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☆SPECIAL REPORT(霞ヶ関インサイド)
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<No.9181>
2003. 4. 18 (金)
第1回パリクラブ、公的債務の決定優先
―― イラク債務削減、リスケなど具体策には踏み込まず
4月 23〜24 日、イラクの対外債務削減計画を話し合うパリクラブ(主要債権国会議)
が開催される。日本からは財務省の担当補佐が出席する見通しだが「まずは各国が抱える
公的債務の数字を固めるのが先決」(渡辺国際局長)のため、今回会合ではリスケジュー
ル、リダクション――など、具体的手段までは合意されない見通し。しかし現在、米露と
もイラクの債務削減に前向きな姿勢を示しているが、民生用債権の保有国と、ロシアのよ
うに軍事債権を保有する国との間で「同列に扱われることに非難の声が挙がることが予想
される」(同)という。世銀・IMFによる復興需要調査にもアフガン以上の期間がかか
る見通しだけに、イラクの対外債務・復興計画を巡る交渉は長期化が必至のようだ。
23〜24日パリクラブで公的債務議論=仏政府に各国が債務額を申請
今月 23 日から、イラクの対外債務問題をめぐって最初のパリクラブが開催され
る。現時点で事務局の仏政府からペーパーは届いていない模様だが、日本からは財
務省・国際局開発政策課の担当補佐が出席する予定となっている。重要な問題の割
に事務方クラスが出席することに意外感も持たれるが、これは中尾開発政策課長の
日程が合わないことが一因の他、「まずは公的債務の数字を固めるのが先決」(渡
辺局長)という当初目的が影響したもの。各国とも、要人クラスは参加しない方向
にあるという。
既にパリクラブに対しては、各国から対イラク公的債権の金額が徐々に提出され
ており、第1回会合では民間部門ではなく、削減計画のたたき台となる各国の公的
債権の数字を固めるのが優先される。日本でも民間部門については、経済産業省が
国内企業からヒアリングを開始したばかり。そのためリスケ、リダクションなど「具
体的な削減手段までは踏み込まないだろう」(同)との見通しが示されている。
ただ、今後の議論の過程では民生用の債権を持っている国と、ロシアなど軍事債
権を保有する国でどちらが優先されるのかで衝突も予想されている。91 年の湾岸
戦争以降、主要国のイラクに対する貿易は途絶えることとなったが、旧ソ連時代か
らの武器供与はフセイン体制の温存に大きく寄与した。日本のように発電所建設が
ストップしたケースなど、民生用債権の保有国から「同列に扱われることに非難の
声が挙がることが予想される」(同)のである。また、昔の1ドル=0.6 ルーブル
時代の対外債務と、現在の1ドル=30 ルーブル台では 100 倍を超える開きがある
ため、いつの時点での対ドルレートで債務額を換算するかも焦点の1つだ。
米側も債務カットを強く主張できず!?=復興計画も含め、議論長期化へ
これまで、イラクの対外債務削減計画を巡っては、スノー財務長官が米FOXテ
レビに出演した際、債務免除(debt relief)という言葉を用いたことが関心を呼ん
だ。これは債務削減(debt reduction)を念頭においた発言であり、イラク向け債
権の最大保有国ロシアも削減に応じる意向を示していただけに、ワシントンG7で
も reduction、cut といった削減案が議論された可能性が指摘されてきた。
しかし、G7コミュニケは債務問題(debt issue)という表現に留まり「リスケ、
削減などのあらゆる手法を含むもの」(同)として、米側からは積極的な削減要請
はなかったとされる。もちろん日本政府としては、アフガン復興と異なり「イラク
が石油産出国である以上、リスケにはあるていど対応せざるを得ないが、削減には
応じられない」(同)とのスタンスを変えていない。
なお、今後のイラクの復興支援計画については、世銀・IMFの復興需要調査(ニ
ーズアセスメント)が必用になるわけだが、これは IMFc で 24 ヶ国の財務相の合
意によって決まったもの。当初こそ、ウォルフレン世銀総裁が「復興支援にも国連
決議が必用」とし、世銀側で国連が関与しない復興計画に懸念を示していたが「更
なる国連安保理決議を支持」という IMFc コミュニケの文言の通り、国連決議の必
要性は除去された。アフガン復興の調査でさえ6週間を要していただけに、イラク
のケースではさらに長期間の復興調査が掛かる見通し。債務削減・復興計画とも議
論の長期化は必至となりそうだ。(了)
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