デジタルゲームの転換期 ~アジア市場への挑戦~ 城西大学現代政策学部社会経済システム学科 庭田プロジェクト(2011 年度卒業候補生) LS08038 五十嵐 浩之 1 目次 はじめに 1章 日本のゲーム産業の現状 1.1 世界トップシェアからの転落 1.2 「転落」の原因とは 1.3 現状を回復する為には 1.4 本当に「ゲーム業界」は「不況」強いのか 1.5 東日本大震災の影響 1.6 SNS の猛追 2章 アジア経済(市場)への進出 2.1 破竹の勢いの「中国ゲーム市場」 2.2 シェア獲得のための戦略 2.3 進出までの流れとメリットとデメリット 2-3-1 メリット 2-3-2 デメリット 2.4 インド・ベトナム・タイなどへの進出は可能なのか 3章 アジア経済(市場)への進出にあたってのハードル 3.1 海外勢に対する事実上の進出規制 3.2 出遅れた日本は勝てるのか(考察) 参考文献 2 はじめに 私の研究テーマは「デジタルゲーム産業」によるアジア市場の開拓である。近年、アジ ア経済は著しい、経済成長を続けている。その象徴ともいえるのがお隣の国、中国である。 2010 年中国は国内総生産(GDP)で日本を抜き世界第二位となり、 「世界の工場」といわれ る輸出依存型から、 「巨大消費市場」として内需主導型へとシフトしようとしている。この 勢いは留まることを知らず「インド」「ベトナム」 「タイ」などの周辺諸国の成長を牽引し ている。破竹の勢いで成長を続けるアジア経済に対し、多くの分野が注目している。 「デジ タルゲーム産業」もその一つだ。 私は、この研究において日本の「デジタルゲーム産業」の現状と今後、アジア市場をど う開拓していけるのか。今後の「デジタルゲーム産業」というものが、どのように展開し ていくのかを明らかかにしていきたいと思う。 次に、この論文を書こうと思ったきっかけは、もちろんデジタルゲームが好きというの もあるのだが、1989 年生まれの私はデジタルゲームの進化をリアルタイムで見てきた世代 だからである。90 年代私が子供のころはちょうど 2D グラフィックから 3D グラフィックに 変わる転換期であり、その後の市場の方向性を変え、決定した時代であった。 そのようなリアルタイムで進化を見てきた私にとって、デジタルゲームとは驚きの連続 であり、友達とのコミュニケーションツールであった。そんなデジタルゲームも魅力み魅 せられた私は、いつか論文を書いてみたいと思っており今回、卒業論文という形で論文を 書けることをうれしく思う。 第1章では、日本のゲーム産業の現状を調査し、世界トップシェアからの転落の原因の 考察と現状を回復させる為の案を論じる。2章では、破竹の勢いのある「中国ゲーム市場」 に進出を狙う企業を調査し、日本市場との比較やインド・ベトナム・タイなどへの進出は 可能なのかを研究、考察し論じる。3章では、進出するにあたっての規制などの障壁を研 究、および日本が出遅れた原因と今後の市場展開を研究し、研究結果を元に考察し論じた いと思う。 3 1章「日本のゲーム産業の現状」 1.1 世界トップシェアからの転落 1983 年に任天堂株式会社から発売された「ファミリーコンピュータ」により一般に「デ ジタルゲーム」というものが知られるようになった。8ビットの CPU を搭載し、本体に差 し込むロムカセットを交換することにより、多くの作品を楽しむことができた。発売から 1年あまりで 300 万台を売り上げる人気商品となった。さらに 1985 年に発売された「スー パーマリオブラザーズ」が日本国内で 681 万本以上、全世界では 4,024 万本売り上げ人気を 不動のものにした。この作品の成功によりデジタルゲームの市場を大幅に拡大させていっ た。最終的な出荷台数は全世界累計で約 6,291 万台を記録した。内訳は日本で約 1,935 万 台、日本以外で約 4,356 万台である。 その後任天堂は 1990 年に「ファミリーコンピュータ」の後継機「スーパーファミコン」 を発売する。普段ゲームをしないライトユーザーの取り込みに成功した他、大手ソフトメ ーカーの取り込みにも成功しトップシェアを維持した。しかし日本での出荷台数約 1717 万 台、日本以外では約 3,193 万台、全世界累計出荷台数約 4,910 万台と「ファミリーコンピュ ータ」の持つ記録を抜くことはできなかった。 90 年代前半まではこの「デジタルゲーム」の世界市場において任天堂はほぼ独占状態に あった。 しかし 1994 年にソニーコンピュータエンタテインメントが発売した「プレイステーション (PS) 」により市場は一転する。R3000 と呼ばれるCPUを搭載し、ソフトウェア媒体はCD- ROMを採用した。従来のROMカードリッジに比べ、読み込みに時間が掛かるのが短所だが、 一方で「データを大量に保存できる」 ・ 「ROMカードリッジに比べ低コストを実現」 「生産に掛 かる時間の削減」といった長所がある。これにより当時問題となっていたソフトウェアの高 騰を解決した。また当時は「2Dグラフィック」から「3Dグラフィック」へと転換する時期 であり「プレイステーション」は「3Dグラフィック」の波に乗り爆発的に普及した。市場は 「プレイステーション」の登場により表現方法から流通まで大きく変化した。そして「プレ イステーション」発売から2年後の 1996 年には、任天堂から発売された「NINTENDO64」 との市場競争を繰り広げた。任天堂は「NINTENDO64」でSONYの「プレイステーション」 に勝てると思っていた。その理由として、国民的RPGと呼ばれる内の一つ「ファイナルファ ンタジー」 (スクエア・旧)の最新作が発売される予定だったからだ。しかし「NINTENDO64」 の発売の遅れや、開発時間・経費の問題により「ファイナルファンタジー」 (スクエア・旧) が 「プレイステーション」で発売するという方針となり、一気に任天堂の顧客がSONYに移 ることになった。しかも「ドラゴンクエスト」(エニックス・旧)の最新作も当時、最も売れ ていたゲーム機が「プレイステーション」だったことを理由に、SONYに移ったことも拍車を かけた。国民的RPGというヒット作 2 本を任天堂から獲得したSONYはトップシェアとなっ た。一方この出来事により任天堂はトップシェアから転落することになった。この勢いに乗 4 ったSONYは 2000 年に「プレイステーション」の次世代機「プレイステーション2(PS2)」 を発売する。上位互換機能が搭載されており「プレイステーション」のソフトにも対応して いる事が受け世界中で爆発的に普及した。2001 年「プレイステーション2」に対抗するため に任天堂から「ゲームキューブ」が発売される。 しかし苦戦が続き、ミリオンセラーを獲得したのは「大乱闘スマッシュブラザーズ DX」 (任天堂)の 151 万本のみと、なんともさびしい結果となり、SONY がシェアトップの時 代が続いた。 図 1-1 販売台数(万台) PS・2国内・海外売上台数 PS・2国内・海外売上台数 25000 20000 PS2世界 PS2国内 PS世界 PS国内 15000 10000 5000 0 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 出典)ファミ通白書 2011 図1-1よりプレイステーション(PS)及びプレイステーション2(PS2)の販売台数を 見てみると、国内を問わず世界中で販売台数を伸ばしているのがわかる。この頃の日本の ゲーム産業は、世界から「テレビゲームは日本の文化」と言われるようになっていた。 しかし、世界のデジタルゲーム産業の勢力図が変わる。2003 年アメリカでデジタルゲー ムの売り上げがハリウット映画の年間興業収入を抜いたのだ。すると今までハリウットで 仕事をしていたクリエーターがゲーム業界の方が儲かると転職するようになった。その流 れを見逃さなかったのがパソコン大手の「マイクロソフト」だった。ソニーコンピュータ エンタテインメントの「プレイステーション2」に対抗する形で 2001 年に発売された、 「XBOX」用のソフト開発スタッフとして受け入れた。 「XBOX」は日本では 50 万台以下と 不振に終わったが、本国アメリカでは 2400 万台を売り上げた。アメリカ市場で成功を収め た「マイクロソフト」は 2005 年「XBOX」の後継機である「XBOX360」を発売し、一気に 5 シェア拡大を狙う。ここで 2005 年~2009 年までの国内・海外におけるハードの売上台数の 推移を見てみる。 図 1-2 国内ハード売上台数 国内ハード売上台数 販売台数(万台) 4000 3500 3000 2500 XB360 2000 PS3 1500 Wii 1000 500 0 2005年 2006年 2007年 図 1-3 2008年 2009年 2010年 北米ハード販売台数 販売台数(万台) 北米ハード販売台数 10,000 8,000 XB360 6,000 PS3 Wii 4,000 2,000 0 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 国内では PS3・Wii に押され今ひとつ売上を伸ばせていない。しかし海外を見てみると 2005 年市場を独占しているのがわかる。その後 2006 年~2008 年は PS3 の売上台数に抜か されるが、2009 年にはほぼ同じ売上台数だということがわかる。任天堂株式会社が 2004 年 に「ニンテンドウ DS」2006 年に「Wii」を発売し、2007 年には国内家庭用ゲーム、ハード を合わせた推定販売金額が過去最高の 6769 億円を記録した。これにより国内・海外問わず 6 「Wii」は売り上げた。だがシェアは確実に「マイクロソフト」の「Xbox」及び「Xbox360」 によって下げられていった。 1995 年には世界の「デジタルゲーム」産業は日本が7割のシェアを持っていた。2009 年 には日本市場全体が 3 倍に膨張した一方で世界シェアは3割まで落ち込んでいる。日本は この 15 年の間に世界トップシェアから転落した。 1.2 「転落」の原因とは 私は日本の「デジタルゲーム」産業が世界トップシェアから転落した原因を次の3つだ と分析する。 まず1つ目は「海外作品のクオリティーの向上」である。15 年ほど前の作品は「ゲーム デザインの違い」 「国内作品に比べ難しい」「ストーリーが大味」などの理由で敬遠され、 日本ではほとんど売れなかった。しかしここ最近の作品は、まるでハリウット映画なみの クオリティーが高い作品が増えている。国内の作品に飽きたユーザーが海外作品を好む傾 向にある。海外で人気が出た作品は約半年から1年の間に日本版が制作され販売される。 しかしオリジナル版にただ単純に日本語字幕や吹き替えを収録されて販売される訳ではな い。 「CERO」と呼ばれる審査団体の審査を通過させる必要がある。 「CERO」とはコンピュ ータエンターテインメントレーティング機構の略称で、2002 年 6 月に発足した。コンピュ ータエンターテインメント文化の発展にともないコンピュータゲームの多様化が進行する なか、ゲームソフトの年齢別レーティングを実施することにより、一般市民やユーザーに 対しゲームソフトの選択に必要な情報を提供し、青少年の健全な育成を計り且つ社会の倫 理水準を適正に維持することを主たる目的としている。1この審査団体を通過させる為に 1 部の過激な表現がある作品はオリジナル版から「CERO」の定める規定に従い「表現の規制 や削除」を行う必要がある場合がある。この「表現の規制や削除」を行ったことにより「ス トーリーの意味がわからなくなる」 「システムが崩壊」するなどの問題が発生し日本版はオ リジナル版に比べ劣化したものになることが多く近年問題となっている。その為、ユーザ ーは規制の入っていないオリジナル版を好む傾向があり、直接本国から輸入する為、日本 語版を制作した企業の売り上げとなるものが海外企業のものとなっている。 表現の自由と規制は今に始まったことではない。私は、ゲームの表現には自由も必要だ が倫理的な規制も必要だと思う。しかしこの問題の原因は審査規定のあいまいさと任天 堂・SONY・マイクロソフトの3社における、表現規制の考え方の違いに原因があると考え る。まず審査規定のあいまいさだが「CERO」が定める倫理規定には「禁止表現」の項目が あり、この項目に抵触する表現を含んだ作品は販売禁止となるとされている。その「禁止 項目」は資料1-1の通りである。 1 CERO 公式 HP より。 7 資料1-1 ゲームで禁止されている主な表現 出典)CERO 公式 HP より一部抜粋 資料 1-1 を見てもらうと分かるように、倫理規定は具体的な例を上げながらの説明はなく 全て抽象的な文章となっているため、あいまいな部分が多い。その一例として、モンスタ ーを銃で撃つと欠損する表現がある「バイオハザード 5」(カプコン)はD指定(17 歳以上 対象)だが同じ表現のある「デッドスペース」 (エレクトロニック・アーツ)は発売禁止と なっている。 2 つまり、 「露骨な表現の修正及び削除」・ 「具体例を挙げた倫理規定がない」 ・ 「販売会社に よって表現に差異がある。 3」という問題が存在する。そのためユーザーは、海外版を購入 2 A~D 指定はあくまで対象年齢を表示するものであり、販売規制をするものではない。ただし自主規制を 行っている一部の販売店では対象年齢に満たない購入者に対し販売規制を行っている。その他の販売店で は Z 指定 18 歳以上対象の表示のある作品にのみ販売規制を行っている。 3 資料 1-2 を参照 セインツロウ2は SNOY 版(PS3)とマイクロソフト版(Xbox360)での販売がされ ている。資料 1-2 の表現の差異は SONY 版のみであり、マイクロソフト版(Xbox360)には差異はない。 なお、本作品は CERO の審査により Z 指定(18 歳以上対象)となっている 8 するようになる。やがて、CEROや販売会社の批判につながり、結果としてシェアを下げる ことになる。 資料1-2 販売会社別表現の差異の具体例 セインツロウ2日本公式サイトより 一部抜粋 【アメリカ版との主な相違点:PS3(SONY)版のみ】 ・アクティビティ「メイヘム」は収録されておりません。 ・アクティビティ「ヒットマン」は収録されておりません。 ・マルチプレイ「ストロングアーム」にて、 アクティビティ「ヒットマン」のみ行うマッチタイプ「ウェットワーク」は収録さ れておりません。 ・人を盾にする描写は収録されておりません。 ・オンラインでの協力・対戦プレイは日本版同士の接続となります。 2 つ目は「権利問題による新規参入の難しさ」である。現在、日本企業がアメリカなどで 新規参入することは非常に難しいこととなっている。例えば、アメリカで人気の「アメフ ト」や「サッカー」などの作品を出そうとする。しかし「スポーツ団体」 「選手」などはも うすでに「権利」が抑えられており制作・販売ができない。一方で「キャラクター」をモ デルにした作品を制作・販売しようとしても同じ問題で無理ということになる。つまり身 動きができない状態なのだ。 3つ目は「国内ソフトのガラパゴス化」である。毎年 6 月にアメリカで開催されるデジ タルゲームの見本市「E3」がある。そこで近年注目を集めるのがアクションゲームを目玉 にする海外ソフトメーカーのブースだ。日本の家庭用ゲームソフトの海外出荷金額は 2009 年で 5060 億円だった。ピークだった 2008 年から比較すると 2200 億円の減少なった。売り 上げチャートでは上位 10 作品のうち日本製は任天堂の「スーパーマリオシリーズ」など2 本のみとなってしまった。この結果に立命館大学映像学部の新清士講師は「ゲームのグラ フィック性能が高まった結果、欧米と日本の好みの違いが鮮明になった」とコメントした。 現在日本の家庭用ゲームソフト市場は 3000 億円程度で頭打ち傾向が続いており、今回の結 果は世界から見た日本の「デジタルゲーム」産業の「ガラパゴス化」を浮き彫りにした。 以上3つが世界トップシェアからの転落の原因だと私は分析する。 1.3 現状を回復する為には 私が「現状を回復させる為」に提案することは以下の3つだ。 まず1つ目は「世界に通用する作品を増やすこと」 。日本国内での評判は良いのに、世界に 通用しない作品が多く、結果として世界シェアを3割まで下げてしまった。 もちろん「ポッケットモンスター」 (任天堂)や「メタルギアソリッド」(KONAMI)など 9 の国内問わず世界中で人気の作品がある。しかしこういった作品が少ないことが現状だ。 少ない原因として上げられるのが日本とアメリカのゲーム制作における考え方の違いだ。 日本の場合、クリエーター自身が製作してみたい作品をつくり、それをユーザーに売ると いう流れになっている。そのため海外からはアートと同じ市場だと思われている。一方海 外では、まずユーザーがどんなソフトで遊びたいかについてマーケティング調査を行う。 次に、試作品を制作し実際にユーザーを集め遊んでもらい意見を聞く。この段階で平均5 本の試作品の内3本は消える。そしてこの作業を繰り返し、製品として発売する。日本人 から見ればかなりシビアに感じてしまうが、それは日本と違い「ゲームはあくまでもビジ ネス」という考え方を基本としているためだ。つまりアート色とギャンブル要素のある日 本市場とリスク回避型のアメリカ市場ではやり方の考え方も根本的に違うのだ。私は世界 に通用する作品を増やすためには日本特有のやり方を改め、アメリカ市場のやり方にシフ トさせる必要がある。このまま現状を放置すればゲーム市場における日本のガラパゴス化 は進行するだろう。 次に2つ目は「SNS やスマートフォンへの参入をすること」近年、家庭用ゲーム機・ソ フトが軒並み株価および業績を下げている中、反対に株価・業績ともに急激に伸びている のが SNS やスマートフォン市場だ。特にその中でもパイオニアとされるのが「グリー株式 会社」である。2004 年 12 月に起業したソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS) を提供する会社だ。SNS とはインターネットを利用したコミュニケーションを提供するサ ービスのことである。会員登録をすることにより自分専用のページを持つことができ、同 じ会員に向けて情報発信していくことにより、交流の輪を広げることができる。 グリー株式会社の会員数は 2011 年6月末時点で 1 億 2359 万人となり現在の会員数を伸ば している。この SNS 業界が今後ゲーム業界を牽引してくとされ、上手くダッグを組むこと により世界のシェアを回復させられると私は考える。 最後に3つ目は「中国を始めとするアジア市場への参入をすること」 。2010 年中国は国内 総生産(GDP)で日本を抜き世界第二位となり「世界の工場」といわれる輸出依存型から 「巨大消費市場」として内需主導型へとシフトしようとしている。まさにアジア市場への 参入を果たす絶好の機会であり、シェア回復のカギといえる。この中国を始めとするアジ ア市場への参入に関しては第 2 章「アジア経済(市場)への進出」で詳しく書きたいと思 う。 1.4 本当に「ゲーム業界」は「不況」強いのか 一般的にゲーム業界は不況に強いとされる。これは本当だろうか。私はこの疑問を検証 することにした。なぜゲーム業界は不況に強いとされるのか。その理由として岡三証券シ ニアアナリストの森田正司氏は以下のように述べた。 1・価格が安価である。 2・積極的にゲームを購入するヘビーユーザーが存在しており、所得がある程度減少したと 10 しても安定的な販売が見込まれる。 3・逆に、好景気であったとしてもゲーム産業は不振に陥ることもあり、ゲーム産業を支え ているのはエンタテインメント性にある。以上 3 つが森田正司氏の見解だ。だが私はこの 見解は間違っていると分析する。 図 1-4 ハード・ソフト・オンライン販売台数の棒グラフに景気動向指数の推移を入れた図 (万台) (%) 4000 3700 3600 3000 3200 95 2800 85 95 90 85 85 80 2500 2000 100 3400 3500 3000 105 100 120 3700 105 3200 105 3400 3200 95 102 2500 3400 105 2100 2000 1900 1600 1700 1600 1500 80 70 2300 2500 3100 80 ハード(左軸) ソフト(左軸) 70 1800 60 オンライン(左軸) 一致指数(右軸) 1600 先行指数(右軸) 1300 1200 100 40 1100 1000 20 500 100 200 300 0 0 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 図 1-4 はハード・ソフト販売台数の棒グラフに景気動向指数(CI)の一致指数・先行指数 の推移を入れたものだ。ハードは景気動向指数(CI)の推移に合わせ販売台数も推移して いるように見える。一方、ソフトは景気動向指数(CI)に差ほど左右されていないように 見えるが、緩やかに推移しているように見える。そこで図1-4の相関関係を算出してみた。 相関とは、2 つの変数の間に関係があることをいう。統計学では、甲と乙を付けた順序が ほぼ一致しているとき、甲と乙には「正の相関がある」といえる。また、甲と乙を付けた 順序が反対では「負の相関がある」といえる。反対に、甲と乙に関係がなさそうなときは 「相関がない」という。この、相関の強さを客観的に表すために、数値で表したものを「相 関係数」という。一般的相関係数はアルファベットのrで表され、必ず-1 ≦ r ≦ 1 の範 囲になる。正の関数では 0 < r ≦ 1 となり、負の関数では-1 ≦ r < 0 となる。相関 がほぼない場合は0となる。またrが1に近いほど、正の相関は強くなり、rが-1に近 ほど、負の相関が強くなる。さらにr=1またはr=-1の場合は完全関数という。 11 表 1-1 ハード・ソフト・オンラインと景気動向指数の相関関係表 ハード(左軸) ソフト(左軸) オンライン 一致指数(右軸) 先行指数(右軸) ハード(左軸) ソフト(左軸) 1 0.342035879 1 0.515563248 -0.05586356 0.403298472 0.248171153 0.359586947 0.393892954 オンライン 1 -0.191713509 -0.133204886 一致指数(右軸) 先行指数(右軸) 1 0.938854819 1 図1-4 を基に相関関係を算出したところ表 1-1 のようになった。正・負の関数の相関の 範囲は表 1-2 ように表される。 表 1-2 正の関数 1.0≦r<0.7 0.7≦r<0.4 0.4≦r<0.2 0.2≦r<-0.2 相関範囲表 相関関係 強い正の相関がある かなり正の相関がある やや正の相関がある さほど相関がない 負の関数 0.2≦r<-0.2 -0.2≦r<-0.4 -0.4≦r<-0.7 -0.7≦r<-1.0 相関関係 さほど相関がない やや負の相関がある かなり負の相関がある 強い負の相関がある この結果から、得られた相関関係は、次の通りである。まず、一致指数・先行指数とハ ードでは、ハードと一致指数は 0.4、ハードと先行指数は 0.35 となり、一致指数・先行指 数とハードでは、やや正の関数があるといえる。次に、一致指数・先行指数とソフトでは、 ソフトと一致指数は 0.24、ソフトと先行指数は 0.39 となり、一致指数・先行指数とソフト ではやや正の関数があるといえる。最後に、一致指数・先行指数とオンラインでは、オン ラインと一致指数は-0.19、オンラインと先行指数は-0.13 となり、一致指数・先行指数 とオンラインでは、さほど相関がないといえる。つまり、ゲーム業界は不況に強いと述べ た森田氏の理由 1・2 は、間違いではないかと分析する。 そして、3 つ目の理由として「逆に、好景気であったとしてもゲーム産業は不振に陥るこ ともあり、ゲーム産業を支えているのはエンタテインメント性にある」だが、そもそも好 景気で不振に陥ることがあったのかと、私は疑問に感じた。そこで、バブル景気と呼ばれ た 1980 年代の売上を見てみた。株式会社エンターブレインの調べによれば表 1-3 ようにな っておりゲーム産業は不振に陥ることもなく、上位 5 作品が 300 万本超えという結果にな った。 12 表 1-3 1980 年代の売上表 順位 機種 タイトル名 メーカー名 国内累計出荷本数 1 ファミリーコンピューター スーパーマリオブラザーズ 任天堂 681万本 2 ゲームボーイ テトリス 任天堂 424万本 3 ゲームボーイ スーパーマリオランド 任天堂 419万本 4 ファミリーコンピューター スーパーマリオブラザーズ3 任天堂 384万本 5 ファミリーコンピューター ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ スクウェア・エニックス 380万本 出典)ファミ通白書 2011 一方でゲーム産業を支えているのは「エンタテインメント性」にあるという理由だが、 必ずしもそう言い切れない。株式会社エンターブレインの調べによれば任天堂が販売する 「ニンテンドウ DS」 の歴代売り上げの内 31 本が 100 万本以上の売り上げを記録しその内、 5 本は教育要素を含んだ作品だった。この結果からもわかるように必ずしもゲーム産業を支 えているのはエンタテインメント性にあるとは言い切れない。 以上の結果から、森田正司氏の1・2・3の見解は、必ずしも正しかったといえるもの ではなく、ゲーム業界は不況に左右される業界だと、私は考える。むしろ娯楽商品である ゲームソフトは景気の左右されやすい商品であるといえ、今後、この不況がさらに長引け ばこの業界は衰退の道をたどることになるだろう。 1.5 東日本大震災の影響 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災により「デジタルゲーム産業」への影響はどの ようなものがあったのか。まず影響を受けたのは震災直後に発売を予定していた作品だ。 発売延期を決めた作品は6作品で、そのうち3作品は確実にヒットが予想される作品だっ た。具体的タイトルを上げると「龍が如く OF・THE・END」 (SEGA) 「デッドオアアラ 「スティールダイバー」 (任天堂) イブディメンションズ」 (コーエーテクモホールディングス) の3作品である。また1作品「絶対絶命都市4」 (アイレム)が東日本大震災を彷彿とさせ る表現が含まれているため、発売中止が決定された。発売延期または中止を決定した背景 には、社会全体の自粛傾向があったからだ。この時期に発売をすれば、何らかの批判を浴 びるのと同時に確実に販売本数が落ち込むこと明らかで、そういった観点から発売延期ま たは中止を決定した企業が多かったのではないかと分析する。 東日本大震災の影響による推定損失額は「デジタルゲーム」産業全体で 73 億 3000 万円 となった。その内訳はハード市場で 28 億 6000 万円、ソフト市場は 44 億 7000 万円に上る と発表された。 だが私は「デジタルゲーム」産業の復興の兆しは早いと分析する。その理由は「3 月発売 の作品が延期になったこと」だ。日本の「デジタルゲーム」の市場は春から夏にかけて「確 実に売れる作品」が少なく市場がしぼむ傾向にある。ところが今年は延期された作品の発 13 売が夏に集中することから、市場の縮小が抑えられるのではないかと分析する。 では実際、私の分析はどうだったのかを検証してみた。まず「龍が如く OF・THE・END」 (SEGA)について。当初 2011 年 3 月 17 日発売を予定していが同年 6 月 9 日に延期になっ た。満を持して発売した結果は初週で 29 万 8717 本、約 30 万本を売り上げた。次にデッド オアアライブディメンションズ(コーエーテクモホールディングス)だ。3 月 24 日から 5 月 19 日に発売を延期、初週で 2 万 3078 本売り上げた。最後に「スティールダイバー」 (任天堂) だ。3 月 17 日から 5 月 12 日に発売を延期、初週で 2 万 5000 本を売り上げた。龍が如く OF・ THE・END」 (SEGA)の 29 万 8717 本に比べればあとの 2 作品は売り上げが劣るような印 象を受ける。しかしこの 2 作品は任天堂株式会社が 2011 年 2 月 26 日に発売した新型携帯 ゲーム機「ニンテンドウ3DS」でリリースされた作品であり、ハードの普及台数から見れ ば十分にヒットしたといえる。上半期は東日本大震災の影響を受け発売日が延期または中 止となったが人気作の売上への影響は少なかったといえる。 一方で下半期はどうだったのか。9 月に人気シリーズの最新作である「テイルズ オブ エクシリア」 (バンダイナムコゲームス)が発売され、初週で 52 万本を売り上げる。また 同じ月にドラゴンクエストのリメイク作品「ドラゴンクエスト 1・2・3」 (スクウェア・エ ニックス)が発売され、初週 26 万本を売り上げた。続編とリメイク作品が目立った月だっ たといえる。10 月は人気サッカーゲームの最新作「ワールドサッカーウイニングイレブン 2012」 (コナミ)が初週 27 万本を売り上げた。11 月に入ると年末商戦に向け動いたのが任 天堂だ。人気シリーズの最新作「スーパーマリオ 3D ランド」を発売する。このソフトは「ニ ンテンドウ 3DS」 を普及されるためのソフトとして制作されたこともあり、 初週で 36 万本、 累計 54 万本も売り上げた。このソフトのヒットにより「ニンテンドウ 3DS」の売り上げは 本体の値下げ効果の手伝い、この月だけで 41 万台も売り上げた。さらに任天堂は翌月の 12 月には「マリオカート 7」を発売した、初週で 42 万本を売り上げる結果となりさらなる販 売促進につなげた。 しかし株式会社エンターブレインが発表した 2011 年年間販売ランキングより「デジタル ゲーム」産業の復興の兆しは早いという分析は間違いだったことが分かった。2010 年 2011 年の年間ランキングを比較した。 14 表 1-4 4 2010 年 年間売上ランキング 順位 タイトル名 メーカー 機種 推定販売本数 1 ポケットモンスター ブラック・ホワイト ポケモン DS 491万本 2 モンスターハンターポードフル3rd カプコン プレイステーション・ポータブル 348万本 3 NEWスーパーマリオブラザーズWii 任天堂 Wii 159万本 4 Wii Party 任天堂 Wii 153万本 5 ドラゴンクエスト6 幻の大地 スクウェア・エニックス DS 129万本 6 ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2 スクウェア・エニックス DS 127万本 7 トモダチコレクション 任天堂 DS 119万本 8 スーパーマリオギャラクシー2 任天堂 Wii 90万本 9 イナズマイレブン3 世界への挑戦!!! スパーク/ボンバー レベルファイブ DS 89万本 10 Wii Fit Plus 任天堂 Wii 84万本 表 1-5 2011 年 売上ランキング 順位 タイトル名 メーカー 機種 推定販売本数 1 モンスターハンターポータブル3rd カプコン プレイステーション・ポータブル 102万本 2 ファイナルファンタジー零式 スクウェア・エニックス プレイステーション・ポータブル 64万本 3 テイルズ オブ エクシリア バンダイナムコゲームス プレイステーション3 61万本 4 みんなのリズム天国 任天堂 Wii 54万本 5 ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2 プロフェショナル スクウェア・エニックス DS 52万本 6 Wii Sports Resort 任天堂 Wii 47万本 7 真・三国無双6 コーエーテクモゲームス プレイステーション3 46万本 8 ゼルダの伝説 時のオカリナ3D 任天堂 3DS 46万本 9 ディシディア デュオデシム ファイナル ファンタジー スクウェア・エニックス プレイステーション・ポータブル 46万本 10 スーパーマリオ3Dランド 任天堂 3DS 43万本 4 表 1-4・表 1-5 はファミ通白書 2011 より出典 15 2010 年にはミリオンタイトルが 7 本だったのに対し、2011 年はカプコンの PSP 用ソフト 「モンスターハンターポーダフル 3rd」の 1 本のみという結果になった。しかもこのタイト ルは 2010 年に発売されたタイトルで、今年発売したものではない。つまり今年発売ソフト ではスクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジー零式」が記録した 64 万本が最高 でミリオンセラー作品は 1 本もなかった。この結果により今年のゲーム業界はかなり不況 の影響に加え東日本大震災により、かなり厳しい 1 年となったといえる。 1.6 SNS の猛追 グリー株式会社ソーシャル・ネットワーク・サービス 5を代表する企業だ。2004 年 12 月 企業し、2005 年6月モバイルサービス開始する。その翌年 2006 年7月にはKDDI株式会社 と資本提携を果たし、2007 年 5 月に世界初となるモバイルソーシャルゲームを発表する。 その後 2008 年 12 月に東証マザーズ上場、2010 年6月には東証一部上場を果たし、今年 2011 年 4 月時点で会員数が1億人を突破した企業だ6。現在日本で最も成長率が高い企業だ。こ の企業の経歴から見ても分かる通りSNSには日本ゲームシェア回復のためのカギがあると いえる。その可能性に気付き始めたのが大手企業だ。今までベンチャー企業中心の市場だ ったSNSだが今年(2011 年)に入り、大手家庭用ゲーム機向けソフト会社が参入してきて いる。その一部を上げてみる。コナミ株式会社がグリー株式会社向けに提供している「ド ラゴンコレクション」という作品がある。この作品は現在登録者数 800 万人を超え、2011 年4月~6月期の営業利益は 78 億円 7となった。この数字は家庭用ゲーム部門の 77 億円を 抜いた。この結果を受けコナミ株式会社の開発チームは統廃合を進め、より「ソーシャル」 に注力して利益を上げる体制に切り替えるという。ソーシャルゲームは家庭用ゲームと違 いソフトを投入する前に読み切れない部分が多い。しかし開発費は家庭用ゲームに比べ数 千万程度で済み、しかも約 2 カ月程度で回収が可能であるというメリットがある。 一般的な SNS を運営する会社の主な収入源は「広告収入」 「ユーザー課金」 「他サイトへ の誘導・連動」の 3 つだ。 「広告収入」とはインターネット広告により収益を得ることで、 いかに利用者の注目集め閲覧数を伸ばせるかが鍵となる。「ユーザー課金」は企業が提供し ているサービスに対し、サービス利用料という形で利用者が直接課金し収入源とするもの である。SNS の特徴を活用したサービスの提供に重点を置いている点がある。 「他サイトへ の誘導・連動」は広告収入・ユーザー課金には頼らず、自社・他社問わず他サイトに誘導・ 連動により得られる収入のことである。しかし問題点ある。中でも「ユーザー課金」に対 しては社会問題化しつつある。近年よく目にするのが「無料」「基本無料」と謳った広告・ テレビコマーシャルだ。 「無料」と強調してあるだけに「有料コンテンツ」はないと思って しまう。しかし実際には「有料コンテンツ」は存在し、誤解を招きやすくなっている。こ 5 6 7 SNS=ソーシャル・ネットワーク・サービスの略称 グリー公式 HP より 日本経済新聞調べ 16 れは「無料」という単語の使用について法的規制や条件がほぼ無い法的規制の不備をつい たものである。その為「無料」と強調し「有料コンテンツ」の存在については極小の文字 で表示しなおかつ短時間で消える手法を用いた広告になっている。その他にも「有料コン テンツ」の金額表示を日本円で表示しないため、日本円でいくらの商品なのか分かりにく いようになっている。このように非常に誤解を招きやすいため、独立行政法人国民生活セ ンターには SNS・オンラインゲームに関する相談は 2009 年度で 654 件寄せられている。 これを受け国民生活センターは改善を求める要望書を「一般社団法人日本オンラインゲー ム協会」と「一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム」に提出した。今後、相談 件数が増加することがあれば、社会問題化することは避けられない。今後、業界全体でル ール作りをしていかなければならないと考える。 17 2章「アジア経済(市場)への進出」 2.1 破竹の勢いの「中国ゲーム市場」 「Web で学ぶ 情報処理概論」によればインターネットの国別利用者数は上記の通りとなり 世界で最も普及している国と言える。中国に続きアメリカ 23984 万人、日本が 9914 万人、 ブラジルが 7594 万人、ドイツが 6512 万人となった。 中国国内のインターネットの利用者数推移をみてもこの 8 年で急激な増加していること が分かる。 図 2-1 国別インターネット利用者数 国別インターネット利用者数 38,400 中国 23,984 アメリカ 9,914 日本 7,594 ブラジル 利用者数 (万人) 6,512 ドイツ 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 出典)世界通信事情HPより 8 中国は日本と異なりオンラインゲームが最も普及している国である。統計を取り始めた 2003 年はオンラインゲームのプレイヤー人数が 1378 万人しかいなかったが現在は 9025 万 人にまで増加した。2003 年に比べ約 7 倍、増加したことになる。現在 PC 市場と携帯電話 市場がともに 4 億 5000 万人程度のユーザー層抱えており、人口比から見れば、まだまだ成 長が見込める市場だといえる。 8 図 2‐1~図 2-7 まで同出典 18 図 2-2 中国インターネット利用者数推移 中国インターネット利用者数推移 2010年 45730 2009年 38400 2008年 29800 2007年 21000 2006年 13700 2005年 11100 2004年 9400 2003年 利用者数 (万人) 7950 2002年 5910 0 10000 20000 30000 40000 50000 またインターネットの普及率に比例しオンラインゲームのユーザー数も増加している。 統計を取り始めた 2003 年では 1000 万人を少し超える程度であったが、2010 年には 9000 万 人と 9 倍にも増加した。特に 2009 年~2010 年の伸び率は他の年よりも高く、今後の伸び率 に期待できる数字だ。 図 2-3 (万人) 中国オンラインゲームユーザー数 中国オンラインゲームユーザー数 10000 9000 8000 7000 6000 5000 4000 ゲームユーザー数 3000 2000 1000 0 売り上げ面からみた中国ゲーム市場はまだ 323 億人民元で日本円に換算すると 4000 億円 前後となる。日本のゲーム市場全体が約 7300 億円なので、この数字はまだ伸びると予想さ 19 れる。両グラフからプレイヤー数と売り上げ推移は比例していることがわかる。 図 2-4 中国オンラインゲーム課金売上 中国オンラインゲーム課金売上 万元 350 300 250 200 150 100 50 課金売上 0 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 次にプレイヤーの年齢別構成比について日本貿易振興機構の報告によれば中国ゲーム市 場の年齢別構成比は上記のようになる。15 歳以下のプレイヤーが若年層の中で最も少なく 3.4%という結果になり、16 歳頃から徐々に増加し 19~22 歳が最も高く 33.3%となった。 これを境に 28.4%(23~25 歳)16.6%(26~30 歳)と減り続け 40 歳を過ぎると 1%を切る 状態になる。51 歳以上では本グラフで最も低い 0.4%となりシニア世代のオンラインゲーム に対する関心の低さを知る結果となった。反対に 19~30 歳の若年層に最も関心が高く、今 後の市場を左右する存在となるであろう。また、若年層の中で最も低い 15 歳以下の世代と、 51 歳以上のシニア層を引き入れることでまた新たな市場の開拓につながるのではないかと 考える。 図 2-5 プレイヤーの年齢別構成比 プレイヤーの年齢別構成比 51歳以上 0.4 41~50歳 0.7 36~40歳 1.3 31~35歳 5.5 26~30歳 16.6 23~25歳 28.4 19~22歳 33.3 16~18歳 10.4 15歳以下 3.4 0 % 10 20 20 30 40 次にオンラインゲームのプレイヤーはどんな職業についているのか。また職業によって プレイヤーの数は変わるのか調べてみた。 図 2-6 職業別構成比 職業別構成比 38.9 学生 情報産業関係 企業の管理職 商業/サービス関係 製造業関係 公務員 無職 教育/マスコミ関係 公共サービス関係 その他 12.7 9.1 7.7 6.2 5.6 4.4 3.9 3.8 7.7 0 10 % 20 30 40 50 日本貿易振興機構の調査によれば中国ゲーム市場の職業別構成比は上記のようになる。 グラフの中で学生が最も多く年齢別構成比で最も比率が高かった 19~22 歳が学生というこ とが判明した。次に多いのが情報産業関係で 12.7%となり普段からパソコンを使用する頻 度が高いことからオンラインゲームをプレイする機会も多いと予想される。個人的に驚い たのが 3 番目に多い企業の管理職だ。何かと多忙でお堅いイメージのありゲームというコ ンテンツから 1 番程遠いイメージがある管理職だが、実際は違うようだ。上手な時間管理 を行い捻出しているようだ。無職に関しては学生以上に時間の制約は受けないが、経済的 余裕がないため低い結果となった。また教育分野などに就いているプレイヤーは少なく、 一般的に聖職者と呼ばれる人たちはあまりゲームに関心を示さないことが分かった。 次にオンラインゲームを主にどこでプレイする機会が多いのかについて調べてみた。 21 図 2-7 オンラインゲームをする場所と比率 オンラインゲームをする場所と比率 57.4 自宅 26.4 ネットカフェ 9.7 会社 5.9 学校 0.6 その他 % 0 10 20 30 40 50 60 70 日本貿易振興機構の報告によれば中国ゲーム市場の場所と比率は前ページのようになる。 最も多いのが自宅で 57.4%となり、ネットカフェ 26.4%、会社 9.7%、学校 5.9%と続く。 会社と学校の割合が予想以上に高く、学生なら注意される程度で済むかもしれない。しか し社会人が会社でオンラインゲームをプレイするのは、上司に見つかれば大変なことにな ると私は思う。この結果により個人宅のインターネット普及率が高いことが分かった。 2.2 シェア獲得のための戦略 日本企業が中国市場においてどのような戦略を打ち出しているのかを調査してみた。 ソニー株式会社 2004 年 1 月にプレイステーション2を販売開始する。価格は 1988 元(日本円で約 2 万 4000 円)と当時の日本価格より約 1 万円安い価格だった。本体と同時で発売されたソフト は「Ape Escape2」 ・ 「ICO」 (イコ)の 2 作品のみで価格は 168 元(日本円で約 2400 円)と 日本価格の約半額という安さで、本体共に日本より安い販売価格設定だった。また同時期 にバンダイ・カプコン・フロムソフトウェア・コーエー・コナミ・ナムコ・セガ・タイト ーの 8 社が参入を発表する 9。その後も中国国内のゲームショウに参加や独自のイベントを 開催するなど積極的な活動により市場への浸透を図った。またオンラインゲーム部門にお いては、家庭用ゲーム機市場のような目立った動きはない。ソニーのアメリカの子会社ソ ニー・オンラインエンターテイメントが開発したEQエバークエストを投入するも、不発に 終わった。 9社名表記は 2004 年当時のもの 22 株式会社カプコン 2004 年にプレイステーション2が発売されたのを受け、デビルメイクライ2(中国版) の製作を発表する。また「ストリートファイターシリーズ」や「バイオハザードシリーズ」 なども売り上げを伸ばしている。オンラインゲーム部門にも参入を検討中で、2010 年には 「モンスターハンター」のオンライン版「モンスターハンターフロンティア」を中国市場 に投入することを発表した。しかし参入発表の 1 年前(2009 年)に中国国内のゲーム会社 「JOYCHINA」が「HUNTER BLADE」という類似作品を発表し、すでにサービスを開 始してしまっているため、本家の参入が難しい状態になっている。 コーエーテクモゲームス株式会社 ゲーム企業で最も早く 1985 年に天津市と合弁会社を設立し中国市場に参入した。1992 年 に北京市で、2000 年には台湾市で現地法人を設立し積極的にパソコン・PS2 向けにソフト を販売する。主な作品は家庭用で「三国志」 「大航海」「真・三國無双」を販売、オンライ ンゲーム部門では中国国内の企業 TRANSOFT と業務提携し 「信長の野望 オンライン 飛 龍の章」のサービスを 2005 年に開始する。コーエーの社員を現地に派遣し、課金システム やアカウント管理などに加え様々なサービスを行っている。 コナミ株式会社 2004 年 1 月に「ワールドサッカーウイニングイレブン」 (中国版)を発表する。文字、音 声共に中国語となっており高評価を獲得し売り上げを伸ばした。また 2005 年 4 月に中国国 内において携帯電話コンテンツの配信事業を開始する。主にゲームなどのコンテンツサー ビスを展開している。コナミでは豊富なコンテンツ力を武器に中国市場への事業展開を進 めていくとしている。 株式会社スクウェア・エニックス 2001年11月に台湾大手のオンラインゲーム企業「Soft star Entertainment Inc.」を親会 社に持つ「Webster」と合資契約を結び「SEW」を設立した。モバイルゲームを製作・運 営しており2005年には会員数が1600万人を突破した。同年1月にスクウェア・エニックス中 国を設立し、同年12月までに「SEW」の解散を発表した。また人材育成にも力を入れてお り中国国内との大学と連携を行っている。 2010年には盛大ネットワークとBeautiful Gameによるオンラインサッカー経営シミュ レーションの運営代理権を取得した。しかし中国国内でのシェアが3位に落ちている。 株式会社セガ 90 年代前半から中国国内のゲームセンター向けに作品を提供しており、認知度は高い。 2001 年8月にセガの開発スタジオで知られる株式会社オーバーワークスが北京・香港企業 と提携をする。PC 用「サクラ大戦」 (中国版)を発売、即日完売となる。同年 11 月に「サ 23 クラ大戦2」 (中国版)を発売する。その後もシリーズを発表する。2002 年台湾の Far Eas Tone 社と香港の Smear Tone 社に携帯電話端末向けのゲームコンテンツを提供し、同年 12 月に配信開始される。また同年にはポータルサイト「セガモバイル」を開設する。その後 も携帯電話端末向けのゲームコンテンツを提供・配信し 2004 年には現地拠点となる「セガ オブ チャイナ」を開設する。さらに 2006 年にはデジタルコンテンツサイト「JIAYOU」 を立ち上げ運営・サービスを行っている。 2010 年「開発部隊を除いて一時撤退」という報道がされたが、携帯コンテンツ部門につ いては活動を再開している。アニメ部門においては中国国内で話題になった作品のライセ ンスを取得し、モバイルコンテンツを開発した。今後セガは著作権管理の厳格さと物つく りに対する姿勢というアドバンテージを生かし展開していくとしている。 任天堂株式会社 2003 年 9 月に「iQue」を設立し、家庭用ゲームの開発・製造・販売事業を開始する。同 年 11 月に「iQue player」を発売した。対応ソフトは日本ではお馴染みの「スーパーマリオ 64」や「ゼルダの伝説 時のオカリナ」といったかつて 90 年代にニンテンドウ 64 で発売 され好評を博した作品だ。中国国内でも売り上げは好調だった。2004 年には「ゲームボー イアドバンス」発売、2005 年には「ニンテンドウ DS」を発売している。ハード機を日本と 同時期発売するなど精力的に展開している。 バンダイナムコグループ 2011 年に「ドラゴンボールオンライン」を中国展開することを発表した。また同年に「SD ガンダムカプセルファイターオンライン」「機動戦士ガンダムネットワークオペレーショ ン」を中国展開することを発表した。さらにバンダイは中国国内で人気のコンテンツのお もちゃ化を進めており、手広く展開している。著作権管理のプロフェショナル質に定評の ある商品開発という強みを生かし展開していくとしている。 2.3 進出までの流れとメリットとデメリット 中国に進出するまでの全体的な流れについてまとめてみる。進出までのステップは全部 で 10 項目になる。 10 1、 進出目的の明瞭化 2、 現地視察 3、 事業計画書作成 4、 収支計画書 5、 ビジネスパートナーの選定 10 中国進出ポータル HP より抜粋 24 6、 誘致条件の交渉 7、 登記申請 8、 営業許可書の取得 9、 US ドルでの資本金振り込み 10、営業開始 以上の 10 項目が中国に進出するまでの全体的な流れとなる。これらの項目を全て満たして 初めて中国での営業が行える。では何故、難しい条件をクリアしてまで中国に進出を行な おうとするのか。中国に進出にあたってのメリットとデメリットについて調べてみた。 2.3.1 メリット 1、 世界最大の市場 2010 年にGDP 39 兆 7983 億円を計上し世界第 2 位 11となり、世界的に不況の中でも高 いGDP成長率を維持し続けている。近年、生活水準・環境・年収の向上に伴い中流層が急 増しており、多くのビジネスチャンスが存在する市場だ。 2、 大幅な経費節約の実現 以前比べ人件費などの経費が上昇したものも、大都市を除けば日本の 10 分の 1 程度の経 費で済む。その為、経費節約を目指す企業にとってはメリットがある。 3、 開発区の優遇政策 中国政府が指定した開発区と呼ばれる経済重点地区がある。外国企業誘致に積極的な地 区であり中国に進出を検討する企業にとって、優遇政策を受けることは大きな後押しにな る。優遇政策の一例を見てみると、上海では「中国外に送金する収益分の所得税を免除」 となっており、中国政府が外国企業誘致に積極的だということが分かる。 2.3.2 デメリット 1、 行政上の問題 中国では進出手続きに長時間かかるのに加え、営業許可書の取得までの過程が多い。そ の為、環境の変化に柔軟に対応することが求められる。 2、 ビジネス環境の違い 日本と主に違うのが「適当な知的財産保護の実態」 「債権回収が困難」 「高い離職率」「イ ンフラ整備の遅れ」など 12がある。行政上の問題に加え、国民性・言語・文化の違いへの対 応と理解が必要とされる。 11 日本経済新聞調べ 12「中国進出ポータル」HP より抜粋 25 3、 日本・中国企業の目的の違い 長期的に利益を出すことを目的にした日本企業に対し、短期的な利益と日本企業が持つ 技術の取得を目的にした中国企業の間で問題が発生することがある。問題回避の為にはお 互いの目的を理解した上で事業展開を進める必要がある。 2.4 「インド」「ベトナム」「タイ」などへの進出は可能なのか インドについて。現在インドは中国に次ぐ水準で高成長を続けている。近年の経済成長率 とインターネットの普及率をグラフに表してみた。 図 2-8 インドと日本の経済成長率の比較 インドと日本の経済成長率の比較 % 12 10 8 6 8.4 8.3 9.4 9.2 9 6 4 2.36 2 0 -2 4.3 1.41 2003年 2.74 2004年 1.93 2005年 成長率(日本) 2.04 2006年 2007年 成長率(インド) 2008年 -1.17 2009年 -4 -6 -6.28 -8 出典)成長率データ(インド)BRICs辞典 成長率データ(日本)総務省統計局(2003 年~2006 年)OECD 発表データ(2007 年~2009 年) 26 図 2-9 インドのインターネットの普及率 インドのインターネット普及率 (万人) 18,000 16,000 1.1 14,000 % 1.3 1.2 1.1 8,000 12,850 0.6 6,000 2,000 15,240 6,935 12,609 2005年 2006年 0.8 0.6 0.4 13,490 4,000 1.2 1 12,000 10,000 1.4 加入者数 普及率 0.2 0 0 2007年 2008年 2009年 出典)世界通信事情より 依然として高い成長率を保持しているインド。その高い成長率に比例してインターネッ トの加入者数と普及率が増加している。また、インターネットの普及に伴いゲーム市場も 拡大を続けており、2009 年のゲーム市場規模は 2 億 3900 万ドル(200 億円)となっている。 業界関係者などから市場の頭打ちを指摘されたが、インド発の大企業や SNS ゲームで脚光 を浴びる企業などがあり、私はさらに市場拡大をすると考える。 インドで展開する海外企業の動向について解説する。インド市場で急成長を続けている のが、 「ゲームシャトラ」という企業だ。2006 年にアメリカで創立し 2007 年にスタジオを インドに設立した。インド在住のプログラマーやアーティストを積極的に採用し、高い成 長率とインターネットの普及に伴ったゲーム市場の拡大により急成長した。2010 年末には 総スタッフ数が 220 人となった。この急成長を支えているのが同社の設立したゲーム専門 学校(ISOG)だ。スマートフォンやコンシューマ機などの開発に必要な専門知識を身につ けることができる。この専門学校において優秀な成績を収めた学生は、同社に就職するこ とになる。 「ベトナム」 「タイ」について。 「Niko Parther」の発表によると東南アジア 6 カ国のオ ンラインゲームの市場規模は 2010 年で 4 億 570 万ドル(340 億円)となっている。また予 想では 2014 年までに 8 億 337 万ドル(700 億円)になるとされる。今回はその中から「ベ トナム」 「タイ」に焦点を当てた。 まずベトナムについて。現在ベトナムは高成長を続けている。近年の経済成長率とイン ターネットの普及率をグラフに表してみた。 27 図 2-10 ベトナムと日本の経済成長率の比較 インドと日本の経済成長率の比較 % 12 10 8 8.3 8.4 6 9.2 9.4 9 6 4 4.3 成長率(インド) 2.36 2 0 2.74 1.41 2003年 -2 2004年 1.93 2005年 成長率(日本) 2.04 2006年 2007年 2008年 -1.17 2009年 -4 -6 -6.28 -8 出典)成長率データ(ベトナム)BRICs辞典 13 図 2-11 ベトナムのインターネット普及率 ベトナムのインターネット普及率 (万人) 6000 7 6 5000 4000 % 6 4.8 5 3.6 4 3000 加入者数 3 2000 5241 4059 1000 2906 普及率 2 1 0 0 2005年 2006年 2007年 出典)世界通信事情より 高い経済成長率に伴うインターネットの普及率の増加により、オンラインゲームは人気 の高いコンテンツとなっている。ベトナムではインターネットカフェでのオンラインゲー ムの利用が一般的となっており、現在ベトナム国内には約 2 万 5000 軒のインターネットカ 13 日本の成長率データは 2009 年まではインドと同じものを使用した。2010 年 2011 年は総務省統計局より 出典 28 フェが存在する。近年、ベトナム都市部において無線 LUN 接続を売りにしている普通のカ フェも多くビジネスマンはこれらの場所を利用する傾向がある。今後もインターネットの 加入者数は増加すると予想され、オンラインゲーム市場はさらに拡大すると考えられる。 最後に「タイ」について。現在タイは高成長を続けている。近年の経済成長率とインター ネットの普及率をグラフに表してみた。 図 2-12 タイと日本の経済成長率の比較 出典)成長率データ(ベトナム)BRICs辞典 14 ベトナムと日本の経済成長率の比較 10 8.46 8 6 6.79 4 2.82 2 7.08 6.9 0.18 0 0.26 7.34 7.79 8.44 6.78 6.31 8.23 5.32 1.41 2.74 5.75 3.96 2.36 1.93 成長率(ベトナム) 2.04 -2 成長率(日本) -0.47 -1.17 -4 -6 -6.28 -8 図 2-13 タイのインターネット普及率 タイのインターネット普及率 (万人) % 2500 3.39 4 3.5 2000 1500 2.66 3 2.5 1.94 2 1000 2296 500 加入者数 普及率 1.5 1 1793 1298 0.5 0 0 2007年 2008年 2009年 出典)世界通信事情より オンラインゲームサービスが早期から展開されてきた。そのため、オンラインゲームを中 14日本の成長率データはベトナムと同じものを使用 29 心に拡大を続け圧倒的な強さを誇っている。TDCWP によれば 2008 年時点で 90 億バーツ (254 億円)の市場規模があった。2011 年現在は 103 億円バーツ(288 億円)まで市場規模 が拡大している。 図 2-14 タイのゲーム市場 タイのゲーム市場 120 103 100 80 64 60 40 40 20 12 13 携帯用ゲーム機 PCパッケージ 6 0 オンラインゲーム モバイル 家庭用ゲーム機 % アーケード 出典)ファミ通白書 2011 インド・ベトナム・タイなどへの進出は可能なのか。ということだが、私は十分に進出に 可能だと思う。その理由として高い成長率とインターネットの普及率があるからだ。 2008 年のリーマンショックにより、先進諸国が影響を受けるなかインドは 6%、ベトナム は 5%と高い成長率を保持した。タイは一時的にマイナスに転じたが、翌年には 7%台まで 回復した。マイナスに転じた原因として上げられるのが日本だ。タイには多くの日系企業 が進出しており、日本とタイは経済的に密接な関係にある。そのため日本の景気悪化に伴 い、経済成長率が影響を受けたと考えられる。その証拠に日本とタイの経済成長率の推移 グラフは非常に酷似している。今後もインド・ベトナム・タイの経済成長が続き、それに 比例してインターネットの普及率も増加すると考えられる。そのためこれらの国にはまだ 伸び白があり、多くのビジネスチャンスが眠っている。しかも日本が得意とする、家庭用 ゲーム機市場はまだ成長が見込める。以上の理由からまだ日本には多くのビジネスチャン スがあり、十分進出する価値のある市場だと言える。 30 3章「アジア経済(市場)への進出にあたってのハードル」 3.1 海外勢に対する事実上の進出規制 中国政府はオンラインゲームに対し、厳しい規制を実施している。その背景には青少年 に対し、有害な内容を含んだゲーム存在やオンラインゲームのやりすぎで、日常生活に支 障をきたす青少年の増加し、社会問題化したためだ。そのため中国政府はオンラインゲー ムに対し 2010 年 8 月 1 日に「オンラインゲーム管理暫定弁法」を施行した。法律の中身は 主観部門の明確化・内容の規制・未成年者への対策・リアルマネー取引の禁止・利用者の 権利の保護がある。中でも日本企業を悩ませたのが、未成年者への対策の熱中防止を定め た部分だ。ロール・プレーイング・ゲームの場合、開始時間から 3 時間までは経験値・ア イテムは通常通りの数が取得できるが、3~5 時間の間は数が半減、5 時間以上になると取 得不可能なるようにメーカー側が設定しないといけない。これが日本企業の中国に進出に 大きな障壁となっている。このため、日本企業の中国に進出するためには現地企業との連 携や合弁会社の設立をしなければならない。日本企業が独自に進出することはできないの だ。 さらに合弁会社の設立をし、進出したとしても中国でゲームを販売するには乗り越えな いとならない壁が存在する。行政機関である新聞出版総署と文化部の審査を受け、経営許 可を得なければならないという問題もある。しかも明瞭でない部分が多く、実際にゲーム を申請してみないとわからない部分が多数存在する。これらの問題により日本を含む海外 勢は事実上の参入規制を受けている。 3.2 出遅れた日本は勝てるのか 考察 1995 年には世界シェア 7 割を占めていた日本だが、2011 年現在そのシェアを 3 割まで落 ち込んでいる。その原因として上げられるのが「海外作品のクオリティーの向上」 「権利問 題による新規参入の難しさ」 「国内ソフトのガラパゴス化」の 3 つに加え 7 割というシェア にあぐらをかきシェアの死守を怠ったことが原因だと私は考える。あぐらをかかず、新し い戦略を打ち出していればこんなことにはならなかっただろう。この 3 割まで落ち込んだ シェアを回復させる為にはアジアに進出することだと考える。アジアに進出をする理由 としては「著しい経済発展」 「経済発展に伴うインターネットの普及」があげられる。イン ターネットの普及により、オンラインゲーム・SNS が浸透しており毎年右肩上がりの成長 を続けている。近年中に頭打ちをするのではないかと、見る専門家もいるが私はまだ頭打 ちには早いと思う。何故ならば、アジアの総人口に対し現在インターネットを利用してい る人の割合少なく伸び白が大きいからだ。しかし日本企業は海外勢に比べ出遅れている。 中国を始めとするアジアはパッケージソフト(家庭用ゲーム)の普及率よりオンライン ゲーム・SNS の普及率の方が高い市場だ。これはオンラインゲーム・SNS の普及率よりパ ッケージソフト(家庭用ゲーム)の方が高い日本市場と真逆の市場といえる。その為、早 31 めに戦略を打ち出し、市場を押さえるべきであったが本腰を入れる遅さと有効的な戦略打 ち出せなかった為、苦戦している。しかし私はこの状況はむしろチャンスと考える。 日本は出遅れた為にオンラインゲーム・SNS 市場で苦戦をしているが、アジアにおいて 日本が得意とするパッケージソフト(家庭用ゲーム)の市場はまだ規模が小さく十分に参 入が可能といえる。確かに「権利問題による新規参入の難しさ」などの壁は存在するがこ れは考え方次第だと私は考える。権利問題が発生するのはあくまでその国の作品である。 当然日本の作品の権利は日本企業が所有しているものであるため、日本の作品で新規参入 を行う場合、権利問題は発生しない。もしくは、完全なオリジナル作品で新規参入をする のも戦略の一つだと考える。この場合、1からのブランドの構築になるためしがらみに囚 われず自由な戦略を打ち出せる他、マンネリ化したゲーム市場への刺激にもなる。さらに 作品がヒットすれば、その作品で出遅れたオンラインゲーム・SNS 市場を開拓につなげら れると考える。 32 参考文献 日本経済新聞「巨大化する中国ゲーム市場、日本勢にチャンスはあるか」 2010 年 9 月 29 日 記事 日本経済新聞「任天堂社長の講演が象徴するゲーム業界の力関係」 2011 年 3 月 9 日 記事 日本経済新聞「ゲームソフトもガラパゴス化 日本勢、世界で存在感低下」 2011 年 7 月 5 日 記事 日本経済新聞「ゲームは産業革命に突入した 任天堂・岩田社長の苦悩」 2011 年 7 月 13 日 記事 日本経済新聞「成功体験に縛られる任天堂、3DS 値下げの真相 革新ジレンマに苦闘」 2011 年 8 月 3 日 記事 産経新聞「ゲーム業界 王者交代 グリー、モバゲー 任天堂超え」 2011 年 8 月 13 日 記事 日本経済新聞「日本企業は延長線上の戦略では生き残れない」 2011 年 8 月 17 日 記事 東京新聞「ゲーム機 2 社苦戦スマホ人気で苦肉の値下げ」 2011 年 8 月 18 日 記事 日本経済新聞「ソーシャルで息吹返す国内ゲーム市場~勝敗を分ける変化の先取り」 2011 年 9 月 21 日 記事 日本経済新聞「イノベーションから見る日本のソーシャルゲームの未来」 2011 年 12 月 28 日 記事 NHK スペシャル「世界ゲーム革命」 2010 年 12 月 12 日 放送(NHK) ワールドビジネスサテライト(WBS) 2011 年 8 月 12 日 放送(テレビ東京) ワールドビジネスサテライト(WBS) 2011 年 8 月 18 日 放送(テレビ東京) カンブリア宮殿「異端者たちのビジネスルール」 2011 年 8 月 18 日 放送(テレビ東京) ファミ通白書 2011 株式会社エンターブレイン著 2011 年発行 改訂版 統計分析のはなし 大村 平 著 株式会社 日科技連出版社 2008 年 3 月 25 日 改訂版第3印発行 経済学コア・テキスト&最先端=6 コア・テキスト経済統計 谷沢 弘穀 著 株式会社 新生社 2006 年 1 月 10 日 初版発行 GAME WATCH「TGS フォーラムにてグリー田中社長が基調講演 GREE の特異性を活 33 かし、10 億人にゲームを届ける 」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110916_478011.html MONEY ZINE「不況はゲーム業界に影響しない クリスマス商戦で過去最高の売上か」 http://moneyzine.jp/article/detail/110365 4GAME.NET「中国ゲーム業界はどこに向かうのか? 中国・完美世界本社訪問・本格 的世界展開を目指す同社のビジョンを聞く」2011 年 6 月 4 日 記事 http://www.4gamer.net/games/128/G012832/20110602059/ 4GAME.NET「稼げるゲームはこう作れ。グリーが明かすセールスランキング NO.1 プ ロダクトの作り方」2011 年 9 月 8 日 記事 http://www.4gamer.net/games/127/G012735/20110908100/ サーチナ「GREE のやり方にユーザーの不満が爆発」2011 年 10 月 9 日(日)記事 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1009&f=national_1009_044.shtml SNS・ブログの問題点を知り正しく使おう http://www.siken-manabu.com/ ブルームバーグ「任天堂・自社機以外にソフト配給しない戦略不変出資先スマホ配信で」 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LNW2EW6K50XS01.html ファミ通 COM「日本と海外ゲーム市場の本質的な違いを徹底討論」 http://www.famitsu.com/game/news/1227171_1124.html 世界のモーニングスター「厳し過ぎる中国のゲーム規制、日本企業の進出に壁」 http://www.morningstar.co.jp/portal/RncNewsDetailAction.do?rncNo=507252 世界通信事情 http://g-ict.soumu.go.jp/index.html 中国進出ポータル http://www.chinaportal.jp/ Web で学ぶ 情報処理概論 http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/ 日本貿易振興機構 http://www.jetro.go.jp/indexj.html 34
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