すれば、本調査結
内で差が検出できず、適正歩数を検討するうえで
果は、国の目標値の Á つの根拠になりうると思わ
は適切な検査方法でなかった可能性がある。特
れる。また、"*( 9AÄ <79!#%(!S#557-- の分類 ÁU)で
に、身体機能検査のなかでも踏み台昇降能力の検
は、女性高齢者 の 設定値 は“8 ,!#<->7”で あ る
査は、男性の UD%が可能であり、女性との差が
が、女性高齢者においては健康な成人の“8 ,!#<A
顕著であった。
->7”の レ ベ ル で あ っ て も、身体機能 や ÂÃÄ の
本調査では、高齢者において身体活動が活発な
維持には有効なレベルとも考えられる。"*( 9A
ことは、身体機能や ÂÃÄ の維持に有効であると
Ä <79!#%(!S#557-- が主張するように ÁU)、高齢者の
いう仮説を立て、身体活動量の Á つの目安として
身体活動を分類する手法には、健康な成人の基準
Á 日歩数を取り上げ、高齢者の身体機能や ÂÃÄ
を当てはめることができないのである。
の維持に有効な適正歩数の設定を試みた。これま
ただし、本調査結果には限界がある。第 Á に、
で、具体的な Á 日歩数が示されたものとしては、
横断研究のため、因果関係が確定できないことで
"*( 9AÄ <79!#%(!S#557-- の総説
がある。健康な
ある。第 E に、今回、適正歩数の検証に用いた要
成人における歩数計に基づいた身体活動の分類
因は、健脚度 EÁ)や健康関連 ÂÃÄEE)の下位尺度の
として、Á 日の歩数を、IJJJ 歩未満は“57(7%-#9?!
一部であるということである。男性高齢者におい
8=75-?87”、IJJJ 歩∼FDUU 歩 は“8 , ! #<->7”、
てこれらの要因と Á 日歩数との間に関連がみられ
FIJJ 歩∼UUUU 歩 は“5 7,4#-!#<->7”、Á 万歩以
なかったことからも、他の要因による適正歩数の
ÁU)
上は“#<->7”を提唱しているが、この値は健康な
検討も必要と考える。これらの限界はあるが、本
成人を対象としており、高齢者の基準ではない。
調査結果により、女性高齢者の身体機能や健康関
健康日本 EÁ において国が推奨する高齢者の Á 日
連 ÂÃÄ を 維持 す る た め に 必要 な Á 日 の 歩数 は
歩数として、男女別の FJ 歳以上の目標値は、男
IIJJ 歩と推計され、この歩数は国の目標値とほ
性 KFJJ 歩、女性 IUJJ 歩が提唱されている。本研
ぼ同じレベルであった。
究では、Á 日の歩数と脚力を中心とした身体機
能、健康関連 ÂÃÄ との関連性を検討し、適正歩
総 括
数の設定を試みた。その結果、男性高齢者では、
本調査結果から、Á 日歩数と身体機能および健
Á 日歩数と身体機能および健康関連 ÂÃÄ との間
康関連 ÂÃÄ との関連については、男性高齢者で
に関連が認められず、適正歩数を検討することが
は関連が認められず、女性高齢者において有意な
できなかった。女性高齢者では、下位 E 分位以上
関連が認められた。この結果は、男性では先行研
の歩数は、高齢者の身体機能や健康関連 ÂÃÄ を
究と異なるものであり、女性においては先行研究
維持するうえで有効な適正歩数であることが立証
を支持するものであった。KI 歳以上の高齢者が
された。そこで、女性の下位 E 分位以上の Á 日歩
身体機能や健康関連 ÂÃÄ を維持するために必要
数、すなわち IIJJ 歩を、女性高齢者の身体機能
な Á 日の歩数を検証した結果、男性高齢者におい
や健康関連 ÂÃÄ を維持するうえで有効な適正歩
ては適正歩数が設定できなかった。女性高齢者で
数であると考えた。この値は、"*( 9AÄ <79!#%(!
は、IIJJ 歩と推計された。
S#557-- の 健康 な 成人 を 対象 と し た 分類
ÁU)
では
“8 ,!#<->7”となり、
「平成 ÁK 年国民健康・栄養
(ÁÁ)
参 考 文 献
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(ÁUUI)T!X4?5<#8!#<->-?!#%(!;*68<!47#8-4@!1!97< 7%A
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5-9*<-!>#8(-?@!.; 9-5!07($!kq$!EHÁAEUÁ@
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<9 55A57<- %#8!#%(!8 %:-*(%#8!#%#8?575@!)!X5?<4 5 !
275$!mq$!ÁIIAÁKJ@
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GJK.
ED)3#5*%#:# ! 1$ ! " : ! M$ ! R#-#%#67 ! W$ ! X#9 ! &$ ! X#9 ! .$ .47;4#9(!2)$!1 ?#:!3(EJJH)T!.7N$!#:7$!57#5 %$!#%(!
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EI)3#5*%#:#!1$!" : !M$!R#-#%#67!W$!X#9!&$!.47;4#9(!2)$!
1 ?#:!3(EJJK)T!37#98 %:!;4?5<#8!#<->-?!#%(!47#8-4A
の物拾い動作時にみられる体幹前傾姿勢についての検
978#-7(!B*#8-?! =!8=7!%! 8(79!)#;#%757!#(*8-5T!-47!O##% A
討.川崎医療福祉学会誌,nq,ÁDIAÁIK.
L !.-*(?@!)!1:%:!X4?5!1<-!nq$!EHHAGJÁ@
第 =D 回健康医科学研究助成論文集
平成 >@ 年度 PP7>=∼=B(=BB@7G)
〔優 秀 賞〕
低温および風雨による寒冷曝露時の熱放散反応に関する研究
山 根 基* 種 田 行 男** 大 西 範 和*** 松 本 孝 朗**** 北 川 薫****
ÁÂÂÁÃÄÅÆÇÂÆÈÉÊËÆÌÊËÆÍÌÉÊÆÇÊÆÄÎÁÍÏÌÆÍÁÅÇÊÅÁÅ
ÇÂÆÎÏÌÊÆÉÊÆÃÇËÆÁÊÉÍÇÊÏÁÊÄ
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(&0&1'2*1344"2&10&$'+22"4"3$50$2'"'342"+$$6
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"7(&0$0'3&0$''"1+'42$31&334'3+""$&$2$'0''3&
42"9$7,9&2&11*2':;4'(±,<3*==>±>1$&*&=>?=7@±A7B4
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7(&'$'2'"4&2&*&:"1&2''
'*34214$''+&&&'$50'"+""$42"9$4$0$$'
":1'&9$*&$*''"'&22'2(0$0&$29'4'$4"':4'3)
7
)1+$"'F42"50'$$+"&2''&$$*2$17
* 愛知みずほ大学人間科学部 <0$38,44'.4&%&E22*.4&O07
中京大学情報理工学部 ,4&23J3$(4&2*1E& 1-9$'1.4&O07
三重県立看護大学看護学部 Q4213#$'*R$34$2E22*3#$'*O07
****
中京大学体育学部運動生理学研究室 S:$$13$T5$4'R&1'2*1"U4&4',4&2382&",0$,44'E& 1-9$'1.4&
O07
** *** (>G)
緒 言
大酸素摂取量の GB%以下の運動強度での歩行中
に核心温低下が生じたことを報告している。ま
近年、中高年者において生活の質(V!S)の
た、(&0'"81+$">@)は低温および風雨環
向上を目指した余暇の過ごし方が注目されてお
境下 に お け る D 時間 の 歩行運動中 に 核心温 は
り、その > つとして登山が広く愛好されている。
G?℃よりわずかに低下した程度であったが、数名
登山は自然を楽しみながら、身体活動量を高める
の被験者において急激な歩行速度の低下および歩
ことができることから、中高年者の健康寿命の延
行中止により核心温が GA℃近くまで低下したこ
伸のために有用な余暇活動であると考えられる。
とを観察している。
しかしながら、登山中には天候や気温の急激な変
したがって、低体温症は、登山中の急激な天候
化が生じやすく、特に風雨が加わった低温環境下
悪化に加えて、長時間の運動などにより疲労が生
では多くの体熱が奪われて、低体温症となる危険
じ運動強度が著しく低下した状態、もしくは遭難
性がある 。ヒトでは核心温が GA℃未満の場合
などの事故によって完全に運動を停止しなければ
を低体温症といい、GG℃以下になると意識障害が
ならない状態で発生する可能性が高いと考えられ
出現し始め、GB℃より低下すると死亡の危険性が
る。特に安静状態では、外的な仕事による筋活動
高まる >G)。登山中における低体温症発生のメカニ
で生じる代謝性の熱産生量増加がないことから熱
ズムを解明することは、その発症の予防策を考え
平衡状態を保つことができず、核心温低下が顕著
る際に非常に意義のあることである。しかしなが
に生じる可能性が考えられ、低温および風雨の寒
ら、登山者における低体温症に関する研究では、
冷環境下においてヒトの安静状態における熱放散
一般的に冷水中への浸漬により検討されることが
反応について知見を得る必要性は高いと考えられ
>=)
>B>L=>)
、登山中に発生している自然の気象条
るが、それに関して検討した報告はほとんどな
件を想定して実験を行っている報告は少ない。
い。そこで本研究では、環境温、相対湿度および
E0$?)は登山中の環境条件を想定した身体冷却
風雨の条件が設定可能な人工気象室を用いて、登
に関する情報として有効に利用できるものはほと
山中の悪天候を想定した低温環境および風雨の寒
んどないと述べている。このことは、低温環境に
冷曝露がヒトの安静状態における熱放散反応に及
風や雨を加えた気象条件を模擬するための特殊な
ぼす影響について検討することを目的とした。
多く
実験装置を用意することが非常に困難であること
研 究 方 法
が原因であると考えられる。
水の熱伝導率は空気の =A 倍あるため G)、降雨
A.被験者
によって皮膚表面が濡れることで、乾燥条件に比
被験者は、健康な成人男性 ? 名とした。被験者
べてより大きな熱放散が生じると考えられる。更
には実験の実施前に、研究の目的、方法、危険
に皮膚表面に付着した水滴が蒸発することによっ
性、個人情報の保護について口頭で説明を行った
ても熱放散は促進されると推察される。R*&>?)
後、参加合意に対して自筆による署名を得た。ま
は、低温環境下において風雨が加わると蒸発性熱
た、本研究は中京大学生命システム工学部倫理審
放散量が増加し、衣服および空気による熱遮断性
査委員会に申請し、研究実施の承認を得て行っ
が低下するため、著しく熱放散が増大する一方、
た。各被験者の身体的特徴は表 > に示した。本研
運動(酸素摂取量 =∼=7AWH)を負荷すること
究は、被験者が寒冷環境に馴化していないと考え
によって代謝性の熱産生量増加が生じ、核心温に
られる @ 月および >B 月の期間において実施した。
はほとんど影響を及ぼさないことを示唆してい
B.形態計測
る。登山中の運動強度は、その地形にもよるが最
被験者は、寒冷曝露実験の前に身長、体重およ
大酸素摂取量の GB∼AA%程度であるといわれて
び皮下脂肪厚を測定した。体表面積(.<)は身
いる =)。この強度で運動を実施している場合には
長および体重の値を用いて <U'"<U'L)
極度の低体温となる可能性は低いと考えられる。
の式により算出した。皮下脂肪厚は超音波皮下脂
I22$27=G)は低温および風雨環境下において最
肪計(,GBC,誠鋼社)を用いて、上腕背部、肩
(>D)
表 > .被験者の身体的特徴
(:2>7E&$4$'4'3':;4'7
E&$4$'4
.*1$
8*&4
I*& *
,$34$=
' 32"&4 ''
U"13]
,:;4
.
U
E
<
T
Q
\
=>
==
=>
=B
=>
=B
=>
>CL7L >LB7L >?C7B >?G7? >?>7@ >CA7G >?D7>
CD7D C>7B CL7B LB7C CD7> A@7G CD7A
>7?D >7?@ >7LG >7@A >7?C >7CA >7?L
>=7G
?7? >=7A >D7A
?7G
L7?
?7G
>D7D >B7L >D7B >C7G >B7= >>7C >B7=
甲骨下角部、腸骨上部、腹部、大腿前部、下腿部
[,<
=>[>
>?=7@[A7B
CC7B[?7B
>7?@[B7>B
>B7B[G7B
>=7A[=7D
Rain (40mm/h)
Ambient temp.
(15℃)
の C 部位を測定し、C 部位の平均値を平均皮下脂
肪 厚 と し た。皮 下 脂 肪 厚 よ り 被 験 者 の 体 密 度
Subj.
を R'4227>C)の 式 を 用 い て 求 め、体 密 度 を
U$% 27D)の式により体脂肪率に変換した。
C.実験プロトコール
Wind (3m/s)
被験者は G 条件の寒冷曝露実験を日を変えて無
2.15m
作為に実施した。被験者には実験開始 = 時間前か
ら食事を避けるように指示した。対照条件として
室温 >A℃、相対湿度 AB%の環境条件への曝露、
風条件として同じ室温、相対湿度条件下で風速 G
H' の風への曝露、風雨条件として同じ室温条件
1.5m
下で風速 G H' の風および雨量 DBH& の雨への
図 > .寒冷曝露実験の概略図
Q*7>7<*$422'$342"50'$7
曝露を行う実験を実施した。すべての条件とも実
験は、中京大学生命システム工学部内に設置され
た人工気象室((U/6>=.DRX,エスペック社)内
で実施した。寒冷曝露実験中の概略図を図 > に示
風の吹き出し口を向いて直立姿勢を保った。
D.測定項目
した。風は人工気象室内の前方の壁に設置された
直腸温(($)は サ ー ミ ス タ プ ロ ー ブ(DB>O,
>7BA= の排出口から吹き出し、雨は前方の壁の床
,J 社)の先端を直腸内に約 >A4 挿入して測定
面から =7>A 上方に設置された G つのノズルか
した。皮膚温および皮膚表面からの熱流量は、そ
ら噴射する。すべての実験において、被験者は指
れぞれサーミスタプローブ(DB@O,,J 社)
、熱
定のショートパンツのみを着用した半裸体状態で
流素子((>,京都電子工業社)を前額、腹、前
あった。被験者は室温 >A℃、相対湿度 AB%の環
腕、手背、大腿、下腿、足背の ? 部位にテープで
境に設定された人工気象室に入室後、>B 分間で
貼 布 し て 連 続 的 に 記 録 し た。熱 流 素 子 は 縦
計測を行うすべてのセンサーを装着し、その後 A
GB、横 >A、厚さ >7A の大きさであり、
分間ベースラインの測定を行った後、=B 分間各
センサーの内側面に両面テープを用いて皮膚表面
条件の環境下において曝露実験を実施した。実験
に密着させるように取り付けた。このセンサーは
において雨を噴射する際には、ノズルの開放から
皮膚に接する面と空気に接する面との温度勾配に
およそ AB∼CB 秒の遅れが発生するため、毎回曝
よって熱流量に比例した電圧を得ることができ
露開始の CB 秒前からノズル開放の操作を実施し
る。
た。したがって、実験の際には曝露開始時間が
呼吸代謝測定装置(.T6GBB,,ミ ナ ト 医科学
>B 秒ほど前後することが認められた。実験中、
社)の TXRJ/T!<T を用いて呼気ガスを分析
被験者は人工気象室前方の壁から >7A 後方で、
し、酸素摂取量(Y!=)を連続的に測定した。
・
(>A)
主観的な温冷感およびふるえの有無はベースラ
積率相関係数を用いて検討した。なお、統計処理
イン時、各環境条件に曝露後 >B 分、=B 分に被験
には ,R,,>A7BO3$I"+' を用い、有意水準の
者が自己申告したものを記録した。主観的な温冷
判定は A%未満とした。
感は−G の寒いから G の暑いまでの ? 段階のス
結 果
ケールを用いて評価した。
A.熱放散量
平均皮膚温((' )は、全身の表面積に占める
各部位の表面積の割合で重み付けした 8$"1"
熱放散量の各条件の経時的な変化を図 = に示し
<U'>>)による次式により算出した。
た。熱放散量は風および風雨条件において、曝露
(' =B7B?×前 額+B7GA×腹+B7>D×前 腕+B7BA
開始後一時的に急激な増加を示した。風条件の
×手背+B7>@×大腿+B7>G×下腿+B7B?×足背
ピーク値は =CC7>D±=L7?BIH= となり対照条件の
熱放散量(IH )は各部位の熱流量を (' と同
約 >7A 倍に増加し、風雨条件のピーク値は A>A7BA
様の式に代入して求めた。代謝性産熱量(/)
±AB7>BIH= と な り 対照条件 の 約 G 倍 に 増加 し
=
・
は、Y!= > W 当たり D7L= 42(呼吸交換比=B7L=)
の代謝量となることを用いて
>=)
次式より求めた。
・
た。その後値は徐々に低下し、>A 分後には安定
し始め、=B 分後には対照条件は >DL7=G±@7=@IH
/( 42H=)=D7L=×Y!=×CBH.<
=、風 条 件 は =B=7=B±>D7?AIH=、風 雨 条 件 は
熱産生と熱損失の平衡状態を表す⊿貯熱量(⊿
=AL7==±=?7=>IH= となった。曝露期間の =B 分間
,)は、代謝性産熱量から熱放散量を減ずること
の平均値を G 条件で比較した結果、風および風雨
により算出した。損失された熱量のほうが産生さ
条 件(==A7>G±>L7>D,GDC7G>±GD7=>IH=)は 対
れた熱量より多ければ体内温が低下する。人体の
照条件(>AC7?@±@7D=IH=)に比べて有意に高い
比熱が B7LG 42H *H℃であることを用いて >D)⊿貯
熱量より平均体温の低下度(⊿(:)を以下の式 A)
Wind and/or rain starts
600
より推定した。
CON
WIND
WIND+RAIN
500
なお、 > 42H& は >7>CGI に変換して算出した。
E.統計処理
各測定値はすべて平均値±標準偏差で表示し
た。直腸温、平均皮膚温、熱放散量、代謝性産熱
量および⊿貯熱量の曝露期間 =B 分間の平均値は、
各条件間の差を繰り返しのある一元配置分散分析
を用いて検定し、有意性が認められた場合にその
後の検定として ( 1 の多重比較を行った。平
均皮下脂肪厚と熱放散量の相関関係は、ピアソン
Mean heat loss, W/m
2
⊿(:=(⊿,×.<)H(B7LG×体重)
400
300
200
100
0
0
5
10
15
20
25
図 = .各条件における寒冷曝露中の熱放散量の変化
Q*7=7&2''"$*42"50'$"$&$4"6
'(±,<)7
表 = .各条件における寒冷曝露中の熱放散量、平均皮膚温、直腸温、代謝性産熱量、⊿貯熱量
(:2=7&2''' 0$$$420$$:24&0$"4"⊿&'$*
"$*42"50'$"$&$4"'7
E"
&2''IH=
' 0$$b
/420$$b
:24&0$"4IH
d8'$* OH=
=
30
Time, min
E!#
IJ#<
IJ#<`/.J#
.#!Y.
^N92_
>AC7?@[@7D=
=C7>@[B7C@
G?7G=[B7=G
DG7GL[D7B>
e=@7>?[G7G@
==A7>G[>L7>D
=G7A?[B7CC
G?7DB[B7=A
DA7G?[>B7C>
eDA7BL[C7D?
GDC7G>[GD7=>:
>L7@L[B7LL:
NaB7BB>
NaB7BB>
G?7G>[B7==
>B>7GL[=@7=G:
eC>7DG[>B7?=:
NcB7AL
NaB7BB>
NaB7BB>
N<B7B>40$'E!#:N<B7B>40$'IJ#<7Y2'$'±,<7
(>C)
値を示し、更に風雨条件の値は風条件より有意に
B.平均皮膚温と直腸温
平均皮膚温と直腸温の経時的な変化を図 G に示
した。平均皮膚温は風および風雨条件において、
熱放散量の変化と同様に曝露開始後一時的に急激
Mean skin temperature, ℃
高くなった(表 =)。
30
に低下した。曝露開始後 = 分で風条件は >7?@℃、
B7C?℃、風雨条件は >?7?>±B7LB℃となった。曝露
期 間 の =B 分 の 平 均 値 は、風 お よ び 風 雨 条 件
(=G7A?±B7CC,>L7@L±B7LL℃)は対照条件(=C7>@
=)。
直腸温は G 条件ともに曝露開始時から =B 分ま
でほとんど変化を示さなかった。曝露開始時の値
Wind and/or rain starts
10
5
CON
WIND
WIND+RAIN
38.5
38.0
37.5
37.0
36.5
36.0
±B7C@℃)に比べて有意に低い値を示し、更に風
雨条件の値は風条件より有意に低くなった(表
15
0
Rectal temperature, ℃
分で対照条件は =A7CD±B7?L℃、風条件は ==7AD±
20
39.0
風雨条件は D7L?℃低下した。その後 >B 分ですべ
ての条件において低下の程度は緩やかになり、=B
25
0
5
10
15
Time, min
20
25
30
図 G .各条件における寒冷曝露中の平均皮膚温および直腸
温の変化
Q*7G7' 0$$"$420$$"$*42"
50'$"$&$4"'(±,<)7
は、対照条件で G?7=L±B7==℃、風条件で G?7GC±
B7=A℃、風雨条件 で G?7=C±B7G>℃と な り、=B 分
露期間の =B 分間の平均値は、G 条件の間で有意
な差を示さなかった(表 =)
。
C.代謝性産熱量と⊿貯熱量(平均体温の低下
度)
代謝性産熱量の経時的な変化を図 D に示した。
Metabolic heat production, W/m
±B7=@℃、風雨条件で G?7G=±B7=B℃となった。曝
2
では、対照条件で G?7GD±B7=C℃、風条件で G?7DG
せず、=B 分では風雨条件の値は対照および風条
件の約 =7A 倍に増加した。曝露期間の =B 分間の
160
140
120
100
80
60
40
20
0
代謝性産熱量は、風雨条件のみで曝露開始後より
増加し始め、対照および風条件ではほとんど変化
CON
WIND
WIND+RAIN
Wind and/or rain starts
180
0
5
10
15
Time, min
20
25
30
図 D .各条件における寒冷曝露中の代謝性産熱量の変化
Q*7D7:24&0$"4"$*42"50'$"$
&$4"'(±,<)7
平均値 は、風雨条件(>B>7GL±=@7=GIH=)は 対
照 お よ び 風 条 件(DG7GL±D7B>,DA7G?±>B7C>IH
。
=)と比較して有意に高い値となった(表 =)
た。曝露期間中すべての条件において減少傾向
を 示 し、曝 露 後 =B 分 で 対 照 条 件 は−?DD7CD±
L=7C= OH 、風条件 は−>BC>7L>±>AA7LG OH 、風
=
=
雨条件 は−>D>?7=C±=BA7D? OH= と な っ た。曝露
期間 の =B 分間 の 平均値 は、風 お よ び 風雨条件
(−=@7>?±G7G@,−DA7BL±C7D? OH )は対照条件
=
(−C>7DG±>B7?= OH=)に比べて有意に低い値を
示し、更に風雨条件の値は風条件より有意に低く
5
10
15
20
25
30
0
Cumulative heat storage, kJ/m2
⊿貯熱量の累積値の経時的な変化を図 A に示し
Time, min
0
CON
WIND
WIND+RAIN
−200
−400
−600
−800
−1000
−1200
−1400
−1600
Wind and/or rain starts
−1800
図 A .各条件における寒冷曝露中の累積貯熱量の変化
Q*7A7E29&'$*"$*42"50'$"$&$
4"'(±,<)7
Mean heat loss, W/m
2
(>?)
410
熱放散は伝導、対流、放射、蒸発によるが、本
390
研究では、低温環境下に風が加わることにより強
370
制対流が大きくなり、皮膚からの熱放散量が増加
350
したと考えられる。体表面には空気の動きのない
330
r = −0.790
* < 0.05
310
限界層がある。限界層の熱の移動は伝達によって
290
のみ行われるが、限界層を超えると熱は対流によ
270
り運び去られる。この限界層の厚さは風などの強
250
制対流で薄くなり、伝導や対流による熱放散は増
4
6
8
10
12
14
16
Mean skinfold thickness, mm
大するといわれている >=)。#'&"\**>A)はナ
図 C .平均皮下脂肪厚と風雨条件における熱放散量の相関
関係
Q*7C7/2'&0':+&2''"' 32"
&4 ''"$*42"50'$+&+""$7
フタリンの昇華速度から対流熱伝達率を計測した
結果、対流熱伝達率は気流速度の平方根に比例す
ることを報告している。本研究では風に雨の条件
を加えることにより、更に熱放散量が増加した。
なった(表 =)。⊿貯熱量から推定した平均体温
雨で皮膚表面が濡れることにより、皮膚表面にお
の低下は =B 分間で、対照条件は >7G@±B7=>℃、
ける空気の熱遮断性が著しく低下していたかもし
風条件は >7@@±B7GL℃、風雨条件は =7CD±B7D>℃
れ な い。水 の 熱伝導率 は B7CB=IH=H℃で あ り、
となった。
空気の約 =A 倍と大きいことから G)、雨により皮
D.ふるえの有無および主観的温冷感
膚表面が濡れることで熱伝導による熱放散量が増
ふるえの有無については、対照条件では = 名の
加した可能性が推察される。R*&>?)は雨によっ
被験者が曝露後 >B 分、風条件では > 名が曝露後
て皮膚表面が濡れることにより蒸発性熱放散量の
>B 分、G 名が =B 分、風雨条件では被験者全員の
増加が生じることを検討している。しかしなが
? 名が曝露後 >B 分と =B 分でふるえありと申告し
ら、R*&>?)の実験では、実験中断続的に雨に曝
た。曝露後 =B 分における全身の主観的温冷感の
露させていたが、本研究では継続的に雨に曝露さ
カテゴリースケールは、対照条件で−=7>±>7=、
せていたため、周囲の水蒸気圧が常に高い状態に
風 条 件 で−=7G±>7>、風 雨 条 件 で−=7?±B7L と
あり皮膚表面の水の蒸発による熱放散の影響は小
なった。
さかった可能性も考えられる。
E.平均皮下脂肪厚と熱放散量(風雨条件)の
熱流量から求めた熱放散量は、風雨に曝露され
た直後 >∼= 分で特に急激な増加を示した。この
相関関係
平均皮下脂肪厚と風雨条件における熱放散量の
変化と同期して平均皮膚温の急激な低下が観察さ
相関図を図 C に示した。相関係数 $ は−B7?@B と
れた。この反応は、Y4''27==)の冷水浴を
なり、平均皮下脂肪厚と熱放散量は有意な負の相
用いた研究においても観察されており、急激な環
関関係にあることが示された。
境の変化により身体の外層部に貯められていた熱
考 察
本 研 究 は、健 康 な 成 人 男 性 に お い て 低 温
(>A℃)環境条件に風(風速 G H')および雨(雨
量 DBH&)が加わることが安静時、半裸体状態
が放散したためであると推察される。皮膚温が低
下するに従って環境温と平均皮膚温の差が小さく
なり熱放散量は減少し、約 >A 分後には定常状態
となった。
本研究 で は、す べ て の 条件 で 直腸温 は =B 分
における熱放散反応に及ぼす影響について検討し
間の寒冷曝露中ほとんど変化を示さなかった。
た。その結果、=B 分間の寒冷曝露期間中皮膚表
E'2227C)は水温 =B℃の冷水浴によって >
面から放散される熱放散量は対照条件に対して風
時間当たり約 B7CA℃の直腸温の低下が生じ、水中
および風雨条件では明らかに増加した。このこと
に浸漬後 >=B 分で GC7B℃以下になることを報告し
は低温環境下に風雨が加わることにより身体から
て い る。( ''"\':$4&=B)は 水温 L℃の 冷
の熱放散が増大することを示唆している。
水浴を CB 分間行った結果、核心温が GD℃以下に
(>L)
低下したことを示した。寒冷環境に対する初期の
するためには、寒冷環境に対する生理学的な生体
生体反応としては、末梢血管の収縮作用による皮
反応だけでなく、物理的断熱因子である皮下脂肪
下組織の熱遮断性増大と血管の対向流熱交換によ
の影響も大きいと考えられる >L==)。皮下脂肪層は
。本研究では、
血管が少なく、また熱伝達率は筋組織の約 >H= で
対照および風条件において、主にこれらの血管運
あり、優れた断熱体である。本研究では、平均皮
動により核心温が維持されていたと考えられる。
下脂肪厚と熱放散量の関係を観察したところ、有
風雨条件では曝露開始後 >B 分で平均皮膚温は約
意な負の相関関係が認められ、皮下脂肪の熱遮断
>L7A℃まで低下していた。冷水浴を用いた研究 ==)
性によって深部から外層部への熱の移動が抑制さ
の結果を基に推察すると、平均皮膚温がこの程度
れていた可能性が推察される。しかしながら、本
まで低下した際には、極度に皮膚の血管が収縮し
研究では被験者数が ? 名と非常に少なく、皮下脂
ていたと考えられる。
肪厚 の 多 い 群(>=7G∼>D7A)G 名 と 少 な い 群
る対向流性熱放散低下がある
>@=G)
血管運動による調節が、寒冷による熱放散の増
(?7G∼L7?)D 名に分かれてしまい、その中間
大に対処できなくなると、生体はふるえによって
である皮下脂肪厚が >B 前後の被験者がいな
熱産生を増大させて核心温を維持しようとする。
かったために、その関係を明確にすることはでき
本研究において、風雨条件では代謝性産熱量が対
なかった。
照および風条件に比べて明らかな増加を示した。
主観的温冷感は、ほとんどの被験者において G
ふるえの有無に関する被験者の自己申告では、風
条件ともに曝露後−G の「寒い」のスケールを申
雨条件ではすべての被験者において風雨への曝露
告していた。本実験で用いた ? 段階のカテゴリー
開始後 >B 分でふるえを感じたという申告があっ
スケールではその分類が詳細ではなく、各寒冷曝
た。風雨条件ではふるえによる代謝性産熱量の増
露条件における主観的温冷感の違いを明らかにす
加と血管運動による熱遮断性の増大の両作用によ
ることは難しかったかもしれない。
り、核 心 温 が 維 持 さ れ て い た と 推 察 さ れ る。
冷水浴などによる寒冷曝露に対するヒトの熱放
T123'27 の報告によると、ふるえによる最
散反応を観察している多くの先行研究 GC@>L==)で
大の熱産生量は温暖安静時の代謝量の約 D7@ 倍で
は、曝露時間を > 時間前後から = 時間程度まで実
あることが示唆されている。したがって、本研究
施している場合がほとんどである。水温 =B℃の
では対照条件の約 =7> 倍であったことから、更に
冷水浴を行った先行研究 =B)では、曝露開始後 =B
熱放散が増大したとしても、ふるえによる熱産生
分までは核心温の低下は非常に緩やかであった
量を増加させ核心温を維持させることが可能であ
が、=B 分以降 >BB 分まで > 時間当たり約 =℃の低
ると考えられる。また、本研究で用いた低温およ
下が生じたことを報告している。本研究では、曝
び風雨の寒冷曝露環境下では、 = T(' 以上の身
露時間はわずか =B 分間であった。このことが低
体活動を実施することで、ふるえを生じさせず、
温環境下に風雨が加わった条件において、核心温
核心温を保つことが可能であると推察される。
が維持された原因となったかもしれない。長時間
本研究では、代謝性産熱量から熱放散量を減ず
の寒冷曝露により生体の耐寒反応に疲労が生じ、
ることにより⊿貯熱量を算出した。すべての条件
ふるえによる熱産生や外層部の熱遮断性が低下す
で累積した⊿貯熱量は曝露開始 =B 分後に大きく
る可能性も考えられる C>@=G)。また本研究では、低
減少しており、特に風雨条件では約−>D>? OH=
温環境を室温 >A℃として実験を実施したが、更
まで減少していた。このことは風雨条件では多量
に低い環境温では核心温の低下が観察された可能
の熱が身体から損失していたこととなり、⊿貯熱
性も考えられる。しかしながら、本研究での低温
量から体内温の低下度を推定すると、約 =7CD℃と
および風雨の寒冷曝露条件では全員の被験者がふ
なった。しかしながら、本研究においては身体の
るえを生じていたこと、また主観的に極度の寒さ
深部での核心温の低下は観察されず、貯熱量の減
を感じていたことなどから、これ以上の厳しい寒
少が身体の深部からではなく、主に外層部から熱
冷環境条件での実験実施は倫理的な観点から不可
を奪ったことによると推察される。核心温を維持
能であると考えられる。
@)
(>@)
本研究の被験者は成人男性を用いたが、被験者
の性別、年齢、身体組成および体力状況によって
も寒冷曝露に対する生体反応は異なると考えられ
る。特に高齢者は体温調節能力の低下が生じてお
り、寒冷曝露に対するふるえによる熱産生、血管
収縮の程度が弱いため核心温が著しく低下する可
能性がある >=)。近年、中高年者の登山者が急増し
=).'2R#/221((=BBG)FR&1'2*1344"2&16
0&$&'F3$*'$17U$O"fh
(C)ADL6AAB7
G)U2$EU*'S(:2O(>@??)FT50$2
'"134949&$'3$43343$&&
:"1+$7O.002R&1'2ij(>)@G6>BB7
D)U$% O\$"Q."$'O()1'.(>@CG)F<6
'$421''3:"140'F$9''3'
ていることを考えると、今後は中高年者を対象と
k9''0'7.#.4",4llm>>G6
して低温および風雨による寒冷曝露時の熱放散反
>DB7
応について検討する必要があると考えられる。そ
A)U$.E(>@GA)F842$$17Ⅱ 7(&9$*
の際には、本研究と同様な寒冷曝露条件では実施
0$$3&'''3&:"17O#$n=C>6=LB7
不可能であると考えられ、実験で用いる環境条件
C)E'22OI*.O,+ #R"23)U(>@@L)F
についても今後更に検討を加えながら研究を進め
8&$$*2$1$'0''"$*'$242"6
ていく必要がある。
総 括
本研究は、登山中の悪天候の条件を想定し、健
康な成人男性において低温および風雨による寒冷
+$$''7O.002R&1'2og
(>)=BD6=B@7
?)E0$)T(>@LC)F.44"2&10&$F&"3$
$34'7JFE0$)TS5R,4&:T27
"'8'''"&$2'$'')$*$U'27
L)<U'<<U'TQ(>@>A)F(&'$3&
'$34$37.$4&J$"lgLCL6LL>7
条件を =B 分間曝露することが安静時における熱
@)T123'<.( ''RXXI'\\':$4&\\
放散反応に及ぼす影響について検討した。その結
(=BB>)F'$"0$"430 '&9$*6
果、風雨により身体からの熱放散は増大したが、
'1&'7T$O.002R&1'2oi>BB6>BC7
それに伴う核心温の低下は観察されなかった。こ
>B)\2"Q,8$91\/(0O(>@@>)FE$46$'4
のことは寒冷曝露に対するふるえによる代謝性の
4220'F4220'''32''4"+&$'4
熱産生量増加や末梢の血管収縮および皮下脂肪な
どによる身体外層部の熱遮断性が影響していたと
推察された。今後は更に寒冷曝露および被験者な
どの条件を変えて詳細に検討することで、より安
全な登山活動実施のための基礎データを得る必要
がある。
3$'94'7O/#9",$9hh>G@6>D@7
>>)8$"1O<<U'TQ(>@GL)F(&4&43'$*
$""4947O#$lgDC>6D?A7
>=)入来正躬(=BBG):体温生理学テキスト.初版,文光
堂,東京.
>G)入来正躬,田中正敏(>@LC):偶発性低体温症の現況.
日生気誌,jf,AG6A@7
謝 辞
本研究を進めるにあたり、実験の補助をしていただきま
>D) ;94JUU2*&O(>@L@)F(&4$'"51*06
0$'F&$'"5$20$''$42":
4'934$7T$O.002R&1'2goAAC6AC=7
した中京大学生命システム工学部の河合亮作氏、中島由貴
>A)#'&\**.R(>@?B)F<$49234946
氏、また実験の被験者としてご協力いただきました中京大
9&$'3$4334:10&&2':27O
学生命システム工学部の学生の皆様に厚く御礼申し上げま
.002R&1'2jn(C)LGB6LGL7
>C)R'42S/\$''J,28,Q$ 2((>@AC)F
す。
本研究に対して助成を賜りました財団法人明治安田厚生
事業団に深謝いたします。
参 考 文 献
>).'2R#E0:22J(S:$OR4S$<R
E$$2':+&&4 ''3' 32"'":"1
"'1LL'2"$'78U2jo>CA6>?C7
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第 AB 回健康医科学研究助成論文集
平成 ?C 年度 DD7A?∼EF(AFFC7E)
高齢者における指の運動機能トレーナビリティの評価
青 木 朋 子* 福 岡 義 之* 木 下 博**
ÁÂÃÄÅÃÆÄÇÄÁÈÉÊËÉËÄÅÌÍÂÉÎÊÁÊÂÉËÏÅÁÄÊÅÉÄÅ
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'-3&$="1#1.#1-&(&. #/(#(&"##1("22#17
緒 言
持が重要であることはいうまでもない。%"/-6-(
"67>)が実施した手指の日常動作にかかわる一連の
健康で自立した生活を送ることは多くの高齢者
運動・感覚機能テストでは、加齢に伴い運動・感
にとって切実な願いである。自立した生活を送る
覚機能が顕著に低下することが報告されている。
ためには更衣動作や食事動作が不可欠だが、これ
また、,"#1"#"("#-("67?@)が各指と親指を対向さ
らの動作を行ううえで手指の運動・感覚機能の維
せたときの最大摘み力(静的運動機能)を高齢者
熊本県立大学環境共生学部食健康科学科 !"/ 6(.G#4&#-#("6"#$)8(/)/-#/-H&-.-/( &"6*#4-&(.' "(' "(I"2"#7
大阪大学大学院医学系研究科予防環境医学専攻 J&"$ "(-)/6.+-$/#-K""*#4-&(K""I"2"#7
健康スポ−ツ科学講座
* ** (AA)
と若年者で比較した研究では、どの指においても
のばらつきが小さくなったと報告している。しか
高齢者で最大摘み力が低下することが明らかと
しながら、彼らの研究はトレーニング前後でのパ
なっている。一方、個々の指の動的運動機能の加
フォーマンスを比較したものであり、どのような
齢変化についての報告は極めて少ない。
過程でパフォーマンスが改善されたのかは不明で
本研究者らはこれまで、最速タッピング課題を
ある。また、高齢者と若年者で向上の程度や向上
用いて健常若年者を対象に個々の指の動的運動機
の過程に違いがあるのかどうかについても明らか
?0@)
。ピア
にされていない。更には彼らの研究では、トレー
ノ等の訓練経験のない一般若年者に示指、中指、
ニング課題と測定課題が異なっており、トレーニ
環指、小指のうちの ? 指(#16-0.#1-&("22#1)
ング課題自体のパフォーマンスがどの程度向上す
あるいは A 指の交互操作($ 86-0.#1-&("22#1)
るのかについても明らかにされていない。また、
による最速タッピング課題を行わせた運動学的研
課題を行う効果器や課題の困難度など、課題の特
能を調べる一連の研究を実施してきた
究 では、#16-0.#1-&("22#1 において ? 指で素
性によって、トレーニング効果やその過程が異な
早い運動を行う機能は示指で最も高く環指で最も
るのかどうかについても不明である。そこで本研
?)
低いこと、そして $ 86-0.#1-&("22#1 において
究では、健常な高齢者と若年者を対象に、? 指お
はその機能が他指との組み合わせに依存して大き
よび A 指交互操作による最速タッピング課題のト
く変化することが明らかとなった。更に、HG
レーニングを約 ? か月間(週 E 回 B 週間,計 ?A
(陽電子断層撮像法)を用いた脳イメージング研
回)にわたって実施し、指の運動機能トレーナビ
究 で は、一 般 若 年 者 が A%L の 速 度 で 運 動 を
リティについて調べることを目的とした。特に、
行った場合に、タッピング運動が困難な #16-0
(?)トレーニング過程でパフォーマンスがどのよ
.#1-&("22#1 の 環 指 や $ 86-0.#1-&("22#1 の 環
うに変化するか、
(A)高齢者と若年者でトレーナ
指 M 小指では、タッピング運動が容易な示指や
ビリティが異なるのか、
(E)最速タッピング課題
示指 M 中指に比べて、一次運動野、一次感覚野、
を実施する効果器(示指 47 環指)や困難度の違
運動前野、補足運動野、小脳などのより多くの脳
い(示指,環指,示指 M 中指,環指 M 小指の比
領域 で の 活動 が 認 め ら れ る こ と、$ 86-0.#1-&
較)によってトレーニング効果が異なるのかどう
@)
("22#1 で は #16-0.#1-&("22#1 に 比 べ て 運動前
か、(B)トレーニング課題である最速タッピング
野や小脳などのより広い領域での活動が必要とな
課題のパフォーマンスおよびトレーニング課題で
ることなどが明らかとなった。本研究者らが最近
はない最大摘み力発揮課題のパフォーマンスがど
実施した、ピアノ等の訓練経験のない一般高齢者
のように変化するのか、について検討した。
B)
を対象とした研究 では、若年者に比べて高齢
方 法
者ではタッピングが遅くなり、特に #16-0.#1-&
("22#1 の環指や $ 86-0.#1-&("22#1 の環指 M 小
A.被験者
指など、イメージング研究において若年者でより
被験者は、本研究への参加に同意を得られた健
広い脳領域の活動が必要とされた条件で加齢によ
康 な 右利 き ?A)の 高齢者 5 名(男性 > 名,女性 ?
る機能減退が顕著であることが明らかとなった。
名:>C7?±E7P 歳)と若年者 5 名(女性 5 名:AA7E
高齢者が自立した生活、更には趣味やボランティ
±B7E 歳)であった。被験者は、脳や手指の疾患
ア活動など幅広い活動が可能な高い NKO(生活
歴がないことを条件とした。また、通院や投薬な
の質)を維持するためには手指の運動・感覚機能
どの治療中でないことも確認した。高齢者群の被
が不可欠だが、老化によって低下した手指の運動
験者は全員在宅であり、現在もシルバー人材セン
機能がトレーニングによって向上するのかどうか
ターの仕事やスポーツ活動などを行っているアク
ついて調べた研究は極めて少ない。,"#1"#"("#
ティブな高齢者であった。本研究は、熊本県立大
-("67?B)は、高齢者が A つの小球を掌で回転させる
学生命倫理委員会の承認を得て実施された。
という課題を P 週間にわたってトレーニングした
際に、トレーニング後には最大下の力発揮時の力
B.測定課題と実験装置
トレーニングを開始する前(実験 ? 回目)に、
(AE)
図 ? .実験装置とタッピング課題時の被験者の写真
!17?7H/( &-.(-(#1"22"&"( "#$ 89-/(’
2( &-$ &#1
(-("22#1("7
トレーニング前のデータとして、最速タッピング
図 A .実験装置と右手の位置の鏈略図
!17A7)/-"(/$"1&".(-(#1"22"&"( "#$2(#.
(-&1("#$7
課題と最大摘み力発揮課題の測定を実施した。被
験者は実験に関する十分な説明を受けた後、実験
実験者がフォースセンサーからの信号をオンライ
用机に向かって座り、最速タッピング課題を行っ
ンでモニターし、被験者が教示どおりに課題を実
た(図 ?)。最速タッピング課題は、右手の指示
施できていなかった場合にもやり直しの試行を行
された指で 5 秒間にわたってできるだけ速く、し
わせた。しかしながら、こうしたやり直しの試行
かもできるだけ等間隔にフォースセンサーを叩く
は @ 試行までとし、やり直しの試行でも教示どお
というものであった。$ 86-0.#1-&("22#1 では、
りに課題を実施できなかった場合には、その被験
指定された A 指で交互にフォースセンサーを叩く
者はその条件を実施できないとみなした。最大摘
ように指示した。また、課題中はタッピングを
み力発揮課題では、母指と各指を対向させたとき
行 っ て い る 以 外 の 指(##0("22#1.#1-&)を
の 最 大 の 摘 み 力 を 油 圧 ピ ン チ メ ー タ ー(+J0
フォースセンサーから離さないように指示した。
BE?FQT,日本メディックス)で測定した。最大
タッピング時に母指、示指、中指、環指、小指の
摘み力発揮課題の条件は、示指−母指、中指−母
各 指 で 発 揮 さ れ る 力 の 測 定 に は、@ 台 の 小 型
指、環指−母指、小指−母指の B 条件であった。
フ ォ ー ス セ ン サ ー(*)OF>0%@0@FQ0R0!S,テ ッ
これらの各条件を A 試行ずつ実施した。条件の順
ク技販)を使用した(図 A)
。手首動作の影響を
序は各被験者でランダム順とし、疲労の影響を最
最小限にするために手掌用台、前腕用台、手首用
小限にするため、試行間には十分な休憩をとり、
ベルトを使用した。実験条件は、若年者を対象と
更に B 条件を一通り実施した後で A 試行目の測定
した先行研究 の #16-0.#1-&("22#1 において最
を行うようにした。トレーニング最終日(実験
もタッピングが速かった示指と最も遅かった環
?E 回 目)に も ト レ ー ニ ン グ 前 と 同 様 に、最 速
指、$ 86-0.#1-&("22#1 において最も速かった示
タッピング課題と最大摘み力発揮課題の測定を行
指 M 中指、最も遅かった環指 M 小指の B 条件と
い、これをトレーニング後のデータとした。
?)
した。被験者は、実験 ? 回目にこれらの B 条件を
実施し、これをトレーニング前の値とした。B 条
C.ト レ ー ニ ン グ 課 題 と ト レ ー ニ ン グ ス ケ
ジュール
件 は 各 被 験 者 で ラ ン ダ ム 順 に 提 示 し、#16-0
トレーニング前の測定を実施した日(実験 ? 回
.#1-&("22#1 は 各 条 件 ? 試 行、$ 86-0.#1-&("20
目)の A ∼ E 日後からトレーニングを開始した。
2#1 は各条件 A 試行を実施した。教示どおりに
すべての被験者を対象に、測定課題と同じ最速
実施できなかったと被験者が報告した場合には、
タッピング課題 B 条件を、週 E 回の頻度で B 週
その条件の試行を休憩後に再度行わせた。また、
間、計 ?A 回にわたってトレーニングさせた。毎
(AB)
回のトレーニングでは、異なる B 条件 ? 試行ずつ
段階的に困難度の異なる B 条件を、条件という ?
を ? セットとし、休憩を取りながら ?F セットま
要因で統計処理を行った。トレーニング過程( ?
で繰り返した。そして、十分な休憩の後、トレー
∼?E 回目)の変化については統計処理を行わず、
ニング前に実施した上述の測定課題のうち、最速
結果の描写のみにとどめた。最大摘み力について
タッピング課題のみの測定を行った。
は、トレーニング(A 水準:トレーニング前とト
D.データ分析と統計処理
レーニング後)、被験者群(A 水準:高齢者群と
最速タッピング課題時のフォースセンサーか
若年者群)
、条件(B 水準:示指−母指,中指−
らのデータは、ストレインアンプ(R)0FE,
母指,環指−母指,小指−母指)の E 要因で、三
テック技販)によって増幅した後、<R 変換器
元配置分散分析(トレーニングと条件が被験者内
(東 陽 テ ク ニ カ)で デ ジ タ ル 信 号 化 し、コ ン
要因,被験者群が被験者間要因)を実施した。
ピュータ内に取り込んだ。これらのデータは、
タップ間間隔、最大摘み力の両方において、条件
+/&.(U "6V"/>7F(+/&.()お よ び
の主効果、条件と他の要因の交互作用が有意だっ
+OV,AFF>"(サイバネットシステム)の自
た場合には、必要に応じて - の多重比較を
作プログラムによって解析した。これらの解析で
行った。有意水準はすべて @ %とした。また、結
は、タ ッ ピ ン グ 開始 ? 秒後 か ら の 連続 し た ?F
果においては、それぞれの被験者群において、課
タップ($ 86-0.#1-&("22#1 では各指 @ タップ)
題を実施可能だった全被験者の平均値と標準偏差
の平均値を分析データとして使用した。また、
を示した。
$ 86-0.#1-&("22#1 では A 試行、A 指の平均値を
分析データとして用いた。指とフォースセンサー
の接触開始と終了は F7FEQ を閾値とし、指示され
結 果
A.トレーニング前後の比較
た指の接触開始から次の接触開始までの時間を
図 E、V には、それぞれ高齢者群と若年者群に
「タップ間間隔」とした。5 名の高齢者群被験者
おける最速タッピング課題各条件のトレーニング
のうち、@ 名はトレーニング前からトレーニング
前後のタップ間間隔の平均値を示した。高齢者群
後の ?E 回の測定において、すべての条件を教示
においては、トレーニング後のタップ間間隔がト
どおりに行うことが可能であったが、残り A 名に
レーニング前に比べて、示指、環指、示指 M 中指、
ついては ?E 回を通して環指 M 小指の課題を教示
環 指 M 小 指 で そ れ ぞ れ ?E(>7E %)
、>A
どおりに行うことができなかったため、分析デー
(?C7?%)
、EF@(BP7F%)
、>?5(BP7E%)短縮
タから除外した。最大摘み力発揮課題では、各条
した。一方、若年者群における示指、環指、示指 M
件 A 試行のうち、値が大きかったほうを分析デー
中指、環指 M 小指のトレーニングによるタップ間
タとして用いた。
間 隔 の 短 縮 は、そ れ ぞ れ AB(?A75%)
、BA
最速タッピング課題におけるタップ間間隔につ
(?57?%)
、?AA(E?75%)
、ECF(BP7@%)と、
いては、トレーニング(A 水準:トレーニング前
高齢者に比べ、示指を除くすべての条件でトレー
とトレーニング後)
、被験者群(A 水準:高齢者
ニング前後の変化が小さい傾向が認められた。
群 と 若年者群)、条件(B 水準:示指,環指,示
三元配置分散分析の結果、トレーニング(!=
指 M 中指,環指 M 小指)の E 要因で、三元配置
5F7PP)と 条件(!=B>75@)に そ れ ぞ れ 有意 な 主
分散分析(トレーニングと条件が被験者内因子,
効果が認められた。また、トレーニングと条件
、被験者群 と 条件(!=E7>C)の 間 に
被験者群が被験者間因子)を実施した。我々の (!=E@7@>)
先 行 研 究 E@)に お い て、#16-0.#1-&("22#1 と
有意な交互作用がみられた。トレーニングと条件
$ 86-0.#1-&("22#1 は運動特性や課題時に使用す
の A 要因について - の多重比較を行った結
る脳領域が異なることが明らかとなっているが、
果、示指 M 中指、環指 M 小指ではトレーニング
将来的にリハビリテーションや老化防止を目的と
前に比べてトレーニング後のタップ間間隔が有意
して臨床場面などで最速タッピング課題を活用す
に短くなったが、示指および環指ではトレーニン
ることを考慮し、ここでは最速タッピング課題の
グ前後で有意差が認められなかった。また、被験
(A@)
Intertap interval(ms)
1800
B
Before
After
1600
1800
Before
After
1600
Intertap interval (ms)
A
1400
1200
1000
800
600
400
200
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
I
R
IM
Condition
0
RL
I
R
IM
Condition
RL
図 E .トレーニング前後における各指のタップ間間隔平均値
:高齢者、V:若年者。:、+、,、O はそれぞれ示指、中指、環指、小指を指す。
!17E7+-"##(-&("2#(-&4"6.-"/("22#1/#$(#8-.&-"#$".(-&(&"##17
=-6$-&6 89-/("#$V= #1 89-/(7:+,"#$O#$/"(-(-#$-;$$6-&#1"#$6((6-.#1-&&-2-/(4-67
Maximum pinch force(N)
14
Before
After
12
B
10
8
6
4
2
14
Maximum pinch force
( N)
A
Before
After
12
10
8
6
4
2
0
0
I
M
R
L
Finger
I
M
R
L
Finger
図 B .トレーニング前後における各指と母指の間の最大摘み力平均値
:高齢者、V:若年者。:、+、,、O はそれぞれ示指、中指、環指、小指を指す。
!17B7+-"#"; 2#/.&/-.-"/.#1-&"1"#((-( 88-.&-"#$".(-&(&"##17
=-6$-&6 89-/("#$V= #1 89-/(7:+,"#$O#$/"(-(-#$-;$$6-&#1"#$6((6-.#1-&&-2-/(4-67
者群と条件の A 要因について - の多重比較
た。これらの図からは、高齢者群と若年者群の両
を行った結果、環指 M 小指では若年者に比べて
方において、どの指の最大摘み力もトレーニング
高齢者のタッピングが有意に遅かったが、他の条
前後で増大していないことが読み取れる。三元配
件では被験者群間に有意差が認められなかった。
置分散分析の結果、被験者群(!=??7EF)および
本研究では、高齢者と若年者でトレーニング効果
条件(!=??P75@)に有意な主効果が認められた。
が異なるのか(トレーニングと被験者群の交互作
また、被験者群と条件の間に有意な交互作用が認
用)、更にはその被験者群でのトレーニング効果
め ら れ た(!=P7EB)。こ れ ら の 要 因 に つ い て
の違いが条件によって変化するのか(トレーニン
- の多重比較を行った結果、示指−母指、中
グ,被験者群,条件の交互作用)についても検討
指−母指、環指−母指では、若年者に比べ高齢者
したが、これらの要因に有意な交互作用は認めら
の最大摘み力が有意に強かったが、小指−母指で
れなかった。
は被験者群間に有意差は認められなかった。最大
図 B、V には、高齢者群、若年者群それぞれ
摘み力においても、最速タッピング課題のトレー
の最大摘み力のトレーニング前後の平均値を示し
ニングによって発揮力が増大するのか(トレーニ
(A>)
表 ?.高齢者と若年者におけるトレーニング前および ?A 回のトレーニング中のタップ間間隔平均値と標準偏差
"86-?7+-"##(-&("2#(-&4"6"#$("#$"&$$-4"(#8-.&-(&"##1"#$$ &#1(3-64-0$"(&"##1.&(--6$-&6"#$ #1 89-/(7
T#$(#
-# 8-&.(&"##1
F
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X #1 ?C?YAC
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,
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X #1 ABEYPC
EEFY?FC E?>YCP EFEYPC AP>Y55 APCYC? APPYPA A@BY@E APAY5C A5BY5@ A>BY>E A@FY@B A>FY5@
AE>Y>B AAEY@F A?BYE> AFCYE5 AF5YEC AF@YE@ A?BYB@ AFCYEB AF>YEA AF>YEP AFAYEB AFAYE>
:+
XG6$-&6 >E5YAFF @?AY?@A B>>Y?5B B?@Y?5F B?@YAF> ECPYAF> E>>Y?PA E@PY?@@ E>5Y?P? E>FYAFA EAEY?@> EBFY?P@ EE?Y?CF
X #1 EPBY?C? E>CY?@A EB5Y?E@ ACEYP5 A>CY5@ A5EYCF A@?Y5> A>5YPE A5EYCE A5BY?FB A@AYC5 A>AYCE A>EY?F@
,O
XG6$-&6 ?A5>YBFB P>CYEFC CBAYAC@ C??YEP5 P@5YEAC 5>PYEFF 5@EYA>5 55FYA@A >5CYA@5 5?EYE>B >5@YA55 >EAYA@A >@CYA>@
X #1 PFBYE>F 5?@YEE5 >FPYAEC @EAYAEB @AEYA5B @FEYAB@ B5EYAFP B5EYAAF BBAY?>@ BE@Y?BP BA5Y?5P BA?Y?@5 B?BY?@A
:、+、,、O はそれぞれ示指、中指、環指、小指を指す。数字の F はトレーニング前、?∼?A の数字はトレーニング回数
を表す。
:+,"#$O#$/"(-(-#$-;$$6-&#1"#$6((6-.#1-&&-2-/(4-67-.1 &-F#$/"(-8-.&-(&"##1"#$(-.1 &-
.&?(?A#$/"(-# 8-&.(&"##17
ングの主効果)、高齢者と若年者でトレーニング
り、高齢者のほうがわずかにトレーニングによる
効果が異なるのか(トレーニングと被験者群の交
タップ間間隔の短縮が大きい傾向がみられた。こ
互作用)
、更にはその被験者群でのトレーニング
うした高齢者にみられたより大きなトレーニング
効果の違いが指によって異なるのか(トレーニン
効果 は、$ 86-0.#1-&("22#1 の 示指 M 中指 と、
グ,被験者群,条件の交互作用)について検討を
環指 M 小指では更に顕著であった。環指では、
試みたが、これらに有意な主効果および交互作用
高齢者におけるトレーニング前後でのタップ間間
は認められなかった。
隔短縮 が >A で あ っ た の に 対 し、若年者 で は
B.トレーニング過程における変化
表 ? に は、示 指、環 指、示 指 M 中 指、環 指 M
B? であった。それに比べて示指 M 中指では、
高齢者におけるトレーニング前後でのタップ間間
小指それぞれの条件における実験 ? 回目から ?E
隔短縮 が EF>、若年者 で は ?A? で あ っ た。
回目までのタップ間間隔の高齢者群と若年者群そ
更に、環指 M 小指では、トレーニング前後での
れ ぞ れ の 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 示 し た。#16-0
タップ間間隔短縮が高齢者で >?5、若年者で
.#1-&("22#1 の示指においては、高齢者群と若年
ECF であった。また、示指 M 中指、環指 M 小
者群の両方でタップ間間隔がトレーニングによっ
指においては、高齢者と若年者の両方で、実験 >
てほとんど変化していない。また、?E 回の測定
回目(トレーニング @ 回目)頃までに急激にタッ
を通じて、高齢者と若年者のタップ間間隔に差は
ピングが速くなる傾向もみられ、特にトレーニン
ほとんどみられない。次に、#16-0.#1-&("22#1
グ開始から A 週間程度までの比較的早い時期に大
の環指においては、両群ともにトレーニングによ
きなトレーニング効果が現れた。
るわずかなタップ間間隔短縮がみられた。また、
?E 回の測定を通じて、若年者と高齢者の間には
考 察
わずかな差がみられ、常に高齢者のタップ間間隔
本研究では、健康な高齢者と若年者を対象に週
のほうが長かった。しかしながら、高齢者と若年
E 回 B 週間(計 ?A 回,約 ? か 月間)の 最速 タ ッ
者の差はトレーニング前に 5C だったのに対
ピング課題のトレーニングを実施し、指の運動機
し、トレーニング後には @P と差が縮まってお
能に及ぼすトレーニングの効果を調べた。先行研
(A5)
究 ?B)においては、高齢者が小球を掌で回転させ
トレーニング前後で変化は認められなかった。つ
るという課題をトレーニングした際の等尺性力発
まり、本研究での最速タッピング課題のような指
揮時(静的運動機能)の力の変動性について調べ
の素早い運動のトレーニングによっては最大発揮
たものがあるが、個々の指の動的運動機能のト
力に変化は起こらないといえる。また、最大摘み
レーナビリティについて調べたのは本研究が初め
力の結果からは、本研究でみられたトレーニング
てである。また、本研究では、これまで明らかに
による最速タッピング課題でのタップ間間隔短縮
されていなかった、(?)トレーニング過程におけ
に、指の筋力増大はほとんど関与していないこと
るパフォーマンスの変化、
(A)高齢者と若年者の
が推察できる。しかしながら、高齢者に小球を掌
トレーナビリティの違い、
(E)異なる効果器を用
で回転させる課題をトレーニングさせた先行研
いる条件や困難度の異なる条件におけるトレーナ
究 ?B)で は、等尺性力発揮時(静的運動機能)の
ビリティの違い、(B)トレーニング課題自体とそ
力のばらつきが小さくなると報告されていること
れ以外の課題のパフォーマンスの変化についても
から、本研究で実施したトレーニングによっても
検討した。その結果、以下のことが明らかとな
最大下の力調節能力が改善された可能性は考えら
っ た。
(?)高 齢 者 と 若 年 者 の 両 方 に お い て、
れ、今後検討する必要がある。
$ 86-0.#1-&("22#1 の示指 M 中指、環指 M 小指
A つ目の要因には、トレーニングによって指間
では実験 > 回目頃までに急激なタッピング周波数
の解剖学的・神経生理学的な相互作用の影響が小
の上昇がみられた。(A)高齢者においては若年者
さくなった可能性が考えられる。? 指による独立
に比べて、トレーニング前後での向上の程度が大
的な運動は、総指伸筋の腱間結合や、一次運動野
きい傾向がみられたが、群間で有意な違いは認め
からの指令の発散($4-&1-#/-)などが原因で制
られず、高齢者と若年者で指の運動機能トレーナ
限されると考えられている 5?5)。こうした要因や
ビリティに有意な違いはみられなかった。
(E)高
指の独立性がトレーニングによって変化する可能
齢者と若年者の両方で、トレーニングによって全
性は考えられるが、トレーニングによる変化につ
体としてタッピングが速くなる傾向にあることが
いて調べた研究は全くなく、今後タッピングを
明らかとなったが、このトレーニング効果は条件
行っていない指(##0("22#1.#1-&)による発揮
に よ っ て 異 な り、$ 86-0.#1-&("22#1 の 示指 M
力を検証するなど、より詳細な研究が必要であ
中指と環指 M 小指の条件においてのみ有意なト
る。
レーニング効果が認められた。
(B)トレーニング
E つ目の要因として、トレーニングによる中枢
前後に測定した各指の最大摘み力においては、最
および末梢の神経系機能の変化が考えられる。
速タッピング課題のトレーニングによる有意な変
我々が以前行った HG 研究 @)の結果から、日常
化は認められなかった。このように、高齢者と若
生活での使用頻度が少なく ?F?E)、一般若年者にお
年者の両方において、最速タッピング課題のト
いてタッピング運動が困難な環指や環指 M 小指 ?)
レーニングによって指の運動機能が向上するこ
の条件は、示指や示指 M 中指での場合に比べて
と、またその機能向上は $ 86-0.#1-&("22#1 の
一次運動野、一次感覚野、運動前野、小脳などの
ようにより難しい課題で顕著であることが明らか
より多くの脳領域での活動が必要となることが明
となった。
らかとなっている。一般若年者において環指や環
本研究において観察された指で素早い運動を行
指 M 小指の課題時により多くの脳領域の活動が
う能力のトレーニングによる向上には以下の E つ
必要とされるのは、これらの指を日常生活で用い
のメカニズムの関与が推察できる。? つ目の要因
る機会が限られているため、トレーニング不足の
に、トレーニングによる指の筋力増大の可能性が
状態にあることが影響していると推察できる。ま
考えられる。高齢者と若年者のどちらにおいても
た、高齢者と若年者を対象に同じ運動を行わせた
筋力トレーニングによって最大発揮力が増大する
脳 .+,: 研究 ?>?C)においては、高齢者ではより広
ことはよく知られている ???P)が、本研究では、高
範な脳領域に活動がみられ、これは衰退した脳機
齢者と若年者の両群において各指の最大摘み力に
能を補う必要性があったためであると結論付けら
(AP)
れている。こうした知見を考え合わせると、本研
年者に比べて試行間のばらつきが大きい可能性が
究においても、トレーニング前には、最速タッピ
考えられ、今後測定方法を検討する必要がある。
ング課題の同じ条件を行った場合にも、高齢者で
また、先行研究 ?@)の結果とは異なり、本研究で
は若年者に比べ、多くの脳領域の活動を必要とし
若年者に比べて高齢者の最大摘み力が大きくなっ
ていた可能性が高い。
たのは、高齢者群の被験者には男性が含まれてい
一方、トレーニング後には同じ課題を行った際
たのに対し、若年者群の被験者は全員女性だった
の脳活動領域が小さくなるという報告がある。
ことが原因として考えられる。このように、本研
% #$0J-&1"$"#$4-T&"#P)は、一 般 成 人
究では異なる性別の被験者が実験に参加したが、
を対象に、複雑なタッピング課題をトレーニング
被験者数が限られていたため、性差については検
させたときに、運動に関連する脳領域の活動が低
討することができなかった。そのため、指の運動
下することを報告している。更に、複雑なタッピ
機能トレーナビリティの性差については今後の課
ング課題を行ったときのピアニストと一般成人の
題である。
脳活動を調べた先行研究 C)においては、ピアニス
本研究では、最速タッピング課題のトレーナビ
トでは運動に関連する脳領域の活動が一般成人に
リティが高齢者と若年者で異なるのかどうかにつ
比べて低かったと報告されている。実際に、ピア
いて調べたが、高齢者で比較的トレーニング効果
ニストと一般成人を対象に最速タッピング課題を
が大きい傾向がみられたものの、被験者群間に有
行わせた我々の研究 A)では、ピアニストでは一般
意な違いは認められなかった。本研究の被験者が
成人に比べて運動機能の指間差が小さいことが明
各群 5 名であったことや、高齢者群においてト
らかとなっている。つまり、ピアニストではピア
レーニング終了後も環指 M 小指の課題を教示ど
ノの長期トレーニングによって指の運動にかかわ
おりに行うことができなかった A 名の被験者を統
る脳機能が発達した結果、一般若年者において広
計処理から省いたことも影響した可能性が考えら
範な脳領域の活動が必要な環指や環指 M 小指の
れることから、今後更に被験者数を増やして、よ
課題においても、より少ない脳領域の活動しか必
り詳細な検討を行う必要性がある。また、A 名の
要としないことが考えられる。こうした一連の知
高齢者が ? か月のトレーニング後も環指 M 小指
見や、本研究でのトレーニングによる変化がト
の課題を教示どおりに実施することができなかっ
レーニング @ 回目までと比較的短期間(トレーニ
た理由についても検討する必要がある。どのよう
ング開始後約 A 週間)で観察されたことなどを考
なメカニズムで指の素早い運動がトレーニングに
え合わせると、本研究においては、一般高齢者と
よって可能となるのかを明らかにするためには、
一般若年者の両群で、トレーニングの結果、主に
今後は高齢者やトレーニング前後の被験者を対象
指の素早い運動にかかわる脳神経系機能が発達し
にタッピング課題の異なる条件時の脳活動を調べ
たことによって素早いタッピング運動が可能に
たり、手指を日常的に訓練している高齢の楽器演
なった可能性が高い。また、上述したように、広
奏従事者の指の動的運動機能を調べたりする必要
い脳領域の活動が必要となる条件(環指 M 小指)
がある。しかしながら、本研究の知見は、指の運
では、トレーニングによって変化する余地がより
動トレーニングが高齢者の指の運動機能向上に役
大きかったために、本研究で観察されたより大き
立つことを示すものであり、今後、老化防止やリ
なトレーニング効果が得られたのかもしれない。
ハビリテーションなどの分野への応用も期待でき
本研究において、最大摘み力は最速タッピング
る。特に、本研究においてトレーニングによるパ
課題のトレーニングによって増大しないことが明
フォーマンス向上がトレーニング開始後約 A 週間
らかとなった。一方、統計的な有意差は認められ
という比較的短期間で観察されたことを考える
なかったが、高齢者ではトレーニング前に比べて
と、素早い運動を行うことが困難な指や組み合わ
トレーニング後に値が小さくなる傾向がみられ
せをトレーニングできるようなゲームや楽器を開
た。今回は各指 A 回の測定を行い、大きいほうの
発することも大変興味深い。実際に現場で利用す
値を分析データとして使用したが、高齢者では若
るためには、今後、どの程度の頻度で、? 回のト
(AC)
レーニングでどの程度の繰り返しを行うとより効
参 考 文 献
果的なのか、またトレーニングによる最速タッピ
ング課題パフォーマンスの向上が日常生活におけ
?)!&"#/H,'#("%(AFFE)=R..-&-#/-#
る手指の運動・感覚機能の改善や向上にもつなが
(-"86(-.#$4$ "6.#1-&$ &#1(-2-&.&"#/-.
るのか、などより詳細な研究を行うことが必要で
."(&-2-((4-("22#14--#(7G;2V&"#,-Z[\
ある。
A5F0APF7
A)! & ")'#("%(AFF@)=!#1-&0("22#1
総 括
"86(#"6-"#$.-"6-2"#("#$## /"#/#0
(&67+(&T#(&6]AE0EC7
本研究では、健康な高齢者と若年者を対象に週
E 回 B 週間(計 ?A 回,約 ? か月間)の最速タッ
ピング課題のトレーニングを実施し、指の運動機
E)'#("%(AFF?)=-2&"6"#$.&/-/"&"/0
(-&(/.."($ 86-0.#1-&#16-0.#1-&"#$"#$("20
2#17G&1#/^^?E>P0?EPE7
能に及ぼすトレーニングの効果を調べた。測定課
B) $"%! "%(("Q'#("%(AFF5)=
題およびトレーニング課題は、#16-0.#1-&("20
1#1-..-/(.#$4$ "6.#1-&(&. #/(#"--$
2#1 の示指、環指、$ 86-0.#1-&("22#1 の示指 M
中指、環指 M 小指の B 条件であった。また、ト
レーニング前後には最速タッピング課題に加え
て、各指の最大摘み力発揮課題を測定課題として
実施した。その結果、以下のことが明らかとな
8."(("22#1(-(7H&1&"_AC?7BQ- &/-#/-+--(0
#1H6"##-&)"#R-1=)/Q- &/-TR0,K+7
@) $"%"""3"+K"K Q%"("L"3"
I'#("%(AFF@)=--..-/(.("22#1.#1-&"#$
$-$..-&-#/-#/&(/"6"#$ 8/&(/"6"/(4(-="
HG( $7G;2V&"#,-Z`abE5@0EPE7
っ た。
(?)高 齢 者 と 若 年 者 の 両 方 に お い て、
>)%"/-6+Gc6.-JV"#1)+T"#.-6$I)(?CCA)=
$ 86-0.#1-&("22#1 の示指 M 中指、環指 M 小指
T"#1-#"#$. #/(##(-"1#1"$ 6("$-(-&#-$
では実験 > 回目頃までに急激なタッピング周波数
8(-I-8-#-(.%"#$! #/(#7H-&d\E5E0
の上昇がみられた。(A)いずれのタッピング条件
E557
においても高齢者と若年者に有意なトレーナビリ
ティの違いはみられなかった。
(E)トレーニング
に よ っ て、$ 86-0.#1-&("22#1 の 示指 M 中指、
環指 M 小指 の タ ッ ピ ン グ 周波数 は 有意 に 速 く
5)%e1-&0,T)/-8-&+%(AFFF)=N "#(.#1(-#0
$-2-#$-#/-. "#.#1-&4--#(=/2"&#.
$1("#$"#$4--#(.&-f -#/-7IQ- &/\a
P@BA0P@@F7
P)% #$0J-&1"$+4#T&"#R(?CCC)=+(&0
なったが、#16-0.#1-&("22#1 の示指、環指に有
6-"&##10&-6"(-$/"#1-#2"#26"-&"#$##0 /"#
意な変化はみられなかった。
(B)最速タッピング
&-4-"6-$8. #/(#"6"1#-(/0&-#"#/-1#"67G;2
課題のトレーニングによって、各指の最大摘み力
V&"#,-Z\[B?50BA@7
に有意な増大は認められなかった。以上の結果か
C)Ie#/-O)"QIH-(-&+(AFFF)=T&(/"6"/(4"(#
ら、高齢者と若年者のいずれにおいても、指の運
#2&"&"#$-/#$"&(&"&-".&/26-;8"# 0
動トレーニングによってその機能が向上するこ
"64--#(#2&.-#"62"#(7V&"#,-T1#
と、またその機能向上は $ 86-0.#1-&("22#1 の
ように難しい課題で顕著であることが明らかと
なった。
V&"#,-Za?550?PE7
?F)'"" &"Q+"( +:%+( 8!+ &"
(?CPF)=H"((-&#.("(/2&--####&"6"#$7
IK// 2-&g^BE50BB@7
謝 辞
本研究を遂行するにあたり、多大な研究助成をいただき
ました財団法人明治安田厚生事業団に深く感謝申し上げま
??)'#1(T'"-#J(AFFP)=,-6"(#28-(3--#460
#("&"/(4"(#"#$(& #(.&#1&"(-$ &#1";"6
46 #("&/#(&"/(## #1"#$6$-&"$ 6(7G &I
226H6Zag>A@0>EF7
す。また、本研究のために積極的にご協力いただきました
?A)K6$.-6$,T(?C5?)=-"--#("#$"#"6."#$0
高齢者の皆様および熊本県立大学学生の皆様に、心よりお
-$#-=(-G$#8 &1#4-#(&7Q- &2/61"]C50
礼申し上げます。
??E7
?E),"9,+"&f T(?CCC)=!#1-&$#"#/-7I%"#$) &1
(EF)
[V&]\^bBAC0BEF7
Q- &"1-g\b?EB@0?E@B7
?B),"#1"#"("#U')-#3U)"1"6UO IS -
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J%(AFF?)=)66-$.#1-&4--#(-;-&/-2&4-
-&"6"#$/-#(&"6/#(&"#(#2-&.&"#/-7I226H6
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+@AA7
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?@),"#1"#"("#U')-#3U)"1"6U -J%
.-/(.&-("#/-(&"##1#(&-#1(23-&"#$-6-/(-$
(AFF?)=G..-/(."1#1#"#$. #/(#7IJ-&"(&
. #/(#"6"86(-.3-#"1-$5@"#$6$-&7I
)/^]?B5P0?BPB7
?>),-/-&J&h/-6'/-&"##%)(-#8&#Tc((-
K'"(& 2(AFF>)=! #/(#"61#./"#/-."1-0
&-6"(-$ $..-&-#/- # (& "/(4"(# 2"((-&#7
J-&"(&)/^g?FP?0?FP57
?C)c %"66-((+(AFF@)=-#.6 -#/-.#&"6 "#
"1-#1#" ("(/4--#(7IH6Z[>F@0>?@7
第 9= 回健康医科学研究助成論文集
平成 ?O 年度 PPC@?∼@D(9::OC@)
内臓脂肪症候群の形成に関与する社会的性差(飲酒習慣)と
生物学的性差の重要度の比較検討
秋 本 紗恵子* 宮 坂 京 子*
ÁÂÃÄÅÆÇÈÂÉÊÂËÊÇÃÄÂÆÌÅÉÁÍÊÎÍÌÏÍÍÉÊÈÂÁÇÅÊÍÉÍÆÊÇËËÍÆÍÉÁÍ
ÅÉÊÎÇÂÂÇÁÅÊÈÍÊÂÉÊÃÍÌÅÎÂÇÁÊÈÉÆÂÃÍ
!"#"$
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(() *)()+),"-#$)"./0-12,3) 40.).5+1-.)63(".,$"
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,30"?DCE%;CF$3(0);-"5+$0$3,7($))$3$(+,0 < 3( ,$"-;1-;8)1+$$,0"$--*-).)63(".5+$0$3,7($(=:<E:")$
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!";) $N*$)(+"*1(),<?@,)-$1((( 1)*"10(-0(,8)*$C
緒 言
求められている。我が国の国民健康・栄養調査結
果によれば、「内臓脂肪症候群が強く疑われる」
肥満ことに内臓脂肪型肥満は 9 次的に糖尿病、
か、あるいは「予備群」の頻度は、男性のほうが
高血圧などの生活習慣病の発生を促す。近年、肥
女性よりはるかに多い。我々は 9::B 年に一般住
満の増加は世界的な問題となっており、特に先進
民 9::: 例の飲酒習慣の割合は、男性が DDCE%、
国では肥満の解消と生活習慣病の発生予防が強く
女性では 9=CA%で、圧倒的に男性のほうが多いこ
* 東京都老人総合研究所生活習慣病ゲノム班 Q+).H0(0I-"$0*"1L"#)+0F$3.R)0*"1L"15+C
(@9)
とを報告した ??)が、一般的に食前や食中に酒を
方 法
饗すると摂食量が増えると思われていることか
ら、飲酒習慣の存在が、男性に内臓脂肪症候群の
発生頻度が高い理由の ? つかもしれないと考え
A.酒飲料の食物の胃排出速度に対する効果測
定
た。
?.対象被験者は、健康な成人男性 ?: 名(年齢
しかし、実際の報告によれば、必ずしも同じ結
9?∼BO 歳)、女性 ?: 名(9@∼BE 歳)
。計画を説明
果が得られているわけではない。?OOO 年、@=:0
し、個々人から、紙面でのインフォームド・コン
のワインまたはビールの飲用は、同量のクリーム
セントを得た。
飲料(脂肪)、蛋白飲料、炭水化物飲料、水など
9.試験方法は、? 週間に ? 回行うこととし、
よりも食事摂取量を増加させることが報告されて
前夜 9? 時以降の食事を禁止(飲水は可)
、当日朝
いる A)。一方で、適度の飲酒は女性の胆石リスク
食抜き(飲水は可)とした。手順は以下のとおり
を減少させる(肥満は胆石の主原因の ? つ)とい
である。
う報告もある O)。また、興味深いことに、男性の
?)呼気前値を採取
場合、飲酒とともに通常どおりの食事をとるた
9)以下の飲料を飲み、B 分後に H?@ ラベルオ
め、結果的にエネルギー摂取過多になるが、女性
クタン酸 ?::* を含むパンケーキ(モコモ
の場合は、飲酒時砂糖など甘いものをとらなくな
コふっくらバニラ,永谷園,卵 ? 個/? 個を
るという報告がある 9)。
追加して作製する,総カロリー 9@@(0,脂
我々のマウスの実験では、脂肪と蛋白含有量が
質含有量 O *)を食べる。
標準飼料より数%ずつ多い飼料を与えると、雄マ
@)?B 分ごとに @ 時間まで呼気を採取する。
ウスでは肥満、高脂血症が形成されたが、雌マウ
@.試験飲料
?:)
スでは影響がみられなかった 。
ワインは醸造酒であるので、アルコール分の他
以上の知見から、雄性の生物のほうが食事によ
に種々の成分(総称:コンジェナー)が含まれて
る肥満の誘導が、雌性よりも容易に生じるのでは
いる。そこで、本実験では、赤ワイン(アルコー
ないか、つまり肥満形成には生物学的性差が非常
ル分 ?9%)D:0、赤ワインを煮沸しアルコール
に重要な要素なのではないかと考えた。そこで、
分をとばし、当初の容積まで水で希釈した液体
食物の胃から十二指腸への排出速度を測定し、男
(コンジェナー)D:0、および、蒸留酒としてウ
女間で比較し、また、酒飲料の胃排出速度に対す
オッカを ?9%に水で希釈して用いた(D:0)。対
る影響を検討した。次に、食事をしながら、酒を
照 と し て、ミ ネ ラ ル ウ オ ー タ ー を 用 い た(D:
飲んだ場合、実際に摂食量が増加するかどうか
0)
。
を、9 時間の宴会食を設定して検討した。
=.呼気中の H?@ の含有量を測定することで、
一方、日本人にはアルコールの中間代謝産物で
パンケーキの胃からの排出速度を算出する。胃排
あるアセトアルデヒドを代謝できないアルデハイ
出速度測定は、日本平滑筋学会機関誌 ?@)に記載
ド 脱 水 素 酵 素(2Q/9)変 異(2Q/9*9)を
されている方法に基づいて行った。測定の要素は
もつ個体が =B%前後に存在する 。変異体は顔面
① 各測定時間における胃内残存率の経時的な変
紅潮、動悸、嘔気が生じるため、大量飲酒ができ
化、② 試験食の B %が排出されるのに要した時
ない場合が多い。食事と飲酒のパターンも、変異
間(0*)
、③ 試験食の 9 分の ? が排出され
体と野生型とでは異なる可能性がある。そのた
るのに要した時間(L?>9)
、④ 曲線において、最
め、2Q/9 遺伝子変異の解析も行った。
大値に達するまでの時間(LJ)の = 種類を算
これらの実験は、東京都老人総合研究所におけ
出することが推奨されているが ?=)、L?>9 と LJ
る倫理委員会で承認を得た。また、個別に実験の
は相関することが報告されている ?D)ので、LJ
説明を行い、紙面による承諾を得た。
の値を比較検討し、一元配置分散分析で有意差検
D)
定を行った。
(@@)
B.ALDH2遺伝子変異解析
解析には唾液および口腔粘膜を綿棒でこすって
?B)
得たサンプルを用い、既報の方法(&M2I 法)
%dose/h
18
16
female
14
12
で解析した。
10
C.飲酒と摂食量の関係の検討
?.対象被験者は健康な成人男性 ?9 名と女性 B
名(9B∼D= 歳)が 参 加 し た。計 画 を 説 明 し、
個々人から、紙面でのインフォームド・コンセン
male
8
6
4
2
0
0
30
60
トを得た。
9.? 週間に ? 回、計 @ 回実施した。
@.実際の手順としては、試験当日の朝食、昼
食のメニューはそろえ(食パン,カレー,うど
ん,など毎回材料が変わらないメニューを選択)
、
?@ 時以降の食事摂取、?D 時以降の水分摂取を禁
止した。?O 時に試験会場に集合し、身長(初回
のみ)、体重測定のあと、決められた席に着席し、
?O 時より飲食を開始し、9? 時の終了まで、提供
90
120
150
180
Time, min
図 ? .水を飲んだあと H?@ オクタン酸を食べたときの、
呼気中 H?@ 排出量の時間変化の男女別結果
男女とも =?:。標準誤差は、図には記さないが、男性 :
∼?CE?、女性 :∼?CB: であった。
M*C?CH-*$-()$.H?@-,)-.)-
;)*$0 .0$3,7($( = ?:.)
(-)C
L-$ ) )))$):−?CE?.)0 :−?CB.).0
$3,7($1 $ ) ))),)$)$-;-.*3)C
飲食物を自由に摂取する。和食コース料理で通常
かし、コンジェナーは、水の影響とほとんど差を
より多めに提供した。試験 ? 回目は、アルコール
認めなかった(図 9)。
飲料を自由に摂取し、試験 9 回目以降は、各人の
@.女性群 に お け る ワ イ ン、ウ オ ッ カ、コ ン
? 回目の摂取アルコール量に合わせた飲料を 9 時
ジェナーの影響
間で飲用することとした。食べ残しは、袋に入れ
女性群では、ワイン、ウオッカ、コンジェナー
保管し、残量を測定し、飲酒量、摂食量を算出し
のいずれも、立ち上がりをわずかに遅延させ、
た。
ピークまでの時間が延長したが、ピーク値は水と
飲料は、赤ワイン、ウオッカ(エタノール濃度
差がみられなかった(図 @)
。
を赤ワインと等しくなるように水で希釈)、水
=.ピークを示すまでの所要時間(LJ)の比
(ウオッカの摂取液体量と同じ量とする)とした。
結 果
較
表 ? に LJ を示した。男性群ではウオッカ、
赤ワインで、水に対して有意の延長がみられた
A.摂食量と胃排出速度に対する食前酒の効果
が、女性群ではいずれも有意には至らなかった。
〔H?@ オクタン酸を用いた胃排出速度の男女差〕
図 ?∼@ で示した結果と同様に、女性のほうが男
?.水の影響
性よりもいずれの場合においても LJ が長い傾
水を D:0 飲んだあとに H?@ オクタン酸を含む
向にある。しかし、男女間の検定では、ワインに
パンケーキを食べた結果を図 ? に示した。D: 分
お け る S 値 は :C:B:B を 示 し て い た が、水、ウ
までの曲線はほとんど重なっており、差はみられ
オッカとも、有意差には至らなかった。
ない。しかし、それ以降になると、男性群は、O:
分前後でピーク値を示し、その後低下していっ
B.ALDH2遺伝子型
2Q/9*?>9*? は 男性 は E 名、女性 は @ 名、
た。一方、女性群は更に曲線は上昇を続け、?9:
2Q/9*?>9*9 は 男性 は 9 名、女性 は = 名、検
分前後でピーク値を示した。
査拒否は男性 ? 名、女性 @ 名であったが、問診上
9.男性群 に お け る ワ イ ン、ウ オ ッ カ、コ ン
2Q/9*9>9*9 のタイプは参加していないと判
ジェナーの影響
ワイン、ウオッカの飲用は、前半の立ち上がり
を遅延し、更にピーク値の低下を生じさせた。し
断された。
C.飲酒と摂食量の関係の検討
現在、生物学統計を行っている。予測に反し、
(@=)
%dose/h
%dose/h
18
18
16
16
14
14
12
12
10
10
8
8
6
6
4
4
2
2
0
0
0
30
60
90
120
150
180
0
30
Time, min
図 9 .水、ウオッカ、赤ワイン、コンジェナーを飲んだ場
合の男性被験者における呼気中 H?@ 排出量の時間
水の結果は図 ? と同じ。白丸:水、四角:コンジェナー、
三角:ウオッカ、黒丸:赤ワイン。コンジェナーの結果は
水とほとんど同じ。標準誤差はコンジェナー :∼:CAE、ウ
オッカ :∼:COE、赤ワイン :∼:COA。
M*C9CH-*$-()$.H?@-,)-0
$3,7($.)-*$$.;)1(*)18 1 ) ;C
L-)$30$.;)))+) 3( .)-.*3)?CL-)<
$30$.(*) ;))$0)(--)CL-$<
) )))$):−:CAE.)(*)1:−:COE.)8 1 :
−:COA.)) ;1 $ ) ))),)$)$-;-
.*3)CV+()(0$G;)1$63)$G(*)1)*0$G8 1
(0$ ()(0$G) ;C
表 ? .曲線 に お い て、最大値 に 達 す る ま で の 時間
(LJ)()の男女別比較(±T)
L,0?CH+)$.LJ(),;0 .<
0$3,7($(±T)C
4)
H*)
Z #0$3,7($X
?::CBYECA
?::C9YDC@
?9?CBYDCO[
& ;
?9=CBYBC:[[
M0$3,7($
?9@C:Y??CA
?9?CAY?@CD
?9?CDY?=C@
?=?C:YDC=
$*.(0"-*-)--803.;) **-*-)
-803$.;) (*)C&$+(8803$ ..),;0 .0$3,7($C
*
60
90
120
Time, min
150
180
図 @ .水、ウオッカ、赤ワイン、コンジェナーを飲んだ場
合の女性被験者における呼気中 H?@ 排出量の時間
水の結果は図 ? と同じ。白丸:水、四角:コンジェナー、
三角:ウオッカ、黒丸:赤ワイン。コンジェナー、ウオッ
カ、赤ワインの順で立ち上がりが遅延した。標準誤差はコ
ンジェナー :∼?C?A、ウオッカ :∼?CBD、赤ワイン :∼:COA。
M*C@CH-*$-()$.H?@-,)-.0
$3,7($.)-*$$.;)1(*)18 1 ) ;C
L-)$30$.;)))+) 3( .)-.*3)?CH*)1
8 1 ) ; 0" ?@HJ+)$$ 3)*-.)$
EBCL--,)"+(".) ;;$$)*$CL-
$ ) )))$):−?C?A.)(*)1:−?CBD.)8 1
:−:COA.)) ;1 $ ) ))),)$)$-;
-.*3)CV+()(0$G;)1$63)$G(*)1)*0$G
8 1 (0$ ()(0$G) ;C
考 察
H?@ 呼気試験法は、簡便でかつ非侵襲的に行え
ることから、消化器機能検査法として、臨床研究
に広く用いられるようになった。H(炭素)は通
常 H?9 で あ る が、空気中 に は 約 ?%程度 H?@ が
含まれている。放射性同位元素と異なり安定で、
生体に対して害を生じず、現在は、尿素にラベル
することで胃内ヘリコバクターピロリの検出の保
険診療適応となっている。
水飲用の場合のほうが、ワイン、ウオッカ飲用の
研究項目 ? では、卵に H?@ ラベルオクタン酸
場合よりも摂食量が多い傾向にある[水 ?9@=±
を混ぜ込み、胃排出速度を算出したが、結果は意
D9(0(±T)
,ワイン ?9?@±=B,ウオッカ
外なことに、水飲用実験において、排出曲線は男
?9?B±BA]。しかし、アルコールのカロリーを加
女間にずれがあり、女性のほうが胃排出速度が遅
算すると、全体の摂取エネルギー量としては、ア
い傾向があった。しかし、統計学的には有意差を
ルコール飲用群のほうが高くなりそうである。ア
得るまでには至らなかった。H?@ 排出には、性差
ルコール摂取量はワイン D@±B、ウオッカ BA± B
や U#F は影響しないという欧米での報告 B)があ
*>*(±T)であった。女性の数が少ない
り、男女間に差が存在するのか否かについては、
ことから、性別での比較検討はまだ行っていな
更に個体数を増やし、慎重に確認する必要がある
い。
と思われる。
(@B)
酒飲料が胃排出速度を遅延させるということ
いため、結果にバイアスがかかる可能性も否定し
は、既 に 報告 が あ る @1=)。し か し、欧米人 は 2<
きれないが、アルコール飲料の食欲への影響の有
Q/9 の野生型がほとんどを占めるため、実験の
無という点では、飲酒時の摂食量に性差がみられ
際の飲酒量も多く、彼らの報告でもかなり大量の
るかどうかの結果が待たれるところである。
アルコールが負荷されている。我々の実験への参
総 括
加 者 は、2Q/9 の 遺 伝 子 型 は、野 生 型 が 多 い
が、ヘテロタイプも含まれており、男女ともに、
卵を含むパンケーキの胃から十二指腸への排出
ほとんど飲まない、または付き合い程度が多く、
速度を H?@ を指標に測定すると、男女間で、排
多くても週 @ 日程度の飲酒習慣であり、連日の晩
出速度に違いがありそうであることがわかった。
酌の習慣をもつ者はいなかった。今回の我々の検
アルコールは、男性では胃排出速度を遅延する
討では、D:0 程度という少量でも、男性ではア
が、女性では男性ほどはっきりした結果にならな
ルコールによる胃排出遅延効果が認められた。
かった。
胃内容物が上部小腸に到達すると、ヒトでは脂
今回の実験では、男女とも年齢の開きが大き
肪分解物(脂肪酸)が HH! を遊離させ、摂食抑
く、また人数も多いとはいえない数であったの
制効果 を 示 す と い う 生理的調節機構 が 存在 す
で、更に人の数を増やして検討する必要があると
る
。すなわち HH! は血中から視床下部の満腹
E1?9)
考える。
中枢に作用するとともに、胃に分布する迷走神経
参 考 文 献
求進路を介して胃排出速度を遅延させ、結果とし
て満腹効果をもたらす。また最近、食欲増進ホル
モンであるグレリンの血中濃度が、飲酒後減少す
るということも報告されている ?)。グレリンは胃
で合成され血中に分泌される食欲増進作用をもっ
たただ ? つのホルモンで、HH! とは逆の作用を
有する。
男性ではアルコールによる胃排出速度遅延効果
?)H0$$ )..51Q0$$V1U)$)!1&\7 )
(9::B)NF-,)"..(.0(-0*-)0$()
)0CT3)5T ()01]^_1E=@<E=EC
9)H0 KR1R83((T1&TU1+.)#51
&$)U1+K)MT1R) $T14004(?OO?)N0(<
-0)0 ,$"; C5H0`3)1^a1?O<BBC
がみられたのに比し、女性でははっきりしなかっ
@)M)1`(-, F1(- )1/) )/1*)
た。その理由は現時点では不明である。もし、ア
#Z(9::B)NL-..(.-0 0(-0(,8)*$
ルコールの負荷量を増量して、女性でも有意の遅
*$)(+"*.$0 0$-3$C0(-01ab1
延効果が認められれば、女性の場合、アルコール
に対する、HH! やグレリンなどのホルモン分泌
や自律神経系の感受性が男性より低いという可能
性が考えられる。
?AE<?O@C
=)M)1L"$$1/) )/1,)#Z(9::=)NT..(
.-0 $0(-0(,8)*$*$)(+"<
*-3$C(5R$))01cd1D@A<D==C
B)/00*1Z(-\*&1R ;H1!$30$1
食欲という面から考えると、胃排出速度の速い
/
男性のほうが、女性より速く満腹効果が発現する
*..03 $ $0 $-0-"$3,7($ ) はず、ということになる。しかし、今回測定した
,"?@H,)-$$N.03(.*1$J , "$$
のは、脂肪を含む固形物(パンケーキ)の胃排出
速度である。アルコールそのものも HH! 分泌を
促すことがわかっており E)、研究項目 9 の、飲酒
量、摂食量を制限せずに提供して行った実験で
)(-51M\0$(-%&1e,)T(9::D)NR$)(+"<
JC5R$))0/+01_]1?A@9<?A@AC
D)/*3(-1#$3$-1#3)"#1L*1/"$- #(?OOB)N0(-0 0 -" -" )*$+0")<
+-$$ -)$.)0(-0$C5I$"(-)"1]^_1
?9?O<?99?C
も、水飲用群がアルコール飲用群よりも摂食量が
E)FK,fM14L1H$g128($5(9::=)NL-
多い傾向があったことから、アルコール飲料その
(-$$.--,)"..(.-0*$)(
ものの胃排出速度の測定も行う必要があると考え
+"*808"+HH!)(+)$C&*30I+1]]h1
ている。研究項目 9 の実験では、女性の数が少な
?:?<?:BC
(@D)
A)2-<!$#1II1F00\8)#1Z)T
?@)中田浩二,青山伸郎,中川 学,川崎成郎,白坂大
(9::9)N$$($., "$$ J ,$";-
輔,財 裕明,瓜田純久,北川 靖,小山茂樹,宍戸
+-"$(0(8"1. (-($10(-01 $*
忠幸,楠 裕明,加藤元嗣,羽生信義,春間 賢,本
-?OA9<?OOEMF`&F!3 $C5H0`3)1h^1
郷道夫(9::9):H?@ 呼気試験法胃排出機能検査の現
A:O<A?EC
状と未来.5-#3$(0&$)(-(日本平滑筋学会
O)2K#M1L$H51+.)#51&TU1H0 K
R14004H1R83((2(9::@)N0(-0(<
機関誌),5EB<5O?.
?=)中田浩二,梁井真一郎,羽生信義,川崎成郎,青木照
$3+)0)$.(-0("$(";C
明(9::?):H?@ 呼 気 試 験 に よ る 胃 排 出 機 能 検 査.
5H0`3)1hi1@@O<@=EC
?@H< 呼気試験の実際.H?@ 医学応用研究会,=D<BB.
?:)#"$!1!1V- #111
?B)-/1' '1`*;#1V3,&1 L1
L*3(-1M3$-(9::E)N3$(+,0",$<
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`3)#,1aN?=( N?:C??AD>?E=@<E:EB<=<?=)C
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2)C5T+ 0*"1]b($3++0)1=D<BBC
(9::B)NF(80 -" -" )*$<9()$ ?D)宍戸忠幸,山口武人,尾高健夫,相 正人,三橋佳
-)$.+()((()*$)$5+$
苗,山 口 和 也,新 保 泉,駒 嘉 宏,税 所 宏 光
0++30CI()$1cb1?<BC
?9)#)0"5T(9::?)NQ()$ . ;-**C5
R)0U0(# (1^j1A?<AA
(9::9):H?@ 法における胃排出能評価の指標について
―LJ を中心に.5-#3$(0&$)(-(日本平
滑筋学会機関誌),5?=O<5?B=.
第 IJ 回健康医科学研究助成論文集
平成 DH 年度 RR>FK∼JE(IBBH>F)
減量を目的とした有酸素性運動の実践および食事制限が
肥満者の血液流動特性に及ぼす影響
片 山 靖 富* 中垣内 真 樹** 中 田 由 夫***
沼 尾 成 晴**** 大河原 一 憲***** 堀 米 仁 志***
田 中 喜代次***
ÁÂÂÁÃÄÅÆÇÂÆÈÁÉÇÊËÃÆÁÌÁÉÃËÅÁÆÈÍÎÆÎËÁÄÈÉÏÆÉÁÅÄÉËÃÄËÇÍ
ÂÇÉÆÁËÄÆÇÅÅÆÇÍÆÊÇÇÎÆÂËÎËÄÏÆËÍÆÇÊÁÅÁÆÁÍ
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長崎大学大学教育機能開発センター 5))*&',0T)7)=:),M),)*<*/%')*N0&,!$%#3,7)* !$%#!S:,>
筑波大学大学院人間総合科学研究科 U*0)(&'=<M:*)'),7)/,(&),&)!3,7)* <2#6!P6*#!S:,>
**** 早稲田大学スポーツ科学学術院 ?&= <(:*(&),&)!V)03,7)* !(!S:,>
*****
国立健康・栄養研究所 $,=P,)</)=',0$*,!2# !S:,>
* ** *** (FE)
検討が必要と考えられる。そこで本研究では、肥
緒 言
満者を対象にエネルギー摂取量の変化を考慮した
長期間に及ぶ血液の流動力学的特性(以下,血
うえで、有酸素性運動の実践が血液流動性に及ぼ
液流動性)の悪化は、血管壁にかかるズリ応力を
す効果を検討することを目的とした。同時に、運
FD)
高めるため、血栓や動脈硬化を生じさせる 。肥
動実践よりも減量効率・減量幅が大きく、身体活
満者や冠危険因子保有数の多い者では、血液流動
動量に変化のない食事制限群を設けた。食事制限
DJ!ID)
。また、血液流動性は循環器系
群では運動実践とは異なる血液成分の変化が起こ
疾患 の 罹患率 や 死亡率 を 高 め る 独立 し た リ ス
る可能性があるため、運動実践の効果と比較する
クファクターとなる可能性が報告されてい
ことで、血液流動性改善のメカニズムについての
性が悪化する
る
IB!II!IK!JC)
。更には、血液流動性の悪化によるメカ
ニカルストレスがプラーク破裂や血小板凝集を誘
知見を得るとともに、運動実践のみの有効性を検
討した。
発し、最終的には循環器系疾患の発症につながる
研 究 方 法
可能性が報告されていることから DI)、血液流動性
の改善、および良好な状態の維持が望まれる。
A.対象者
健常者を対象とした運動療法によって血液流動
本研究の対象者は、日本肥満学会 FI)の定める
性が改善する可能性を示す研究がいくつか報告さ
肥満 の 定義 に 基 づ く 60 ,0);(L"P)が
れている D!C)。そのメカニズムとしては、有酸素性
IA 以上の肥満者であり、かつ運動が禁忌となる
運動の実践が血液凝固系蛋白質に関与することが
疾患を有さない男性とした。対象者は、茨城県 2
示唆されている。また、有酸素性の運動トレーニ
市および 2 市近隣の市町村自治体の広報誌や地
ングを積んでいる者では血液流動性が良好であ
域情報誌を通じて、自らの意思によって集まっ
ことから、有酸素性運動の実践が血漿量を
た。運動教室には CB 名が参加登録したが、出席
増加させ、その結果として、血液流動性が改善す
率が AB%に満たない者や家庭の事情により教室
ると考えられる。更に、有酸素性運動の実践の効
を完遂できなかった者 C 名をドロップアウト者と
果として、中性脂肪や血糖濃度の低下、高比重リ
し、対象者の参加率は HB>B%であった。この C 名
ポ 蛋 白 コ レ ス テ ロ ー ル('%'@0), =::*),
と血液流動性に影響を及ぼすことが予想される薬
&'=))*=O/TW@M)濃度の増加がある。これら血
剤(抗血栓剤,血糖降下薬など)を服用している
る
FF)
液成分の量(濃度)や構造、機能が血液流動性に
者 H 名 を 除外 し た JA 名(AB>C±DB>E 歳)を 本研
関係があるとされていることから、肥満者におい
究の対象とした。食事教室には IK 名が参加登録
ては、これらの変化が血液流動性に影響を及ぼす
したが、家庭の事情により教室を完遂できなかっ
とも考えられる。したがって、運動実践に伴う血
た者 J 名(対象者の参加率は EA>I%)を除外した
液流動性および血液成分の変化を検討すること
IF 名(JK>E±DB>K 歳)を本研究の対象とした。す
で、血液流動性が改善するメカニズムを明らかに
べての対象者には教室参加に先立ち、本研究の目
できるものと考えられる。
的と教室および測定内容を説明し、書面にて研究
一方で、運動を実践しても血液流動性が変化し
参加への同意を得た。なお、本研究は筑波大学に
なかった報告も散見される IA!FJ)。5),'*)=>FJ)
帰属する倫理委員会の承認を得た。
は運動の効果について一致した結果が得られない
B.運動教室
原因として、運動以外の要因が影響していると考
運動教室の開催頻度は週 F 回であり、D 回当た
察している。片山ら DJ)は、食事制限による減量
り HB 分のプログラムを F か月間(全 FH 回)提供
とともに血液流動性が改善することを報告してお
し た。教 室 で は、徒 手 体 操 や 柔 軟 体 操 に よ る
り、エネルギー摂取量の減少に伴う減量が血液流
ウォーミングアップを DA 分間行い、その後 CB 分
動性に影響していると考えられる。また、血液流
間の主運動、DA 分間のクーリングダウンを行っ
動性に改善効果が認められた研究の多くは、健常
た。主運動の内容は、ウォーキングやジョギング
者を対象にしたものであり、肥満者を対象とした
などの有酸素性運動を中心とし、それら以外にも
(FH)
自体重を負荷とした腕立て伏せや腹筋などのレジ
タ ニ タ 社製)を 用 い て B>D#% 単位 で 測定 し た。
スタンストレーニングやレクリエーション運動、
L"P は体重(#%)を身長()の I 乗で除すこと
ゲーム運動などを織り交ぜた。クーリングダウン
で求めた。体脂肪率は体脂肪計(/L?@FBB,オム
では、徒手体操や柔軟体操を行った。運動中は怪
ロン社製)を用いてインピーダンス法により算出
我や事故が起こらないように配慮した。主運動の
した。
運動強度は、L*% の自覚的運動強度(*,%<
I .加速度計によるエネルギー消費量、身体活
:)*&)7)0);)*,O59N) が DF∼DA(や や き つ い
F)
動量、歩数の測定
∼きつい)になるよう導いた。また、心拍数測定
対象者に加速度センサーを内蔵した一軸加速度
器(CDB,9=* 社製)を用いて主運動中の心拍
計(ライフコーダ,スズケン社製)を配布し、毎
数を確認した。介入期間中における運動教室のな
日のエネルギー消費量、身体活動量、歩数を測定
い日の運動については特に指示を与えず、対象者
した。加速度計は、介入前の I 週間と介入期間中
の自主性に任せた。また、エネルギー摂取量の減
の F か月間にわたって腰部に装着するよう指示し
少に伴う体重減少の影響を考慮するため、対象者
た。加速度計は起床から就寝まで入浴時を除き常
には介入前の食習慣を維持するよう指示した。
時装着することとした。対象者には、加速度計の
C.食事教室
装着状況および毎日の運動実践状況を記録させ
食事教室の開催頻度は週 D 回であり、D 回当た
た。その記録と加速度計によって測定されたデー
り HB 分のプログラムを F か月間(全 DF 回)提供
タを照らし合わせて、加速度計を装着していな
した。栄養・エネルギー摂取状況の把握と効果的
かった日や装着時間が DI 時間に満たない場合、
な減量を支援するために四群点数法 DB)を用いた
水中運動など加速度計を装着できない運動や自転
("452 ダイエット JB)理論を導入した。四群点数
車運動のように加速度計が感知できないような運
法は食品に含まれる栄養素によって食品を J つの
動を行った日の身体活動を統計処理の対象から除
群(D 群:卵・乳製品,I 群:肉類・魚介類・豆
外した。
製品,F 群:野菜類・芋類・海藻類・果実類, J
F .食事・栄養調査
群:穀類・油脂類・砂糖などの調味料・その他の
運動群のみ、介入前と介入中の食事・栄養調査
嗜好品)に 分類 し、EB#&= を D 点 と し て 栄養計
を行った。調査に先立ち、すべての対象者に食
算 す る 方 法 で あ る。D 食 当 た り ACB#&=、D 日
事・栄養調査の記録の仕方について詳細に説明し
DCEB#&= を目標とした。その内訳は、D 群から D
た。介入前と介入期間中(教室開始から H および
点(EB#&=)、I 群 か ら I 点(DCB#&=)
、F 群 か ら
DB 週目)のそれぞれにおいて、平日(仕事のあ
D 点(EB#&=)
、J 群 か ら F 点(IJB#&=)
、合計 K
る日)I 日と休日(仕事のない日)D 日の各 F 日
点(ACB#&=)の範囲内で栄養バランスの良い食
分、計 C 日分の食事内容を詳細に記録させた。可
事を摂取するよう熟練したスタッフが懇切丁寧に
能な限り通常の食習慣を反映するような日を記録
指導した。特に脂質と糖質の摂取を適量に留め、
日にするよう指示した。エネルギー摂取量の算出
蛋白質やビタミン、ミネラルが不足しないよう留
に際し、記録内容が不十分である場合は管理栄養
意した。参加者には毎食の食事内容をできる限り
士が個別に聞き取り調査をした。これを基に、食
詳細に、日記に記録するよう求めた。参加者は週
事療法栄養計算ソフト(エクセル栄養君 7)*J>B,
D 回、食事記録を提出し、その記録を基にスタッ
建帛社製)を用いて、熟練した管理栄養士がエネ
フがエネルギー摂取量のチェックと、栄養バラン
ルギー摂取量を算出した。なお食事群は介入前お
スや食習慣の適正化に向けた個別指導を提供し
よび介入中の詳細な食事・栄養調査を行わなかっ
た。
たが、教室期間中、週に D 回の食事日記の提出を
D.測定項目
義務付け、エネルギー摂取量の過不足や栄養バラ
D .身体的特徴
ンスの偏り、エネルギー摂取量を抑える調理方法
身長は身長計(UIBB,ヤガミ社製)を用いて
や食材の選び方などについて指導を受けている。
B>D& 単位で測定した。体重は体重計(2L?@AAD,
そのときに、エネルギー摂取量が概ね DCEB#&=
(JB)
䌂
になっていることを確認している。
Glass cylinder
J .血液流動性
䌃
本研究では、血液標本作製のための採血に先立
ち、対象者には測定前日の激しい運動と採血の
DI 時間前から食事を控えるよう指示し、絶食状
䌁
20 cm
D)血液標本の作製
Vacuum
pomp
Reservoir
Microscope
態で午前中に採血を行った。対象者は測定場所に
集合し、DA 分程度の座位または仰臥位で安静状
態を保った後、医師または看護師が正中肘静脈か
Saline
Filter
Stopping and opening cock
Microscope
Direction of passage
ら採血を行った。採血には ID ゲージの翼付き採
血 針((X@IDMW,テ ル モ 社 製)と 三 方 活 栓
Glass plate
4.5 µm
(2(@25D,テルモ社製)
、ポリプロピレンの採血
用シリンジ(((DB(,テルモ社製)を用いた。生
体内での血液は凝固しないものであると仮定し、
Silicon
Silicon substrate
substrate
へ パ リ ン(ノ ボ・へ パ リ ン DBBBB 単 位 GDB=)
B>D=(血液標本の A %量)を、血小板活性によ
る血栓形成を抑制する )' =),)0,))*@&)&
7 µm
&0@I#=(NT24@I)の 入 っ た I = 真 空 採
血管(X9@TBAI,テルモ社製)にあらかじめ注
入し、そこに採取した血液 D>H= を分注したもの
を血液標本とした。
血液流動性は、&*&',,)=** <=.,= +)*
DK@DH)
を用い血
("M@?4$,日立原町電子工業社製)
液細孔通過時間を測定した。"M@?4$ を用いた
血液細孔通過時間測定 の 再現性 や 信頼性 は 高
30 µm
図 D ."M@?4$ とマイクロチャネルアレイ(フィルタ)
の概要図
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く DF!DA)、粘度 と も 高 い 相関関係 が 認 め ら れ て い
る FC)。ま た、"M@?4$ を 用 い た 血栓形成 の 評価
流路を作り出している(図 D)
。フィルタとガラ
に有用である可能性も報告されている DD)。なお、
ス基盤が作り出す流路に、毛細血管にかかる圧力
健常男性の血液細孔通過時間は JB∼AB 秒と考え
と等しくなるよう IB&/I- 圧をかけ、血液標本
られる DA!DC!FK)。血液流動性の測定は、採血後すぐ
DBB= をこのフィルタに通過させるのに要する時
に行うことを原則とし、すべての測定は、採血後
間(血液細孔通過時間)を計測し、血液流動性を
の時間経過が測定誤差に影響を与えないとされる
評価した。血液細孔通過時間は、各測定の直前に
D 時間以内に終了することとした
計測した生理食塩水 DBB= の通過時間を DI 秒と
FB!FK)
。すべての
液体の流動特性は温度の影響を受けることから、
して以下の式により補正計算を行った。
測定中および測定までの血液標本の保存は室温
血液細孔通過時間
(秒)
=血液標本 DBB= の 細
(IA 度)とした。
I)"M@?4$ の測定操作手順
孔通過時間
(秒)
×DI(秒)
G 生理食塩水 DBB= の
細孔通過時間
(秒)
"M@?4$ は、細孔通過法の原理を用いた血液
測定に使用したフィルタは、測定ごとに超音波
流動性測定装置であり、約 D & 四方のシリコン
洗浄器を用いて DB 分間洗浄し、フィルタ内部に
単 結 晶 基 盤 に 深 さ J>AY、幅 K Y、長 さ FBY
血球などの詰まりや破損のないことを顕微鏡で確
の流路が総数 EKFC 本あるフィルタ(L=0 C@K,
認した後、再度測定に用いた。なお、操作はすべ
日立原町電子工業社製)を、光学研磨したガラス
て同一検者が行った。
基盤に圧着させることで毛細血管をモデルとした
(JD)
A .血液学・血液生化学検査
化度を評価すべきである。したがって、本研究で
血液流動性測定のための血液を採取する際に、
はヒトの老化を如実に反映する運動時の生理的応
血液学および血液生化学検査のための血液を採取
答や体力水準から健康度・老化度を評価できると
した。検査項目は赤血球(*)06=0&)==O5LM)
される活力年齢を用いて対象者の健康度を評価し
数、ヘモグロビン(')%=6,O/6)濃度、ヘマ
た JD@JF)。
ト ク リ ッ ト(')&*O/&)
、白 血 球(.')
体力年齢は $#*)=>IH)が最初に提唱した
6=0&)==OVLM)数、血小板(:=)=)O9=)数、
概念で、活力年齢と同様に、筋力や柔軟性など複
総コレステロール(=&'=))*=O2M)濃度、
数の体力要素から総合的に体力を評価するもので
/TW@M 濃度、中性脂肪(*%= &)*0)O2U)濃度、
ある。李ら IF!IJ)がこの概念を発展させて算出式を
空腹時血糖(<,%:=%=&)O?9U)濃度、
作成した。なお、活力年齢および体力年齢算出式
フィブリノーゲン(<6*,%),O?6%)濃度であっ
には乳酸性閾値時の酸素摂取量と心拍数が用い
た。これらの分析は江東微生物研究所(つくば
られているが、本研究では、無酸素性代謝閾値
市)に依頼した。低比重リポ蛋白コレステロール
(,)*6&'*)'=0O42)時 の 酸素摂取量(; @
(=.@0), =::*),&'=))*=OWTW@M)濃 度
%),:#)')42O X-IZ42)と 心 拍 数(')*
・
は、?*)0).=0 の式 H)より算出した。
*)42O/5Z42)を代用し活力年齢を求めた。
C .活力年齢・体力年齢
活力年齢および体力年齢の算出に必要な説明変数
種々の疾病の要因となる血圧、血中脂質、血糖
と算出式は補遺に示した。
値など、ヒトの健康や老化過程を反映する健康関
活力年齢および体力年齢の算出に必要となる説
連項目は複数あるが、それらが単独で健康を評価
明変数の情報を得るための測定項目は、収縮期・
できるものではなく、複数の要因から健康度・老
拡張期血圧、2M、WTW@M、2U、反復横とび、閉
表 D .介入前後の身体的特徴
26=)D>9' &=&'*&)*&6)=,),0:'),)*7),,>
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(JI)
表 I .介入前と介入期間中のエネルギー摂取量と身体活動量
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*:)は、メトロノーム音に合わせ CB*: を維持
Blood passage time (s)
65
するように指示した。42 は X@=:) 法を用い、
・
60
酸素摂取量(X-I)に 対 す る 二酸化炭素排出量
・
55
*
*
(XM-I)の上昇開始点および M-I 換気当量の増加
を伴わない -I 換気当量の増加開始点として決定
した I)。この 42 時に相当する心拍数を /5Z42
50
とした。負荷テスト中の換気および呼気ガス諸量
は自動呼気ガス分析器(-; &,4=:',"1,'*0
45
社製)を用いて 6*)'@6 @6*)' 法により分析し、
・
・
分時換気量、X-I、XM-I を FB 秒ごとの平均値と
40
Baseline
Post
して求めた。負荷テスト中は心電計(T(@IDAB,
図 I .介入前後の血液細孔通過時間
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)(Q<B>BA)>
フクダ電子社製)を用いて心電図と心拍数を、更
眼片足立ち、握力(左右の平均値)、伏臥上体反
各測定項目の結果は平均値±標準偏差で示し
ら し、立 位 体 前 屈、垂 直 と び、D 秒 量、腹 囲 径
た。教室前の各測定結果の群間比較には対応のな
(臍位)、肩甲骨下部皮下脂肪厚、最大酸素摂取量
い 検定を、教室前から教室中および教室終了後
・
・
に 59N を連続監視し、データの収集とともに運
動中の事故防止に努めた。介入前および介入後に
おけるこれらの測定は、エネルギー消費量および
食事・栄養調査の終了後に行った。
E.統計処理
、X-IZ42、/5Z
(;=; %),:#)OX-I;)
にかけての各測定項目の変化については対応のあ
42 であった。X-IZ42 は、自転車エルゴメータ
る 検定を施した。運動群と食事群の群間差を検
("0)=EIEN,",*# 社製)を用いた運動負荷テ
証するために、時間(介入前と介入後)および群
・
ストにより計測した。B. で I 分間のウォーミ
ン グ ア ッ プ の 後、主観的限界 に 至 る ま で 毎分
DA. ずつ段階的に負荷強度を高める多段階漸
・
・
を要因とする二元配置分散分析を施した。
結 果
増負荷を用い X-IZ42 と X-I; を測定した JJ)。こ
体重と腹囲径、活力年齢は、6)=,) において
のときのペダルの回転数(*)7=,:)*,)O
両群間で有意な差が認められた(表 D,J)。
(JF)
表 F .介入前後の血液組成
26=)F>/)=%&=7*6=)6)=,),0:'),)*7),,>
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/TW@M!%G0=
WTW@M!%G0=
2U!%G0=
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5LM!DBJGY=
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両群の体重および L"P、体脂肪率、腹囲径が
歩数ともに変化がなかった。エネルギー消費量と
有意に減少し、収縮期・拡張期血圧は、食事群に
身体活動量、歩数に有意な交互作用が認められた
おいてのみ介入前から介入後にかけて有意に減少
(表 I)
。
した。また、それぞれに有意な交互作用が認めら
血液細孔通過時間は両群ともに介入前から後に
れ、食事群のほうが大きな減少を示した(表 D)。
かけて有意に減少(短縮)した(運動群:AF>F±
運動群のエネルギー摂取量には変化がなく、エ
C>I → AB>C±J>D,食事群:AF>K±K>I → AB>F±A>H
ネルギー消費量と身体活動量、歩数は有意に増加
した。食事群はエネルギー消費量、身体活動量、
)。また、有意な交互作用は認められなかった
(図 I)
。
(JJ)
表 J .介入前後の活力年齢と体力年齢およびその構成因子
26=)J>X=%)!:' &=<,)%),0&:,),6)=,),0:'),)*7),,>
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)*6&'*)'=0>
(JA)
血 液 学・血 液 生 化 学 検 査 項 目 は、両 群 と も
検討することも課題となろう。
2M、WTW@M、2U、5LM、/6、/& が 有意 に 減少
運動群は介入期間中の身体活動量が約 IBB#&=G
し、食事群では ?6% も低下した。これらの項目
日、歩数が約 FEBB 歩 G 日の増加が認められた。
の変化に有意な交互作用は認められなかった。
こ の 増 加 は、
「健 康 づ く り の た め の 運 動 指 針
VLM に の み 有意 な 交互作用 が 認 め ら れ た(表
IBBC」に示されている目標値(D 日 FBBB 歩の増
F )。
加)JA)と同等であった。したがって、肥満者にお
活力年齢と体力年齢は両群とも有意に低下した
・
いても、健康づくりのための運動実践で血液流動
(若返った)。体力年齢、X-IZ42、閉眼片足立ち
性は改善することが示唆される。しかしながら、
は有意な交互作用が認められ、X-IZ42、閉眼片
循環器系疾患患者を対象にした先行研究では、体
足立ちは運動群のほうが大きな増加、体力年齢に
力の向上は認められたものの血液流動性の改善に
おいては運動群のほうが大きな減少(若返り)で
は 効 果 が な か っ た と い う 報 告 が あ る IA!FJ)。
あった(表 J)
。
N=@( )0 は結果の異なる原因として、対象者や介
・
考 察
A.有酸素性運動の実践による効果
入期間の違いを指摘している E)。今後は、重度肥
満者やメタボリックシンドロームに該当する者な
ど、疾患別の効果について詳細に検討していく必
血液流動性に対する有酸素性運動の実践による
要 が あ ろ う。ま た、中 垣 内 ら IE)や ('#) ,0
効果について、一致した結果が得られない原因と
U*)),FE)は横断的な調査結果から、運動習慣のあ
して、5),'*)=>FJ)は運動以外の要因が影響し
る者は血液流動性が良好であったと報告してい
ていると考察しており、片山ら DJ)は食事制限に
る。運動効果を十分に得るためには、少なくとも
よる減量とともに血液流動性が改善することを報
数か月間にわたり運動を習慣化することが必要か
告していることから、エネルギー摂取量の減少に
もしれない。ただし、運動実践が血液流動性に悪
伴う減量が血液流動性に影響していると考えられ
影響を及ぼすという報告はない(激しいスポーツ
る。そこで本研究では、運動介入の期間中、エネ
活動中の脱水などによる血液粘度の上昇は除く)
。
ルギー摂取量に変化のないよう統制することで、
先行研究や本研究から運動実践が血液流動性の改
血液流動性に及ぼす運動実践のみの効果を検討し
善に有効であることが示されたことから、重度肥
た結果、運動群は介入前と介入中のエネルギー摂
満者や運動が禁忌となる疾患を有する者には、食
取量に変化がなく、エネルギー消費量、身体活動
事制限による減量によって血液流動性を改善し、
量、歩数が有意に増大していたことや活力年齢、
運動を好む者には運動を習慣化することによって
体力年齢が有意に低下していたことから、血液細
血液流動性を改善あるいは良好な状態を維持させ
孔通過時間をはじめとする各測定項目の変化は運
るなど、両者の使い分けも有効な手段となろう。
動実践のみの効果と考えられた。一方、食事群に
B.血液流動性のメカニズム
おいてはエネルギー消費量や身体活動量、歩数に
血液流動性は、血液を構成する成分の濃度変化
変化が認められなかったことから、各測定項目の
や生理的作用の状態によって変化する。運動を習
変化はエネルギー摂取量の変化によるものと考え
慣化している者は WTW@M や 2U などの血清脂質
られた。血液流動性の改善効果は、食事群および
濃度が基準値内に保たれていることや、/TW@M
運動群で同程度であった。食事群のように大きな
濃度が高いことが多い。有酸素性運動によるト
体重減少が伴わなくても、運動実践によって肥満
レーニングを積んでいる者は、5LM 数や /&、
者の血液流動性が改善することから、運動実践が
/6 濃度が低く、場合によっては貧血傾向である
血液流動性の改善に有効である可能性が示され
者もみられることから FF)、有酸素性運動を中心と
た。ただし、運動群も有意に体重が減少していた
した運動実践によってこれらの血中脂質濃度や
ことから、体重変化そのものの影響は否定できな
5LM 数、/& が減少し、血液流動性が改善すると
い。今後は、運動を介入したときに体重の変化が
考えられた。しかしながら、本研究では運動群の
ないようエネルギー摂取量を調整した群を設けて
5LM 数 や 血清脂質濃度 が 介入前後 で 減少 し、
(JC)
5LM 数と血清脂質濃度のどちらによる影響か、
の、血液流動性は同様の変化が認められたことか
どちらの影響度が強いかを明らかにすることはで
ら、運動実践によって血液流動性を改善できるこ
きなかった。これは、食事群においても同様の結
とが示唆された。ただし、食事群より体重減少は
果であった。仮に血漿量増加による血液希釈が起
小さかったものの運動群においても体重減少が
こったとすれば、5LM を含めすべての血球数は
伴ったことから、体重減少が血液流動性に及ぼす
見かけ上減少するはずである。しかしながら、
影響については今後の課題である。また、血液流
5LM 数や /& は減少しているものの、VLM 数や
動性の改善メカニズムについても、更なる検討が
9= 数には変化が認められなかった。したがって、
必要と考えられた。
血液希釈による影響は小さいものと考えられ、運
謝 辞
動を実践することで造血作用に変化があった可能
性がある。今後、エリスロポエチンなど造血因子
本研究を実施するにあたり、筑波大学大学院人間総合科
を測定することや血漿量の変化を直接測定し、運
学研究科田中喜代次研究室の院生および研究員の皆様に多
動実践による造血作用への影響や造血のメカニズ
大なご協力を賜わりましたことを感謝いたします。また、
ムを明らかにすることも必要となろう。
本研究に対して助成を賜わりました財団法人明治安田厚生
5LM が 全血液 に 占 め る 容量 の 割合(/&)は
事業団に深謝いたします。
JB%以上あることや、5LM の変形能や集合能も
血液流動性に影響を及ぼすことが報告されてい
る A!FH)。一方で血清脂質や血糖の容量は DB%にも
満たないことから、血液流動性に及ぼす影響度
は、5LM のほうが大きいと考えられる J!FA)。しか
参 考 文 献
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し な が ら、WTW@M や 2U、血 糖 は、5LM の 凝 集
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や変形能の低下(赤血球の硬化)を亢進し、血液
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流動性に対し、生理的(質的)な影響を及ぼすこ
とが知られている A!FH)。また、凝固線溶系蛋白質
の影響も否定できない K!DC)。したがって、血清脂
質や凝固線溶系蛋白質のわずかな増加であって
も、5LM に対し生理的作用が亢進し、間接的に
血液流動性に影響を及ぼすことも考えられる。な
お、VLM 数 に の み 交互作用 が 認 め ら れ た が、
VLM 数が基準値内である場合は血液流動性にほ
とんど影響を及ぼさない IC)。したがって、食事群
における血液流動性の改善が VLM 数によるもの
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だとは考えにくい。血液流動性に及ぼす各血液成
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分の影響度(貢献度)については、更に詳細な検
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討が必要である。
ま
%)0)0),* 61)&>L=0M%=?6*,= !jg!FD@
と
め
肥満男性を対象にウォーキングを主とした運動
介入を行った結果、総エネルギー消費量、身体活
動量、歩数は増大したものの、エネルギー摂取量
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に変化がなかったことから、血液流動性に及ぼす
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運動実践のみの影響が明らかとなった。更に、運
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動群の体重減少量は食事群よりも小さかったもの
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(JK)
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DB)香川芳子(IBBI):五訂版食品 EB キロカロリーガイド
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加,津原多恵,渡邊 豊,稲田貴子,宮楠徳子,志辺 =% ,:),.'& ,&&,%),=')*0))@
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補遺 活力年齢および体力年齢の算出式
(::=)),* Np,<7=%),0:' &=<,)%)>
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第 EF 回健康医科学研究助成論文集
平成 ÁC 年度 RR>FC∼BE(EGGC>S)
老人ホーム向きの転倒骨折予防運動プログラム開発の研究
― Á 年間のコホート内のケースコントロール研究―
牛 凱 軍*
ÂÃÄÅÄÆÆÄÇÂÅÈÆÅÉÊËÌÇÅÈÍÅÃÈÍÂÌÇÊÎÂÊÍÏÎÅÂÃÄÍÏÅÌ
ÇÈÉÌÏÂÌÈÅÌÂÃÅËÂÏÏÍÅÆÏÎÎÅÍÄÄÂÌÈ
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健康維持増進医工学研究分野
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い B=C=ÁG=ÁW)。薬はよく効くが副作用があることと、
緒 言
診断された患者にしか投与しないことから、予防
日本は世界一の長寿国であるが、寝たきりなど
と症状の軽減を目的にして、副作用のない自然療
の障害程度の大きい要介護状態になる人が多い。
法に注目した。音楽療法と園芸療法が、心理・精
転倒骨折は高齢者の要介護状態の主因の Á つであ
神の安定と改善などに効果があることから、抑う
る。特に老人ホーム入居高齢者の転倒頻度は在宅
つ状態を改善する可能性があると予想できる。い
高齢者より著しく高く SA)、医療費と介護負担の増
くつかの先行研究は音楽療法が抑うつ傾向の改善
大要因の Á つである。それゆえに、老人ホーム高
と介入に対する脱落率の低減に有効であることを
齢者の体力維持、転倒予防が大きな課題となり、
示している ÁW)。また、園芸療法もいくつかの抑う
有効な介入方法の開発が急務である。
つの関連因子(不安などの情緒異常,認知機能,
転倒骨折の予防あるいは重症度の軽減には、体
生活の満足度,社会への参与)を改善することを
力 の 維持 と 改善 が 重要 で あ り
ÁE=SG)
、筋力増強 ト
レーニングやバランス訓練などの運動プログラム
ÁS=SB)
示唆している SS)。
本研究の目的は、老人ホーム入居高齢者を対象
。しかし、運動プロ
に、既存の転倒予防運動プログラムに音楽・園芸
グラムの効果については、プログラムそのものよ
療法を加えることにより、転倒予防運動プログラ
りも運動プログラムへの参加や継続が問題視され
ムのみの場合に比べて、どのように転倒リスクお
の有用性が示されている
F=EÁ=EF=SF)
。運動の利点がわかっていても運動
よび体力と抑うつ傾向に影響を与えるか、ケース
プログラムに参加しない、あるいは参加しても中
コントロール研究と非無作為割付比較試験をデザ
ている
EC)
途脱落する例が少なくない 。
一方、近年、抑うつを含んだストレス関連疾患
が急速に増加している EG)。特に老人ホーム入居者
には抑うつ傾向者の割合が高いことが報告されて
ÁD=SE)
インし、検討することである。
研 究 方 法
A.対象者の募集
。抑うつ傾向は、高齢者の疾病の発生・
本研究は有料老人ホーム入居高齢者の心身機能
進行、体力の低下と身体機能障害などに関連して
の維持と向上を目的にした前向きコホート研究に
いる
E)
いる 。更に抑うつ傾向が、運動プログラムの持
基づいたものである。東京と神奈川地区における
続を含んだいろいろな治療と処方の持続などの阻
有料老人ホーム
(
(株)
ベネッセスタイルケア運営,
。そこで、我々は抑うつ傾向の
東京:BF ホーム,神奈川:EÁ ホーム,EGGA 年 C 月
運動の持続への影響に注目し、運動プログラムの
現在)から、非無作為に ÁF ホーム(東京:ÁÁ ホー
実施とともに、抑うつ状態の予防と改善を目的と
ム,神奈川:S ホーム)を抽出した。EGGA 年調査
害要因となる
EW=SD)
した介入を行うことにより、運動プログラムの参
当時、入居高齢者の数は ÁF ホームで、BDD 名で
加率の向上、脱落率の改善が得られると考えた。
あった(図 Á%,図 ÁT)
。我々はすべての入居高齢
結果的に介入効果が改善される可能性がある。し
者に身体、認知の総合機能評価に参加するように
かし、これまでに、老人ホーム入居高齢者を対象
要請した。そのなかで、EWA 名(参加率:FS>W%)
に、運動プログラムに加え抑うつ状態の予防、あ
の高齢者の総合機能が評価された(実施期間:
るいは改善を図るプログラムの効果を検証する研
EGGA 年 W∼C 月)
。
Á 年後の EGGW 年に再度機能評価
究はほとんど行われていない。
を 受 け た 高 齢 者 は EGG 名 で あ っ た(追 跡 率:
抑うつの治療には薬が含まれている場合が多
BC>A%,実施期間:EGGW 年 W∼C 月)。
(DÁ)
B.研究デザイン
べ、コントロールの体力が有意に高レベルにあ
本研究の目的に従って、転倒経験者をケース、
り、体力が転倒リスクに関連することから、マッ
非経験者をコントロールとして定義した。そし
チ因子をベースライン時の総体力スコアにした。
て、転倒の頻度が転倒によるケガ・骨折の発生と
更に、コントロールの人数が十分ではないので、
W)
重症度に関連することから 、ケースの基準とし
総体力スコアの各得点(S∼C 点)のグループ内
て「転 倒 X Á 回/年」
(男 性:=ÁC,女 性:=
の割合がほぼ均等になるようにコントロールを決
DA)、
「転倒X E 回/年」
(男性:=W,女性:=
めた。対象者の除外と選択は乱数表を用い、無作
EC)、
「転倒によるケガ・骨折」の S つを設定し
為に行った。非無作為割付比較試験デザインも
た。以上のデータに基づき、非マッチングケース
マッチング作業を行ったうえで解析した。補助器
コントロール研究をデザインし、運動+音楽・園
具の使用が体力を反映し転倒などに強く関連して
芸療法介入と転倒リスクとの関連を解析した(図
いることから、ベースライン時の補助器具の使用
Á%,分析①)。更に、さまざまな慢性疾患をもっ
を第 Á マッチ因子として、総体力スコアを第 E
ている入居高齢者がほとんどであり、その程度、
マッチ因子として使った。マッチング手順に関し
種類もずいぶん違い、特にベースライン時の体力
ては、まず補助器具の使用の有無をマッチし、次
レベルが転倒の発生に関連することから、ベース
に総体力スコアをマッチした。運動のみの対象者
ライン時の体力レベルをマッチ因子として、マッ
が少ないことから、運動のみの対象者に合わせ
チング作業を行い、比較研究をデザインした(図
て、運動+音楽・園芸療法の分析対象者を選ん
Á%,分析②)。このマッチング作業の目的はベー
だ。男性は Á:Á で運動のみグループと運動+音
スラインの違いによる選択バイアスをできるだけ
楽・園芸療法グループをマッチした。女性は Á:
避けることである。また、運動のみの参加者に比
E で運動のみグループと運動+音楽・園芸療法グ
べ、運動+音楽・園芸療法は体力、抑うつ傾向お
ループをマッチした。Á つのベース対象者に対
よび運動プログラムへの参加にどのような影響を
し、E あるいは S 以上の対象者が選ばれる場合に
与えるのか非無作為割付比較試験をデザインし、
は乱数表による無作為抽出を行った。
検証した(図 ÁT,分析③)。この分析では SS 名
D.運動、音楽・園芸療法の実施内容
の音楽・園芸療法のみの参加者と、ÁD 名の運動
運動プログラムには既存の転倒予防運動プログ
と音楽・園芸療法の未参加者が除外された。分析
ラムが実施された。ÁG 分間の準備運動、ÁG 分間
②と同じように、マッチング処理を行った。そし
の整理運動と SG 分間の体操プログラムあるいは
て、ベースライン時の特徴を考慮し、補助器具の
マシントレーニングを行った。週に E 回の頻度で
使用および体力レベルをマッチ因子にした。マッ
実施された。Á 年間(EGGA 年 W 月∼EGGW 年 A 月)
チングを行った結果、男性 EE 名(運動のみ:ÁÁ
で WG∼WD 回(ホームにより,多少違う場合があ
名,運 動+音 楽・園 芸 療 法:ÁÁ 名)
、女 性 FD 名
る)実施された。運動プログラムの指導は高齢者
(運 動 の み:ÁD 名,運 動+音 楽・園 芸 療 法:SG
の指導経験のある運動指導士が担当した。準備運
名)が最終的な研究対象となった。なお、すべて
動と整理運動は上下肢・体幹のストレッチと呼吸
の対象者に本研究の趣旨や内容を説明し、研究参
の調整などを行った。体操プログラムは自分の体
加への同意を得た。本研究は東北大学医学部・医
重や椅子、タオルおよびセラボール、セラバンド
学系研究科倫理委員会の承認のもとで行われた。
を用いたバランス・握力・下肢筋力訓練と歩行訓
C.マッチング手順
練などを行った。マシントレーニングは歩行器と
ケースコントロールデザインでは、マッチング
自転車エルゴメータなどを用いた筋力・歩行訓練
しない解析(図 Á%,分析①)とマッチングした
を行った。音楽・園芸療法は週に Á 回の頻度で、
後の解析(図 Á%,分析②)の両方を行った。男
資格のある音楽療法士または園芸療法士が担当し
性の場合はケースが少なく、統計による正確な推
た。Á 年 間(EGGA 年 W 月∼EGGW 年 A 月)で 各 FG
定ができないので、マッチングした後の解析は女
回実施された。音楽療法は音楽療法士 Á 名とサ
性に限った。ベースラインの比較ではケースに比
ポート Á 名が Á 回に Á 時間のセッションを行っ
(DE)
A. Analysis
and
655 Nursing home residents in 2007
368 (56.2%) Not interested in participation
287 Received baseline assessments
87 Not re-assessed 1 year later
200 Received re-assessments in 2008
Analysis
: case-control study design
43 Male
157 Female
Sample for fall (≥ one
time: 19; ≥2 times: 8) or
Control participants (n=24 for fall
≥one time/year, 35 for fall ≥2
Sample for fall (≥ one
time: 57; ≥2 times: 29) or
Control participants (n=100 for
fall ≥one time/year, 128 for fall
fall-associated injury or
fracture (n=1)
times/year or 42 for
fall-associated injury or fracture)
fall-associated injury or
fracture (n=9)
≥2 times/year or 148 for
fall-associated injury or fracture)
40 No-matching
to fall data
Analysis
: case-control study design
60, 88 or 108 Included in
analysis (matching to fall
data by baseline total
physical performance scores)
図 Á%.研究の流れ
M<>Á%> "296 47+8 9<)1>
た。愛唱していた曲についてホームスタッフがあ
い、解き放つことを目的とした。園芸療法は園芸
らかじめ参加者・家族から聴き取り、それらの曲
療法士 Á 名とボランティア数名が Á 回に Á 時間、
を中心にセッション内容を構成した。また、季節
集団(ÁG∼EG 名/ホーム)で園芸活動を実施し
の歌、出身地の歌など、参加者全員になじみのあ
た。園芸を通して、参加者が自然に体を動かし、
る曲を用いた。歌唱を行う前に参加者が順に歌詞
会話を楽しみ、収穫の充実感を味わうことで、心
を朗読する歌詞読みを行った。また、歌唱に合わ
身の状態を改善していくことを目的とした。参加
せた両手の自由なリズム表現(手拍子)も行っ
者の心身の状況に合わせ、活動の内容・レベルを
た。セッションは集団(ÁG∼EG 名/ホーム)を
園芸療法士が計画した。また、園芸の知識や技術
基本とし、合唱したり、音楽を鑑賞したり、楽器
を向上させるカルチャー活動が主目的ではなく、
を演奏したり(対象者も参加)
、感想を聴いたり
活動への参加が促されることで参加者の心と体に
することにより、参加者の心の動きを引き出し、
動きを生み出すことを目的とした。また、天候に
一人ひとりが思い思いの形で、自らの感情を味わ
影響を受ける屋外での活動を継続することは、体
(DS)
B. Analysis
655 Nursing home residents in 2007
368 (56.2%) Not interested in participation
287 Received baseline assessments
87 Not re-assessed 1 year later
200 Received re-assessments in 2008
33 Participants in music or horticultural
therapy alone
15 Non-participants in exercise, music or
horticultural therapy
152 Received a selection
(28 male and 124 female)
Male
11 Received exercise
alone (included in
primary analysis)
Female
15 Received exercise
alone (included in
primary analysis)
17 Received exercise
and music or
horticultural therapy
6 No-matching
to exercise group
11 Included in primary analysis
(1:1 matching to exercise group
by baseline physical performance
states, and use of cane or walker)
図 ÁT.研究の流れ
M<>ÁT> "296 47+8 9<)1>
109 Received exercise
and music or
horticultural therapy
79 No-matching
to exercise group
30 Included in primary analysis
(2:1 matching to exercise group
by baseline physical performance
states, and use of cane or walker)
(DF)
力的な負担が必要なため、参加者が限定される。
の時間(秒)を測定した。測定はよく訓練された
そこで、室内での活動を中心としながら、時期を
ホームスタッフが実施し、E 回の測定の速いほう
みて屋外活動を織り交ぜていった。更に、園芸ボ
を分析に使った。数値が低いほどバランス機能が
ランティアと一緒に活動することで、参加者の心
よいことを反映している。
にハリが生まれ、依存的にならずに積極的に体を
E)E 分間歩行距離 D)
動かすことが促された。各ホームで実施されてい
E 分間歩行距離は運動耐容能テストの Á つであ
る体操プログラム・マシントレーニング、音楽・
る。対象者は通常の歩行で D 1 のトラックを往
園芸療法の内容、頻度、時間などは基本的に同じ
復するように指示され、E 分間の歩行距離(1)
ように設定した。運動プログラム、音楽・園芸療
を分析に使った。数値が高いほど運動耐容能がよ
法の内容はすべての参加ホームの間で統一したプ
いことを反映している。
ロトコルが作成され、スタッフに研修させたうえ
S)握力
で、実施された。高齢者たちは運動プログラムま
握力は全身の筋肉のパワーと比例しているた
たは音楽・園芸療法には自発的に参加した。
め、全身の筋力の状態の指標として使われる。市
E.アウトカム
販されている握力計(アナログ,竹井機器工業,
転倒の有無、転倒の回数が主なエンドポイント
新潟)が測定に使われた。対象者が立位または座
である。転倒によるケガ・骨折の有無が二次的な
位(立位ができない場合)となり、握力計の表示
エンドポイントである。転倒は「原因を問わず、
が外になるように握らせ、示指の第二関節がほぼ
無意識に地、床あるいはほかのところに倒れる」
直角になるように調節した。腕を自然に下げたま
として定義された。転倒の記録に関しては、対象
ま、身体や衣服に触れないようにして握らせた。
者に個人用の転倒日記を用意した。転倒の有無は
初めに右手を測り、次に左手、もう Á 度右手、左
ホームスタッフの観察と本人の報告の E 種類の方
手の順に測定した。E 回測定し、各手の最大値を
法を用い、毎日ホームスタッフにより、記録され
取り両手の平均値を分析に使った。数値が高いほ
た。転倒によるケガ・骨折は、ホームナースス
ど筋力が強いことを反映している。
テーションあるいは病院への受診、対処の有無お
上述の S つの体力テストの測定数値に基づき、
よびカルテの記載に基づき、ホーム看護師により
総体力スコアを計算した。まず、各テストの数値
記録された。記録法の指導と記録内容の管理は各
を S 分位にし、別々に低いカテゴリーから高いカ
ホーム長により実施された。観察期間は EGGA 年
テゴリーまで Á、E、S といった数値スコアを付け
W 月から EGGW 年 A 月までの間であった。
た(/#J/ の場合は逆順)。次にその数値スコア
F.評価項目
を足し、最終の総体力スコアを求めた。総体力ス
本研究では体力テスト、抑うつ状態、認知機能
コアの範囲は S∼C 点となり、数値が高いほど総
などの総合機能評価を行った。すべての測定は運
体力が高いことを反映している。
動プログラムと音楽・園芸療法を実施する前後に
E.抑うつ状態の評価
E 回実施した。
抑うつ状態は日本語版の ÁD 項目 J-)2)5 K-;
Á.体力テスト
ES)
に よ り、評価 し た。ス
*)-,,+ "57-(JK"ÁD)
以下の S つの体力テストで評価した。
コアが高いほど抑うつ傾向が強いことを反映して
Á)/1-9 #* 9 J+ /-,2(/#J/)
いる。
/1-9 #* 9 J+ /-,2 は高齢者の動的バランス
S.認知機能の評価
機能測定を目的として開発された。歩行速度、日
認知機能は日本語版の $;$-27 "22- O01;
常生活の遂行能力、転倒リスクおよび生活の質な
2+($$"O)ÁÁ)により、評価した。スコアが
どとの関連性も高いことが知られている。本研究
高いほど認知機能が高いことを反映している。
では基本的な測定法に基づいて、以下のように測
F.その他
定した。肘付き椅子から立ち上がり、S 1 の歩行
身長と体重は、健診時に測定し分析に使った。
を行ってから方向転換して戻り、椅子に座るまで
婚姻状態は、アンケートにより把握した。既往歴
ÁC)
(DD)
と服薬情報はホーム看護師がカルテにより記録し
間歩行距離と総体力スコア)が有意に高かった。
た。日常生活身体活動量は日本語版 P2-)2+7
また、
「転倒X Á 回/年」ではケースに比べ、コ
(36,57 %52:26 Y-,2+)-(P(%Y) により、評
ントロールの運動+音楽・園芸療法の参加者の割
価した。
合が有意に高く、非運動者の割合はケースのほう
A)
が有意に高かった。「転倒X E 回/年」ではケー
G.統計解析
すべての統計解析には、"22,257 %76,, "6,;
スに比べ、コントロールの運動+音楽・園芸療法
2-1("%")Z-),+ C>Á("%" P,222- P5= #"%)
の参加者の割合が有意に高かった。
「転倒による
を用いて、両側検定での [<G>GD を有意水準とし
ケガ・骨折」ではケースに比べ、コントロールの
た。正規分布のデータに対して、平均と標準偏差
非運動者の割合が有意に低かった。その他の評価
を計算した。非正規分布のデータに対し、幾何平
項目ではケースとコントロールとの間に有意な関
均と標準偏差を計算し、ログ変換の数値を分析に
連がみられなかった。
使った。ベースラインの変数のグループ間の比較
B.1年間の転倒および転倒によるケガ・骨折
には、連続変数の場合には 2 検定、カテゴリー変
数の場合には χE 検定とフィッシャーの正確確率
表 E は Á 年間の転倒および転倒によるケガ・骨
検定を行った。分析①と分析②(図 Á%)には多
折と介入状態との関連を示している。男性では統
重ロジスティック回帰分析を実施した。分析①に
計的に有意ではないが、運動のみのグループに比
は、年齢、ベ ー ス ラ イ ン の JK"、$$"O、補助
べ 転 倒 の 割 合「転 倒 X E 回/年」は、運 動+音
器具の使用と総体力スコアを共変量としてモデル
楽・園芸療法グループのほうが高い傾向がみられ
に入れた。分析②には、年齢のみを共変量として
た。「転倒によるケガ・骨折」は症例が少ないの
モデルに入れた。分析③(図 ÁT)の Á 年間前後
で正しく推定できなかった。これに対し、女性で
のグループ内比較にはペアの 2 検定を行った。 Á
は統計的に有意ではないが、
「転倒X Á 回/年」
年間前後のグループ間比較には、反復測定による
の割合は、運動のみのグループに比べ運動+音
共分散分析を実施した。年齢、ベースラインの
楽・園芸療法グループのほうが低い傾向がみられ
JK" と $$"O スコアを共変量としてモデルに入
た。これとは対照的に、非運動者は「転倒X Á
れた。また、男性と女性は体力レベルがかなり違
回/年」と「転倒によるケガ・骨折」の割合が高
うことから、すべての解析を男女別に行った。
い傾向がみられた。更に、運動のみのグループに
結 果
A.対象者の特徴
表 Á にケース(S 基準:転倒X Á 回/年,転倒
X E 回/年,転倒 に よ る ケ ガ・骨折)と コ ン ト
と介入状態との関連
比べ「転倒X E 回/年」の割合は運動+音楽・園
芸療法グループのほうが有意に低かった。
「転倒
によるケガ・骨折」も運動のみのグループに比
べ、低い傾向がみられた。
C.マッチングした後の1年間の転倒および転
ロール対象者の特徴を示した。どのグループも年
倒によるケガ・骨折と介入状態との関連
齢が高く、平均して WG 歳前後であった。すべて
更にマッチングした後の Á 年間の転倒および転
の対象者が心血管疾患にかかっていた。男性「転
倒によるケガ・骨折と介入状態との関連(女性の
倒X Á 回/年」では、ケースに比べ、コントロー
み)を表 S に示した。マッチングした結果、ベー
ルの年齢が有意に低く、$$"O、JK" と体力レ
スラインの各変数が両グループ(ケースとコント
ベル(/#J/,E 分間歩行距離と総体力スコア)
ロール)の間でほぼ均等になり、S つのケース基
が有意に高かった。「転倒X E 回/年」でもケー
準 で も 有意差 が 検出 さ れ な か っ た([>G>ÁF,
スに比べ、コントロールの体力(握力と総体力ス
データを示さなかった)。表 E の結果に類似し、
コア)が有意に高かった。また、「転倒X Á 回/
運動のみのグループに比べ「転倒X E 回/年」の
年」では配偶者のいる割合が有意に低かった。女
割合は運動+音楽・園芸療法グループのほうが有
性「転倒X Á 回/年とX E 回/年」ではケースに
意に低かった。
比べ、コントロールの体力レベル(/#J/,E 分
(DB)
表 Á .参加者の特性
/@7- Á> ()25*2 53)52-),25,>
Q3)52-),25
$7-^`FS_
%<-^6-),_
T$P= I<H1E
QZK
U6*-)2-,+
U6*-)53+7-,2-)+7-1
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Q5-)
$$"O
JK"ÁD
$)27 ,22,
b$))-9
bc9+8-9 +) 9:+)5-9
#,- +4 5- +) 87I-)
/#J/^,-5_
/8+;1 87I 9,25-^1_
J)* ,2)-<23^I<_
/+27 *36,57 *-)4+)15- ,+5)-,
O0-)5,- 7+$,5 +) 3+)2572)7 23-)*6 7+!+;-0-)5,O0-)5,- *7, 1,5 +) 3+)2572)7 23-)*6
(36,57 52:26^$O/,d3+),H8--I_
b
M-17-^`ÁDA_
%<-^6-),_
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%9,2-9 +99, )2+^CDf 5+49-5- 2-):7_
]
M77^X+- 21-H6-)_ M77^XE 21-,H6-)_ M77;,,+52-9 )6 +) 4)52)$7-^`FS_
O0-)5,- 7+$,5 +) 3+)2572)7 23-)*6 7+!+;-0-)5,O0-)5,- *7, 1,5 +) 3+)2572)7 23-)*6
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G>DS^G>GF ; D>CD_
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Á>GG^)-4-)-5-_
G>WW^G>EE ; S>DG_
E>WA^G>FF ; ED>WB_
G>FW^G>ÁD ; Á>DB_
Á>GG^)-4-)-5-_
G>FD^G>ÁG ; E>GE_
G>SD^G>GF ; E>BE_
G>EÁ^G>GB ; G>AW_
Á>GG^)-4-)-5-_
;
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Á>GG^)-4-)-5-_
G>DF^G>GE ; ÁB>BE_
D>AE^G>FA ; ÁDE>Á_
G>FE^G>GD ; C>EW_
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7- 2+27 *36,57 *-)4+)15- ,5+)-,>
[;]. N99, &2+ 9 CD% QP 8-)- +2 55)2-76 -,212-9>
表 S .Á 年間の転倒および転倒によるケガ・骨折と介入状態との関連
(ベースライン総体力スコアによるマッチング,女性のみ,対象者数=ÁÁA)
/@7- S> %9,2-9 +99, )2+, 4+) 477 9 477;,,+52-9 -:-2, ,,+52-9 823 -0-)5,- *7, 1,5 +) 3+)2572)7 23-)*6(1253<
2+ 5,- @6 @,-7- 2+27 *36,57 *-)4+)15-= 4-17- +76= =ÁÁA)>
%9,2-9 +99, )2+^CDf 5+49-5- 2-):7_
]= +> +4 5,-H*)25*2,
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G>WD^G>ÁA ; S>WC_=ÁEHEE
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Á>GG^)-4-)-5-_
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Á>GG^)-4-)-5-_
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G>DW^G>GW ; ÁE>GA_=FHAB
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D.運動のみと運動+音楽・園芸療法における
体力と抑うつ状態の1年間の変化比較
齢、ベ ー ス ラ イ ン JK" と $$"O 補正 モ デ ル で
は、運動のみのグループに比べ、/#J/、E 分間
非無作為比較解析(図 ÁT,分析③)もマッチ
歩行距離と総体力スコアは、運動+音楽・園芸療
ングを行った。その結果、男性では、運動+音
法グループのほうが有意に低下した。抑うつ状態
楽・園芸療法グループの高血圧、癌などの既往歴
に関しては、両グループの間に有意差がみられな
と死別・離婚の割合が運動のみのグループに比べ
かった。これに対し女性では、未補正モデルと年
て高い傾向がみられたが、いずれも有意差が検出
齢、ベースライン JK" と $$"O 補正モデルの両
されず、連続変数も有意な差異が検出されなかっ
方で、運動のみのグループに比べ握力と総体力ス
た。一方、女性では、E つのグループ間の各変数
コアは、運動+音楽・園芸療法グループのほうが
がほぼ均等になり、有意差が検出されなかった
有意に増加した。また E 分間歩行距離、抑うつ傾
(データを示さなかった)
。表 F には Á 年間前後の
向は、多変量補正モデルでは運動のみのグループ
体力と抑うつ状態変化のグループ間の比較を示し
に比べ、運動+音楽・園芸療法グループのほうが
た。男性では、未補正モデルでは運動のみのグ
有意な改善がみられた。また統計的に有意ではな
ループに比べ、握力のみ、運動+音楽・園芸療法
いが、運動のみのグループに比べ、/#J/ と E 分
グループのほうが有意に増加した。ところが、年
間歩行距離も運動+音楽・園芸療法グループのほ
(DW)
表 F.Á 年間前後の体力と抑うつ状態変化のグループ間の比較
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G>GE
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. [<G>GD= 7 53<- 823 23- <)+*(*)-9 2;2-,2)>
うが増加する傾向がみられた。
Exercise alone
Exercise plus music or horticultural therapy
E.グループ間の1年間の運動プログラムへの
Female
参加率の比較
の参加率の比較を示している。男女とも運動のみ
のグループに比べ、運動+音楽・園芸療法グルー
プの運動プログラム参加率が高い傾向がみられた
が、多変量解析では女性のみ有意な増加がみられ
た。
考 察
100
Average compliance rate (%)
図 E はグループ間の Á 年間の運動プログラムへ
80
60
40
20
0
Crude
本研究では、ケースコントロール研究と非無作
為割付比較試験をデザインし、抑うつ状態の予防
と改善が、運動への参加と体力の維持、転倒リス
クの低減に効果があるという仮説を検証した。結
果は女性では運動のみのグループに対し、音楽・
Male
Adjustment for
age, baseline GDS,
and MMSE
Crude
Adjustment for
age, baseline GDS,
and MMSE
図 E .Á 年間の運動プログラムへの参加率のグループ間の
比較(エラーバーが修正した標準誤差を示している)
M<>E> %:-)<- 5+1*75- )2- +:-) 23- ÁE;1+23 ,296 *-)+9>
/3- -))+) @), )-*)-,-2 "O$>
園芸療法を加えたほうが、有意に転倒リスク「転
倒X E 回/年」の低減、体力の維持、運動プログ
つの予防と改善に注目した。運動の持続には心理
ラム参加率の向上と抑うつ状態の改善に関与する
上の要因が関連している EW)。抑うつ気分はさまざ
ことを示した。これに対し、男性では音楽・園芸
まな介入、治療の重要な阻害要因の Á つであり、
療法の運動プログラム参加の効果が全くみられな
アドヒアランスが抑うつと悪い健康状態を介在す
かった。
る可能性も指摘されている SD)。本研究では音楽・
本研究では従来の運動プログラムに比べ、抑う
園芸療法が抑うつの予防と改善に使われている。
(DC)
日本音楽療法学会は音楽療法を「音楽のもつ生理
音楽・園芸療法への参加により、運動プログラム
的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の
の参加率と体力を有意に増加させ、抑うつ状態を
回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の
有意に改善した。また運動のみのグループに比べ
変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用
転倒の割合「転倒X E 回/年」が有意に低かっ
S)
すること」と定義している 。音楽療法は一般的
た。これらのデータは、音楽・園芸療法を運動プ
に①活動的音楽療法(歌わせたり,演奏させたり
ログラムに加える介入方法が、老人ホーム入居女
する)
、②受容的音楽療法(体感音響システムを
性高齢者に有用な体力維持、ないしは転倒予防の
使用したり,ステレオつき枕を使用したりする)
、
プログラムである可能性を示唆している。更に、
③グループに対するセッション、④個人に対する
無作為割付対照試験をデザインし、これらの因果
S)
セッションに分類されている 。本研究では一般
関係を検討する必要がある。
的に高齢者施設で使われている①と③の組み合
Á 転倒当たりの外傷リスクはおよそ一定であ
S)
わせの方法 を用いた。音楽療法は代替療法に含
り、個人の転倒回数に応じて外傷リスク累積が確
まれ、不安、ストレス、慢性疼痛などのいろいろ
実に増加していた EE)ことから、本研究では転倒
な 心理疾患 に 効果 が あ る こ と が 指摘 さ れ て い
の回数と転倒によるケガ・骨折の有無によって、
る ÁF)。園芸療法について、アメリカ園芸療法協会
S つの基準(転倒X Á 回/年,転倒X E 回/年,
(%1-)5 U+)2572)7 /3-)*6 %,,+52+\ %U;
転倒によるケガ・骨折)でケースを定めた。女性
/%)は、「限定的な治療ゴールに達するために、
では運動のみのグループに比べ、音楽・園芸療法
訓練されたセラピストによる、園芸に関連した活
を加えたほうが、有意に転倒リスク「転倒X E
動の実施」と定義している Á)。本研究では一般的
回/年」を低減させた。これに対し、転倒リスク
SÁ)
な実施手順〔参加者の機能評価 ,治療目標の設
EA)
「転倒X Á 回/年」と「転倒によるケガ・骨折」
定,園芸療法 (日本の伝統である生花も含む)
の場合は有意な効果がみられなかった。
「転倒に
の選択,植物・用具の準備,園芸療法の実施〕に
よるケガ・骨折」の場合はケース数が少ない(女
従い、実施されているが、できるだけ希望者全員
性:=C)ことが部分的にこの結果を説明できる
が集団的に参加できるように体力および移動能力
かもしれない。転倒リスク「転倒X Á 回/年」に
の低下者に合わせ、多くの場合は室内での活動を
関しては、明らかな原因がわからないが、介入に
中心にしている。園芸療法の研究は音楽療法ほど
よる体力と体力に対する自信が付くことに伴い、
多くはないが、既存の研究においても園芸療法が
普段の動きも活発になり、逆に転倒する機会が増
不安などの情緒異常、認知機能、生活の満足度を
えるのかもしれない。転倒リスク「転倒X E 回/
改善し、特に共同作業を通し社会への参与を促進
年」に対しても、同じ現象がみられるのかもしれ
することを示唆している SS)。不安、ストレスなど
ないが、単独の転倒に比べ、複数回転倒が転倒の
の情緒異常、認知機能および社会への不参与が抑
機会よりも、体力レベルにより一層依存する可能
うつの危険因子である E=ÁB)ことから、音楽・園芸
性 が あ る(表 Á も 単独 の 転倒者「転倒X Á 回/
療法はこれらの因子を介し、抑うつを予防したり
年」に比べて,複数回転倒者「転倒X E 回/年」
改善したりする可能性がある。そして、無作為割
の体力レベルが相対的に低いことを示している)
。
付比較試験に基づいた系統的レビューは音楽療法
これらの原因により、介入と転倒リスク「転倒X
が抑うつの状態を改善したことを示している 。
Á 回/年」
、「転倒によるケガ・骨折」との関連を
抑うつ状態の改善が高い運動の持続率、体力の維
弱める可能性がある。今後、更に詳しい調査(体
持と転倒率の低下につながる可能性がある。更
力と自信が改善された前後の転倒リスクの変化)
に、いくつかの研究で、抑うつが身体活動などの
と対象者の人数を増やした大規模の研究により、
交絡因子から独立して体力の低下に関連すること
その原因を解明する必要がある。
が示唆されている ÁA=ED=EB)ことから、抑うつの予防
男性では音楽・園芸療法の効果がみられなかっ
と改善が運動以外のメカニズムで体力の維持に関
ただけではなく、多変量解析では運動プログラム
連する可能性はある。本研究では女性のみだが、
のみに比べ、音楽・園芸療法を加えることによ
ÁW)
(BG)
り、有意な体力の低下がみられた。以下の原因に
ホーム入居高齢者を対象にして、運動プログラム
より部分的にこれらの結果を説明できる可能性が
のみに比べ、運動プログラム+音楽・園芸療法が
ある。まず、抑うつの発生率、背景因子と治療の
どのように体力の変化、転倒、転倒関連のケガ・
反応性 な ど に 関 し て は 男女差 が 指摘 さ れ て い
骨折、運動プログラムの参加率および抑うつ状態
E=EG)
。これらの差異が本研究の結果に関連して
に影響を与えるかを検証した。結果は、女性のみ
いる可能性がある。また本研究での対象者数が少
であるが音楽・園芸療法の参加が転倒リスク「転
なく、特に男性の場合、両グループを合わせて分
倒X E 回/年」
、運動プログラムの参加率、体力
析①では FS 名、分析③では EG 名であったため、
の変化と抑うつ状態を有意に改善したことを示し
多変量モデルの推定精度が落ちる。したがって、
た。これらの結果により運動プログラムに音楽・
音楽・園芸療法への参加が男性の高齢入居者の体
園芸療法を加えた介入方法は、運動プログラムの
力および転倒リスクにどんな影響を与えるかを明
みに比べて有効である可能性を示している。更に
らかにするためには、更に大規模な調査が必要で
無作為割付対照試験をデザインし、これらの効果
あると考える。また、分析③では音楽・園芸療法
を確認する必要がある。
る
への参加が握力および運動プログラムの参加率を
改善する傾向もみられた。対象者数の欠乏による
謝 辞
選択バイアスと統計学的な精確推定が行えないこ
本研究を遂行するにあたり、多大な助成を賜りました財
とが、男性グループでの効果を左右する大きな要
団法人明治安田厚生事業団に深く感謝申し上げます。ま
因である可能性がある。また、女性を対象にした
た、研究に快く参加していただいた老人ホーム入居高齢者
分析(図 Á%,分析①と分析②)でも、「転倒X E
の皆様、データの収集と測定と情報提供にご協力していた
回/年」を基準にした場合に運動のみグループに
だいたベネッセスタイルケアとホームのスタッフの皆様に
比べ、非運動グループのほうが有意ではないが、
も心からお礼申し上げます。
転倒リスクが低い傾向がみられた。この結果に関
最後になりますが、留学生として日本に参りまして、多
しても、我々は正しく解釈できないが、対象者の
人数が少ない(いずれも W 名であった)ことが大
数の先生方からの、丁寧なご指導のお陰で、今回の研究が
できたと考えております。特に本教室の教授である永富良
一先生から、常にご指導していただき、また、素晴らしい
きな要因であった可能性がある。
研究環境を作っていただいたことに心からお礼申し上げま
本研究にはいくつかの限界がある。まず対象者
す。
数が少なかったことである。そのため、特に男性
の場合、結論が導き出せなかった。更に大規模な
研究をデザインし、検証する必要がある。本研究
では観察研究であるケースコントロール研究と非
無作為割付比較分析がデザインされた。しかし、
すべての観察研究の欠点と同様に、音楽・園芸療
法により転倒リスク、運動プログラムの参加率お
よび体力を改善したのかということと、もともと
参 考 文 献
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(EGGC). %:7@7- 4)+1. 322*.HH888>32>+)<H4+)12+H
E)%7-0+*+7+, J"(EGGD). K-*)-,,+ 23- -79-)76> j5-2=
klm= ÁCBÁ;ÁCAG>
S)板東 浩,吉岡明代(EGGA):五感を利用した療法:
音楽療法.治療,no,ÁFGE;ÁFGC.
改善の可能性が潜在的にある高齢者のみが音楽・
F)T+67- (%= T531 %"= c7,+ &"= T-, Vj= T--22
園芸療法に参加したのかということを本研究では
K%(EGGA). (36,57 52:26 , ,,+52-9 823 59-2
区別できなかった。したがって、このプログラム
9,@726 5+1126;@,-9 +79-) *-),+,> V %1 J-)2)
(運動+音楽・園芸療法)を老人ホーム入居者に
推奨する前に、更に無作為割付対照試験をデザイ
ンし、その因果関係を確認する必要がある。
総 括
この Á 年間のケースコントロール研究は、老人
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SA)安村誠司(ÁCCC):高齢者の転倒・骨折の頻度.日医
雑誌,rpp(ÁS),ÁCFD;ÁCFC.
第 ML 回健康医科学研究助成論文集
平成 := 年度 RR9<A∼>;(M;;=9A)
日常生活における身体活動レベルの違いが中高齢女性の
免疫機能に及ぼす影響
清 水 和 弘*,**
秋 本 崇 之***,****河 野 一 郎**
赤 間 高 雄*
ÁÂÃÄÃÅÅÃÆÁÇÄÈÅÄÉÊÅÅÃËÃÌÆÃÇÄÈÅÄÅËÃÃÍÎÊÏÊÌÄÉÊÎÄÂÇÊÆÎ
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)/2)(&))2/ 6//6*/6$0/06/9
/$3*1?*6$0$1(6(&7&$!
)/2)(&)!/6*/6$9
早稲田大学スポーツ科学学術院 I(6&$20&(/)(/1!S1/*+)7/1&$!& !T0)9
筑波大学大学院人間総合科学研究科 U*&/(62J 0//)17/V )(/)(/1!+)7/1&$2"1#B!'B#!T0)9
東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター FB&$2-/8/)/&7/,/*(6E)8)//)8!J/)&/2K1/1/H68$)*')&/8&7/
,/*()/!U*&/(62,/*()/!"#$+)7/1&$!"#$!T0)9
****
早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構 ')1&&&/2H /*(6E)8)//)8J)16*&/*-/1/(')1&&&/2%*7)(/*(/)(/)* ,/*(6J/!S1/*+)7/1&$!"#$!T0)9
* ** *** (<L)
い な い " 細胞(JKMN)66" 細胞)は、自己免疫疾
緒 言
患患者において確認されており >)、また JKMN 発
加齢とともに免疫機能は低下し、感染症や悪性
現の低下によって -"' に対する易感染性が示さ
腫瘍、自己免疫疾患等の疾患を招くと考えられて
れている L)。加齢に伴う " 細胞や JKMN 発現 "
い る M:)。特 に、カ ゼ や 肺 炎 な ど は 気 道 感 染 症
細胞の減少は、中高齢者において頻発する -"'
(-/10&$&(&)2/(&);-"')と呼ばれ、中高
や自己免疫疾患の罹患の原因として考えられる。
齢者において一般的かつ深刻な疾患とされてい
近年、身体活動が免疫系に及ぼす影響について
る =)。肺炎による死亡者数は <; 歳代以降の中高
多くの関心が寄せられており、特に身体活動の強
:M)
齢層より急増することが報告されており 、中高
度や時間の違いが免疫機能や感染症罹患に対して
齢者における感染症への抵抗力は、若齢者と比べ
異なる影響を及ぼすことが報告されている MA)。
て低いと考えられる。
W/ )/&69M;!M:)は、運動習慣のない者と比較し
免疫系は、局所粘膜免疫能と全身免疫能に大別
て、中等度強度・適度な運動習慣のある者の感染
される。主な働きとして、局所粘膜免疫能は病原
症罹患リスクは低く、一方で高強度・長時間の高
体の粘膜下への侵入を防ぐ機能を示し、全身免疫
レベルの運動習慣のある者の罹患リスクは高いと
能は免疫系の調節と侵入した病原体の排除に機能
いう“X510/* モデル”を提唱している。この身
する。
体活動と感染症罹患の関係は、他の先行研究にお
唾 液 中 に 存 在 す る 分 泌 型 免 疫 グ ロ ブ リ ン %
いても示されている :A!:N!M;)。先行研究において、
)86B6)%;'8%)は、口 腔 内
中等度の複合トレーニング(バイク運動+自重負
の局所粘膜免疫能における主要なエフェクターで
荷運動)による中高齢者の唾液 '8% レベルの増
あり、病原体の粘膜下への侵入を防ぐ役割をも
加 :!M!M>)、血 中 " 細 胞 や JKMN 発 現 " 細 胞 の 増
つ :<)。したがって、'8% レベルの低下は病原体
加 MN)が示されている。また、A か月間の中等度
の侵入を容易にし、-"' への罹患リスクが高まる
ウォーキング(N;%O" 強度)の介入によっても
(/(/&$
と考えられている 。唾液 '8% 分泌は加齢とと
中高齢者の '8% レベルが増加することが示され
もに低下すると報告されており :=!A;)、このことが
ている ::)。これより、エアロバイクやウォーキン
中高齢者における -"' への易感染性の原因の :
グによる持久性トレーニングや自重負荷による抵
つとして考えられている。
抗性トレーニング等によって中高齢者の口腔内局
" 細胞は全身免疫能の中心的役割を果たしてお
所粘膜免疫能および全身免疫能が高まる可能性が
り、ヘルパー "("5/60/;")細胞と細胞傷害
考えられる。
N)
性 "("5($&&4(;"()細 胞 の サ ブ セ ッ ト を も
ウォーキングのような歩行活動は、簡便でポ
つ。主な働きとして、" 細胞は免疫応答の調節、
ピュラーな身体活動であり、目標値の設定が容易
"( 細胞は異物の排除に機能する。しかし、加齢
で、その目標値に対する達成度の把握も容易であ
とともに " 細胞および "( 細胞において細胞数
る。アメリカスポーツ医学会("/% /()J65
。" 細
6/8/20&1,/*()/;%J,)とアメリカ疾病
胞機能の加齢現象として最も顕著な変化の : つ
対策センター(J/)&/12K1/1/J)&6)*Y/5
に、JKMN 受容体発現 の 減少 が あ げ ら れ る AA)。
7/)&);JKJ)は身体活動のガイドラインとし
JKMN は " 細胞表面上に恒常的に発現し、抗原提
て、: 日 A; 分以上の中等度レベルの運動を勧め
示細胞からの共刺激シグナルを " 細胞に伝えて
ており MM)、この運動量は、中高齢者において約
サイトカイン産生を亢進させ、" 細胞の活性化を
AL;;1&/0 に相当することが示されている A:)。更に
。活性化した " 細胞は、
健康・体力づくり事業財団は、>; 歳以上の高齢
の減少や機能の低下が報告されている
誘導する役割をもつ
AM!AA)
@!:>)
分化・増殖し、病原体に対して機能する。しか
者に対する歩数のガイドラインとして : 日当たり
し、加 齢 に 伴 い JKMN 発 現 は 減 少 す る こ と か
男性 <>;;1&/0D*$ 以上、女性 @=;;1&/0D*$ 以上を
ら 、加齢により " 細胞の活性能が低下すると考
提示している AL)。我々の先行研究において、中高
えられている。先行研究では、JKMN が発現して
齢者の免疫機能に有効な身体活動量を検討するた
AA)
(<@)
め、平均年齢 >; 歳の高齢者を対象として日常生
(%F'OE""E,E-"EK 社,ドイツ)を <; 秒間
活における身体活動(意識的な運動以外にも家事
に <; 回咀嚼し、分泌された唾液を滅菌綿に吸収
や仕事等において生じる活動量も含む)と唾液中
させ、A;;;0
' 8 % の 関 係 を 調 べ た。そ の 結 果、: 日 約
させることで唾液を回収した。唾液サンプルは、
>;;;1&/0D*$ を 維 持 す る 中 高 齢 者 は : 日 約
容量を測定した後に−L;°
J で凍結保存した。唾
A;;;1&/0D*$ を維持する中高齢者に比べて '8%
液 '8% 濃 度 は、先 行 研 究 :!M)に 従 い、E)$ /5
レベルが高いことが示された M<)。これより、中高
6)#/*
齢者の口腔内局所粘膜免疫能の改善に有効な身体
測定した。'8% 分泌速度(: 分間当たりの '8%
活動量 と し て : 日約 >;;; 歩 と い う 値 が 示 さ れ
分泌量:Z8D ))は、唾液分泌速度(: 分間当た
で @ 分間遠心して滅菌綿から分離
)1B/)&11$(EF'%)法 に よ っ て
た 。しかしながら、先行研究では男女別に分け
りの唾液分泌量: 6D ))と '8% 濃度(Z8D 6)
られていないこと、身体活動レベルの低い対象の
の積より算出した。
免疫機能のプロフィールが不明であること、そし
M.血液採取およびリンパ球分画測定
て日常身体活動と全身免疫能との関係については
血液は、座位安静の状態で肘正中静脈より L
M<)
不明である。これらを明らかにすることによっ
6 採取 し た。採取 し た 血液 を M 本 の EK"%5M
て、免疫機能の改善に有効な身体活動のガイドラ
加採血管(M 6 用)に M
インの設定に役立つと考えられる。
て保存した。そのうち : 本(M 6)を㈱三菱化学
したがって本研究では、中高齢女性を対象とし
メ デ ィ エ ン ス に 依 頼 し、多 項 目 血 球 分 析 装 置
て、日常の身体活動量の違いが口腔内粘膜免疫能
(E5=;;;,シスメックス社,神戸)を用いた白血
および全身免疫能に及ぼす影響を検討することを
球数および白血球分画の測定に使用した。もう :
目的とした。
本の血液サンプル(M 6)は、I6/1(/)(/(&5
方 法
A.対象
6 ずつ分注し、L°J に
7&/*(/661&/(I%J,I%JJ6B,HKH1(5
/)(/1 社,+%)によるリンパ球分画の分析に使
用した。全血染色法によるリンパ球分画の測定に
健康な中高齢女性 :;: 名を対象とした(<=9>±
は、A 種 の 蛍光標識(I6/1(/)1&($)&/;
;9= 歳,@A∼=< 歳)。対象者 の な か に、服薬、喫
I'"J,Y$(/$&);YE,%660$(($));%YJ)
煙および過度な飲酒習慣、測定日 A か月以内にお
のモノクローナル抗体を用いた MN)。モノクローナ
ける感染症罹患をもつ者はいなかった。対象者に
ル抗体は、JKA(I'"J,クローン:+JV":,K5
対して、事前に研究の趣旨、実験方法、起こりう
#J$& &) 社,デ ン マ ー ク)、JKL(%YJ,ク
る危険性および参加の任意性について説明し、文
ロ ー ン::AHN9M,'
書による参加の同意を得た。本研究は「ヘルシン
JKN(YE,ク ロ ー ン:KM@,K#J$& &)
キ宣言」の趣旨に従い、かつ「筑波大学大学院人
社)
、JKMN(I'"J,クローン:JKMN9M,HKH5
間総合科学研究科研究倫理審査委員会」の承認を
、
1(/)(/1 社)を 用 い て、JKA + 細 胞(" 細 胞)
得て実施した。
JKL + 細 胞(" 細 胞)、JKN + 細 胞("( 細 胞)、
B.測定の手順および測定項目
)&/( 社,フ ラ ン ス)、
、JKMN+JKN+
JKMN+JKL+ 細 胞(JKMN+" 細 胞)
唾液および血液の採取は、朝 N 時 A; 分∼= 時
細胞(JKMN+"( 細胞)とした。アイソタイプコ
A; 分の間に行った。対象者は、前日の運動およ
ン ト ロ ー ル は、マ ウ ス '8U:(ク ロ ー ン:K%5
び夜 = 時以降の飲食を避け、測定当日は朝食を摂
UP:,K#J$& &) 社)を 用 い た。全 血 染 色
取せずに測定に参加した。
法は,先行研究 MN)において用いられている方法
:.唾液採取および '8% 測定
に従った。全血 :;;Z6 に各抗体を M Z6 ずつ分注混
において用いられた
和し、室温にて :@ 分間暗所静置した。F$1)815
方法を実施した。対象者は座位安静の状態で、蒸
6&)(;9:@, WV L J6,:; , VJP A,;9: ,
留水を用いて口腔内を A; 秒間×A 回すすぎ、@ 分
EK"%5MW): 6 を加えて転倒混和し、更に室温
間座位姿勢にて安静をとった。その後、滅菌綿
に て :; 分間暗所静置 し た。M;°
J、A;;;0
唾液採取は、先行研究
:!M)
で@
(<<)
分間遠心後、上清を取り除いた。;9:%H%D;9:%
歳 の 運 動 強 度 に つ い て F8&5)&/)1&$::9<∼
WWADYH を :
A9:,E"1、,*/&/5)&/)1&$:A9M∼L9>,E"1、
6 を 加 え て 洗 浄 後、;9:%H%D
;9:%WWADYH を A;;Z6 加え、チューブに分注し
O815)&/)1&$:>L9N,E"1 と示している。こ
た。リンパ球分画の計測には、I%J を用いた。
れに基づいて、本研究では活動レベルを,不活
: サンプル当たり :;;;; 個の細胞数をカウント
動:')(&7/(<:9N,E"1)、低強度:F8&(:9N∼
し、得られたデータを、ソフトウエア(JEFF5
M 9 = , E " 1)
、中 等 度 強 度:, * / & /(M 9 =∼
[/1&,HKH1(/)(/1 社)を用いて解析した。リ
@9M,E"1)および高強度:O81(>@9M,E"1)
ンパ球分画の各細胞の絶対値は、リンパ球の絶対
の L 段階に分けた :L!M<)。得られたデータから、 :
値((/661DZ6)と各分画の陽性細胞率(%)との積
日当たりの平均歩数(1&/0D*$)
、エネルギー消費
で算出した。
量(#(6D*$)および L 段階の活動レベル(')(5
&7/,F8&,,*/&/,O81)に お け る 活 動
C.身体活動量測定
身 体 活 動 量 の 評 価 に は、簡 易 活 動 量 測 定 器
(/)F2/(*/,ス ズ ケ ン 社,名古屋)を 用 い
時間( )D*$)を算出した。
D.統計解析
た。先行研究において、この測定器における歩数
各測定値は、平均値±標準誤差で示した。対象
のカウントの正確性 ML)およびエネルギー消費量
について、計測した歩数を階層化し、A 分位数
が示されている。対象者は、:L
(&/&6/:全対象者を AA9A および <<9< の 0/(/)&6/
日間連続して、入浴と就寝の時間を除いたすべて
値 に よ っ て A 等 分 す る)を も っ て A 群(&/&6/
評価の有効性
:L)
の時間に測定器をウエスト部に装着した。簡易活
: ;":,&/&6/ M;"M,&/&6/ A;"A)に 分 け
動量測定器は、鉛直方向(\ 軸)の加速度を測定
た M<!A:)。すべての測定値における群間比較は、年
し、L 秒ごとに計測した最大振動を加速値とし
齢を共変量とした共分散分析を用いて行った。す
た。活動レベルは、加速値の大きさによって ::
べての検定において有意水準は @%未満とした。
段階(;9;,;9@,:9;∼=9;)にクラス分けされ、エ
結 果
ネルギー消費量(#(6)を算出するアルゴリズム
を用いて変換し、,/&B6(/C76/)&1(,E"1)
と し て 算出 し た
:L!M<)
A)
。%J, に よ る と、<@∼>=
A.体組成
対象者の身体組成を表 : に示した。"M および
表 :.日常身体活動量による A 分位値によって分けた対象者の年齢補正後の身体組成および日常身体活動量の比較
"B6/:9%( 01)28/5*^1&/*0$1(6((&/1&(1)**6$7/8/120/* /&/5*/&/ )/*7B6/1(11&/5
&6/120/* /&/5*/&/ )/* B6&$(&7&$9
"/&6/12Y/* /&/5K/&/ )/*% B6&$%(&7&$
OB6/
%8/a$c
V/8&a( c
H*$ 11a#8c
H,'a#8D Mc
&/05()&a1&/0D*$c
EEa#(6D*$c
')(&7/a )D*$c
F8&5)&/)1&$(&7&$a )D*$c
,*/&/5)&/)1&$(&7&$a )D*$c
O815)&/)1&$(&7&$a )D*$c
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M<9@dM9>
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"A
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:@;9:d:9; e
L=9<d:9Le_
M:9=d;9@e_
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=A=LdA;>e_he`
e
M:;9=d=9Le_he`
e
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e
<<9=dM9Le_he`
M@9<d:9<e_he`
A9>=d;9N:e`
O6/1//40/11/*1 /)1±E9H,'GB*$ 11)*/4!EEG/)/8$/40/)*&/9
8)2()&*22//)(/1?_?Q<;9;@719":!`?Q<;9;@719"M9
"/&6/121&/05()&2/6*/6$1B^/(&13//!":?<=L:AL!"M?L:A@ 5 <@@<!)*"A?>=<@@>1&/0D*$9
Q76/
g;9;@
;9>AA
g;9;@
g;9;@
g;9;@
g;9;@
g;9;@
g;9;@
g;9;@
g;9;@
(<>)
"A に比べて、": 群の年齢は有意に高値を示し
(Q<;9;@)、体重および H,' は低値を示した(Q
意な差は認められなかったが、"A は "M に比べて
有意に高値を示した(Q<;9;@)
。
C.唾液 SIgA 分泌量
<;9;@)。
表 M に各群の唾液分泌速度、'8% 濃度および
B.身体活動量
対象者の身体活動に関するデータを表 : に示し
'8% 分泌速度を示した。唾液分泌速度、'8% 濃
た。活動量測定器によって得られた身体活動量か
度および '8% 分泌速度について、A 群間に統計
ら 対 象 を ":(≦ L:AL1&/0D*$)、"M(L:A@∼
的な有意差は認められなかった。
<@@<1&/0D*$)お よ び "A(≧<@@>1&/0D*$)に A
D.白血球分画
群化した。エネルギー消費量は &/&6/ が高い群
白血球に関する結果を表 A に示した。白血球
(歩数が多い群)になるほど有意に高値を示し
数、リンパ球数、好中球および単球において、 A
(Q<;9;@)、群内差は統計的に有意であった(Q<
群間に統計的な有意差は認められなかった。
;9;@)
。強度ごとの活動時間について、')(&7/ の
E.リンパ球分画
活動時間は &/&6/ が高い群ほど低値を示した(Q
リンパ球サブセットの各細胞数に関する結果を
<;9;@)。一方、F8& および ,*/&/ の活動時間
表 A に 示 し た。JKA + 細 胞 数、JKL + 細 胞 数、
は &/&6/ が高まるほど高値を示した(Q<;9;@)。
JKN+細 胞 数、JKMN+JKL+細 胞 数 お よ び JKMN+
O81 の活動時間において、": と "M の間に有
JKN+細胞数について、A 群間に統計的な有意差
表 M.日常身体活動量による A 分位値によって分けた対象者の年齢補正後の唾液データの比較
"B6/M9%( 01)28/5*^1&/*167$*&(11&/&6/120/* /&/5*/&/ )/* B6&$(&7&$9
"/&6/12Y/* /&/5K/&/ )/*% B6&$%(&7&$
OB6/
":
a)bALc
"M
a)bAAc
"A
a)bALc
Q76/
167263&/a 6D )c
'8%()(/)&&)aZ8D 6c
'8%1/(/&)&/aZ8D )c
:9::d;9:A
AM9<dL9:
AN9:d@9=
:9M>d;9::
AN9>dA9L
L>9<d@9;
:9MMd;9::
A=9@dA9L
LA9:d@9;
;9<<>
;9L@<
;9@::
O6/1//40/11/*1 /)1±E9
"/&6/121&/05()&2/6*/6$1B^/(&13//!":?<=L:AL!"M?L:A@ 5 <@@<!)*"A?>=<@@>1&/0D*$9
表 A .日常身体活動量による A 分位値によって分けた対象者の年齢補正後の白血球サブセットおよび
リンパ球サブセットの比較
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象としたが、対象者数は :;: 名と少数であり、こ
は認められなかった。
のことが結果を明確に示せなかった原因の : つと
考 察
して考えられる。今後は更に幅広い年齢層で多く
本研究では、日常における身体活動が中高齢女
の中高齢者を対象として検討することで、身体活
性の口腔内局所粘膜免疫能および全身免疫能に及
動が免疫系に及ぼす影響について明示することが
ぼす影響について検討した。その結果、'8% 分
できると考えられる。
泌量および " 細胞の各サブセットにおいて身体
JKMN は " 細胞表面において恒常的に発現する
活動レベルによる影響の違いは認められなかっ
受容体であり、" 細胞活性にかかわる重要な役割
た。
をもつ :>)。加齢による JKMN 発現の減少は " 細胞
本 研 究 に お い て、": 群 の : 日 平 均 歩 数 は
活性能の低下を意味することから、" 細胞によ
MN=;1&/0D*$、"M 群は @:<M1&/0D*$ であり、": 群
る免疫系の調節機能の低下に関連する AA)。本研究
は "M 群に比べて明らかに低い身体活動量を維持
において、JKMN 発現 " 細胞数と年齢との間に
していた。厚生労働省によると、日本人 <; 歳代
は、有意ではないが弱い負の相関関係が認められ
女性の : 日平均歩数は <>>>1&/0D*$ と報告されて
た(Q=;9;>,=−;9:N,*&)&13))。これま
おり、"M 群の歩数は <; 歳代の平均歩数にやや近
で、JKMN 発現と日常身体活動量の関係を示した
似した 。また、": 群の歩数は一般に比べても
研究は : 例しかない。高レベルの身体活動量を維
低い値であった。この理由として、": 群の平均
持することによって JKMN 発現 " 細胞が低値を
年齢は >>9M 歳であり、他の M 群に比べて :; 歳ほ
示すことが報告されている M=)。本研究において、
ど高かったことが考えられる。しかし、厚生労働
JKMN 発現 " 細胞数に統計的な群間差は認めら
省の報告では >; 歳以上の女性の : 日平均歩数は
れなかった。また、JKMN 発現 "( 細胞において
:;)
L;NN 歩であり 、加齢の影響を考慮したとして
も同様に有意な群間差は認められなかった。これ
も、": 群の歩数は一般の値に比べて少なく、身
より、JKMN 発現と日常の身体活動量の間に関係
体活動量の低い対象であったと考えられる。
がない可能性が考えられる。しかし先行研究にお
唾液 '8% は口腔内粘膜免疫系における主要な
いて、中等度の運動トレーニングを行うことで中
エフェクターであり、感染の初期防御に対して機
高齢者の JKMN 発現 " 細胞が増加することが示
能する :<)。唾液 '8% 分泌は加齢とともに低下す
されている MN)。したがって、JKMN 発現や " 細胞
ることが示されており :=!A;)、加齢の影響が予想さ
機能についても、更に対象を追加して検討するこ
れる。本研究においても、年齢と唾液 '8% 分泌
とで身体活動とのかかわりが明らかになると考え
速度の間に弱いながらも有意な負の相関関係が認
られる。
められたことから(Q<;9;@,=−;9MA,*&)&
免疫機能は身体活動の他にも、摂取栄養素によ
13))、唾液 '8% 分泌について年齢による補正
る影響を受けることが知られている M@)。ビタミン
を行った。その結果、唾液 '8% 分泌については
% は、ウイルス感染に対する '8% 応答を高める
身体活動レベルの違いによる群間差は認められな
役割が報告され <)、鉄欠乏は " 細胞の JKMN 発現
か っ た。し か し 我 々 の 先 行 研 究 に お い て、約
を低下させ、" 細胞活性の低下を引き起こすこと
>;;;1&/0D*$ の身体活動量を維持する >; 歳代の
が確認されている :@)。本研究において、身体活動
:;)
高齢者は約 A;;;1&/0D*$ の高齢者に比べて '8%
量と各免疫学的指標との間に関係が認められな
レベルが高いことが示されている M<)。また、約
かったのは、日常の摂取栄養素の違いが影響して
:@<;;1&/0D*$ の身体活動量を維持する <; 歳代の
いる可能性も考えられる。今回は摂取栄養素の調
中高齢者 は 約 <<;;1&/0D*$ の 中高齢者 に 比 べ て
査を行っていないが、今後は摂取栄養素、身体活
'8% レベルが低いことが示されている 。した
動量および免疫機能の関係を検討する必要があ
がって、日常の身体活動量は口腔内粘膜免疫能に
る。これらの関係を明らかにすることは、免疫機
影響を及ぼす可能性が考えられる。本研究では、
能の改善により有効なプログラムの策定に役立つ
@; 歳代∼=; 歳代と幅広い年齢層の中高齢者を対
と考えられる。
M=)
(<=)
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総 括
)*)2/(&)1#)/6&/13
本研究では、日常における身体活動が中高齢女
性の口腔内局所粘膜免疫能および全身免疫能に及
ぼす影響について検討した。その結果、口腔内局
所粘膜免疫能および全身免疫能に対して日常身体
活動量の影響は認められなかった。
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:;)健康・栄養情報研究会編(M;;N):国民健康・栄養の
現状―平成 :> 年厚生労働省国民健康・栄養調査報告
謝 辞
より―.:5:=>,第一出版,東京.
本研究を遂行するにあたり、多大なご協力をいただいた
::) I! !%# "!%# &"!)!
参加者の皆様に御礼申し上げます。また、多大な助成を賜
)'(M;;<)?"//22/(&1236#)8/4/(1/&))8)
りました財団法人明治安田厚生事業団に深く感謝申し上げ
ます。
t!@;N5@:L9
)//10)1/)/6*/6$1B^/(&19')&T0&V/6&(!
:M)厚生労働省大臣官房統計情報編(M;;<):人口動態統
参 考 文 献
計 M;;L.MAN5MA=,財団法人厚生統計協会,東京.
:)赤間高雄,木村文律,小泉佳右,清水和弘,秋本崇
:A)1&#"!H/&/E!F(T!H))/2$,(M;;;)?
之,久野譜也,河野一郎(M;;@):LM ヶ月間の運動継
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続による中高年の唾液分泌型免疫グロブリン % の変
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化.スポーツ科学研究,j,:MM5:M>.
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M=)清水和弘,木村文律,田辺 匠,小林大祐,秋本崇
之,赤間高雄,河野一郎(M;;N):日常生活における
高レベルの身体活動が中高齢者の免疫機能に及ぼす影
響.スポーツ科学研究,s,:=5AA.
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AL)財団法人健康・体力づくり事業財団(M;;M):健康日
本 M:(M: 世紀における国民健康づくり運動につい
て).:5::>,太陽美術,東京.
第 GL 回健康医科学研究助成論文集
平成 FI 年度 PPDJF∼M>(G>>IDK)
高齢者における筋発揮張力維持法(ÁÂÃ)の筋力増強、
筋肥大効果および安全性の検証
谷 本 道 哉* 大 金 朱 音** 石 井 直 方***
宮 地 元 彦*
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Ã$($&!S 7 "D
* ** (JG)
緒 言
て四肢血流量の増加を起こすことを、若年男性を
用いた実験において観察している G=)。また、ÁÂÃ
ヒトの筋肉は加齢とともに萎縮する(サルコペ
様の筋力トレーニングが若年男性の脈波伝播速度
ニア)V)。骨格筋量は G> 歳代後半から減少を始め、
(75:.)!9 8)!8)4$%W!EXY)を改善させたという
M> 歳までに平均で L>%以上が減少する F=)。介護
報告もある FM)。これらの結果は生活習慣病予防と
予防の観点から、高齢者がサルコペニアを最小限
いう点でも大きな意義がある。しかしながら、
に抑えて、自立して日常生活を送るために必要な
ÁÂÃ や類似したトレーニング法の研究報告の数
筋力・筋量を維持することは本人にとっても社会
はまだ少なく、高齢者における効果の検証された
にとっても重要な課題である。高齢者向けの筋力
ものは現時点ではほとんどない。
トレーニングは、高負荷トレーニングによる整形
そこで、本研究では運動習慣のある健康な高齢
外科的傷害や循環器障害 I)に対する安全性を優先
者において ÁÂÃ が身体諸機能(筋量・筋力,筋
し、低負荷〔=>% F 1 以下:最大 F 回挙上重量
血流量,動脈硬化度)を改善させる効果が若年者
(F;1)7)%%$"! ?#5#)の =>%以 下〕で 行 わ れ
同様に認められるかを、運動介入実験によって検
ることが一般的である。しかしながら、高齢者に
証 す る も の と し た。介 入 運 動 と し て、ÁÂÃ ト
おいても筋肥大、筋力増強には M>% F 1 程度
レーニングを実施する群と、通常高齢者に処方さ
以上 の 高負荷強度 の ト レ ー ニ ン グ が 必要 で あ
れることの多い低負荷トレーニングを実施する群
り J&M)、このような低負荷強度トレーニングは十分
の G 群を設定した。また筋肥大を促す生理的メカ
に効果的とはいえない。高齢者でも安全に行え
ニズムの検証として介入運動期間中に、運動時の
る、低負荷を用いながらも高い筋肥大・筋力増強
一過性の生理応答(運動による一時的な血中乳酸
が期待できる筋力トレーニング法の開発が望まれ
濃度の上昇度,大腿部周径囲の増加量)の観察を
ている。
行った。
我々の研究グループは先行研究において、比較
研 究 方 法
的低負荷(=>% F 1)を用いて行う ÁÂÃ(Á$9;
:$ /)/!4)..% ")!)?)4.)!9%!.:$9!#$8)#)"%! "/!
A.被験者
%$"!@$4)!+)")4 %$")トレーニングによって、通
三郷市主催の「シルバー元気塾」(月 G 回, F
常の高負荷を用いた(M>% F 1)筋力トレーニ
回 G 時間で構成,自重による低負荷筋力トレーニ
ングと同程度の筋肥大・筋力増強効果が得られる
ングを主に実施)の参加者 F=>> 名を対象に説明
ことを、若年成人男性(FI 歳前後)において確
会を行い、参加を希望した者のうち、心疾患保有
GL)
認している 。ÁÂÃ とは、比較的低負荷を用いて
者、高血圧症、重篤な骨粗鬆症、肝機能障害者、
K 秒下ろし・K 秒上げというゆっくりとした動作
整形外科的傷害者を除く健康な V> 歳以上 JL 歳以
で持続的な筋力発揮を強調して行うトレーニング
下の在宅高齢者 L> 名を被験者とした。質問紙と
法である。ここには、持続的筋力発揮による筋内
問診に基づき医師が参加の可否を判断した。被験
の酸素化レベルの低下、それに伴う代謝物の蓄積
者に対しては、研究の目的、方法および危険性を
や成長ホルモン等の分泌促進といった一連の生理
説明し、研究に参加することへの同意を書面によ
応答が ÁÂÃ の筋肥大効果に関係していると考え
り得た後、以下の運動介入および測定を行った。
られる
GL&GV)
。このトレーニング法は比較的安全に
行える効果的な筋力トレーニング法として期待さ
被験者の身体的特性を表 F に示した。
被験者を男女それぞれ、以下「運動介入方法」
れているが、筋や血管系の構造が加齢に伴い変化
に説明する G つの運動群に無作為に F> 名ずつ割
している高齢者においても若年男性の実験結果と
り付けた。健康上の理由や仕事上の理由から、計
同様の効果が得られるかは確認されていない。
M 名の脱落者があった。このなかには意図的な減
また、ÁÂÃ は筋肥大、筋力増強という筋力ト
量を行っていた K 名も含まれる。いずれの脱落理
レーニングの主効果以外に、副次的な作用として
由も本運動介入とは直接関係しないものであっ
動脈・血管系機能にも影響を及ぼす。我々によっ
た。なお、本研究は国立健康・栄養研究所の設置
(JK)
表 F .被験者諸元
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VJD>^LDG
FVLDI^=D=
VFD=^=DF
LMDM^KDM
GFDM^GDI
VIDL^=DF
FVKD>^=DF
VLDJ^JDJ
=>DM^=DF
GFD=^KDG
VVDL^LD=
F=FDM^LDF
=JD>^VDJ
KMDF^KDI
KLD>^=D>
VKDI^KDM
FLIDJ^KDL
=JDF^IDK
KJD>^KDK
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VGD>^LDI
LID>^KDL
GFDJ^GDM
VLD>^JDK
=>DJ^LDM
GFDJ^KDG
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K=DV^=D=
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する倫理委員会(申請研究題目:高齢者のレジス
期間は長期適応に要する期間とされる FG 週間と
タンストレーニングが生活習慣病危険因子と自立
し FK)、最初の G 週間は主運動の動作の習得と運動
機能に及ぼす影響,承認 ,$D>L>FL)の承認を得
負荷 へ の 体 の 順応 を 目的 と し た 試走期間 と し
て実施したものである。
た GG)。F か月ごとに F 1 の測定を行い、トレー
B.運動介入方法
ニング強度の段階的変更を行った。
被験者を男女それぞれ ÁÂÃ、Á,(Á$9;:$ /)/!
安全管理のため、運動の実施前には毎回、自己
4)..% ")!)?)4.)!9%!"$4# :!.7))/)の G 群 に F>
記入式の体調確認と自動血圧計による血圧の確認
名ずつ無作為に割り付け、以下の動作様式で介入
を行い、運動禁忌事項に該当しないことを確認し
運動を行った。
たうえで運動を開始した。運動禁忌事項は以下の
ÁÂÃ:=>% F 1 の負荷を用い、K 秒下ろし・
項目 と し た。「安静時収縮期血圧(Â3E)が FM>
K 秒上げの動作を行う。動作中ウェイトを下ろさ
##C+ 以上、拡張期血圧(Q3E)が FF>##C+ 以
ない。動作の途中で力を抜かず、すべての動作を
上、いつもと異なる動悸の訴え、関節痛・筋痛・
通して筋張力を維持するように指示した。
神経痛などの自覚症状の訴え、その他、体調不良
Á,:=>% F 1 の負荷を用い、F 秒上げ・F 秒
などの自覚症状の訴え」
。また、次の徴候が確認
下 げ・F 秒休 み の 動作 を 行 う。F 秒 の 休憩時 は
ウェイトを下ろして脱力する。
された場合には、直ちに運動を中止するとした。
「顔面蒼白、冷や汗などの徴候、めまい、吐き気
ÁÂÃ は、比較的低負荷を用いてゆっくりとし
や嘔吐、呼吸困難、胸部の疼痛や不快感、関節
た動作で筋発揮張力を維持しながら動作を行う方
痛・筋痛・神経痛などの自覚症状の訴え」
。運動
法である。Á, は ÁÂÃ の動作様式に対する比較対
は上記運動禁忌事項がないことを確認のうえ、運
照群として設定した。負荷重量および反復回数は
動指導者のマンツーマン指導に従って実施した。
ÁÂÃ と同じ設定である。両群に用いた負荷重量
=>% F 1 は、およそ ÁÂÃ の動作における M 1
(M 回反復可能な最大負荷重量)に相当する。こ
C.測定項目
F.運動時の一過性の生理応答の測定
F)運動時の血中乳酸濃度
れは Á, の動作においては、およそ G>1 程度に
運動開始前の安静時、F 種目めの膝伸展運動 K
相当する。
セット終了後および G 種目めの膝屈曲運動 K セッ
運動の内容は膝伸展運動と膝屈曲運動の G 種目
ト終了後に血液を採取して血中乳酸濃度の測定を
であり、それぞれ専用のエクササイズマシンを用
行った。
運動開始前の安静時の測定は、
椅子に座っ
いて膝伸展運動、膝屈曲運動の順番で行った。反
て F> 分間の安静の後に行った。
それぞれの運動後
復回数は M 回とし、これを K セットずつ行った。
の測定は乳酸濃度の最大値を得るために、直後、
セット間の休憩は V> 秒とし、種目間の休憩は =
K> 秒後、F 分後に血液を採取し、そのうちの最大
分間とした。運動頻度は週 G 回とした。運動介入
値を計測値として採用した。血液は指先よりディ
(JL)
スポーザブル採血針を用いて約 = `: を採取した。
て採用した(Xc(+)
。
乳酸濃度は簡易血中乳酸測定器(ラクテート・プ
K)動脈・血管系機能評価
ロ,アークレイ社)を用いて測定した。
動脈・血管系機能の評価として安静時血圧、動
G)運動時の大腿周径囲
脈硬化度の指標の F つである EXY および大腿動
大腿周径囲を運動開始前の安静時、および運動
脈の安静時血流量の測定を行った。動脈・血管系
終了直後の G 回計測を行った。測定箇所は立位に
機能評価の測定に際しては、被験者に測定前日の
て大腿長の =>%に相当する位置で計測した。大
夜 I 時以降の水以外の飲食および前日の運動を禁
腿周径囲の変化は乳酸などの蓄積による筋肉の一
止した。測定は朝 I 時∼F> 時の間に行った。
時的な膨張度を評価するための測定項目である。
安静時血圧および EXY の測定は、脈波伝播速
G.運動介入前後の変化の測定
度測定装置(@$4#!EXYc'3-,コーリンメディカ
F)形態計測
ルテクノロジー社)を使用して行った。測定に先
形態計測 の 測定項目 は、身長、体重、体脂肪
立って被験者を仰臥位に寝かせ = 分間安静にし
率、除脂肪体重であった。体脂肪率、除脂肪体重
た。被験者の両上腕、両足首、大腿基部より脈波
は Q\' 法(aQ1L=>>',C$:$+ 社)を用いて測
を、胸骨部より心拍を計測した。上腕部−足首の
定した。
脈波速度(B4 :; "(:)!75:.)!9 8)!8):$%;B E;
G)筋量、筋力評価
XY)を全身動脈の動脈硬化度の指標として、心
筋 量 の 評 価 と し て 筋 厚 を、超 音 波 測 定 装 置
臓−大 腿 基 部 の 脈 波 速 度() 4%;@)#$4 :!75:.)!
(R$!N #)4 !ÂÂQ;I>>,'Á*O' 社)を用いて、
9 8)!8):$%;@EXY)を中心動脈の動脈硬化度
超音波周波数 JD=CA で超音波画像を撮影した。
の 指 標 と し て、大 腿 基 部−足 首 の 脈 波 速 度
測定部位は左側大腿部前面および後面であり、立
(@)#$4 :; "(:)!75:.)!9 8)!8):$%W!@ EXY)を運動
位で大腿長の =>%に相当する位置で撮影した 。
した部位の末梢動脈の動脈硬化度の指標としての
測定は K 回繰り返し、最も近似した G 値の平均値
評価に用いるものとした。
F)
を測定値として採用した。
大 腿 動 脈 血 流 量 は、超 音 波 画 像 診 断 装 置
筋力の評価として等尺性随意最大トルク(以後
(#$/):!FM>!E:5.,ソノサイト社)を用いて、大腿
YN と呼ぶ;# ?#5#!8$:5"% 4!$"%4 %$")
、等
動脈の血管内径および血流速度を測定し、算出し
速性随意最大トルク(以後,等速性トルクと呼
た。測定に先立って被験者を仰臥位に寝かせ = 分
ぶ)
、トレーニングマシンによる F 1 テストお
間 安 静 に し た。測 定 部 位 は 左 大 腿 の 基 部 と し
よび脚伸展パワーの測定を行った。YN および
た =)。
等速性トルクは関節トルク測定装置(NB)?!1b;
D.統計処理
L=>,サイベックス社)を用いて測定した。YN
各測定から得られたデータは平均値±標準偏差
の測定時の膝関節角度は V>°
とした。等速性トル
で表した。各運動群間の運動中の血中乳酸濃度の
クの測定は、I>°
c. の関節角速度で、膝関節角度
比較、運動前後の各測定項目の比較には G 要因分
FF>°から >°の動作範囲で行った。測定は I> 秒の
散分析を用いた(G;9 !',*Y')
。分散分析にお
休息を挟んで K 回行い、最大値を採用した。
いて有意差が認められた場合には T.)4’
.!EÁÂQ
膝伸展・屈曲動作の F 1 の測定は、エクササ
法を用いて有意差検定を行った。同一運動群での
イズに使用するレッグエクステンションマシン・
運動前後における平均値の差の検定には対応のあ
レッグカールマシンを用いて、重量を段階的に増
る % 検定を用いた。いずれの場合も有意水準は
加させながら行い、正確な動作で挙上可能な最大
= %とした。
値を採用した GJ)。
脚 伸 展 パ ワ ー は ア ネ ロ プ レ ス('")4$!E4)..!
K=>>,N*3- 社)を用いて、全力脚伸展時の発
結 果
A.運動時の一過性の生理応答の測定
揮パワーを座位姿勢で測定した。測定は、試行間
F.運動時血中乳酸濃度の動態
隔 F> 秒で連続 = 回実施し、最大値を測定値とし
図 F に運動時の血中乳酸濃度の変化を示した。
(J=)
pre
14
5
Muscle tickness (mm)
Blood lactate concentration (mM)
A Male
LN
4
12
LST
post
*
*
10
3
2
1
0
pre
Knee Ex.
Knee Flex.
8
6
4
2
0
LST
Blood lactate concentration (mM)
B Female
Male
5
LN
4
LN
LST
3
2
1
0
pre
Knee Ex.
Knee Flex.
図 F .運動時における血中乳酸濃度の変化
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ÁÂÃ!)?)4.)(ÁÂÃ6 〇) "/!Á,!)?)4.)(Á,6 ●)"!# :)!
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LST
LN
Female
図 G .運動介入期間前後における大腿部筋厚(前部・後部
の和)の変化
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においていずれの項目も有意な変化がみられな
かった。
G.筋量・筋力の変化
図 G にトレーニング前後における大腿前・後の
筋厚の変化を示した。ÁÂÃ において男性、女性
ともにトレーニング後にトレーニング前と比べて
有意な増加が認められた(男性 HIDJ±KDK%& 女性
+LDF±=DL%)
。Á, では男女とも有意な変化は認
ÁÂÃ、Á, の両群において男女とも運動後に運動
められなかった。男性では大腿前・後の筋厚の増
前安静値と比べて有意な増加がみられた。群間の
加率が ÁÂÃ では Á, に比べて有意に高かった。
比較では、膝伸展運動直後、膝屈曲運動直後にお
女性では筋厚の増加率は ÁÂÃ で高い傾向にあっ
いて男女ともに ÁÂÃ では Á, よりも有意に高い
たが G 群間に有意差は認められなかった。
値を示した。
表 G に 膝 伸 展 動 作、膝 屈 曲 動 作 の F 1、
G.運動時の大腿周径囲の変化
YN、関節角速度 I>°c. での等速性最大筋力およ
運動終了直後の大腿中央部の周径囲は、運動前
び脚伸展筋力の結果を示した。男性においては
の安静時と比べて ÁÂÃ では男女とも有意な増加
ÁÂÃ、Á, ともにすべての筋力測定項目において
を 示 し た(男 性 LID>±GDV → LIDJ±GD=#:>DV±
有意な増加が認められた。女性においては ÁÂÃ
>D=# 増,女 性 LJDF±LD= → LJDV±LDJ#:>D=±
ではすべての項目で有意な増加が認められたが、
>DL# 増)。Á, では変化はほとんどみられなかっ
Á, では膝伸展・屈曲の F 1 および膝屈曲の >°c
た(男 性 LMDJ±KD= → LMDM±KD=#,女 性 LIDV±
.、脚伸展筋力においてのみ有意な増加が認めら
=D> → LIDV±=D>#)。
れた。女性の膝伸展運動の F 1 を除くすべての
B.運動介入前後の変化の測定
筋力測定項目において ÁÂÃ の増加率が Á, より
F.形態計測値の変化
も高値を示したが(例 YN 伸展:男性 ÁÂÃ+K>
表 F に体重、体脂肪率、除脂肪体重の介入期間
±KK%,Á,+G>±GG%,女 性 ÁÂÃ+FM±FK%,
前後の変化を示した。男女とも ÁÂÃ、Á, の両群
Á,+=±FI%)G 群間の増加量に有意差の認めら
(JV)
表 G .筋力の変化
à B:)!GD!N "+).!"!#5.:)!.%4)"+%D
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ÁÂÃ!"]J
T)# :)
Á,!"]J
ÁÂÃ!"]I
Á,!"]I
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=FDF^IDJ
=JD>^F>DI d =IDK^FGD=
FFDV^=D>
FK=D>^LMDL FV=DJ^KVD> d FVMDL^=GDF
K>DK^KKDL
MJDK^KKDM F>KD>^GFDF FF>DJ^KID=
K=DV^K>D=
LVD=^IDI
VKDI^FKDM d LFDV^VDL
JDJ^LD=
FIVDL^LVD= d F>KD=^GGDF
FIDV^GGDF
FGIDV^KMDG d VVDF^FMDG
G>DK^FKDM
=VDK^FGDF d LIDI^FLDG
GFDK^MDI
=VD=^FLDI d KVDF^=DM
FLD>^=DJ
LLDK^IDI d KMDM^JDI
VDG^=DG
LFD=^VDL d
MDM^F>DJ
FGGDL^K>DL d FFGD>^FVDM FFVDL^GGDG
FMD>^FGD=
LDV^FMD=
JLDL^GFDF d VIDI^FLDK J>DM^FKDF
FGDJ^FGDF
KDG^GKD=
L=D>^IDG d KMDM^JDJ
GLDK^FKDI
L=DK^ID= d
FVDV^=DI
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GGD>^FKDL
FKDJ^FGDL
G>DL^FMD=
I>jc.
VKDV^FVDF JMDF^FGDJ d VIDI^FGD> JIDJ^FLD= d LGDJ^FFDV LIDK^F>DV d LLDK^MDF
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G=D=^FJDG
FLDF^JDM
FMDM^FID=
Á)+!E4)..!E$9)4&!X IMV^GFJ FFG>^GGM d FF=>^KFM FGMM^KFG d =IV^FIM JJK^FM= d V=>^GG=
g_! "+).
FLDK^IDV
FKD>^JDV
LKDM^VIDF
=IDV^VDG d
FVD=^FVDM
LJDF^JDJ
MDG^FIDG
JJI^F=> d
GJD>^GIDJ
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表 K .血圧・血管系機能の諸元
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3E&!##C+
gÂ.%$:!3E
g) "!3E
gQ .%$:!3E
EXY&!##c.
gB EXY
g@EXY
g@ EXY
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ÁÂÃ!"]I
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E4);%4 ""+ E$.%;%4 ""+
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FKVDG^FFDV FKKDF^FLD>
FKFDK^FFDM FG=DG^FVDK
KMDM^JDI
LFD=^VDL
ILDV^FFDG
JMDG^IDJ
IKDM^ID>
J=DI^LDJ
F>JDV^MDJ
MJDF^=DL
F>KDF^FGDF
MGDI^FFD>
IIDV^F=DL
JLDI^IDM
IKDV^F>D=
JFDF^VDG
IIDV^FFDG I=DL^F>DI
JLDM^F>DG JKDJ^JDJ
FLGM^FII
IIV^FL>
F>GJ^ML
FLVL^G>M
F>>V^FLF
F>KL^VI
FV=G^FM>
FFMJ^F=G
F>IV^FKJ
FVKJ^GFV
FFVI^MF
F>JK^F==
FLLL^GM>
IVK^G>V
IJ=^I=
FLVV^GLM
IVK^FI>
IIL^IL
FLVL^FIM FLV>^FMK
KI^M
LG^V
F>K>^I> F>KL^F>M
Y :5).! 4)!#) ".±ÂQD!3EW!B4 :!B:$$/!74)..54)&!EXYW!75:.)!9 8)!8):$%&!B EXYW!EXY!@4$#!B4 :!%$! "(:)&!@EXYW!EXY!
@4$#!) 4%!%$!@)#$4 :&!@ EXYW!EXY!@4$#!@)#$4 :!%$! "(:)D
れた項目はなかった。
ニング前と比べて有意な増加が認められた(男性
K.動脈・血管系の変化
ÁÂÃ+GL±GJ%,女 性 ÁÂÃ+F=±M%)。Á, で は
図 K にトレーニング前後における安静時の大腿
男女ともにほぼ変化がなかった(男性 ÁÂÃ+L±
動 脈 血 流 量 の 値 を 示 し た。男 性、女 性 と も に
F=%,女性 ÁÂÃ+G±GG%)
。男女 と も に 運動群
ÁÂÃ において FG 週間のトレーニング後にトレー
間の増加率に有意差は認められなかった。
Fenoral artery blood flow (ml/s)
(JJ)
pre
post
20
10
なければならない。両群の初期値には有意差は認
められなかったが Á, において ÁÂÃ より高い傾
*
15
期間前の初期値にやや差がみられたことに留意し
向 に あ っ た(ÁÂÃ:IDJ ± FDF##,Á,:F>DJ ±
*
>DI##)
。両群の初期値は同年代の平均値(IDV±
F)
よりもいずれも高値であったことから、
FDK##)
5
運動介入による変化の違いはベースライン特性に
よる平均への回帰現象とは考えにくい。ただし、
0
LST
LN
LST
Male
LN
Female
ベースラインの高かった Á, 群において運動介入
による筋厚の増加に天井効果が作用した可能性は
図 K .運動介入期間前後における大腿動脈血流量の変化
T+DKD!N "+).!"!@)#$4 :!B:$$/!@:$9!B)@$4)! "/! @%)4!%)!"%)4;
8)"%$"!7)4$/D
) ".±ÂQ! 4)!.$9"D!dÂ+"@ "%!/@@)4)")(e<>D>=)B);
%9))"!74);%4 ""+! "/!7$.%;%4 ""+!8 :5).D
否定できない。
筋力増強効果をみると ÁÂÃ ではすべての測定
項目において有意な増加がみられた。Á, でも女
性の一部の測定項目を除いてほとんどの測定項目
において有意な増加がみられた。女性の膝伸展運
表 K に動脈硬化度の指標である EXY と血圧と
動の F 1 を除くすべての筋力測定項目において
安静時血圧の結果を示した。すべてのグループに
ÁÂÃ の増加率が Á, よりも高値を示す傾向がみら
おいて(男・女,ÁÂÃ・Á,)
、EXY、血圧のいず
れ た が(例 YN 伸 展:男 性 ÁÂÃ+K>±KK%,
れの項目においても有意な変化は認められなかっ
Á,+G>±GG%,女 性 ÁÂÃ+FM±FK%,Á,+=±
た。
FI%)
、G 群間の増加量に有意差の認められた項
考 察
目はなかった。筋力の増強は筋肥大による形態的
要因と最大随意興奮レベルによる神経性要因の両
本研究結果より、高齢者においても FG 週間の
者に依存し FI)、神経性の適応は比較的容易に起こ
ÁÂÃ を用いた膝伸展・屈曲運動により若年男性
るとされている FG)。一般的に高齢者に処方される
同様、有意な筋肥大・筋力増強、安静時筋血流量
Á, のような低負荷を用いた筋力トレーニング
の増加が起こることが示された。
は、神経要因の適応による筋力増強効果はある程
A.筋肥大・筋力増強効果
度期待できるが、筋力増強の根源的要素となる形
本研究では、高齢者においてゆっくりとした動
態的変化を生じるにはトレーニング刺激として不
作で持続的な筋力発揮を行う ÁÂÃ では比較的低
十分であると考えられる。
負荷を用いながらも大きな筋肥大、筋力増強効果
なお、体重、体脂肪率、除脂肪体重といった全
が得られることが示された。筋肥大効果をみる
身的な体組成に関する数値は ÁÂÃ、Á, の両群に
と、男女ともに大腿前・後の筋厚が有意に増加
おいていずれの項目も有意な変化がみられなかっ
し、その増加量の平均は男性では IDK##、女性
た。本実験の介入運動は下肢の局所的なトレーニ
では LD>## 程度であった。これは日本人の大腿
ングであったため、全身の体重、体組成に影響を
部の筋厚の平均値の年代別変化 F)からみると、平
与えるには不十分であったものと思われる。
均として男性ではおよそ FM 歳分、女性ではおよ
B.筋肥大を誘発する生理的メカニズム
そ I 歳分、若返ったと言い換えることができる。
ÁÂÃ が比較的低負荷を用いながらも大きな筋
同一の負荷重量、反復回数で行った Á, では有意
肥大・筋力増強が得られる理由として、運動中の
な筋肥大効果は認められなかったことから、持続
持続的な筋力発揮による筋血流の制限 K)が運動中
的な筋力発揮を行う ÁÂÃ の動作様式による効果
の筋酸素化レベルの低下を導くことにより、局所
と考えられる。ただし、男性の被験者では大腿
的な乳酸などの無酸素性代謝物が蓄積し、成長ホ
前・後の筋厚の増加率が ÁÂÃ において Á, に比
ルモンなどの内分泌系活性が亢進すること FL&GK)、
べて有意に高かったが、ここでは両群の運動介入
低 酸 素 環 境 に よ る 活 性 酸 素 種(1*Â;1) %8)!
(JM)
*?+)"!.7)).)が発生 FF)することなどが関係し
経を介した血管運動系(静脈求心性線維)への影
て い る と 考 え ら れ て い る。本研究 に お い て も
響なども関係しているかもしれない。
ÁÂÃ では Á, と運動負荷強度、力学的仕事量が同
しかしながら、高齢者では ÁÂÃ による、動脈
一にもかかわらず血中乳酸濃度が男女とも Á, よ
硬化度の指標の F つである EXY を改善させる効
りも有意に高値を示すことが確認された。なお、
果は認められなかった。運動中に蓄積する血中乳
筋力トレーニングによって筋内に乳酸などの代謝
酸が、血管内皮細胞機能に作用し、血管のトーヌ
物が蓄積すると活動筋への血漿成分の移動が起こ
スを改善する可能性が指摘されている G>)。これが
り、筋肉が膨張する(筋肉のパンプアップ現象:
ÁÂÃ による動脈硬化度を改善させる一要因とし
5.:)!@:5/!.@%) 。運動終了直後の大腿中央部
て働いている可能性があるが、高齢者では ÁÂÃ
の周径囲は ÁÂÃ では男女とも有意な増加を示し
における乳酸濃度の上昇の程度が若年者に比べて
た(男 性+>DV±>D=#,女 性+>D=±>DL#)が、
かなり小さかった。無酸素性エネルギー代謝能に
Á, では変化はほとんどみられなかった。ÁÂÃ で
すぐれた速筋線維の加齢に伴う減少が関係してい
は乳酸などの代謝物の蓄積によるパンプアップ現
るかもしれない。ただし、高負荷を用いた筋力ト
象が起きていたことがわかる。また、大腿周径囲
レーニングでは動脈硬化度を増大させるという報
変化量と血中乳酸濃度の増加量との相関関係をみ
告もある FJ)。本研究では動脈硬化度の改善はみら
ると 4=>DV という高い相関が得られた。ただし、
れなかったが、マイナス作用がみられなかったこ
本研究における血中乳酸濃度の値は K # 程度で
とは ÁÂÃ の効果の F つとして評価に値すると考
あり、F># 程度まで上昇する若年男性の結果に
えられる。
GF)
比べて低い GL)。周径囲の変化も FD=∼ G # ほど増
D.安全性
加する若年男性の変化に比べるとその値は小さ
ÁÂÃ では使用する負荷重量が通常の高負荷を
い。高齢者では無酸素的なエネルギー代謝が得意
用いた筋力トレーニングよりも小さいため関節に
である速筋線維が減少するとされるが F=)、そのこ
作用するトルク、筋にかかる張力がそれだけ小さ
とが原因の F つとして作用していると考えられ
くなる。更に、動作中の加速・減速がほとんどな
る。このような筋内の代謝的環境の変化が若年者
いため、同一負荷重量を用いる Á, と比べても関
に比べて小さかったことが、本研究の筋厚・筋力
節に作用するトルクのピーク値は J>%程度まで
の多くの測定項目において増加率に ÁÂÃ と Á,
減少する GL)。筋、腱や靭帯にかかる負担もそれだ
の間に有意差がみられなかったことの原因の F つ
け小さくなる。また、筋力トレーニング中の大き
なのかもしれない。
な血圧上昇は心不全などの心臓・血管系のイベン
C.動脈・血管系機能に与える副次的効果
トのリスクの一要因と考えられる。中・高齢者に
また、ÁÂÃ は筋肥大、筋力増強という筋力ト
おける筋力トレーニング中の血圧の上昇は若年者
レーニングの主効果以外にも、副次的な作用とし
に 比 べ て 小 さ い と さ れ る F>)が、や は り 筋力 ト
て動脈硬化度の低下、筋血流量の増加といった動
レーニングによる血圧の上昇は望ましいものでは
脈・血管系機能にも好ましい影響を及ぼすことが
ない。若年男性においては ÁÂÃ では通常の高負
FM&G=)
。本研究では
荷を用いた筋力トレーニングよりも運動中の血圧
ÁÂÃ によって高齢者でも運動を行った大腿部に
上昇度が有意に低いことが報告されており GL)、高
おける筋血流の有意な増加が認められた。末梢の
齢者においても同様の結果が期待される。本研究
筋における血流量の低下は高血糖、高脂血症等の
において、予備実験も含めて運動中の血圧変動の
生活習慣病と関連していると考えられていること
測定を行い、若年者と同様の傾向を観察した。し
から FV)、ÁÂÃ は生活習慣病予防という点でも意義
かしながら、測定精度上十分に信頼に値するデー
のある運動といえる。安静時筋血流量の増加に
タを示すことはできなかった。高齢者における
は、低酸素状態による毛細血管の発達 L)や、末梢
ÁÂÃ の血圧上昇度に関しては今後の懸案事項で
若年者において報告されている
G)
の筋での安静時代謝量の増加 などの作用が働い
ある。
た可能性が考えられる。また、運動神経や自律神
以上の結果から ÁÂÃ は高齢者にとって整形外
(JI)
科的傷害の危険性が小さく比較的安全なエクササ
イズ方法といえる。また、若年男性同様に心臓・
血管系に与える負担も小さいことが期待される
が、これに関しては本研究では検証できておら
ず、今後の課題である。
結 論
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以上より、ÁÂÃ は高齢者においても筋肥大・
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筋力増強に効果的であり、かつ整形外科的傷害の
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リスクの低い安全な方法であることが示された。
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また、筋血流の増強効果も認められることから、
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糖尿病などの代謝異常による疾患のリスクの低減
の効果も期待できる方法と考えられる。
謝 辞
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本研究を遂行するにあたり多大なるご協力をいただきま
した埼玉県三郷市住民の皆様および市役所市民生活課シル
バー元気塾推進課の皆様に厚く御礼申し上げます。
参 考 文 献
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第 @E 回健康医科学研究助成論文集
平成 HI 年度 VV<JH∼JI(@PPI<G)
運動療法のための体幹部骨格筋の評価
―高速スキャン磁気共鳴画像法(ÁÂÃ)を利用した筋の活動性の画像化―
俵 紀 行* 新 田 收**
来 間 弘 展**
新 津 守***
伊 藤 彰 義****
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緒 言
価は、長時間の固定が可能な四肢に限定されてい
た。体幹部に関しては、測定時の呼吸停止時間に
リハビリテーション医学では、身体機能を回
限界があるという問題から報告されていない。対
復・維持し、快適な生活を送るため、運動療法を
象とする骨格筋は身体の各部分に存在するが、特
重要視している。また、スポーツ医学における筋
に体幹部はヒトの根幹を成す部分であり、体幹部
力トレーニングは、競技能力の向上もしくはス
の評価は四肢にも増して重要性が高い。ゆえに運
ポーツ障害からの復帰のための有効かつ重要な手
動と体幹部骨格筋の活動様相との関連性を解明
段である。これらの運動療法や筋力トレーニング
し、可視化することは大変意義深い。このため、
により効果的な成果を残すためには、目的とする
筋活動の評価を行える筋の対象は体幹部の筋を含
筋を活動させる運動の選択と運動による筋活動の
めた全身であることが望ましく、これを可能にす
評価が必要となる。また筋活動の評価において
るための手法を新たに提案する必要がある。
は、経過観察や個人差もしくは集団差の評価も可
一方、ÁÂÃ の超高速撮像法の H つに、エコー
能にするため、定量評価であることが望ましい。
プ ラ ナ ー イ メ ー ジ ン グ(781";9$,$")$=,=C"
磁 気 共 鳴 画 像 法()$=,7*8"7(,$,87")$=,=C"
H@)
がある。5NÃ は数秒で撮像可能な超高速撮
5NÃ)
ÁÂÃ)のパラメータの H つに横緩和時間(#@ 値)
像 法 の H つ で あ る。特 に ス ピ ン エ コ ー 系 5NÃ
がある。この値は、組織特異性があり、水分含有
((;,A781"781A;9$,$A)$=,=C"25A5NÃ)は、画 像
量に比例した値であるだけでなく、運動に関与し
コントラストが Á25 と類似しており、#@ 値計測
た筋の運動後の値は増加することが知られてい
のための撮像時間短縮化が期待できる。先行研究
る K)。このため、運動生理学の分野では、運動に
においても、25A5NÃ を用いた筋機能評価のため
関与した筋の定量評価に用いる指標として #@ 値
の撮像時間短縮に関する報告例 I&HP&HE)はあるが、
を積極的に多用してきた H&L&F&J&HH&HLAHJ)。また、筋の活
#@ 値算出に関する Á25 との比較検証を行わずに
動性の画像化に関しては、運動前後の筋の #@ 値
25A5NÃ を活用しているのが現状である。また、
画像を作成し、比較提示するという筋機能 ÁÂÃ
超高速撮像法を用いた筋の活動性の評価に関する
() (897"> ,8*,$9")$=,7*8"7(,$,87")$=,=C"
報告でも、対象としている筋は四肢のみであり、
)>ÁÂÃ)を 0!)$"7*"$9<
@AE)
が提案している。
体幹部の筋を対象とした報告例は、筆者らが知る
しかしながら、)>ÁÂÃ を含めた #@ 値算出のた
限りでは存在しない。
めに撮像する #@ 強調画像の撮像法は、マルチプ
これまでに我々は、体幹部骨格筋の活動様相評
ルスピンエコー法() 9*;97"(;,"781C"Á25)が一
価を行うための手段として超高速撮像法に着目
般的であり、数分間の撮像時間を要してしまう。
し、特に 25A5NÃ を用いた #@ 値計測の撮像時間
そのため、#@ 値を用いた運動による筋活動の評
短縮化に関する検討を行ってきた。その結果、筋
(JG)
の #@ 値算出に関して、Á25 と同様に #@ 値を算
MÃ2N)HG)に 着 目 し た。# 7MÃ2N は、Z177,* 型
出することが可能である条件が存在することを明
=$/7,*"781 法の名称の H つであり、定常状態で
らかにできた
HI&@P)
。
あれば画像コントラストは繰返し時間(7;7**,"
超高速撮像法を用いた筋の #@ 値算出に関する
*)7C"#Â)およびエコー時間(781"*)7C"#5)に
上記の結果を踏まえて、本研究では、体幹部深部
依存しないため、撮像時間の大幅な短縮が可能な
筋も計測対象にできる“骨格筋の評価”の定量評
撮像法である。また、# 7MÃ2N は 2S 比が高い
価方法を ÁÂÃ により確立し、運動内容と活動す
#@*強調画像を作成できるので、25 法や 25A5NÃ
る骨格筋との関連性を解明することを目的とし
による #@ 強調画像と類似した画像コントラスト
た。
をもつことができる。
本研究で提案する )>ÁÂÃ は、H)撮像時間を大
研 究 方 法
幅に短縮できること、@)0!)$"7*"$9<@AE)の提案す
A.我々が提案する新たな筋機能 MRI
()>ÁÂÃ)
る )>ÁÂÃ と 区 別 す る、と い う 点 か ら、以 後、
ヒト骨格筋は全身に存在しているため、評価可
>$(*A$8B 7/")>ÁÂÃ(>$(*A)>ÁÂÃ)と 称 す る こ と
能な範囲は、四肢のみならず、体幹部を含めた全
とする。
身であることが望ましい。しかしながら、Á25
図 H に >$(*A)>ÁÂÃ の画像処理フローチャート
では撮像時間を数分要してしまうため、評価可能
を示す。運動前(7(*)と運動後($>*7"7678(7)
な部位は四肢に限定される。一方、撮像時間が非
に、機能的画像(#@ 値計測 の た め の #@ 強調画
常 に 短 い 25A5NÃ は、原理上 は Á25 に 類似 し て
像)として 25A5NÃ 画像を、形態画像として # 7A
おり #@ 値の算出が可能であるが、空間分解能が
MÃ2N 画像をそれぞれ取得する。次に、#5 の増加
悪く、信号対雑音比((=,$9"*",(7"$*C"2Â)
に伴う画素値である ÁÂ 信号の減衰は(H)式に
も高くない。このため、形態画像としての利用に
従う。そのため、得られた機能的画像より(H)
は不向きであると考えられる。
式に基づく直線回帰法にて #@ 値を算出し、#@ 値
そこで我々は,高速撮像が可能な形態画像とし
画像を作成する。
て * 7">$(*")$=,="%*1"(*7$/";787((,(# 7A
2=2P×76;(#5S#@)…(H)
SE-EPI image
(rest)
TrueFISP image
(rest)
SE-EPI image
(aftere exercise)
Calculate T2
TrueFISP image
(after exercise)
Calculate T2
T2 image (after exercise)
T2 image (rest)
Image Processing
Image Processing
T2 image
after eliminated noise (rest)
T2 image
after eliminated noise (after exercise)
Image Processing
Image after converted
color table
difference image
(after exercise-rest)
Fused image
Image Processing
difference image
after threshold
Image Processing
fast-mfMRI
図 H .>$(*A)>ÁÂÃ の画像処理フローチャート
M=<H<"M9%"81$*">")$=7";87((,=",">$(*A)>ÁÂÃ<
(JE)
#5 はエコー時間、#@ は組織の #@ 値()()
、2P
は #5=P に お け る ÁÂ 信号値、2 はエコー時間
出力マトリクスサイズ=@LK×@LK、バンドワイズ
(QR)=LPH"+OSN6、収集時間は H@ 秒である。
#5 における ÁÂ 信号値である。また、ÁÂ 画像
@.25A5NÃ
より得られるのは 2 と #5 であり、#@ 値画像の
#Â は @PPP")(、#5 = @I、GP、EL、KP、FL")(
利点は、画像の画素値が組織の #@ 値となってい
の L エコー。収集マトリクスサイズ=H@J×H@J、
ることである。
出力 マ ト リ ク ス サ イ ズ=@LK×@LK、M0=IP°
、
収集した画像の背景部分の画素は、熱雑音の影
QR=HGI@"+OSN6、H エコー当たりの収集時間は
響により #5 に依存しない、ある一定の値を有し
@ 秒である。
ている。そのため、#@ 値画像の背景部分は高い
G.共通条件
画素値を有するため、視覚的に問題となることか
ス ラ イ ス 厚 = HP))、関 心 領 域(M'T)=
ら、#@ 値画像の背景部分の画素値を排除する必
EPP))×EPP))、積算回数(5U)=H、信号受
要がある。25A5NÃ 画像では、体幹部と背景部分
信 コ イ ル=パ ラ レ ル イ メ ー ジ ン グ(N0#)用
との画素値の差は大きく、両者の区別が容易に行
Q/A$$"89。ただし、N0# は撮像時には使用
える。この情報を用いて閾値処理を #@ 値画像に
しないものとする。
施し、背景部分の画素値を P(ゼロ)とした雑音
得られた画像データは WÃZ'Á 規格にて NZ に
除 去 後 の #@ 値 画 像(#@")$=7"$>*7"79),$*7/"
取り込み、その後画像処理は Ã,*7$8*:7"W$*$"[$,A
,(7)を作成する。
= $=7(ÃW[&"Ã##"T( $9"Ã,>)$*,"29 *,(&"Q 9A
その後、運動に関与した筋であれば、運動後と
/7&"Z')にて行った。#@ 値の算出は、各エコー
運動前とでは #@ 値に差が生じるため、これを差
時間の ÁÂ 信号から単一指数関数とする直線回
分することで、雑音除去後の #@ 値画像の差分画
帰法により行った。ただし、最初のエコー信号
像(/>>77,87")$=7)を作成する。この差分画像
(#5=@I)()は、飽和効果による算出値の誤差の
では運動に関与した筋以外にも、運動とは関係な
影響を最小限にするため計算には使用しない HE)。
く水分含有量の高い消化器も存在しているため、
C.運動負荷と活動する骨格筋との関連性に関
こ れ ら の 臓器 と の 区別 が 必要 と な る。先行研
する検証
によれば、運動に関与した筋の #@ 値
本研究では、運動と活動する骨格筋との関連性
の上昇は @P)( 程度であることが多かったため、
について、提案手法の有用性に関する検証を容易
本研究では閾値として @P)( とし、閾値以上の領
にするため、深部筋である大腰筋に着目した。被
域は除外した画像として閾値処理後の差分画像
験者に実施した運動内容は図 @ に示すとおりであ
究
H&L&F&J&HH&HLAHJ)
(/>>77,87")$=7"$>*7"*17(19/)を作成する。
最後に、カラーテーブルを変換した閾値処理後
る。最初は仰臥位にて股関節および膝関節は伸展
位状態にする。その後、右股関節および右膝関節
の差分画像()$=7"$>*7"8,:7*7/"89"*$-97)と
の IP°屈曲運動を HPP 回施行した(7678(7AH)
。
形態画像である運動後の # 7MÃ2N 画像との融合
その後 H != の負荷を足関節部に装着し、同様の
処理を行い、>$(*A)>ÁÂÃ が出来上がる。
運動を HPP 回施行した(7678(7A@)。ÁÂ 画像は
B.被験者および使用機器
運動前と各運動後にそれぞれ収集した。運動間隔
運動習慣のない男性 F 名(年齢:@E<F±G<@ 歳,
は、H 秒で屈曲運動、@ 秒で伸展運動を繰り返す
身 長:HFH<@±I<J8),体 重:KG<J±HH<I!=)を 対
ように指示し、メトロノームにより時間間隔を管
象とした。横断面の ÁÂ 画像は、H<L# の診断用
理した。運動時間は 7678(7AH および @ ともに、
ÁÂÃ 装置(H<L#"Á$=,7*)"2);1,,シ ー メ ン
それぞれ GPP 秒である。なお、本研究は国立ス
ス社)より収集した。撮像条件であるパルスシー
ポーツ科学センター倫理委員会の承認を得てい
ケンスは以下の @ 種類である。
る。また、実施に際しては、事前にすべての被験
H.# 7MÃ2N
者に十分な説明を行い、実験の趣旨に関する同意
#Â=E<F@")(、#5=@<GK")(、フリップアングル
を得た後に施行した。
(M0)=LP°
。収集マトリクスサイズ=LH@×LH@、
(JL)
(a)
(b)
(c)
(d)
図 @ .5678(7AH"
($&"-)"および 7678(7A@"
(8&"/)"の略図
M=<@<"#17"7678(7"(817)$">"7678(7AH"
($&"-)"$,/"7678(7A@"
(8&"/)<
#17"7678(7("7;7$*7/"HPP"*)7(">976,"7678(7">)"*17";(*,"76*7,/,="*17"=1*"*1=1<"W ,="7678(7A@&"HA!="%$("9$/7/","
*17"=1*"$,!97<
(a)
R
(b)
L
(e)
R
R
(c)
L
(f)
L
R
R
(d)
L
(g)
L
R
R
L
(h)
L
R
L
図 G .運動負荷前"($&"-&"8&"/)"および運動負荷後"(7&">&"=&"1)"の体幹部 ÁÂ 画像および #@ 値画像
M=<G<"ÁÂ")$=7("$,/"#@")$=7","* ,!"$*"7(*"
($&"-&"8&"/)"$,/"$>*7"7678(7A@"
(7&">&"=&"1)<
# 7MÃ2N")$=7"($&"7)<"25A5NÃ")$=7"(-&">)<"#@")$=7">)"25A5NÃ")$=7"(8&"=)<"#@")$=7"$>*7"79),$*7/",(7"(/&"1)<"0%(",A
/8$*7("*17"$8*:$*7/"=1*";($(")$D") (897<
結 果
に筋の同定が行いやすいことが示されている。ま
た、運動負荷後の画像では右大腰筋の信号強度が
図 G に運動負荷前後の ÁÂ 画像および処理画
上昇していることを示しているが、それが一目で
像を示す。ÁÂ 画像および処理後の画像の輝度値
判断できるほどのわかりやすい表示ではないこと
は、黒が低く、白が高いという特徴をもつ。
($)
"
も示されている。
(8)"と"(/)"および"(=)"と"(1)"と
および"(7)"の # 7MÃ2N 画像は、
(-)"および"(>)"の
を比べてみると、画像の背景部分の除去により、
25A5NÃ 画像よりも空間分解能という点で視覚的
視覚的に体幹部の筋が把握しやすくなっている。
(JK)
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
図 E .5678(7AH 後"($&"-&"8)"および 7678(7A@ 後"(/&"7&">)"における画像処理後の #@ 値画像
M=<E<"N87((7/")$=7("$*"$>*7"7678(7AH"
($&"-&"8)"$,/"$>*7"7678(7A@"
(,"/&"7&">)<
W>>77,87")$=7"($&"/)<"W>>77,87")$=7"$>*7"*17(19/"(-&"7)<"Z,:7*7/"89"*$-97">)"/>>77,87")$=7"$>*7"*17(19/(8&">)<"
0%(",/8$*7("*17"$8*:$*7/"=1*";($(")$D") (897<
(a)
(b)
ΔT2 [ms]
0
10
20
ΔT2 [ms]
0
10
20
図 L .融合処理後の画像(>$(*A)>ÁÂÃ)
M=<L<"#17"> (7/")$=7"
(>$(*A)>ÁÂÃ)">"$>*7"7678(7AH"
($)"$,/"$>*7"7678(7/A@"
(-)<
Z9"-$"(1%("/>>77,87"#@"(Δ#@)<"0%("/7,*7"*17"$8*:$*7/"=1*";($(")$D") (897<
図 E に 処 理 後 の 画 像 を 示 す。単 純 に 運 動 後
りやすく表示されている。しかしながら、図 E の"
($>*7"7678(7AH もしくは $>*7"7678(7A@)の画像
(8)"および"(>)"のみでは、筋活性の領域は判別で
から運動前(7(*)の画像の画素値を減算した結
きても、その領域がどの筋であるのか把握するこ
果が図 E の"($)"および"(/)"である。この結果で
は、#@ 値の差分が大きい部分では筋以外の組織
と は 難 し い。そ こ で、先 に 取 得 し た 形 態 画 像
(# 7MÃ2N 画像)との融合処理が必要となる。
でも大きい画素値を有していることが示されてい
図 L に典型的な >$(*A)>ÁÂÃ を示す。右の大腰
る。その後閾値処理を行うことで、筋の活性に関
筋のみが運動に関与したことを表している。ま
係した部分を特に強調させることに成功している
た、#@ 値の差分をカラーリングし形態画像であ
(図 E の"(-)"および"(7)
)
。その後、画像を融合す
る # 7MÃ2N 画像に融合させているため、運動に
るためにカラーテーブルを変換した画像が図 E の"
関与した筋の部位同定のみならず、その頻度も同
(8)"および"(>)"であり、より筋活性の領域がわか
時に表示できている。また、図 E の"
(-)"の右大腰
(JF)
筋は、
($)"よりもカラーリングの色が濃いこと示
(7678(7AH または 7678(7A@)の #@ 値画像から運
されていることから、7678(7A@ が 7678(7AH より
動前(7(*)の #@ 値画像のそれぞれの位置での
もより筋活性したことを容易に把握することがで
画素値(すなわち #@ 値)を減算して抽出した。
きる。
0!)$"7*"$9<@AE)は、筋活性の領域抽出には、運動
なお、F 名すべての被験者において同じような
前の筋の #@ 値の平均値+H 標準偏差を閾値とし
結果を示した。
ている。しかしながら、経験的ではあるが、この
考 察
閾値では疲労困憊にまで強度の運動負荷を行わな
いと筋活性の領域を抽出できない可能性が潜んで
体幹部骨格筋に関する活動様相の定量評価は、
いる。本研究ではその可能性を抑えるための方法
リハビリテーション医学やスポーツ医学の分野で
として、運動後から運動前の #@ 値を差分すると
は以前より望まれていたにもかかわらず、それら
いう手法を提案した。画像取得のための位置合わ
を具体的に検討するための手段に乏しかった。特
せは、運動前と運動後ではそれぞれ独立して行っ
に深部筋については、従来から用いられている超
ているため、位置ズレが起こるという危険性が潜
音波法や筋電図法では対象とすることができな
んでいる。しかしながら、#@ 値を算出するため
い。このため、これらの項目に着目し検討される
の 画像 で あ る 25A5NÃ 画像 の 収集 マ ト リ ク ス は
ことはなかった。
H@J×H@J であり、空間分解能は高くない。その
本研究で提案する手法(>$(*A)>ÁÂÃ)の利点の
ため、多少の位置ズレがあっても # 7MÃ2N 画像
H つは撮像時間の短さである。従来法の )>ÁÂÃ
とのマッチングには十分に利用できるものと考え
では E 分 @P 秒の時間を必要としていたが、>$(*A
られる。運動負荷強度の強弱による >$(*A)>ÁÂÃ
)>ÁÂÃ では、わずか @@ 秒と約 H@ 分の H にまで
の描出能については、本研究では議論することが
短縮可能とした。筆者らの経験では、ヒトが呼吸
できないため、今後更なる研究が必要である。
停止可能な時間は約 @L 秒程度である。ゆえに、
また、閾値の設定は、先行研究の結果 H&L&F&J&HH&HLAHJ)
H 度の呼吸停止によりすべての画像収集が可能と
を踏まえて、@P)( とした。この閾値処理を行う
なったことが示唆される。
理由は、運動による筋活性とは関係のない消化器
従来法の )>ÁÂÃ では、#@ 値算出のための撮像
は、水分含有量が多く、腸の蠕動運動で #@ 値の
法には Á25 が用いられている。一方、本研究で
差分が大きくなることが予想されるため、消化器
は #@ 値算出のための撮像法として 25A5NÃ を使
からの影響を排除する必要があった。図 E の"($)
"
用しているが、両者(Á25 と 25AN5Ã)の画像コ
と"(/)
、および"(-)"と"(7)"とを比較すると、消化
ントラストは類似しているものの、同一ではない
器等の影響は排除されているのが確認できてい
という疑問点が残る。しかしながら、筋の #@ 値
る。このことから、閾値の設定は妥当であると考
算出に関して、Á25 と同様に #@ 値を算出するこ
えられる。また、図 E の矢印で示した部分以外に
とが可能である条件が存在すること HI&@P)を明らか
も画素値が P でない部分が存在するが、矢印で示
にしており、本研究ではその条件下にて画像を収
した部分とのカラーリングの濃淡差をみると、除
集しているため、筋の #@ 値算出に関して問題は
外してもよいと判断できる。しかしながら、この
ないと考えている。
部分の改善等は、今後も引き続き検討したいと考
次に、#@ 値画像の背景部分の雑音に関しても
えている。
図 G の"(8)"および"(=)"では高い輝度値をもち、視
本研究により得られる成果としては、体幹部の
覚的にも見えにくい画像となってしまう。図 G の"
骨格筋、特に深部に位置する筋も計測可能とする
(-)"と"(8)"および"(>)"と"(=)"は、元々位置情報は
ことで、運動療法で筋活動が期待される筋との整
同一であるため、これらの情報を利用すること
合性を検証し、解明することができる。この結
で、図 G の"(/)"および"(1)"のように #@ 値画像の
果、これまで経験的に行われていた体幹部の運動
背景部分の除去を行うことができた。
療法を、より科学的な療法として位置づけるため
本研究では、筋の活動様相の抽出として運動後
の手段としての貢献が期待できる。
(JJ)
総 括
リハビリテーション医学では運動療法が重要視
されるため、運動の対象となる筋の選択および運
動による筋の活動評価が必要となる。また、ヒト
8(7",*7,(*","(!797*$9") (897"ÁÂ")$=7(<"Ã,:7(*"Â$/9&"
bc&"EJPAEJL<
F)M978!7,(*7,"X[&"Z$,-"ÂZ&"N$!7"ÂR&"N7(18!"ÂÁ
(HIJJ)?"08 *7"7>>78*(">"7678(7","ÁÂ")$=,=">"(!79A
7*$9") (897",",)$9":9 ,*77(<"0)"X"Â7,*=7,9&"aca&"
@GHA@GF<
の随意運動の根幹を成す体幹部に位置する筋群の
J)M978!7,(*7,"X[&"R$* ) 99"W&"Á8Ã,*7"WW&"Q7*88"[0&"
評価は、四肢にも増して重要性が高いにもかかわ
Z1$(,"WN&"N7(18!"ÂÁ(HIIG)?"Á (897";*,"#@"79$6A
らず、評価方法は今まで存在しなかった。本研究
$*,"*)7("$,/"%!"/ ,="7;7**:7")$6)$9":9 ,*$"
では、高速スキャン ÁÂÃ を用いた方法を提案し、
7678(7<"X"0;;9"N1(9&"\]&"@JLLA@JLI<
運動内容と活動する体幹部骨格筋との関係を画像
I)X7,,7"Y&"M97"XÁ&"Z;7"#Y&"N*817,"5X&"Á77"Â0
化した。従来の経験則による運動療法を画像化に
(HIIE)?"Z1$,=7(",")$=,7*8"7(,$,87")$=7(">") (897"
より評価できれば腰痛予防に効果的な筋の特定に
/7;7,/","7678(7",*7,(*"$,/"/ $*,&",*"%!<"X"0;;9"
寄与し、筋力トレーニングにおける運動内容と使
用する筋との関係把握などが期待される。
謝 辞
N1(9&"\d&"@HHIA@H@E<
HP).7,,$,"ÂN&"N87"#Q&"Y7"XZ(HIIL)?"W,$)8"781"
;9$,$")$=,=">"7678(7/") (897<"Á$=,"Â7(,"Ã)$=,=&"
a_&"IGLAIEH<
HH)., =$($"Â&"+$$(1"2&"Ã,"&"#$) $"Á&"' 81"#&"+"
本研究に対して助成を賜りました財団法人明治安田厚生
0(@PP@)?"Â78 *)7,*";$**7,">"B $/87;(">7)(") (A
事業団に深く感謝申し上げます。また、本研究の一部は、
897("/ ,="7;7**:7"!,77"76*7,(,"7678(7"-") (897"
文部科学省科学研究費補助金(HIFPPEKL)の補助も受けて
行いました。
> ,8*,$9"ÁÂÃ<"X"N1("56"2;*("28&"^&"HAK<
H@)Á$,(>79/"N(HIFF)?"Á 9*A;9$,$")$=7">)$*," (,="
参 考 文 献
ÁÂ"(;,"7817(<"X"N1("Z?"29/"2*$*7"N1(&"ae&"[LLA
[LJ<
H)0/$)("YÂ&"+$("Â#&"R/$/"W&"W /97"Y0(HIIG)?"
HG)';;79*"0&"Y$ )$,,"Â&"Q$> (("+&"M(17"+&"+$*9"R&"
Á$;;,=">"7978*8$9") (897"(*) 9$*," (,="ÁÂÃ<"X"
281$D"R(HIJK)?"MÃ2N A $",7%">$(*"ÁÂÃ"(7B 7,87<"5978A
0;;9"N1(9&"\]&"LG@ALGF<
*)7/8$&"c]&"HLAHJ<
@)0!)$"+&". ,"2&"#$!$1$(1"+&"M ! ,$=$"#&".$*( *$"2
HE)N9 *OA2,/7"[[&"7,"2&"Z;7"#Y&"N*817,"5X&"
(@PPP)?"#17" (7">")$=,7*8"7(,$,87")$=7("*",:7(*A
Á77"Â0(HIIF)?"W>>77,*"7>>78*(">"7678(7"$,/"7/7)$"
=$*7"*17",>9 7,87">"78 *)7,*","*17"79$*,(1;"-7A
,"#@"79$6$*,","(!797*$9") (897<"Á$=,"Â7(,"Á7/&"_\&"
*%77,"*B 7"$,/"8((A(78*,$9"$7$","1 )$,") (897<"5 "
X"0;;9"N1(9&"^_&"EFLAEJP<
G)0!)$"+&"#$!$1$(1"+&". ,"24&".$*( *$"2(@PPE)?"ZA
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!,77A76*7,(,"-") (897"> ,8*,$9"ÁÂÃ<"5 "X"0;;9"
N1(9&"`a&"FAHE<
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HL)N87"#Q&"Y7"XZ(HIIJ)?"5>>78*">") (897"=98=7,"8,A
*7,*","7678(7A,/ 87/"81$,=7(",") (897"#@"*)7(<"X"
0;;9"N1(9&"^]&"HHFJAHHJE<
HK)N87"#Q&".$)7,"Y&"W$),"QÁ&".,=1*"Z0&"0;;97=$*7"Q&"
Y7"XZ&"5%$/".&"2=,97"XM(@PPG)?"Z);$(,">"
E)0!)$"+(@PPL)?"M ,8*,$9")$=,=">"1 )$,"(!797*$9"
ÁÂÃ"%*1"5ÁY"*"(* /") (897"$8*:*"$((8$*7/"%*1"
) (897"/ ,="):7)7,*?"Ã);98$*,(">"78 *)7,*&"
/,$)8";9$,*$">976,<"Á$=,"Â7(,"Ã)$=,=&"ba&"JLGA
)7*$-9()"$,/"88 9$*,<"Ã,*"X"2;*("+7$9*1"28&"_&"HIEA
@PF<
L)5,8(,"0Y&"Q7="+5&"T$=$("Â&"X7,,7"Y&"#7(81"N0
(@PPL)?"2=,$9",*7,(*">"ÁÂA)$=7(">"*1=1") (897("
JKH<
HF)Â81$/(,"Â2&"M$,!"[Â&"+$(797"[X(HIIJ)?"W,$)8"
!,77A76*7,("$,/"8897"7678(7?"M ,8*,$9"ÁÂÃ">") (A
8 9$"$8*:*<"Ã,*"X"2;*("Á7/&"a`&"HJ@AHJF<
>99%,="$8 *7";7,A"$,/"89(7/"81$,"!,7*8"!,77"76*7,A
HJ)#$!$1$(1"+&". ,"2&"Á$)*"#&"4(1!$"+&"Ã,$!"Á&"
("7678(7"A",/76">") (897" (7<"5 "X"0;;9"N1(9&"`]&"
0!)$"+&".$*( *$"2&"0,,"Ã&"Ã*$"4(HIIE)?"Z1$,=7(","
GLFAGKG<
)$=,7*8"7(,$,87")$=7(","1 )$,"(!797*$9") (897"$>*7"
K)M(17"ÁX&"Á77"Â0&"0/$)("YÂ&"M97"XÁ&"N*817,"5X
(HIIP)?"W78*"79$*,(1;"-7*%77,";*,"#@"$,/"767A
7887,*8"7678(7<"5 "X"0;;9"N1(9"'88 ;"N1(9&"d`&"
EPJAEHG<
(JI)
HI)俵 紀行,新田 收,伊藤彰義(@PPJ):ヒト骨格筋
Á (897"> ,8*,$9")$=,7*8"7(,$,87")$=,=" (,=" 9*$A
の横緩和時間計測のための撮像法の比較.日磁医誌,
>$(*)$=,=<"N877/,=(">"HK*1"(87,*>8")77*,=">"
b^,@LAGE.
Ã2ÁÂÁ&"#,*&"GKFG<
@P)#$%$$"&"**$"'&". )$"+&"*( "Á&"Ã*1"0(@PPJ)?"
第 <> 回健康医科学研究助成論文集
平成 CD 年度 KK3DF∼CFC(<FFD3L)
交代制勤務者の身体活動と心身の健康に関する研究
東 郷 史 治*
ÁÂÃÄÅÆÇÈÉÇÆÊÅËÅÊÃÉÇÌÍÉÎÏÌÊÇÈÉÇÌÍÉÁÂÃÄÅÆÇÈÉÂÏÇÈÊÂ
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)792*,-2)*2)/)+224.2)):/, 2:.5),2))022+)*++2*,25-2,24253!*2)/5242))..5
@AB(2.-.2.,+5..5-2++@AB)/)/,012)022) ./*.,+((E<F3F=) 2.5+08
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F3F=) 2,2,.,,/5(012):0+2,,+)+224,25. CHGFF 8 CFGFF/,2,201. ,20)
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.+()+224.2)),CHGFF/. ,8010)) ./*.,+((E<F3F=) 2,.5(8013!,24*.,5. ,2
01. ,20)*2+,25(E<F3F=)4),-2+(0,)*2)/)+224.2)).5/, 2,,22.5/01. ,23A.,2*.,(:),24*.,5. ,2..01. ,2/,2,201. ,2/. ,8)/,0)*2+,25
(E<F3F=).2 ,-2+(0,)*2/)+224.2)),,22.5/,2..01. ,232)2/.5. ).5*,2,, * 独立行政法人労働安全衛生総合研究所 I24,2.,/J1!,2))M.,+:;4.N,.+O.),,,2/A**4,.+!/2,(.5P2+,:Q0)1:;4.3
作業条件適応研究グループ
(DC)
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Q2(05)G)/,01:4()*+*,-,(:)+224.2)):/, 2:),2))3
身体活動と睡眠あるいは疲労との関連は明らかに
緒 言
はされていない。そこで本研究では、介護老人保
<> 時間社会が拡大しつつある我が国では、夜
健施設または病院に勤務する交代制勤務者の身体
勤を伴う交代制勤務は、製造業のみならずサービ
活動、睡眠、疲労の実態を明らかにすることとし
ス業などのさまざまな分野で取り入れられている
た。
勤務形態で、必要不可欠である。また厚生労働省
研 究 方 法
の推計によると <FC= 年度には認知症患者が <=F
万人にまで達し、それに伴い交代制勤務の介護者
A.対象者
も増えることが予想される。一方、交代制勤務者
茨城県神栖市または神奈川県横浜市にある介護
の健康は通常の日勤者と比較して非常に損なわれ
老人保健施設または病院に勤務する <=> 名(看護
やすいことが指摘されており R)、交代制勤務は、
師,介護士,理学・作業療法士,事務職として勤
働く人の健康を脅かす要因の C つとして重要視さ
務する者全員)を測定対象者とし、心身の健康に
れている。したがって交代制勤務に伴う健康問題
関するアンケート調査を実施した。そのうち、日
について対応策を立てることは急務であるといえ
勤者 CD 名および夜勤を伴う交代制勤務者 <= 名に
る。
ついては、身体活動、睡眠、疲労、ストレスに関
夜勤を伴う交代制勤務の特徴は、仕事をする時
する日々のモニタリングを実施した。日勤者 > 名
間帯が常に定まっているのではなく、昼夜を頻繁
と交代制勤務者 H 名についてはデータに欠損が存
に移動する点である。そのため交代制勤務者は、
在したため、残りの日勤者 C= 名と交代制勤務者
しばしば、夜中に仕事をして明るい昼間に睡眠を
CR 名を解析対象とした。勤務時間帯は、日勤で
とるという昼夜逆転の生活を急性的に強いられる
は D 時から CH 時、夜勤では CH 時から翌日の D 時
ことになる。このとき、約 <> 時間のリズム(概
までであった。夜勤前後の勤務スケジュールにつ
日リズム)を刻む体内に存在する「時計」(体内
いて、夜勤開始日の前日は日勤または休日、夜勤
時計)は覚醒−睡眠リズムの急激な変化には対応
開始日は CH 時から勤務、翌日の夜勤終了日は D
できず、体内時計に対してもいわゆる昼夜逆転の
時まで勤務、その翌日は休日であった。交代制勤
状態(時差ぼけと同様の状態)にある ことが多
務者の夜勤の回数は月に最大 = 回で、解析対象者
い。このことは交代制勤務に伴う健康問題と密接
の交代制勤務の経験年数は平均 C>3= 年であった。
に関連しているのではないかと推測されている。
対象者には本研究の趣旨、測定手続き、および測
交代制勤務でまず特徴的なのは、睡眠時間が減
定に伴う危険性を十分説明した後、調査への参加
H)
C)
少し、疲労が増大する点である 。そして夜勤中
D)
の同意を得た。なお調査の実施に先立ち、本研究
の眠気の増大 、仕事の能率の低下、勤務中の怪
について独立行政法人労働安全衛生総合研究所倫
我 <F)や死亡事故の増大 <)など安全面での影響が懸
理委員会の審査を受け承認を得た。
C>)
念されるとともに、睡眠障害、消化器疾患 、虚
B.調査手続き
血性心疾患 >)、糖尿病 や 代謝性疾患 CH)、メ タ ボ
まず全対象者に、自記式のアンケート調査を実
リックシンドローム <C)、うつ S)、癌 C=)等の発症が
施した。アンケート調査に含まれる項目は、既往
増大することが報告されている。
歴、身体活動量(日本語版国際標準化身体活動量
一方、身体活動はこれらの心身の疾患の予防や
質問票:O'$@!,T2).)CF)、抑うつ(日本語
や疲
版 MU!8I)CD)、生 活 の 質(日 本 語 版 JPAV@AB8
労 <D:LF)とも関連することが示されてきている。し
<S)<S)であった。その後日々の身体活動調査への
かしながら、交代制勤務者での身体活動の実態や
参加者を対象に健康診査(血圧,腹囲,血液,
改善に有効である
C<:CL:LC:L<)
とともに、睡眠
LL)
(D<)
尿)を 実施 し、= 週間(L= 日間)毎日 の 身体活
たりの歩数と総睡眠時間の平均値を各参加者につ
動、睡眠、疲労、ストレスを記録した。全データ
いて算出した。体動については、C から > にか
は、<FFH 年 R 月上旬から <FFH 年 D 月上旬の間に
けて < 分間刻みに、体動が生じた日数の割合を各
得られた。
参加者について算出した。交代制勤務者について
C.身体活動のモニタリング
、
は、夜勤が始まる日の CF 時(C)と CH 時(<)
加速度センサー(C 軸)を内蔵した小型の体動
夜勤が終わる日の CF 時(L)と CH 時(>)での
計(Q2.WB/2*52UX> 秒版,スズケン)を腰
眠 気、疲 労、ス ト レ ス の ス コ ア、そ し て、C 8
の高さに巻いたベルトに装着してもらい、歩数、
<、< 8 L、L 8 > での C 時間当たりの歩数と総
体動の有無、運動強度を < 分ごとに連続記録し
睡眠時間の平均値を各参加者について算出した。
た。身体の長軸方向で F3FSY 以上の加速度を検出
これらの平均値および割合の算出には、C から
した場合、体動が生じたこととした。測定期間最
> の間で、眠気、疲労、ストレスのスコアに欠損
終日に体動計を回収し、体動計のメモリに蓄積さ
があり、または体動が L 時間以上連続して生じな
れたデータをコンピュータのハードディスクに記
い期間を除いた <H)。なお < は勤務が始まる時刻、
録した。
D.眠気、疲労、ストレスのモニタリング
L は勤務が終わる時刻とほぼ同じであるため、本
研究では、< と L をそれぞれ勤務開始と終了時
眠気、疲労、ストレスについて、個人間および
刻、そ し て < 8 L を 勤務時間帯、C 8 <、L 8 >
個人内の変動を明らかにするために <<)、CF 時と
を非勤務時間帯とみなした。
CH 時に、それらの主観的な程度を F∼CFF の数値
F.統計処理
で指定の用紙に記録してもらった。数値は記録す
日勤者と交代制勤務者の比較は繰り返しのある
る時点でのものを記入するよう指示した <<)。それ
分散分析もしくは対応のない , 検定を用いて分析
ぞれの時刻に寝ていた、あるいは仕事のために記
した。交代制勤務者での日勤日と夜勤日の比較に
録できなかった場合には、C= 分後までに記入す
は繰り返しのある分散分析を用いた。多重比較に
るよう、また、それまでに記録できなかった場合
は Z./2. 法を用いた。眠気、疲労、ストレス
には数値を記入しないよう指示した。数値は、眠
の各平均レベル、C 時間当たりの歩数、総睡眠時
気 に つ い て は、非常 に は っ き り 目覚 め て い る
間との間の関係については、'2). の積率相関
(F)、目覚めている(<=)
、どちらでもない(=F)
、
係数または !42. の順位相関係数を算出した。
眠 い(R=)、と て も 眠 い(眠気 と 戦 っ て い る)
(CFF)、疲労については、疲れを全く感じていな
い(F)、少 し 疲 れ て い る(<=)
、疲 れ て い る
有意水準は =%未満とした。
結 果
(=F)
、かなり疲れている(R=)
、何もできないほ
表 C に ア ン ケ ー ト 調査 の 結果 を 示 す。<<H 名
ど疲れきっている(CFF)
、ストレスについては、
(HD3H%)の回答を回収し、そのうち欠損値がな
ストレスを全く感じていない(F)
、少しストレス
い CHL 名(R<3F%)の結果を示した。交代制勤務
を 感 じ て い る(<=)
、ス ト レ ス を 感 じ て い る
者のほうが日勤者と比較して体格指数と MU!8I
(=F)
、かなりストレスを感じている(R=)
、かつ
得点が有意に(E<F3F=)高く、環境領域と全体
てないほどストレスを感じている(CFF)
、とした
的な @AB の得点が有意に(E<F3F=)低かった。
スケールを基準として記入してもらった。また寝
表 < に日々の身体活動調査参加者の特性を示
ていた時間帯を CF 分単位で記入してもらった。
す。年齢、身長、体重、体格指数、MU!8I 得点、
E.データ解析
@AB 得点、身体活動量の平均値は、アンケート
、日 勤 当 日 の CF 時
日 勤 の 前 日 の CH 時(C)
調査に欠損値がない CHL 名の平均値と統計的に有
(<)と CH 時(L)、日勤の翌日の CF 時(>)の
意な差は認められなかった。ただし、交代制勤務
眠気、疲労、ストレスの平均スコアを各参加者に
者のほうが日勤者と比較して身体活動量が有意に
、< か
ついて算出した。また C から <(C 8 <)
(E<F3F=)多く、環境領域の @AB 得点が有意に
ら L(< 8 L)、L から >(L 8 >)での C 時間当
(E<F3F=)低かった。体格指数と MU!8I 得点は
(DL)
表 C .全被験者の特性
7+2C3M*,2),*)/++)792*,)3
^
N72/)792*,)_`/2+2a
^N)2_`/2+2a
^M2012_`/2+2a
^'()*+VA**4,.+,24),_`/2+2a
^$5.),,-2),//_`/2+2a
$ 2:(2)
P2 ,:*
J2 ,:1
Z5()).526:1 V<
#25*+),(
^P(42,2.).:`
^P(42+452:`
^P(42*+2),2+2:`
^P(42, +(*2:`
^I72,2):`
^M227-)*+5)2)2:`
^M5-)*+5)2)2:`
'()*+*,-,(:1*+V5(
MU!8I)*2
@AB)*2
^'()*+5.
^')(*+ *+5.
^!*+2+,.)4)5.
^U.-.2.,5.
^A-2++@AB
I(012)
!/,012)
HC_H>a
<L_DSa
LF_DLa
CF_LFa
CH_HLa
LHbC<
CSFbH
=SbD
<C3Db<3S
^
=
S
CF
S
C
C
F
CF<_HLa
<>_DSa
RH_HFa
F _Fa
F _Fa
LRbCF
CSFbR
=HbCC
<<3Hb>3F]
LS<bSLH
CS3>bS3R
><FbSFS
CH3LbR3C]
L3>bF3=
L3<bF3S
L3>bF3=
L3CbF3=
L3<bF3S
L3LbF3=
L3CbF3S
L3LbF3S
<3DbF3=]
<3DbF3=]
S
S
S
H
C
F
F
T+2)242)2.,25)2.±),.5552-,.42*2., 2/)792*,)3Z#O\75()).526:MU!8I\
M2.,2)/U452+ *+!,5(8I242)).:@AB\?+,(/+/2:]! ./*.,+(5//22.,/5(012)
(E<F3F=:..8425,,2),)3
交代制勤務者のほうが高かったものの有意な差で
(<)と比較して両群ともに勤務終了時(L)に
はなかった。
増加し(E<F3F=)
、翌日の午前(>)では < と同
日勤時では、勤務時間帯(< 8 L)での C 時間
じ値に戻った(図 CI と U)
。疲労については、<
当たりの歩数は日勤者、交代制勤務者ともに夜を
では日勤前日の夕方(C)と比較して有意な(E
含む非勤務時間帯(C 8 < および L 8 >)での値
<F3F=)減少が両群で認められた(図 CU)。一方
より有意に(E<F3F=)多かった(図 C$)
。これ
眠気の自覚レベルは、日勤者では疲労の自覚レベ
とは逆に、両群の総睡眠時間は < 8 L ではほぼ F
ルと同様に推移したが、交代制勤務者では各時刻
時間で、C 8 < および L 8 > での総睡眠時間と比
の間で有意な差は認められなかった(図 CM)。交
較して有意に(E<F3F=)短かった(図 CZ)
。ま
代制勤務者の各自覚レベルを日勤者と比較する
た交代制勤務者では L 8 > での総睡眠時間は C 8
と、< で は 眠気(図 CM)、L で は 疲労(図 CI)
< での時間より有意に(E<F3F=)長かった(図
とストレス(図 CU)、夜の睡眠後の > では眠気
CZ)。各時間帯での総睡眠時間は日勤者と交代制
(図 CM)のレベルが有意に(E<F3F=)高かった。
勤務者で有意な差は認められなかったが、歩数は
夜勤時では、日勤時と同様に、勤務時間帯(<
< 8 L で交代制勤務者のほうが日勤者と比較して
8 L)での C 時間当たりの歩数は昼間の非勤務時
有意に(E<F3F=)多かった(図 C$)
。
疲労とストレスの自覚レベルは、勤務開始時
間 帯(C 8 < お よ び L 8 >)で の 値 よ り 有 意 に
(E<F3F=)多かった(図 <$)
。また L 8 > での歩
(D>)
表 < .日々の身体活動調査を実施した被験者の特性
7+2<3M*,2),*)/)792*,)0022.,254()*+*,-,(3
^
I(012)
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C= _=La
<_CFFa
> _R=a
R _<Da
< _=Fa
LDbC=
CSLbCC
SFbC<
<<3=b<3L
CR _HHa
H_CFFa
D _RHa
F _Fa
F _Fa
><bC<
C=RbR]
SCbC>
<>3Rb=3F
CL
CL
<F
<F
F
R
F
C<
S
S
<>
F
F
F
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^!*+2+,.)4)5.
^U.-.2.,5.
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!(),+*7+542))2:P
<>FbLF<
C=3Fb>3<
^
L3=bF3L
L3LbF3=
L3>bF>
L3CbF3>
L3LbF3S
CCRbCR
S=<bRS=]
CS3>b=3D
I),+*7+542))2:P
J),**/22.*2:*
+(*252: V5+
,+*+2),2+: V5+
PIB8*+2),2+: V5+
Z+5 +*)2: V5+
$7.+.24,2.:`
$7.+.2 +*)2:`
RLbC>
RHbD
DLbH>
CDHbL=
SHbCR
D<bC=
F
F
R=bC<
HLbCS
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HLb=]
F
F
L3LbF3=
L3CbF3S
L3CbF3S
<3DbF3>]
<3DbF3R
C<CbCD
T+2)242)2.,25)2.±),.5552-,.42*2., 2/)792*,)3PIB\ 852.),(+44,2.3
]! ./*.,+(5//22.,/5(012)(E<F3F=:..8425,,2),)3
数は C 8 < での歩数より有意に(E<F3F=)減少
較して勤務終了時(L)に増加し(E<F3F=)
、L
した。日勤時での値と比較すると、C 8 < でのみ
でのレベルは夜勤が始まる日の午前(C)と比較
有意な(E<F3F=)差が認められた(図 <$)
。一
しても有意に(E<F3F=)高かった。更にそれら
方、夜勤時 の 総睡眠時間 は < 8 L と L 8 > で は
の値は昼間の非勤務時間帯を経た夕方(>)に
C 8 < よ り 有意 に(E<F3F=)長 く、日勤時 と 比
なってもほとんど減少しなかった。夜勤時での自
較するとすべての時間帯で有意に(E<F3F=)異
覚レベルを日勤時と比較すると、< では疲労とス
なっていた(図 <Z)。
トレス、L では眠気と疲労、昼間の非勤務時間帯
眠気(図 <M)、疲労(図 <I)
、そしてストレス
を経た後の > ではすべてのレベルが有意に(E<
(図 <U)の自覚レベルは、勤務開始時(<)と比
F3F=)高かった。
1500
A
Day workers
Shift workers
1000
500
0
T1-T2
T2-T3
T3-T4
Period
8
6
B
4
2
0
T1-T2
T2-T3
T3-T4
Period
100
C
60
40
20
1500
0
T1-T2
T2
T3
8
B
4
2
0
T1-T2
C
Sleepiness
40
20
Day-shift
Night-shift
T1
T2
80
40
20
T1
D
Fatigue
60
40
20
T2
T3
T1
T4
Stress
80
60
Score
Score
100
E
40
20
E
T2
T3
T4
T2
T3
T4
Time of day
Time of day
80
T4
0
0
100
T3
Time of day
Fatigue
60
T3-T4
60
100
D
T2-T3
Period
T4
Score
Score
80
T3-T4
6
Time of day
100
T2-T3
Period
0
T1
Day-shift
Night-shift
500
80
0
A
1000
100
Day workers
Shift workers
Sleepiness
Score
Score
80
Total sleep time (h) Step count (steps/h)
Total sleep time (h) Step count (steps/h)
(D=)
Stress
60
40
20
0
0
T1
T2
T3
T4
Time of day
図 C .日勤時の身体活動、睡眠時間、眠気、疲労、そして
ストレス
3C3!,24*.,($):,,+)+224,2(Z):.5)2+/8,25
)*2).)+224.2))(M):/, 2(I):.5),2))(U).
5()/5(8)/,.5(012).5)/,012)3
T+2)22.)±!U3*! ./*.,+(5//22.,/5(018
2)(E<F3F=:.+())/-.*2$NAT$)3 † ! ./*.,+(
5//22.,/,2,2425),2)(E<F3F=:$NAT$)3
‡
! ./*.,+(5//22.,/C 8 <(E < F3F=:$NAT$)3
§
! ./*.,+(5//22.,/< .5>(E<F3F=:$NAT$)3
CGCHGFF.5()72/2,25()/5(8)/,:<GCFGFF.,2
5()/5(8)/,:LGCHGFF.,25()/5(8)/,:>GCFGFF.
5()/,2,25()/5(8)/,3
T1
Time of day
図 < .日勤時と夜勤時の身体活動、睡眠時間、眠気、疲
労、そしてストレス
3<3!,24*.,($):,,+)+224,2(Z):.5)2+/8,25
)*2).)+224.2))(M):/, 2(I):.5),2))(U).
5()/5(8.5. ,8)/,).)/,012)3
T+2)22.)±!U3*! ./*.,+(5//22.,/5(8)/,
(E<F3F=:$NAT$)3†! ./*.,+(5//22.,/,2,2428
5),2)(E<F3F=:$NAT$)3 ‡ ! ./*.,+(5//22.,
/C 8 <(E<F3F=:$NAT$)3§! ./*.,+(5//22.,/
C(E<F3F=:$NAT$)3¶! ./*.,+(5//22.,/<(E<
F3F=:$NAT$)3 c! ./*.,+(5//22.,/>(E<F3F=:
$NAT$)3CGCHGFF.5()72/2,25()/5(8)/,CFG
FF.5()/,2),,/. ,8)/,:<GCFGFF.,25()/
5(8)/,CHGFF.5()/,2),,/. ,8)/,:LGCHGFF.
,25()/5(8)/,CFGFF.5()/,22.5/. ,8)/,:
>GCFGFF.5()/,2,25()/5(8)/,CHGFF.5()/
,22.5/. ,8)/,3
(DS)
T1
T2
T3
T4
1.0
Ratio
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
Day workers
Shift workers
18:00
00:00
06:00
12:00
18:00
00:00
06:00
12:00
Time of day
図 L .日勤時の各時刻で体動が観察された日数の割合
3L32,/,2.72/5()02.75(-22.,0)52,2*,25,,2.72/5()/5(8)/,,2*<.0,.2*
)792*,3
T+2)22.)±!U32!U-+2)2+),52.,*+*))++,2):)2)0..+(2-2(S3CGCHGFF.5()72/2,2
5()/5(8)/,:<GCFGFF.,25()/5(8)/,:LGCHGFF.,25()/5(8)/,:>GCFGFF.5()/,2,25()/5(8)/,3
*
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(DR)
表 > .ある期間での歩数および睡眠時間とその前後での眠気、疲労、ストレスの関係
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(DH)
図 L は日勤前日の C から日勤翌日の > にかけ
較して抑うつレベルが高く、環境領域と全体的な
て、各 < 分間に体動が生じた日数の割合をそれぞ
生活の質が低かった(表 C)
。一方、生活習慣病
れの群について示している。日勤日の当日および
等の既往歴については両者の間で大きな差は認め
翌日の S 時頃から H 時頃では日勤者のほうが交代
られなかった(表 C)
。交代制勤務の影響は抑う
制勤務者より割合が有意に(E<F3F=)高く、一
つや生活の質に対しては生活習慣病等と比較して
方で < 8 L の勤務時間帯には交代制勤務者のほう
早期に出現することを示唆しているのかもしれな
が有意に(E<F3F=)高いことが多かった。
い。なお、対人サービス職ではない事務職員を除
日勤時 の . と .+C(.=C:<:L)で の 眠気、疲
いた場合でも、同様の結果が得られた。また、日
労、ストレスの自覚レベルとの間には、有意な
勤者と交代制勤務者での女性の占める割合には大
(E<F3F=)正の相関が日勤者で数多く認められた
きな差がないため、性別が結果に及ぼす影響は大
(表 L)
。一方、交代制勤務者では < と L でのス
きくないと考えられた。
コア間で日勤者と同じく有意な(E<F3F=)正の
こうした状況の背景を検討するため、本研究で
相関が多数認められた(表 L)ものの、C と < の
は日々の眠気、疲労、ストレスの自覚レベルと身
間では C でのストレスと < での眠気、疲労、ス
体活動について検討した。眠気、疲労、ストレス
トレス、L と > の間では L での眠気、疲労、ス
の自覚レベルは労働によって増加する(図 C,図
トレスと > でのストレス、そして L での眠気と
< )ため、十分な休息あるいは睡眠によってそれ
> での疲労との間に限り、有意な(E<F3F=)正
らを減少させ、高いレベルが持続するのを防ぐ必
の相関が認められた(表 L)
。このことは C での
要がある。このことは、例えば強い眠気や疲労感
ストレスと < での眠気との関係を除き夜勤時で
が持続する慢性疲労症候群の患者 <R)は身体活動
も同様に認められた(表 L)
。歩数および総睡眠
が低下する <D:LF)ことや、本研究の結果で示したよ
時間と各自覚レベルとの間では、日勤者では、C
うに眠気と疲労の自覚レベルが夜勤開始時に高い
8 < での総睡眠時間と < でのストレスとの間に有
と夜勤中の身体活動が減少することからも、日々
意な(E<F3F=)負の相関が認められた(表 >)。
活発に働き続けるためには欠かせないといえる。
一方、交代制勤務者では、日勤時については、L
しかしながら、夜勤を伴う交代制勤務者では、眠
8 > での総睡眠時間と L での眠気および > での
気や疲労の自覚レベルが高い(図 C)。更に眠気、
眠気との間に有意な(E<F3F=)正の相関が、ま
疲労、ストレスの動態を検討すると、日勤時で
た夜勤時では、< での眠気および疲労と < 8 L で
は、疲労とストレスのレベルが労働によって増加
の歩数との間に有意な(E<F3F=)負の相関、L 8
し、翌日の午前中には <> 時間前のレベルに回復
> での歩数と L での疲労、ストレスおよび > で
していたものの、勤務終了時でのレベルは日勤者
の眠気との間に有意な(E<F3F=)負の相関が認
より高いことが明らかとなった(図 C)。一方、
められた(表 >)。日勤時について調査参加者全
眠気については、測定した時刻で変動することは
体で関連性をみると、勤務時間帯(< 8 L)での
なく、午前中では日勤者より高かった(図 C)。
総歩数は勤務終了時刻(L)での眠気(=3L==)
また交代制勤務者では日勤後の非勤務時間帯での
および疲労(=3L=C)と有意な(E<F3F=)正の
睡眠時間とその後の眠気のレベルとの間に正の相
相関が認められた。交代制勤務者について、勤務
関が認められた。これらの結果は、交代制勤務者
時間帯(< 8 L)での総歩数は勤務終了時刻(L)
では眠気が慢性的に高く、それは日勤時での夜間
の 眠気(=3LS=)お よ び 疲労(=3>F>)と 有意
の睡眠時間の延長のみで解消できるのではないこ
な(E<F3F=)正の相関が認められた。
とを示唆しているのかもしれない。ただし、本研
考 察
交代制勤務によって生じると考えられている心
CC)
究では実際の睡眠時間や睡眠の質は明らかではな
い。夜間に体動が生じる日数の割合をみると交代
制勤務者が日勤者を上回ることはない(図 L)た
身の健康問題は広範囲にわたる 。本研究での対
め、交代制勤務者で夜間睡眠時に中途覚醒が多く
象者全体では、交代制勤務者のほうが日勤者と比
生じていたということではなさそうであるが、今
(DD)
後の研究では、睡眠の質についても検討する必要
研究では、夜勤時の総睡眠時間と夜勤が終わる日
がある。
の午前中の眠気との間には関連性が認められな
夜間に働くことで生体が影響を受ける代表的な
かった。一方で、夜勤での勤務中の身体活動の増
ものの C つとして、体内の概日リズムがある。ヒ
加は勤務終了時での眠気を増大させ、逆に、夜勤
CR)
トの体内時計は、脳内の視交叉上核に存在し 、
後の昼間の非勤務時間帯での身体活動の増加は夜
体温の上昇下降やメラトニン分泌量の増減などの
勤が終わる日の夕方の眠気を低下させることが認
概日リズムに非常に密接に関与している。体内時
められた。夜勤終了後の眠気、疲労、ストレスが
計にとっての昼間は、例えば体温の概日リズム変
夕方の眠気とは関連性がなかった(表 L)ことを
動での高い時間帯であり、一方夜間はその変動で
考え合わせると、身体活動は夜勤が終わる日の眠
CS)
の低い時間帯である 。通常我々は、外界が昼の
気に影響を及ぼす重要な要因といえるかもしれな
ときには体内時計も昼で覚醒している状態、一方
い。夜勤後で身体活動の増加が眠気を低下させる
外界が夜のときには体内時計も夜で睡眠している
ことの生理学的な背景は本研究の結果からだけで
状態というように、外界の昼−夜、体内時計の昼
は不明であるが、身体活動が脳の活動レベルを増
−夜、そして覚醒−睡眠がすべてそれぞれ一致し
加させたり =)、あるいは体内時計の位相を前後さ
た状況下で生活するのが自然である。しかし、交
せたり L)といった作用と関連しているかもしれな
代制勤務によって勤務時間帯が急に変わったとき
い。交代制勤務者の眠気と疲労を低減するには、
には、覚醒−睡眠リズムと外界および体内の昼−
他に、勤務時の総歩数の増加が勤務終了時の眠気
H)
夜リズムとの間にずれが生じてしまう 。本研究
と疲労を増大させることを考えると、勤務時の労
では、日勤時での体動について検討したところ、
働負担を減らすなどして身体活動量を減少させる
S 時頃から D 時頃にかけては日勤者のほうが交代
のが有効かもしれない。夜勤後に疲労が減少する
制勤務者より体動が生じる日数の割合が有意に高
ことによって、その後の非勤務時間帯での身体活
く、一方で勤務時間帯には交代制勤務者のほうが
動量が増加、それによって眠気も低下する、とい
日勤者より割合が高いことが多かった(図 L)
。
うつながりも考えられる。
このことは、交代制勤務者の体内時計の位相が日
一方、心身の疾患の予防や改善には、身体活動
勤時に後退している可能性があることを示唆して
や運動が効果的であることが示唆されてきてお
いるのかもしれない。
り、身体活動・運動に関するガイドラインも出さ
勤務時間帯での C 時間当たりの身体活動量は日
れている。筆者らは、高齢者を対象として、加速
勤と夜勤で変わらず(図 <$)
、したがって夜勤で
度センサーを用いて客観的にとらえた日常生活時
の総身体活動量は日勤のおよそ < 倍と推測され
の日々の身体活動量と強度を測定し、それらの
る。一方、夜勤中の睡眠時間は平均約 < 時間で
C 年間 の 平均値 は、生活 の 質 LC)、う つ L<)、骨密
あった(図 <Z)。そのために、夜勤終了時での眠
度 C<)、そしてメタボリックシンドローム CL)と関連
気と疲労のレベルは日勤時のものと比較して高
することを示した。これに対し、交代制勤務者の
かった(図 <M,I)
。更に、夜勤終了時のそれら
身体活動について調べた研究はほとんどない。本
のレベルは H 時間後の CH 時になっても減少しな
研究の結果では、対象者全体のアンケート調査に
かった(図 <M,I)
。ただし、時刻の影響を排除
よると日勤者と交代制勤務者では身体活動には差
するため、夜勤が終わる日の CH 時での値と日勤
がないが、交代制勤務者のほうが生活の質が低
終了時の CH 時での値を比較すると、眠気のみ夜
く、抑うつレベルが高いという状況であった(表
勤のほうが高かった。つまり夜勤による急性的な
C)
。ただし、交代制勤務者の勤務時の身体活動は
影響で特徴的なのは眠気であって、したがって夜
多く、また眠気と疲労のレベルが高い可能性があ
勤が終わる日の眠気について特に対策を立てるこ
り、こうした状況は生活の質の低下や抑うつレベ
とが重要かもしれない。
ルの上昇と関連しているかもしれない。一方で、
先行研究では、夜勤時に適切に仮眠をとること
夜勤後の昼間の身体活動の増加は夜勤が終わる日
がその有効策として検討されている <=)。しかし本
の夕方の眠気を低下させるかもしれないとの結果
(CFF)
も得られた。睡眠と生活習慣病との関連性が指摘
大していた。特に、夜勤後では日勤後と比較して
されていることから考えると、交代制勤務者でも
眠気が増大していた。一方、夜勤後の身体活動量
日常生活時の身体活動や運動が心身の疾患の予防
の増大はその後の眠気の減少と関連していた。し
や改善に有効である可能性はあるものの、単純で
たがって、身体活動は眠気と疲労の減少と密接に
はなさそうである。交代制勤務者の身体活動・運
関連し、そのため、心身の疾患の予防や改善のた
動に関するガイドラインの作成を目指して、今後
めの有効策となりうることが示唆された。
の研究で詳しく検討されていくべきであろう。
従来、日常生活のなかで経時的に変化している
謝 辞
不定愁訴などの心身の自覚症状は回顧的に調査さ
本研究の実施にあたり、ご協力いただきました川野因
れている。しかしながら、思い出しによる申告に
氏、小松泰喜氏、高橋正也氏、富樫早美氏、三谷健氏、安
はある一定の期間の経験が正しく統合されずに、
永明智氏に厚く御礼申し上げます。また、本研究の助成を
最もひどいときの症状や調査時の最近の症状が反
賜りました財団法人明治安田厚生事業団に深く感謝致しま
<>)
映される傾向があるという 。更に思い出しによ
す。
る症状は調査のときの症状や気分によっても修飾
参 考 文 献
されることが示唆されている <L)。また、身体活動
に関する自己報告と、加速度計により計測された
体動との関連性も低い LF)。これらのバイアスを取
C)$12),25,(CDHH)G!+224.2)))*.)2?2.*2/)/,
013!+224:ii:CR8L>3
り除くために、身体活動は加速度計などを用いて
<)$12),25,:25+.5':j++72 #:;.)).Z(<FF<)G$
客観的に測定し、心身の自覚症状ついては測定
4)42*,-2),5(//,+**4,.+**52.,) 8 2+,.8
時点でのものを繰り返し取得することが望まし
い <<)。そこで本研究では、身体活動については加
速度計を用いて計測した。また、眠気、疲労、ス
トレスについては、あらかじめ指定した時刻にそ
の時点での自覚的レベルを紙に記入してもらっ
た。ただし、数値が実際にいつ記入されたのかは
確認することができないため、時刻とデータを自
動で記録できる電子機器などを利用 <L:<>)すれば、
より信頼性の高い結果を示すことができるであろ
う。
本研究の結果においては、職種や性別が及ぼす
影響について十分に排除することができなかっ
た。これらの影響については今後の研究の課題と
いえよう。また、夜勤が連続する場合など、勤務
シフトの違いについても明らかにしていくことが
望まれる。なお身体活動が心身の健康に及ぼす影
響については、前向き縦断研究により睡眠や疲労
と合わせて検討していく予定である。
総 括
交代制勤務に従事する看護師または介護士で
)4,)+224. 5//*+,2).5**4,.+/*,)3;
!+224%2):ii:SD8RC3
L)$,1.).j:U505)Z:%2++(:J,2)2;(<FFR)G
U62*)2))(.*.)2/.**5.(,)G.
45,2.55)*))./,22,5+ *+47+2)3U
;$44+'()+:kk:LLC8L>C3
>)Z
+5P:Q.,)).$(CDDD)G!/,01:)1/*,)
.5*5-)*+5)2)23!*.5;J1U.-.P2+,:
lm:H=8DD3
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.)3M2++#+B/2!*:op:C<F=8C<C=3
D)B.I:2.*;:#,*;B(CDDR)G$),5(/"!$
,//**.,++2)/,01G)+224:/, 2:*,-,(:.5
5.+()2)3$-,!4*2U.-.#25:oq:CH8<L3
CF)村瀬訓生,勝村俊仁,上田千穂子,井上 茂,下光輝
一(<FF<):身体活動量 の 国際標準化:O'$@ 日本語
版の信頼性,妥当性の評価.厚生の指標,pk,C8D.
は、抑うつレベルが高く、環境領域と全体的な生
CC)N*+).';:I’
$I$(CDDD)G!/,01:2+,:,2
活の質が低かった。また勤務時における身体活動
01. ,22 +,.).52+,))2))2.,)3A**4
量は多く、それによって勤務後の眠気と疲労が増
#25(B.5):pk:C<R8CLR3
(CFC)
C<)'1P: :J,.72U:&). $:'1!:!245
P!:M.2T!(<FFF)G2!*2.*2/)2+/824,G4+*8
%;:$( &(<FFR)G%2+,.)4/7.22+,,(28
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<S)田崎美弥子,中根允文(CDDR):JPAV@AB8<S 手引.
初版,金子書房,東京.
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しい抑うつ性自己評価尺度について.精神医学,lt,
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LL)&. ),25,!I(<FF=)GU//2*,)/262*)2.)+2243M+.
!4,)#25:lp:L==8LS=3
第 @A 回健康医科学研究助成論文集
平成 >G 年度 HH4>B@∼>>B(@BBG4C)
ヨーガがメンタルヘルスおよびストレス感受性に及ぼす影響
平 本 哲 哉* 吉 原 一 文* 久 保 千 春*
ÁÂÂÁÃÄÅÆÂÅÇÆÈÉÅÆÊÅËÁÊÄÉÌÅÍÁÉÌÄÍÅÉÊÎÅÏÄÁÏÏÅÏÁÊÏÄÄÇ
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九州大学大学院医学研究院心身医学 I5&#J0%0,'0& ='*0%2#,'02*0&0 !%+&9 K:: L5&4
* (>BC)
る ;8%'3'3/&&(;8<'=)や ビ リ ル
緒 言
ビンが活性酸素と直接反応した後の酸化代謝物質
ヨーガは、運動や呼吸法や瞑想などを通じて心
であるバイオピリンなどがあげられる。特に尿中
身のバランスを調整する技法であり、最近の健康
バイオピリンは、外科的ストレス、敗血症、急性
ブームにより健康増進を目的として世界的に広く
心筋梗塞、心理的ストレス、運動による疲労など
行われるようになった。心身症に対しても過敏性
のさまざまな酸化ストレスによって上昇するとい
腸症候群、片頭痛、高血圧症、気管支喘息、腰痛
われ、注目されている N F >@ >C)。
などの心理的要因が影響する疾患に対するヨーガ
今回は研究 > において以前の研究において回収
の効果が報告されている
A E G >>)
。
した尿検体を用いてバイオピリン以外のストレス
ヨーガのメンタルヘルスに関する効果として
マーカーである尿中コルチゾールおよび尿中 ;8
は、自己記入式質問紙を用いた研究が多い。過去
<'= を測定し、ヨーガの経験者と未経験者との
の研究では気分や感情を測定できる心理テストで
比較およびヨーガ未経験者がヨーガを行うことに
あ る 感情 プ ロ フ ィ ー ル テ ス ト(J#2#,'
よるこれらのストレスマーカーの経時的変化を調
*;以下,日本版 J<,*) や身体症状や精神
査した。同時に、ストレスマーカーと施行した心
症状を測定する症状チェックリスト(*5
理テストの自覚症状との関連があるかどうかを調
(%0:M8GB8.;以下,日本語版 *(M8GB8.) を
査した。
用いた研究があり、強迫性障害患者や精神科入院
また、ヨーガには、腰痛に対する改善度の持続
患者がヨーガを行うことによって、J<,* の得点
効果が報告されている >@)が、メンタルヘルスに
が一部改善したり、*(M8GB8. の総得点が低下し
関する改善度の持続効果について報告したものは
>A)
>B)
ていたことを報告している
。このほかにも失感
ほとんどない。そこで、研究 @ としてヨーガのス
C ;)
情を測定する心理テストである失感情症スケール
トレス軽減効果が持続するかどうかを検討するた
(%@B8&-23%*02;以下,日
めに、ヨーガ教室が終了した後のフォローアップ
本語版 -*8@B) を用いた研究がある。失感情症
を行い、ヨーガ教室終了後に一定期間経った後の
傾向は、心身症の患者に多いといわれ、失感情症
ストレス状態をストレスマーカーおよび心理テス
の特徴として自分の感情に気づくことが難しい
トを用いて比較、検討を行った。
@)
(感情同定困難)
、感情を表現することが難しい
研 究 1
(感情伝達困難)、自己の内面より外的な事実に関
心が向く(外的志向)があげられる。過去におい
A.目的
てヨーガによる失感情の変化を調査したものは、
ストレス状態の客観的な指標である尿中ストレ
摂食障害患者に対して行われたが、失感情症の改
スマーカー(コルチゾール,;8<'=)を用いて
>>)
善は認められず 、ヨーガによる失感情症の効果
ヨーガの経験者と未経験者とのストレス状態の違
についての十分な検討はなされていない。
いを調査する。同時に、ヨーガを開始する人たち
これまではメンタルヘルスの不調を訴える人た
が特殊な集団でないかどうかを調べるために、
ちには、これらの心理テストを用いて主観的な症
ヨーガをしようと思っていない人たちとの比較を
状をもとにストレス状態の把握を行うしかなかっ
行う。また、ヨーガ未経験者がヨーガを行うこと
たが、最近ではストレスに対するバイオマーカー
によるこれらのストレスマーカーの変化を調査す
であるストレスマーカーを用いて客観的にストレ
る。更に、これらのストレスマーカーとメンタル
ス状態を評価しようとする試みがなされている。
ヘルスに関する自覚症状との関連を調査する。
そのなかでも尿中ストレスマーカーは、侵襲性が
B.方法
なく、簡便に測定できるため、広く使われてい
>.対象
る。尿中ストレスマーカーとしては、過度なスト
>)年齢が @B 歳以上 NB 歳未満の女性
レスを受けると分泌量が増加するコルチゾールや
@)既往歴に特記すべきことがない(肝臓疾患,
活性酸素による生体の酸化ストレスマーカーであ
腎疾患,心疾患,精神・神経疾患,心身症,
(>BA)
悪性腫瘍などの重篤な疾患の罹患歴がない)
C)現在治療中の疾患がなく、内服薬などの薬
物を使用していない
の条件を満たし、ヨーガ未経験者で新規にヨー
配にて九州大学医学研究院まで送られたものを、
測定するまで−;B℃にて保存した。
A.尿中ストレスマーカー濃度の測定
尿中ストレスマーカーの濃度の測定には、尿中
ガ教室に通い始める健常者(新規開始群)AB 人、
;8<'= 用 OM7*- キット(日本老化制御研究所)
年齢をマッチングさせた @ 年以上ヨーガを継続し
および尿中コルチゾール用 OM7*- キット(<38
て 行 っ て い る 健 常 者(経 験 者 群)AB 人 お よ び
#'P'02.0% 7&04)を使用し、尿中ク
ヨーガをしようと思っていない健常者(一般群)
レアチニン濃度による補正を行った。
AB 人を募集した。新規開始群の募集は、福岡、
〔;8<'=〕
熊本、鹿児島のスポーツクラブなどヨーガ教室を
遺伝子 I?- 中のグアニン塩基は活性酸素の作
施行している多施設での掲示や、インターネット
用 に よ り 酸化損傷 を 受 け、そ の 酸化 に よ り ;8
上で行った。経験者群および一般群は、ヨーガ療
<'= が生成される。遺伝子 I?- が修復される
法学会員および九州大学医学研究院に勤務する者
過程でこの ;8<'= は、細胞外に排出される。ま
から募集した。参加者に対して > 回の測定参加ご
た、;8<'= は比較的安定な物質で、生体内で代
と に NBB 円 の 謝 礼 金 を 支 払 い、@A 週 後 の フ ォ
謝や分解されることなく尿中に排泄されるため、
ローアップ時には >BBB 円の図書カードを謝礼と
活性酸素による生体の酸化ストレスマーカーとさ
した。
れている。
すべての対象者に対して研究の趣旨と方法を説
〔コルチゾール〕
明し、同意が得られた場合は、説明内容が記載さ
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホル
れた同意書への署名を得た。本研究は、九州大学
モンであり、ストレスに関与し、過度なストレス
医学研究院倫理委員会の承認を得た研究である。
を受けると分泌量が増加する。その反応が敏感で
@.調査手順
あるため、ストレスホルモンとも呼ばれている。
新規開始群には、ヨーガを習い始める前、A 週
N.質問票
後、; 週 後 お よ び >@ 週 後 の 早 朝 尿(午 前 F∼;
日 本 版 J<,* で は、そ の 下 位 尺 度 で あ る 緊
時)を採取し、同時に自己記入式の質問票である
張・不安、抑うつ、怒り・敵意、活気、疲労、混
日本版 J<,*、日本語版 *(M8GB8. および日本語
乱を用い、日本語版 *(M8GB8. では、その下位尺
版 -*8@B に記入したものを回収した。週に > 回
度である身体症状、強迫、対人過敏、抑うつ、不
> 時間以上のヨーガ教室に ; 割以上通うことがで
安、敵意、恐怖性不安、妄想様観念、精神病性症
き、自宅練習を週に @ 回以上、> 回の練習は CB
状を用い、日本語版 -*8@B では、その下位尺度
分以上行うことを継続してヨーガを行う条件とし
である感情同定困難、感情伝達困難、外的志向の
た。
スコアーによって評価を行った。
経験者群および一般群には > 回のみ早朝尿(午
〔日本版 J<,*〕
前 F∼; 時)を採取し、同時に自己記入式の質問
質問項目は、B から A の N 段階の FN 項目あり、
票である日本版 J<,*、日本語版 *(M8GB8. およ
緊張・不安、抑うつ、怒り・敵意、活気、疲労、
び日本語版 -*8@B に記入したものを回収した。
混乱の F つの因子を測定できる。一時的な気分や
今回の研究 > では、私たちの以前の研究におい
感情を測定できるため、リラクセーション効果な
て回収したこれらの尿検体を用いて、ストレス
どの評価を測定するのに適している。
マーカーである ;8<'= およびコルチゾールの測
〔日本語版 *(M8GB8.〕
定を行った。
質問項目は、B から A の N 段階の GB 項目あり、
C.尿検体
身体症状、強迫、対人過敏、抑 う つ、不安、敵
精神的ストレスを受けたり、体力を使ったりし
意、恐怖症性不安、妄想様観念、精神病性症状の
ていない(体力を使うヨーガも含まれる)日の翌
G つの下位尺度を測定できる。症状変化に鋭敏で
朝(午前 F∼; 時)の尿 @2 を採取し、冷凍の宅
あるという特徴をもつ。
(>BN)
〔日本語版 -*8@B〕
失感情症とは、自分の内的な感情の気づきと、
その言語表現が制約された状態にあることをい
う。質問項目は、N 段階の @B 項目あり、感情同
定困難、感情伝達困難、外的志向の C つの下位尺
度を測定できる。
F.ヨーガ
① 7&&.23&
0%&1
② '&S(&&/
③ -'%:(%:&
④ J'&
⑤ -'%(%:&
⑥ T0:.23&
0%&1
⑦ *%%&:&
⑧ -'%+%&
ヨーガには、新サイクリック・メディテーショ
ン技法を用いた(図 >)
。ヨーガ教室での新サイ
クリック・メディテーション技法の指導は、ヨー
ガ療法学会認定ヨーガ療法士が行った。ヨーガ教
室は、福岡、熊本、鹿児島の多施設で行われた。
E.統計的解析
平均年齢の差異に関しては、,&&8Q%&+8
を用いた。グループ間の尿中ストレスマー
カー値の比較には !:28Q228 を用い、
有意差 が 認 め ら れ た も の に 関 し て は、*'&8
?6&8!2 を用いた。また、尿中ストレ
スマーカー値の経時的変化の検定には K'&’
を用い、有意差が認められたものに関して
は、I&&’
を用いた。更に、尿中ストレス
マーカーの濃度と日本版 J<,*、日本語版 *(M8
GB8. や日本語版 -*8@B の下位尺度との間の相関
を調べるために、回帰分析および *5& の順
位相関係数を用いた。なお、統計的有意水準は、
R<B4BN とした。
C.結果
>.経験者群、新規開始群および一般群のスト
レスマーカー
経験者群、新規開始群および一般群の対象のな
かで、ヨーガを開始する前に採取した尿検体が冷
凍の宅配で送られなかったものがそれぞれ > 例、
⑨ I5.23&0%&1
図 > .新サイクリック・メディテーション技法
K/4>4?60020'&4
@ 例および > 例あり、解析対象から除外されたた
め、経験者群、新規開始群および一般群の解析対
で あ っ た(図 @)。尿中 コ ル チ ゾ ー ル 値 に 関 し
象人数および平均年齢は、それぞれ CG 人(CC4;
ては、グループ間の明らかな差異は認められな
± E4C 歳)、C; 人(CC4; ± ;4C 歳)お よ び CG 人
かった。
(CA4C±;4B 歳)であった。
尿中のストレスマーカーである尿中コルチゾー
ルおよび尿中 ;8<'= を測定し、経験者群、新規
@.新規開始群がヨーガを行うことによる尿中
ストレスマーカーの経時的変化
新規開始群は、A 週後までに F 人が脱落して CC
開始群および一般群の比較を行った結果、尿中
人となり、; 週後までに N 人が脱落して @; 人と
;8<'= 値に関しては、経験者群と一般群との間
なり、>@ 週後までに N 人が脱落して、ヨーガ教
では明らかな差異は認められなかったが、新規
室を最後まで終了したものは @C 人であった。脱
開始群は、経験者群や一般群と比較し有意に低値
落理由としては、仕事の都合や転居によりヨーガ
(>BF)
ns
度がヨーガ開始前と比較し、有意に上昇してい
た。一方、尿に含まれるコルチゾール濃度の明ら
**
**
かな変化は認められなかった。
20
C.尿中ストレスマーカーとストレスに関する
心理テストとの相関
15
尿中ストレスマーカーである尿中コルチゾール
10
濃度および尿中 ;8<'= 濃度と日本版 J<,*、日
本語版 *(M8GB8. や日本語版 -*8@B の下位尺度
5
との間の相関を調べたが、明らかな相関は認めら
0
れなかった。
control
Beginner(Before)
Expert
図 @ .ヨーガ経験者群、新規開始群(ヨーガ開始前)およ
び 一般群 の 尿中 ;8%'3'3/&&(;8<'=)濃
度
K/4@4%&#292#&;8%'3'3/&&(;8
<'=)&%35/5 )/&&/5()#/)
&'0&2/54
%'35'%&±*I4** R<B4B>4
研 究 2
A.目的
ヨーガによって改善した項目がヨーガ教室を終
了した後もその効果が持続するかどうかを検討す
るために、ヨーガ教室終了後のフォローアップを
行い、ヨーガ教室終了後に一定期間経った後のス
トレス状態をストレスマーカーおよび心理テスト
25
を用いて調査する。
**
20
**
B.方法
>.対象
15
研究 > の新規開始群を対象とした。
10
@.調査手順
5
新規開始群には、ヨーガを習い始める前、A 週
後、; 週後、>@ 週後に追加して @A 週後の早朝尿
0
0
4w
8w
12w
図 C .ヨ ー ガ に よ る 尿 中 ;8%'3'3/&&(;8
<'=)の経時的変化
K/4C4%0%&/#%&;8%'3'3/&&(;8
<'=)292)2& &'A ; &'>@6:#%8
/5/4
%'35'%&±*I4
**
R<B4B>&05&B6:4
(午前 F∼; 時)を採取し、同時に自己記入式の質
問票である日本版 J<,*、日本語版 *(M8GB8. お
よび日本語版 -*8@B を記入してもらった。ヨー
ガ教室終了後にヨーガを継続するかどうかは自由
とした。
C.尿検体
研究 > と同じ検体を用いて測定した。
教室に継続して通うことができなかったものがほ
A.尿中ストレスマーカー濃度の測定
とんどであった。このため、研究 > の経時的な変
研究 > の尿中ストレスマーカーに追加して尿中
化の調査における解析対象は、この @C 人(平均
バイオピリン濃度の測定を行った。尿中バイオピ
年齢:CE4C±F4B 歳)とした。脱落した >F 人の平
リ ン の 測定 に は バ イ オ ピ リ ン 用 OM7*- キ ッ ト
均年齢は、@;4;±;4; 歳であり、解析対象の平均
(-00-(.O *%&8)を使用し、尿中ク
年齢より有意に低値であった(R<B4B>)
。
レアチニン濃度による補正を行った。
新規開始群の尿中コルチゾール濃度および尿中
〔バイオピリン〕
;8<'= 濃度の測定をヨーガ開始前、ヨーガ教室
ビリルビンは活性酸素と直接反応することで抗
開始 A 週後、; 週後および >@ 週後の尿検体を用
酸化物として働く。その酸化代謝物質であるバイ
いて行った結果、図 C に示すようにヨーガ教室開
オピリンは、外科的ストレス、敗血症、冠攣縮誘
始 ; 週後および >@ 週後において尿中 ;8<'= 濃
発試験、急性心筋梗塞、心理的ストレスおよび統
(>BE)
合失調症などの酸化ストレス負荷によって増加す
な変化は認められなかった。日本語版 *(M8GB8.
る。このため、尿中バイオピリン値は、酸化スト
においても、ヨーガを >@ 週間行うことによって
レスの評価指標として注目されている。
低下していた身体症状、強迫、対人過敏、抑う
N.質問票
つ、不安、敵意、妄想様観念のスコアーのなか
研究 > と同じ質問票を用いて調査した。
で、対人過敏のスコアーのみがヨーガ教室終了時
F.統計的解析
の >@ 週後と比較し、@A 週後のフォローアップ時
平均年齢の差異に関しては、,&&8Q%&+8
に有意に増加したが、それ以外のスコアーでは有
を用いた。尿中ストレスマーカー値や心理テ
意な変化は認められなかった(図 N-∼()
。ヨー
ストのスコアーの変化の相違には Q203&8
ガを >@ 週間行うことによる変化を認めなかった
を用いた。なお、統計的有意水準は、R<B4BN と
日本語版 -*8@B に関しては、ヨーガ教室終了後
した。
>@ 週間経過した @A 週後とヨーガ教室終了時の >@
C.結果
>.新規開始群のヨーガ教室終了後の追跡調査
および解析対象のデータ
週後との比較において、感情同定困難、感情伝達
困難、外的志向のスコアーでは有意な変化は認め
られなかった。
ヨーガ教室を最後まで終了したものは @C 人で
あり、ヨーガ教室が終了して >@ 週後(ヨーガを
A
12
開始してから @A 週後)には、@C 人中 >F 人の追
Subscale score
跡調査が可能であった。残りの E 人はフォロー
アップの追跡調査に協力を得ることができなかっ
た。このため、研究 @ の解析対象は、この >F 人
(平均年齢:CE4>±F4C 歳)とした。>F 人中 A 人が
9
T-A
**
6
D
*
3
A-H
**
ヨーガ教室を終了した後もヨーガを継続してお
0
り、A 人のヨーガの練習時間は、> 週間に >4@N±
0
B4@G 時間であった。ヨーガ教室を途中で脱落した
>F 人と @A 週後のフォローアップの追跡調査がで
±;4G 歳であり、解析対象の平均年齢との有意な
差異は認められなかった。
@.ストレスに関する心理テストの追跡調査
新規開始群におけるストレスの改善状態が、
ヨーガ教室を終了した後もヨーガによる効果が持
B
Subscale score
きなかった E 人の合計 @C 人の平均年齢は、C>4E
**
12
9
0
日本語版 -*8@B)を用いて追跡調査した。
J<,* の下位尺度では、ヨーガを >@ 週間行うこ
とによって改善していた緊張・不安、抑うつ、怒
り・敵意、活気、疲労、混乱のスコアーのなか
で、抑うつのスコアーのみがヨーガ教室終了時の
>@ 週後と比較し、@A 週後のフォローアップ時に
有意に増加したが、それ以外のスコアーでは有意
F
C
行い、ヨーガ教室を終了してから >@ 週後(ヨー
その結果、図 A- および図 AP のように日本版
V
*
6
3
理テスト(日本版 J<,*,日本語版 *(M8GB8.,
24w
15
続するかどうかを調べるためにフォローアップを
ガを開始してから @A 週後)のストレス状態を心
12w
Time (weeks)
*
0
12w
24w
Time (weeks)
図 A .ヨーガ前後およびヨーガ終了後の感情プロフィール
テスト(J#2#,'*;日本版 J<,*)の下位尺度
-:緊張・不安(8-)、抑うつ(I)、怒り・敵意(-8)
および P:活気(U)、疲労(K)、混乱(()の変化
K/4A4(%&/&%&J<,*(J#2#,'*))8
0206%/&'#226854-D&&8-&3(8
-)I5&8IV0&(I)-&/82(-8)&'
PDU/(U)K/(K)(&#&(()4
*
R<B4BN&05&B6: ** R<B4B>&05&
B6: WR<B4BN&05&>@6:4
Subscale score
A
0.8
0.6
Somatization
0.4
ObsessiveCompulsive
*
**
0.2
Interpersonal
Sensitivity
*
Urine 8-OHdG(μg/g Cre.)
(>B;)
25
15
10
5
0
0
0
12w
0
24w
Time (weeks)
S ubscale score
B
ns
**
20
0.8
0.6
Depression
0.4
Anxiety
**
0.2
12w
24w
Time (weeks)
Hostility
図 F .ヨ ー ガ 前 後 お よ び ヨ ー ガ 終 了 後 の 尿 中 ;8
%'3'3/&&(;8<'=)濃度の変化
K/4F4(%&/&%&;8%'3'3/&&(;8
<'=)2926%/&'#226854
%'35'%&±*I4
**
R<B4B> &X&/&#0&4
**
の >@ 週後 と 比較 し、有意 な 変化 は 認 め ら れ な
**
0
0
S ubscale score
C
かった。また、尿に含まれるバイオピリン濃度お
12w
24w
Time (weeks)
よびコルチゾール濃度の明らかな変化は認められ
なかった。
0.8
考 察
0.6
Phobic Anxiety
0.4
*
Paranoid Ideation
Psychoticism
0.2
さまざまな疾患に対してヨーガによる改善効果
を報告しているものが多数あるが、一部では効果
がなかったとする報告もある。効果判定には、質
問紙を用いたものが多く、ストレスマーカーなど
0
0
12w
24w
Time (weeks)
図 N.ヨーガ前後およびヨーガ終了後の症状チェックリス
ト(*5(%0:M8GB8.;日 本 語 版 *(M8GB8.)の
下位尺度 -:身体症状、強迫、対人過敏、P:抑うつ、
不安、敵意および (:恐怖症性不安、妄想様観念、精神
病性症状の変化
K/4N4(%&/&%&*(M8GB8.(*5(%0:M8
GB8.))0206%/&'#226854-D*"8
& <)98(529 7&5&2*&9 PDI8
5& -&3 2 (DJ%)0-&3 J&'7'8
& J0%04
*
R<B4BN&05&B6: ** R<B4B>&05&
B6: WR<B4BN&05&>@6:4
の客観的な指標を同時に評価したものはほとんど
ない。今回は研究 > において私たちの過去の研究
において回収した尿検体を用いてコルチゾールや
;8<'= のストレスマーカーを測定し、ヨーガが
メンタルヘルスおよびストレス感受性に及ぼす影
響を調査した。また、ヨーガのメンタルヘルスに
関する改善度の持続効果について報告したものは
ほとんどないため、研究 @ においてヨーガのスト
レス軽減の持続効果を検討した。
今回のストレスマーカーの調査では新規開始群
がヨーガを >@ 週間行うことによる尿中コルチ
ゾール値の明らかな変化は認められなかった。尿
C.尿中ストレスマーカーの経時的変化
中コルチゾール値は、ストレスにより一過性に上
新規開始群の尿中 ;8<'= 濃度、尿中バイオピ
昇するが、一般の人たちはストレス状態が低いこ
リン濃度および尿中コルチゾール濃度を測定した
とが推察されるため普段の状態でも低値で安定し
結果、ヨーガを >@ 週間行うことによって増加し
ていることが考えられる。そのため、一般健常者
た尿中 ;8<'= 濃度は、図 F に示すようにフォ
では尿中コルチゾール値を更に下げることは困難
ローアップ時の @A 週後には、ヨーガ教室終了時
であったのかもしれない。ストレスマーカーであ
(>BG)
る尿中 ;8<'= 濃度は、ヨーガを行うことにより
に、今回は新規開始群のストレスマーカーがヨー
減少することを予想していたが、予想に反して
ガによってどのように変化するかを調査したが、
ヨ ー ガ を >@ 週間行 う こ と に よ り 増加 し た(図
ヨーガによるストレス軽減効果の質の高い研究調
C)。横断研究において新規開始群の尿中 ;8<'=
査するためには、ヨーガをしないコントロール群
濃度が、経験者群や一般群と比較し、低値であっ
との比較を行うことが望ましかった。第 @ に、今
たことより、今回調査した新規開始群は、尿中
回ストレスマーカーとして尿中バイオピリン、尿
;8<'= 濃度が低値の特殊な集団であった可能性
中コルチゾールおよび尿中 ;8<'= を用いたが、
がある。過去の報告では、仕事とともに家事労働
ストレス状態を客観的に評価する指標としてはこ
を行わなければならない就労女性は、家事労働を
れだけでは不十分であると思われる。今後は、ほ
しないでいい就労女性と比較して尿中 ;8<'= 排
かのストレスマーカーや免疫・内分泌・自律神経
泄量が有意に高い値であったことが示されてい
機能や脳機能など多角的にストレスを評価してい
る ため、今回の新規開始群は、時間的に余裕が
くことが重要であると考えられた。第 C に、今回
あり、あまり家事労働をしていない就労女性また
は、ヨーガを継続できずに脱落した人たちが多く
は就労していない女性が多く含まれていた可能性
認められ、そのなかには気分や症状のスコアーが
が考えられた。
高い人たちやヨーガの効果がなかった人たちが多
また、ヨーガのメンタルヘルスに対する改善の
く含まれていたかもしれない。今回は解析してい
持続効果について、研究 @ では >@ 週間のヨーガ
ないが、脱落した人たちの気分や症状の特性を解
教室の終了後に更に >@ 週経過した @A 週後のフォ
析することでヨーガを脱落せずに、継続していく
ローアップを行った結果、フォローアップ時の
ための指標づくりが可能になるかもしれない。
@A 週後には、ヨーガ教室終了時の >@ 週後と比較
これらの問題点があったとしても、今回のヨー
し、日本版 J<,* の抑うつおよび日本語版 *(M8
ガ教室終了後のフォローアップの調査によって、
GB8. の対人過敏のスコアーのみの上昇が認めら
ヨーガ教室終了後もしばらくの間、活力の程度の
れたが、それ以外の改善項目については有意な変
上昇が持続し、不安、怒り、疲労、混乱の程度の
化がみられなかった。これらの結果より、抑うつ
低下が持続し、身体症状や多くの精神症状の改善
や対人過敏以外の気分や感情、身体症状や精神症
が持続することが明らかになった。つまり、ヨー
状に関してはヨーガを終了した後も長期間にわ
ガを行うことによってネガティブな気分や感情の
たって効果が持続する可能性が示唆された。
改善や心身のさまざまな症状の軽減の効果が一定
尿中ストレスマーカーの濃度と日本版 J<,*、
期間持続することが期待され、ヨーガによるスト
日本語版 *(M8GB8. や日本語版 -*8@B の下位尺
レス軽減効果が長期間持続することが示唆され
度との間の相関を調べたが、明らかな相関は認め
た。今後は、ヨーガによる効果発現の機序を明ら
られなかった。抑うつ傾向が高い場合には尿中
かにするために脳機能や免疫・内分泌・自律神経
;8<'= 排泄量が多く、尿中 ;8<'= 排泄量と抑
機能も同時に調査するなど更なる研究を進めてい
>)
うつのスコアーが相関していたとの報告がある
G)
が、今回は健常者を対象としたため、明らかな相
関が認められなかったと考えられた。また、健常
く必要がある。
総 括
者における心理テストの下位尺度は、比較的低値
本研究はヨーガがメンタルヘルスおよびストレ
であり、特に日本語版 *(M8GB8. の下位尺度では
ス感受性に与える影響を調査するために、ヨーガ
B 点の人が多数含まれていたことも、相関が認め
経験者と未経験者とのストレスマーカーの比較や
られなかった要因の > つであると考えられた。今
新規にヨーガを開始した人たちがヨーガを継続し
後は、これらの尿中ストレスマーカーや心理テス
て行うことによるストレスマーカーの経時的変化
トの下位尺度が高値である疾患群を対象とした
およびヨーガ教室終了後もストレス軽減効果が持
ヨーガの効果についての調査が必要である。
続するかどうかを調査した。その結果、ヨーガに
今回の報告にはいくつかの限界がある。第 >
よる身体症状や多くの精神症状の軽減効果は、
(>>B)
ヨーガ教室終了後も >@ 週間持続した。これらの
50%5%02 `[ @AG8@N@4
結果より、ヨーガによるストレス軽減の持続効果
F)<%, ? <&$ <%, ** /0%* が示唆され、ヨーガがメンタルヘルス対策やスト
Q&), :%:- !6- -&' *%V7 レス耐性を向上させる手法の > つとして期待でき
る。
?/0% ,":, *":, 7&%- :'? ,0%'!(@BBN)D(2&02)0%0292&#
0&2#/6%@A8%0&&304.&%
謝 辞
P [Y ;B@8;BG4
E)<&%I P6&*O *0%6"MQ P22&/L -&/
本研究に対して甚大な助成を賜りました財団法人明治安
Q J- ,0M&%&*, !:'.M P&'.L 田厚生事業団および日本ヨーガ療法学会に深く感謝申し上
=2'!M(>GGB)D(&2#20%&/90&
げます。また、本研究にあたり日本ヨーガ療法学会のヨー
%'a%2#2%24M&0 YYb >@G8
ガ療法士の多くの方々にご協力いただきました。ここに心
>CC4
より感謝申し上げます。尿中バイオピリン値を測定してい
;)*%&&%##8!%2I* .MO M9&* =22&(( ただいた(株)シノテストの塩地出氏にも感謝申し上げま
*0%6"PL *'60%LL(>GGG)D.&'"'0&8
す。
22'2#/0'&0%&1#5&6%
参 考 文 献
)980529''4(?**50 c CA8AE4
G)*%&!L (%:&I( OL ,/2IM I.-
>)7%%7 ?:&, 7:%, $ $%& (@BBN)D(5&// 30 &'2#80):#
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第 EK 回健康医科学研究助成論文集
平成 BL 年度 MM8BBB∼BBN(ECCL8O)
高齢者における健康な骨の維持のための身体能力・
身体活動を探る
藤 田 裕 規* 玉 置 淳 子* 伊 木 雅 之*
ÁÂÃÄÅÆÇÈÉÇÊÅÈÅËÃÉÌÉÇÆËÅÍÅËÃÉÅÎÍÏÄËÅÇËÅÎÉÉÇÅÎËÏÎÇÎÆÏ
ÉÇÉÂÏÇÈËÂÃÉÊÎÏÉÅÎÉËÂÏÉÏÈÏÈÃÉÏÎ
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5''9!42!3(''"27%51?&@1747$"/3!728?/'9'077%!%$7%"!7379'!2757/7$"%>
7/73(''"27%51?&@"310!%47$"/3!728
?/'9'077%$D$$'7037!91$7%"!7379'!27!%9/0'/7!91/7''"27%51?&@"3
10!%47$"/3!728.1('2363(7:3"!$(173051"'7"0"/"''0/7:7!"!!%/7$7!0/"9/$'
4"/73%7/3($7!8
;7(5"/%'F6"!7$!7/3%7!'("'7"0"/"''01('2307/4"/$!277'73%7/3($! 0!7'78
課題である。骨粗鬆症の発症には閉経後の骨量減
緒 言
少が重要な役割を果たすことから、骨粗鬆症は女
骨粗鬆症 は 骨折 を 介 し て 高齢者 の 生活 の 質
性の病気とされ、対策やその基盤となる研究は、
BK)
ほとんど女性に対して実施されてきた。健康増進
として、公衆衛生上も医療経済上も極めて重要な
法に基づく事業による骨粗鬆症検診も女性のみを
(HIJ)を低下させ、要介護の原因となる疾患
近畿大学医学部公衆衛生学 @70/$7!"4.632P731;!+!:7/'(*21""3"4&7%2!7I' 0!8
* (BBE)
対象としている。しかし、骨粗鬆症性骨折のなか
能で、調査内容に同意した者には同意書に署名捺
で最も重篤な大腿骨近位部骨折の発生数は ECCE
印してもらい、参加を希望した男女を対象として
年 で 女 性 LBCCC 件、男 性 E=CCC 件 で、全 体 の
調査が行われた大規模コホート研究(元気高齢者
EE%を男性が占めており、骨粗鬆症は男性におい
の元気な秘訣を探る健康調査)である。藤原京ス
ても看過できない問題となっている 。諸外国で
タディでは男女合わせて約 O==C 人について調査
は男性を含めた大規模な横断研究があるが EB)、日
を行った。この調査は、奈良県立医科大学の倫理
本では男性の骨粗鬆症骨折に関する研究は決定的
委員会の承認を得ている。今回の解析の対象者
に不足している。
は、藤原京スタディのなかの橿原市在住の男性
骨折のリスク要因として、低い骨密度、栄養摂
BE== 人であり、そのうち、調査時間の都合によ
取不足、筋組織の減少、身体活動や身体能力の低
り骨密度の測定あるいは骨に関するアンケートの
下、バランス感覚の低下や歩行速度の低下が考え
データが収集できなかった者については解析から
BL)
られる
K<N)
。老年期の骨密度への運動の効果は少
除外した。最終の解析対象者は BBLQ 人であった。
ないように思えるが、疫学的証拠として、身体活
この調査は近畿大学医学部の倫理委員会の承認を
動をよくすることは高齢者での大腿骨頸部骨折罹
得ている。
患率 を 半分近 く 減少 さ せ る こ と が 示 さ れ て い
EC)
B.調査・測定項目
る 。自記式調査において、歩行や身体活動レベ
対象者の基礎的データとして、身長、体重、骨
ルは大腿骨骨密度と正の関係があることが示され
密度(6"!7$!7/3%7!'(R?&@)と身体能力を
。また、毎日約 B マイルのウォーキン
測定した。骨密度の測定は、二重エネルギー A
グをする人は短い距離をウォーキングする人よ
線 吸 収 法(%37!7/9(A>/(7%6'"/0"$7/(R
りもより高い骨密度であることが報告されてい
@A,)を 用 い て 腰 椎、大 腿 骨 近 位 部、大 腿 骨
ている
KBE)
B<)
る 。@/97!>&"3!.738
NQ)
は、女性において、
頸 部 に 対 し て 実 施 し た(H@-K=CC,P"3"92
大腿骨頸部骨密度と同様に、バランス能力や歩行
S31$&,)
。腰椎は多くの対象者で石灰化が
に関与する筋力の低下が有意に独立した大腿骨骨
観察され、骨密度の値を得ることは困難であった
折リスクの予測因子であることを報告している。
ために解析からは除外した。
身体活動量の減少は、骨密度の低下や筋肉量の減
身体能力 は、筋力(握力,膝伸展力,膝屈曲
少を引き起こし、転倒するリスクを高め、結果と
力)
、バランス能力(開眼片脚立脚)、歩行能力
して骨折に至る可能性を高めている。そのうえ、
(BC$ 最大歩行速度,最大 B 歩幅)を測定した。
身体能力は年齢とともに低下し、高齢者でより転
検者は専任の指導のもと各項目を一人が行うこと
B)
倒による骨折の危険性を高めている 。
とした。
身体能力は握力、歩行速度、歩幅、片脚立脚時
握力の測定は、デジタル式握力計(竹井機器工
間のような簡単な尺度を使って定量が可能である
業)を用いて、座位で行った。利き腕は対象者に
が、日本人の高齢男性を対象とした身体能力と骨
「ボールを投げる手はどちらですか」等を聴き、
密度との関係を明らかにした報告は少ない。今回
決定した。利き腕の握力を E 回測定し、その平均
これらの測定を行い、<= 歳以上の男性を対象と
値を代表値とした。膝伸展力、膝屈曲力はハンド
して、骨密度と身体能力との関連を評価し、男性
ヘルドダイナモメーター(T#'>B,アニマ社)
における骨粗鬆症や骨折の予防に寄与することを
を用い、対象者を座位、膝関節 LC 度屈曲位とし
目的とした。
て、その最大筋力を測定した BO)。利き脚は対象者
研 究 方 法
A.対象者
に「ボールを蹴る足はどちらですか」等を聴き、
決定した。利き脚の膝伸展力と膝屈曲力を E 回ず
つ 測定 し た。そ れ ぞ れ の 測定値 を 体重 で 割 り
藤原京スタディは ECCN 年度に奈良県立医科大
(9U5)、その平均値をそれぞれの代表値とした。
学と橿原市の共同事業として実施され、奈良県下
バランス能力の測定は、開眼片脚立脚で前方 E
の O 市において、<= 歳以上の独歩(杖歩行)可
$ の高さにある目標を注視させ、片脚を軽く挙
(BBO)
上させ、動揺を観察しながら上げた片脚が再接地
するまでの時間を計測した。片脚立位時間の最長
C.解析方法
すべてのデータは平均値±標準偏差(&7!±
は <C 秒間とし、<C 秒を超えた者は、そこで計測
*@)で示した。各年齢階級での平均値の差は対
を中止とした BN)。測定は E 回行い、その平均値を
応なしの >7' を用いた。対象者の骨密度と身体
代表値とした。
能力との関係について、ピアソンの相関係数を用
最大歩行速度は、始点と終点に E8=$ の加速路
いて検定した。更に、従属変数を骨密度とし、そ
と減速路を設けた全長 B=$ の歩行路を最大努力
の イ ベ ン ト と し て 若 年 成 人 平 均(("!9%3
で歩行するように指示し、中間の BC$ の通過に
$7!R,&)の QC%未満とした。一般に骨密度
要する時間を計測した 。測定は E 回行い、その
値が ,& の QC%未満の場合、正常の骨量より
平均値を代表値とした。最大 B 歩幅は、両足を揃
も減少している可能性が示唆されるため、イベン
えた状態から、最も大きく、あるいはできるだけ
トのカットオフ値とした。独立変数は身体能力と
広く片方の足を前方に踏み出し、反対側の足をそ
し、年齢、身体活動量を連続変量により調整した
の横に揃え、最初の両脚を揃えた地点から爪先ま
ロジスティック回帰分析を行った。身体能力は K
BN)
での距離を測定した 。測定は E 回行い、その平
分位で K カテゴリーに分け、最も身体能力が低い
均値を代表値とした。
カテゴリーを参照カテゴリーとした。なお、解析
身体活動量については、国際標準化身体活動質
には *,*:7/8L8B を用い、すべての解析において
=)
問票()!7/!"!3.1('23,2:(H7'"!!/7)
有意水準を =%未満とした。
BN)
を参考に「B 週間に体にきついと感じる身体活動
結 果
を何日行うか」
「B 日にどのくらいの時間歩行す
るか」等について調査を行った。そのデータから
B 日当たりの身体活動量(23U 日)を「エクササ
B=)
を参考にして算出した。
イズガイド ECC<」
表 B には対象者の特徴を示した。また各変数に
お い て <=∼<L 歳 と NC∼NK 歳、NC∼NK 歳 と N=
∼NL 歳、N=∼NL 歳 と QC∼QK 歳、QC∼QK 歳 と Q=
歳以上の平均値を比較した。最高年齢は LO 歳で
表 B .高齢日本人男性の体格、骨密度と身体機能
#637B8,!1/"0"$7/2!%27'6"!7$!7/3%7!'("4'7:7/3'7373'7'!%01('2307/4"/$!27"473%7/3( 0!7'7$7!8
5/>("*%(8
W/637
,97X(Z
P791X2$Z
S791X9Z
?&)X9U$EZ
?&@X9U2$EZ3$6/'0!7
"310
47$"/3!72
\/0'/7!91X9Z
,JJ
X!YBEBCZ
<= > <L
X!YK<<Z
NC > NK
X!YKCQZ
N= > NL
X!YEEQZ
NB8Q[=8E
<N8C[B8O
NB8N[B8K
N<8N[B8=
B<B8=[=8O6
B<E8L[=8<
B<K8K[=8O
B<E8N[=8<
=Q8L[Q8C6
<B8K[Q8N
<O8O[Q8=
<B8Q[Q8=
EO8B[E8Q
EO8K[E8N
EO8O[E8N
EE8=[E8Q6
B8CCN[C8BNK B8CBK[C8BNC B8CC=[C8B<O C8LLC[C8BQB
C8QN<[C8BEK C8QL<[C8BB< C8QN=[C8BEB C8Q==[C8BOE6
C8NOL[C8BBK C8N=L[C8BBB C8NOQ[C8BBC C8NBC[C8BBO6
OE8=[=8E6
OK8=[<8E
O<8N[=8Q
OK8<[=8L
;!777D7!'"!'/7!91X9U5Z C8KOE[C8BE< C8K=<[C8BEN C8KOC[C8BOC C8KCC[C8BBC6
;!77437D"!'/7!91X9U5Z C8ENB[C8CQE C8EQL[C8BC< C8E<N[C8C<C C8E==[C8C==6
BC<8C[BQ8O6
&D'7037!91X2$Z
BBO8<[BN8N BBL8Q[B=8O BBK8L[B=8K
I!7379'!27X'Z
ON8O[EB8B
K=8N[BQ8C
OQ8O[EC8O
EN8B[EC8C6
?/'9'077%X$U'Z
B8L[C8K
E8B[C8K
B8L[C8K
B8Q[C8K6
QC > QK
X!YQEZ
Q=!%$"/7
X!YE<Z
QB8Q[B8O
QN8O[E8<
B<C8Q[<8C
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(BBK)
表 E .大腿骨近位部と大腿骨頸部骨密度と身体機能との相関
#637E8]"//73"!67577!01('2307/4"/$!27!%?&@!73%7/3( 0!7'7$7!8
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表 O .高齢男性における身体機能と骨粗鬆症との関係
#637O8,''"2"!67577!01('2307/4"/$!27!%?&@!73%7/3( 0!7'7$7!8
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BK
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C8BK > C8LN
EQO
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BC
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?&@R6"!7$!7/3%7!'(I-R"%%'/"])R2"!4%7!27!7/:38
(BB=)
最少年齢 は <= 歳 で あ り、平均年齢 は NB8Q 歳 で
カテゴリーで有意な関係が示されなかった。BC$
あった。?&) の平均値は EO8B9U$E で、NC∼NK 歳
最 大 歩 行 速 度 で は B8N$U' 超 か ら B8L$U' 以 下 の
と N=∼NL 歳との間で平均値に有意な差が認めら
オ ッ ズ 比 が C8<N、B8L$U' 超 か ら E8E$U' 以 下 で
れた。大腿骨近位部の骨密度の平均値は C8QN<9U
C8K<、E8E$U' 超で C8N= であったが統計学的有意性
2$ E で <=∼<L 歳 と NC∼NK 歳、NC∼NK 歳 と N=
は示されなかった。最大 B 歩幅では BE=8O2$ 超で
∼NL 歳との間で平均値に有意な差が認められた。
はオッズ比が C8ON で有意であったが、その他の
大腿骨頸部の骨密度の平均値は C8NOL9U2$ で、<=
カテゴリーでは統計学的に有意ではなかった。開
∼<L 歳 と NC∼NK 歳、NC∼NK 歳 と N=∼NL 歳 と の
眼片脚立脚ではすべてのカテゴリーで統計学的有
間で平均値に有意な差が認められた。身体能力に
意性は示されなかった。
E
ついては、年齢の高いグループほど低い値を示し
た。握力、最大 B 歩幅と開眼片脚立脚は年齢階級
考 察
の上昇により有意な低下がみられた。膝伸展力、
骨密度は多くの要因と関連しているが、本研究
膝屈曲力と BC$ 最大歩行速度は QC 歳までは有意
では、身体能力に焦点を当て、骨密度と身体能力
に低下していた。
との関連を検討した。今回の研究において、通常
表 E では運動能力尺度と骨密度との相関関係を
の活動時に体重負荷がかかる歩行速度、最大 B 歩
示した。握力は大腿骨近位部骨密度、大腿骨頸部
幅や開眼片脚立脚の身体能力が骨密度と関係があ
骨密度との相関係数がそれぞれ C8BL、C8BN で有意
るという仮説を立てた。結果では、歩行速度、最
であった。膝伸展力はそれぞれ C8CK、C8CCB、膝
大 B 歩幅や開眼片脚立脚の身体能力が大腿骨近位
屈曲力はそれぞれ−C8CO、−C8CE で有意性は示さ
部や大腿骨頸部の骨密度と有意な相関関係が示さ
れなかった。開眼片脚立脚は大腿骨近位部骨密
れた。日常の身体活動量と年齢を調整したロジス
度、大腿骨頸部骨密度との相関係数がそれぞれ
ティック回帰分析の結果では、握力が大腿骨近位
C8BB、C8BO で有意であった。BC$ 最大歩行速度は
部と大腿骨頸部と有意な関連が示され、最大 B 歩
そ れ ぞ れ C8EB、C8EC、最 大 B 歩 幅 は そ れ ぞ れ
幅が大腿骨頸部と有意な関連が示された。他の尺
C8BE、C8B= で有意であった。
度では統計学的に有意な値ではなかった。
表 O は年齢、身体活動量を調整したオッズ比を
横断研究として、#447@-738EB)は、膝伸展
示した。大腿骨近位部についてみると、握力はす
力、椅子に座る動作の繰り返し、歩行速度、歩行
べ て の カ テ ゴ リ ー で 有意 な オ ッ ズ 比 を 示 し、
持久力、立位バランスで評価される身体能力は骨
OQ8O9 超のオッズ比は C8BL であった。これは握
密 度 と 関 連 が あ る こ と を 報 告 し、J!%'7(]7
力が OQ8O9 超であると大腿骨近位部の骨密度が
38BQ)の報告では、歩行速度と骨密度との相関係数
,& の QC%未満であるリスクが低いことを示し
は C8E=、片脚立脚とは C8EE であったことを示し
ている。膝伸展力、膝屈曲力はすべてのカテゴ
ている。我々の結果では、開眼片脚立脚、歩行速
リーで有意な関係がみられなかった。BC$ 最大
度や最大 B 歩幅は骨密度と相関関係があるもの
歩行速度では B8N$U' 超から B8L$U' 以下のオッズ
の、膝の筋力については関連が認められなかっ
比 が C8=N、B8L$U' 超 か ら E8E$U' 以 下 で C8KC、
た。身体能力には人種差が考えられることから EB)
E8E$U' 超で C8O< であったが統計学的有意性は示
先行研究と異なる結果であったのかもしれない。
されなかった。最大 B 歩幅では BE=8O2$ 超では
しかしながら、高齢男性において、開眼片脚立脚
オッズ比が C8E< であったが統計学的有意性は示
時間が長いほど、歩行速度が速いほど、最大 B 歩
さ れ な か っ た。開眼片脚立脚 で は KC8N' 超 で は
幅が広いほど骨密度が高くなっていることが示さ
オッズ比が C8<B であったが統計学的有意性は示
れた。またロジスティック回帰分析において、最
されなかった。大腿骨頸部についてみると、握力
大 B 歩幅のみが大腿骨頸部の骨密度と統計学的に
は OK8=9 超から OQ8O9 以下で有意なオッズ比を
有意な関係が示されたが、開眼片脚立脚や歩行速
示したが、他のカテゴリーでは統計学的有意性は
度においても最大 B 歩幅と同様の傾向が示されて
示されなかった。膝伸展力、膝屈曲力はすべての
おり、これらの身体能力が優れているほど骨密度
(BB<)
が高くなる傾向が示唆された。大腿骨近位部や大
い。そのため、若年から身体能力を高め、維持す
腿骨頸部を動かすような身体能力はその部分の骨
ることが重要であると考えられる。
密度に大きく影響し、その身体能力の測定は骨密
総 括
度を推定するうえで、重要な指標であると考えら
れ る。海 外 の 追 跡 調 査 を み る と、@73:D;7
骨粗鬆症予防について <= 歳以上の高齢男性を
38L)は BO 歳の身体能力や身体活動が KC 歳の骨量
対象にした大規模コホート研究は世界的に数少な
に寄与していることを報告している。?1/7:
く、身体能力と骨密度に関する研究は日本では
Jc738E)は成人の K 年間の追跡調査において、
我々が知る限り初めての調査である。今回の結果
身体活動と骨密度の関連があることを示し、身体
から、身体能力は骨密度に関連し、身体能力が高
活動が低いことが骨密度減少の予測因子であるこ
いほど骨密度は高くなる。一般に @A, 等を使用
とを報告している。朴ら O)は高齢者に対して B 年
して正確な骨密度を測定することは困難であるた
間の多面的運動介入の有効性を検討し、介入群で
め、骨密度の値が得られない状況において、身体
は全力歩行速度、最大 B 歩幅や開眼片脚立脚で有
能力評価は骨粗鬆症予防や治療の一助になるかも
意な改善効果を認め、大腿骨頸部骨密度に有意な
しれない。
改善効果がみられたことを報告している。今回の
謝 辞
我々の解析は横断的解析であったため、時系列的
見解が弱い。しかしこれらの追跡研究結果を踏ま
本研究は「元気高齢者の元気な秘訣を探る健康調査(藤
え、高い身体能力を獲得、維持することによって
原京スタディ)」(主任研究者:奈良県立医科大学地域健康
骨密度を高めることが可能であり、身体能力は骨
医学講座教授車谷典男)の一部として行われ、身体能力の
粗鬆症予防、骨折予防のための指標として重要で
測定は原納明博先生(東大阪市立総合病院整形外科部長)、
あると考えられる。また、高い身体能力は骨密度
羽崎完先生(大阪電気通信大学医療福祉工学部理学療法学
の維持、増加とともに、転倒のリスクを下げる要
科准教授)、峰松亮先生(畿央大学健康科学部理学療法学
因となることが考えられる。大腿骨頸部骨折で最
も多い要因としては、立った高さからの転倒であ
り、前 期 高 齢 者(<= 歳 以 上 N= 歳 未 満)で は NC8B
%、後期高齢者(N= 歳以上)で は QC8E%を 占 め
科准教授)が共同研究者として担当した。本研究には財団
法人明治安田厚生事業団からの研究助成を得た。また、研
究に快く参加していただいた対象者の皆様、調査スタッフ
として協力していただいた皆様にも心からお礼申し上げま
す。
ている BCBB)。安藤ら B)は身体能力の低下により転
参 考 文 献
倒による骨折の危険性が高まることを示し、特に
直接の転倒原因になりやすいバランス能力は NC
歳以上で有意に低下していることを報告してい
る。骨折の危険因子である骨密度の低下や転倒
B)安藤 卓,清水啓史,伊藤誠子,陳 宗雅,黒川正夫
(ECCN):骨 粗 鬆 症 患 者 に お け る 身 体 機 能 の 特 徴.
I'7"0"/"'' 0!,de,ECN>EBB.
は、身体能力を高めることにより、予防できると
E)?1/7:Jc?//7>]"!!"/^;/f>*3:7/'7!@
考えられる。特に、最大歩行速度やバランス感覚
&"/"!@ (ECCK)F&"%46370/7%2"/'"46"!73"''!
により骨折の危険を予測することも可能であるか
"3%7/$7!F0/"'072:7'%(8,$ ./7:&7%ghKO<>
もしれない。
KKE8
男性において、骨粗鬆症予防はこれまで女性に
O)朴 眩泰,小松泰喜,朴 相甲,武藤芳照(ECCN):
いわれてきたように、若年からのカルシウム摂取
高齢者の転倒予防のための B 年間の多面的運動介入の
や荷重負荷運動などにより骨強度(骨質と骨密
度)を高め、これを維持することが重要である。
女性の骨粗鬆症の多くは閉経後骨粗鬆症であり、
=C 歳以降骨密度が急激に減少し、高齢での運動
効果.I'7"0"/"'' 0!,de,BQC>BQO.
K)]"03!%],]3447* ?''7(^ \/!97& P"'!9
@ ]13:7/']^(BLLL)FP6301('232:(!%
6"!7$!7/3%7!'(!0"'$7!"0'35"$7!!^!9>
3!%8)! ^0%7$"3giEKB>EK<8
は骨折の危険を伴うかもしれない。男性における
=)]/9]J&/'133,J*"'/"$&?$!,^?""1
骨粗鬆症ではそのような急激な骨密度減少はな
&J,!'5"/1?^./&^73!%+!9:7,*33'
(BBN)
I.(ECCO)F)!7/!"!301('232:(j7'"!>
!/7FBE>2"!/(/7363(!%:3%(8&7%*2*0"/'
^D7/2keÉBOQB>BOL=8
<)@/97!>&"3!.@"21!&c]"/$7/]&7!7/. ?/7/\R^.)@I*'%(\/"0(ECCE)F+'7"423!23
P731pE8
BO)柏 智之,山崎裕司,清岡 学,松本陽介(ECCK):
固定用ベルトを装着したハンドヘルドダイナモメー
ターによる等尺性膝屈曲・伸展筋力測定法の再現性.
高知県理学療法,dd,EC>EK.
/'42"/'!73%7/3(5"$7!513"56"!7$!7/3%7!>
BK)厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課国民生活基
'("%7!4(5"$7!1917//'"4104/2/7F17
礎調査室(ECC=):平成 B< 年国民生活基礎調査.
^.)@I*0/"'072:7'%(8I'7"0"/"')!dk=LO>=LL8
N)@/97!>&"3!.:7/\/!%7!P?!%"!]
*21",&P'17//^&7!7/. ?/7/\(BLL<)F
33>/737%42"/'!%/'"4104/2/7F17^.)@I*
0/"'072:7'%(8J!27kliBK=>BKL8
B=)厚 生 労 働 省 運 動 所 要 量・運 動 指 針 の 策 定 検 討 会
(ECC<):健康づくりのための運動基準 ECC<∼生活習
慣病予防のために∼<エクササイズガイド ECC<>.
B<);/33^,@5'"!>P917'?(BLLK)FS3!9'/737%
"6"!7%7!'(!%/7'"46"!73"''8 ,&,nhEC>E<8
Q)@/97!>&"3!.*21",&P!'@:7/\/!%7!
BN)小松泰喜,上岡洋晴,岡田真平,朴 眩泰,武藤芳照
P?%"!]&7!7/. ?/m/\(BLLL)F*70/7!%
(ECC=):健常高齢者の体力特性とその測定方法.理学
2"$6!7%:37"46"!7$''!%9'077%$7'/7$7!'
療法,gg,BKL>B=Q.
!'2/77!!94"/104/2/7/'F/7'3'4/"$17^.)@I*
BQ)J!%'7(]?/"5!633-,?"1!!"!,-)321 q(ECC=)F
'%(8^0%m$"3"97%73’
I'm"0"/"'78I'7"0"/"')!n
,''"2"!"401('2307/4"/$!27$7'/7'516"!7
BQQ>BLE8
$!7/3%7!'(!0"'$7!"0'35"$7!8,/21.1('&7%
L)@73:D;J747:7/ .13007/'-@7j77/ #1"$'
&W!/7'73?]37''7!',^(!%7?W?7!7!\
J('7!'-(ECCB)F?"!7$''!%347$701('232:>
(!37$'1$37'FEN>(7/4"33"5>0'%(8&7%*2
*0"/'^D7/2kkBQ<Q>BQN=8
BC)萩野 浩(ECC=):高齢者 の 骨折..# ジ ャ ー ナ ル,
kn,=>BB.
-7163ihBBCE>BBCN8
BL)折茂 肇(ECCK):第四回大腿骨頸部骨折全国頻度調
査成績.日本医事新報,ldir,E=>OC.
EC)-17/4"/%I&(BLLL)F)'17/7/"374"/7D7/2'7!17
0/7:7!"!"4"'7"0"/"24/2/7'o?/ *0"/'&7%kk
ONQ>OQ<8
EB)#447@-*$"!'2^&W''7/&W"30"*c7:
BB)萩野 浩,坂本桂造,中村利孝(ECCK):大腿骨頸部
&]]37( ,#(3:'(,P//'#?(ECCO)FJ"57/
骨折の発生状況および治療状況に関する全国調査.厚
7D/7$(01('2307/4"/$!27!%106"!7$!7/3%7!>
生労働科学研究研究費補助金長寿科学総合研究事業.
'(!73%7/3(632!%517$7!!%5"$7!F2/"''>
BE))321>^/!' ?/"5!633-,J%7$!!&,-(ECCE)F
'72"!3''"2"!'!17P731,?]'%(8 \7/"!"3
]/2342"/'4"/6"!71731!5"$7!2/"''1797
'0!F1"5$0"/!'$'237$''o&7%'207S"$7!'
,?"3*2&7%*2eiLOK>LKE8
第 1N 回健康医科学研究助成論文集
平成 HJ 年度 OO3HHP∼H1Q(1RRJ3S)
加齢に伴う活性酸素増加が骨代謝に及ぼす影響
宮 崎 剛* 田 中 栄**
ÁÂÃÄÅÆÇÃÄÆÈÄÉÊËÆÌÄÍÎÄÆËÁÃÆÏÇËÁÍÏÄÆÎÃÄÅÃËÆÅÁÍÆÎ
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D"5) E:" ",)/,9+,/ )9,"()9,"/7,9)"/,0"*'"("/"3
緒 言
→転倒→骨折→寝たきり→痴呆”など)に陥らな
いためにも、生涯にわたり「筋・骨格系」などの
現在、日本はかつてない高齢社会を迎え、なか
運動器の機能(骨量・骨格筋の保持)を維持し、
でも老化に伴う骨、関節、筋など運動器の機能低
疾患を予防することが求められる。本研究では、
下に付随して生じる問題は、神経系の障害ととも
骨量の低下を予防すべく、その第一歩として、骨
に高齢者の生活の質を著しく損なうため、大きな
吸収の詳細なメカニズムの解明を試みる。骨組織
社会問題となっている。骨粗鬆症による各種骨
はいったん成熟した後も、破骨細胞による骨吸収
折、関節リウマチ・転移性骨腫瘍による骨破壊な
とそれに引き続く骨芽細胞による骨形成が間断な
どの病変は、高齢者の日常生活活動度($.F)
く行われている。この過程を「骨リモデリング」
を低下させ、社会全体の活動性、生産性を低下さ
というが、リモデリングの場である :"+7,8
せる。この生活機能を低下させる運動器(身体活
/"777),(G#)において、骨吸収の開始か
動を支える骨・筋肉・関節・靭帯などの器官)の
ら骨形成の終了まで、という H つのリモデリング
疾患が原因となり、悪循環(“骨粗鬆症→骨折→
サイクルが完成するには、ヒトの場合 I か月から
筋力低下→寝たきり→痴呆”あるいは“筋力低下
J か月を要する。ここで注目すべきは各細胞の生
東京都老人医療センター整形外科 ."(),+",6-),(" /!)'")9",)(7,K"),)/2(,799L(3
東京大学医学部整形外科学教室 ."(),+",6-),(" /!)'")9M/7,6" /"9"#0"),699L(3
* ** (HHJ)
存期間であり、骨芽細胞の寿命が約 S か月である
し て 壊 し て し ま う の で、活性酸素種(%"/,0"
のに対し、破骨細胞は生体では約 1 週間でアポ
-*'"!("/"[%-!)と呼ばれている。生体内で
トーシスによって細胞死に陥る、極めて短命な細
は %-! が常に発生しているにもかかわらず、ヒ
胞であるという事実である。換言すれば、骨リモ
トは何十年も生き続けることができるが、これは
デリングとは、破骨細胞によって急速に吸収さ
生体内に巧妙な抗酸化機構を備えているからであ
れ、欠損した骨組織を、骨芽細胞が緩やかに充填
る。生体内で働いている抗酸化酵素の代表的なも
していく過程であるといえる。ここで興味深いの
の と し て、ス ー パ ー オ キ シ ド デ ィ ス ム タ ー ゼ
は、この破骨細胞が短い生存期間であるにもかか
(!-.)、カタラーゼ(<,)
、グルタチオンパーオ
わらず、骨吸収という仕事量はとてつもなく大き
キシダーゼ(K4\)などがあげられる。!-. は
いことである。破骨細胞は、リモデリングサイク
ミトコンドリアに多量に存在し、有酸素性エネル
ルの中心的存在で、骨代謝回転を決定している細
ギー代謝で生じたスーパーオキシドを速やかに過
胞であり、その骨吸収活性と生存期間は生体にお
酸化水素に変える。過酸化水素は <, によって酸
いて極めて厳密に制御されていなければならない
素と水に変換される。細胞内で発生する %-! の
ため、この破骨細胞の骨吸収と生存期間のアンバ
大部分はミトコンドリア呼吸の副産物として産生
ランスのメカニズムの解明が骨粗鬆症に代表され
されるので、本研究では、ミトコンドリア内で
る骨代謝疾患において非常に重要だと考えられ
スーパーオキシドを処理する !-. を破骨細胞
る。
特異的にノックアウトしたマウスを作製し、その
これまでに我々は、破骨細胞内のシグナル伝達
分子メカニズムを解析する。加齢に伴う生体機能
経路の機能解析を行ってきた。H)T0US インテグ
の 低 下、い わ ゆ る 老 化 現 象 が、長 年 に わ た る
リンの下流で /8!)/ が細胞骨格の制御を通じて骨
%-! の生成とそれによる生体傷害の蓄積によっ
HI9HV)
、1)%$WDF()"/"(8
て引き起こされるという説があり、これまで老化
,)/,0,)6WM8XG7' )
、8<!M(+/)8
と %-! の関係に注目した研究がいくつかなされ
('"/78,+7,'6/,))
、YF8H(,")7"8
てきた。本研究は、骨密度減少つまり骨粗鬆症に
H)刺激により Z%D("*,)/"777)'78)"'7," よる H)転んだだけで骨折する、1)脊椎圧迫骨
")が 活 性 化 さ れ、G/781 フ ァ ミ リ ー メ ン
折により背中や腰の曲がりがひどくなり、内臓圧
バーである G+ の "') , を介して破骨細胞
迫を起こす、S)痛みで活動力が低下する、など
吸収を制御していること
、S)破骨細胞
の高齢者の $.F の低下を予防することを最終目
内にミトコンドリアが多量に存在し、ミトコンド
的としている。つまり、骨粗鬆症から始まる生活
リア内に存在する /8!)/ が $4 エネルギー産生に
機能低下、その悪循環(骨折→床上安静→更なる
関与している /,/)+"/* " の活性を制御
筋力低下→寝たきり→痴呆)を断ち切ることがで
の生存期間を延長していること
19HN)
などを明らかにしてきた。ミト
きれば、高齢者の $.F が維持され、介護の負担
コンドリアは、電子伝達系における酸化的リン酸
が減り、家族の時間的・金銭的負担を著しく軽減
化による $4 エネルギー生産とアポトーシス責
することが期待される。また、骨密度減少は骨格
任器官という 1 つの異なる役割が指摘されてい
筋萎縮に通じる可能性があり、骨量・筋力が維持
る。そこで我々は、破骨細胞の骨吸収と生存期間
できれば、転倒による大腿骨頸部骨折手術などの
のアンバランスを解明する鍵がミトコンドリアに
高額医療の件数が減少し、医療費をはじめとする
あるのではないかと注目した。
社会に対する負担を軽減することも可能になると
すべての細胞において、細胞内器官であるミト
期待される。その実現に向け、破骨細胞の骨吸収
コンドリアが、酸素を用いたエネルギー生産(有
機能の制御に焦点を当て、その分子メカニズムを
酸素性エネルギー代謝)を行うが、このとき、用
明らかにする。
していること
HQ)
いた酸素のうち H ∼ 1 %を誤ってスーパーオキシ
ドという物質にしてしまう。これらは過激な酸化
活性をもち、遺伝子、膜脂質、蛋白質などを酸化
(H1R)
まず、細胞を氷冷した 4G! で 1 度洗い、それか
研 究 方 法
ら WZ バ フ ァ ー(H%W48NR9HR+)82<7
[(2V3P]9HQR+W<79H+Z.$91+WS`-N9
A.動物
Z! 細胞における遺伝子相同組み換えを利用し
HR+WM9 HR^']+7(),)を加えること
て、!-. のエクソン S を挟むようにその前後
により蛋白を抽出した。蛋白抽出液は HQRRR)(+
1 か所に 7*4 配列を挿入した。この Z! 細胞を用
で 1R 分 遠 心 し 清 浄 化 し た。等 量 の 蛋 白 を P%
いてキメラマウスを作製し、導入した変異アレル
!.! ポリアクリルアミドゲルに流し、電気的に
!-.67* を も つ マ ウ ス を 使用 し た。!-.
ニトロセルロースメンブレンにトランスファーし
を完全欠損するマウスでは、重症の拡張性心筋症
た 後、適当 な 一次抗体、更 に )") (")*8
にて生後数週間で死んでしまうが、今回作製した
" をつけた二次抗体(4)+"'<3)でブロッ
変 異 ア レ ル !-.67* を ホ モ に も つ マ ウ ス
ト し た。そ し て、Z<Fa","):7,,' ","/,
(!-.67*]67*[!-.67]67]マウス)はほぼ正
常に生まれ、生殖能をもち、7*4 配列挿入によ
る !-. 遺伝子・蛋白の発現や機能への影響は
)"'",($+")+<3)を用いて、反応する蛋
白を可視化した。
D.OCL の生存率
なかった Q)。7*4 配列は <)" リコビナーゼ酵素に
破骨細胞の生存率の算出は、L+",73V)の方法
より認識され、1 か所の 7*4 配列に挟まれた遺
に従って行った。アデノウイルス感染後 R3H%コ
伝子領域が切り出されることにより、!-. 機
ラゲナーゼ_R31%ディスパーゼ処理により -<F
能が失われる。このマウスは、後述する細胞特異
を純化し、R、H1、HP、1N 時間後に酒石酸抵抗性
的 <)" 発現マウスと交配することにより、細胞特
酸性フォスファターゼ(,),),"8)",,/ (8
異的に !-. を不活化する目的で利用された。
(,"[%$4)染色を行った。破骨細胞の生存
!-.67* 遺伝子の確認は、プライマー 4H(Q’
8
率は、%$4 陽性でかつ形態学的に正常な多核細
<K$KKKK<$<$KKK$K$$K$$K8S’
)
、
胞を生きている破骨細胞としてカウントした。生
41(Q’
8$KKK<<$KKK<<$K$$8
存率は、純化直後の -<F 数を HRR%として、H1、
S’
)
、4N(Q’
8$K<KK<KK$<K$$8S’
)を
HP、1N 時間後に生存している -<F 数を%表示し
用いて +7,(7"*4<% を行い、QRR:( のバンドを
た。
57 ,("、SQP:( の バ ン ド を !-.67* と し
Q)
た 。
E.吸収窩アッセイ
破骨細胞の骨吸収活性を検討するために、コ
B.細胞培養
ラーゲンゲル(Q×TZE1RR+2Z4Z!:66")
骨 髄 細 胞 は、!-. マ ウ ス(I 週 齢)の 大
[(2V3N]
Eコラーゲンゲル=1EHEV)でコーティ
腿骨と脛骨から採取した 1H)。HR/+ のコラーゲン
ングしたデッシュで共存培養を行った H)。形成さ
ゲルコートしたディッシュ上で、HR 活性型ビ
れた破骨細胞にアデノウイルスを感染させ、その
タミン .S と H^ プロスタグランジン Z1 の存在
1N 時間後にコラーゲンゲル基質を R31%コラゲ
下に骨芽細胞(Q×HR /"77] )と骨髄細胞( H
ナーゼを用い、SV°
< で HR 分間溶解させることに
67]67
Q
×HR /"77] )の共存培養を行った 。共存培養
より細胞を遊離させ、回収した。回収した細胞は
下では、骨芽細胞・骨髄細胞・形成された破骨細
TZ]HR%MG! に浮遊させ、象牙切片上に等量
V
H)
胞様細胞(,"/7,87"/"77[-<F]
)が混合し
分注した。象牙切片上で H1 時間培養後、HW アン
た状態なので、R3H%コラゲナーゼ_
R31%ディス
モニア中に浸し、超音波破砕装置にて付着してい
パーゼを含む TZ で HR 分間インキュベート
る細胞を除去し、H%トルイジンブルーにて染色
することにより、骨芽細胞と骨髄細胞を除去し、
し た。吸収窩 の 面積 は、!&!Z!#44F& 社製
-<F のみに純化した 。この純化した -<F を蛋
の画像解析ソフトにて定量した。
1N)
白の解析に使用した。
C.ウエスタンブロッティング
蛋白抽出はすべて N°
< または氷上で行った。
F.統計学的検討
それぞれの実験より得られた結果は、平均±標
準偏差として表記した。有意差は、分散分析法
(H1H)
(6/,)7760)/"[$W-`$)を 用 い て
B.MnSOD の発現低下は破骨細胞の生存に影
響を及ぼさない
検討した。
我々は次に !-. のノックダウンが -<F の
結 果
生存に与える影響を調べた。$*KM4 または $*8
A.破骨細胞における Cre リコンビナーゼ発現
AxGFP
による MnSOD ノックダウン
AxCre
我々はレポーター遺伝子である U8 ガラクトシ
ダーゼを組み込んだアデノウイルスベクターを用
WB:MnSOD
い、ヒトの骨巨細胞腫より培養した -<F および
=>?@=ABC で形成されたマウス -<F にアデノウイル
WB:Cre
ス が 効率 よ く 感染 す る こ と を 既 に 報告 し て い
る 。U8 ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 陽性 の -<F の 割合
1S)
は、感染させたアデノウイルスの量に比例し、
WB:c-Src
-Y(+7,(7/,66"/,=H 細胞当たりの感
染粒子数)
:HRR で PQ%以上 の -<F が U8 ガ ラ ク
MnSOD
ト シ ダ ー ゼ 陽 性 で あ っ た。図 H に 示 す よ う に
$*KM4 または $*<)" を -Y:HRR で感染させた
-<F において十分量の <)" の発現を確認するこ
とができた。下のパネルはそれぞれのレーンに使
用した蛋白量が一定であることを抗 !)/ 抗体を用
いたウエスタンブロッティングで示している。こ
の条件下で、!-. の発現は、完全な消失まで
に は 至 ら な い も の の、コ ン ト ロ ー ル の 約 1R
∼SR%まで低下している(図 H)
。
A
OCLs
図 H .<)" 発現アデノウイルスによる !-.67]67 破骨細胞
での !-. 発現抑制
M'3H3$ "0)0"/,)8 /" <)""*()","/7,
)" /" ,""*()"7"0"76!-.3
!-.67]67-<F6)+" /7,)" "5")"6"/," 5,
$*KM4)$*<)",-Y6HRR3$6,")Q 66"/,9
!-.67]67-<F5")"()6" :"+,/ '", 7" 5,WZ:66")3Z*()"6!-. "/)"" :<)" "7"8
,95")","7"0"76/8!)/5,'6/,7/'" <)" /,3
B
100
AxGFP
80
Cell Viability (%)
fl/fl
AxCre
AxGFP
60
40
AxCre
20
0
0
0h
12h
18h
18
(h)
24h
図 1 .破骨細胞における !-. 発現抑制は延命に影響しない
M'313+"/)"6,")0076!-.67]67,"/7,3
67]67
$6,")()6/,9!-. -<F6"/," 5,$*KM4)$*<)"5")"/:," 5,TZ]HR%MG!6) /," ,+"3"
+:")60:7"/"77)"+',," 66")",,+"(,5(")/",'"6,"/"77,,+"")3<)" "7",6!-.
"66"/,,"/7,)0073(G)5,(/7%$4,'6!-.67]67-<FHP6,")()6/,:,""*(")+",
"/):" ($)3
(H11)
A
B
120%
Area resorbed(% of control)
100%
80%
60%
40%
AxGFP
20%
AxCre
0%
AxGFP
AxCre
図 S .破骨細胞における !-. 発現抑制は骨吸収機能を低下させる
M'3S3Z66"/,6!-. 58)"'7,," ","8)"):'/,0,6,"/7,3
($)$ "0)0"/,)8 /" <)",)'7:," ",")")(,:!-.67]67-<F3`7")"+"±!.(=P)3b!'8
6/,77",/,)7(c<R3RH)3(G)$*KM486"/," !-.67]67-<F() /" ) "*/0,957""*/0,5")"
))"7:")0" /,6<)"3
<)" を -Y:HRR で感染させた -<F を R3H%コラ
細胞 H 個当たりの吸収窩面積を算出することによ
ゲナーゼ_
R31%ディスパーゼ処理にて骨芽細胞を
り比較検討した。図 S にみられるように、-<F
除去することにより純化し、更に HR%MG! を含
の骨吸収機能は、$*<)" によりコントロールの
む TZ でインキュベートすることにより -<F
1Q%ほどに有意に抑制され、破骨細胞内 %-! 量
の生存率を評価した。骨芽細胞除去後、$*KM4
が骨吸収を制御するシグナルに重要な役割を果た
を感染させた細胞と $*<)" を発現させた細胞で
していると考えられた。
は、経時的な生存率に大きな差がなかった(図
1$)。図 1G に HP 時間後における生存破骨細胞の
考 察
%$4 染色 を 示 す。H1、HP、1N 時間後 の 生存率
細胞内活性酸素種(%-!)は、癌、動脈硬化な
に大きな差がないことから、破骨細胞の生存にお
どの生活習慣病や老化に関与することが明らかに
いて !-. が重要な役割を果たしていないこと
されており、そのメカニズムとして、%-! は細
が示唆された。この結果より、破骨細胞内 %-!
胞内レドックスバランスを変化させ、細胞内の構
量が破骨細胞のアポトーシスを制御するシグナル
造や機能にさまざまな現象を誘導する引き金とし
に関与していないと考えられた。
て作用することが示唆されている。特に %-! の
C.MnSOD は破骨細胞の骨吸収機能活性化に
重要である
アポトーシスへの関与についての研究は、数多く
報告されている S9I9H19HJ91Q)。HJJQ 年に F",73 は 8
我々は次に !-. のノックダウンが破骨細胞
!-. 欠損マウスを作製し、ホモマウスは拡張性
の骨吸収機能において重要な役割を果たしている
心筋症を伴い生後早期に死亡することを報告し
かどうかを検討した。破骨細胞の骨吸収能は象牙
た HR)。その後、!-. 活性を有する低分子化合物
切片上に形成された吸収窩の面積を計測すること
G$4([YYY],",)[N8G"// ]()8
に よ り 定量化 し た 11)。図 1 よ り、生存率 が 8
()<7) ")によるレスキューが行われ平均
!-. の発現量に影響されないことが判明してい
寿命を延命したが、神経系の変性で死亡すること
るので、吸収窩アッセイを 1N 時間で行い、破骨
が明らかになった HS)。驚いたことに心臓の拡張性
(H1S)
心筋症 は 発症 し て お ら ず、心臓 の 臓器障害 は
阻害すると破骨細胞に急速なアポトーシスが生じ
G$4 によって抑制したが、新たに神経系の
た。%$WDF、YF8H、および 8<!M が破骨細胞に
障害がもたらされることが明らかとなった 。こ
おいて Z%D を活性化することから、%8Z%D シ
のような背景のなかでは、!-. 欠損マウスを
グナルが破骨細胞生存における重要な役割を果た
用いた慢性的なミトコンドリア酸化ストレスを長
していることが示唆された。更に、我々は、G/78
期にわたって解析することが困難であった。臓器
1 ファミリーである G+ の :d,7, が破骨
別にミトコンドリア酸化ストレスの病理学的役割
細胞アポトーシスを制御している可能性を報告し
を検討するために、<)"87*4 システムを用いて、
た 1)。8<!M の存在下で、G+ は恒常的にユビキ
組織特異的に !-. を欠損できるモデルマウス
チン依存性に分解されているが、8<!M の非存
HS)
Q)
(!-.67* マウス)が作製された 。本研究で
在下では G+ のユビキチン化が抑制され、G+
は、!-.67]67 マウスより採取した骨髄細胞から、
の発現レベルが急速に上昇する。更に、G+ 欠損
破骨細胞を分化させ、そこでアデノウイルスを用
破骨細胞は =>?@=@C、=>?@=ABC ともに生存が促進さ
いて、<)" リコンビナーゼを導入し、破骨細胞で
れた。また、!', 2) は %W$ で G+
の !-. ノックアウトを試みた。図 H に示すよ
の遺伝子をノックダウンすると破骨細胞の生存が
うに、アデノウイルス感染後 Q 日間を経過して
促進されたと報告した 1R)。これらの結果は、破骨
も、完全に !-. の消失した破骨細胞を得るこ
細胞生存において、Z%D の活性が、G+ の分解
とができなかった。理由としては、!-. 蛋白
において重要な役割を果たしていることを示唆す
質の半減期が長いこと、<)" アデノウイルスと
る。ミトコンドリアがアポトーシス実行において
!-. 遺伝子の相性が良くないことなどが考え
主役を演じていることから、!-. ノックダウ
ら れ た。1JS 細 胞 で の %W$(+77,")6")'
ンによる %-! の増加が破骨細胞の延命に影響を
%W$)によるノックダウン実験では、!-. が
与えているのではないかとの仮説のもと、本研究
NP 時間でほぼ消失していることから N)、!-.
においても )007 を行った。残念ながら、
蛋白質の半減期の問題よりもアデノウイルスを用
図 H の よ う な !-. が 1R∼SR%残存 し た 状態
いた実験系に問題がある可能性が高いと思われ
た。現在、破骨細胞特異的に <)" を発現するカテ
では、破骨細胞の延命の差を検知することはでき
な か っ た(図 1)。!-.67*]67*<,D8<)" +]-
プ シ ン D8<)"(<,D8<)")マ ウ ス HP)と !-.67]67
マウスにおいては、延命に差が出る可能性もある
マウスを交配させ、破骨細胞特異的 !-. 欠損
ので、再度検討する予定である。
マ ウ ス を 作製中 で あ る。こ の マ ウ ス(!-.
67*]67*<,D8<)"+]- マウス)を短期および長期
!-. 発 現 レ ベ ル の 制 御 は、YF8H や WM8T
(+)"/)6/,)8T)をはじめとするサイト
にわたり飼育し、レントゲン撮影・< スキャン
カインの刺激で上昇することが報告されており、
にて骨量の評価を行い、更にその骨組織の標本を
そのなかでも転写因子である WM8XG の活性が重
用いて骨形態計測などを行い、その表現型を解析
要である P9HH)。破骨細胞においても、WM 受容体
することができれば、本研究の結果と比較検討で
ファミリーメンバーや YF8H 受容体によるシグナ
きると考えられる。
ルが機能発現において重要な役割を果たす。これ
骨粗鬆症の治療におけるビスフォスフォネート
らの受容体に直接的あるいは間接的に結合する
の成功が、破骨細胞アポトーシスの分子メカニズ
%$M(WM)"/,()8/," 6/,))ファミリー
ムに対する注目を集める誘因となった。破骨細胞
を構成する分子が下流へシグナルを伝えるが、そ
の寿命は =>?@=@C、=>?@=ABC ともに短く、骨芽細胞
のファミリーのなかでも %$MI が破骨細胞の骨
や YF8H、%$WDF、および 8<!M などのサイトカ
吸収を促進する %$WD と YF8H%(YF8H)"/"(,))
インの非存在下に急速にアポトーシスを生じる。
からのシグナル伝達において中心的役割を果たし
以前、我々は、Z%D の活性化が破骨細胞の生存
ている。%$MI ノックアウトマウスを用いた破
HN)
を著しく促進すると報告した 。逆に、ドミナン
骨細胞の解析より、%$MI が破骨細胞骨吸収に
トネガティブ型 ) 遺伝子を過剰発現し、Z%D を
必須であることが示され J)、我々もドミナントネ
(H1N)
ガティブ型 YDD(YXG")過剰発現により骨
!-.67]67 マウスより採取した骨髄細胞から、破
吸収が抑制され、逆に恒常的活性型 YDD を破骨
骨細胞を分化させ、そこでアデノウイルスを用い
細胞に導入すると骨吸収が増加することを報告し
て、<)" リコンビナーゼを導入し、!-. ノッ
た HN)。興 味 深 い こ と に、WM8XG(/7")6/,)
クダウン破骨細胞を用いて機能解析を行った。
((G)の活性を調節しても破骨細胞の生存に
<)" アデノウイルスを用いた実験系が !-. 蛋
大きな影響はなかった HN)。これらの結果より、
白質を完全に消失させるには至らず、このような
%$MI8YDD8WM8XG シグナル伝達経路が成熟破骨
不十分な状況下で実験を行わざるを得なかった
細胞の骨吸収機能において重要な役割を果たして
が、骨吸収機能は非常に強く抑制されることが明
いるといえる。WM8XG 低下が !-. の発現量低
らかとなった。
下につながるので、本研究での !-. の発現低
現在、!-.67*]67*<,D8<)" +]- マ ウ ス が
下による破骨細胞骨吸収機能低下という結果は、
作出中であり、=>?@=@C での解析結果も加われば、
破骨細胞骨吸収を担う分子として !-. が WM8
!-. 遺伝子の骨代謝における重要性が更に明
XG の下流で重要な役割を果たしていることが示
らかになってくるものと考えられる。<)" アデノ
唆される。
ウイルスを用いた実験系と異なり、よりクリアに
本研究の目的は、%-! の破骨細胞骨吸収に対
!-. をノックアウトすることができれば、破
する影響を調べることにより、骨粗鬆症を予防す
骨細胞の延命や形態に変化が出てくる可能性もあ
る新たな細胞内シグナル伝達経路あるいは分子を
る。本研究の結果は、このような制約のなかで示
明らかにすることであった。これまで、細胞内
されたものであるため、今後の =>?@=@C での詳細
%-! を破骨細胞内で解析した研究は行われてお
な検討の追加が必要であると考えられる。
らず、細胞内 %-! が骨吸収に与える影響は明ら
謝 辞
かにされていなかった。一方で、活性酸素による
細胞や組織に対する傷害の蓄積が、特に糖尿病・
本研究に対しまして、助成を賜りました財団法人明治安
動脈硬化・アルツハイマー病などの加齢性疾患発
田厚生事業団に深く感謝申し上げます。
症との関連が示唆されている。しかしながら、酸
参 考 文 献
化ストレスマーカーの蓄積などの状況証拠が報告
されているが、個体レベルで老化の進行と酸化ス
H)$,9+)9W9# '5W9!9
トレスの生物学的関係は実証されていないのが現
!9&+'/$9W',W9! (HJJ1)E4)"(8
状である。本研究の結果より、細胞内 %-! 制御
), /)/,"),6+","/7,87"+78
により骨吸収をコントロールできる可能性を示唆
しているため、%-! の解析が既に進んでいる糖
尿病・動脈硬化・アルツハイマー病などにおい
,/7"," /"77((7,3LG"")%"9e9H1JV8
HSRI3
1)$+9G77",499D &9< 29
<'#Y9M $92,$9!",29- 9Y:9
て、酸化ストレスを制御する新薬が創成された際
!;$9G)%9D5'/29- 29W+)D9
には、有効な骨粗鬆症治療となる可能性もあると
!,)")$9!(1RRS)E%"'7,6,"/7,
考えられる。
((,::d,7,6()((,,/G2S87G/781
総 括
本研究の目的は、加齢による骨密度減少の病
因・病態と %-! との関係を分子レベルで解明す
ることであり、マウスを用いて骨吸収を司る破骨
細胞をターゲットとし、%-! の産生を制御する
ことにより、骨代謝にどのような影響が出てくる
かを解析することであった。
本研究では、研究期間が短かったこともあり、
6+7+"+:")G+3Z+:L9ff9IIQS8IIIN3
S)G,,"9! ,)+4$(HJJN)E-* ,0",)"
+" ,)6((,3Y++7 9gh9V8HR3
N)<+)!$9\a9K!9"MG9$7+$9
<7aL9L/$L9i"'F92"!F9Z))+!<
(1RRQ)E!(")* " +,"/,0,(,(8
7'6,+,/)5)"+ "7' )"/,0,3$+L
4,79gjj9IIS8IVN3
Q)Y"'+9!&9!+9YD9D"29
!)5(1RR1)E "7+/"6),"8("/6/ "7"8
(H1Q)
,6,"+'""(")* " +,"(!-.)
!(1RRR)EY0,) 00(()"68
'""3G/"+G(%"<++9fkj9V1J8VSI3
,"/7,6/,: "0)0"/,)8 /" /'""3L
I)L/:.(HJJI)E%"/,0"*'"("/" ()8
')++" /"77 ",3)" G/"+!/9fg9PS8PI3
V)L+Z9W+)Y9Y":"9$+!9W9
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)7"6/8!)/",")"'7,6,"/7,6/,3
%"+,79gj9IP8VN3
HP)W+)9Y+&9,+,9!,!9"/D9
Y')D92) &9$+&9D),$9&++,&9
P)D'+DD9\&9.<94(0G9!,<7).D
W29" !9'29",'").9DL9
(1RRH)EW/7")6/,)((G8 "(" ",+"/+/8
D9),L9<+:49D,!(1RRV)EZ,)8
) ,","")',/"66"/,64$ /,","
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/,6M7' ,"/7,3<"779glm9PHH8P1S3
HJ)!,9W,29M;9" D9:+"D9
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%$MI8+" ," '7'(,5/7)6",)7"8
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1R)!',92)D$(1RRQ)E$,H]$,1 +++8
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LF9W:7"FL9&+)49G")'")<9<429a77/"
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</")%"9ok9HIVH8HIVQ3
第 >D 回健康医科学研究助成論文集
平成 ?G 年度 JJ:?>F∼?<<(>==G:<)
筋の厚さ(量)と硬さ(質)から筋力を推定する方法の開発
村 木 里 志* 福 田 修** 福 元 清 剛*
ÁÂÃÂÄÅÆÇÂÈÉÊÅËÊÌÊÇÂÉÍÅÁÊËÅÎÊÂÏÉÇÌÉÈÊÇÏÄÂÊÏÉÎÂÈÉÍ
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'&/84$62/ &'/(AB)
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$62/35/ /'5 &/ '323/ /'5:#'$202/2'/ /5 /''2)
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5//&9*32&7//42/$//$62/ /'54!'///8/''3$62/6' 6':
(/)3 &I$62/6!'/"$62/ &'/"$62/ /'5"!'///8/''"2 '&5'2:
緒 言
発揮を要する。そのため、身体機能が低下してい
る運動不足者や中高齢者においては、筋力測定に
筋力およびその評価は、体力維持ならびに介護
より筋肉や関節を痛めるケースが少なくなく、危
予防において重要である。筋力の測定にはさまざ
険性を伴う場合がある。このような問題から安全
まな方法があるが、そのほとんどが最大限の筋力
に筋力を評価できる方法が求められている。ま
九州大学大学院芸術工学研究院 %62)4K/5'"()*'1/ )"%!!"L0':
産業技術総合研究所生産計測技術研究センター / /$/'2',// 6M/'/ "N'2A'/4+&1'6/&A'& 26/'6/'&./6'2;
5)"5"L0':
* ** (?>C)
た、筋力維持・向上が必要な運動不足者ほど筋力
から評価する手法がよく用いられている F"?<)。し
評価が重要である。運動施設だけでなく、職場や
かし、得られる反力は皮下脂肪ならびに筋の硬度
地域などのフィールドに容易に運べて、手軽に評
を総合的に反映したものであり、筋のみの硬度を
価できることも大切となる。
区別できないという大きな問題を抱えている。そ
筋力の発揮を伴わずに筋力を評価する手段に筋
のような背景から、共同研究者の福田は個々の組
肉の量(筋量)の測定などがある。筋量を表す筋
織(皮下脂肪,筋)の厚さと硬度を同時に計測で
、筋力の推定
。
きる超音波弾性計測装置を開発した >"?D)(図 ?)
には有用である。筋横断面画像を得るためには
本装置は小型でもあることからフィールド測定に
,A($5'/6 /''6/$5'5)や M.(6$;
も対応する。もし、当装置にて筋厚と筋硬度によ
0/&$5 0))などの大型装置が必要となる。
る筋力の推測がある程度可能であれば、筋力の有
しかし、これらの装置には可搬性がなく、また大
効な評価方法になると期待できる。
勢を短時間で計ることが難しいなどの短所が多
以上のことから本研究は、超音波弾性計測装置
く、フィールドでの測定には不向きである。一
により得られる筋厚および筋硬度により、どの程
方、筋横断面積は二次元の量であり、その一次元
度、筋力を推定できるかを検討した。本研究で
の量である筋の厚さ(筋厚)は筋横断面積と相関
は、若年者の肘関節屈曲(以下,肘屈曲)の主動
横断面積は筋力との相関が高く
?"<"H"G)
<"?="??)
。それゆえ、筋厚は筋力を推定す
筋である上腕前部の筋(上腕二頭筋)と膝関節伸
る有用な指標となると考えられる。筋厚は超音波
展(以下,膝伸展)の主動筋である大腿前部の筋
法により容易に計測が可能である。超音波装置自
(大腿直筋および中間広筋)を対象にして検証し
関係をもつ
体 も 小型化 が 進 ん で 持 ち 運 び が 容易 に な り、
フィールド測定も可能になっている。
しかしながら、筋厚は筋量の一次元の量であ
た。
超音波弾性計測装置の仕組み
り、二次元の量を表す筋横断面積より情報量が劣
表 ? に超音波弾性計測装置の仕様を示した。当
り、筋力の推定能力は低下すると考えられる。そ
装置はメインユニットとセンサユニットからな
こで我々は、筋の量的な面に加え、質的な面、す
なわち筋の硬度(筋硬度)も推定要因に加えるこ
とにより、筋力の推定能力が高まるのではないか
と考えた。高い筋力を発揮する筋とそうでない筋
との間に組成や密度に違いがあれば、筋の硬度が
異なる可能性がある。筋硬度の計測は、皮膚表面
よりある一定の圧を筋肉に向けて与え、その反力
表 ? .超音波弾性計測装置の仕様
.72/?:0/646'4//26)$/ '5' $/'
'52 '&5'2(9*):
'*'
PQ2/ /0//&4 /R/'6)I<!BS
P6'&/0I?==$$
P$02'54 /R/'6)I>DBS
PM$$'6'/&I*T?:?U?>70V
PK$/''IH=UWV
X?C=UKVX?<=UBV$$
PW/5I+00 8:>!5
PQ3/ 002)I+M?==Y"H=ZF=BS
PQ3/ 6'$0'I<=W
/' *'
図 ? .超音波弾性計測装置の外観
%5:?:./00/ '6/49*(/26)$/ '5' $/'
'5'2 '&5'2):
P*0 7/4 /R/'6)I<BS
PK$// 4/*/2/$/'I?D$$
PK$// 4/6'6 46/ID=$$
PM'60 / /I?=N
PM$0 /'$/6'$IM20 '5U !/?=$$V
P. 55/ IB5;0 /6'0;'/ 0/
PK$/''ID?UK$// V
X?D=U[/'5V
$$
PW/5I+00 8:?@=5
P+6/&672/I>$
(?>@)
る。センサを対象とする筋肉の表面上にある皮膚
る。それゆえ、筋の変位量を比較する場合は、そ
に当てる。その向きは対象とする筋肉に垂直と
れらの要因を除去する必要がある。
し、その延長上には骨が位置するように調整す
方 法
る。センサからは超音波が発射され、そのエコー
(反射波)が記録される。エコーにより皮下脂肪
と筋、筋と骨の境界、筋が複層ある場合はその境
A.被験者
?@∼>@ 歳の健康な男性 <= 名(年齢:>>:H±?:G
界の深さが計測できる。またセンサを筋肉に向け
歳,身 長:?C?:G±F:G6$,体 重:F>:@±?=:=!5)
て 垂直 に 押 す と、一定 の 圧(?=N)が 加圧(押
お よ び 女 性 >> 名(年 齢:>?:D±>:D 歳,身 長:
圧)される仕組みになっており、同時に押圧中の
?H@:C±<:G6$,体 重:DG:C±H:?!5)の 計 H> 名 を
エコーが記録できる(図 >,<)
。その結果、押圧
被験者とした。被験者のなかには、上肢および下
前および押圧中のエコーから、押圧による皮下脂
肢に整形外科的な症状や痛みがある者は含まれて
肪および筋の厚みの変化、すなわち変位量(式
いない。被験者には事前に研究の趣旨、内容を説
(?))が計測できる。変位量が大きいほど柔らか
明し、同意書を得た。なお、当研究は九州大学大
い、小さいほど硬いことになる。
学院芸術工学研究院・実験倫理委員会の承認を受
変位量
($$)=押圧前 の 組織厚
($$)−押圧後
けている。
の組織厚
($$)…式(?)
B.実験手順
ただし、押圧は皮膚表面より与えられるため
超音波弾性計測装置により上腕前部と大腿前部
に、筋の変位量は、筋自身の厚みならびに皮下脂
の皮下脂肪および筋の厚みおよび変位量を計測し
肪の厚みや硬度の影響を受けることが考えられ
た。両部位ともベッド上で仰臥位姿勢にて計測し
た。上腕前部は、肘を完全に伸展した状態にし、
肘窩が真上を向いた姿勢にて計測した(図 D)。
計測位置は上腕骨長の肩峰点から FH%の位置と
した。大腿前部は、膝を完全に伸展した状態に
し、膝が真上を向いた姿勢にて計測した(図 D)。
計測位置は大腿骨の H=%の位置とした。計測時
には全身をリラックスするように指示した。計測
図 > .超音波弾性計測装置による各組織の硬度計測の仕組
み
%5:>:/6'$4 $/ '5 &'/4'&1&2/
'59*:
+'/ 00/ $
+'/ 5
図 < .超音波弾性計測装置による計測画像の例
%5:<:+'$5/7'/&7)/9*:
図 D .筋硬度の測定姿勢
%5:D:Q /4 $/ '5$62/ &'/:
(?>G)
は対象とする皮膚上に超音波用ジェルを塗布し、
を行うように指示した。肘屈曲および膝伸展とも
筋肉に対してプローブを垂直に当て、パソコン画
それぞれ > 回実施し、高いほうの数値を用いた。
面にて超音波エコーから各境界が観察されている
C.筋硬度指標値の算出
ことを確認した後、プローブを垂直に押し込ん
筋の変位量は筋厚ならびに上部組織である皮下
だ。
脂肪の変位量および厚みに影響を受けることが予
両部位とも、超音波エコーから皮下脂肪と筋お
想される。そのため、超音波弾性計測装置による
よび筋と骨の境界を識別し、それぞれの押圧前お
筋の変位量と他の計測値との相関係数を調べた
よび押圧後の変位量を算出した。上腕前部は上腕
(表 >)
。有意な相関関係が認められた項目は、筋
二頭筋が対象となる。大腿前部においては、大腿
厚のみであった。それゆえ、本研究では筋厚のみ
直筋と中間広筋を ? つの筋とみなして扱った。各
により補正を行うことにした。筋厚と変位量との
部位の計測回数は H 回とし、最大および最小値を
関係を図 H に示した。回帰式は、
はずした平均値を算出した。
上腕前部 )==:?GD8+<:H>…式(>)
計測時間帯を決めるに当たっては事前に予備実
大腿前部 )==:><F8+?:GG…式(<)
験を実施した。@ 名の被験者(男性)を対象に G
8:筋厚
($$)
、):筋の変位量
($$)
時から ?@ 時の間、座業的な生活において筋硬度
である。この回帰式の上部に位置する場合は、同
関連値を < 時間ごとに計測した。分散分析の結
じ筋厚の者と比べ、筋の変位が大きい(柔らか
果、いずれの計測値においても時間の有意な主効
い)といえる。逆に下部に位置する場合は、筋の
果は認められなかったため、日内変動はないと考
変位が小さい(硬い)といえる。本研究では次
え、計測時間帯は特に定めなかった。また、被験
の式により筋厚の影響を取り除いた筋硬度指数
者には実験前に激しい運動を行わないように指示
('&/84$62/ &'/\AB)を 算出 し た。当
した。
指数が大きいほど筋が硬い、小さいほど柔らかい
筋硬度の計測後、右肘屈曲および右膝伸展の最
ことになるように式を作成した。
大等尺性筋力を測定した。測定にはデジタル力量
上腕前部 AB=?−[/(=:?GD7]<:H>)
]
計および張力用アタッチメント(.((?>FG,竹
井機器工業)ならびに多用途筋パワー測定装置
…式(D)
大腿前部 AB=?−[/(=:><F7]?:GG)
]
(竹井機器工業)を用いた。椅子に座った被験者
…式(H)
の体幹をベルトで固定した。肘屈曲では、右肘を
AB:筋硬度指数、:筋の変位量
($$)
、7:
G= 度に屈曲させて右上腕をアームレスト上にの
筋厚
($$)
せる姿勢をとり、ベルトを右手首に装着させた。
この式により各被験者の AB を算出した。そ
膝伸展では両膝を G= 度に屈曲させ、右足首部に
の結果、上腕前部および大腿前部のレンジはそれ
ベルトを装着させた。上肢は胸部の前で前腕を交
ぞ れ−=:D?∼=:<G(標準偏差 =:?H)お よ び−=:>F
差させた。そして、最大限の肘屈曲および膝伸展
∼=:>D(標準偏差 =:?>)となった。なお、AB と
を数秒間維持させた。また肘屈曲では上腕前部、
筋厚には相関関係は認められず(上腕前部: =
膝伸展では大腿前部の筋のみを用いて所定の動作
−=:==@,大腿前部: =−=:=>D)、AB は筋厚と
表 > .超音波弾性計測装置による筋の変位量と他の計測値との相関係数
.72/>:M /2'6/446/'46'5/'6!'/4/$62/(M.)/ $/ /&1 72/7)/9*:
Y 72/
M /2'6/446/'M.
*00/ $U'_D@V
.5U'_H?V
.6!'/476'/4
`=:>D<
`=:?HD
M'5/'6!'/476'/4
.6!'/4$62/
`=:>@?
P=:FC=^^
`=:>DH
P=:C@@^^
^^E<=:=?:
Change in thickness
of muscle [mm]
(?<=)
12
Upper arm
は独立した指数となっている。
D.統計処理
筋力と筋厚、筋変位量ならびに AB との相関
9
係数はピアソンの積率相関係数を用いた。また、
独立変数を筋厚および AB、従属変数を筋力と
した重回帰分析を行った。有意水準は H%未満と
6
y = 0.194x + 3.52
r = 0.670, <0.01
3
10
15
20
25
30
Thickness of muscle [mm]
した。
結 果
35
表 < に超音波弾性計測装置によって得られた主
Change in thickness
of muscle [mm]
要数値および最大等尺性筋力値を男女別に示し
16
た。一部の被験者において、組織間の境界が明確
Thigh
でないケースがあり、分析から省いた。なお、こ
れ以降の分析は男性および女性の計測値を合わせ
12
て扱った。
筋厚と筋力との関係、ならびに A と筋力と
の 関係 を そ れ ぞ れ 図 F(上腕前部)お よ び 図 C
8
(大腿前部)に示した。肘屈曲筋力は上腕前部の
y = 0.236x + 1.99
r = 0.788, <0.01
4
20
30
40
50
Thickness of muscle [mm]
筋厚のみ有意な正の相関関係が認められた( =
=:CD<,E<=:=?)
。一方、膝伸展筋力 は 大腿前部
60
の 筋厚( ==:F>>,E<=:=?)と AB( ==:<H@,
図 H .筋厚と筋変位量との関係(上図:上腕前部,下図:
大腿前部)
%5:H:./ /2'07/3//'6!'/4/$62/'&
6'5/'/6!'/4/$62/'/'/ 00/ $(05 0)'&'/ 5(7$5 0):
E<=:=H)の両者に有意な正の相関関係が認めら
れた。
筋厚と AB を独立変数、筋力を従属変数とし
た重回帰分析を行った。その結果、下記の式が得
られ、筋力の推定式とした。
表 < .超音波弾性計測装置による主要計測値および筋力値
.72/<:Y2/4$'$/ /&1 72/7)9*'&$8$2$/ 6 /'5'$2/'&4/$2/
7a/6:
Y 72/
*00/ $c2/'_>@"%/$2/'_>=d
.6!'/4%U$$V
M'5/'6!'/4%U$$V
.6!'/4$62/U$$V
M'5/'6!'/4$62/U$$V
A4/27342/8'U!54V
.5c2/'_>G"%/$2/'_>>d
.6!'/4%U$$V
M'5/'6!'/4%U$$V
.6!'/4$62/U$$V
M'5/'6!'/4$62/U$$V
A4!'///8/''U!54V
2/
%/$2/
/'bK
,'5/
/'bK
,'5/
<:FCb?:><
=:>Db=:>>
>F:>b<:@G
@:HDb?:<G
><:@bH:?
>:<=`@:@=
=:=D`?:?H
?C:@`<<:>
H:D>`??:<
?>:C`<H:D
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=:CGb=:<F
?C:Cb>:HF
C:=Cb?:DD
?>:?b>:D
<:FH`@:>H
=:<F`?:C<
?>:C`>>:=
D:?@`?=:<
F:G`?C:>
F:DCb?:CG
=:>Fb=:?G
<H:HbF:>G
?=:?b?:G?
D>:<bG:G
<:H@`??:<
=:=D`?:=@
>F:<`H<:D
C:>F`?H:<
>>:D`F<:H
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=:G=b=:H<
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G:>Cb?:@>
><:<bH:@
@:<>`?@:F
=:<=`>:>H
>=:<`<C:@
H:DH`?>:@
??:=`<H:G
%\76'/4"A\$8$2$/ 6 /'5"K\'& &&/1':
(?<?)
40
40
40
30
30
30
20
20
20
10
10
10
0
10
15
20
25
30
0
−0.3 −0.2 −0.1 0
35
ns
0
0.1 0.2 0.3
5
15
25
35
55
40
25
r = 0.622
< 0.01
10
20
30
40
50
60
70
Measured strength [kgf]
70
Measured strength [kgf]
Measured strength [kgf]
図 F .上腕前部の筋厚、A. および > 変数による推定値と肘屈曲筋力の実測値との関係
%5:F:,/2'04/6!'/4$62/"''&/84$62/ &'/(AB)'&0 /&6/&$8$$$/ 6(A)
/'5'5//346 '/0/ 00/ $$/ /&A4/27342/8':
r = 0.358
< 0.05
55
40
25
10
−0.3 −0.2−0.1 0
Thickness of muscle [mm]
IMH
0.1 0.2 0.3
70
55
40
25
10
10
r = 0.726
< 0.01
25
40
55
70
Estimated strength [kgf]
図 C .大腿前部の筋厚、AB および > 変数による推定値と膝伸展筋力の実測値との関係
%5:C:,/2'04/6!'/4$62/"''&/84$62/ &'/(AB)'&/$/&$8$2$/ 6(A) /'5
'5//346 '/'/ 5$/ /&A4!'///8/'':
肘屈曲筋力(上腕前部)
せずリスクを伴わない。また、今回は計測精度を
==:GH7+<:<@AB−>:FG …式(F)
高めるために ? 部位に対して H 回の計測を繰り返
膝伸展筋力(大腿前部)
したが、その時間は D 分程度であった。しかし、
=?:>G7+<@:DAB−@:>? …式(C)
その多くはパーソナルコンピュータ上の情報処理
:筋力推定値(!54)、7:筋厚
($$)
、AB:
に要する時間が大半であり、プログラムの改善を
筋硬度指数
行い、計測の繰り返し数を少なくすれば、準備も
これらの推定式によって得られた値と実測値と
含めて > 分程度で計測が終了できる見込みであ
の関係を図 F(肘屈曲)および図 C(膝伸展)に
る。更に、装置そのものも小型・軽量であり持ち
示した。重相関係数は肘屈曲筋力では ==:CDF、
運びが容易である。もし、当装置による筋厚およ
膝伸展筋力で ==:C>F となった。膝伸展筋力に
び筋硬度から筋力がある程度推定可能であれば、
おいては、筋厚のみよりも、筋厚と AB を組み
フィールドでの評価に有効であると考えられる。
合わせた推定式のほうが、相関係数が高くなり、
超音波弾性計測装置によって得られた筋の変位
決定係数 が =:<@C から =:H>@ に上昇した。
量には筋厚と正の相関関係が認められた。著者ら
>
考 察
は人工材料(人肌ゲル,エクシールコーポレー
ション)を用い、硬度が同じで異なる厚みの試料
超音波弾性計測装置による筋厚および筋硬度の
を作成し、超音波弾性計測装置により変位量を計
計測は、センサを計測部位に垂直に当て、押し込
測した。その結果、変位量は厚みと正の比例関係
むだけで可能となる。計測には筋力発揮を必要と
が認められ、筋変位量を筋厚で補正した本研究の
(?<>)
方法は妥当だといえる。一方、筋の変位量には皮
膝伸展筋力の推定能力をみると、筋厚のみの変数
下脂肪の厚みや硬さとの有意な相関は認められな
では決定係数 > が =:<@C であったのに対し、筋硬
かった。今回対象となった皮下脂肪の厚さは、筋
度指数という新たな変数を加えると決定係数 > が
の変位量への影響が無視できる範囲であるかもし
=:H>@ に上昇した。このことは大腿前部の筋厚と
れない。しかし、異なる厚さおよび硬度の人工材
筋硬度指数の組み合わせが膝伸展筋力の推定に有
料を > 層重ね合わせ、超音波弾性計測装置により
効であることを示している。今後はこの有効性
それぞれの変位量を計測した結果、上部組織の厚
が、今回の分析対象となった筋力、筋厚および
さや硬度が下部組織の変位量に影響することが確
A の範囲を超えても当てはまるか、性別や年
認された。このように筋の硬度を正しく評価する
齢に関係なく当てはまるか、また他の筋の部位で
ためには、皮下脂肪の影響を取り除くことも必要
当てはまるかを検討する必要があろう。更に今回
だと考えられ、今後の課題としたい。
は、筋力を筋厚と筋硬度指数のみで推定した。
肘屈曲および膝伸展の最大等尺性筋力は筋厚と
性、年齢、体型(身長,体重)
、周囲径、皮下脂
有意な正の相関関係が認められ、その相関係数
肪厚など他の指標を追加し、推定能力を高める工
は そ れ ぞ れ =:CD< お よ び =:F>> で あ っ た。M. や
夫の検討も必要であろう。
,A を用いて肘屈曲および膝伸展の筋力とその
一方、肘屈曲筋力の推定において、上腕前部の
主動筋群の筋横断面積との関係をみた多くの先行
筋硬度指数は有用でないことが示された。その理
研究 が、対象(年齢,性,運動状況)の 違 い に
由としては主に > つの点が考えられる。第 ? に、
よって幅があるものの =:H 以上の相関係数を報告
上肢と下肢の筋の特性の違いである。上肢と下肢
している ?"<"H"@"G)。本研究は男女の計測値を合わせ
の筋は筋組成が異なるといわれている D"?>)。第 >
て分析したが、筋横断面積に相当する相関係数を
に、筋硬度の計測時の筋の状態が、上腕前部では
示し、筋厚は筋力推定の有用な指標になることを
伸張した状態、大腿前部では短縮した状態と異な
支持した。
る。伸張した状態では受動的張力が発生し、筋厚
一方、筋変位量を筋厚で補正した AB(筋硬
が小さくなる。これらの因子により筋組織そのも
度指数)は膝伸展筋力に限り、有意な相関が認め
のの硬度が反映されなかった可能性がある。これ
られた。このことは筋力が優れた筋はそうでない
らの問題を解決するためには、肘関節を屈曲した
筋より硬い傾向にあることを示している。一般的
状態で得られた筋硬度指数と肘屈曲筋力との相関
に、優れたスポーツ選手は筋肉が柔らかいといわ
を確かめる必要があろう。
れる C)。膝伸展筋力に限られるが本研究の結果は
本研究は大腿前部において、筋力が高い者は筋
この説を否定した。一般的な説と異なる結果が得
硬度も高いという事象が存在することが示され
られた理由としては次の点が考えられる。第 ? に
た。筋硬度は、筋力推定の新しい手法の ? つにな
硬度を評価する際に筋を押す圧の違いである。超
りうることが期待できる。しかしながら、なぜそ
音波弾性計測装置は筋硬度を定量化するために完
のような関係が生じるかは本結果からは推測でき
全に押しつぶさない ?=N の圧を用いており、そ
ない。今後は筋硬度が筋力の推定になぜ有用なの
の圧は筋の厚さを約 < 割縮める程度である。一
か、その根拠を検討していく必要がある。
方、人間が筋の硬さを触診する場合は、筋の厚さ
がこれ以上縮まらない程度まで押し、その感触に
結 論
より評価することが多いと思われる。第 > に、筋
膝伸展の最大等尺性筋力が高い者は大腿前部の
硬度と正の相関が認められる体力要素は筋力のみ
筋厚が大きいのみならず筋硬度も大きく(硬く)
、
であることである。優れたスポーツ選手は、筋力
> つの組み合わせにより筋力の推定能力が高まる
だけでなく筋の収縮速度や持久性などの他の体力
ことが示された。しかしながら、肘屈曲の筋力に
要素も要求される。筋力以外の体力要素と筋硬度
おいては筋硬度との関係は認められず、筋硬度の
には異なった関係性があるのかもしれない。
有用性は限定されることが示唆された。
筋硬度指数の有用性を示した大腿前部について
(?<<)
謝 辞
C)紺野義雄(?G@>):スポーツマンのトレーニング―柔
らかい筋肉をつくろう―.実業之日本社,東京.
本研究に対して助成を賜りました財団法人明治安田厚生
@)5',L"W'L"W/ L(?G@D)I62/ /'5
事業団に深く感謝申し上げます。本研究を進めるにあたり
'&6 ;/6'2 /'$'I6$0 '4 /'5;
多大なるご協力をいただきました産業技術総合研究所の椿
'/&'&' '/&7a/6:T L0 /&"fi"?DG;
井正義氏、九州大学大学院芸術工学府の大沼誠氏、黒岩光
香氏に深く感謝いたします。
参 考 文 献
?HC:
G)5',L"W'L"W/ L(?G@<)I /'5'&
6 ;/6'2 /4$'!/2/2$62/:LQ)2"
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F)北 田 耕 司,田 巻 弘 之,芝 山 秀 太 郎,倉 田 博
(?GGD):筋疲労による収縮時の筋硬度変化.LL0 6,fe,>C<;>@=.
$62/'/&/' )$''&/'& '6/ ''/ :+''N-
+6&6"elf"<;>G:
?<)高 梨 晃,烏 野 大,塩 田 琴 美,藤 原 孝 之,小 沼 亮,阿部康次,小駒喜郎(>==@):> 種類の軟部組織
硬度計における再現性,信頼性の検討.理学療法科
学,he,>GC;<==.
?D).7"%!&#"*/'N"B /." !(>==@)I
K/1/20$/'4'2 '&)/$4 $/ '5/
'42)$0/&/$:M'4Q 6A9999'5/&T26"
H>GD;H>GC:
第 AJ 回健康医科学研究助成論文集
平成 >G 年度 OO<>IJ∼>JI(AFFG<I)
日内変動における心臓自律神経系活動と反射機能との関係
山 口 英 峰* 関 和 俊** 高 原 皓 全**
小野寺 昇*** 永 見 邦 篤*
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&67(,)E86,$6$ %,#8 4,",%8((4 %,58:5".#(.%"(.( #.,;("))6) ("8(.<
吉備国際大学社会福祉学部健康スポーツ福祉学科 P4, .(58$K85,." .Q,5(, .#%*#$((8(5*(#8K85,%&9B.,.(.8
0.;,)6%-6 %R4.<
川崎医療福祉大学大学院健康科学専攻 P(#(,8Q,(!, .8$*#.#%&7)0.;,)6(51#8K85,%-6 %R4.<
*** 川崎医療福祉大学健康体育学科 P4, .(58$.*4(,)*#.#)%&7)0.;,)6(51#8K85,%-6 %R4.<
* ** (>IM)
る膝伸展角度が増加することを報告した。小野寺
緒 言
ら AF)は、2)#$., の眼球圧迫試験時に膝蓋腱反射
早朝の激しい運動が危険であることは、循環系
および 波振幅が増加することを明らかにした。
の観点から既に明らかになっている。午前 H 時か
これらの報告は、副交感神経系緊張時においても
ら正午の時間帯は他の時間帯に比べて、心筋梗
脊髄α運動ニューロンの興奮性が増大することを
塞、脳梗塞や狭心症などを誘発する心臓・脳血管
示唆している。このように自律神経系の活動と脊
系の異常が多くみられる 。特に、起床後 I 時間
髄の興奮性との関係は多様である。特に早朝は副
以内にそれらの発症率が高くなっていることか
交感神経系活動の亢進と脊髄の興奮性が変動し、
ら、起床に伴う昇圧と心拍数増加がリスクとなっ
生体調節の不一致が起こると推測される。そこで
>G)
。それにもか
本研究は、日内変動における膝蓋腱反射および かわらず、激しい早朝のトレーニングが運動パ
反射から評価した脊髄の興奮性と自律神経系調節
フォーマンスや体力向上に有効であるとの考え方
との関係について明らかにし、早朝の激しい運動
が、一部の運動習慣者においていまだ残っている
に対する危険性、また留意すべきことなどに資す
ように考える。
ることを目的とした。
ている可能性が指摘されている
AA%AD)
生体には日内リズムがある。これまで、ヒトお
研 究 方 法
よび動物のサーカディアンリズムについては多く
の研究成果が報告されてきた >%S%AH)。運動パフォー
A.実験1
マンスについてみると、最大酸素摂取量、筋力や
>.対象
反応時間などは、> 日のなかで夕方に高い値を示
被験者は、健康な成人男性 H 名とした。身体特
すとの報告がある
A%AS)
。ヒトは、昼間は交感神経
性は、年齢 AI<I±I<J 歳(平均値±標準偏差)
、身
系活動が亢進し、夜間は副交感神経系活動が亢進
長 >HG<A±J<J# 、体重 HI<M±M<J! で あ っ た。す
する I%AM)。一方、夜行性であるラットやマウスは
べての被験者に本研究の趣旨、方法、測定内容、
ヒトやサルとは反対の応答を示す。夜行性である
得られる成果等十分な説明を行い、参加の同意を
ラットは昼間に 反射が亢進し M)、明るい時間帯
得た。被験者は非喫煙者とした。
に活動するサルは、夜間に 反射が亢進する
A.測定条件
AG)
との報告がある。これらの知見は、身体活動量が
測定は吉備国際大学の実験室で行った(室内温
少なく副交感神経系活動が亢進している時間帯に
度:AJ<H±F<A 度)
。測定 は D 時、G 時、>A 時、>H
脊髄の興奮性が高まり、反対に身体活動量が多い
時、AF 時、AI 時、翌日 A 時、J 時、D 時とした。
時間帯には脊髄の興奮性が抑制されることを示唆
被験者は前泊し、AI 時から翌日の D 時までの S
している。ヒトにおいても同様のことが考えられ
時間を睡眠とした。深夜 A 時、J 時および D 時の
るが、時間帯と自律神経系および脊髄の興奮性と
測定は被験者が起床後に測定した。測定は直腸
の関係については不明である。近年、ヒトにおい
温、心拍数、膝蓋腱反射の順に行った。歩数計
>F%>M)
が
(B.88!.T8(,T(".,,ア イ・テ ィ・リ サ ー
あるものの、脊髄の興奮性の日内変動を模索した
チ)を装着し、歩数を測定した。食事は I 回(朝
報告は極めて少ない。
食 S 時、昼食 >A 時、夕食 >S 時)とし、飲料水と
て朝と夕方の脊髄の興奮性についての報告
0,9)#$8< は、局所的冷却により一時的
してお茶(MFF 8×A 本)を摂取させた。測定以
に交感神経系の緊張を高めることで、脊髄α運動
外の時間は、実験室で読書や座業をするよう指示
AJ)
神経の活動性が亢進することを報告した。嶋田
した。被験者には、実験前 > 週間は AI 時には睡
ら AI)は軽運動によって膝蓋腱反射による膝伸展
眠すること、激しい運動を避けることを指示し
角度が増加することを報告した。これらの報告
た。被験者の覚醒レベルは日常会話の成立するレ
は、交感神経系活動の亢進により運動系の活動性
ベルであった。
が亢進することを示唆する。一方、上岡
>J)
は、
副交感神経系が優位にある夜間に膝蓋腱反射によ
I.測定項目
測定項目は、膝蓋腱反射、心拍数、心臓自律神
(>IH)
経系調節および直腸温とした。膝蓋腱反射は、浦
性は年齢 A><I±F<M 歳(平均値±標準偏差)
、身長
本式膝蓋腱反射閾測定器(高橋精機工業)を用い
>DF<F±D<># 、体 重 HI<>±G<I! で あ っ た。す べ
た。測定器を机に固定し、膝蓋腱と打腱部が合致
ての被験者に本研究の趣旨、方法、測定内容、得
する部位を探し、刺激に対して最も反応の高かっ
られる成果等十分な説明を行い、参加の同意を得
た膝蓋腱部分を測定した。膝蓋腱反射の反射応答
た。被験者は非喫煙者とした。
は、ゴ ニ オ メ ー タ ー(+1?M>>U,日本光電)を
A.測定条件
用い、膝関節角度変化から評価した。測定は >F
測定は吉備国際大学の実験室で行った(室内温
∼AF 回とした。試技間の休息は IF 秒とした。膝
度:AI<M±F<I 度)
。測 定 は D 時、>> 時、>H 時、
蓋腱に的確に刺激が命中したかどうかを確認し、
AF 時、AA 時、翌日 I 時および D 時とした。深夜
命中しなかった場合はデータから除外した。被験
I 時および D 時の測定は被験者が起床後に測定し
者には測定部位を意識したり、凝視しないように
た。刺激強度を決定するために各時間で最大 1
し、正面を向きリラックスするよう指示した。心
波を測定した。 反射は体動や睡眠に影響を受け
拍数は、胸部双極誘導法により心電図テレメー
ることから、被験者には測定中に体動しないこ
ター(ベッドサイドモニター,日本光電)により
と、睡眠しないことを指示した。また、刺激位置
測定した。心拍数は仰臥位姿勢で測定した。測定
が変わらないようにバンドで固定し、1 波の潜
は、>F 分間の仰臥位安静後、M 分間行った。心臓
時が変わらないように対処した。他の測定条件
自律神経系調節は心拍変動スペクトル解析を用い
は、実験 > と同様である。実験 > と実験 A は異な
評価した。呼吸数は J 秒周期の呼吸(呼吸周波
る日に行った。被験者の覚醒レベルは日常会話の
数:F<AM')に調節した。呼吸調節は、実験前に
成立するレベルであった。
すべての被験者に十分練習させた。心拍変動の解
I.測定項目
析は、心電図を >' で 2VP 変換し、コンピュー
測定項目は、電気刺激による 反射および直
タに取り込み、スペクトル解析することによって
腸温とした。被験者には伏臥位姿勢で十分な安静
行った。直腸温は感熱部直腸温計(*BJFFF サー
を保たせ、各時間帯の 反射を測定した。表面
モメーター,日機装ワイエスアイ)を用いて記録
電極法(M
した。
にて右足のヒラメ筋と前脛骨筋の筋電位を A #$
J.解析
生体電気用前置増幅器(R[?A>FR,日本光電)に
心拍変動スペクトル解析を行う前に、スペクト
よ っ て 誘導 し、記録 し た。電極間距離 は AF
ル解析の結果に影響すると考えられるアーチファ
とした。電極間抵抗はすべての時間帯において
クトを視覚的に確認し、排除した。スペクトル解
>FΩ以下であった。ヒラメ筋の 反射および 1
析 は、高速 フ ー リ エ 変換(CC+)を 用 い て 行 っ
反応を誘発するため、膝窩部の脛骨神経に電気刺
Z,白金皿電極)を用い、双極誘導
た。低周波帯域(8(75,W".#6:F<FJ∼F<>M')
激を行った。拮抗筋活動に伴う相反性抑制が生じ
のパワーの積分値(XC)および高周波帯域($!$
ないことを確認するために、前脛骨筋の筋活動を
5,W".#6:F<>M∼F<J')のパワーの積分値(C)
モニタリングしながら測定を行った。 反射は電
を 算出 し た。C 成分 を 副交感神経系調節 の 指
気刺激装置(*=/?IIF>,日本光電)を用いて、
標、XCVC を心臓交感神経系調節の指標とした。
パルス幅 > ) の矩形波を発生させ、アイソレー
(84(7,(XC4(7,YC4(7,)は、交 感 神 経
タ ー(**?AFAR,日本光電)を 介 し て、J 秒 に >
および副交感神経を含む心臓自律神経系全体の活
回の間隔で計 >F∼AF 回経皮的に電気刺激によっ
動量の指標とした。分布には正規性を得るためそ
て 誘発 し た。刺激強度 は 最大 1 波 の >F%と し
れぞれ対数変換(8.)した。
た。各時間帯における刺激の定常性を確保するた
B.実験2
>.対象
被験者は、健康な成人男性 H 名とした。H 名の
うち A 名は実験 > に参加した者であった。身体特
めに、1 波をモニターで確認しながら 1 波の大
き さ を 調節 し た >S)。信号 は、>F' で 2VP 変換
(Q(7,X9VSFF,2P.)," .))した後、パーソ
ナルコンピュータに取り込み、解析した。
(>ID)
38
J.解析方法
a
∼ S 回の波形を加算平均し、1 波と 波の振幅
および潜時を評価した。各時間帯の 1 波および
波振幅は、刺激強度設定時に用いた最大 1 波
を >FF%とし正規化した値で求めた。本研究で
は、解析方法 と し て 波 の 4();4 の 時間
から 1 波の 4();4 の時間を差し引いた値
(8((4 )を用いた A>)。8((4 は、刺激部位
rectal temperature (℃)
反 射 の 解 析 は、1 波 の 振 幅 が 一 定 し た J
37.5
*
*
*
*
37
*
*
36.5
から直接筋へ伝えられ発生する電位である 1 波
と、刺激から B 線維が興奮し、脊髄を介して脊
36
8
髄のα運動神経を刺激し、再び運動神経を経て引
である。日内変動による 8((4 の変化は、同
に、1 波の 4();4 の時間に変化がないこと
を 確 認 し た 後、解 析 を 行 っ た。1 波 の 4();
4
8
90
heart rate (bpm)
び 波の 4();4 は相対的に評価するため
24
b
とを示している。このことから本研究は、8((4
対値と D 時に対する差分で評価した。1 波およ
20
100
じ刺激量に対して興奮する運動単位が変化するこ
動員閾値の指標として用いた。8((4 は、絶
16
time of day (hours)
き起こされる反射性の活動電位である 波の差
を脊髄前角細胞の閾値、つまり運動単位の
12
80
70
*
*
60
50
4 が変化しないことは、誘発部位であるヒラ
メ筋の状態(形態的,組織学的など)が変化して
いないこと、同じ神経を刺激していることを示し
て い る こ と か ら、1 波潜時 が 変化 し た 場合 は
データから除外した。
M.統計処理
実験 > および実験 A の各測定値は平均値±標準
40
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
図 > .直腸温および心拍数の日内変動
C!<><T$.!)(5$,#8 4,",.$,,(.$
86,$6$ )<
\8"), .±*P<]L<F<FM;)<D (9)8.)<
偏差で表した。日内変動と各パラメーターとの関
係 は、反 復 測 定 分 散 分 析(,4 )",
心 臓 自 律 神 経 系 調 節 は、8.C4(7,、8.XC
2/-\2)を 行 っ た。有意変動 が 確認 さ れ た 場
4(7, と 8.(84(7, において有意な変動が観察
合、C)$,?QX*P 法 で 後 検 定 を 行 っ た。危 険 率
さ れ た(8.C4(7,EC=M<M>%8.XC4(7,EC=
(L) M %未満を有意とした。
結 果
A.実験1
I<GJ%8.(84(7,EC=H<AM%L<F<FM,図 A)
。心臓
自律神経系調節は日中と比較し、深夜において高
い値を示した。8.C4(7, は D 時と比較し、 A
時、J 時、D 時 に 有意 に 高 い 値 を 示 し た。8.XC
図 > に直腸温()および心拍数(9)の日内変
4(7, は D 時 と 比較 し、翌朝 D 時 で 高値 を 示 し
動 を 示 し た。直腸温 は 有意 な 変動 を 示 し(C=
た。8.XCVC に有意な変動はみられなかった。
IA<J%L<F<FM)
、D 時を基点に日中有意に上昇し、
膝蓋腱反射の日内変動を図 I に示した。膝蓋腱
AI 時に最大値を示した。心拍数も直腸温と同様
反射による膝関節伸展角度変化は有意な変動を示
の変化(C=H<JF%L<F<FM)をし、AF 時に最大値
し(C=A<H>%L<F<FM)
、D 時 に 対 し て G 時、AI
を示した。
時、A 時、J 時で有意に高い値を示した。膝関節
10
10
9
9
8
* *
7
*
6
ln LF power (cm2)
ln HF power (cm2)
(>IS)
5
8
*
7
6
5
4
4
8
12
16
20
24
4
8
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
time of day (hours)
2
10
ln total power (cm2)
1.5
ln LF/HF
1
0.5
0
-0.5
-1
9
*
8
*
*
7
6
-1.5
ns
-2
5
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
図 A .心臓自律神経系調節の日内変動
C!<A<T$.!).$.#)(5#,#"(.( #.,;("))6) ("8(.(.$86,$6$ )<
\8"), .±*P<]L<F<FM;)<D (9)8.)<
CN$!$5,W".#6%XCN8(75,W".#6%XCVCN8(7($!$5,W".#6,(%8.N.",88(!,$<
角度は日中と比較し、深夜から朝方にかけて高い
図 M に 日 内 変 動 に お け る 8((4 の 絶 対 値
値を示した。特に夜から翌朝にかけて大きなばら
()と D 時に対する 8((4 の差分(9)を示し
つきがみられたことから、被験者ごとに検討し
た。8((4 は有意な変動を示し(C=AI<DI%L<
た。> 日を通して膝関節伸展角度があまり変化し
F<FM)
、D 時を基点に日中有意に減少し、>H 時に
ない被験者(図 I?9%.=I)と夜から翌朝にかけ
最小値を示した。8((4 の日内変動は、直腸
て膝関節伸展角度が増加する被験者(図 I?#%.=
温の変動とミラーイメージの変動を示した。
I )の A つのパターンが観察された。グループ間
図 H に日内変動における 波および 1 波振幅
で心拍数および直腸温の日内変動のパターンに大
の絶対値()を示した。1 波に有意な変動はみ
きな違いはみられなかった。> 日の歩数は MSG<G
られなかった。 波振幅は有意な変動を示し( C
±>DI<J 歩であった。
=I<IA%L<F<FM)
、D 時を基点に >> 時、AF 時、AA
B.実験2
時、I 時で有意に高い値を示した。すべての時間
図 J に直腸温の日内変動を示した。直腸温は有
帯で大きなばらつきがみられた。 波振幅につい
意な変動を示し(C=JI<GM%L<F<FM)
、D 時を基点
て個別に観察すると(D 時に対する 波振幅の差
に日中有意に上昇し、>H 時に最大値を示した。
分)
、日中に 波振幅のピークがみられる被験者
(>IG)
38
50
a
rectal temperature (℃)
angle (degree)
40
30
*
*
20
* *
10
37.5
*
* *
37
*
36.5
36
n= 6
0
35.5
8
12
16
20
24
4
8
50
16
20
24
4
8
図 J .直腸温の日内変動
C!<J<T$.!)(5$,#8 4,",(.$86,$6$ )<
\8"), .±*P<]L<F<FM;)<D (9)8.)<
40
30
28
a
27
20
n= 3
0
8
12
16
20
24
4
8
loop time (ms)
26
10
25
*
24
*
* *
23
22
time of day (hours)
50
21
c
20
40
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
30
1
20
b
0.5
10
n= 3
0
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
図 I .膝蓋腱反射の日内変動
C!<I<T$.!)(5$.?@,,58:(.$86,$6$ )<
\8"), .±*P<]L<F<FM;)<D (9)8.)<
E;,!;8"(.=H)<9E!,("4))$(7.!$.#,).,?
58:,)4(.)",.!68!$(.=I)<#E!,("4))$(7.!$.?
#,).,58:,)4(.)",.!$.!$ (.=I)<
Δ loop time (ms)
angle (degree)
12
time of day (hours)
b
angle (degree)
8
time of day (hours)
0
-0.5
*
* *
-1
*
-1.5
-2
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
図 M .8((4 の日内変動
C!<M<T$.!)(5$8((4 (.$86,$6$ )<
\8"), .±*P<]L<F<FM;)<D (9)8.)<
8((4 N .,;897.$ (.4();4(51
.7;<
(>JF)
100
る。しかし、本研究では安静時の心臓自律神経系
a
H wave
M wave
調節と脊髄の興奮性に焦点を絞ったため、生活活
動強度(><I[13N9)8 9(8#,)を設定し
amplitude (%)
80
た。その結果、実験 > および実験 A の平均歩数
60
* *
*
は、それぞれ MGF 歩と ADH 歩であった。このこと
*
から A つの実験で得た各種パラメーターに身体活
40
動量が及ぼす影響は少ないものと考えられる。ま
た、体温の日内変動は、サーカディアンリズムの
20
変動パターンの安定性を示すとされている I)。実
験 > および実験 A の直腸温は、有意な日内変動を
0
8
12
16
20
24
4
8
心拍数は直腸温と同様、日中高い値で推移し、夜
time of day (hours)
Δamplitude (%)
40
示し、先行研究 I%>H)と同様の結果であった。更に
間に低い値を示した。副交感神経系調節の指標で
b
あ る 8.C4(7, は、先行研究 I%AM)と 同様、夜間
30
で高い値を示した。これらのことから、本研究に
参加した被験者はいわゆる日内変動を有する対象
20
者であったことを示している。
A.脊髄の興奮性の日内変動
10
膝蓋腱反射と 波振幅はともに脊髄の興奮性
0
の指標である。膝蓋腱反射による膝関節角度変化
は、D 時の基準値と比較して >> 時、AI 時、A 時、
-10
J 時に高い値を示した。 波の振幅は、夜から朝
-20
8
12
16
20
24
4
8
time of day (hours)
図 H . 波および 1 波振幅の日内変動
C!<H<T$.!)(5$1.7; 48"(.$86
,$6$ )<
\8"), .±*P< ]L<F<FM;)<D (9)8.)<
E 48"(5$1.7;(.=H)<
9E 48"(5$7;<588#,#8)E!,("4))$(7.!$
.#,).,58:,)4(.)",.!68!$(.=I)<(4.#,?
#8)!,("4))$(7.!$.#,).,58:,)4(.)",.!$
.!$ (.=I)<
方にかけて高い値を示した。しかしながら、膝蓋
腱反射は AI 時から J 時の間で、 波の振幅は >>
時から AF 時の間で大きなばらつきがみられた。
そこでそれぞれ個別に検討してみると、膝蓋腱反
射は > 日を通して変化しない被験者、夜から朝に
かけて亢進する被験者が観察された。また、 波
振幅は日中亢進する被験者とあまり変化しない被
験者がみられた。このことは、脊髄の興奮性の日
内変動には個人差があることを示唆する。膝蓋腱
反射と 反射はともに脊髄の興奮性の指標であ
るが、膝蓋腱反射は腱を刺激し、 反射は神経を
(図 H?9%.=I)と、夜から翌朝にかけて 波振幅
刺激することによって筋収縮を誘発する違いがあ
のピークがみられる被験者(図 H?9%.=I)の A
ることから、ばらつきが大きい時間帯が異なった
つのパターンが観察された。グループ間で直腸温
要因として測定法の違いが影響しているのかもし
の日内変動のパターンに大きな違いはみられな
れ な い。ヒ ト の 波振幅 に つ い て X!,W")
かった。> 日の歩数は ADM<M±>FI<A 歩であった。
8<>M)は、早朝と比較し、夕方においてヒラメ筋の
波振幅の亢進、および最大筋力の増加を報告し
考 察
た。一方、U"8<>F)は早朝と夕方では :V
をみると、対象
1 : に差がないことを報告していることから、
者の活動度をホルター心電図を用いて測定し、そ
時間帯と脊髄の興奮性について一致した見解はな
れと同様の活動をするよう実験当日も指示してい
い。本研究の 反射の結果においても、日中 日内変動に関する先行研究
G%>I)
(>J>)
波振幅が亢進する被験者や > 日を通してあまり変
り得る可能性がある。ミラーイメージを示した要
化しない被験者がみられた。この要因についても
因として、神経伝導速度の違いが考えられる。
不明であるが、個人差や実験日前泊の有無、身体
P7$",)8<H)は温熱刺激により 波潜時が #(.?
活動量の違いや睡眠時間等のさまざまなファク
,(8 条件と比較して短縮すること、反対に寒冷刺
ターが関与しているものと考える。今後、詳細に
激により 8((4 が遅延することを報告した。
検討する必要がある。
*8<A>)は、ハンドエルゴメータ運動後の腓腹
B.早朝の脊髄の興奮性と副交感神経系調節の
筋の 波の動態について検討し、運動終了後に
8((4 が短縮することを報告し、その要因とし
関連
M)
ラット やサル
AG)
は、身体活動量が少なく副交
て 体温上昇 の 関与 を 示唆 し て い る。(!.
感神経系が亢進している時間帯に脊髄の興奮性が
8<>>%>A)は、ヤリイカの巨大神経細胞軸索を用いた研
亢進し、反対に身体活動量が多い時間帯は脊髄の
究をもとに定式化した神経興奮に関する基礎理論
興奮性が抑制される。本研究は、ラットやサルと
を明らかにし、ナトリウムチャネル開閉時間が温
同様に身体活動量が少なく副交感神経系調節が亢
度依存することにより、神経伝導速度が異なるこ
進している夜間から朝方にかけて、個人差はある
とを示唆した。これらの報告は、体温と神経伝導
ものの脊髄α運動ニューロンの興奮性が亢進し
速度が関係していることを示しており、体温が上
た。この知見は、先行研究と一致した。これらの
昇することにより神経伝導速度が速くなることを
ことは、副交感神経系調節が亢進している早朝で
示唆する。しかしながら、これらの報告は一過性
も大きな力が発揮しうる状態にあることを示唆す
の応答であり、体温変化が著しい。本研究の日内
る。一方、早朝の 8((4 は、日中と比較し高
変動における直腸温のばらつきは、約 ><A 度であ
値を示した。8((4 は脊髄前角細胞の閾値、
る。このことから神経伝導速度は、直腸温と 8((4
つまり運動単位の動員閾値の指標であると考え
の変動がミラーイメージを示した主要因とし
る。具体的には、早朝に 8((4 が高い値を示
て考えにくい。T$.8<J)はラットにおける 反
したことは、運動単位の動員閾値が低くなること
射のサーカディアンリズムについて検討し、皮質
により、より遅い運動単位が動員されたものと考
脊髄路を損傷させたラットは、通常のラットと比
える。本研究の結果は、心臓副交感神経系調節が
較し、サーカディアンリズムが短縮することを報
亢進している早朝に、脊髄の興奮性が亢進し、運
告した。このことは、 反射のサーカディアンリ
動単位の動員閾値が低くなることを示唆する。こ
ズムは脳からの下行性の情報に依存しており、脳
れらの生体応答は、危急に備えて直ちに行動する
のなかでも皮質脊髄路によってコントロールされ
など、力を発揮しやすい状態にあえて調節してい
ていることを示唆する。P(7 ..K(847D)は、
る生理学的に有意義な現象とみることもできる。
サルを用いて皮質体性感覚の誘発電位および しかしながら、早朝の時間帯に激しい運動を行う
反射の誘発電位からサーカディアンリズムについ
ことは、生体応答の不整合な状態下での運動とな
て検討し、サーカディアンリズムは複雑な中枢の
り、自律神経系と脊髄の興奮性の相互関係からみ
メカニズムが関与していることを示唆した。これ
ると心臓・血管系の破たんなどが危惧される。し
らのことから、サーカディアンリズムをコント
たがって早朝は、ウォーキングやランニング等の
ロールしているのは、上位中枢であると考えられ
軽運動を行うことによって > 日の生体応答を調整
るが、本研究では明らかにすることができなかっ
することが望ましいと考える。
た。今後、長期間の日内変動と早朝トレーニング
C.loop time の変動要因
の関連性について明らかにすることができれば、
8((4 の変動は、直腸温の変動とミラーイ
運動単位の閾値を指標とした早朝トレーニングの
メージの関係を示した。この現象は新しい知見で
安全性に関する客観的な知見が得られるものと推
ある。サーカディアンリズムの指標である直腸温
察する。
と 8((4 がミラーイメージを示したことから、
D.日中の loop time と運動パフォーマンス
運動単位の動員閾値がサーカディアンリズムにな
8((4 は >H 時で最も短くなり、その後時間
(>JA)
経過とともに遅延し、深夜から朝方にはベースラ
謝 辞
インまで値が回復した。これまで最大酸素摂取
量、筋力や反応時間などの運動パフォーマンス
本研究に対して助成を賜りました財団法人明治安田厚生
は、> 日のなかで夕方に高い値を示すことが報告
事業団に深く感謝いたします。また、本研究の遂行にご協
は、皮 膚 温 を
力いただきました川崎医療福祉大学桃原司先生、吉備国際
ID℃にコントロールした状態で直腸温と感覚神経
大学健康スポーツ福祉学科および川崎医療福祉大学健康体
されている
A%AS)
。1(.!.8<
>D)
伝導速度の日内変動(S 時から AF 時まで A 時間
育学科の学生の皆様に感謝いたします。
ごとの測定)について検討し、感覚神経伝導速度
は >H 時に最も速くなることを報告した。本研究
の 8((4 も >H 時に最も速くなった。これらの
ことから夕方に運動パフォーマンスが高い要因の
> つとして、運動単位の動員閾値が高くなること
で速い運動単位が動員されたと推測する。
E.本研究の限界
参 考 文 献
>)2.)(.U%=7,)[%3886+%K,$(")R(AFFD)E
=:,#)))6.#$,(.),(5$" .#,#.,$6$ )E.
"4.)#"))(.(5$ $((8(!#84,(98 )<=",
R2448Q$6)(8%^^%II>?IJ><
A)2.)(.U%3886+(>GGH)ET,#.;,(..)4(,)
4,5(, .#<*4(,)1%_`%AGA?I>A<
本研究では、脊髄の興奮性および自律神経系の
I)白 優覧,山崎 健,西村正広,小野寺昇(AFFH):
測定項目において被験者間で大きなばらつきが観
心電図記録における調節呼吸が心臓自律神経日内変動
察された。この要因として個人差や実験日前泊の
有無、身体活動量の違いや睡眠時間等のさまざま
なファクターが関与しているものと考える。した
がって、本研究では脊髄の興奮性および自律神経
系との関係について各指標ごとに検討した。被験
者のバックグラウンド等の調整を行うことによ
り、各指標の直接的な比較が可能になると考え
る。本研究では AJ 時間の周期から日内変動を評
価した。今後、JS 時間あるいは DA 時間の日内変
動を検討することができれば、脊髄の興奮性およ
び自律神経系との関連性についての詳細な知見が
得られるものと推察する。
総 括
に及ぼす影響.宇宙航空環境医学,ab,>G?AM.
J)T$.c%T$.X%K(847R3%R .X[(AFFA)ET(,?
#()4.8,#,.)#(.,"#)?,58:#,#.
,$6$ .,)<[,.3)%^a_%>F>?>FS<
M)T$.c%K(847R3(>GGJ)ET,#.,$6$ .,?
,58:<[,.3)%dae%>HD?>DF<
H)P7$",)*%3#$)Q=%/
(12%P\(U(AFFM)E
+ 4,",4..#(5)(8")?,58:.17;.
6(".!.(8,7( .<=",R2448Q$6)(8%^a%JG>?JGG<
D)P(7 .3%K(847R3(>GSG)EP",.8,$6$ ).4,?
)4.8,58:).##( 4.6.!#(,#8)( ().?
)(,6;(4(.8)<=8#,(.#4$8(!,T8./",(?
4$6)(8%f_%HG?SF<
S)P,")[%K,$(")R%2.)(.U%=7,)[%3886+
(AFFM)ET,#.,$6$ ).)4(,)4,5(, .# ? ."4?
<T$,(.(9(8B.%__%A>?JJ<
本研究は、日内変動における心臓自律神経系活
G)C",8.3%U"''*%T,;88,(K%P))*%+.881%
動と脊髄の興奮性の関係について検討し、深夜か
[)88U%T,"*%X( 9,C%Q!.1%188.2
ら早朝において、副交感神経系調節および脊髄の
(>GGF)ET(.."(")AJ?$(",)))) .(5$.",8,!"?
興奮性が亢進することを明らかにした。また、早
8(.(5)6) #,,84,))",.33;,98).
朝において 8((4 は日中と比べ高値を示し、
日内変動における 8((4 と直腸温の変動がミ
ラーイメージを示す新しい所見を得た。これらの
ことは、副交感神経系調節が亢進している早朝で
9"8.)"9@#)<T,#"8(.%e`%MID?MJD<
>F)U"1%U(..R%1,.2(AFFM)E1(,..!(;?
..!#$.!).$8#,#8. #$.#84,(4,)(5
$" .)(8") ((,".)#;96,58:.1
7;<=",R2448Q$6)(8%^ghIDD?IS><
も大きな力が発揮しうる状態にあることを示唆す
>>)(!.2X%":862C(>GMA)E2W".;)#,4?
る。自律神経系と脊髄の興奮性がアンバランスな
(.(5 9,.#",,..)448#(.(#(."#(.
生体状態である早朝の運動は、激しい運動ではな
く軽運動が望まれる。
.:#(...,;<RQ$6)(8%``f%MFF?MJJ<
>A)(!.2X%&'[(>GJG)E+$55#(5 4,",(.
$8#,#8#;6(5$!.:(.(5$)W"<R
(>JI)
Q$6)(8%`i^%AJF?AJG<
A>)*&% !"#$%-.(,*(AFFG)E3)4(.))(5
>I)"",\%/ 81R%-@8*%3.82%B$ (
$8. (57;.$" .!),(#. ") ")#8
1R%2,)..&=(>GGJ)ET,#.,$6$ )(55,W".?
(, #,.:,#)<R4.R2,()4=.;,(.1%ag%.
#6( . )",)(5$,,;,986.$8$6)"9?
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>&#%25./) &,%(0…………………ÁÆÈ
第24回健康医科学研究助成論文集
発行日 ÁÂÂÃ 年 Ä 月 ÁÅ 日
発行者 財団法人 明治安田厚生事業団
〒ÆÇÂÈÂÂÁÄ
東京都新宿区西新宿 ÆÈÉÈÄ
電話
(ÂÄ)
ÄÄÊÃÈÁÉÁÉ
印 刷 東京六法出版株式会社
THE TWENTY-FOURTH (2007)
RESEARCH-AID REPORT
MEIJI YASUDA LIFE FOUNDATION OF HEALTH AND WELFARE