CONSULTING for INTERNATIONAL FINANCIAL INFORMATION ☆SPECIAL REPORT(ワシントン・ウォッチャー) 大統領選控え、為替問題紛糾の兆し [email protected] <No.9317> 2003. 6. 19 (木) ―― スノー長官が人民元安を懸念=米債買い鈍化で? スノー米財務長官が 16 日、「中国が柔軟な為替相場への移行に関心を持っていること について、我々はこれを評価している」と発言した。同日には、米ロビー団体「健全なド ルのための同盟」が「アジア通貨操作モニター」と題するレポートを毎月 1 回発刊すると 発表。米国内でドル高是正への関心が高まっている状況は警戒される。なお同・同盟では、 レポートを米財務省・米議会に配布し「米行政府・議会関係者へのロビーイングの際の材 料として使用する方針」(同)だという。今夏から選挙資金集めが本格化する大統領選に 向け、キャピトル・ヒルで為替問題がメインテーマになることは必至のようだ。 中国通のスノー氏が人民元に懸念=永続的でない状況を問題視 18 日付・ワシントンポスト紙 China May Float Currency, Snow Says による と、16 日の講演でスノー財務長官は「中国は人民元高を許容しようとしている、中 国がそう望んでいるのは明らかだ」と発言。また「中国が市場連動型で、柔軟な為 替相場への移行に関心を持っていると理解しており、我々はこれを評価している」 とも述べ、1 ドル=8.3RMBに固定された人民元相場について「人工的に低く設定 されている」と非難した。 こういったスノー氏の為替発言に対し、ゴールドマン・サックス証券が「中国は 今後半年以内に、人民元の取引レンジを拡大させる」とのレポートを発表したこと が影響した可能性も予想されたが、スノー氏は同レポートに目を通していない旨を 言及。ただ、ドル高是正が進んでいるタイミングでの人民元発言だっただけに、市 場で違和感が持たれたのは無理もない。 もともとスノー氏は、CSX時代にアジア向けビジネスをしていた経歴から「自 称・中国通」(同)として知られる。2001 年には米中経済交流に貢献した財界人と して、米中国際交流財団からマルコ・ポーロ賞という栄誉を受けた経緯もある。「ス ノー氏は人民元のペッグ制はアン・サスタナブルなものとして認識している」 (同)以上、変動相場制への以降時期がいつになるかはともかく、関心を寄せてい るのは間違いないようだ。 中国の経常収支悪化も背景に?=米産業界のロビーイング加速 その一方、米政府が中国の為替制度の持続性に警戒感を示す背景として、経常黒 字の減少という要因も指摘されている。中国はこれまで経常赤字を貿易黒字・直接 投資の流入によって補っていたが、SARS(重症急性呼吸器症候群)の影響でこ れが鈍化。経常黒字の減少が予想されている。 実際、FEDが発表している米財務省券の保有伸び率も、中国の保有額は4月に 1194 億ドルに留まり、前月の 1177 億ドルから 17 億ドルの増加に留まった。「非公 式な数字だが、中国では外貨準備の新規分を米債・ユーロ債に均等配分している模 様」(同)といった要因も指摘されているものの、中国の保有する米国債シェアが 日本に次ぐ第2位となっている以上、米政府が中国の為替制度・外貨準備に神経質 にならざるを得ない状況は理解できそうだ。 なお、約 50 の米業界団体が属するロビー団体「健全なドルのための同盟 (Coalition for Sound Dollar)」は 16 日、毎月「アジア通貨操作モニター Asian Currency Manipulation Monitor 」を発刊すると発表。このレポートでは日本・ 中国・韓国・台湾がドル買い介入で為替操作を行っている点を問題視しているが、 全米製造業者協会(NAM)のバルゴ副理事長が中国を批判する一方、自動車貿易 政策協議会(ATPC)のコリンズ理事長が日本に批判の重点を置いている点が興 味深い。 現在のところ、当地で今回の動きは冷静に受け止められているが、ビッグ 3 が基 盤となるATPCが対日批判を強めてくる可能性は、今後の大統領選を占う上で警 戒される。今夏から選挙戦に向けた資金集めも活発化するだけに、為替問題が長期 化するのは必至となりそうだ。(了) ※本レポートは情報提供のみを目的に作成されたもので、投資・運用に当たっての最終的な判断は、お客様の責任に委ねられま す。全ての著作権は株式会社マネーアンドマネードットコムに帰属します。記事・図表の無断転載を禁止します。 Money and money dot com Ltd. Tel: 03-3523-0321 Fax: 03-3523-0320
© Copyright 2024 Paperzz