資料2:質量で決まる星の一生

超大質量星
生まれたときのガス球の質量
(単位太陽質量)
惑星
0.001
木星
褐色矮星(0.08 倍以下)
0.1
太陽
1
恒星
100
これまでに観測された最も重い恒星
脈動不安定星
5
膨れたり縮んだりを繰り返ししながら質量を失い
やがて質量が太陽の 100 倍以下の恒星になる
10
ブラック・ホール(相対論的に不安定な恒星)
もはや、ガス圧で重力を支えられずに
そのまま重力崩壊する
108
恒星の構造と進化の機構
1)恒星は高温度・高密度のガス球?
古来太陽は炎なりとされてきたが,ルネッサンス以降になると夜空の星々も太陽と同じで
あると考えられるようになった.19 世紀後半から 20 世紀初頭にかけて熱力学,気体運動
論等が発展すると,恒星の構造を大量のガス球として理解しようとする試みが始まった.
・恒星はなぜ飛び散ったり,潰れたりしないでいられるか?(力学的な安定性)
星には閉じ込める壁がないにもかかわらずガスが飛び散ってしまわないのは,原子同士
の間に重力=万有引力が働いているからである.逆に,ガス球がこの引力でつぶれないで
いられるのは、原子がランダムな熱運動で互いに衝突を繰り返し反発力=圧力を生じるか
らである.
恒星は,自分の重力と圧力がつりあっているときだけ存在できる.
破れる
―→ 重力崩壊,飛散(超新星爆発)
2)恒星のエネルギー問題
太陽は過去 46 億年の間ほぼ変わらぬ明るさを保ってきた.したがって,これまでに光とし
て放出されたエネルギーは,1kgあたり 3x1043 J石油のエネルギーの約百万倍.
このエネルギーの供給源問題の解決は (原子) 核エネルギーの発見によってもたらされた.
1905 年に発表されたアインシュタインの特殊相対性理論によると質量(m)とエネルギー
(E)は互いに変換でき,その関係はE=mc2(cは光速).
・太陽内部での原子核融合反応
4個の水素原子 ―→ 1個のヘリウム原子
(水素+水素 ―→ 重水素: 重水素+重水素 ―→ ヘリウム)
質量の違い:1個のヘリウム原子は4個の水素原子より0.7%軽い.
1kgあたり発生するエネルギーは E = 0.007x(3x108 )2 = 6x1014 J.
すでに太陽の中心部で約 1/20 の水素がヘリウムに変化している.
核反応することができるのは中心部に 1/10 ―→ 太陽の寿命は約100億年
3)太陽はなぜ爆発しない? (恒星の熱的な安定性)
内部で核反応が起きている恒星は,形態としては発火した核爆弾と同じ.にもかかわらず,
なぜ,太陽は46億年の間爆発せずに殆ど変わらない明るさで輝きつづけられたのか?
爆発の機構:
爆薬(燃料)に点火 ―→ エネルギー発生し,その結果,温度が上昇 ―→ 反応率があ
がり,エネルギー発生率が増加 ―→ 温度上昇 ―→ エネルギー発生率が増加 ..
..
...
――→発生したエネルギーによる圧力の増加で,爆弾(燃料)とその容器が飛び散る
「負の比熱」= 核反応の自動制御機構
力学的平衡状態にあるガス球=恒星は,加熱すると温度が下がり,逆に冷却すると温度
が上昇する.これは,通常の物質と逆で,自分自身の重力が支配している系=自己重力系
で現われる,われわれの日常的な経験と異なる不思議な性質である.
・「負の比熱」の機構:
加熱 (冷却) ―→ 圧力が増加(減少)―→ 重力との釣り合いを回復するために膨張(収
縮)―→ 膨張(収縮)とともに重力も減少(増加)するので,圧力が加熱(冷却)前の値
に戻っても圧力が勝っているのでさらに膨張(収縮)は進む ―→.その結果,加熱(冷却)
した以上のエネルギーが膨張(収縮)に伴う重力エネルギーの増加(減少)に費やされ,
熱エネルギーはかえって減少し,温度は加熱以前より下がる
恒星の「負のフィード・バック」
温度上昇 ―→ 核反応が早くなって,エネルギーの発生が増加(加熱)―→ 温度が下降
温度下降 ―→ 核反応が遅くなって,エネルギーの発生が減少(冷却)―→ 温度の上昇
「内部の核反応によるエネルギーの発生 = 表面からの光によるエ
ネルギー」となる定常状態を実現し,安定に保つことができる
水素が燃え尽きると,中心部の温度が上がり,
核反応「3個のヘリウム原子 ―→ 1 個の炭素原子」 が始まり,
その次は,原子炭素同士,次は,酸素同士が,と続き
最期には,もっとも質量の小さい鉄にいたる.
質量で決まる星の一生
M>0.08M☉
星 間 雲
H
He
H 外層
褐色矮星
ヘリウム
白色矮星
超新星爆発
全体飛散
M>0. 6 M
炭素酸素
白色矮星
C,O
He
H 外層
M > 8M☉
O,Ne,Mg
M>12M☉
C,O
He
H 外層
超新星爆発
中性子星
Si,Mg
O, Ne, Mg
C, O
He
H 外層
Fe
Si,Mg
O, Ne, Mg
C, O
He
H 外層
M < 30M☉
M > 30M☉
超新星爆発
中性子星
ブラック
ホール
図3.恒星進化の模式図(Mは恒星の初期質量、M☉は太陽の質量を表す)