教室概要 - 大阪大学医学部医学科教育センター

目 次
部局名
講座名
教室名
掲載順
医学部医学科
解剖学講座
神経細胞生物学(解剖学第一)
1
医学部医学科
解剖学講座
神経機能形態学(解剖学第二) 2
医学部医学科
解剖学講座
細胞生物学(解剖学第三) 3
医学部医学科
生理学講座
脳生理学(生理学第一) 4
医学部医学科
生理学講座
統合生理学(生理学第二)
5
医学部医学科
生化学・分子生物学
分子病態生化学(分子生物学)
6
医学部医学科
生化学・分子生物学
医化学(分子生理化学〔修士〕) 7
医学部医学科
薬理学講座
生体システム薬理学(薬理学第一) 8
医学部医学科
薬理学講座
分子・細胞薬理学(薬理学第二) 9
医学部医学科
病理学講座
幹細胞病理学(病理学) 10
医学部医学科
病理学講座
病態病理学(病理病態学) 11
医学部医学科
生化学・分子生物学
分子生体情報学(病理病態学〔修士
12
医学部医学科
感染症・免疫学講座
ウイルス学(微生物学)
13
医学部医学科
社会医学講座
環境医学 14
医学部医学科
ゲノム生物学講座
環境・生体機能学(環境医学〔修士
15
医学部医学科
社会医学講座
法医学 16
医学部医学科
社会医学講座
公衆衛生学(公衆衛生) 17
医学部医学科
生化学・分子生物学
遺伝学
18
医学部医学科
ゲノム生物学講座
放射線基礎医学 19
医学部医学科
感染症・免疫学講座
免疫制御学(腫瘍発生学) 20
医学部医学科
ゲノム生物学講座
神経遺伝子学
21
医学部医学科
ゲノム生物学講座
遺伝統計学
22
医学部医学科
感染症・免疫学講座
免疫細胞生物学
23
医学部医学科
感染症・免疫学講座
幹細胞生物学
24
医学部医学科
解剖学講座
分子神経科学(神経生理学) 25
医学部医学科
ゲノム生物学講座
遺伝子治療学 26
医学部医学科
社会医学講座
医の倫理と公共政策学
27
医学部医学科
放射線治療学講座
核医学(トレーサ情報解析学) 28
医学部医学科
健康スポーツ科学講座
認知行動科学
29
目 次
部局名
講座名
教室名
掲載順
医学部医学科
健康スポーツ科学講座
スポーツ医学
30
微生物病研究所
感染機構研究部門
(分子細菌学分野)
31
微生物病研究所
感染機構研究部門
ウイルス感染制御分野 32
微生物病研究所
感染機構研究部門
分子ウイルス分野 33
微生物病研究所
環境応答研究部門
情報伝達分野
34
微生物病研究所
難治感染症対策研究センター
ゲノム病原細菌学研究グループ
35
微生物病研究所
遺伝情報実験センター
遺伝子機能解析分野
36
微生物病研究所
附属感染症国際研究センター
感染症学・免疫学融合研究グループ
37
免疫学フロンティア研究センター
免疫グループ
自然免疫学
38
免疫学フロンティア研究センター
免疫グループ
免疫化学
39
免疫学フロンティア研究センター
免疫グループ
マラリア免疫学
40
免疫学フロンティア研究センター
寄附研究部門
免疫機能統御学
41
免疫学フロンティア研究センター
免疫グループ
実験免疫学
42
免疫学フロンティア研究センター
免疫グループ
感染病態
43
生命機能研究科
時空生物学講座 遺伝情報機能学(心生物学研究室) 44
蛋白質研究所
蛋白質高次機能学研究部門
分子発生研究室
45
連合小児発達学研究科 こころの発達神経科学講座
分子生物遺伝学
46
医学系研究科
独立准教授
細胞応答制御学
47
医学系研究科
独立准教授
分子行動神経科学
48
医学系研究科
特定講座
国際・未来医療学
49
1.解剖学講座神経細胞生物学(解剖学第一)
(島田
①
昌一
教授)
(1) 運動が脳の情動や記憶に及ぼす影響についての研究
運動を行うことは、循環器疾患、糖尿病、骨粗鬆症などの予防や改善に大きく貢献することは知ら
れているが、運動はまた脳の情動・記憶などの多くの神経系の機能にも様々な影響を与える。運動す
ることによって、海馬で新しい神経細胞が生まれる神経新生の増加が引き起こされ、抑うつ行動の減
少や記憶学習能力が向上することが知られている。しかし、この様な運動による脳の形態的変化や認
知機能の変化についてその詳細なメカニズムは未だ分かっていない。我々は、運動によって脳で遊離
が増加するセロトニンが、5-HT3イオンチャネル型のセロトニン受容体の活性化を介して、海馬で神
経新生を増やし、抗うつ効果を示すことを遺伝子改変マウスを用いて証明した。さらに5-HT3受容体
を発現している神経細胞と海馬の神経幹細胞との関係について研究を進めている。
(2) 恐怖記憶と外傷後ストレス障害(PTSD)の研究
我々は、事故や災害などで非常に危険な場面に遭遇すると恐怖を感じるが、この様な体験は恐怖記
憶として長期間記憶に残る。これは再び同様な状況に置かれた際に、いち早く危険から回避するため
に必要不可欠な記憶のメカニズムである。また、同様の恐怖体験を再び繰り返すとその恐怖記憶は強
化される。一方、以前に恐怖体験をしたのと同様な状況でも次からは安全であることが分かると恐怖
記憶は減弱、消去される。この様に恐怖記憶は獲得、保持、強化、消去などの一連のプロセスより構
成される。外傷後ストレス障害(PTSD)の発症には、この恐怖記憶のメカニズムの異常や障害が深く
関与している。我々はセロトニン受容体遺伝子改変マウスを用いて恐怖記憶の研究を行っているが、
その中でも5-HT3受容体ノックアウトマウスは恐怖記憶の獲得や保持には全く異常は無いが、消去の
みが行えないことを見いだした。このマウスはPTSDの有用なモデル動物であり、この動物を用いてさ
(3)
感覚器に特異的に発現する遺伝子の解析
らに詳細な恐怖記憶の消去のメカニズムやPTSDの発症機序について研究している。
感覚器は神経系に属するが、電磁波、音波、化学物質、物理的刺激、温度など様々な外的刺激を感
知する精巧な検出システムを持っている。これらの感覚機能に関連する遺伝子はそれぞれの感覚器で
特異的に発現し、その遺伝子の異常は感覚器特有の疾患に深い関わりを持っている。我々は感覚器に
特異的に発現する遺伝子のノックアウトマウスを作成し、聴覚、平衡覚、膀胱知覚、痛覚、味覚など
の感覚機能とこれらの分子との関わりについて研究している。
②
相談の上研究テーマを決め、その研究に参加する。実験手技として、形態学、分子生物学、生理学
などの手法を学べるが、実験の進行度合いに応じてそれぞれの技術を習得してもらう。できれば研究
結果をまとめることを目標とする。
③
解剖学の成績の良し悪しや予備知識の有無は問わないが、意欲と責任感のある学生を望む。予備知
識の無い方がかえって先入観にとらわれずに良い研究ができる場合がある。
④ 2名(MD研究者育成プログラム参加学生2名を除く。)
2.解剖学講座神経機能形態学(解剖学第二)
(佐藤
真
教授)
①
私たちの研究室では、中枢神経、特に前脳(大脳皮質、海馬など)の発生・発達の仕組みの解明に
取り組んでいます。最近では、シナプスの発達・機能にも興味を持ち研究を展開しています。そして、
発達障がいを含む、発生・発達の障害により生じる疾患の病態解明や治療に向けた研究を進めていま
す。以下に研究テーマを示します。
(1) 大脳皮質構築の仕組みの解明。最近は、特に長連合線維と呼ばれる、大脳皮質葉間(前頭葉と後頭
葉など)を結ぶ神経線維の回路形成の仕組みとその役割の解明に取り組んでいます。
(2) 大脳皮質からの出力路の形成の仕組みの解明。大脳皮質から大脳皮質外(皮質下といいます)に伸
びる神経線維の回路の形成の仕組みを分子レベルで解き明かしています。
(3) 自閉症様行動を示すマウスとその分子系の解析、治療への展開。自閉症の原因分子(その遺伝子変
異により自閉症となる)の一つとして良く知られるShank分子に結合する分子を同定しました。その
ノックアウトマウスを作製したところ、社会性の欠如など自閉症様の行動様式を示しました。作製
したマウスも用い、この分子系の機能、ならびにこの行動様式の改善方策の検討を進めています。
(4) ニューロンの局所翻訳のメカニズムの解明。成熟したニューロンでは、限られた種類のmRNAが樹状
突起に輸送され、翻訳に供されることにより、細胞体とは独立したタンパク質合成がおこなわれま
す(局所タンパク質合成)。特に記憶の場である海馬シナプス近傍ではαCaMKIIやグルタミン酸レ
セプターなど、シナプス伝達に関与する遺伝子のmRNAが翻訳装置とともに局在化することから、シ
ナプス応答の一部はシナプスにおいて自律的に翻訳されたタンパク質により制御されている可能
性が考えられています。そこで、樹状突起に局在するmRNAの中で、記憶や学習に大きな役割を果た
しているαCaMKII mRNAに着目し、その3’非翻訳領域に輸送の選択性に関わるシス領域を同定し、
輸送に関わるタンパク質の同定と機能解析をおこなうことで、mRNAの輸送システムの全容を解明し、
RNA輸送と翻訳制御機構のカップリングがシナプス結合の維持や改変、そして記憶の制御に果たし
ている役割を明らかにするべく研究を進めています。
②
その他、幾つか参加してもらえる可能性があるテーマがあります。相談の上、研究テーマを決めま
す。実験手技としては、形態学、細胞生物学、分子生物学に関連する手技を学べます。同時に、リサ
ーチマインドの涵養が一番大切と考えています。熱意のある学生は、研究室の一員として遇します。
③ 社会的な常識をもち、熱心に取り組む決意と責任感のある学生を希望します。配属終了後も、自分
のペースで良いので、研究を継続することを望みます。
④
2名程度
3.解剖学講座細胞生物学(解剖学第三)
(原田
彰宏
教授)
①
細胞の極性(方向性)は細胞の形づくりや機能に重要である。
例えば、上皮細胞は頂端側(apical)、側底側(basolateral)という極性を持つが、この極性は、酵素な
どの分泌や栄養の吸収などに重要である。同様に、神経細胞は軸索、樹状突起という極性があるが、それ
が神経伝達にとって必須である。このような極性を持つ細胞においては、色々な蛋白が、細胞内で方向性
のある輸送(極性輸送)によって目的地に運ばれることが必須である。現在、我々は主に極性輸送に関係
する下記の研究を行っている。
ノックアウトマウスを用いた、細胞の極性輸送のメカニズムの研究
当研究室では、極性輸送に重要と考えられる蛋白の遺伝子(SNARE 蛋白、rab 蛋白等)のノックアウ
トマウスを作成した。そのマウスを様々な細胞生物学的解析法(共焦点レーザー顕微鏡、電子顕微鏡を用い
た形態観察、GFP 融合蛋白を用いた生細胞における蛋白輸送の解析等)を用い、遺伝子改変マウス個体・
細胞において、極性輸送にどの様な変化が生じるのか解析している。更にこのような既存分子の解析だけ
でなく、細胞の極性輸送に重要な新規分子を同定しており、その遺伝子欠損マウスを作製・解析中である。
細胞の極性輸送やシナプス小胞形成機構の研究
上記の極性輸送を司る分子に結合する分子を LC-MS/MS などで同定することなどを通じて、上皮細胞や
神経細胞の極性輸送の全容を解析中である。
② 指導教官(原田など)と相談の上、主に上記の分野から研究テーマを選ぶ。
使用する技術としては、
分子生物学(ノックアウトマウス作製用のベクターの構築や、極性輸送に係わる蛋白質の精製同定等)
組織学(マウス組織の固定、光顕・電顕用の切片作成と観察等)
細胞生物学(細胞培養、RNAi、細胞の免疫染色、電顕試料作製等)
等ですが、やる気に応じてやれるだけの技術を指導するつもりです。
③ 阪大に入る学生には研究を行う能力は十分あると思うので、経験、知識は一切問いません。
むしろ意欲と責任感のある(無断で欠席したりしない)学生を希望します。色々と面白いことが出来る可
能性がある分野なので、それを面白がって続けてくれれば将来研究するしないに関わらず、よい経験にな
ると思います。
④
3名
4.生理学講座脳生理学(生理学第一)
(北澤
茂
教授)
①
脳生理学教室では、
「体験できる脳機能」の解明を目指した研究を進めている。例えば、左手で左の
目を覆って、右手の人差し指で右目を軽く押して見よう。外界は動いて見えるだろう。では、眼をあ
ちこちにきょろきょろと向けてみよう。外界は動かないのではないか。指で眼を押すと動くのに、脳
が眼を動かすと外界が微動だにしないのはどうしてなのか。「視覚世界安定化」は主要な研究テーマ
の一つである。もう一つ例を挙げよう。退屈な講義の1時間と、友達と騒ぐ1時間、どちらが長く感
じられるだろうか。答えは言うまでもないだろう。物理学的には同じ長さが、異なって感じられるの
はどうしてなのか。物理的な時間とは異なる尺度で過ぎる「こころの時間」はもう一つの重要な研究
対象である。これらの脳機能を解明するために、私たちは様々な手法‐人を対象とした行動や知覚の
実験、MRI を使った脳機能イメージング法や磁気刺激を使った外乱実験、さらにはサルを対象とした
神経生理学的な実験‐を駆使して研究を進めている。様々な実験手法を組み合わせた多角的なアプロ
ーチも本教室の特色といえるだろう。
②
基礎配属の研究として下記の 4 つのテーマを用意している。担当教員と話し合って、挑み甲斐の
ある問いを立てて、できる限り自由に主体的に研究に取り組んでほしい。
I. 人工知能入門:脳の中に「顔細胞」が「自然に」獲得される神経回路モデルを構築して検
証します。成功したら、
「背景座標系」が「自然に」獲得される神経回路モデルの構築に挑
戦します。(担当:北澤茂)
II. 眼球運動に伴う情報の空白を脳はどのように埋めているのか?
ン活動計測による解明 (担当:熊野弘紀)
サルのマルチニューロ
III.周辺視の運動知覚が視覚世界の安定性に果たす役割(担当:高橋俊光)
IV. 視線行動から外国語理解能力を推測できるか?
モデル化(担当:中野珠実)
文章読解時の視線行動の計測ならびに
③
実習期間中は熱心に取り組める意欲の高い学生を希望する。
④
MD 学生含めて 4 名
5.生理学講座統合生理学(生理学第二)
(岡村
康司
教授)
①
医学部の学生の時代に、研究現場で、たくさんの失敗を経験しながら新たな発見に遭遇するチャン
スを得ることは、医学研究者になる上でも、臨床家になる上でも、貴重な経験になるだろう。とくに、
生の生理現象をリアルタイムで捉える実験は医科学の基本でもあり、古典的な電気生理学的手法に加
えて、最近は画像化による手法が開発されるなど、大きな進展がみられている。当研究室では以下の
研究を行っている。
(1) 神経系細胞の機能
・脳内の環境の維持における、電気信号や pH 調節に関わる電位依存性プロトンチャネルの役割
(2) 電気信号を細胞内化学信号に変換する分子機構
・細胞膜の膜電位の情報を感知して細胞内へ情報を伝達する分子である電位依存性ホスファターゼ
と電位依存性プロトンチャネルの分子機械としての動作原理を、生化学、構造生物学、電気生理計
測、蛍光計測などにより明らかにする。
・これらの分子機構の原理をもとに膜電位を可視化したり、光などで操作する技術を開発する。
(3)
生体での新たな電気信号の役割
血球、精子、ニューロンでの電気信号による情報伝達の仕組みについて、分子から組織、個体レベ
ルまで包括的に理解する。(2)で開発する分子ツールを用いて計測を行い、まだ見ぬ現象を発見
することを試みる。
(4) 感覚情報処理機構の解析と再建
視覚をモデルにして、電気生理学的計測・光学的計測・行動学的計測により感覚情報がどのように
脳に伝えられ知覚に結びつくのかを解析する。さらにその知見を人工視覚による視機能再建に応
用する。
②
電気生理学的手法、イメージング法など、生きた細胞の生理機能(イオン輸送、電気信号、細胞内
シグナル)をリアルタイムで解析し定量的に研究するスタイルを学ぶ。実験では、その結果を気にす
るよりも、様々な工夫をしながら研究を進める経験を味わってほしい。分子生物学や生化学の手法も
取り入れ変異体分子の解析なども行うこともある。ラボの普段の活動である Journal Club(最近の論
文を紹介する)やプログレスレポート(各メンバーの研究のディスカッション)にも参加してもらい
ます。
③ まずは生の現象に親しんでほしい。カエルの卵細胞、ゼブラフィッシュ、マウスの培養細胞などを
実験に使う予定。
④
3名
6.生化学・分子生物学講座分子病態生化学(分子生物学)
(菊池
章
教授)
①
私達ヒトは多数の細胞から構成されていますが、個々の細胞が勝手に行動しては個体として生活を
営むことができません。体の中には、細胞間の接着や細胞外の情報(シグナル)により細胞が正しく
応答する仕組みが備わっています。これを細胞内シグナル伝達機構とよんでいます。この仕組みが破
壊されることが、癌や糖尿病、高血圧等の種々の疾患の発症原因になると考えられています。私達の
教室では、細胞の増殖や分化、運動等を制御する細胞内シグナル伝達機構の活性化機構と役割を明ら
かにし、その異常に基づく疾患の原因を解明して、新しい診断法や治療法を開発することを目指して
います。
現在は、Wnt(ウイント)シグナルを含む増殖分化因子シグナル伝達経路に注目して、これらのシ
グナルによる上皮の形態形成に関する解析を主として行っています。
Wnt は細胞外分泌タンパク質で、
Wnt により活性化される細胞内シグナル伝達機構は動物の発生、すなわち器官形成に必須です。現在
は、Wnt が他の細胞増殖分化因子とクロストークしながら、細胞がどのようにして組織や器官等の形
作りを行い、その維持機構が破綻すると、どのような病態と関連するかを明らかにしようとしていま
す。On-going のテーマには下記のようなものがあります。
(1) 細胞増殖分化因子ネットワークによる上皮形態形成と分化機構の解明
(2) Wnt と他の細胞増殖分化因子のクロストークによる細胞の接着と運動、極性制御機構の解明
(3) Wnt シグナルの異常と病態(癌、炎症、代謝)との関連の解明
(詳細は http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molbiobc/ を参考にして下さい。)
②
基礎配属実習では、教員とペアになって、まさに今、私達が取り組んでいる課題に一緒にチャレン
ジしてもらいます。その過程で、生化学的・分子生物学的なものの考え方や実験手技を習得してもら
います。私達の教室では PCR や DNA シークエンス、遺伝子クローニング、組み換え DNA 実験、ウエス
タンブロッティング、細胞培養等の実験が常時行われています。期間が限られていますので、たくさ
んの実験をこなせるわけではありませんが、少なくとも一つの実験手技に精通して、基礎配属実習中
に得られたデータをそのまま世界へのメッセージとして発信できることを期待しています。
最終日には基礎配属実習中に学んだことや実験結果を発表してもらいます。
③
シグナル伝達機構の解析は多くの疾患の理解に必要であり、実際に行っている実験内容は普遍的な
ものです。あまり、ハードルを感じずに教室に来て下さい。皆さんにとって、実り多いものにしたい
と思っています。何か新しいことを勉強したいという強いモチベーションをもった学生に是非参加し
てもらいたいと考えています。
④
3名
7.生化学・分子生物学講座
医化学(分子生理化学〔修士〕)
(高島
成二教授)
①
臨床経験が豊富な教官層を中心とする臨床応用を目指した基礎研究を行っている。研究を楽しむこ
とを大事にしている。
②
タンパク質を正確に定量・定性し、一つの生化学反応を熱力学的にとらえることが疾患の理解と新
しい治療法の開発にもつながる。将来に役立ち、臨床を行う上でも有用となる基礎生化学の技術と知
識を伝える。
③ 病態背景までほりさげて科学する医師を目指す学生を望む。
④
2名
8.薬理学講座生体システム薬理学(薬理学第一)
(金井
好克
教
授)
①
細胞膜上でアミノ酸の輸送を行うアミノ酸トランスポーターは、生体を構成する個々の細胞に栄
養素としてのアミノ酸を供給するほか、小腸や腎臓の上皮細胞層においては体内へのアミノ酸の吸
収を担っています。そのためその異常に起因する膜輸送の破綻は様々な病態を引き起こします。一
方で、多くのがん組織においては正常組織とは異なる特定のアミノ酸トランスポーターの発現が顕
著に亢進しており、がん細胞の高い増殖能を支えています。このことから、アミノ酸トランスポー
ターはがんの診断と治療の重要な創薬ターゲットとしても位置付けられています。さらに近年、ア
ミノ酸は単なる栄養素ではなく、細胞内代謝調節を担う中心的複合体であるmTORC1を活性化するこ
ともわかってきました。すなわち、トランスポーターが媒介するアミノ酸膜輸送は、細胞を取り巻
く環境情報を物質の移動に変換し、細胞の増殖や成長を制御する細胞内シグナル伝達の起点として
の役割も有することになります。そしてがんや糖尿病といった疾患においては、このmTORC1シグナ
ル系が破綻していることが知られ、アミノ酸シグナルの異常が病態形成の要因として想定されてい
ます。当研究室では、アミノ酸トランスポーター及びアミノ酸シグナルの生理機能および病態との
関連を包括的に明らかにし、疾患の診断・治療薬へと繋げることを目指して研究をおこなっていま
す。主な研究テーマとして以下のようなものがあります。
1.アミノ酸トランスポーターのがんにおける役割についての研究。
2.がん特異的アミノ酸トランスポーターを分子標的とするPET診断用プローブと抗がん薬の開発。
3.アミノ酸トランスポーターを起点とする細胞内シグナル系の解明。
4.細胞・組織特異機能形成におけるトランスポーターの寄与についての研究。
②
上記の主要研究テーマに限らず、トランスポーターに関する幅広い研究を行っています。分子・
細胞・組織・個体といった多階層を対象に研究を展開しているため、輸送活性の酵素学的な解析は
もちろん、膜タンパク質に特化したプロテオミクス解析、リン酸化プロテオミクス解析、メタボロ
ミクス解析、遺伝子ノックアウトマウスの作製、超解像顕微鏡観察など多様な最新の実験手技に触
れることが可能です。対象臓器、対象疾患も多岐にわたります。希望に沿って相談をしながら研究
テーマを決定し、教員からの助言と指導のもと学生には主体的に研究を進めてもらいます。
③
研究を進めるための努力を惜しまない学生を歓迎します。他の教室員とも協調しながら実験に取
り組み、基礎医学の研究の魅力に触れてもらいたいと思います。
④
3名
9.薬理学講座分子・細胞薬理学(薬理学第二)
(倉智
嘉久
教授)
①
本基礎配属は、薬理学、選択必修科目などの授業で学んだ様々な知識の重層化、深化を目的とし
ています。具体的には、細胞膜輸送体蛋白質(イオンチャネル、トランプポーター)を治療薬の作
用点や副作用点としてとらえ、その作用発現機構を解析してもらう予定です。また、高次の組織機
能に対する薬理作用の効果を、シミュレーションによって解析する研究も体験できます。
②
上記の研究テーマに関して担当者の指導のもとに実験を行い、さらに自らの工夫を加えて研究を
発展させることを目標にする。また、関連した文献を読み、研究分野の理解を深める。
③
教室の規則を守ること。実験に対して意欲のある人を歓迎します。
④
3名以内
10.病理学講座幹細胞病理学(病理学)
(仲野
徹
教授)
①
発生・分化過程では、塩基配列をともなわずに、遺伝子発現が子孫の細胞に伝達されるエピジェ
ネティック制御が重要な役割を担っている。エピジェネティック制御は、大きく、DNA のメチル化と
ヒストン修飾によるとされている。我々の研究室(以下 URL)では、(1)DNA 脱メチル化機構の解
析、(2)精子形成における small RNA、(3)生殖細胞の運命付けと分化、といった初期発生ならびに
生殖細胞の分化を主たる対象としながら、エピジェネティック制御の研究を展開している。
<http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/nakano/PGC7.html>
②
積極的に実験に参加することにより、科学の面白さや奥深さを実感してもらう。研究を通じて、
自分の頭で物事の本質を考える姿勢を身につけてもらいたい
③ 健全な好奇心と常識をわきまえた意欲的な人が望ましい。まじめに研究室に通ってくる人に限定
します。
④
3名
11.病理学講座病態病理学(病理病態学)
(森井
英一
教授)
①
教室は医学部附属病院病理部との一体運営がなされています。このことから、基礎医学実験に加
え、病理組織診断や病理解剖の実際を体験できる点が最大の特色です。
②
以下の3つの内容について、総合的に参加してもらいます。
(1) 病理学研究
当研究室では腫瘍の多様性について研究を行っています。腫瘍は通常集団で存在しており、腫
瘍を構成する細胞は一つのクローンです。ところが、 一つのクローンであるにも関わらず、腫瘍
細胞おのおのは、異なる性質をもっています。これについて、どのような腫瘍細胞が腫瘍のどの
部分に存在するか、腫瘍のまわりの環境がそのような細胞にどのような影響を与えているのか、
を中心に研究を行っています。配属学生には、各指導教官の研究テーマを分担する形で研究を行
ってもらいます。最終的に基礎的な病理学実験の手技について一通り習熟することを目標としま
す。
(2) 病理組織診断
実際の臨床現場においても行われている、病理組織診断を体験してもらいます。典型例から作
成したスライドを題材とし、病理診断のイロハについて勉強してもらいます。最終的には、基本
的な病理診断について自分でできるようになることを目標とします。
(3) 病理解剖
病理解剖の依頼があった際には(不定期)、優先して見学に入ってもらいます。解剖例の切り出
しや病理組織学的診断についても、必要に応じ参加してもらいます。
③
実験・診断ともに意欲的な方を希望します。
④
2名
12.生化学・分子生物学講座分子生体情報学
(月田
①
早智子
教授)
細胞の可視化技術の新しい進歩では超解像等新手法が実用化し、また、細胞レベルでのノックアウ
トの新しい手法では DNA 編集を用いるなど、また一方で全ゲノムの解読など、いま細胞生物学はき
わめてエキサイティングな局面を迎えています。私たちの研究室では、多様なバックグラウンドを持
つ研究者が幅広い興味のもとに各人の研究テーマを遂行し、細胞間接着や細胞骨格など、基本的細胞
機能制御原理を解明して、生体システム構築原理を明らかにすることに情熱を傾けています。上皮細
胞の研究そのものは、がん研究とも関連が深いものです。がんの 90%以上が上皮細胞由来であり、上
皮細胞シートは外界との境界線にあり、生体防御の最前線となるからです。遺伝子レベルから個体レ
ベルの研究までを融合しつつ、また他分野の方々との共同研究も進行しています。日々細胞と向き合
いながら研究を楽しむことのできる環境がここにはあります。研究に夢を持つ若者の参加を期待しま
す。
私たちの体を構成する細胞は驚くほど多様性に富み、それぞれが特有の形と役割を持っています。
多細胞生物における生体システムの構築には、多細胞が集団として得た多様なパラメーターが重要で
す。私たちの研究室では、このような細胞,細胞集団の構造や機能を、分子細胞生物学として、分子
や細胞の言葉で語ることを目指しています。
研究対象として、私たちは多細胞動物の体制の基本というべき上皮細胞に注目し、細胞間接着の分
子機構とその制御機構、細胞骨格の構造と機能、さらにこれらに関わるシグナル伝達機構を研究テー
マの中心に据えています。このような研究の先には何か見えてくるのでしょうか? 基礎的側面とし
て、まず細胞接着や細胞骨格とそのシグナル伝達が、上皮細胞の形態形成や増殖・分化・運動を制御
する機構を解明したいと考えています。上皮細胞間のタイトジャンクションによる接着制御機構を明
らかにすることにより、多細胞動物の恒常性の維持に欠かせない上皮細胞機能の分子基盤を示しつつ
あります。さらに、上皮細胞がダイナミックにふるまう発生現象にも、細胞生物学的視点から新しい
知見をもたらすことができるでしょう。一方、応用的側面では、細胞のがん化や転移の理解に直結す
ると考えています。また、バリア不全や細胞極性の異常が引き起こす種々の病態に関するマウスレベ
ルでの解析も進めています。
私たちの分子生物学的研究の最大の特徴は「形態」へのこだわりです。「形あるものには機能があ
る」という前提のもとに、興味深い細胞内構造を同定し、それを構築する遺伝子を決定して機能解析
を進めるという方向が私たちの研究の原点です。研究者は、基本的な生化学的手法や顕微鏡技術はも
ちろんのこと、遺伝子工学、発生工学といった様々な手法を修得しながら日々細胞と向き合っていま
す。
②
③
④
実験の基礎知識・技術についての履修を、実際の研究者についておこなう。
将来研究者を進路上の選択肢にして考えている。
2名
13.感染免疫医学講座ウイルス学
(上田
啓次
教授)
①
それぞれのウイルスはウイルス自体が呈する共通性や亜型で区切った時みえてくる共通性もあるが、
個々のレベルでみると独特の進化を遂げている。ウイルス学では、こういったウイルス自体あるいはウイ
ルス-宿主間相互作用の詳細を明らかにし、最終的にはウイルスそのものの増殖を制御する手法(ウイルス
制御)や逆にウイルスベクターなど生物若しくは物理化学的物体としてのウイルスを利用する手段(ウイ
ルス工学)を開発することを目指している。具体的には、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi’s
sarcoma-associated herpesvirus = KSHV)と B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus = HBV)、ボルナ病ウ
イルス(Borna disease virus = BDV)を題材に、以下に示すような研究を中心に進めている。
(1) KSHV の溶解感染・潜伏感染における複製機構の解明:溶解感染複製ではウイルス独自の複製機能複合
体を基盤として、潜伏感染複製ではウイルス因子としては LANA と潜伏感染複製起点(ori-P)のみが関
わり、複製機能複合体を細胞周期に依存した宿主複製因子を基盤としている。しかしながら両者とも複
製の場としては核内の核マトリックスが重要であることを見出している。核マトリックスがどのように
重要なのかウイルス-宿主因子の相互作用の観点で解析中である。
(2) KSHV 潜伏感染における遺伝子発現制御機構の解明:KSHV には 80 余の遺伝子があるが、潜伏感染で発
現している遺伝子は数個である。この数個の遺伝子が、KSHV の潜伏感染の病態に関与していると考えら
れる。これらの遺伝子と宿主遺伝子(特にレトロトランスポゾン)との相互作用を解析する。
(3) HBV 感染受容体の分離・同定と感染系の樹立及びその応用:HBV は世界に少なくとも数億人の感染患
者がいると考えられる B 型肝炎の原因ウイルスである。ワクチンが存在し感染予防は一定の効果を上げ
ていると考えられるが、HBV の生物学的詳細は不明のままである。もっとも大きな理由の一つがウイル
ス発見から 50 年近く経つにも関わらずその感染受容体が不明で感染系が樹立できないことにあると考
えてこの難問に挑んでいる。
(4) 生細胞において可視化できる HBV の開発:HBV が細胞内でどのように挙動し、ウイルスとしての生活
環を成立させているかは未だ不明である。HBV ゲノムを改変して、生細胞で HBV タンパク質を可視化す
ることを試みる。得られた可視化ウイルスを用いて、細胞内でどのように HBV タンパク質が挙動するの
かを解析する。
(5) 内在性 RNA ウイルス配列によるウイルス制御:近年発見された宿主ゲノム内に存在する内在性 RNA ウ
イルス配列の機能を解明する。内在性ボルナウイルス配列を最新のゲノム編集技術を用いてノックアウ
トした細胞を樹立する。その細胞において、ボルナウイルス感染が抑制されうるか検討する。
②
上記テーマの関連実験について担当教官とともに議論しながら実験を進めていく。技術は責任をもって
担当教官或いは教室研究員が指導する。研究室のミーティングは参加が原則であり、ミーティングを通し
て研究発表を体感する。まとまった成果は必要ないと考えるが、期間内に行った実験について背景、方法、
結果、結論と将来構想などについての研究発表(ラボ内発表会)を予定している。
③
予備知識は不要であるが、与えられたテーマを如何に解決していくか積極的に実験に携わることで体験・
実感してもらう。短時間(時間帯は応相談)でもいいので、出来るだけ多くの日数参加して欲しい。
④
2名
14.社会医学講座(環境医学)
(祖父江
①
友孝
教授)
当教室では、さまざまな健康破綻と環境要因との関連を科学的に分析する集団科学(疫学)の方法論
を用いて記述疫学・分析疫学研究を進め、研究結果を統括することによってエビデンスを構築し、さら
に施策への展開を橋渡しするための研究(政策研究)を行なっている。基礎配属においては、以下の課
題について、個々に興味、関心のある事柄について深く掘り下げながら取り組み、期間内で遂行可能な
学びの計画を立てることが求められる。
課題1(必須):大規模コホートデータの二次的利用の推進と疫学の方法論に関する研究
死亡やがん罹患に影響を与える要因の特定およびリスク推定には大規模コホート研究が有用である。し
かし、コホート研究を含め一般に公表される疫学統計量は既に要約された一側面の分析結果に過ぎない。
ここでは、10 万人規模の追跡終了後コホート研究データの網羅的解析を通して、大規模データベースの
共通化に向けた技術、制度上の課題、倫理・法・社会上の課題などとともに医療健康情報の公益性につい
ても考察する。解析には SPSS, STATA, R, JMP, etc.などの疫学統計ソフトを使用し、個票データの扱い
方や基本的な統計量の算出方法について習熟する。さらに、教室研究会への参加を通して、疫学論文の読
み方や研究デザインについて学び、データの性質や分布を考慮した上で適切な解析手段と検定手法を選択
できる能力を養う。
課題2(選択制)
:研究会への参加および論文抄読
・ プレホスピタルケアに関する臨床疫学研究
院外心停止患者は大阪府では毎年約 7000 症例発生しており、その社会復帰率は 10%にも満たな
い。ここでは、消防庁との連携により、大阪府下の院外心停止記録に関するデータの解析が可能と
なっている。
・ 石綿(アスベスト)健康影響に関する研究
石綿による健康被害は、職歴のある人で中皮腫発症が多いことが明らかとされる一方、大規模石綿
取扱い工場周辺では職歴のない一般住民に中皮腫発症が多いと指摘されている。本研究は、職歴の影
響を除いた一般環境由来の石綿曝露と中皮腫死亡の関連について、地理的情報も利用しながら明ら
かにすることを目的としている。
・ 生活習慣と DNA 損傷に関する基礎実験(コメットアッセイなど)
・ 食品安全、レギュラトリーサイエンス
・ 産業衛生:許容濃度委員会、メンタルヘルス(ストレスチェック制度など)、産業医の役割
・ 放射線、タバコとがん
など
②
学生自身の個性や能力を生かした主体的な取り組みを応援する。集団科学(疫学)の方法論に関する基
本的な考え方や知識を正しく身につけ、リスク評価やエビデンス構築の手法について学ぶための環境を整
えるようにこころがけている。このような環境の下、自己の関心や興味を深く掘り下げながら、各自の立
案計画に基づいて研究の遂行、総括を進めて行けることが重要であると考える。
③ 疫学の基本知識と適切な統計解析手法を身につけ、生のデータ解析を通して実践力も養って欲しい。ま
た、さまざまな健康被害や疾病に対するリスクをどのように評価すればいいのかといった社会医学的な視点
を持ってもらえると嬉しい。
④
5名まで(定員枠を越える受入れは行いません)
15.ゲノム生物学講座環境・生体機能学
(竹田
潤二
教授)
①(1) マウス ES 細胞あるいはヒト iPS 細胞における両アレル変異導入による網羅的遺伝子機能解析
(2) トランスポゾンシステムを利用した効率のよい変異導入法の樹立
(3) ゲノム編集技術を用いた相同組み換え技術の樹立
②
教室員と一緒になってプロジェクトを推し進めていくことを考えている。
③
何かを学ぼうとする姿勢のある人。
④
2名
16.社会医学講座法医学
(松本
博志
教授)
① 医学領域において、唯一「人の死を見つめる」教室である。死亡機序については未だ明らかでは
ないことが多く、正確な死因診断がすべてに行われているわけではない。この基礎配属では、
「死」をテーマに、死因の統計的解析、死因別マーカーの探索、ドーピング禁止薬物の検出、死
因別組織学的検討、あるいは一つの死の機序に関する実験的検討、診療関連死や死因究明制度等
の法的検討、飲酒運転等道路交通法等改正の医学的背景の検討等を行う。また、配属中には法医
実務(司法解剖、行政解剖、調査法解剖、司法検案、行政検案等)にも参加しm実際の人の死を
見つめる
<主な研究テーマ例>
1) 乳幼児突然死等の死亡機構
2) 急性脳症の発症機序
3) 不整脈・てんかん等機能性疾患の死後証明
4) アルコールと外傷の関係-ISS スコアを用いた検討
5) アルコール性臓器障害の進展機構
6) ドーピング禁止薬物の新たな検出
7) 死因別マーカや飲酒マーカーの検出
8) 各種感染の死因におよぼす影響
9) 各種死因の組織学的検討
10)
死体現象の分子機構
11)
死因究明制度等医事法制
12)
自殺の背景研究
13)
その他
②
上記の研究テーマ例等の中から担当チュータと相談して一つテーマを選び、チュータの指導のも
と、各自で実験・調査研究を行う。教室の諸行事にも参加し、法医学教室の一員としての生活を過
ごす。また、教室が主催する学会にも参加して法医学の学問領域の一端に触れる。
③
④ 「人の死」の分野は原野であり、ダイヤモンド原石が転がっている。若い柔軟な頭での挑戦を期待
している。また、愛飲家やスポーツ愛好家も興味深いアプローチができることは間違いない。
⑤
6名
17.社会医学講座公衆衛生学(公衆衛生)
(磯
博康
教授)
①
大阪府内には衛生行政の中核機関である保健所や大阪府立公衆衛生研究所のほかに、大阪がん循
環器病予防センター、大阪府立成人病センター調査部、大阪府立母子保健総合医療センターなど、
これまでに蓄積されてきた多くの公衆衛生資源がある。当教室は、これらの関連機関と密接に連携
して、教育と研究を進めている。特に、我が国は、世界に類を見ない高齢社会を迎え、公衆衛生学
的にも、日常臨床においても、生活習慣病の予防・管理の重要性が益々高まっていることから、当
教室では地域住民における疫学調査、特に長期的な追跡研究、介入研究を行い、日本人の生活習慣
病の危険因子に関する新しいエビデンスの構築を行っている。また、保健所が行っている結核・感
染症事業、保険者が行っている特定健康診査・特定保健指導等の健康づくり事業、高齢者・難病患
者・精神障害者等に対する地域ケアシステムなどに実際に参画し、技術的、専門的な支援を行って
いる。また、公衆衛生の分野では、国際的視野を持った人材育成も必要とされている。本教室で
は、オランダのフローニンゲン(グローニンゲン)大学、スウェーデンのカロリンスカ研究所への
留学、WHO インターンシップなど海外との人的交流を行っており、時期が合えば、参加すること
ができる。さらに、ミネソタ大学、ロンドン大学、ハーバード大学等との共同研究を積極的に行っ
ている。
②
公衆衛生対策として地域で行われている各種の保健医療活動について、実際に実施機関を訪れ
て、じかに現実に触れて勉強してもらうことを基本として考えている。地域には、医療機関の他
に、保健所、公衆衛生研究所、保健センター、大阪がん循環器病予防センター、介護老人保健施設
などの様々な施設がある。それらの現実の活動に主体的に参画し、保健医療に対する現在の課題を
認識してもらうとともに、予防医学の重要性や、公衆衛生的なアプローチの方法や、分析手法につ
いて学んでもらう。また、大阪府庁でのインターンシップへの参加も可能であり、健康づくり課、
地域保健感染症課、医療対策課等を約 3 か月間に亘ってローテートし、行政の実際を体験・学習す
ることができる。
③
社会医学や予防医学の対象は、健康な人及び不健康を自覚しない人を含んでいる。つまり、すべ
ての人々についての疾病の予防ないしはコントロールを行い自立した社会活動を保持していくこと
に公衆衛生の大きな役割がある。そのためには、保健、医療、福祉の現実の中からニーズを的確に
把握し、具体的な政策に結びつけるための積極的な働きかけが重要となってくる。その実践にあた
っては、専門家や行政関係者のチームワーク、住民などの当事者の積極的な参加と行動を引き出す
能力が必要とされる。
医学生に対する要望としては、配属の貴重な機会を利用して、地域で行われている保健活動を通
じて、基礎・臨床医学についての理解にとどまらず、それらの成果を個々の人間から社会の健康に
つなげていく医療者としての広い視野を身につけてほしい。
④
2名
18.遺伝医学講座遺伝学
(吉森
①
保
教授)
オートファジーの分子機構と関連病態の研究
細胞内部の分子や構造を膜により囲い込み分解するシステムであるオートファジー(自食作用)
は、不要になったタンパク質やオルガネラあるいは病原体、封入体を除去することで、発がん、神経
変性疾患、心不全、Ⅱ型糖尿病、クローン病、感染症、炎症性疾患など極めて多岐に亘る疾患の発症
を抑制している。一方、飢餓などの緊急時に自己消化により生存に必要なエネルギーを産出する役割
もあり、これはがん細胞の生存に寄与する。近年目覚ましい発展を遂げているオートファジー研究
は、日本が世界をリードしている。本研究室はその一翼を担い、オートファジーの分子メカニズムと
疾患における役割について世界トップレベルの研究を展開し、さらにはオートファジーの促進/阻害
剤の開発による臨床応用を目指している。
② 研究室で進行中のプロジェクトの一端を担ってもらい、基礎研究の現場の醍醐味を体験してもら
う。
③
実験に真摯に取り組める人。
④
1 名(MD 研究者育成プログラム参加学生を除く。)
19.ゲノム生物学講座放射線基礎医学
(藤堂
①
剛
教授)
放射線・紫外線および化学物質に対する生体応答機構を、DNA 損傷とそれに起因する突然変異の
観点から研究している。特に、DNA 修復、細胞周期チェックポイント、アポトーシス等の DNA 損傷
耐性機構、その破綻としての突然変異生成機構を中心に、生体の損傷応答機構の全体像を理解する
事を目指している。特徴としては、マウスに限らず、メダカ等の脊椎動物を用い、各々のモデル実
験動物としての特徴を生かした解析を行う事を目指している点である。実際には、以下の研究を行
っている。
(1) 放射線・環境有害物質の遺伝的影響
(2) 突然変異、癌、細胞死の発生機構
(3) DNA 損傷の修復と突然変異の分子機構
(4) メダカにおける逆遺伝学的手法の開発
②
当教室の研究テーマを教室員や内外の共同研究者と一緒にやってもらうことになるが、それを通
して基礎医学における研究の一端を経験してもらえればと思っている。
③
②と同様。
④
2名
20.感染免疫医学講座免疫制御学(腫瘍発生学)
(竹田
潔
教授)
①
我々の研究室では、免疫の異常により発症する疾患の発症機構を解析している。特に、炎症性腸
疾患の発症機構を中心に腸管の恒常性維持機構を研究している。具体的には、以下の研究を行って
いる。
(1) 腸管免疫系の活性を制御する分子機構の解析
(2) 腸内細菌などの腸内環境因子の腸管免疫系に及ぼす作用機構の解析
(3) 腸管上皮細胞の腸管恒常性維持機構の解析
②
上記の研究テーマを中心として実行可能な研究テーマを、当講座の教員と討議のうえ選択する。
そして興味に応じて決定した研究テーマについて、助言と指導を受けながら研究を進める。
③
当講座のセミナーや輪読会に希望に応じて参加してもらう。免疫学は臨床医学と基礎医学を融合
させて考える上で非常に重要な分野である。免疫学のダイナミックなコンセプトを学びとるととも
に、基礎医学の魅力を感じとってほしい。
④
3名
21.ゲノム生物学講座神経遺伝子学
(河原
行郎
教授)
①
私達の研究室では、RNA の機能や修飾の異常が、どのようにヒトの病気と関連するのかを解析して
います。近年、microRNA をはじめとした蛋白質をコードしない non-coding RNA が多種類存在してい
ることが分かってきています。しかしながら、機能の分かっているものはごく一部です。また、RNA
編集や RNA メチル化などの修飾も、かつて想像されていた以上にあらゆる細胞で高頻度に生じてい
ることが明らかとなってきています。これらの RNA 代謝に関わる RNA 結合蛋白質は、ヒトには 1,000
個以上あると言われており、その1割以上の遺伝子に、ヒトの疾患と関連する変異が同定されてい
ます。このような RNA の機能や修飾の異常を中心に据えて、ヒトの病気の発症メカニズムを研究す
る「RNA 病態学」という新しい分野を展開しています。
②
積極的に、研究室での実験、発表に参加いただくことにより、分子生物学的実験の幅広い技術
と、目的達成にむけた実験の組み立て方を身につけていただくことを目指します。当教室では RNA
の情報解析専任教官もいることから、次世代シーケンスデータ解析などドライの実験も学ぶことが
できます。
内容については、当教室で行っている様々なテーマや実験方法を紹介した上で、学生本人が希望
する実験に参加していただきます。
③ 積極性・協調性のある学生を希望します。また、時間を厳守するなど社会常識をわきまえた方であ
ることを期待します。
④
3名
22. ゲノム生物学講座神経遺伝統計学
(岡田
随象
教授)
① 遺伝統計学(Statistical Genetics)とは、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から評価す
る学問分野である。次世代シークエンサー(next generation sequencer; NGS)やゲノムワイド関連解析
(genome-wide association study; GWAS)に代表されるゲノム配列解読技術の著しい発達により、膨大
なゲノムデータ・エピゲノムデータが得られる時代が到来している。一方で、一次的なデータ解析処理を
施され、ゲノム配列情報やエピゲノム修飾情報として蓄積された大容量のデータを適切に解釈し、社会還
元するためのデータ解析学問へのニーズが高まっている。
遺伝統計学は、多彩な学問分野におけるビッグデータの分野横断的な統合に適した学問であり、近年そ
の重要性が認識されている。例えば、大規模ヒト疾患ゲノム解析により同定された数多くの疾患感受性遺
伝子の情報を、遺伝統計解析を通じて多彩な生物学・医学データベースと分野横断的に統合することによ
り、
(1)新たな疾患病態の解明、
(2)疾患バイオマーカーの同定、
(3)ドラッグ・リポジショニングを
通じた新規ゲノム創薬、
(4)疾患疫学の謎の解明、
(5)個別化医療の推進、などに貢献できることが明
らかになりつつある。特に、疾患感受性遺伝子情報に基づき直接的に創薬標的を探索する遺伝統計解析は、
ゲノム創薬の新たな方向性を示すものとして注目を集めている。
本教室では、遺伝統計学における最新ゲノム・エピゲノムデータ解析手法の開発やその実践による医学
への貢献を目標に研究活動を行っている。
② 公共データベースに登録されたヒトゲノムデータ・エピゲノムデータを対象に、遺伝統計解析を実施
します。Linux 環境でのデータ解析手法や、プログラミング言語、統計解析ソフトウェアRの使用方法に
ついて学びます。研究分野の性質上、実験は行わず、コンピューター上でのデータ解析のみが指導対象と
なります。
③ 積極性・協調性・自律性のある学生を希望します。研究室のメンバーとの円滑なコミュニケーション
を通じて、ゲノムデータ解析技術の習得や研究テーマの発掘に、自ら取り組む姿勢を持っていることが重
要です。
④
3名
23.感染免疫医学講座免疫細胞生物学(免疫発生学)
(石井
①
優
教授)
我々人間を含め動物の本質は、その名の通り、「動くこと」にある。動物は個体としてあちこち移
動するが、それに加えて個体内部においても、生命活動の維持のために、様々な細胞がそれぞれ適
切な場所に適切なタイミングで移動して、居場所を決めている。当研究室では、これら時空間的に
巧妙に制御された「細胞遊走ネットワーク」を解析するため、細胞の動態を「生きたまま」の動物
内で観察するという生体イメージング研究を行っている。
具体的には、マウスなどの実験動物を麻酔下で手術し、被観察部位(臓器・組織)を、深部の観
察に適した多光子励起顕微鏡のステージ(対物レンズ)上に展開して観察する「生体二光子励起顕
微鏡(Intravital 2-photon microscopy)」の手法を駆使し、生体内に存在する多様な細胞の in
vivo での挙動(遊走・位置決め・機能)をリアルタイムで測定する。それにより、生理的および病
的状態における多様な細胞動態の変化を明らかにすることを目的としている。こうした生体イメー
ジング技術は、免疫・血液系のように、細胞の移動が大きく、その遊走が厳密に統合されている
soft- wired network の解明において強力なツールとなりうる。
②
当教室で行っている複数のイメージングプロジェクトのうち、学生本人の希望を聞き、相談のう
え研究テーマを選ぶ。基本的には、現在進行中のプロジェクトに参加してもらうことになるが、や
る気と習得度によっては独自プロジェクトの立案に関わることも可能である。実験手技としては、
最新の生体顕微鏡観察に関する技術を学ぶことができ、また基礎的実験技術としての、分子生物
学・細胞生物学・組織学についての基礎的手法も学ぶことができる。実際の「技術指導は、それぞ
れの学生の実験の進捗に応じて行う。最終的な目標は、小さくても一定の研究結果をまとめること
とする。
③
予備知識の有無は問わないが、自ら学ぶ姿勢を持った熱意ある学生を望む。
④ 3名(MD 研究者育成プログラム参加学生1名を除く。)
24.感染免疫医学講座
幹細胞生物学
(長澤
丘司
教授)
①(教室の研究の特色)
幹細胞とは、多種類の細胞を生み出し(多分化能)、何度でも分裂できる(自己
複製能)能力を持った特別な細胞です。生体内に実在する幹細胞は組織幹細胞で、
組織を構築する多様な成熟細胞を供給し、臓器の恒常性の維持と、障害よりの再
生を担いますが、数が少なく、がんの発生母体ともなります。組織幹細胞は、各
組織のニッチ (niche)と呼ばれる限局した特別な微小環境によって維持され、そ
の細胞数や増殖・分化が調節されています。
免疫担当細胞を含むすべての血液細胞は、骨髄で、造血幹細胞と呼ばれる組織
幹細胞から産生されています。私たちは、骨髄で、長年不明であった造血幹細胞
の居場所と、そのニッチをつきとめました。現在、造血幹細胞ニッチが形成され
るしくみ、ニッチが造血幹細胞や免疫担当細胞を維持・調節するしくみ、白血病
を含む血液・免疫疾患の病因・病態へのニッチの関与について研究しています。
②(学生への指導方針)
抄読会などで世界の最先端の研究を学び、使える実験技術を習得する。
③(学生に対する要望
)
将来、基礎または臨床医学を進める研究に参加する準備として参加してほし
い。
④(受入れ可能人数)
2名
1
25.神経科学講座分子神経科学(神経生理学)
(山下
俊英
教授)
①
私たちの研究室では中枢神経障害を克服するための治療開発を目指した基礎研究を行っていま
す。具体的には以下の研究テーマを推進しています。
1.
2.
3.
4.
5.
中枢神経障害後の神経回路再編成と機能回復のメカニズムの解明
神経回路の再生を制御する生体システムの研究
多発性硬化症の病態機序の解明
精神神経疾患における epigenetic control
疼痛のメカニズム
②
リサーチマインドを育むことを、基礎配属の目的と考えています。学生にはそれぞれテーマを与
え、教員による1対1の指導の下に、研究を主体的に進めていっていただきます。
③
自ら行った研究を論文として発表するまでをゴールとします。配属期間が終了しても、自分のペ
ースで研究を継続することを望みます。
④
1名
26.ゲノム生物学講座遺伝子治療学
(金田
安史
教授)
① 遺伝子治療の基礎研究から応用まで幅広く研究を展開している。具体的には、以下のとおりであ
る。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
新規遺伝子導入法の開発
癌遺伝子治療の基礎及び応用研究
治療用遺伝子の分離と機能解析
組織再生のための細胞制御法の開発
クロマチンレベルでの遺伝子発現制御
②
配属については希望者が配属されることを考え、配属学生については上記テーマの中から希望の
ものを選択してもらい、それぞれの責任者に直接指導を受ける体制をとる。
③
配属の経験は貴重なものであり、当教室も可能な限り指導の充実と協力体制を進めていく。した
がって配属学生においても、その意をくみ、積極的にかつ真剣に研究に取り組むよう要望したい。
万一、理由なく欠席したり、研究室の体制を乱す者がある場合には、厳しく対処する。
④
1名
27.社会環境医学講座医の倫理と公共政策学(医の倫理学)
(加藤
和人
教授)
①
医学・生命科学研究の発展、および高度な医療の発展は、社会の中で多くの人々に恩恵をもたら
しています。その一方で、研究や医療が社会に理解され、信頼されて行われるためには、倫理的・
法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Implications, ELSI)への取り組みが不可欠で
す。当教室では、医学・生命科学・医療の発展に伴う課題を分析し、対応策・解決策を提案するた
めの研究を、実際の研究や医療の現場との交流を重視しながら行っています。具体的なテーマとし
ては、ヒトゲノム・遺伝子研究や幹細胞研究を含む先端ライフサイエンス研究に関する課題や、終
末期医療や生殖補助医療などの医療をめぐる課題などがあります。
②
教員(教授、准教授)との話し合いにより、学生一人につき一つのテーマを決めていただきま
す。そのテーマに関して、文献やインタビューによる情報収集などにより、倫理的・法的・社会的
課題を整理・分析し、あるべき対応を提案する、というところまでを経験していただきます。本格
的な調査分析はできませんが、当教室での研究の流れがある程度理解できるはずです。
本年度
に取り上げる可能性があるテーマの例を下記に示します。
(実際には教室の研究の状況を考慮しながら、面談を経て決定します。)
(1) 遺伝子検査の拡がりに伴う倫理的・社会的課題
(2) 遺伝子解析研究に関する法的規制の比較分析
(3) 医療・医学研究における患者・研究参加者の役割
③
前提となる知識や経験は不要ですが、自ら積極的に研究に取り組もうという意欲のある学生の参
加を期待します。文系・理系問わず、様々なバックグランドを持つメンバーが研究に取り組んでい
るので、異分野の人との交流が好きという方には他にはない経験ができる場となると思います。配
属期間においてはしっかりと研究を行っていただきますので、熱心、かつ真剣に取り組む学生を受
け入れます。本人の興味および研究の進み具合によっては、基礎配属終了後も、継続して取り組む
ことも可能です。
④
3名
28.放射線統合医学講座 核医学
(畑澤
①
順
教授)
医学部附属病院における核医学診療に携わっている教室であり、核医学に関する基礎的、臨床的
研究を行っている。中枢神経系、循環器系、腫瘍、免疫疾患の 4 領域において研究しており、放射
性同位元素を用いたイメージングで病態生理の解明、撮像・解析法の開発、新しい放射性薬剤の開
発を行っている。SPECT や PET などのイメージング機器を用い、生体内の物質の動態を観察する。
動物の病態モデルを用いた基礎研究も行っている。撮像・解析に関しては物理学的、数学的な領域
の専門家と共同研究しており、薬剤開発に関しては薬学の専門家と共同研究している。
(1) 中枢神経系
血流やレセプターを解析することにより、様々な脳の機能を解明する。正常者での生理的機能
解析の研究、患者の病態解析の研究を行っている。
(2) 循環器系
各疾患における心筋の病態解析、冠動脈の機能解析を行っている。
(3) 腫瘍
ホウ素中性子補足療法、放射性同位元素内用療法などの新しい放射線治療に関する研究を行っ
ている。
(4) 免疫疾患
自己免疫疾患、神経変性疾患、外傷、腫瘍における免疫反応のイメージング手法に関する研究
を行っている。
②
まず、核医学に対する概要を理解してもらい、その後にスタッフの研究テーマに従ったテーマを
与え、そのスタッフにより指導を行う。
③ コンピューターを用いた画像解析が主なテーマとなるため、そのような領域に興味のある方を歓
迎します。
④
2名(MD研究者育成プログラム参加学生を除く)
29.健康スポーツ科学講座
認知行動科学
(佐藤
宏道
教授)
① 認知行動科学教室はもともと視覚情報処理の仕組みについて動物を用いた神経生理学
的な研究を行い、脳の機能と構造がどのように作られているのかを明らかにしてきた。最近
は人間の高次脳機能に焦点を当て、人間でなくては調べようのない脳機能のあり方に迫ろ
うとしている。今年度基礎配属学生には以下の課題(テーマ、内容)のいずれかに参加して
もらう。
(1)美の情感の生成メカニズム:研究対象−ヒト、方法−心理実験、脳活動イメージング
(fMRI)
ヒトの脳は他の動物種に比べて格段に複雑かつ高度な構造とはたらきを実現している。
特に美や価値、意義などの意識やそれにともなう情感は、単なる生存や繁殖上の理由を遥か
に越えており、それが人間の生きる意味にも深く関わる。本課題では、美術作品(絵画)を
観ているときの心理応答とその生成メカニズムについて、心理学的計測、および脳活動計測
を行い、脳のどのようなシステムがどのように働くことによって人間らしい高度の精神機
能が営まれるのかを探求する。
(2)スポーツパフォーマンスを左右する視覚情報処理の役割:研究対象−ヒト、方法−心理
物理実験
卓球やバドミントンなどの球技スポーツにおいて、相手がスマッシュした打球は約 0.4 秒
で自陣に到達するにもかかわらず、トップアスリートは高い確率でこれを返球する。このよ
うな高いパフォーマンスを実現するためには、素早くかつ正確に指標を捉え、その動きを分
析する脳の視覚情報処理機能が重要な役割を演じている。本課題では、見て素早く合目的的
な身体反応が生じる仕組みと神経メカニズムを、ヒトの心理物理実験から明らかにする。
運動能力の高低
② 担当教員とよく相談し、課題を選び、何をするのかを決める。実験研究に参加し、研究
遂行のための役割を担う。基礎配期間中にグループで成し遂げた成果は、学会発表や学術論
文などで公表することを目指す。主体的な学びを重視し、研究者ライフを体験してもらう。
③
実習期間中は研究に専念して熱心に取り組める意欲の高い学生を希望する。
④
2名
30.スポーツ医学教室
① 教室の研究の特色
スポーツによる外傷や障害が起る機序(メカニズム)の解明や、治療・予防、トレー
ニング方法について基礎研究を行なっています.また、骨,筋肉,靭帯の損傷や修復、
再生のバイオメカ、分子生物学的研究、コラーゲンによる半月板再生医療の研究から、
スポーツ医学への貢献をめざしています。
スポーツ現場でのメディカルサポート、研究も行い、2020 東京オリンピック・パラ
リンピックでの競技力向上をめざして、スポーツ庁や、J リーグ、プロ野球チーム、V
リーグチームや、他の大学(筑波大学、大阪体育大学、武庫川女子大学など)、企業との
連携しての「スポーツ研究イノベーション拠点」の研究も行っています。
② 学生への指導方針
担当学生との面談により、興味ある研究テーマなどをお聞きします。
マンツーマンで OJT 形式にてスポーツ医学研究の実地経験からき、課題発見や研究に
従事してもらいます。以下の研究内容などがありますので、指導者との面談により研究
テーマを決定します。複数の研究を学ぶこと、経験することもお勧めします。
・ 豊中キャンパスでの、筋、神経細胞、軟骨細胞など運動器細胞による組織修復や力
学的刺激による細胞応答の研究
・ スポーツ現場などでのパフォーマンス解析
・ 吹田キャンパスでの、スポーツ動作解析やパフォーマンス解析、動的バランス解析
③ 学生に対する要望
スポーツ医学の研究課題や問題点をみつけ、過去の知見を調べ、自ら解決する方法を
検討して実施していくという、積極的に活動する課題解決型の参加を望みます。
④ 受け入れ可能人数
2名
【微生物病研究所】
31.感染機構研究部門分子細菌学分野
(堀口
安彦
教授)
①
細菌感染の分子メカニズムの解析を行っている。感染成立の重要な過程で認められる生命現象と、それに関与する
細菌側および宿主側の因子を探索し、その機能を解析することに研究の焦点を絞っている。現在の研究テーマは以下
のとおり。
(1) 百日咳菌の病原性解析
百日咳は乳幼児でよく認められる上部気道感染症で、ワクチンによって防御できる病気である。しかし、世界的
には年間数十万人の死者を出し、さらに患者数が増加しているいわゆる再興感染症のひとつである。現在でも百日
咳の感染病態は不明で、実際にはワクチンがなぜ効くのかさえも知られていない。当研究室では百日咳菌の病原因
子の作用機構の解析、および感染病態の分子レベルの解析を進めている。
(2)
細菌感染の宿主特異性の解析
種々の病原細菌はそれぞれに決まった宿主に感染するが、その宿主特異性がどのような要因によって決定してい
るのかほとんど知られていない。当研究室では百日咳菌と同じ属の気管支敗血症菌を例にとり、この問題に挑戦し
ている。百日咳は専らヒトにのみ感染し、気管支敗血症菌は多くの幅広い哺乳動物種に感染する。それぞれのゲノ
ム配列は明らかにされており、これまでに知られている主要病原因子の相同性は極めて高い。
このような特徴ある二つの菌種を材料にして、両細菌のゲノム構造および感染モデルにおける挙動を比較するこ
とにより、両者の宿主特異性がなぜ大きく異なるのか、その分子背景の理解を目指している。
(3)
類鼻疽の発症機構の解明
類鼻疽は熱帯地方を中心に流行する細菌性感染症である。原因菌である類鼻疽菌は粉塵吸入や創傷から動物体内
に侵入し、全身の臓器で増殖する。急性期では発熱を始めとして、肺炎、敗血症、化膿性病変が起こり、慢性期で
は肺・肝臓・脾臓・リンパ等の多臓器不全が見られ、発症後の死亡率は高く、40%以上であると報告されている。類
鼻疽菌は宿主細胞内で生存するため、抗生物質が作用しにくく、発症後の治療は困難である。当研究室では、BSL3
施設を利用して、マウス類鼻疽モデルを用いた類鼻疽菌の発症に関わる病原因子の探索と機能解析を進めている。
②
当研究室のテーマの中で、できるだけ期間内に完結する一連の実験に取り組んでいただく。
③
期間中は積極的に研究室と研究に関わることのできる学生を望む。
④
1名
32.感染機構研究部門ウイルス感染制御分野
(塩田
達雄
教授)
①
私たちはエイズを始めとするウイルス感染症の病原性発現の分子機構の解明を目標として研究を
進めております。比較的単純な病原体であるウイルスが人体という複雑なシステム中の様々な因子
と相互作用を行い、そのシステムを攪乱させた結果生じるのがウイルス感染症であります。私たち
は、ウイルス感染症に関わる病原体側および宿主側の数多い因子とそれらの間の相互作用の素過程
をまず分子生物学の手法を用いて明らかにしたい、と考え、具体的には以下のような研究を行って
おります。
(1) ヒト免疫不全ウイルスの細胞侵入機構の解析
(2) 抗ウイルス因子 TRIM5α/TRIMCyp および Mx2 に関する研究
(3) ヒト免疫不全ウイルスのウイルス粒子形成機構の解析
また、当分野が所属する微生物病研究所は、タイのバンコクに日本タイ染症共同研究センターを有し
ており、希望者には 1 ヶ月程度のタイでの研修の機会を提供します。
② 現在、研究室で進行している研究の中から希望するテーマを選択してもらい、基礎研究の面白さ
を体験する機会を提供します。タイで研修を行う場合には、対象疾患はエイズのみならず、デング
熱、チクングニア熱等の蚊媒介性ウイルス感染症、ノロウイルスやコレラ菌等による感染性下痢症、
抗生剤の効かない高度薬剤耐性菌感染症等も対象になります。
③
ウイルスに興味のある人、また、ウイルスに興味がなくても、なぜ病気はおこるのだろうか、と
漠然と(ただし真剣に)考えている人も歓迎します。
④
2名
33.感染機構研究部門分子ウイルス分野
(松浦
①
善治
教授)
C 型肝炎ウイルス(HCV)は全世界で2億人もの感染者が存在し、HCV 感染と肝発癌との相関も証
明されている。HCV 研究の最大の障害は効率の良い細胞培養系が確立されていないことである。そこ
で、遺伝子組換え技術を駆使して HCV の感染・複製・発癌機構を分子レベルで解析することで、慢
性 C 型肝炎の治療法の開発を進めている。また、最近ではデングウイルスの感染機構に関する検討
も開始しており、デングウイルス感染の制御を目指している。
②
興味あるプロジェクトに参加して基礎研究を体感してもらう。
③
担当する研究にまじめに取り組む学生を希望します。
④
1名
34.環境応答研究部門情報伝達分野
(高倉
伸幸
教授)
①
癌組織や炎症組織に形成される血管形成を抑制し、病態を改善する技術を開発するために、いか
なる分子が血管新生に関わるのかを解析する。試験管内、マウス個体内で血管新生を観察する解析
系をもとに、種々の分子の血管形成へのかかわりを詳細にする。
②
血管形成のモデル作成法を習得し、さらに遺伝子導入などによる細胞機能の解析をとおして、分
子生物学を理解してもらう。
③
4か月間研究に専念できる学生を希望する。
④
1名
35.難治感染症対策研究センター細菌感染分野
(飯田哲也教授)
①
教室の研究の特色
さまざまな感染症についてゲノミクス・メタゲノミクスの観点から研究を行っている。
研究テーマ
A. 病原細菌の病原性発現メカニズムの研究
B. 新興感染症の出現メカニズムの研究
C. 次世代 DNA シーケンサーを用いたメタゲノミクスによる病原体検出および微
生物フローラ解析
②
学生への指導方針
ラボで現在進行中の研究に参画して、基礎研究の現場を体験してもらう。
③
学生に対する要望
病原細菌や感染症に興味がある人。
④
受入れ可能人数
1名
36.附属遺伝情報実験センター遺伝子機能解析分野
(伊川
正人
教授)
①
疾病の実験モデル動物としてこれまで突然変異動物が重要な役割を果たしてきたが、ポストゲノ
ムの時代には人工的に遺伝子改変を加えた遺伝子改変動物が大きな役割を果たしている。具体的に
は受精卵に遺伝子を注入して人工的に遺伝子を過剰発現させたトランスジェニック動物や、全能性
を持つ胚性幹(ES)細胞を利用して特定の遺伝子を破壊したノックアウト動物や人工遺伝子と置換
したノックイン動物などである。さらに最近では、1塩基単位で任意に遺伝子改変できるゲノム編
集技術、なかでも CRISPR/Cas9 システムの登場により簡便化・効率化され、個体レベルでの遺伝子
機能解析やヒト疾患モデル動物の開発が飛躍的に進んでいる。我々は新規ゲノム編集技術の開発と
同時に、CRISPR/Cas9 システムを活用した受精メカニズムの解明や、不妊モデル動物、避妊薬の開
発について研究を行っている。
②
研究テーマについて深く考え、研究の面白さを分かち合えることをめざしている。
③
実験の進行はその人の個性やペースに応じたもので結構であるが、結果として指導する側とされ
る側、双方の時間が有意義なものであるようにしたい。そのために、期間中に何かを学びたいとい
うだけでなく、何かを成し遂げたいと希望する人を望む。
④
1名
37.附属感染症国際研究センター感染制御部門感染症学・免疫学融合研究グループ
(永井
①
宏樹
准教授)
病原菌が病気を引き起こすためには、細菌から宿主細胞へ「配送」される病原因子群と、そのた
めの輸送システムが中心的な役割を果たします。私達はヒトに肺炎を引き起こすレジオネラという
病原菌をモデルとして、病原因子であるエフェクタータンパク質群の働きと、輸送システムである
Ⅳ型分泌メカニズムを分子・原子レベルで明らかにしようとしています。現在進行中のプロジェク
トは、(1)レジオネラおよび近縁の接合伝達プラスミド R64 由来のⅣ型分泌装置の電子顕微鏡・結
晶構造解析レベルでの構造・機能解析、(2)真核生物内メンブレントラフィックを標的とするエフ
ェクタータンパク質の機能解析、(3)レジオネラがオートファジーを回避するメカニズムの解析、
です。少人数の研究室ではありますが、他部局・機関との共同研究を含めて、具体的な研究対象・
手法が多彩であり、構成員のバックグラウンドも多岐に渡っているのが特徴です。
②
基本的には現在進行中のプロジェクトに参画するかたちで、各学生の興味を考慮に入れ、短期間
であっても達成感を得られるようなテーマを選定し、それについては責任をもって取り組んでいた
だきたいと考えています。
③
病原菌が病原菌たる分子基盤に多彩な手法を駆使して迫っていく上で必要な知的好奇心・コミュ
ニケーション力に富む、意欲的な学生を歓迎します。
④
2名
38.免疫グループ自然免疫学
(審良
静男
教授)
①
我々の研究室では、主として、病原、微生物の排除に関与しているマクロファージや樹状細胞が
発現している機能分子の研究を行っている。解析の手段には、主として、遺伝子ノックアウトマウ
スを用いており、生体内での機能に重点を置いている。また、これまでに樹立したマクロファージ
や樹状細胞の機能異常を示すノックアウトマウスにおいて、発現が低下している遺伝子、あるい
は、種々の刺激により誘導される新規遺伝子のクローニングも行っている。さらに、分子生物学的
手法を用いて、病原体を認識する受容体のシグナル伝達の解析を行っている。現在、次のような機
能分子を対象としている。
(1) 自然免疫受容体分子、およびそのシグナル伝達に関する機能分子の検索
(2) ガン、メタボリックシンドローム等の慢性炎症疾患と自然免疫について
②
医学部を卒業後は、基礎、臨床いずれに進むにせよ、研究生活は、まず避けては通れない。教科
書を読んで勉強することと、実験を通じて研究を行うこととは違うということを体験していただき
たい。実際、3-4カ月という期間は、勉強だけするには長いが、研究には短いかもしれない。し
かし、運が良ければ、配属期間中に、研究のダイナミズムを味わうこともできる。
③
学生の真剣度に応じて、普段の勉強では得られないものが得られるはずである。
④
2名
39.免疫グループ免疫化学
(荒瀬
尚
教授)
①
免疫システムは、病原体等に対する生体防御機構として重要であるが、正常に制御されなくなる
と自己免疫疾患やアレルギー疾患が発症してしまう。そこで、当研究室では、免疫細胞と病原体と
の相互作用や免疫応答の制御機構を研究することによって、新たな感染防御機構や自己免疫疾患の
発症機序の解明を目指している。実習では、免疫レセプターと病原体との相互作用の解析や自己免
疫疾患で産生される自己抗体の認識機構の解析の研究を予定している。
②
実際に1つのテーマを持って研究をしてもらう。基本的な免疫学的手法や遺伝子クローニング法
を身につけてもらうと同時に、分子レベルでの免疫細胞と病原体の相互作用の解明や新たな自己免
疫疾患の発症機序の解明に取り組んでもらう。特殊な事情がない限り、欠席は認めない。
③
新たな発見を目指して取り組んでほしい。
④
1名
40.免疫グループマラリア免疫学
(Cevayir
COBAN 教授)
①
Malaria Immunology Laboratory has a focus on host-Plasmodium interactions with a great
interest to understand how parasites manipulate immune system of host.
マラリア免疫学研究室では、宿主とマラリア原虫との相互作用に焦点を当て、特にど
のようにして寄生虫は宿主の免疫システムを操るのかを理解するべく研究を行ってい
る。
②
During the Lab period, students are assigned with a small question and assignment. Students
work under the assigned TA or Postdocs and learn/perform experiments together. Lab Head
follows progress with regular lab meetings and weekly reports. At the end of the Lab rotation,
student has to give a presentation about the findings.
配属期間中、学生には課題を割り当てる。学生は担当の教務補佐やポスドクの下で、
実験手法を学ぶと共に、実際に実験を行う。指導教授は、定期的な研究室ミーティン
グや毎週のレポートで進捗を確認する。学生には実習の最後で研究結果についてのプ
レゼンテーションを行ってもらう。
③
Enthusiastic and dynamic students who is open to learn and think new questions in an
international research environment are encouraged to apply.
国際的な研究環境で学び、新しい疑問について考える熱意と活力ある学生を求める。
④
1-2 名
※教務係からの補足
COBAN 先生は日本語も話せますが日本語のメールは基本的に対応されないそうです。
メールを送る際、COBAN 先生に送る場合は英文のみのメールを作成してください。
日本語でメールを送る場合は事務職員の石井さん宛てに送れば翻訳等の対応をしてもらえます。
41.生体防御研究部門分子免疫制御分野
(菊谷
仁
教授)
① (1) CD40 等の副刺激分子の免疫反応における役割に関する研究
(2) セマフォリンファミリー分子とその受容体分子の免疫反応制御及び個体発生に
おける役割に関する研究
(3) セマフォリンシグナル及び副刺激シグナルの伝達機構に関する研究
(4) 遺伝子ターゲティングを用いたリンパ球機能分子の解析
(5) EB ウイルス感染による自己免疫疾患・がん発症機構に関する研究
②
リンパ球の培養とクローニング、ハイブリドーマの作製、遺伝子クローニング、トランスジェニ
ックマウス、ノックアウトマウス作製、セルソーティング等、免疫学の基本 的実験手法を指導す
ると共に、セミナーを通じて免疫学、分子生物学の基礎から先端ま での知識を授ける。
③
分子免疫学、免疫生物学の研究及びヒトの免疫異常症に興味を持つ人
④
1名
42.免疫グループ実験免疫学
(坂口
志文
教授)
①
免疫系が効果的に働くためには、その働きを単純に強くするだけでは不十分です。免疫応答を抑
制する細胞群により、自己抗原などに対する不要・過剰な反応を抑制することが重要です。当研究
室は、生体内で免疫抑制を担う中心的な細胞群として CD25+CD4+制御性 T 細胞を同定しました。制御
性 T 細胞の働きを決定づける転写因子としての Foxp3 の同定をはじめとして、制御性 T 細胞の特徴
を解明してきました。免疫寛容のメカニズムの解明とそれに基づいた医薬への応用にむけた研究を
おこなっています。
(1) 制御性T細胞の基礎研究
いかにして免疫寛容が維持されるのか。通常のT細胞との違いは何なのか。分化はどのように
決定されるのか。これらの根本的な疑問に対して、分子レベルで明確な答えを提示すべく、研究
を重ねています。
(2) 制御性T細胞の抗腫瘍免疫応答へのかかわりの検討
がん患者の免疫応答を増強することによりがんを駆逐しようというがん免疫療法の臨床試験が
試みられていますが、現在までその効果は限定的なものです。その原因の一つとして多くの腫瘍
抗原が自己抗原由来であるために、がんに対する免疫応答が免疫寛容すなわち免疫抑制状態にな
っていることが挙げられます。その免疫制御の機序として、制御性 T 細胞による抗腫瘍免疫応答
制御の重要性が示されつつあります。当研究室では、制御性 T 細胞がどのようにして腫瘍内に集
積しているのか、さらにそれらの制御性 T 細胞をコントロールし、抗腫瘍免疫応答を増強するた
めの基礎的検討から臨床応用までの研究を行っています。
②
当研究室のテーマの中で、できるだけ期間内に完結する一連の実験に取り組んでいただきます。
③
予備知識の有無は問わないが、意欲と責任感のある学生を望みます。学問的にもそれ以外の面で
も樟極的に研究室に関わり、研究という作業の具体的な部分を学んでもらいたい。研究の面白さを
知るためには、基礎配属終了後も教室に出入りし研究を継続することが望ましい。
④
1名
43.免疫グループ感染病態
(熊ノ郷
淳
教授)
①
教室の研究の特色:本研究室では、免疫システムの制御・調節にかかわる機能分子の研究を行っ
ている。主として遺伝子欠損マウスを用いた免疫機能解析を行う。
② 配属学生への指導方針:免疫応答解析に必要な分子生物学的技術ならびに免疫学的手法を体験
し、学ぶ。
③ 学生に対する要望:将来、生命現象解明のためのオリジナルな自分の「窓」を持てるよう、確か
な実験手法としっかりとした思考法を身につけてもらいたい。
④
受け入れ可能人数:2 名
44.時空生物学講座
心生物学
(八木
健
教授)
①
当教室では脳機能の形成と制御に関わる分子メカニズムの解析を行っている。その際、遺伝情報
を個体レベルで操作する方法もとり入れている。主たる研究テーマは、以下のとおりである。
(1) 神経回路形成と機能に関わる遺伝情報の解析。
(2) 神経細胞の多様化メカニズムの解析。
②
研究活動をとおして科学的スキルの教育を行う。特に問題提起、実験のプランニング、実験技術
習得と開発、結果のまとめ、結果の考察について、対話形式での研究活動を行う。
③
科学者を目指す学生を希望する。
④
2名
45.蛋白質高次機能学研究部門
分子発生学
(古川 貴久
教授)
① 教室の研究の内容(http://www.protein.osaka-u.ac.jp/furukawa_lab/)
研究概要
当研究室は、脊椎動物の中枢神経系発生の分子機構を分子生物学、生体工学、組織学、生理学な
ど幅広い方法論を駆使して解明し、神経系の構築と機能発現の原理を解明することを目指していま
す。ゲノムに刻まれた遺伝プログラムが、いかにして神経細胞を作り、正確な神経回路を形成し、
生体での神経生理機能につながるのかを網膜視覚系を主なモデルシステムとして研究を進めていま
す。さらに、遺伝子から生理機能までの各ステップの異常がどのように人の病気につながり、それ
をどのように解決できるかといった医学的問題への貢献も積極的に進めています。私たちは、中枢
神経系発生の「遺伝子から個体生理機能・ヒト疾患までの統合的解明」を目指しています。
研究テーマ
1)網膜シナプス形成の分子機構
2)マイクロ RNA(miRNA)による中枢神経系の制御メカニズム
3)網膜 ON・OFF 神経回路の機能メカニズム
4)神経細胞分化に関わる遺伝子発現制御機構
5)神経系における細胞のアンテナ”繊毛”の発生機構と機能
②
主に上記の研究分野からディスカッションの上研究テーマを選び、その研究に参加してもらいま
す。分子生物学、免疫組織学、生化学、マウス生体工学、生理学などの様々な実験手法を学ぶこと
ができますが、特にマウスやゼブラフィッシュを用いた生体レベル(in vivo)の実験の経験をして
欲しいと考えています。できるだけ期間内にある程度まとまった研究結果を得ることを目標としま
す。なお、自宅で哺乳類のペットを飼っている者は動物飼育室への入室が許可されないため、受け
入れ不可です。
③
学生が研究を学ぶ上で、「素直に物事を吸収できる」「好奇心が強い」「楽観的」であることが大事
だと考えています。基礎配属は、研究というものを肌で感じることができる貴重な機会です。実験
そのものだけでなく、様々な研究スタッフや大学院生との積極的な交流を通じて基礎研究の流れを
学んでもらうとともに、研究の面白さも感じて欲しいと考えています。
④
1名
46.こころの発達神経科学講座
分子生物遺伝学
(片山 泰一
①
(1)
教授)
精神疾患の分子メカニズムの解明を目指した研究
近年の遺伝学的研究により、他の器質的疾患と同様、精神疾患においても発症リスクにかかわる脆弱性因子が多数報
告されるようになってきた。我々の研究領域では、統合失調症、うつ病などの主要な精神疾患脆弱性遺伝子を中心に、こ
れら脆弱性因子が脳と心の発達に及ぼす影響を解剖学的、細胞生物学的な手法を中心に検討を進め、児童思春期の精神疾
患の発症メカニズムを分子レベルで解明することを目的としている。例えば、Stathmin1,DISC1 とその相互作用分子
(DBZ,FEZ1,Kendrin 等)について研究を重ねてきたが、現在、
「神経における一次繊毛の役割」に特に注目して研究を行
っている。
(2)
蛋白質の翻訳後修飾に着目した神経・精神疾患発症機構の解明
蛋白質翻訳後修飾はリン酸化、ユビキチン化、メチル化、糖鎖修飾、など多数報告されている。これらは、近年、神
経・精神疾患発症経路、シナプス機能制御、虚血性細胞死等に関与することが報告されるようになり、非常に注目を浴び
ている。これらタンパク質の翻訳後修飾の内、我々は、①ユビキチン化様修飾の一つ、Small Ubiquitin-like Modifier (SUMO)
化に注目して研究を行っている。SUMO 化の変化が細胞内小器官(小胞体、ミトコンドリア、等)の働きに影響を与え、
精神疾患・神経疾患発症につながる可能性について分子生物学的・形態学的解析を用いて検討している。現在、「ミトコ
ンドリアの分裂と融合」に SUMO 化が関与するという興味深い結果を得て、詳細なメカニズムの解析を行っている。
また、他に注目している翻訳後修飾として②タンパク質のメチル化の影響について検討している。脳できわめて豊富
に惹起されているにもかかわらずこれまであまり注目を浴びてこなかった「タンパク質のメチル化」の意義に関して、ア
ルギニンメチル基転移酵素(PRMT)の細胞内小器官の機能調節への影響について研究する中で、細胞内小器官の中でも特
にゴルジ体の形態と機能に影響を与えていることを明らかにし、現在、その詳細なメカニズムを検討している。
(3)
自閉症スペクトラム(ASD)の早期気づき、診断、原因解明に関する研究
発達障害の一つ ASD は、人の気持ちが読めない、他人とのコミュニケーションが取れない、非常に限定的な著しい
興味対象(こだわりの強さ)という 3 つの特徴を有する胎生期、または生後早期に起きる神経発達障害であると言わ
れている。多くは 3 歳までに特徴が顕在化し、以後生涯に渡って特徴が持続するため社会生活上著しい困難を伴うこ
とがある。近年 ASD の有病率は増加の一途をたどっているが ASD の原因は不明であり、根本的治療方法はない。一
方で、できる限り早期に見つけ、診断に基づく早期の教育的介入(療育)を行う事により、予後が改善することが知
られていることから、早期診断・早期療育の実現が求められている。私達は、自閉症者脳において Serotonin Transporter
(SERT) 密度が低下しているという先行研究成果を踏まえ、脳における SERT 結合分子群を同定し、有用な診断法・原
因解明につなげる研究を行っている。
(4)
小胞体ストレス研究
私たちはこれまでに小胞体を中心とした細胞内小器官の異常(小胞体ストレス)が、アルツハイマー病・ALS 等の神経
変性疾患発症に関与していることを報告してきた。また小胞体ストレスに関連する分子が精神疾患患者で大きく変化し
ていたことが報告されたことから現在、細胞内小器官の障害が精神疾患発症に関わる可能性について検討中である。ま
た、これまで行ってきた小胞体ストレス研究も継続して行っている。
②
研究室配属の際には相談して上記の研究テーマを選び、スタッフと一緒に研究を進めていく。テーマによって、習得
できる手技の程度に差は生じるが、基礎配属終了時には分子生物学的手法、形態学的手法、生化学的手法など基本的実
験手技が習得できる。
③
実験に興味があり、意欲のある人を求めている。また、研究科の性格上、こころの問題の解明に将来携わってみたい
人(支援技法、診断技法等)、基礎配属終了後も継続して研究室に来ようと考えている学生は大いに歓迎する。
④
2名
47.細胞制御学
(中田
慎一郎
独立准教授)
①教室の研究の特色
生物が健康でいるためにはゲノムが安定に保たれていることが必要です。ゲノムの安定性が崩れる
と、発癌や早老といった疾患つながるという観点から、DNA損傷応答・修復の研究を通してゲノム安
定性維持機構の解明を目指しています。
②学生への指導方針
現在研究室で実施している研究プロジェクトの中の一部を担当していただきたいと考えています。細
胞を用いた分子生物学・細胞生物学実験を行いながら、実験の組み立て方、結果の解釈について教室
の教員や研究員とともに議論を進めていきます。当研究室では動物実験を行っていないため、動物実
験を体験することはできません。
③学生に対する要望
短い期間ですが、自分の研究活動により科学を1歩でも進めたいというような動機を持つ方、受け身
ではなく積極的に研究に取り組みたいという方を歓迎します。
④受入れ可能人数
2名
48.分子行動神経科学
(松尾
直毅
独立准教授)
①
ヒトを含む動物には、多様な外界情報を脳内に記録して、それを適切に引き出す機能が備わっています。この仕組
みのおかげで私たちは刻々と変化する環境に適した判断を下し、行動することができます。一方で、その破綻は認知
行動・精神の障害を引き起こします。本教室では、主に遺伝子改変マウスを用いた実験行動心理学、分子・細胞生物
学、神経生理学、イメージングなどの融合的手法を駆使することにより、記憶情報を担う神経細胞群・回路の可視化
や人為的活動操作を行い、記憶・学習の実体・動作原理の本質的理解に迫るための基礎研究を行っています。
(http://www.mbn.med.osaka-u.ac.jp/mbn/Home.html)
② 本教室で行っているプロジェクトの一部を担当して頂きたいと考えています。短期間ですので、マウスを使った簡
単な行動実験と免疫組織化学染色、蛍光顕微鏡観察、解剖学的解析が中心になると思います。研究スタッフに実験技術
や考え方を習いながら研究を進めてもらいます。
③
研究成果は短期間で簡単に得られるものではありませんが、不思議と思う生命現象の謎を自らの手で論理的に解き
明かしていく愉しみを少しでも直接肌で感じてもらいたいと願っています。責任感をもって根気よく積極的に研究に
取り組む意欲のある学生を希望します。なお、自宅で齧歯類を飼育している者は動物施設への入室が許可されないた
め、残念ながら受け入れ不可となります。
④
2名
49.国際・未来医療学講座
① 教室の研究の特色
経済、政治、文化、スポーツといった多くの分野で、国境を超えた活動が広がっていま
す。さらに、近年では日本が培ってきた知見や高度な医療水準を活かし、医療分野で国
際貢献を果たしていくことが国家的重要課題とされています。阪大附属病院は厚生労働
省「外国人医師等研修受入れ推進事業(JMIP)」の認証を受け、また「医療機関における
外国人患者受入れ環境整備事業」の 10 拠点病院の 1 つに選定されました。当教室では、
さらにグローバルな教育に取組み、外国人患者の統計や医療通訳のあり方に関する研究
など国際医療に関わる研究を行っております。また、海外からの外国人患者さんへの診
療のサポートや世界各国からの医療研修などのインバウンドを進めています。
② 学生への指導方針
担当学生さんとまず面談を行い、フレキシブルに対応させて頂きたいと考えています。
マンツーマンで OJT 形式にて国際医療の実地経験を積んで頂き、課題発見や研究に従
事してもらいます。
・阪大病院およびりんくう総合医療センターでの外国人患者への通訳・国際医療コーデ
ィネーター業務の実習
・当教室が開催している大阪大学社会人向けエクステンション講座、医療通訳養成コー
スの聴講やお手伝い
・国際臨床医学会の参加と準備
③ 学生に対する要望
ブラジルやアメリカの帰国子女、中国出身、中東各国での診療経験のある先生など、国
際色豊かなメンバーで構成されています。英語が得意な方、英会話が好きな方、他の外
国語が話せる方だけでなく、外国や国際交流に興味のある方に、日常診療の形を超えて
国際医療の現場を経験して頂けると思います。医学教育は、総合性と専門性をともに極
める必要があります。国際医療を通して、より広い視野を身につけて頂けたらと考えて
おります。
なお、学会など休日の実習の可能性があります。ぜひ参加して頂けたらと思っています。
④ 受け入れ可能人数
1名