廃棄物サーマルリサイクルの将来 - 公益財団法人 日本産業廃棄物処理

産廃源流
JW 2005・4
連載
産廃源流
東京工業大学総合理工学研究科
環境理工学創造専攻
教授
吉川
邦夫
廃棄物サーマルリサイクルの将来
-真の循環型社会をめざして-
昨年 11 月 24 日に千葉幕張の日本コンベンションセンターで「産業廃棄
物処理の今後の展望」をテーマにセミナーを開催し、講師に橋詰博樹環境
省産業廃棄物課適正処理・不法投棄対策室長と吉川邦夫東京工業大学教授
を迎えました。前回は橋詰室長の講演内容を掲載しましたが、今回は吉川
教授の講演とその後の質疑応答を紹介します。
がら研究開発を行っています。今日は研究開発
1.廃棄物エネルギーの有効利用を
廃棄物処理と言いますと暗いイメージ、お金
の成果の一端、それから周辺技術を紹介させて
がかかってしようがないというイメージがあり
いただきながら産業廃棄物問題をどうやって解
ます。今日は夢のある話をしたいと考えていま
決したら良いかを皆さんと一緒に考えたいと思
す。廃棄物からどうやってお金を儲けるかです
っています。
が、本当の循環型社会が進むためには廃棄物処
今日の焦点はサーマルリサイクル、つまりエ
理でお金が回っていかないといけません。税金
ネルギーとしての利用ということです。エネル
を一方的に投入する、排出事業者が一方的にお
ギー利用は、3R(Reduce, Reuse, Recycle)の次で、
金を負担するのでは長続きしません。そういう
埋立の一つ前の第4番目のプライオリティにな
意味で廃棄物をエネルギー利用するという過程
っていますが、そうではないのではないか、と
の中でいかに産業化していくかを、日々考えな
いうのが今日の話のベースです。つまり、物質
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産廃源流
としてリサイクルするものはマテリアルリサイ
廃棄物全体の半分はリサイクルされ、4割は燃
クルするが、エネルギーとして有効利用するべ
やされ、1割が埋め立てられています。産業廃棄
きものは適正にエネルギーとして使うべきでは
物4億tのうち1割と言いますと4,000万tで一般
ないかということです。これは実は大量焼却、
廃棄物は5,000万tですから、それに相当するも
大量埋立とは全く逆の方向です。産業廃棄物は
のが毎年、埋め立てられているのが現状で、不
一般廃棄物に比べて何が良いかといいますと、
法投棄と合わせて毎年大量に埋まっていくごみ
発生元に行けば行くほど性状、数量がはっきり
をどうするのかという大きな問題を抱えています。
しているということです。これを一回ごみとし
廃棄物の性状によって利用のされ方が違うと
て集めてしまうと訳が分からなくなってしまい
いう現実があります。金属、土石などの燃えな
ます。したがって産業廃棄物は、なるべく発生
いごみと言われているもののリサイクルは進ん
元に遡って処理すべきであるというのが私の考
でいますが、生ごみのようなバイオマス系、廃
え方です。それから産業廃棄物の処理責任は排
プラのような化石燃料系、いわゆる燃えるごみ
出事業者が負っていますから、排出事業者が自
は半分以上が焼却処理されています。そうする
分の責任でエネルギーとして有効利用していく、
と、産業廃棄物処理の場合の大きなポイントは
このようなプロセスが循環型社会をつくる上で
廃棄物の性状に合わせた最適なリサイクルをす
大きなポイントになると考えています。
べきだということです。金属、土石などは物質
日本全体の物質収支を見てみます。年間大体8
として当然リサイクルすべきですが、燃えるも
億tの物が入ってきます。輸出は1億tですので年
のを無理やり物質としてリサイクルするよりも
間、7億tのものがネットで入ってきているのが
適正にエネルギー源として活用していくことが
現状です。アメリカは日本の20倍の国土を持っ
大事ではないかと考えています。
木くずや廃プラは燃えるものと言われますが、
ていますが3億t入ってきて3億t出ておりますの
で物質的にバランスが取れています。日本はア
産業廃棄物の中でもっとも多いのは汚泥で約半
ンバランスであること、圧倒的に輸入超過であ
分、それから動物のふん尿が多くなっています。
ることが廃棄物問題の大きな背景にあると考え
つまり水ばかりの中に1、2割の可燃分が入って
ています。一般廃棄物0.5億t、産業廃棄物4億t
いるものが圧倒的な量を占めています。例えば
で半分弱はリサイクルされています。廃棄物と
廃プラや木くずなどは絶対量としては500万tと
して焼却処理、埋立処分されているものは2.4
大きな量ですが、全体から見ますと割合は少な
億tとなっています。両方あわせますと2億tが焼
くなっています。したがって産業廃棄物をとく
却されているのが現状です。
にエネルギー源として利用する場合は廃プラや
日本でのエネルギー消費は約4億tです。量的
木くずのようにドライなものは利用しやすくな
には日本全体で使っているエネルギーの半分の
っていますが、ウエットな水気の多いものをど
ものを単に燃やしています。日本の場合には減
うするのかを私は考えています。その辺の技術
量化というのが廃棄物処理の大きな原則で、燃
的な解決策を後ほど、ご提示したいと考えています。
やすのがてっとり早く、単に燃やしているのが
さきほど日本全体のエネルギーの半分に相当
現状です。ところがそれが持っているエネルギ
するものを燃やしていると申し上げました。エ
ーは相当なものがあることを予感させるわけです。
ネルギーの値としてはどれ位になるのかを環境
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産廃源流
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省のデータで見ますと、一般廃棄物5,000万tだ
2.小型分散処理へ
けでわが国の13.4日分の原油供給量に相当しま
冒頭、発生源に遡って処理しようと申し上げ
す。これの数倍の産業廃棄物を燃やしているこ
ましたが、これは基本的には小規模な分散処理
とを考えますと、日本全体で燃やしている廃棄
の形になります。とくに産業廃棄物の場合には
物のエネルギー量は日本が使っているエネルギ
大規模な処理施設を造ろうとすると住民の合意、
ーの1割、1ヶ月分位に相当するものになってい
資金負担など相当な壁があります。民間事業で
ると考えられます。これを適正に使う産業が起
ありますので公的なお金は出しづらいこともあ
こったら、どれだけ大きなインパクトを与える
るかと思います。今まで産業廃棄物をエネルギ
かは容易に想像できると思います。
ー源として分散利用しようと考えている人はあ
廃棄物を燃やすと、すぐにダイオキシンとい
まりいなかったと思いますが、私は産業廃棄物
う話しになりますが、ここ数年の間に、厳しい
のエネルギー利用が本格的に普及するためには、
ダイオキシン規制をやりました。環境省のデー
分散処理が一番大事だろうと考えています。
タによりますと、平成14年末に最後の本格的な
京都議定書が平成17年に発効するということ
規制が始まりましたが、その時点で数年前の10
で、国は新エネルギーの導入目標を掲げていま
分の1というレベルに落ちています。この間、大
す。その中で廃棄物発電に対する期待は非常に
体1gのダイオキシンを減らすのに1億円使われ
大きくなっています。2010年の政府目標はバイ
たといわれていまして、そのほとんどが税金で
オマス発電を含めまして450万kW、現状は100
す。ここから先は技術的には難しく、1g減らす
万kWであるため(図1)、これを数年後に3倍、4
には10億円かかるだろうと思います。
倍に引き上げる目標ですが、これは実は大変な
この間というのは、ガス化溶融炉に代表され
ことです。その100万kWの内訳を見ますと、圧
るような大型集約化が進み、お金をどんどん投
倒的に大型都市ごみ焼却炉で発電がされており、
じてもダイオキシンを減らせば良いという時期
産業廃棄物の分野ではほとんど発電はされてい
でしたが、これが一段落した今の時点では、む
ません。一般廃棄物5,000万tのうち2,000万tは
しろエネルギー利用をどうし
制値をクリアすることは原則
„ 可燃性廃棄物の排出量
2.0
になりますから、そのベース
¾ 産業廃棄物:1.6億トン/年
¾ 一般廃棄物:0.5億トン/年
に立ってエネルギー利用をど
„ 廃棄物発電の動向(含バイオマス)
うするかが大事になります。
¾ 2010年政府目標:450万kW
とは経済性の問題であります。
廃棄物処理というものをいか
に経済の流れに乗せるかが大
事なポイントになると思いま
す。
9 一般廃棄物:207万kW
9 産業廃棄物:243万kW
¾ 1999年実績:98万kW
9 一般廃棄物:84.5万kW(184ヵ所)
9 産業廃棄物:13.6万kW(58ヵ所)
廃棄物処理施設への補助金の
廃止により、今後は自治体による
大規模な廃棄物処理施設の建設
は困難
図1
- 10 -
1.5
2000年
2000年
1.0
0.5
0.0
産業廃棄物
一般廃棄物
一般廃棄物
産業廃棄物
250
発 電 出 力 [ 万kW]
k
発電出力[万
それから今後、一番大事なこ
排出量[億トン/年]
排 出 量 [億 ト ン /
ていくか、ダイオキシンの規
200
150
100
50
0
1999年実績
小型廃棄物発電の必要性
2010年目標
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産廃源流
すでに廃棄物発電が入っています。それでせい
10t以下は1,000ヶ所あります。大型設備では脱
ぜい100万kWですから、今後、どういう所に力
水して乾燥、焼却という流れができ上がってい
を入れて伸ばしていかなくてはいけないかとい
ます。ところが今後、地方に下水道が普及して
いますと、一つは廃棄物発電の入っていない中
いきますと、地方の自治体で小規模な下水汚泥
小の自治体、それから産業廃棄物の分野という
処理をしなくてはいけないというニーズが出て
ことになります。
きます。それについては脱水まではやりますが、
もう一つ大きな流れで、廃棄物処理設備に対
その先は埋め立てられているのが現状だと思い
する国の補助金を縮減していくことがありまし
ます。こういうものからエネルギーをどう回収
て、環境省も必死に抵抗しているところだと思
していくかの解決策が求められていますが、こ
いますが決着はどうなるか分かりません(平成
れも小型分散、従来の大型集約化とは違う技術
17年度予算から交付金化が決定)。大きな流れは、
が入らざるをえないと思います。
廃棄物処理事業は国の事業ではなく、地方自治
ここからは、いくつかの技術のネタをご紹介
体が実施する事業で、地方自治体が自分で考え
したいと思います。これをどう組み合わせてい
て各自治体の事情にあったごみ処理をやりなさ
くかはこれからの課題で、ビジネスとしてどう
いという方向に行くと思います。そうしますと
展開していくかを皆さんと一緒に考えたいと思
今までダイオキシン対策のベースになっていた
います。
大型集約化にかなり無理が出てくると思います。
そういう意味で一般廃棄物を含めまして小型分
3.発生元の近くで発電を
散の方向に行くと思います。そして、とくに産
最初の技術のネタとして私が今までやってき
業廃棄物は上流に行きますとかなり種類がはっ
ましたガス化発電について簡単にご紹介したい
きりしていますので、そこで廃棄物の種類に合
と思います。従来、廃棄物発電はほとんど大型
った最適な処理技術が確立されますと、この次
焼却炉で燃やしまして、焼却熱を使ってボイラ
にその技術が一般廃棄物に入ってくると思いま
で蒸気を発生させ、蒸気タービンを回すという
す。一般廃棄物は現在、なるべくまとめて大量
ものです。最低でも日量100t以上、現実には200、
焼却することが一つのベースになっていますが、
300t以上でないと採算が取れません。100tレベ
自治体によってはいろいろな分別を始めている
ルですと発電効率も10%以下と非常に低いのが
ところがたくさんあります。行き着く先は業者
現状でして、産業廃棄物で100t以上の廃棄物発
に任せていることが多いと思いますが、分別さ
電をやるのは難しいと思います。むしろ今後、
れたものそれぞれに適正な技術が確立されれば
伸びてくるのは、廃棄物の発生元、例えばショ
従来の大量焼却とは違う処理に一般廃棄物処理
ッピングセンターや駅などは日量1t以下、せい
は行くだろうと思います。そういう意味で、産
ぜい多くても日量100tくらいの発電が大事にな
業廃棄物分野でエネルギー利用をどう進めてい
ってくると思います。そうしますと、蒸気ター
くのかは、非常に意味のあることだと思います。
ビンではなく、内燃機関、とくに私が注目して
小型分散の必要性の例を一つ申し上げますが、
いますのがディーゼルエンジン、ガスエンジン、
下水汚泥で年間約7,000万tの脱水ケーキが出て
また外燃機関と言われているスターリングエン
います。そのうち1日10t以上の設備が300ヶ所、
ジンなどです。廃棄物では直接、このような小
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型の熱機関を駆動できませんのでガス化、ガス
1,300℃を超えると灰が溶ける、いわゆる灰溶融
燃料に一回転換して、そして熱機関を駆動する
炉になります。固形分は灰だけが残ることにな
ことをやってきました。特長は小さくても効率
りますが、問題は炭化のところで熱分解ガスが
が高いことです。
出てくることです。熱分解温度は500、600℃、
今、燃料電池に代表されるような分散型発電
高くても800℃位の温度領域になりますが、熱分
が注目されています。最大の理由はユーザーの
解ガスの中にタールと呼ばれる成分が入ってき
すぐそばに発電機を置くことで、そうしますと
ます。この熱分解ガスで直接エンジンを動かす
熱まで使える、いわゆるコジェネとしての利用
ことができれば、非常にシンプルでよろしいの
ができるようになります。エネルギー利用効率
ですが、最大の問題は、エンジンの手前でガス
の観点から見ると、今まで発電効率がせいぜい
を冷やした時にタールが凝縮し、閉塞を起こし
20、30%と言われていましたが、50、60%まで
てしまうということです。それから、エンジン
上がるという大きなメリットがあります。大型
の中に入り込みますと駆動部分を固まらせてし
焼却炉ではなかなか熱利用は難しい。ところが
まうという大きな問題があります。ガス化とい
廃棄物の発生元に近づけば近づくほど、熱需要
う技術はタールとの戦いであると考えていただ
のそばで発電ができ、コジェネが組めるように
ければ良いと思います。
なります。発電分野の分散化の流れを廃棄物処
理分野にも入れていくことでエネルギー利用効
4.ガス化改質プロセス
率を上げていこうということです。サーマルリ
私が開発したのは高温水蒸気・空気を使った
サイクルでは、廃棄物の持つエネルギーの10%
改質というプロセスです。最近、このガス化改
程度を使っていても、これはリサイクルではな
質というプロセスが注目されてきています。通
いと思います。50%位使えるシステムを組まな
常はある程度、大型設備を想定し、酸素を使っ
いとリサイクルとは言えないと思います。そう
て改質します。改質というのは燃料電池の手前
いう意味でもなるべくユーザーの近くに処理施
にある水素製造用の改質と同じ原理です。ター
設を持っていきまして、電気だけでなく熱まで
ルつまり炭化水素と水蒸気を反応させまして、
使っていく、こういうシステムが大事だと思っ
タールを水素(H)と一酸化炭素(CO)に変えてし
ています。
まいます。これが改質という反応になります。
それでは具体的にガス化とは何かを説明しま
燃料電池の手前にも必ず改質器が入り、水素製
す。いろいろなガス化技術がありまして固定床、
造をやっていまして、天然ガスやガソリンから
流動床などがありますが、私が注目しています
水素をつくって燃料電池を駆動することになり
のは固定床と呼ばれている技術です。いわゆる
ます。通常の改質器は触媒を使いますので、温
シャフト炉と呼ばれるもので、溶鉱炉と同じよ
度もそれほど高温である必要はありませんが、
うなイメージで上から廃棄物を投入し、下から
廃棄物の場合には触媒を傷めてしまう成分が入
空気を入れます。一部は炭化炉になっていまし
っていますから、無触媒でやらなくてはいけま
て下から上がってくる燃焼ガスで加熱されまし
せん。そうしますと、この反応温度はバイオマ
て炭ができます。その炭が下に降りていって空
ス系ですと800℃、プラ系になりますと1,000℃
気で燃えて灰だけが残ります。底部の温度が約
という高温が必要になります。しかもこの反応
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産廃源流
は吸熱反応です。そこで、実際は水
投入口
蒸気だけではなく酸素または空気を
改質ガス
ガス化室
熱分解ガス
加えて発熱反応を起こして温度を維
熱分解
ガス
持することになります。通常はこれ
高温水蒸気 /空気
元 層
をやりますと可燃分が一緒に燃えて
ペブル床
予熱層、乾燥層
しまいますから、なるべく発熱量の
還元層
低下を抑えるために酸素を使うのが
酸化層
一般的ですが、小型設備で酸素を使
CnHm + nH2O → nCO + (n+m/2
)H2
(n+m/2)H
灰 層
点火装置
うことはありえません。私の研究開
灰出口
CnHm + (n/2+m/4)O
/2+m/4)O2 → nCO + m/2H
m/2H2O
空気(600℃)
発コンセプトのベースは酸素以外の
熱分解炉の動作原理
もの、基本的に空気と水だけでガス
図2
改質炉の動作原理
廃棄物の熱分解・改質ガス化の原理
化しようということであります。常
温の空気ではなく、高温、約1,000℃まで加熱さ
ング上の問題があります。最終的には「MEET
れた空気、水蒸気を使うことで発熱量の低下を
(Multi-staged Enthalpy Extraction Technology:多
最小限に抑えながら改質反応を進めようという
段階エネルギー抽出技術)」というシステムを開
ものです。
発しました。語呂がよく、世の中のニーズに適
科学技術振興事業団、今の科学技術振興機構
合(ミート)するものをつくりたい、それからい
から約10億円の研究資金をいただきまして、こ
ろいろな技術を融合(ミート)させて一つのシ
の研究開発をやりました(図2)。結果的にタール
ステムをつくろうという私の夢があります。そ
は消えることが分かりましたが、ただタールが
の前に「STAR(STeam/ Air Reforming)」をつけて
消えただけでは実用化できませんので、そこか
「STAR-MEET」システムと名づけました(図3)。
ら先、発電をどうするのか、高温空気、水蒸気
熱分解炉では、上から廃棄物を投入し、下か
をどうやってつくるのかといったエンジニアリ
ら空気を入れてガス化し、灰分を抜き出します。
大手、中小の焼却炉メーカーでもこう
いう技術はあります。一番大変なのは、
燃料ガス
対象となる廃棄物:
あらゆる可燃性廃棄物
(各種プラスチック、
各種ゴム製品、
各種バイオマス等)
レキュプレータ
排ガス
ガス冷却・精製装置
改質ガス
電力
廃棄物
水蒸気
る、そして高温でダイオキシンその他
空気
燃焼ガス
きれいにガス化する、きれいに灰にす
を分解することですが、ここは完成さ
バーナー
れている技術を使わせていただこうと
高温水蒸気/
空気加熱器
エンジン発電機
排ガス
空気
考えました。ここから先、熱分解ガス
水蒸気/空気
(1000℃)
水蒸気
改質ガス
熱分解 炉
を改質して、タールを消して発電まで
改質ガス
熱分解
ガス
持っていく技術の開発をいくつかのメ
改質炉
ーカーさんと一緒にやってきました。
ボイラ
水
この改質炉ではタールが消え、また、
600℃空気
灰分
図3
廃棄物ガス化発電 STAR-MEET システム
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タールとダイオキシンは構造がほとん
ど一緒ですから、800~1,000℃の高温
産廃源流
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ではダイオキシンも分解されます。タールが無
え付きましたのは混焼ディーゼルという考え方
くなりますと排熱回収ができます。ボイラで蒸
です。通常のディーゼルエンジンは軽油や重油
気をつくり、それから空気を予熱し、排熱回収
を空気で燃やしてピストンを動かす構造ですが、
した上で、最後はスクラビングやバグフィルタ
この空気にあらかじめ先ほどの低カロリーのガ
でガス精製を行います。ガスが冷却する過程で
スを混合させていくことを考えました。プラン
のダイオキシンの再合成の問題がありますが、
ト起動時にはガスはなく、100%軽油で起動して
ダイオキシンは塩素と酸素がないとできません。
プラントを動かします。プラントからだんだん
このプロセスは還元雰囲気ですので、塩素はあ
ガスが出て、これが入ってきますと、それに反
っても酸素はありませんので、再合成が起こり
比例して軽油をどんどん減らしていきます。最
にくいという原理的なメリットがあります。
終的に燃料ガスが7~8割、軽油が2~3割という
ガス精製を終えたところでクリーンな燃料ガ
モードで運転できるのではないかと考えました。
スができ上がるわけですが、冒頭、私は、酸素
実験をやりましたが8割以上までガスを入れて
は使わないと申しました。ガスの発熱量を上げ
もエンジンは回り、しかも発電効率はほとんど
ようとしますと窒素が邪魔になります。空気で
下がらないことが分かりました。驚いたのは
はなく酸素でガス化すれば、良い発熱量のガス
NOXが下がっていくということです。ディーゼ
が得られますが、それでは経済的に採算が取れ
ルエンジンはご承知のように非常に環境に悪く、
ません。ですから結果的に燃料ガスの約半分は
最近は微粒子の対応ができましたが、NOXへの
窒素という低カロリーのガスで、残りはCO、水
対応はなかなか難しい。しかし低カロリーガス
素、若干のメタンという可燃分になります。発
を入れることで自動的にNOXも落ちてくること
熱量は1㎥当たり約1,000kcalで、天然ガスの約
が分かりました。この原理を簡単にいうと、デ
10分の1という非常にカロリー値の低いガスに
ィーゼルエンジンのNOX低減策に排ガス再循環
なります。この生成ガスのうち約2割を燃やしま
という技術があります。これは排ガスを再循環
して、熱交換で高温空気・水蒸気をつくる熱交
させて酸素濃度を下げることでNOXを抑えると
換器の開発をやってまいりました。残りの8割の
いう技術ですが、低カロリーガス自体がほとん
ガスで発電するわけですが、そういう低カロリ
ど窒素で、これを燃焼空気に混ぜることで、一
ーガスから発電するという技術は日本にはなか
種の排ガス再循環のような効果で酸素濃度が下
なかありません。ヨーロッパでは1,000kcalレベ
がり、燃焼温度が下がりますのでNOXが下がる
ルのガスでも回るエンジンを世の中に出してい
ことが分かりました。
ますが、非常に大きくコストも高くなっています。
そこで、既存のディーゼルエンジンのマイナ
5.STAR-MEETシステム
ーチェンジを行い、低カロリーガスで回るエン
確立されたディーゼルエンジンに少し手を加
ジンを開発できないかということを考えました。
えただけで混焼ディーゼルエンジンができ上が
新たなエンジンの開発をやっていますと10年、
ります。それからガス化炉も小さなものから大
20年かかる話になりますので、そこを何とかバ
きなものまで、かなり確立された技術がありま
イパスして既存の安いディーゼルエンジンで回
す。今まで大型集約化の流れの中で大きな設備
したいということを考えました。その結果、考
を造って、それに合うだけごみを集めて下さい、
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産廃源流
ひとつの市町村で足りなければ複数の市町村が
まれてやるわけですが、この町が単独で灰溶融
広域化してごみを集めて下さい、ということを
STAR-MEET設備を導入しました。7,000人の町
やってきました。産業廃棄物の場合には、それ
で出る廃棄物は1日4~5tで、造った設備は日量
はほとんどありえません。そういう意味で産業
20tです。どうしてこの規模にしたかといいます
廃棄物の場合には排出されるごみの量にあった
と、計画の時に狂牛病が問題になり、肉骨粉の
最適なサイズのプラントが今後、大事になって
処理が大きな問題となりました。肉骨粉はご存
きます。エンジンも小さなものから大きなもの
知の通り一般廃棄物となっていまして県の方か
まで、ガス化炉も小さなものから大きなものま
らも何とか処理できないかという話があり、結
であれば、それが可能になります。そこで多分、
果的に肉骨粉は1日10t受け入れることになりま
これは世界最小のごみ発電だと思いますが「マ
した。それから、今までは廃棄物は全量埋立で、
イクロSTAR-MEET」というものの開発をやって
埋立地の横にこの施設を造りましたので、埋立
いますが、これは日量1t以下の処理量です。こ
地から一部掘り起こして処理していくことも計
の設備には一切電源ケーブルはありません。現
画しています。最終的に家庭から出るごみが5t、
場に持ってきて2、3時間の据付ででき上がりま
埋立地から出るごみが5t、それから肉骨粉10t
す。そして最初は100%軽油でエンジンが回って、
で合計約20tを処理することになり、900kWの発
プラントが動き出します。そして、だんだん軽
電を行います。先ほどのディーゼルエンジン
油の量が減り、ガスで回るようになります。ま
150kWが6台並んでいますが、実際にプラントで
さにスタンドアローンのシステムができ上がり
測定しますとプラントの駆動に必要な電力は
ます。これは例えばショッピングセンターやホ
250kWですから、残りの600kW以上を九州電力に
テルなど産業廃棄物発生の末端で使ってもらう
売ることになっています。
ことを考えていますが、これくらいですと人件
面白いのはこの町にとって収入が入るスキー
費がかけられませんので、24時間完全自動とい
ムができていることです。まず肉骨粉の処理費
うコンセプトで開発しています。もう少し大き
が入り、売電の収入が入る-RPS法(電気事業
なシステムとして「ミニSTAR-MEET」
と呼んでいますが、1日数tで100kW、
200kWレベルの発電になります。それ
から産廃処理業者や自治体レベルにな
りますと灰を溶かしたいというニーズ
もありますので、灰溶融STAR-MEET
の開発もやってきました。
この研究開発成果を受けまして産業
廃棄物ではないのですが、一般廃棄物
処理で鹿児島県市来町に実用機として
導入してもらいました(写真1)。この町
は人口7,000人で通常はごみ発電、灰溶
融は考えられず、広域化の中に組み込
写真 1
- 15 -
鹿児島県市来町の実用機
産廃源流
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者による新エネルギー等の利用に関する特別措
ンな燃料の場合にはさきほどの熱分解ガスを燃
置法)で従来よりも高く買ってもらっています
やしまして、その熱で直接、スターリングエン
-という形になっています。私はこれが廃棄物
ジンを駆動する非常にシンプルなシステムとな
処理の大きな流れの原型になってくると思いま
ります。そうすると排ガス処理、水処理が不要
す。つまり何らかの形の事業収入を得ながら廃
になってコストパフォーマンスの高いシステム
棄物処理をしていくことができるようになると、
が組めると期待しています。これについては今、
民間の資金が入ってきます。これはPFIとは違う
実証プロジェクトが動き出していまして、日本
形で、今までは税金を投入するサービス事業だ
の持っているガス化技術で鶏糞を処理して発電
った廃棄物処理事業に逆の歯車が回りだします
するというシステムがNEDOのフィールド実証
と、どんどん民間のお金が入ってきて収益が出
プロジェクトで採択されまして、そのプラント
る事業になってきます。その一つの先駆けをや
を現在、建設しています。
ろうとしていると思っています。小さな町です
今まで低カロリーガスをつくるということで
が溶融スラグを有効利用し、それからエンジン
やってきましたが、低カロリーガスですと、ど
排熱までエネルギー源として使っていくことを
うしても用途が発電に限られます。2週間ほど前、
考えています。
ヨーロッパを回ってきまして、バイオマスの発
平成16年の4月から稼動を始めまして運転時
電技術を見てきました。そこで非常に面白いこ
間が2,500時間に達し、秋からは発電が始まって
とが分かりました。今まで、将来は水素だとい
います。第一号機でトラブルもありましたが、
うことで水素をつくることを考えてきまして、
約半年を経まして形が見えてきました。これが
私自身も水素をつくっていくプロセスを考えま
今後、さきほど申し上げたようなスキームで動
した。「HyPR-MEET」というシステムなのですが、
き出すようになれば、ごみ処理の新たな流れの
従来の水素製造ですと酸素でガス化しまして、
原型になると期待しています。
生成するCOと水蒸気を反応させて水素をつく
ります。炭素1モルから水素1モルができるとい
うプロセスですが、高温の水蒸気をつくる技術
6.様々な技術の動向
ここからはいろいろな技術をオムニバス的に
がありますから炭素と高温の水蒸気を直接反応
ご紹介したいと思います。まずは発電機です。
させますと、炭素1モルから2モルという高収率
スターリングエンジンですが、これはご存知の
の水素ができるということを考えています。こ
方もいるかもしれません。夢のエンジンといわ
れは中国電力との共同研究で来年早々にはプラ
れまして国も大きなナショナルプロジェクトと
ントができます。
してやりましたが実用化ができませんでした。
私が開発を考えた時には水素が将来は大事に
それをアメリカのSTM Powerというベンチャー
なると思っていましたが、ヨーロッパは別の戦
企業がついにものにしまして、55kWの発電出力
略で、ガソリンを造ることを考えていました。
のものを発売しました。外燃機関ですので、基
COと水素を主体とする中カロリーガスからFT
本的に燃焼ガスなど、熱源が何でもあれば回る
プロセス―昔のガソリンを製造した技術ですが
ということです。来年には75kWにスケールアッ
-で燃料油を造り、その燃料油に対しては税金
プしますが、例えばバイオマスのようにクリー
をかけないということをやっています。したが
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JW 2005・4
産廃源流
って自動車会社は本気で、燃料電池以上にそち
された水分は自然乾燥していきます。しかもこ
らにお金を投資しようとしています。自然エネ
の時点で臭いはなくなっています。実証設備は3
ルギーを本腰で使うという姿勢がヨーロッパで
㎥タイプです。良く炭化と間違われますがそれ
は全く違います。電気もバイオマスからつくっ
とは全く違います。可燃分がそっくり残り、水
たものを日本でいいますと20円位で買ってくれ
だけが飛んでいくという面白いシステムです。
るという全く違う状況です。将来的には低カロ
乾燥特性を見ますと、生汚泥は水分量が落ち
リーガスからだけではなく、中カロリーガスを
ませんで、臭いも強烈です。これがMCS処理を行
廃棄物からつくることも大事になってきます。
うことであっという間に落ちていくことが分か
りました。それから硫黄系の臭い成分が減ると
いうことも分かりました。これもなぜ減るのか
7.乾燥技術
冒頭、汚泥のように水気の多い廃棄物が問題
というメカニズムをNEDOのプロジェクトで解
となっていると話しました。それに対して乾燥
明しているところですが、水気の多い産業廃棄
技術であるMCS(Multipurpose Conversion System)
物処理の大きな決め手になるシステムになるの
という面白い技術を北海道の西村組という会社
ではないかと思っています。非常に少ないエネ
が開発しました。ここと私どもは共同研究をや
ルギーで乾燥が可能で、面白いと評価しています。
っています。従来は乾燥というのはエネルギー
を食うのが常識でした。例えば下水汚泥ですと
8.油化還元技術
80%が水ですので、計算しますと大体、乾物の
次にプラスチックの処理です。プラスチック
持っているエネルギーを全部使って、ようやく
は元々石油から造られていまして、いらなくな
水が乾燥させられるかどうかになります。しか
ったプラスチックを石油に戻そうということで
し、これではエネルギー的にはゼロで何も出て
油化の研究が行われてきましたが、残念ながら
こないということになります。この技術は下水
油化の技術は普及していません。最大の問題は
汚泥と、その地域にある水分調整剤、例えば、
良い油ができないということです。
もみ殻やコンポストのようなバイオマス系のも
私が注目しているのは良い油を造るのに特化
のを合わせてリアクターに入れます。200℃、
した技術です。原理は従来の油化と一緒で、熱
2MPaの飽和水蒸気を入れて約30分位撹拌、そし
分解槽にプラスチックを入れて、外部から加熱
て水蒸気を抜いて処理品を取り出すという非常
することで蒸気状態にします。通常はこれを冷
にシンプルなシステムです。面白いのは処理直
やして油にするのですが、そうしますと低分子
後の水分量は処理前の水分量より減らないこと
から高分子までのブロードな分布を持った油に
です。つまり乾燥には全くエネルギーが使われ
なります。ところがこの技術は改質触媒-これ
ていません。ところが48時間放置しますと湿度
はエクソン・モービルが持っている石油精製に
が低ければ、ほとんどゼロまで水分量は落ちて
使っている触媒なのですが-で分子を細かく切
いきます。つまり水の蒸発の一番エネルギーを
ってしまいます。そうすると、できる油が軽質
食うところが自然エネルギーでやれるというこ
になりガソリン分、灯油分、軽油分という非常
とです。高圧水蒸気の役目は何なのかと言いま
に付加価値の高い油ができるという特長があり
すと、要するに水分を追い出すだけで、追い出
ます。
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産廃源流
JW 2005・4
通常の油化ですと、出てくる油の分子は低分
再生砕石、骨材、可燃物に分けることができま
子から高分子までブロードに分布しますが、こ
す。可燃物だけ取り出すことができれば、我々
れで処理したものはレギュラーガソリンや灯油
のやっているガス化発電でエネルギー利用がで
と比べてもほぼ似たような性状の油ができ上が
きますし、プラスチックが多ければ油化に持っ
っています。これも基本的に1時間100kgから最
ていくことができます。
大で1t位の処理で、廃油の処理もできます。産
業廃棄物の排出元に行きますとプラスチックだ
10
利益を生む仕組みの構築を
け完全に分別されていますから、そういう所に
今日はいろいろな技術を紹介しました。私が
入れていきますと採算が取れると思います。例
それぞれの技術に惹かれている理由は従来にな
えば、農業の分野では農ポリ(農業用フィルム)
い、大きなブレイクスルーを持っている技術で
の処理に困っています。これは各農家が農協に
あることと、経済性があることです。冒頭、現
1t当たり2~3万円を払って引き取ってもらって
状100万kWの廃棄物発電を450万kWにすること
いますが、これから非常に良い油ができます。
が国の目標だと申し上げましたが、これは決し
そうしますと処理費がもらえて、できた油も売
て税金だけではできず、民間資金が入ってこな
ることが可能で事業として成り立ちます。
いと実現できません。民間のお金が入ってくる
ためには事業として成り立つ廃棄物のエネルギ
9
ー利用が一番大事であると考えています。その
埋立ごみ選別技術
最後の技術メニューですが、冒頭、毎年4,000
方程式は非常に簡単です。廃棄物処理費、売電
万tの産業廃棄物が埋め立てられ、莫大な量の廃
収入、油化であれば油を売った収入がランニン
棄物が日本に埋まっていると申しました。最終
グコストを上回れば、ビジネスとして成り立つ
的にはこれを未利用資源と位置づけまして有効
ことになります。廃棄物処理費は高くなる方向
利用すべきであると考えます。ただし、埋立ご
で、廃棄物から出てくるエネルギーを高く買お
みの最大の問題はいろいろな物が混ざっている
うという動きが国の方であります。こちらが上
ことで、ある意味では最悪の状態です。それを
がってきていますので、我々としては人件費、
何とか分別できて、用途に応じた使い途ができ
用益費、設備費を下げることをやれば方程式が
れば話が違ってきます。面白い技術を紹介します。
成り立つようになります。そうしますと産業廃
FORCEBELという韓国の会社の技術ですが、
棄物の排出元事業者、中小自治体など今まで廃
日本では東電通という会社がそこと組みまして、
棄物発電と無縁だった人達が本気で廃棄物のエ
日本でビジネスを展開しようと考えています。
ネルギー利用を考えるようになります。幸いか
例えば韓国のワールドカップ会場の下は全て埋
どうか分かりませんが、最近、原油の値段は上
め立てごみで、FORCEBEL社がごみを掘り起こ
がっています。多分、エネルギーコストは今後、
して整地をしており、韓国でもこの分野のシェ
上がっていきます。それからCO2排出削減とい
アを5割近くとっています。基本的には廃棄物を
うことで非化石燃料の有効利用が国策になって
入れまして、トロンメルで選別し、まず土砂と
きます。今はダイオキシン特需が一巡しまして
可燃分に分けます。土砂もさらに選別、可燃分
焼却炉メーカーはどこも厳しい状況になってい
も不燃分と分けて最終的に掘り起こした現場で、
ます。ところが、このビジネスで面白いのはあ
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産廃源流
る設備を入れることでそこから恒
周辺技術
常的にお金が生まれてくることで
高含水物
す。設備が10年、20年動くと設備
•汚泥
きなビジネスになってきます。こ
れは多分、まだ誰も考えていない
•西村組MCS
•生ゴミ
•蓄糞
費の何十倍のお金が動くという大
•埋立ゴミ選別機:東電通/Forcebell[韓]
•高温熱交換器:東洋ラジエーター
Jasper[独]
•高温除塵:イソライト工業
•高温流量計測:東京計装
高圧水蒸気乾燥
ガス化燃焼
燃焼ガス
ガス化改質
未利用
資源
中低
含水物
STAR-MEET
•マイクロ・エナジー
•新興プランテック
•TYK
•三井三池製作所
•日本工営
•プランテック
•一廃
•産廃
廃棄物
バイオマス
と思います。今まで産廃処理は燃
スターリング
エンジン
•STM Power[米]
廃プラ
低カロリーガス
(H2+CO+N2)
水蒸気ガス化
中カロリーガス
(H2+CO)
HyPR-MEET
混焼ディーゼル
エンジン
•ヤンマー
電力
温/冷熱
ガスエンジン
燃料電池
・中国電力
やすか埋めるかしか考えていませ
油化
廃油
高品質油
•伸光テクノ
•機械油
んでしたが、そうではない全く新
•廃食油
水素
水蒸気改質
しいスタイルのビジネスが生まれ
てくることを私は期待しています。
開発済み
図4
開発中
開発予定
東工大がめざす未利用資源サーマルリサイクル技術
その中で今日はいくつかの技術
を紹介しましたが、これをいかに最適に複合化
質疑応答
させて廃棄物の性状に合い、エネルギーの用途
Q
ごみ処理では、微生物を使ったものがあり
に合ったシステムを組んでいくかが大事である
ますが、熱を使ったものと微生物を使ったも
と考えています(図4)。私はごみという言葉が嫌
のの位置付けについてご意見がありましたら
いで未利用資源と呼んでいますが、これは含水
お聞かせ下さい。
率の高いバイオマス系のものもあれば、比較的
A
微生物は主としてコンポスティングという
ドライなものもあり、廃プラもあれば廃油もあ
方向だろうと思います。エネルギー利用の観
ります。こういうものからなるべく付加価値の
点からしますと汚泥、生ごみなどの高含水の
高いエネルギーをつくっていくこと、当面は電
ものをメタン発酵させてメタンをつくって発
力になりますが、品質の高い油、最終的には水
電というのが主流であったと思います。ただ、
素、場合によっては中カロリーガスから合成燃
冒頭申し上げましたように、日本の場合、廃
料の製造という大きな流れをつくっていけるの
棄物処理は減量化がプライマリーで、エネル
ではないかと思います。残念ながら日本ではこ
ギーは残念ながらセカンダリーです。メタン
ういうものを高く買おうという仕組みがまだあ
発酵については廃液や残渣の問題がどうして
りません。ヨーロッパではかなりでき上がって
も出てきます。例えば牛糞のメタン発酵設備
います。日本では処理費が非常に高いので、処
がありますが、そこから出てくる液肥の処理
理費がもらえるところから付加価値の高いもの
に相当困っています。北海道あたりですと大
をつくって、入口と出口でお金をもらえるビジ
地に撒けますが、本州ではそうはいきません。
ネスの仕組みをつくることが産業廃棄物の適正
つまり下手をすると廃棄物処理が新しい廃棄
処理に大きく貢献するのではないかと考えてい
物処理を産むという構図になっています。そ
ます。
ういう意味では熱化学処理というのは基本的
にはCO2 とH2Oと灰だけになる大きなメリッ
ご静聴ありがとうございました。
トがありますので、経済性の観点を考えても
私はこちらのほうが普及すると直感しています。
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