職業倫理 八田 進二 授業の目的 本講義は、職業倫理の基礎概念、職業倫理と財務諸表監査との関係、「理論としての職業倫理」「制度としての職業倫 理」そして「実践としての職業倫理」の 3 つの側面からなる職業倫理の基本的な枠組みについて、国際的にも整合する幅 広い視点に立って、この職業倫理上の諸問題に関する最新かつ総合的な理解を深めることが最終的な到達目標となる。 授業の概要 倫理観の保持というのは、いずれの職業においても不可欠の問題であり、時代に即した健全な倫理観を身に付けるた めには、教育における研修をおいて他にはないと捉えられている。とりわけ、公共の利益に資する独占的な業務に関わる 公認会計士の場合、高度な倫理観の保持は、監査業務そのものに対する信頼性を確保するために必須の課題である。 本講義では、こうした高度な専門職業人にとっての倫理問題を多面的に取り上げて検討を行う予定である。 その際、一般の倫理と職業倫理の違いを明らかにしたうえで、「理論としての職業倫理」「制度としての職業倫理」そして 「実践としての職業倫理」の 3 つの側面からなる職業倫理の基本的な枠組みを示すとともに、そこにおける内容、課題等 について具体的事例を交えながら解説していく。 なお,本講義は,前期に 2 クラス設定しているが、講義内容等については、基本的に、同一の内容となっており差異は ない。なお、各クラスにおける授業効率を高め、かつ、受講生のより積極的な参加が可能となるように、それぞれのクラス における受講登録者数については、ほぼ半数ずつになるように配慮する。各クラス希望者の人数に偏りがある場合に は、担当教員の責任において、履修時間の変更が求められる場合のあることを承知しておくこと。 成績評価の基準・方法(配点割合) 出席状況(15%)、授業への参加度合(25%)、毎回,課されるレポート(60%)等によって,暫定的な評価を行う。 最終的な成績評価については,授業終了後に、別途、口頭試問を行ったうえで総合的に評価する。 使用教材・教科書・参考文献・予習事項・宿題ないし課題 教科書:八田進二『公認会計士倫理読本』,(財経詳報社) 藤沼亜起編著『会計プロフェッションの職業倫理』(同文舘出版) 参考書:藤沼亜起監訳『会計倫理の基礎と実践』(同文舘出版) 山田真哉『ウサギはなぜ嘘を許せないのか?』(アスコム) 予習事項等: 講義に先立って,テキストの該当箇所を読んでから出席することが求められるとともに,毎回の講義で課題 を提示する。 2013 年度授業計画 回 1 テーマ 内容 ガイダンス/ 本講義のガイダンスを行う。 職業倫理の基礎概念(1) 併せて,本講義の導入として,一般の倫理、職業倫理、倫理教育の必要性:倫理とは何か を検討し、倫理教育の必要性の理解を図る。 職業倫理の基礎概念(2) 2 プロフェッションの意義・特質、古典的なプロフェッション、近代的・現代的なプロフェッション: 職業倫理が問題とされるプロフェッションの意義および共通の特質について検討を加える。 職業倫理の基礎概念(3) 3 会計プロフェッションの意義および役割、自主規制の中核としての職業倫理:会計プロフ ェッションの特質等について確認するとともに、会計プロフェッションが有すべき社会的役割 について正しい理解を得ることとする。 財務諸表監査と職業倫理(1) 4 財務諸表監査の基本的枠組み、監査人の役割、職業倫理の位置づけ:会計プロフェッショ ンの独占業務たる財務諸表監査の基本的枠組みについて説明し、かかる業務を推進する 際に不可欠な、職業倫理の内実について説明する。 財務諸表監査と職業倫理(2) 5 職業基準の役割、監査人の自主規制としての職業倫理:監査基準と職業倫理規程(倫理規 則)の有する意義と役割について説明し、監査人の自主規制の中核としての職業倫理規程 の重要性について正しい理解をもたせる。 職業倫理の基本的枠組み 6 監査人の条件とその受容、私的統制としての職業倫理:監査結果が社会的に受け入れられ るための条件としての監査人の人的条件、社会的条件等にいて具体的に説明し、自主規制 の下での監査人の私的統制について説明する。 7 「理論としての職業倫理」の課 職業倫理の枠組みを支える「理論としての職業倫理」:会計プロフェッションの職業倫理の枠 題(1) 組みとして、「理論としての職業倫理」「制度としての職業倫理」そして「実践としての職業倫 理」の 3 つにつき順次解説していく。 8 「理論としての職業倫理」の課 規範倫理学、倫理原則、倫理的裏づけ:一般的な哲学ないし倫理学を援用した結果として 題(2) 捉えられる職業倫理は、いずれの職業においても不可欠な道徳律であり、あるべき倫理の 実態を指示していることを確認する。 9 「制度としての職業倫理」の内 公認会計士制度、財務諸表監査制度、公認会計士協会の倫理規則:倫理的行動を制度的 容(1) に規制するものとしての法律、規則等が制定されている理由等について、会計プロフェッシ ョンの社会的役割との関係から検討を加える。 10 「制度としての職業倫理」の内 金融商品取引法・同施行令、公認会計士法・同施行令、関係府令等、諸法令・諸規則の遵 容(2) 守の程度:会計プロフェッションの倫理に関して、具体的な諸規定の内容とそれへの遵守の 程度等について検討を加える。 11 「制度としての職業倫理」の内 倫理規則、懲戒処分、監査業務の品質管理:「制度としての職業倫理」の中心をなす「倫理 容(3) 規則」の内容につき、国際会計士連盟(IFAC)と日本公認会計士協会(JICPA)の双方を比較 しながら検討する。 12 「実践としての職業倫理」の取 「実践としての職業倫理」の意義、専門継続研修(CPE)の意義:会計プロフェッションの倫理 り組み(1) 観高揚に向けた取り組みとしての「実践としての倫理」につき、その内容と実践の方法等に つき検討を行う。 13 「実践としての職業倫理」の取 オン・ザ・ジョブ・トレーニング、講習形式の研修、監査現場での倫理問題、事例研究の欠 り組み(2) 陥、倫理上のジレンマ:「実践としての職業倫理」の取り組みの具体的に対応について検討 する。 14 職業倫理を取り巻く国際的な 国際会計士連盟(IFAC)、米国の「企業改革法」:21 世紀に入って大問題となった、会計プロ 動向 フェッションの倫理観の喪失問題について事実を検証するとともに、かかる問題を克服する ために講じられた対策等を確認する。 職業倫理高揚に向けた課題 15 国際教育基準(IES)の内容、日本公認会計士協会(JICPA)の取り組み:国際的及び国内的 な対応等につき、多面的な検討を行うことで、将来に向けた職業倫理高揚に向けた課題に ついて考える。
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