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日本消化器外科学会 第 69 回日本消化器外科学会総会【2014 年 7 月】
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[RS-32] 要望演題 32:大腸癌イレウスの治療戦略 4
座長:幸田 圭史(帝京大学ちば総合医療センター外科)
日時:2014年7月17日(木)14:30∼15:20
会場:第13会場 (ホテルハマツ 2階 チェルシー)
RS-32-1 大 腸 癌 イ レ ウ ス に 対 す る 大 腸 用 ス テ ン ト で の Bridge to
Surgery
RS-32-2 大腸イレウスに対するステント留置と経肛門的イレウス管留
置の比較検討
斉田 芳久:1、榎本 俊行:1、高林 一浩:1、大 絢子:1、長尾 さやか:1、中村 陽
一:1、渡邊 良平:1、渡邉 学:1、長尾 二郎:1、草地 信也:1
1:東邦大学医療センター大橋病院 外科
熊本 幸司:1、増田 穂高:1、田村 佳久:1、山岸 農:1、早崎 碧泉:1、藤井 幸治:1、
松本 英一:1、高橋 幸二:1、宮原 成樹:1、楠田 司:1
1:伊勢赤十字病院 外科
目的:閉塞性大腸癌の治療では早急な診断とともに閉塞の治療,解除そして大腸癌手術
【目的】2012 年 1 月より大腸ステント留置が保険適応となった.このため当院では大
の根治性と手術の安全性向上を考えなければいけない.当科では:閉塞性大腸癌症例は
腸イレウスに対し,緊急手術や人工肛門造設などの過大侵襲を回避するため,術前処置
緊急大腸内視鏡で診断をつけ,そのまま Bridge to Surgery(BTS) 目的で大腸ステント
として経肛門的イレウス管留置術を施行していたが,2012 年からはステント留置術を
留置術を行っているのでその方法と成績を報告する.
導入している.そこで,両者の術前,術後合併症や安全性等の比較検討を行った.
対象と方法:1993 年から 2013 年まで大腸癌イレウスに対して大腸用ステントを使用し
【方法】2008 年 1 月から 2013 年 8 月までに 55 例を大腸イレウスと診断し,うち 18
た症例の臨床的成績を分析した.
例にステントを留置 (以下 S 群),37 例に経肛門的イレウス管を留置 (以下 CR 群) し
結果:1993 年から 2013 年までに 187 例の大腸ステント症例を経験,BTS 目的では
た.両者の術前合併症,術前経口摂取の有無,手術時間,出血量,術後合併症,術後経
128 例の大腸癌イレウスに対して施行した.そのうち 118 例 93% に挿入可能 (技術的
成功率) であった.留置時合併症としては穿孔 4 例 3%,逸脱 3 例 2% であった.留
置症例は 99% で狭窄解除が可能であり,臨床的成功率は 91% であった.大腸ステン
ト安全手技研究会の提唱する CROSS 大腸閉塞スコアは,大腸ステント留置前は全例
減圧処置を早急に必要とする 0 であり,ステント留置後は 2 例以外が自覚症状無く経
口摂取可能な 4 まで改善していた.大腸ステントの術前留置期間は中間値 7 日間,平
均 8.5 日であった.術後合併症はステント留置例では 8% で,留置不可症例の 33% と
比較して低率であり,死亡率はステント留置例では無かったが,留置不可症例で 1 例
8% に死亡例と認めた.また人工肛門造設率もステント留置例では 8% と留置不可症
例の 67% と比較して非常に低率であった.
結論:大腸癌イレウスに対する大腸用ステント留置術は早急な閉塞解除とともに良好な
術後成績を可能とし,人工肛門造設率を減少させる有効な手技でありよりいっそう普及
していくと思われる.
口摂取開始日数,在院日数等を比較検討した.
【結果】狭窄部位は S 群では,S 状結腸 8 例,横行結腸 6 例,直腸 2 例,上行結腸と
下行結腸にそれぞれ 1 例であり,CR 群では,S 状結腸 19 例,下行結腸,直腸にそれ
ぞれ 7 例,横行結腸 3 例,上行結腸 1 例であった.減圧開始後,術前合併症は S 群
では留置後大腸穿孔を 1 例,CR 群では 3 例に留置後大腸穿孔を,1 例に虚血性腸炎
の併発を認めた.留置後手術までの間の食事摂取は S 群では 15 例が摂取しており,
CR 群では 7 例が水分のみ摂取している.手術時間,出血量,術後経口摂取開始時期,
ドレーン抜去日数は両群で差は認めなかった.また,術後合併症は,S 群では認めず,
CR 群では誤嚥性肺炎,創感染,吻合部縫合不全等を 10 例に認め,うち 1 例は誤嚥性
肺炎から死亡している.また,ステント留置後,腸管減圧や腸管浮腫軽減により,腹腔
鏡下手術の適応拡大が可能となり,5 例に腹腔鏡下手術が可能であった.
【結論】ステント留置は,2011 年 7 月にようやく米国製の大腸用ステントの薬事認可
が承認され,2012 年からは保険収載の上で,全国的に使用可能となった.当院での使
用経験は 18 例とまだ少ないが,経肛門的イレウス管留置群と比較し,有意差はないも
のの現在のところ合併症等認めていない.また緊急手術や人工肛門造設などの過大侵襲
を回避するための低侵襲かつ有効な手技と考えられ,手術成績の向上,患者の QOL の
向上とともに,医師・医療従事者の QOL の向上にも寄与している.しかし,ステント
による腫瘍への機械的刺激が,腫瘍進展を助長し予後に悪影響を与えないか問題もある
ため,今後も症例を蓄積し,検討する必要がある.
RS-32-3 当院での大腸癌イレウスに対する術前大腸ステント使用経験
小西 健:1、奥山 正樹:1、平岡 和也:1、中川 朋:1、金 致完:1、遠藤 俊治:1、山
田 晃正:1、西嶌 準一:1
1:東大阪市立総合病院 外科
RS-32-4 ステント挿入後に腹腔鏡下結腸切除を行い周術期口腔ケアと
ERAS プロトコールで管理することの有用性
北川 一智:1、須知 健太郎:1、米花 正智:1、甲原 純二:1、吉岡 裕司:1、松井 道
宣:1
1:京都九条病院 外科
2012 年より大腸用ステントが保険収載された.それに伴い当科では大腸癌イレウスの
症例に対しては緊急手術を回避する目的で,大腸内視鏡で診断をつけそのまま Boston
社製 Wall Flex Colonic Stent を用いて Self-Expandable Metallic Stent(SEMS) 留置
閉塞性結腸癌に対する治療として形状記憶合金のステントを挿入した後に手術を行うこ
術でイレウス解除を行い,待機的に手術を行っているのでその成績を報告する.
行した症例に周術期口腔ケア (歯科医師による術前,術後の口腔ケア) と ERAS プロト
2012 年 3 月から 2013 年 11 月までに大腸癌イレウスに対し術前に SEMS 留置術を
行った症例は 22 例あった.全例腹部造影 CT にて大腸の腫瘍とその口側腸管の拡張
コールを用いた周術期管理を行なっている.今回,通常の結腸癌に対する腹腔鏡下結腸
との有用性が報告されている.当院ではこのステント挿入症例に腹腔鏡下結腸切除を施
切除の症例と,ステント挿入後の症例との周術期管理について比較検討を行ったので文
を認め,大腸内視鏡検査にて腫瘍による狭窄のため口側腸管の観察が困難であることを
献的考察を含めた報告を行う.【対象】2012 年 10 月から 2013 年 12 月までの 14 ヶ
確認し SEMS 挿入を行った.男女比は 11:11,平均年齢 69 歳,狭窄部位は,上行結
月間にステント挿入後に腹腔鏡下結腸切除を施行した閉塞性結腸癌の 8 例を A 群とし
腸 5 例,横行結腸 4 例,S 状結腸 11 例,RS1 例,Ra1 例 であった.腫瘍による狭窄
て,同時期に施行した通常の腹腔鏡下結腸癌の症例 38 例を B 群とした.A,B 群と
長は平均 3cm,全例に径 22mm のステントを使用し,ステント長は 6cm が 19 例,
もに周術期口腔ケアと ERAS プロトコールを用いて周術期管理を行った.患者背景,
9cm が 3 例であった.
全例に留置可能 (留置率 100%) であった.留置時の合併症は口側への逸脱が 1 例あっ
たが,さらにステントを追加し recovery しえた.留置後 2 例に穿孔を認め緊急手術
を認めた.ステント留置により全例で腸閉塞が解除され食事が再開された.ステント留
手術,術後について比較検討を行った.【結果】ステントを留置例の 3 例に閉塞性腸炎
置に伴う合併症を認めなかった.ステント留置より手術までの期間は平均 15 日間で閉
を施行したが,穿孔例はいずれも上行結腸癌の症例で腫瘍口側が穿孔しており,ステン
塞性腸炎を伴う/伴わない症例の平均はそれぞれ 19.3/11.2 日であった.ステント留置
トが原因とは考えられなかった.待機的に手術を施行した症例では全例イレウス解除が
例と通常の症例の比較であるが,背景因子は年齢,性別,ステージに 2 群間に差はな
えられ食事摂取可能となった.
かった.手術因子では合併切除を A 群で 2 例 (子宮,膀胱) 行なっており,手術時間
術前留置期間は平均 16.3 日であった.開腹手術 8 例,腹腔鏡手術 14 例中 2 例が開
腹移行となった.19 例に一期的吻合を行い 3 例は人工肛門造設を行った.
(平均 A 群 303 分,B 群 269 分):,出血量 (A 群 178ml,B 群 71ml) ともに A 群が
有意に高値であった.ステント留置した 1 例で術後胆嚢炎を合併した.術後因子では
術後合併症は肺炎が 1 例,SIADH が 1 例,腹腔内膿瘍が 2 例,表層 SSI が 1 例あっ
ドレーンの留置期間,退院可能日数,術後在院日数に有意な差を認めなかった.
【考察】
たが,縫合不全は認めなかった.術後平均在院日数は 22 日であった.病理組織所見の
ステント留置を行った症例は手術時間や出血量といった手術因子において通常の症例に
結果は,StageII が 6 例,IIIa が 6 例,IIIb が 4 例,IV が 6 例であった.
比べて侵襲が高いと考えられた.しかし,術後の経過は両群間で有意な差を認めなかっ
大腸癌イレウスに対して SEMS 留置を行うことで,待機的に手術を行うことができ早
た.これはステントにより腸閉塞が解除された後に,周術期口腔ケアと ERAS プロト
急な診断とともに低侵襲性と患者 QOL 向上など良好な短期成績を可能とすることがで
コールを行うことで栄養状態や免疫力の改善が認められたためと考えられた.【結語】
きた.一方で適応症例の選択を十分に考慮する必要も考えられた.今後症例を積み重ね
ステント留置症例に対しても医科歯科連携を含む他職種での周術期管理が通常の結腸癌
検討したい.
と同様に重要であると考えられた.
第69回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
日本消化器外科学会 第 69 回日本消化器外科学会総会【2014 年 7 月】
RS-32-5 大腸ステントによる大腸癌イレウスの治療戦略
曽我 耕次:1、西村 幸寿:1、西尾 実:1、高 利守:1、中川 登:1
1:社会保険神戸中央病院 消化器外科
【目的】大腸癌イレウスは緊急性の高い疾患であるにもかかわらず未だ確立されたもの
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RS-32-6 閉 塞 性 大 腸 癌 症 例 に 対 す る stent-laparoscopic approach
(sLAP) の有用性
松田 明久:1、松本 智司:1、瀬谷 知子:1、鶴田 宏之:1、櫻澤 信行:1、高橋 吾郎:1、
菊池 友太:1、原 絵津子:1、宮下 正夫:1、内田 英二:2
1:日本医科大学千葉北総病院 外科、2:日本医科大学付属病院 消化器外科
はない.われわれは経肛門イレウスチューブ挿入による減圧で一期的根治手術を行って
きたが,絶飲食の継続に伴う全身状態の悪化やイレウスチューブの閉塞・自己抜去など
【緒言】閉塞性大腸癌の治療方針決定にはタイミング,安全性,根治性,QOL など種
を経験し 2013 年 4 月から CROSS score0 または 1 の大腸癌イレウスに対しては金
々の要因を考慮する必要がある.昨年,本邦においても大腸ステントが保険収載された
属ステントを留置し待期手術 (BTS) を行う方針とした.13 例に施行した短期成績を報
ことで閉塞大腸癌に対する治療戦略に大きな paradigm shift が起こりつつある.現
告する.
在,当科においてもステント挿入による Bridge to surgery(BTS) を原則とし腹腔鏡手
【対象と方法】2010 年 4 月より 2013 年 12 月までの大腸癌手術症例 288 例中 CROSS
術 (stent-laparoscopic approach: sLAP) を基本方針としている.【方法と結果】閉塞
score0 または 1 と判断された 56 症例を対象とした.イレウスチューブを挿入してい
た 2013 年 3 月までをチューブ群,大腸ステントを挿入した 2013 年 4 月以降をス
テント群として比較検討した.年齢:46 歳から 90 歳 (平均 70 歳).性別:男女比は約
2:1.ステントは WallFlex2 例,Niti-S11 例.ステント挿入に際して,臨床的成功率は
87% で挿入に伴う合併症は見られなかった.ステント挿入後は全例で常食を摂取し全
大腸カメラが施行されており,46%(6 例) で一旦退院されていた.ステント留置期間は
中央値 17 日 (11-45 日).
性大腸癌手術症例のうち,BTS 症例 (12 例) を経肛門減圧管挿入症例 (50 例) と比較
【結果】年齢,男女比,病変部位,術式,ステージ,手術までの平均日数に有意差は認め
られなかった.腹腔鏡施行率は 56% と 92% でステント群が有意に高く,術後在院日
し,BTS の有用性を検討した.BTS 群および経肛門管群における減圧デバイス挿入成
功率,臨床的減圧成功率,穿孔率はそれぞれ (100% vs 90%; 100% vs 78%; 0% vs 6%)
であった.BTS 群は左側結腸 9 例,右側結腸 3 例でステント挿入後平均 2 日目に食事
摂取可能となり全例待機的に手術施行し得た.使用ステントは Niti-S 9 例,WallFlex
3 例であった.LAP/Open 比は 11:1(他臓器合切のため) で,LAP の 1 例は減圧不良
ではなく腫瘍因子により Conversion となった.切除標本による検討で,口側腸管の
拡張は経肛門管群に比べ BTS 群で有意に改善していた.BTS 群は経肛門管群に比べ手
術時間は長く,縫合不全・術後合併症発生率に有意差なく,術後在院日数は短かった.
数 (中央値) は 22 日と 10 日でステント群が有意に短かった.ストーマ造設率は 8 例
【結論】BTS の長期予後は不明であり今後のさらなる症例の蓄積が必要であるが,ステ
と 0 例でステント群が少ない傾向を認めたが統計学的な有意差は見られなかった.ス
ントの良好な減圧効果を生かした sLAP は本邦における現在の標準治療である経肛門
テント留置群で狭窄部以外に大腸癌が発見され症例が 2 例,早期胃癌が 1 例認められ,
減圧管に変わる可能性がある.
大腸癌 1 例は術前 EMR 施行,その他 2 例は同時切除を行った.
【結語】大腸癌イレウスの治療戦略として術前大腸ステント留置術は有用で今後第一選
択になりうる.
第69回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery