「赤毛のアン」から見出す英語の世界

「赤毛のアン」から見出す英語の世界
3年B組21番 桶谷 弥生
目次 1 動機
2 結果 ①直訳と意訳
②赤毛のアンについて
③赤毛のアンの訳のしかたを比較
3 考察
4 感想
I have been interested in “Anne of Green Gables” before. And, I wanted to try how much I could
translate the original work. So I examine it. The way is compare the original work with Japanese
translation. I came to the conclusion that we need to translate the passage freely, instead of literally.
1. 動機
教科書の本文を自分で訳していると、おかしな日本語表現だなと感じたことはないだろうか。私た
ちが普段している訳し方は、直訳である。しかし、直訳だとほんの少しのニュアンスの違いをうまく
表現出来ない時がある。では、外国の映画の字幕や日本語訳された小説はどうだろうか。違和感なく、
こなれた日本語になっている。それは、なぜなのか今回調べてみようと思った。また、母の影響で好
きになった「赤毛のアン」の物語が後世まで長く好まれている理由、村岡花子さんと松本侑子さんの
2 人の訳者が訳した「赤毛のアン」と、私が直訳したものではどこまで差が出るのかなど不思議に思
ったことを研究した。赤毛のアンを通して見出す英語の世界は、どんなものなのだろうか?
2. 結果
★外国の映画や小説、曲の歌詞などがこなれた日本語になっている理由は、
「意訳」が存在するから
(直訳と意訳について)
・直訳…違う言語に翻訳する際に原文の文法構造や単語を忠実に再現する手法。
(長所)原文に書かれている内容が、そのまま「直」に表すことができる
(短所)日本語の表現として違和感がある
・意訳…原文の一語一語にとらわれず、全体の意味やニュアンスを組みとって翻訳する手法。
(長所)自国語(訳する語)の自然な表現に近くなる
(短所)原文にない情報が付け加えられていたり、原文にある情報が削られていたりして、原文と
意味・内容が少し異なった訳文になっている
(赤毛のアン)
赤毛のアンは、カナダの作家「L・M・モンゴメリ」が 1908 年 6 月に発表した長編小説。モン
ゴメリは新聞記事で読んだ「男の子と間違えて女の子を引き取った話。
」に着想を得て、この作品
を書いた。彼女は、カナダのプリンス・エドワード島の田舎で育った自身の少女時代も作品に投
影した。
<登場人物>
アン・シャーリー(Anne Shirley)
この物語の主人公。グリーンゲイブルズ(アンが住むことになるカスバード家の屋号)の老兄
妹に引き取られることになった想像力豊かでお喋り好きな女の子。
マリラ・カスバード(MarillaCuthbert)
グリーンゲイブルズに兄のマシュウと 2 人で住む。少し口うるさくて堅苦しいところがあり、
結婚していないので突然やってきたアンをただのお喋り好きな女の子だと思っていたが、だん
だんアンの魅力に引き込まれていく。
マシュウ・カスバード(Matthew Cuthbert)
マリラの兄。極度の女性恐怖症。アンを引き取った時は 60 歳。アンとであったその日からアン
の魅力に引き込まれ、アンの育て親となる。
ダイアナ・バリー(Diana Barry)
グリーンゲイブルズの向かいの丘に住むアンと同い年の黒髪の女の子。アンの親友。
ギルバート・ブライス(Gilbert Blythe)
アンのクラスメイト。背が高くて、ハンサムで女の子に人気がある。女の子にいたずらするの
が好きで、アンの髪の色を「ニンジン」と言ってしまい、5 年近く口を聞いてもらえなかった。
将来、アンの旦那となる。
<主な話の流れ>
舞台は、カナダのプリンス・エドワード島。アヴォンリーに住むマシュウとマリラの老兄妹は、手伝
いに男の子を欲しがっていた。しかし、仲介人の手違いで、孤児院からは 11 歳のアンがやってくる。最
初、送り返そうとしたマリラはアンの空想力に「退屈しないだろう」ということでアンを育てることを
決心。最初はカンシャク持ちだったアンだが、マリラの教育により、改善していく。アンは、ダイアナ
という年の近い腹心の友を手に入れる。
そして、アンの新たな生活が始まる。学校に入学したが、美少年であるギルバートに赤毛のことを「に
んじん」と言われ頭を一撃したり、ダイアナをお茶に招待したが間違ってぶどう酒を飲ませてしまい、
ダイアナの母から絶交を言い渡されたりする。ギルバートとは競うように戦い、二人は常に、成績がト
ップだった。そんなあわただしい毎日が過ぎ、アンは上の学校であるクイーン学院へ行くために、猛勉
強を開始。その甲斐あってか無事に合格。1 年間勉強し、優秀生徒一人が受けられるレドモンド大学へ行
くためのエイブリー奨学金を手に入れる。
しかし、アンをとても可愛がってくれたマシュウが死んでしまう。また、マリラは目を悪くし、失明
の危機へと至る。アンは奨学金を辞退。アヴォンリーで先生として勉強を教える決心をする。そして、
ギルバートとも仲直りし、新たな人生を歩みはじめる。
(赤毛のアンの訳を比較する)
村岡花子さん、松本侑子さん、私の 3 人が訳した赤毛のアンを比べる。
① 村岡花子訳
② 松本侑子訳
③ 私(直訳)
(1)ロバート・ブロウィングさんの言葉を引用
The good stars met in your horoscope, Made you of spirit fire and dew. (Robert Browing)
星座情熱
露・しずく
① 天空の導きの星が汝の運命を定め、活気と火と露もて汝の魂を創り給いし
② あなたは良き星のもとに生まれ、精と火と露より創られた
③
あなたの運勢で出会う良き星座は、精神と情熱と涙を創る
*訳す人によってその文の印象が大きく異なる
(2)2章:意訳
Had he looked he could hardly have failed to notice the tense
ほとんどない
失敗した
緊張して
rigidity and expectation of her
硬直
期待
attitude and expression.
態度
表現・表情
① もしそちらに目を向けたならきっと、その子の異様に緊張した態度や表情に気がつくはずであった。
② もし見ていたなら、女の子の様子や顔つきが、緊張してこちこちになりながらも期待に満ちているこ
とに気づいただろう。
③ もし彼が見ていたなら、彼女の緊張して硬直した態度や、顔つきにあらわれている期待にほとんど気
づかないことはなかった。
*③は直訳で、気づかないことはなかったと否定の否定をしている。つまり遠まわしに肯定の意味を表
している。そして、①と②は気づくはずであったと肯定の文になっている。①と②は意味をわかりやす
くするために訳し方を工夫している。
(3)22章:意訳
Now and then you might see a rabbit skipping across the road if you were quite –which , with
Anne and Diana, happened about once in a blue moon.
① ときおり、じっと静かにしているとうさぎが横切って跳んでいくのが見られ、たまにはアンとダイア
ナもそれにつきあたることがあった。
② 時折、兎があらわれ、道を横切って跳ねていくのだった。もっとも、アンとダイアナが静かに歩いて
いることなど、滅多にないのだが。
③ 時折、もしあなたが静かにしていたなら、道を横切ってかけていくウサギを見たかもしれない。アン
とダイアナは青い月夜に一度出くわした。
*村岡さんは、原文をそのまま訳している。松本さんは原文からアンとダイアナが普段おしゃべりをし
ながら歩いているという状況から普段2人がおしゃべりして賑やかに歩くと想像しながら訳に追加して
いる。
(4)15章:単語の意味のとり方
Marilla that is the first compliment I have ever had in my life and you can`t imagine what a
お世辞・ほめ言葉
strange feeling it gave me.
① マリラ、あたし生まれてはじめてほめられたのよ。なんともいえない感じだった。
② マリラ、お世辞を言われたのは、生まれて初めてよ。不思議な感じだったわ。
③ マリラ、今までの人生の中で初めてほめられたのよ。私がなんて不思議な気持ちになったか、あなた
には想像できないでしょう。
*この文の前のストーリーは、生まれて初めて学校に行ったアンの鼻が、とても素敵だと話していた同
級生のうわさを友達のジェーンがアンにこっそり教えてくれたという場面である。それを聞いたアンが
マリラに言った会話文であるが、
「compliment」には①賛辞と②お世辞の 2 種類の意味がある。村岡さ
んは賛辞として本当にほめられたと訳している。松本さんは、お世辞と訳したから皮肉が込められた意
味になっている。
(5)5章:単語の意味のとり方
The long platform was almost deserted:the only living creature in sight being a girl who was sitting
さびれた
on a pile of shingles at extreme end.
積んだ砂利・屋根板端の
① 長いプラットホームには人気はなく、生き物といえばホームの一番はずれの砂利の山の上に女の子が
1人、座っているだけだった。
② 長いプラットホームは閑散としていた。見たところ、人と言ったら、女の子がホームの端に積んだ屋
根板に座っているだけだった。
*「shingle」には、2種類の意味があり、村岡さんは「砂利」
、松本さんは「屋根板」と訳している。ちな
みにテレビアニメでは、村岡さんの「砂利」の山の上に座っている絵が描かれていた。
3考察
赤毛のアンの物語は、カナダのプリンス・エドワード島の豊かな自然を背景に繰り広げられている。
この本の特徴として周りの自然の様子が詳しく書かれている。また、本文中に出てくるアンの会話文は、
他の登場人物とは比べ物にならないほど長く、一つ一つの言葉を丁寧に選んでいるのが伝わってくる。
アンは自然の魅力を言葉にし、読者に様々なことを訴えかける。色鮮やかな自然、アンが見せるたくさ
んの表情や引きつけられる表現力。これらが「赤毛のアン」がモンゴメリさんの死後も好まれ、読み継
がれている理由だと考えられる。そして、
「赤毛のアン」の訳し方を比べてみて、ある結論にたどりつい
た。まず、村岡花子さんの文は直訳をしており、松本侑子さんの文は意訳だということである。村岡さ
んの文章は少し日本語としてはわかりにくいが、その分原書の内容により近いものになっている。その
逆に松本さんのものはこなれた日本語になっているが、その分原文とは少し違った意味になっていた。
「赤毛のアン」を 1 つの小説として読むときには、松本さんの本の方が読みやすい。しかし、
「赤毛のア
ン」の原文を読んだことがある人にとっては、身近に感じることができ、村岡さんの内容の方がより忠
実に再現されているので読んでいて楽しいかもしれない。翻訳する時には、内容を優先するか、こなれ
た文章にするのかの使い分けが翻訳家の腕の見せどころであり、実際内容を決めるポイントとして大切
になってくる。
4 感想
赤毛のアンの翻訳は、かなり大変だった。難しい単語や知らない文法がたくさんあり、とても時間がか
かった。しかし、苦労した分訳し終わった時には達成感があった。そして、何よりも、翻訳家の村岡花
子さんと松本侑子さんは、それぞれに素晴らしい訳で英文を日本文にして、私達に伝えてくれているこ
とがわかった。さらに主人公のアンはおしゃべりで明るくて、少し面倒な所もあるが、彼女の表現力に
は本当に引き付けられる。私は、赤毛のアンの良さをもっと知りたいし、また伝えていきたい。やはり、
英語の世界は魅力に満ちている。
参考文献
Anne of Green Gables
L.M.Montgomery
赤毛のアン
村岡花子訳
赤毛のアン
松本侑子訳