特許出願に記載していない発明の改良発明ができた。そのときどうします

特許出願に記載していない発明の改良発明ができた。そのときどうしますか。
笠原特許商標事務所
弁理士
笠原
英俊
Q:既に発明Aについて特許出願1をしたのですが、その後、特許出願1に記載していない発明Aの
改良発明である発明Bを発明しました。発明B に関し、特許権を取得したいのですが、どうす
ればよいでしょうか。
A:発明Bは、発明Aを改良した関連の発明なので、発明Aに関する特許出願1に発明Bの内容を付
け加える修正(補正)をしたくなりますが、そうはいきません。
特許制度では、同じ発明に関し複数の特許出願がなされた場合、出願日が最も早い者に権利を与え
ま す の で( 先 願 主 義 )、特 許 出 願 後 に 新 し い 事 項 を 付 け 加 え る こ と は で き ま せ ん 。即 ち 、貴 方 が 特 許 出
願1に発明Bの内容を付け加える補正を許すとすれば、発明Bの内容も特許出願1当初から含まれて
いたことになります。そうしますと、貴方の補正よりも前でかつ特許出願1の出願の後に発明Bに関
し特許出願した人が、発明Bの出願は貴方の補正よりも早くしたにも関わらず、発明Bの自分の出願
が特許出願1よりも遅いとして特許を受けられない不公平が生じます。
こ の た め 発 明 B に つ い て 特 許 権 を 取 得 す る に は 、 特 許 出 願 1 と は 全 く 関 係 な い 出 願 ( 以 下 、「 独 立
出 願 」と 言 い ま す )又 は 特 許 出 願 1 に 基 づ く 国 内 優 先 権 を 伴 う 出 願( 以 下 、
「 優 先 権 主 張 出 願 」と 言 い
ます) をする必要があります。
優先権主張出願は、発明Aの特許出願1 から1年以内に、発明Aと発明Bとの両方の内容を記載
し、特許出願1に基づく国内優先権を主張した特許出願2をします。こうすることで特許出願1は将
来取り下げとなりますが、特許出願2に基づき発明A及び発明Bを包括的に権利化できます。
国内優先権主張の特許出願2については、発明Aは特許出願1の出願時をもって、発明Bは特許出
願 2 の 出 願 時 を も っ て 、そ れ ぞ れ 特 許 条 件( 例 え ば 、新 規 性 や 進 歩 性 等 ) が 満 た さ れ る か 判 断 さ れ ま
す。
優先権主張出願及び独立出願のいずれも、発明Bはこれから行う出願時に基づき特許条件が判断さ
れますので、それまで発明Bを公知等にする行為等をしてはいけません。
優先権主張出願は特許出願1から1年以内に行う必要がありますので、それを過ぎたときには、発明
Bは独立出願により権利化します。その時点で発明Aが公知等でない場合には、特許出願1の出願公
開により発明Aが公知となって、その公知の発明Aが発明Bの進歩性否定資料にならないよう注意す
べ き で す ( 特 許 出 願 1 公 開 前 に 発 明 B を 出 願 す る 必 要 が あ り ま す )。