MOBIUS BLOG 新興国市場をめぐる冒険の旅情報提供資料 BRICSによる新開発銀行の設立マーク・モビアス, Ph.D. エグゼクティブ・チェアマンテンプルトン・エマージング・マーケッツ・グループ 2014年8月29日執筆今年7月、“BRICS”（ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ）”として知られる新興国5ヵ国の首脳会議がブラジルのフォルタレザで開かれ、新開発銀行 (New Development Bank )の設立が発表されました。興味深く、また重要なことに、今回の声明は国際通貨基金（IMF）と世界銀行を設立したブレトンウッズ協定の70周年記念式典と時期が重なることとなりました。BRICSによって新たに設立される銀行は、融資面でIMFと世界銀行の代替機関としての役割を担う見通しであり、当初の資本金を500億米ドルとし、主にインフラ整備や持続可能な開発を目指したプロジェクトへの融資を行う予定です。また、加盟国が財政難に陥った場合の支援を目的とした1,000億米ドル規模の緊急時外貨準備金基金（Contingent Reserve Arrangement）を創設しました。1 BRICS当局者は、2016年に最初の融資を実行する意向であると述べました。理論的には、新開発銀行が世界経済にとって有益であることは明らかですが、実際、どのように機能するかは定かではありません。これまで、主に米国と欧州が世界銀行とIMFの主導権を握ってきたため、新興諸国は議決権拡大を含む地位の向上を求めてきました。設立当初はIMFや世界銀行に比べてかなり小さい規模になるものの、新開発銀行は新興国のプレゼンスを高める媒体と成り得ます。また、世界の主要国は米ドルが準備通貨や国際貿易において支配的であることに懸念を抱いていることも事実です。米ドルの支配的な地位は、特に最近のロシア・ウクライナ危機にみられるような制裁措置において、米国を戦略的に有利な立場に置きます。新開発銀行による新興国市場への当初の影響は、多くの国々にとって以前は存在しなかったインフラ事業の新たな資金調達先と成り得ることです。また、いずれは米ドル以外の通貨を用いた商取引の決済機関に発達する可能性があることから、新興国での貿易において多様な通貨での取引に向けた動きが強まることも期待できます。このため、為替トレーダーや投資家は、通貨のリスク・モデルを見直す必要に迫られる可能性があるでしょう。もしBRICS諸国の目的が一致すれば、加盟国ならびに新開発銀行は国際金融のあり方を変える非常に強力な存在と成り得るでしょう。当然、大きな課題となるのはこれらの国々がまず目的で合意に至ることができるか、という点です。 (続く) 後掲の「当資料のお取扱いにおけるご注意」を必ずご覧下さい。 Copyright ©2014 Franklin Templeton Investments. All Rights Reserved. FRANKLIN TEMPLETON INVESTMENTS 情報提供資料 (続き) BRICS諸国の経済規模は明らかに異なっており、また一部の国の経済力が他国に劣る（または優る）場合が生じ得るものの、新開発銀行の資本金は5ヵ国で均等に出資されます。経済的に豊かな国々がより優位な立場に置かれ、また外貨準備残高が最も高い中国が決定権を握る可能性などを踏まえると、これは非常に重要なことであると思います。緊急時外貨準備基金に関しては中国が最大の410億米ドルを拠出する予定となっており、基金の本部が上海に置かれるのも当然でしょう。世界の金融システムに比べて、新開発銀行の規模は小さいものですが、今後の展開を注視する必要があります。経済状況が大きく異なる国々が統制を図りながら融合し、長期的な成功を収めることは果たして可能なのでしょうか？これは大きな疑問です。加盟国はそれぞれ異なる経済的、歴史的そして文化的な背景を持っています。中国は5ヵ国の中でもっとも経済的に豊かな国であることから、同国が支配的な役割を得ることへの懸念も間違いなく生じるでしょう。初期の段階において、中国とインド - 初代総裁はインドから選出される見通し - が最も大きな役割を担う可能性があり、成功による恩恵を最も享受するものと思われます。また、今後はロシアとブラジルがより重要な位置付けを占めることが予想されます。最初の理事会会長と取締役会長は、それぞれロシアとブラジルから選ばれる予定です。また、第6回BRICSサミットの共同宣言によると、アフリカ地域センター（The NDB Africa Regional Center）が南アフリカに本部と共に設立されます。南アフリカは、アフリカで最もインフラ整備が進んでおり、アフリカ大陸全体の経済成長を新たな段階に導く可能性を秘めています。今回の計画を成功させる上で、解決すべき課題がまだいくつか残されています: 主にどの国の通貨が主要通貨となり、また融資条件においてどのような目標を優先すべきか、などの問題です。今回の試みが良い結果をもたらすか否かは、現時点では分かりません。もし、これらの国々が協力し合い、新たに設立された銀行を成功に導くことが出来れば、その他の多くの新興諸国もメリットを享受することが期待できます。今後、BRICS諸国を中心とする新興国市場への資金流入が拡大した場合、貿易においてこれらの国々と強い結びつきを持つ世界経済全体に良い影響をもたらすことでしょう。後掲の「当資料のお取扱いにおけるご注意」を必ずご覧下さい。 Copyright ©2014 Franklin Templeton Investments. All Rights Reserved. 2 情報提供資料 FRANKLIN TEMPLETON INVESTMENTS 当資料に言及されるコメント、意見、分析は情報提供のみを目的としており、投資助言や特定の証券、運用戦略を推奨するものではありません。市場や経済環境は急速に変動することがあることから、運用担当者のコメント、見解、分析はあくまでも当資料の作成時点におけるものであり、その内容は予告なく変更されることがあります。当資料の内容は特定の国、地域、市場、産業、投資および戦略の重要な事実についての完全な分析を意図するものではありません。重要事項すべての投資にはリスクがあり、元本を割り込むことがあります。外国の資産への投資は、為替の変動や政治、経済情勢の不確実性などに起因する特殊なリスクを伴います。また、これらの要因に加え、フロンティア市場を含む新興国市場は、市場規模が小さいことや、流動性の低さ、また金融市場の支えとなる法的、政治的、商業的、また社会的な体制の整備が不十分であることなどから、より高いリスクを伴います。また、フロンティア市場は、これらの社会制度の整備で更に後れを取っており、極端な価格変動、流動性、証券取引の障壁、為替管理など様々な要因が存在することから、新興国市場のリスクは、フロンティア市場においてより高いものとなります。為替は短期間において著しく変動し、リターンを低下させる可能性があります。 1. 出所: Sixth BRICS Summit, Fortaleza Declaration （2014年7月）当資料は、Mark Mobiusのブログ（Investment Adventures in Emerging Markets）の「Banking on BRICS」を翻訳したものです。オリジナル英語版は http://mobius.blog.franklintempleton.com/ でご覧いただけます。 ●当資料はフランクリンテンプルトンインベストメンツ（フランクリン・テンプルトン・リソーシズ・インクとその傘下の関連会社を含みます。）が作成したものを、フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ株式会社が抜粋・翻訳した資料であり、特定のファンドの勧誘を目的とするものではありません。 ●フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ株式会社が設定・運用する投資信託は、国内外の株式や債券など値動きのある金融商品等に投資します（外貨建資産には為替変動リスクもあります。）ので、基準価額が変動し、投資元本を割り込むことがあります。従って、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益はすべて投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金とは異なります。また、投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、各ファンドの最新の投資信託説明書（交付目論見書）をご覧ください。 ●当資料は信頼できると判断した情報に基づいて作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に記載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。当資料の内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なく変更されることがあります。 ●当資料にかかわる著作権その他の一切の権利は引用部分を除き当社に帰属します。当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りします。フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ株式会社金融商品取引業者関東財務局長（金商）第391号加入協会／一般社団法人投資信託協会一般社団法人日本投資顧問業協会後掲の「当資料のお取扱いにおけるご注意」を必ずご覧下さい。 Copyright ©2014 Franklin Templeton Investments. All Rights Reserved. 3