2009年1月6-7日 於 タンデム研究会、東海 タンデム加速器 タンデム加速器を 加速器を用いた 核化学研究の 年 核化学研究の25年 -核分裂、 核分裂、新核種探索 そして超重元素核化学 そして超重元素核化学- 超重元素核化学 先端基礎研究センター 永目諭一郎 核化学研究25 核化学研究25年 25年のあゆみ (市川) 市川) (浅井) 浅井) (末木) 末木) (塚田、 塚田、豊嶋) 豊嶋) 1.アクチノイドの アクチノイドの核分裂 核分裂: 核分裂: 原子力エネルギー 大きな原子核の変形 多体系の集団運動 核分裂に到る質量分割機構? ウランなどのアクチノイド核分裂 -対称質量分割と非対称質量 分割 二つの分割過程がどういう変形 を経て、質量分割に到るのか? Two-mode fission仮説 by Turkevich & Niday(1951年) 核分裂には質量が対称に分割されるモードと非対称に分割されるモードが 存在し、それぞれが異なる核分裂障壁を持つ。 二重モード核分裂(two-mode fission)の実験的検証 入口(サドル点) 出口(切断点) 1.入口チャネル サドル点-核分裂障壁 2.出口チャネル 切断点 3.入口と出口の相関 1.1 入口チャネル 入口チャネル- チャネル-核分裂障壁 対称、非対称核分裂生成核種の断面積-入射エネルギー依存性 アクチノイドの 陽子誘起核分裂 p + 232Th 233,235,236,238U 237Np 239,242,244Pu 241,243Am 248Cm 異なるエネルギー依存性 → 異なる核分裂障壁 異なる核分裂障壁 なる核分裂障壁 Bfsym – Bfasym ~ 2 MeV T. Ohtsuki et al., Phys. Rev. C 48, 1667 (1989). 1.1 入口チャネル 入口チャネル- チャネル-核分裂障壁 核分裂生成物の放出角度分布 → サドルでの原子核の状態 2 K0 = I eff Tsaddle h2 I2 W (180o ) = 1+ 2 o W (90 ) 4K0 Ieff: 有効慣性モーメント Tsaddle: 核温度 I: 全角運動量 異なる角度異方性 異なるK なる 02 → 異なるサドル なるサドル点 サドル点 T. Ohtsuki et al., Bimodal nature of nuclear fission, in Heavy Elements and Related New Phenomena, 1999. K. Tsukada et al. Eur. Phys. A 2, 153 (1998). 15 MeV p + 232Th 1.2 出口チャネル 出口チャネル- チャネル-切断点の 切断点の状態( 状態(形状) 形状) 核分裂片の 核分裂片の運動エネルギー 運動エネルギー 1.44 Z 1 Z 2 TKE = D1 + D2 二つの分裂片の電荷中心間の距離 → 分裂時の変形度 Double TOF spectrometer A1 = A f (1 + v1 v2 cm −1 ) cm 1 cm cm TKE = A f v1 v 2 2 T. Ohtsuki et al., Phys. Rev. Lett. 66, 17 (1991). 12 MeV p + 232Th 同じ質量分割に対して 2種類の切断点形状 低エネルギー成分 (伸びた形状) → 対称質量分割 高エネルギー成分 (コンパクトな形状) → 非対称質量分割 T. Ohtsuki et al., Phys. Rev. Lett. 66, 17 (1991). 1.2 出口チャネル 出口チャネル- チャネル-切断点の 切断点の状態( 状態(励起エネルギー 励起エネルギー) エネルギー) 核分裂片からの 核分裂片からの中性子放出数 からの中性子放出数(ν 中性子放出数 ν) 対称質量分割-ν多い-分裂片の励起エネルギー大 非対称質量分割-ν少ない-分裂片の励起エネルギー小(殻効果) I. Nishinaka et al., Phys. Rev. C 70, 014609 (2004). 1.3.入口と 入口と出口チャネル 出口チャネルの チャネルの相関 p + 232Th 2種類の運動エネルギー成分 の入射(励起)エネルギー依 存性 E = 14.7 MeV p E = 12.0 MeV p Relative Yield 100 低エネルギー成分 (伸びた形状) → 対称質量分割成分と同じ エネルギー依存性 -1 10 p+ 232 Th -2 10 110 120 130 140 Mass Number 150 160 高エネルギー成分 (コンパクトな形状) → 非対称質量分割成分と 同じエネルギー依存性 Y. Nagame et al., Phys. Lett. B 387, 26 (1996). 二重モード fission)の の実験的検証 二重モード核分裂 モード核分裂(two-mode 核分裂 高い核分裂障壁 → 切断点で 長く伸びて → 対称質量分割 saddle scission Asymmetric saddle lower threshold Second minimum Symmetric saddle higher threshold 低い核分裂障壁 → 切断点で はコンパクトな形状で → 非対称質量分割成分 Compact asymmetric scission configuration Elongated symmetric scission configuration サドル点から切断点へ 至る二つの独立した 変形経路 Deformation Y. Nagame et al., Phys. Lett. B 387, 26 (1996). 二重モード ) 二重モード核分裂 モード核分裂の 核分裂の理論計算( 理論計算(234U) P. Möller, A. Iwamoto et al., Nature 409, 785 (2001). 二重モード 二重モード核分裂 モード核分裂の 核分裂の系統性 切断点における原子核の変形度 β= 実験的にTKEから求まる二つの分裂片の電荷中心間の距離 二つの球形核が接している場合の電荷中心間の距離 非対称質量分割 βasym = 1.53 ± 0.02 アクチノイド: アクチノイド:二重モード 二重モード 重アクチノイド: アクチノイド:新たな出口 たな出口チャネル 出口チャネル? チャネル? 対称質量分割 βsym = 1.65 ±0.03 βsym = 1.33 分裂片(132Sn)の殻構造? Y. L. Zhao et al., Phys. Rev. Lett. 82, 3408 (1999). 重・超アクチノイド核 アクチノイド核の自発核分裂特性 自発核分裂特性 Z N Cf Es Fm Md No Lr Rf 146 148 ? 150 248Cm(15N, 4n)259Lr (6.3 s) 248Cm(18O, 4n)262Rf (2.1 s) 248Cm(16O, 5n)259Rf (3.0 s) 248Cm(19F, 4n)263Db (27 s) 248Cm(19F, 5n)262Db (34 s) 152 154 156 157 Yield(%) 158 159 14 10 6 2 160 110 150 110 150 110 150 110 150 110 150 110 150 110 150 Mass number of fragments M. R. Lane et al., Phys. Rev. C 53, 2893 (1996). 極限領域での 極限領域での核分裂 での核分裂 超重核領域? 超重核領域? 180Tl 99 EC-delayed fission →asymmetric fission K.-H. Schmidt et al., Nucl. Phys. A693, 221 (2000). 2.同位体分離器を 同位体分離器を用いた新核種 いた新核種の 新核種の発見 233U(6Li, 6n)233Am 235U(6Li, 5n)236Am 237Np(6Li, 6n)237Cm 239Pu(6Li, 4n)241Bk 233,236Am, 237Cm, 241Bk 159Pm, 161,162Sm 165,166Gd, 166,167,168Tb 82 121La 陽子数 125,127Pr 50 163,164,165,166Eu 28 82 20 126 238U(p,f) 50 8 2 20 28 2 8 中性子数 原子力機構 市川進一氏より 3.超重元素の 元素の化学 1 1 H 18 2 3 13 5 14 6 15 7 16 8 Li Be B C N O F Ne 11 12 13 14 15 16 17 18 Al Si P S Cl Ar 31 32 33 34 35 36 Na Mg 19 20 3 21 4 22 K Ca Sc 37 38 39 Rb Sr Y Zr 55 56 57 72 73 74 Cs Ba La Hf Ta W Re Os 87 88 89 104 105 106 107 Fr Ra Ac Rf Db Sg 57 58 59 60 La Ce Pr 89 90 91 92 93 Ac Th Pa U Np ランタノイド アクチノイド 17 9 He 2 4 10 5 23 6 24 7 25 8 26 9 27 10 28 11 29 12 30 Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Se Br Kr 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn 108 109 110 111 112 113 114 115 116 Bh Hs Mt Ds Rg 112 113 114 115 116 61 62 63 Nb Mo Tc 75 Ru Rh 76 64 Nd Pm Sm Eu Gd 94 95 96 Ga Ge As 65 66 67 Tb Dy Ho Er 97 98 99 100 Pu Am Cm Bk Cf 68 69 70 Tm Yb 101 118 118 71 Lu 102 103 Es Fm Md No Lr 加速器で合成される未知の元素の性質 周期表の拡張 超アクチノイド元素 アクチノイド元素の 元素の合成 -248Cm(18O, 5n)261Rf反応 反応の 反応の励起関数- 励起関数- Present Silva et al . PSI Ghiorso et al . 101 211m Rf + 90 95 E lab 100 / MeV 105 110 2 57 No 26 s At 214m 7.5 8 8.5 Po Po Fm 3. 0 d 212m 214 7 253 211m At + At + 211m 0 p / 4.0 h) Rf 78 s 215 Fr 10 16 261 Po 15 5 10-1 85 O (2.35 x 10 261 20 218m 100 18 257 25 94-MeV No Po 30 Counts per 20 keV Cross section / nb 102 9 9.5 10 10.5 11 11.5 12 α-Energy / MeV 最大生成断面積 : ~ 13 nb at 94-MeV 18O 生成率: ~ 2 原子/分 → シングルアトム化学 (Atom-at-a-time chemistry) Y. Nagame et al., J. Nucl. Radiochem. Sci. 3, 85 (2002). 実験の 実験の操作手順 He 冷却ガス 冷却ガス 248Cm 18O ターゲット 248Cm ビーム + 18O → 261Rf (78秒) + 5n ビームストップ 真空遮断窓 反跳生成物 ガスジェット搬送 ガスジェット搬送 化学実験室 生成物の 生成物の捕集 迅速化学分離装置AIDA 迅速化学分離装置 生成物の 生成物の溶解 化合物の 化合物の生成 高速液体クロマト 高速液体クロマト グラフ分離 グラフ分離 80 秒サイクル 試料調製 試料調製 α線測定 He 冷却ガス 冷却ガス 248Cm 18O + Gd ターゲット( 箔上に ターゲット(Be箔上 箔上に電着) 電着) ビーム 化学実験室 水冷 ビームストッパー ハーバー箔窓 ハーバー箔窓 2.0 mg/cm2 He/KCl ガスジェット 反跳生成物 ガスジェット 搬送 信号取りだし 信号取りだし 照射実験室 パルスモーター α線検出器 前置増幅器 エアーシリンダー 溶離液 マイクロカラムカートリッジ ハロゲンランプ He ガスヒーター 実験装置AIDA 実験装置 試料皿供給装置 ラザホージウムの ラザホージウムのフッ化物形成 フッ化物形成 -HF水溶液中 水溶液中における 水溶液中におけるRfの における の陰イオン交換挙動 イオン交換挙動- 交換挙動- 分配係数 Kd (mL g-1) 103 勾配 -3 102 101 4226回のイオン交換 261Rfのα壊変:266事象 勾配 -2 [ZrF7]3[HfF7]3- ラザホージウム( ラザホージウム(Rf) Rf) ジルコニウム( ジルコニウム(Zr) Zr) ハフニウム( ハフニウム(Hf) Hf) 100 10-1 100 HF2- イオン濃度 イオン濃度( 濃度(M) [RfF6]2log Kd = C - n⋅log[HF2-] 周期表同族元素と異なる性質を持つ H. Haba et al., J. Am. Chem. Soc. 126, 5219 (2004). 原子力機構タンデム 原子力機構タンデム・ タンデム・ブースター加速器施設 ブースター加速器施設 -より重 より重い元素の 元素の化学を 化学を目指して 目指して- して- 超伝導線形加速器 線形加速器 核化学実験室 新照射室 大強度イオン源 新核化学実験室 わが国原子力研究20年 日本原子力学会誌、21, 41 (1979) 炉化学(名大・内藤奎爾 )-核化学に関連した分野- 「アクチノイド( アクチノイド(超ウラン) ウラン)の化学」 化学」より抜粋 より抜粋 アクチノイド元素は、20年前の1958年には102番元素(No)の発見をめぐっ て激しい論争が行われていた。しかし、その後アクチノイドの最終元素103番 (Lr)は1961年に見出され、さらにその後104,105,106番などの元素の発見 アクチノイドから が報ぜられ、アクチノイド アクチノイドから超 から超アクチノイド元素 アクチノイド元素へ 元素へ製造研究の 製造研究の対象が 対象が移行し 移行し た。この間、従来米国のカリフォルニア大学のG. T. Seaborgらのほとんど独 壇場の観のあった超ウラン元素の研究に対し、ソ連のG. N. Flerovらの研究 がほぼ対等もしくはそれ以上の水準にまで追いついたことが注目される。た だ、わが わが国 わが国のこの分野 のこの分野での 分野での遅 での遅れは決定的 れは決定的である 決定的である。 である。学術会議がすでに 学術会議がすでに数年前 がすでに数年前 にその立 にその立ち遅れを強 れを強く警告し 警告し、この研究 この研究のために 研究のために最小限必要 のために最小限必要な 最小限必要な設備の 設備の設置 を勧告したが 勧告したが全 したが全く実現していない 実現していない。 していない 現在、世界的にはさらに原子番号の高い超重元素の製造が種々試みられ ている。 人材育成 タンデム加速器を利用した核化学的研究の成果 -博士学位取得者 重イオン核融合-核分裂 アクチノイド核分裂 壊変特性・新核種探索 アクチノイド内包フラーレン 重元素化学 計 2 5 3 1 4 15名 タンデム加速器を利用した核化学的研究の成果 -学会賞受賞 日本放射化学会賞 2件 1.ラザホージウム等の核化学的研究における新展開(2004年) 2.低エネルギー核分裂における変形経路の解明に関する研究 (2007年) 日本放射化学会賞・奨励賞 2件 1.新アクチノイド核種の発見と中性子不足アクチノイド核種の 壊変特性に関する研究(2000年) 2.シングルアトム分析手法を用いたラザホージウム、ノーベリ ウムの溶液化学的研究(2008年) -国際会議の開催 1.2nd International Symposium on Advanced Science Research (ASR2001), Tokai, November 11-13, 2001 - Advances in Heavy Element Research 2.6th International Symposium on Advanced Science Research (ASR2006), Tokai, October 26-27, 2006 - Frontiers of Nuclear and Radiochemistry – 3.The 2005 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies (PACIFICHEM2005), Honolulu, Hawaii, USA, December 15-20, 2005 - Frontiers of Nuclear Chemistry of the Heaviest Elements - 謝 辞 ビームタイム日程 ビームタイム日程の 日程の約半数を 半数を使用 1.超ウラン核種に関する研究 2.核分裂 3.不安定核領域の核分光学的 研究 4.核燃料の照射挙動の研究 執筆者: 田村努、松本純一郎(物理部)、梅沢弘一、鈴木敏夫、星三千男、 臼田重和、市川進一、斉藤昭(化学部)、柴是行(燃工部)、立川克浩、馬場宏、 馬場澄子、畑健太郎、関根俊明(製造部) 謝 辞 研究炉・ 研究炉・加速器管理部、 加速器管理部、加速器管理課 超ウラン・重イオン核化学グループ: 塚田和明、浅井雅人、佐藤哲也、豊嶋厚史、笠松良崇、Li Zijie、 西中一朗、市川進一 所内: 先端基礎研究センター、原子力基礎工学部門、 アイソトープ部(製造部)、 化学部、物理部 協力・共同研究: 東北大学、筑波大学、理化学研究所、東京大学、 首都大学東京(東京都立大学)、新潟大学、金沢大学、静岡大学、 名古屋大学、大阪大学、広島大学、徳島大学 国際協力: ドイツ重イオン研究所、マインツ大学、ミュンヘン工科大学、 スイスポールシェラー研究所、中国近代物理学研究所 ご清聴ありがとうございました
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