講義資料 - 秋田県公的土地評価支援機構

参考資料1
Ⅰ.リーマン・ショックと証券化
1.世界の金融資産(マッキンゼー)
1995 年
2005 年
年率
世界の金融資産
6095 兆円
1 京 3800 兆円 (+9%)
世界のGDP
3000 兆円
4000 兆円 (+3%)
金融資産/GDP
2倍
3.45 倍
2.CDS(クレディット・デフォルト・スワップ)とは?
CDS(クレディット・デフォルト・スワップ)
クレジット・イベント発生の際に支払
プロテクション
買い手
プロテクション
売り手
固定金利
(フィー)
プロテクションの買い手(=リスクの売り手)
固定金利を支払う
プロテクションの売り手(=リスクの買い手)
クレジット・イベント発生の際に支払を行う。
クレジット・イベントが発生しない時には支払はない。
早期終了
参照クレジットに関するクレジット・イベント発 生時
期
自由設定
間
3.不動産の公的評価
公示価格
目的
評価機関
基準値価格
民間の土地取引の指標 公示地価と同様
相続税評価額
固定資産評価額
相続税・贈与税 固定資産税・都
鑑定士等の評価基準
公示地の不足地 等課税のため
市計画税・登録
公共収用の算定基準
点と調査時点を
免許税・不動産
補う役割
取得税課税の為
国土交通省
都道府県知事
国税局長
市町村長
土地鑑定委員会
準拠法
地価公示法
国土利用計画法
相続税法
地方税法
評価時点
1月1日
7 月1日
1月1日
1月1日
公表時期
3 月下旬
9月下旬
8月上旬
3月中
標準地数
31,866 地点
27,725 地点
約 40 万地点
約45万地点
価格比率
100%
100%
80%
70%
価格比率は、公示価格を100%とした時のおおよその比率
1
4.不動産の証券化・小口化の意義
主
体
意
義
社会・経済全体
住宅・不動産市場へ多様な投資資金を誘導し、
(金融市場との連動による)
(長期的効果)
不動産市場を活性化する
質の高い管理に基づく良質な不動産ストックの形成と不動産市場の創出
不動産所有者
住宅・不動産資産等のオフバランス化
所有資産の流動性を向上し、所有のリスクを軽減する
売却資金を再投資等に転用、他の不動産証券や金融資産との組み替え、投
資分散などを図る。
保有不動産の処分による時価評価、含み益の実現。
所有と経営の分離
投資家
不動産投資選択の多様化=不動産投資の拡大
投資リスク(流動性リスク)などのコントロール・ポートフォリオの改善
不動産取り引きコストの軽減・回避(登録免許税、不動産取得税の緩和、
法人税二重課税の排除など)
金融レバレッジ効果(エクイティ型証券に投資した場合)の実現
個人投資家
投資単位の小口化と集団的投資(間接投資)の仕組みによる不動産投資の
大衆化
投資対象の多様化
不動産会社・
資金調達手段の多様化・直接金融
事業者
物件処分(流動性リスク)所有リスクの投資家への転嫁、リスクの受け手
の拡大
資金調達コストの軽減(会社格付け<発行証券格付けの場合)
資金の早期回収(賃料や金利変動リスク=市場変動リスクの回避)
資産流動性の向上=資産再編の容易化、資産売却の円滑化
資産・負債のオフバランス化、ROAの向上
事業機会の拡大(投資顧問業への業態転換、デューディリジェンス、アセ
ットマネージメント、プロパティマネージメント
金融機関
不良債権の完全オフバランス化・債権処分の促進
債権回収リスクの投資家転嫁
事業機会の拡大=仕組み金融(ストラクチャードファイナンス)、サービサ
ー(債権回収、資産管理)
、証券売買・管理、信託業務
プロジェクトファイナンス(ノンリコースローン)によるビジネス
その他の事業者
・サービサーや物件調査(デューディリジェンス)業務、信用保証業務ニ
ーズが創出され、弁護士事務所、会計士事務所、格付機関、損害保険会社
に新たな事業機会が拡大
2
5.六本木ヒルズ事業スキーム概要
六本木六丁目地区
テナント
市街地再開発組合
六本木ヒルズ・
オフィス・住宅・店舗・ホテル
リースサポート
参加組合員負担金 保留床取得
賃料等
転貸借
森ビル
不動産信託
三菱信託銀行
信託受益権
(受託者)
賃貸・管理委託
建設資金貸付
信託受益権譲渡
信託配当
六本木ヒルズ・ファイナンシャルコープ(SPC)
建設資金貸付
建設資金貸付
ノンリコースローン
竣工後ノンリコースローン
民間建設ローン
日本政策投資銀行
民間パーマネントローン
金融機関
■
ス
コミットメント
シンジケート
キ
ー
ム
の
説
明
参加金融機関は十数社。富士銀行がパーマネントローンのドキュメンテーションエージェント
(金融機関団の契約交渉取りまとめを担当)、セキュリティーエージェント、ならびに日本政策
投資銀行を含む担保協定などの幹事行を担当し、三井住友銀行がパーマネントローンのアドミニ
ストレーションエージェントを担当。森ビルは、竣工後再開発組合から取得する建物を三菱信託
銀行に信託設定し、受益権を SPC に譲渡。パーマネントローンは、かかる受益権を裏付資産とし、
森ビルに遡及しないノンリコースローンとなっている。信託設定後、森ビルは信託銀行から対象
不動産を賃借してテナントに転貸するほか、物件管理を受託する。森ビルの支払う賃料は基本的
にテナント賃料とのパススルーとなっており、また、多数テナントからの賃料等の計算・収受は
複雑なものとなるため、回収代行 SPC/六本木ヒルズ・リースサポートを新たに設立して、テナ
ントからの賃料フローが滞らない工夫を盛り込んでいる。パーマネントローンの実行条件は、建
物設備の基本性能の達成や、元利払に対するキャッシュフローの基準など、予め特定された客観
的かつ十分達成可能と見込まれる条件により構成されており、建設段階でパーマネントローン金
融機関よりコミットメントを取得している。この安定的なコミットメントを背景に、建設ローン
について、より有利な条件設定が可能となり建設ローンとパーマネントローンの借入人は同一の
SPC/六本木ヒルズ・フィナンシャルコープとしつつ、両ローン間の移行可能期間を2年間設定
して安定性を備えるものとしている。
3
6.不動産に関する価値観と不動産投資ルールの変化
これまでの不動産投資
これからの不動産投資
視点
土地重視
土地建物一体で生む収益重視
価格
取引事例重視
収益重視
投資目的
土地のキャピタルゲイン重視 インカムゲイン重視(賃料等の収
(土地の値上がり益を期待)
益を期待)
価値
担保価値重視
投資価値重視
保有期間
永続保有
期間保有
7.不動産投資に関する制度の変遷
年月
1995 年 4 月施行
1998 年 9 月施行
2000 年 3 月施行
2000 年 5 月改正
2000 年 11 月施行
2001 年 9 月
2002 年 7 月制定
2003 年 1 月実施
項目
主な内容
不 動 産 特 定 共 同 事 「複数の投資家が出資し、不動産会社などの
業法
専門家が不動産事業を行い、その運用収益を
投資家に分配する」不動産共同投資事業を対
象とし、そのような事業を行う業者に規制を
行うことで投資家保護を図る構造となってい
る。
特 定 目 的 会 社 の 証 証券取引法上の有価証券としての流動性を持
券 発 行 に よ る 特 定 つ不動産証券化が可能となった。
資 産 流 動 化 に 関 す 2000 年 5 月に SPC 法改正(「資産の流動化に関
る法律(通称「SPC する法律」に改称)
法」)
良 質 な 賃 貸 住 宅 等 不動産証券化、収益還元法は不動産が生み出
の 供 給 に 促 進 に 関 すキャッシュフローが核となっており、その
する特別措置法(通 キャッシュフローを確定させる手法が定期借
称「定期借家法」) 家契約となる。
資 産 の 流 動 化 に 関 主な改正点
する法律(改正 SPC ・最低資本金 300 万円から 10 万円への引き下
法)
げ
・登録制から届出制への移行
・資産流動化計画の定款記載事項からの削除
・特定資産取得を目的とする借入金の解除
・倒産隔離のための手当て
・優先出資の減資の解禁
・特定目的信託の導入
投 資 信 託 お よ び 投 運用対象資産を限定せずに、不動産を含め幅
資 法 人 に 関 す る 法 広い資産への投資運用が可能とされるなど、
律
わが国でははじめて「不動産投資信託」が実
(改正投資信託法) 現できる制度が整った。
J-REIT が初上場
上記「改正 SPC 法」
「改正投資信託法」により、
J-REIT(不動産投資ファンド)が初上場した。
不 動 産 鑑 定 評 価 基 収益還元法が盛り込まれた。
準
4
8.REPFのリスク許容度別特性
リスク許容度
(JREIT)
組成者
投資家
主な収益機会
小
中
大
国内大手企業・ 国内大手企業・ 国内独立系
海外事業法人
連合
単独
海外不動産業者
海外投資銀行
個人投資家
国内機関投資家
国内事業法人
海外機関投資家
国内年金基金
海外年金
海外ファンド
インカムゲイン
キャピタルゲイン
キャピタルゲイン
インカムゲイン
インカムゲイン
主要プロパティ
オフィス;A クラス
住宅;棟単位
オフィス;B クラス
住宅;ユニット
バルクセール案件
LTV
物件運用期間
50%以下
50~60%
60~70%
70%以上
10 年以上
5~10 年
3~4 年
2 年以内
4~6%
6~7%
7~9%
9~12%
5%以上
10%以上
15%以上
20%以上
目標配当利回り
目標IRR
投資基準
シェア
拡大
バリューダウン回避
バリューアップ余地
低価格で購入
拡大
拡大
縮小
住信基礎研究所
9.プロジェクトファイナンスの基本的なストラクチャー
政府・地方自治体
・長期委託契約
・競合禁止・最低収入保証等
事業権契約
金 融 団
・公的金融
出資会社
(スポンサー)
出 資
融資契約
・民間協調融資団
・社債投資家等
債券投資
建設契約
建設JV
・固定価格
・工期保証
・性能保証
プロジェクトカンパニー
保守・運営契約
・建設会社
・運営会社
・機関投資家
・その他
保険契約
運営会社
保険会社
・運営・稼働保証
・建設リスク等
5
Ⅱ.地方都市における中心市街地活性化の事例
1. 高松市丸亀町商店街の連鎖型再開発事業の紹介
①高松丸亀町A街区不動産管理処分信託と証券化スキーム(契約関係およびお金の流れ)
高松丸亀町壱番街株式会社
西棟所有
建物賃貸借契約
東棟土地・建物共有者
店舗賃貸借契約
商業施設運営委託契約
保留床売買契約
土地所有者
東急コミュニティ
一般定期借地権設定契約
PM業務委託契約
信託契約
不動産管理
高松丸亀町
A街区市街地
再開発組合
高松丸亀町
家賃地代
信託銀行
テナント
家賃
まちづくり
三越
会社
信託受益権
賃貸借契約
紀伊国屋
賃貸借契約
その他
信託配当
受益権譲渡
高松丸亀町A街区コミュニティ
投資有限会社
譲渡代金
ノンリコースローン
信託
信託受益権
ローン
金銭消費貸借契約
優先
匿名組合出資
香川銀行
受益権
売買契約
匿名組合出資
都市再生ファンド
匿名組合契約
投資法人
匿名組合出資
地元投資家
匿名組合契約
高松丸亀町
工事請負契約
劣後
匿名組合出資
西松建設
まちづくり(株)
合田工務店
出資金
出資 300 万円
出資 300 万円
高松丸亀町
まちづくり(株)
高松丸亀町コミュニティ投資
有限責任中間法人
6
②スキームのポイント
①
高松市丸亀町A街区市街地再開発組合は、保留床については高松丸亀町壱番街株式会
社に譲渡、権利床については住友信託銀行を受託者とする信託契約を締結する。現物
不動産を証券化することも検討したが、不動産特定事業法の適用を避けるために信託
受益権の形をとらざるを得なかった。逆に信託することで、信託銀行(住友信託銀行)
の信用力も当てにすることが出来た。
②
次に、ビークルとして資産流動化法に規定された特定目的会社(TMK)高松丸亀町A
街区コミュニティ投資有限会社(以下高松丸亀町投資有限会社)を設立。高松丸亀町
コミュニティ投資有限責任中間法人を設立して倒産隔離を図った。
③
高松丸亀町投資有限会社は、高松市丸亀町A街区市街地再開発組合との間で信託受益
権売買契約を締結し、信託受益を譲り受け。
④
高松丸亀町投資有限会社は、有限会社ですから社債の発行は出来ない。したがって、
信託受益権の取得資金として香川銀行からノンリコースローンを借入れるとともに民
都機構の都市再生投資ファンド (優先出資)と高松丸亀町まちづくり株式会社・地元投
資家(劣後出資)との間で匿名組合契約を結び、それぞれからの匿名組合出資で賄う
ことにした。
⑤
高松丸亀町壱番街株式会社は高松丸亀町まちづくり株式会社との間で商業施設運営委
託契約を締結するとともに高松丸亀町まちづくり株式会社をアセットマネージャーと
して高松丸亀町投資有限会社との間でアセットマネージメント契約を締結し、対象不
動産は一括して、高松丸亀町まちづくり株式会社が管理運営する形を取った。
⑥
高松丸亀町まちづくり株式会社は、東急コミュニティとの間でPM業務委託契約を締
結し、不動産のPMを委託。
③高松市丸亀町再開発事業におけるタウンマネージメント
A街区では、出店する地権者が中心になって出資・設立した高松丸亀町壱番街株式会社
が保留床を取得し、権利床と併せて一括運営を行う。取得した商業床の実際の運営は第三
セクターの高松丸亀町まちづくり会社に委託する。高松丸亀町まちづくり会社は、商業施
設運営のためのスタッフを雇い、運営・管理に当たるが、ここには、二つのまちづくり会
社があるということに留意。
一つは、共同店舗を保有・運営する地権者法人(共同出資会社)、もう一つは、商業施設
の運営に当たる第三セクターの会社。なぜ、別々の会社が必要になったかということだが、
その理由は、経済産業省による近代化資金の無利子融資の対象者が、出店中小商業者であ
ることが要件となっていることにある。国土交通省による市街地再開発の補助金を受ける
地権者法人の構成をみると、出店中小商業者の割合が低く、先の近代化資金を受け入れる
資格を有さないことになり、それぞれが補助金や近代化資金の受け入れ資格を有する会社
とするためには 2 社が必要になったということ。
7
(ⅰ)タウンマネージメント体制の構築
A街区タウンマネージメント体制
A街区以外の再開発は、B~F街区については小規模連鎖型で建て替えを行うことにし、
都市再生ファンド、街中居住ファンドおよび優良建築物等整備事業等を活用する方針。残
るG街区は、A街区と同様のスキームで市街地再開発事業を行う計画となっている。
丸亀町商店街は、街区ごとの再開発を実施することにより、美しい町並みと快適な公共
空間を形成し、そこに適切な利用(業種・業態やコミュニティ施設)を実現することで、
最終的には 470mにおよぶ商店街全体の再生を、
5 年を目処に図ることを目標においている。
その目標を達成するためには、しっかりとしたタウンマネージメントが必要になってくる。
丸亀町商店街振興組合は、まず A 街区の再開発を機にA街区におけるタウンマネージメ
ントを構築し、他の街区の地権者等に対して A 街区で設けたコミュニティ再投資会社を核
に小規模連鎖型の開発を提案するとともにタウンマネージメントプログラムを提示するこ
とで商店街全体の再生を呼びかけている。以下に、タウンマネージメント体制およびタウ
ンマネージメントプログラムの骨子について掲げておきましたので参考にされたい。
なお、都市計画、景観、ファイナンス、マーチャンダイジングなどの専門家により構成
された「タウンマネージメント委員会」(委員長:小林重敬武蔵工大教授
8
事務局;まちづ
くりカンパニーシープネットワークー)を東京に設け、高松丸亀町タウンマネージメント
のバックアップを図っている。
このタウンマネージメント体制が成立するための要件は、当該地区の他の街区の再開発
事業において、収益価格と事業費のギャップを生じさせない事業スキームを構築すること
だと言える。従来の土地価格の形成とは切り離して考えることができるかどうかと言うこ
とだが、徐々にではあるが不動産を長期にわたって保有することはリスクを抱え込むこと
ではないか、商業にとって不動産は保有することよりも利用するものでは、と言う考え方
が根付き始めていることも事実。
高松丸亀町商店街タウンマネージメント体制
9
高松丸亀町商店街タウンマネージメントプログラム
10
2. 東北地方における不動産収益ファンド
事例1:株式会社カナヤマコーポレーション
カナヤマコーポレーションが中間法人GNTアセットを設立、次に中間法人がTMK(G
MTインベストメントⅠ特定目的会社を設立。GMTインベストメントⅠ特定目的会社が
次の2物件「郡山駅前 2 丁目オフィスビル地上10階地下1階」
「新潟市花町オフィスビル
地上9階」を取得。
資金調達は、GMTインベストメントⅠ特定目的会社が特定社債15億円を発行し、外
資系銀行が引き受け、その他7億円は優先出資を私募にて国内投資家から調達している。
11
事例2:北日本銀行による不動産ノンリコースローン融資
北日本銀行(本店所在:岩手県盛岡市)は、株式会社中央住宅産業が流動化する盛岡市
内のオフィスビル1棟および賃貸用マンション1棟ならびに同社が仙台市内に新規に取得
する大型立体駐車場1件を対象とする、総額11億円、期間3年のノンリコースローンを
実行している。案件組成に当たっては、株式会社新生銀行と提携して協調融資を行うとと
もに、メザニンローンとして東芝ファイナンス株式会社から調達している。東北地方では
初の地域金融機関によるアレンジメントとして注目されています。
ストラクチャー図
北日本銀行・新生銀行
ノンリコースローン
ノンリコースローン
(シニア)
(シニア)
東北インベスト
メント1有限会社
東芝ファイナンス
メザニン
東北インベスト
不動産管理信託設定
盛岡マンション
メント2有限会社
メザニン
不動産管理信託設定
匿名組合出資
盛岡オフィス
匿名組合出資
中央住宅産業
SPC(東北インベスト1・2)
不
動
北日本銀行
シニアローン
新生銀行
メザニンローン
東芝ファイナンス
匿名組合出資
中央住宅産業
産
信
託
受
益
権
出資金
出資
盛岡ホールディングス有限責任中間法人
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Ⅲ.コミュニティ開発とコミュニティファイナンス
事例1:神戸コミュニティ・クレジット
我が国にも、神戸におけるコミュニティ・クレジットを嚆矢として、各地でコミュニテ
ィファイナンスが芽吹きつつある。まだ事例は少ないが、その代表的な事例をみていく。
図 表 3 神 戸 コ ミ ュ ニ テ ィ ・ク レ ジ ッ ト の 仕 組 み
②借入れ
政策投資銀行
み なと銀 行
情報開示
表明保証
信
託
③貸付
借 入 企 業 6社
④回収
(= 委 託 者 の 一 部 )
(し ん き ん 信 託 銀 行 )
④返済
④配当
①金銭の信託
③
部分保証
(3 0% )
貸付について受益者の
ス クリーニング
東 京商 工リサー チ
委託者兼受益者
(神 戸 の 被 災 企 業 15社 の グ ル ー プ )
= コ ミュニ テ ィ
(資料)日本政策投資銀行
①
15 社は信託に 5000 万円の金銭信託を行う
② 銀行は信託銀行に対して、信託財産に責任財産を限定して 5000 万円の融資を実施
する。銀行は信託受益権に質権を設定
③
信託は1億円の資金を原資にコミュニティから選定された6社に対し同時に貸付
を行う。その際、借入企業は 15 社のうちの複数の企業から3割程度の部分保証を
受けることが条件となる
④
6社から貸付を回収し、銀行への返済と残余財産の委託者への交付がなされた時
点でコミュニティ・クレジットは終了する
日本政策投資銀行
地域企業
地方銀行等
取引的貸出
リレーションシップ貸出
(相互審査・保証・監視)
コミュニティの形成
(出資・相互情報開示)
金融プラットフォーム(信託等のSPV
格付け・証券化
・取引的貸出:大銀行、ノンバンク、クレジットスコアリング、等
・リレーションシップ貸出:コミュニティ銀行、信金、信組、企業間信用
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事例2:アルプストラストファンド(ATF)の少人数私募債による資金調達手法
長野県の中央アルプスと南アルプスに囲まれた信州・伊那谷の南部に位置する高森町(人
口約 1 万 3000 人)は、町民参加条例を制定するなど、積極的な住民参加型のまちづくり
を進めている町でもる。この高森町で、地元商工会を中心に町民を対象とした少人数私
募債を発行することで調達した資金を金銭信託し、この信託財産を担保として地元金融
機関が、地域の企業に対し無担保・無保証の融資を行うコミュニティファイナンスを実
施している。
情報提供
個人事業会員や有限会社会員の為のコミュニティ
クレジットによる融資事業(無担保・無保証)
地域金融機関
会員(ATFに出資した会員)
会員相互間の私募債
発行引き受け
出資
配当
調査機関
高森町商工会
金銭信託
金融機関シンクタンク
担保
企業情報会社
会員企業の
ディスクローズ
ATF社
TF 社のディスクローズ
会員支援と各種事業
信託銀行
金銭信託で預託
ファンディング事業
経営コンサルティング事業
自治体連携事業
インキュベーション事業
プレミアム・利払い
少人数私募債発行引き受け
高森町民による私募債引き受け
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1.コミュニティファイナンスが成立するための要素
コミュニティクファイナンスは、地域固有の情報を積極的に活用することで地域の実力
に見合ったファイナンスを実現するほか、地域の資金還流、中小企業による情報開示の
進展、収益的な地域金融市場の創出につながるものと考えられます。
金融機関はプロジェクトファイナンス等で用いられるストラクチュアリング、デューデ
リジェンス、契約技術等によるリスクコントロール手法を通じて、不動産担保や個人保
証に依存することなく、リスクに応じた金利設定により融資を行う、いわば地域社会の
信用を担保にしたノンリコースローンだと言うことができます。
私が手がけた高松市の丸亀町市街地再開発事業におけるファイナンススキームは、長野
県高森町商工会が実施しているアルプストラストファンドからも大いに示唆を受けました。
地域内で資金が循環するとともに、多くの住民が地域の活性化事業に参画できるという
ことです。
丸亀町のケースでも、多くの市民から参画したい旨の申し出がありました。コミュニテ
ィファイナンスに拠る資金調達は、結果的に市民参加型のまちづくりになりうるもので
す。
次に、丸亀町でも導入を検討した少人数私募債について述べていくことにします。
15
2.私募債
ここで、上記のアルプストラストファンドは、少人数私募債という資金調達手段を用い
ました。この少人数私募債というのは、幾つかの制約はありますが、大変簡便かつ平易な
資金調達手法です。
今後のまちづくりに当たって、一度は検討してみても損はないと思
います。因みに、PEFも私募債による資金調達でしたね。
(1)「私募社債」とは?
『社債』は、会社が資金調達のために発行する債券で、借入金の一種です。
『私募社債』とは、
『社債』の中でも債券の発行先を、一般投資家ではなく少人数の縁故
者に限定するものです。
商法296条により株式会社であれば取締役会の決議により社債の発行ができます。
社債は、株式と同様、有価証券の一種ですが、大きく分けて、利息を付しただけの「普
通社債」、「株式に転換できる転換社債」、「新株引受権の付いた新株引受権付き社債」の
三種類に分類されます。
このうち「少人数私募債」は普通社債に該当します。
社債保有者を社債権者と言いますが、商法ではこの社債権者を保護するためにさまざま
な規定を設けており、不特定多数の人に対して募集(公募)行為を行おうとすると、証
券取引法のさまざまな制約を受けますが、以下の要件を満たしたいわゆる少人数私募債
であれば面倒な行政手続きもいらずに社債を発行することができます。
①募集規模の制限
社債権者は50名未満、即ち49名以下であること(過去6ヶ月以内に発行している場
合には、6ヶ月で通算して50名未満、尚6ヶ月が超えれば再び49名まで勧誘できる)。
即ち不特定多数の人にではなく縁故者に対して直接勧誘すること。
社債の購入者が50名以上になると少人数私募集債ではなく一般の社債になってしまう
ので注意が必要です。
証券取引法では、不特定多数の人に対して募集を行おうとする場合、行政手続等が煩雑
ですが、50名未満は不特定多数には該当せず有価証券届出書も有価証券通知書も不要
です。
しかし、1億円以上の社債を発行する場合には、社債権者に対して、
・有価証券届出書を提出していないこと
・下記(3)の様な譲渡制限があること
を告知しなければなりません。
②発行可能額
社債総額を社債の最低券面額で除した数が50未満とします。
例えば最低券面額が100万円の場合は、発行限度額は4900万円となり、最低券面
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額が500万円なら2億4500万円となります。
又、同じ種類の社債では社債の1口の金額は同額であるか又は最低券面額の整数倍でな
ければならないとしています。
商法では社債権者の保全の為に会社は銀行や信託会社を社債管理会社と定めその管理を
委託する事を要求していますが、額面1億円以下の社債を発行する場合、又は、1口の
券面額が発行総額の50分の1未満の場合には、管理会社は不要とされています。
③譲渡制限、分割制限
社債発行時に取得した人からその後他の不特定多数の人へ譲渡される恐れがないことも
少人数私募債権の要件とされており、
・ 名式であり一括譲渡以外の譲渡禁ずる譲渡制限がある。
・ 券面が50枚未満であり表示単位未満には分割できない
こととなっています。
④無担保社債とする
社債発行の際法律上は、担保設定の義務はなく無担保社債となります。
仮に担保を設定すると、社債権者保護のために担保付社債法の規定によって信託会社の
設置が必要となり、信託会社が管理をしなければならなくなり、余分な手続きや費用負
担が発生します。
理解を得られる投資家への勧誘を前提とする事が必要になります。
⑤投資家の制限
社債権者の中に「プロ」の投資家(適格機関投資家)を入れないこと。
金融のプロとは、次のような人達を言います。
・証券会社(外国の証券会社も含む)
・証券投資信託会社
・銀行
・保険会社(外国保険会社も含む)
・信用金庫及び連合会
・労働金庫及び連合会
・農林中央金庫
・商工組合中央金庫
・信用共同組合及び連合会
・農業共同組合連合会 その他をいう。
たとえ人数が50名未満であっても、その中にプロの投資家が含まれている場合には、
手続きや書類の作成、決済等に時間もかかる事が予想されるため、手続きを簡単に済ま
せるためには、「プロ」を入れないことが望ましいと言えます。
(2)社債と増資の違い
増資は、株式を発行しますから、株主は株主総会をとおして会社の経営に参画するこ
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とができます。また、株主は会社に利益が出れば配当を受け、利益が出なければ配当をも
らうことができません。これに対して、社債は借用書みたいなものですから、それを持っ
ているからといって経営に参画することはできません。また、社債を持っている人は、会
社の業績に関係なく、あらかじめ定められた利息を受けることができます。
(3)社債と借入金の違い
銀行借入は、借入条件がおのずと定まります。
例えば、原則として担保が必要。長期間の借入の場合は、毎月の返済が必要等々。
これに対して、社債は、満期時に全額返済すればよいので、長期間にわたり調達金額を
満額利用することができます。
(4)小人数私募債のメリット
①銀行交渉が不要
金融機関に融資を申し込むと融資審査のためにいろいろな書類の提出を要求され、そ
の結果必ずしも融資にこぎつけられるとは限らないし、たとえ融資を受けられたとし
ても、歩積みや拘束預金を要求される事もしばしば。
しかし少人数私募債は直接金融であるため銀行交渉は不要です。
②行政手続きが不要
社債は取締役会で決議し、少人数私募債の発行要件を満たせば行政機関への手続も不
要で会社内で管理ができます。
③担保が不要
金融機関から無担保で多額の資金を借りることは余程の優良企業でない限りまず不可
能ですが、少人数私募債は縁故者に対して発行するものですから、社長やその会社の
信用があれば無担保でも発行でき資産の効率的運用も妨げません。
④資金調達の多用化
中小企業の資金調達は殆どが金融機関からの借入に頼っていますが、貸し渋りの時代
に私募債はその調達方法を多様化させ、企業の財務管理体制の強化を図る事ができま
す。
⑤投資家、取引き先等へのアピール
金融機関に依存する事なく資金調達が実行できるということは、身近に社長や会社を
信頼し応援をしてくれる人達がいるということであり、そのことは、従来の株主や金
融機関あるいは取引先の信用力を高めることにもなり更に資金調達の途を広げること
になります。
⑥安定した中長期資金の確保
金融機関から借入れができたとしても直ぐに利息の支払は始まるし、せいぜい6ケ月
の据え置き期間が有ったにして毎月元本と利息をあわせて支払わなければならないた
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め融資額を満額長期に亘って利用する事は難しいですが、私募債の場合は、償還期限
が来るまでは元本の返済が無いので、全額が利用できます。
⑦資金調達コストが安い
金融機関からの借入の様に、預金を拘束されることもないので、たとえ社債の利率を
少し高めに設定しても元本は償還期限が来るまで満額使え、社債の利息は通常年1回
の後払いであることを考えれば実質金利が高くなることはないと考えられます。
又、社債の利息は全額経費になりますが、増資による株式に係る配当金は法人税等を
支払った後の未処分利益から支払わなければならず、それだけコストはかかっている
ことになります。
⑧投資家の税負担のメリット
中小企業の場合、社長や、同族関係者から借入をしているケースが多いですが、その
場合の貸付金の利息は雑所得となり他の所得と合算されるため税負担は最高で約5
0%の負担となるが、社債の利息は利子所得となり20%の源泉分離の取り扱いとな
り税制上も非常に有利です。
⑨投資家の資金運用のメリット
少人数私募債の利率は一般的に3~5%が多いですが、リスクはあるものの5年の定
期預金ですら超低金利である事を考えれば非常に有利な資金運用ができることになり
ます。
⑩会社経営への参画意識の向上
商法では株式と違い社債を発行する場合に財務諸表の公開を義務付けてはいませんが、
役員や従業員が社債を引き受ける場合には事前に事業計画や財務内容をオープンにす
る事により経営者のビジョンや経営内容、方針を理解する事ができそれぞれの立場で
会社の役に立っていることを認識し会社経営への参画意識が高まります。
(5)「私募社債」の発行条件
①利息
通常は、銀行預金の金利よりも高めに設定します。おおよそ4~5%程度が一般的で
すが、期間や目的に応じて異なります。
②満期償還の期限
資金使途によって分けて考えるべきです。設備資金であれば3~5年程度、運転資金
であれば2~3年程度が一般的です。
③発行費用
私募社債は許認可等の届出が必要ありませんので、社債券を印刷する費用以外は何も
かかりません。
④調達する金額の制約
なし
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⑤社債の購入者についての制約
以下の2点について制約があります
・ ①50名未満であること。
・ ②銀行等の金融のプロがいないこと。
(6)発行手続き
<発行スケジュール>
①取締役会
②発行趣意書の作成
会社が何の目的で社債を発行し縁故者の協力を仰ごうとしてい
私募社債の発行は取締役会(出席取締役の過半数の賛成)の決
議により発行することができます。
るのか明白にし、理解を得るようにします。
取締役会で調達金額、期間等の主要な発行条件を決定し、議事
この場合事業計画書も添付することが望ましいでしょう。
録を作成します
③募集要項の作成
取締役会で決定した発行条件の細部を決定し、文書化(通常、
ペーパー1枚程度にまとめます)したものを「募集要項」と言
います。
これを、勧誘する人たちへ手渡します。
別添の募集要項を参考にしてください。
④社債申込証の作成・
受付
「募集要項」を配布した先の中で、興味のある先について、
「社
債申込証」を送付し、正式に受付を行います。
この社債の申込証の裏面には、社債発行会社の商号、
社
債の総額、それぞれの社債の券面額、社債の利率、償還方法と
期限、利息の支払方法と期限、社債払込金額の分割払いに対す
る金額と時期、社債の発行価額を
記載する必要があり
ますが、更に、実際の社債の応募額が社債の申し込み証に記載
した総額に達しない場合でも、社債の発行を成立させることを
うたい、この場合には、実際の応募額を社債の総額とする旨を
明示します。
⑤引受人の審査確定、
及び発行金額の決定
「社債申込書」により申込みを受けた先を審査したうえで最終
的に確定するとともに、社債の発行金額を最終的に確定します。
少人数私募債は不特定多数の人でない縁故者に対して発行する
ものですが、縁故者の知り合いという人の中には社債を購入し
て欲しくない人も無いとは言えない場合が有るため、審査確定
は慎重にすべきです。
⑥決定通知書の作成・
送付
「募集決定通知書」を作成し、購入者に送付しますが、応募額
が発行額を超えるような場合には、超える部分は次回に回して
頂くように丁寧にお願い等をする必要があります。
⑦申込証拠金の入金
あらかじめ定めた払込期限までに、
「申込証拠金」を入金しても
らいます。
⑧払込金預り証の発行
「申込証拠金」の入金を確認したら、
「払込金預り証」を発行し
ます。これは一種の領収書です。
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⑨社債券の印刷・発行
社債購入者に対して「社債券」を発行します。通常「社債券」
には、社債券の番号と社債購入者の名前を記載しますので、申
込金が入金された後に印刷に取りかかることになります。社債
券を発行する場合には、印紙を貼る必要があります。
⑩社債台帳の作成
社債の満期日まで、社債を適正に管理するために「社債台帳」
を作成します。「社債台帳」には、次の事項を記載します。
■ 社債権者の氏名、住所
■ 社債の券面額の種類と枚数及び取得金額
■ 社債券を発行する時はその発行番号
■ 社債の取得の年月日
■ 社債の償還の申出あるいは、第三者へ譲渡した時はその譲受
人の氏名と住所
⑪利払日の利息支払
毎年の利払い日に金利を支払います。この際に、20%の源泉
税を差し引きます。
⑫満期日の元金返済
満期日がきたら元金を返済します
「私募社債」の発行手続きが以外に簡単であることが理解されたことと思います。
次に具体的な少人数私募債発行要項を例示しておきましたので参考にしてください。
少人数私募債発行要項
1. 会社の商号 株式会社 日本投資顧問
2. 社債募集総額 金49,000,000円
3. 社債の種類 利付少人数私募債とする。
但し、債券不発行とし、法律に順じて社債購入者名簿にて管理することとする。
4. 社債の金額 一口
金1,000,000円
複数口数の申込みも可能であるが、希望に添えない場合もある。
5. 社債の利率 年5%
6. 発行価額 額面どおり。
7. 償還金額 額面どおり。
8. 社債償還の方法 元金は平成19年2月28日にその金額を償還する。
但し、会社は平成18年3月1日以降及び期間何時でも申し出のあった社債権の所
有の全部を買入消去することができるものとする。
(記名式、一括譲渡以外の譲渡禁止の転売制限、券面50枚未満、表示単位未満の券
面分割制限)
【定義府令7・・】
9. 利息の支払方法 利息は発行日の翌日から償還期日までこれをつけ、毎年3月1日、
9月1日の年2回経過分及び期間を支払い、償還期日後は利息をつけないものとす
る。
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10. 中途換金(解約) 原則として中途解約は出来ないものとする。
11. 第三者譲渡の方法 社債権者は、満期日前に所有の全部を第三者に売却譲渡する場
合は、取締役会の及び譲渡制限承認を受けるものとする。
譲渡価格は利息の附される経過期間を考慮して当事者間の合意によって決定するも
のとする。
12. 元金支払方法 社債権者の指定口座へ振込むものとする。但し、振込手数料は社債権
者の負担とする。
13. 社債元利請求権 社債の償還請求権は 10 年を経過するときは時効によりて消滅する。
時効利息の請求権は 5 年を経過するときは時効により消滅する。
14.申込期間 平成16年2月1日(日)より同年2月29日(日)までとする。但し、
申込額が募集額に達したときは期間中であっても、申込みを締切ることができる。
15. 申込証拠金 額面1,000,000円につき、金1,000,000円とし、募
集決定の上は払込み期日に社債振込金に振替える。
但し、申込証拠金には利息をつけない。
16. 募集方法 直接募集とする。
17. 手順 申込受付(平成16年2月1日より同年2月29日まで)
、審査の後、社債
金額、及び社債購入者の決定となる。
18. 払込期日 平成16年3月1日(月)
19. 振込銀行 ※追ってご連絡差し上げます。
20. 申込取扱場所 福岡県飯塚市川津 149-1 株式会社 日本投資顧問
平成
年
月
日
確かにA4―1枚で出発行できることができたお分かりいただいたと思います。
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参考事例
1.証券化資金導入によるショッピングセンター開発
以下の図表5-1に示されているのは、アメリカにおけるショッピンセンター建設の
事業スキームです。ウォルマートがアンカーの役割を果たす典型的な郊外型ショッピン
グセンターの事例ですが、この中に多くの参考になる要素がこめられています。
このアメリカにおけるショッピンセンター建設の事業スキームは、私が高松市丸亀町
市街地再開発事業で新たな資金調達手法を検討する際に参考にしたものです。地権者は、
地代を受け取るだけの存在から、プロジェクトに積極的に参画しリスクとリターンを分
かち合う投資家に変わって行く面白いスキームなのです。
事業スキームの解説
①事業資金は、出資(エクイティ)40%、借入金60%で構成されています
②出資部分については、投資主体Aと地権者が負担します。ここで地権者は、実物資
産所有権の出資の見返りとして、事業主体のパートナーシップ持分による収益配分権
を取得します。
③入金部分については、銀行シンジケート団によるプロジェクトファイナンスが実行
されます。
④投資主体Aは、投資主体Bと投資主体Cから構成されます。
⑤投資主体Bは、投資家団①(パートナーシップ)と事業者から構成されます。ここ
で投資家団①は、本プロジェクトへ出資するために組成されたパートナーシップであ
り、プロジェクトの成否が投資家に直接結びついています。プロジェクトが稼動し収
益が発生するまでは出資金に対する配当はありません。
⑥投資主体Cは、投資家団②(非上場REIT)と事業者から構成されます。ここで
投資家団
②は、REIT形式の不動産ファンドであり、既に全米各地で 15 のショッピングセン
ターへの投資を行っており、したがって、開発期間中も他の投資資産からの配当があ
り、当該プロジェクトの成否は直接投資家には反映されません。
この事業スキームのポイント
① 投資主体が何層にも重なり合って、その都度枝分かれして徹底したリスク分散が図
られ、事業主体からは最終投資家の顔は一切見えないようになっています。
② 当該プロジェクトでは、地権者の実物資産所有権がパートナーシップ持分に係わる
収益配分権に変換されており、地権者との合意形成手続きに要する時間が短縮され
ています。
③ 総事業費の60%をノンリコースローンによって調達することにより、エクイティ
投資家のROEの向上が図られています。
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証券化資金導入によるショッピングセンター開発
{事業概要}
・ 所在地:NY州 Whiteplains
・ 敷地面積:12エーカー
・ 建物賃貸面積:828,037sqft
・ 総事業費:275百万ドル
・ 竣工時期:1994 年
{事業ストラクチャー}
現物出資
地権者
事業主体
プロジェクト
パートナーシップ
ファイナンス
銀行団
出資
投資主体A
パートナーシップ
出資
出資
投資主体B
投資主体C
パートナーシップ
パートナーシップ
出資
出資
事業運営会社
出資
出資
投資家団①
投資家団②
パートナーシップ
非上場REIT
投
投
投
投
投
投
資
資
資
資
資
資
家
家
家
家
家
家
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