中国ビジネスニュース - 公益財団法人かがわ産業支援財団

2015 年 9 月(第 39 号)
中国ビジネスニュース
編集:香川県上海ビジネスサポーター
川田真理子
今月の注目トピックス
■ 越境ECサイトで中国向け販売拡大を
2015 年8月、沖縄県が、海外商品通販サイトの「Tモールグローバル(中国名:天猫国際)」(※1)で 2016 年3月
から県産品の輸出販売を始めると発表しました。越境EC(海外とのオンライン上商取引)での県産品販売は、地
方自治体としては初の試みで、塩・ウコン・健康食品などを約 20 種類販売するようです。
越境ECは中国で数年ほど前からブームになり、今後も成長が見込まれています。また、日本でも輸出による販
路拡大の手段として注目されています。
中国電子商務研究中心によると、中国EC市場における海外商品代理購入の規模は、2009 年での取引規模は
約 50 億元(約 665 億円)でしたが、昨年は 1500 億元(約3兆円)以上にまで伸びています。また、日本から中国へ
のEC上の輸出販売額は経済産業省の「平成 26 年度電子商取引に関する市場調査」によれば、2014 年時点では
前年比約 155%増の約 6000 億円ですが、2018 年には約 1.4 兆円規模になると予想されています(下表参照)。
このように、成長著しい越境EC市場への期待から、伊藤忠や三井物産などの大手商社は中国 EC 企業との業
務提携や出資など大規模に投資しているほか、メーカーや小売店などの日本企業によるサイト出店も増えていま
す。
出所:経済産業省「平成 26 年度電子商取引に関する市場調査」P76 より抜粋引用
一口に越境ECと言ってもさまざまなサイトがありますが、現在中国では、大別して3種類のサイトがあります。
①海外の通販サイト、②国内EC企業が運営する輸入品販売サイト、③政府・税関と連携した輸入品販売サイトで
す。これらの特徴や注意点については、6ページの【中国ビジネスワンポイントアドバイス】で紹介していますので、
ご覧ください。
中国国内のECサイトに海外企業が出店する場合、中国国内に法人や銀行口座を必要とするなどの参入規制が
ある上に、中国国内の法令に従って増地税等が課税されるため販売価格が高くなり、知名度のない海外商品がネッ
ト販売するには価格的競争力が弱くなり、厳しいものでした。一方、越境ECサイトの場合、各サイトにより参入条件
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が異なるものの、個人輸入品とみなされるため「行郵税」のみ納税すればよいため、関税・増値税・消費税が課され
る一般貿易よりも課税率が低くなります。また、日本のメーカーや小売店から直販されるため流通コストや小売施設
の入居費用が抑えられるため、中国国内の一般的な市場価格よりも 15~30%ほど安く販売されているようです。
言うまでもありませんが、サイトによって、出店に伴う条件や手数料(保証金、運営管理費など各種手数料など)が
異なる上にし、販売量が少ない場合は採算が合わない可能性もあります。例えば、沖縄県が出品を予定しているT
モールグローバル(※1)の場合、中国の現法や倉庫を必要としていませんが、中国での知名度の高さから出店費用
(※2)も比較的高く、事前に十分な事業計画を練っておかなければ継続していくのが厳しいと考えられます。なお、
沖縄県は直接で出店しているのではなく、アジアでのEC運営サービスを手懸ける(株)エフカフェ(本社:大阪)がTモ
ールグローバル内に開設しているネットショップ「心地」(※3)内で、「沖縄館」という沖縄県産品コーナーを設けて販
売するようです。
他方、上海税関との連携で立ち上げられた「跨境通(以下、「KJT」と略記)」(※4)の場合、保税倉庫から消費者
に供給されるシステムなので、国内に現地法人あるいは委託法人がなければ出店できません。同サイトで販売され
ている商品は、他の越境ECサイトでの価格と比べてもおおむね安く、政府・税関が運営するサイトであるため信頼
性も高いのですが、あまりPRされておらずアイテム数が非常に少ないのが現状です。見たところ、ベビー用品・スキ
ンケア用品・健康食品が多いですが、今後はお菓子や調味料などの食品関連商品の増加が期待されています。
※1 TモールグローバルのURL:https://www.tmall.hk/
※2 中国国外の海外企業による T モールへの出店費用
① 保証金:2.5 万米ドル(約 300 万円)
② 年会費:取り扱い商品により 5000 あるいは1万米ドル
③ 技術サービス費:取り扱い商品により販売金額の 0.5~5%
※3 ネットショップ「心地」のURL:https://xindijp.tmall.hk/?spm=a1z0b.7.1997427721.d4918089.YO21Yx
※4 KJTのURL:http://www.kjt.com/
政策・経済トピックス
【新政策動向】
■9都市で流通体制改革試行
国務院弁公庁は「上海等9都市における国内貿易流通体制改革発展総合モデル展開の同意に関する返信」を公
布した。上海、南京、鄭州、広州、成都、アモイ、青島、黄石、義烏の9都市において、電子商取引企業開拓業務、
電子商取引のモデルの刷新、政府監督管理方式の完全化、電子商取引の環境整備を後押しする。
■自動輸入許可証通関業務 ペーパーレス化拡大
税関総署と商務部は、自動輸入許可証の通関業務のペーパーレス化拡大を発表した。上海自由貿易試験区税
関での試行を経て、8月1日からは天津・福建・広東の新設自由貿易試験区及び寧波・蘇州の国家級輸入貿易促
進モデル区内でも実施されている。
■9月3日の休日 給与支払いについて通知
人力資源社会保障部は「2015 年9月3日の休日における労働者の給与計算についての問題に関する通知」を公
布した。9月3日は「抗日戦争及び反ファシズム戦争勝利 70 周年記念日」として休日になっており、同記念日の労
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働については、代休を付与するか、代休が付与できない場合は、労働者本人の日給または時間給の通常賃金の
200%を残業手当として支給しなければならない。
■追加利下げ
中国人民銀行(中央銀行)は8月 25 日、銀行の貸し出しと預金の基準金利を 0.25%下げ、預金準備率を 0.5%下
げ 18%とした。利下げは8月 26 日、預金準備率の引き下げは9月6日から実施された。
人民元預金金利 (2015 年8月 26 日より)
項
目
金利(%)
普通預金
0.35
定期預金 満期型 3カ月
1.35
半年
1.55
1年
1.75
2年
2.35
3年
3.00
人民元貸出金利(2015 年8月 26 日より)
期
間
金利(%)
1年以内(1年含む)
4.60
1~5年(5年含む)
5.00
5年以上
5.15
【経済・産業】
■新百元札 発行
人民銀行は新たな 100 元(約 2000 円)紙幣を 11 月 12 日から発行する。偽造防止技術を向上させた。毛沢東氏
の肖像や全体の赤い色調は変わらない。
■7月の物価 1.6%上昇
国家統計局によると、7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で 1.6%上昇した。上昇率は6月の 1.4%と比べ
拡大したが、政府が掲げる通年平均の目標である 3.0%を大きく下回った。
■新車販売 4カ月連続マイナス
汽車工業協会によると、7月の新車販売台数(中国国内生産分、工場出荷ベース、商用車・輸出を含む)は、前年
同期比 7.1%減の 150 万 3000 台だった。4カ月連続のマイナス。減少幅は 0.5%の4月、0.4%の5月、2.3%の6月
に比べ拡大した。
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■7月の小売売上高 10.5%増
国家統計局によると、2015 年7月の小売売上高は前年同月比 10.5%増であった(6月は同 10.6%増)。ダウ・ジョ
ーンズ通信がまとめた市場予想も 10.5%だった。
■1~7月の不動産開発投資 4.3%増
国家統計局によると、1~7月の不動産開発投資は前年同期比 4.3%増の5兆 2562 億元となった。増加率は1~
6月の 4.6%から縮小した。1~7月の住宅販売額は前年同期比 16.8%増。1~6月の 12.9%増より拡大した。
■人民元 3日連続切り下げ
中国が人民元の基準値を3日連続で切り下げた。中国人民銀行は為替レートの目安となる対ドルの基準値を8月
11、12 日の2日間で 3.5%切り下げ、13 日に更に 1.1%切り下げた。中国の「元安誘導」姿勢が改めて鮮明になっ
た。
■スターデジタル 日本専用SIMフリースマホを投入
中国のスターデジタルテクノロジーは、日本市場に特化した「SIMフリー対応スマートフォン」を 2016 年に投入す
る。日本の利用者の嗜好を踏まえ、音楽機能を高めた新端末を開発する。10 月には「格安スマホ」のSIMカードを
使える各国共通仕様のSIMフリースマホで日本市場に参入する。
■7月の新車販売 日系メーカー健闘
中国市場の勢いに陰りが見える中、日系自動車メーカーの健闘が続いている。トヨタ自動車の7月の新車販売台
数(小売台数)は前年同月比 23.7%増の9万 2500 台で前年を4カ月連続で上回った。マツダは同 3.7%増の1万
6520 台(同)で、6カ月連続のプラスになった。
■中台 租税協定締結
台湾と中国の交流窓口機関は福建省福州市でトップ会談を開いた。中台間での二重課税の防止などを目指す租
税協定を結んだ。中台双方に進出している企業や個人の税負担を軽減し、投資を促進する。
【日系・外資企業動向】
■安川電機 サービスロボ事業で提携
安川電機は、中国家電大手「ミデア・グループ(美的集団)」と、産業用ロボット事業及びサービスロボット事業で
提携した。産業用ロボット事業会社「広東安川美的工業機器人」を 10 月に設立する。資本金は 2000 万元で安川
電機の中国法人が 51%を出資。サービスロボット事業の合弁会社「広東美的安川服務機器人」は、2016 年3月
に設立予定で、資本金は 2000 万元で、安川電機側の出資比率は 39.9%。ミデアは産業用ロボット、リハビリテー
ションロボットなどの販売を担う。
■トヨタ 天津に新ライン設置
トヨタ自動車は、天津市の中国・第一汽車との合弁会社「天津一汽トヨタ自動車」に新ラインを設置する。2018 年
半ばに稼働する年産能力は 10 万台で、新型車を生産する。投資額は約 590 億円。
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■全日空 中国線を増便
全日本空輸は、10 月 25 日に始まる冬ダイヤから羽田空港を発着する中国路線を増便する。北京線と上海線を
週7往復から 14 往復に増やし、広州線新規開設する(週7往復)。羽田発着路線の増便に伴い、現在週 14 往復
で運航している成田―北京線は7往復に減便。週 21 往復している成田―上海線、7往復している成田―広州線
の便数の変更はなない。
■アドウェイズ 中国で通販事業支援
アドウェイズは日本企業向けに、中国における通信販売支援サービスを始める。中国の電子商取引(EC)サイト
から収集した商品の売れ筋情報などを提供し、ネット広告を配信する。初年度にドラッグストアやアパレルなど
100 社の獲得を目指す。
■三井住友アセット 中国株運用
三井住友アセットマネジメントは上海・香港の株式相互取引制度を通じた中国本土株への投資を始める。日本の
機関投資家としては初。上海株が乱高下しても顧客からの解約申し込みに柔軟に対応できるという。これまで適
格外国人機関投資家という外国人投資枠で中国本土株を運用していたが、今後は両制度を併用する。
■三井物産 通販で日本製品販売
三井物産は中国ポータル(玄関)サイト大手「網易(ネットイース)」と提携し、中国で日本製品を販売する。グルー
プ各社を通じ、ベビー用品やおむつなどの日用品、食品、化粧品、家電製品などを税手続きなどが簡素化された
「EC(電子商取引)特区」がある杭州市や寧波市の保税倉庫向けに輸出する。徹底的な検査で偽物の混入を防
ぎ、2~3日で宅配する。個人輸入に比べ食品や日用品の場合で2~3割程度安く提供できる。
■日通 現地法人を独資化
日本通運は中国現地法人「日通国際物流(中国)」を完全独資化した。事業環境の変化に速やかに対応し、更な
る拡大を図る。
■日通 昆明~タイ間陸路輸送サービス開始
日通国際物流とタイ日本通運が、7月1日から昆明とタイ・バンコク間をつなぐ新しい陸路チャーター輸送サービ
スの提供を開始した。昆明でコンテナに積み込み、コンテナのままバンコクまで一貫輸送する。従来の海上輸送
では2週間以上要していた昆明~バンコク間の Door to Door サービスだが、最短4日間と大幅に短縮した。
■丸運 天津に子会社設立
丸運は天津市に子会社「丸運物流(天津)」を設立する。中国において事業拡大を図るため、天津市に営業と物
流拠点を設立する。今年 10 月1日に営業開始予定、資本金は 400 万米ドルで丸運の 100%出資。倉庫業務、中
国国内・国際運送業務、通関業務、物流コンサルティング業務などを行う。
■アイピーブリッジ TCL集団を提訴
特許管理会社のアイピーブリッジは、中国の家電大手「TCL集団」がスマートフォン(スマホ)の特許を侵害してい
るとして、販売などの差し止めと損害賠償を求め米デラウェア州連邦地裁に提訴した。高速通信規格「LTE」向け
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の無線通信や音声圧縮技術に関する3つの特許が対象で、TCLはライセンスを取得しておらず、アイピーブリッ
ジからの連絡にも応じなかったという。
■モリタホールディングス 上海金盾特殊車輌装備の全株式を売却
モリタホールディングスは、消防車両事業子会社モリタが所有する「上海金盾特殊車輌装備」の株式全持ち分
を、同社へ共同出資する北京康鴻智通貿易へ譲渡する。持ち分法非適用の関連会社にしていたが、継続的に赤
字が発生していたため譲渡することにした。
■富士重工 華北向け車両を上海港での荷揚げに振り替え
富士重工業は天津市での爆発事故により、従来天津港で荷揚げしていた華北地方向けの車両を、8月 20 日出
港の船便では上海港に振り替えた。これまで華北向けを天津港、華東向けを上海港、華南向けを広州港で陸揚
げし、各販売店に輸送していた。
■トヨタ天津工場 生産再開へ
トヨタ自動車は、大規模爆発を受けて操業を停止していた天津の2工場での生産を 27 日から徐々に再開する。
天津一汽豊田汽車の泰達工場は 28 日から生産を再開する。西青工場は 27 日から生産を始める。ヤードに保管
していた車両の被害台数は約 4700 台だった。
■パナソニック 北京の電池工場閉鎖
パナソニックはリチウムイオン電池を生産する北京工場を9月に閉鎖する。同工場は三洋電機グループが全額
出資した。従業員 1300 人を解雇する。
【人民元情報】
人民元市場レート(2015 年8月 31 日)
外貨名 100 日本円
中間値 5.2718 人民元
【中国ビジネスワンポイントアドバイス】
 越境ECの種類と特徴
1ページの【今月の注目トピック】でもご紹介したとおり、現在中国で利用されている越境ECサイトは、一般的に
以下の3つに分類できます。
① 海外の通販サイト(例:アマゾン、eBay、BOPTOPSHOP、楽天市場など)
② 国内EC企業が運営する輸入品販売サイト(例:Tモールグローバル)
③ 政府・税関と連携した輸入品販売サイト(跨境通(KJT))
①と②では、注文ごとに海外から配送されるため中国国内にいる消費者が個人輸入する方式が一般的です。
③はコンテナ便などであらかじめ海外から中国国内の保税倉庫に保管されている商品を中国国内の消費者に配
送します。それぞれの特徴やメリット・デメリットについては下表をご覧ください。
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海外からの
中国国内保税区倉庫からの
個人輸入方式
輸入方式
・ 商品数が豊富。
品揃え・取り扱い商品数
・ 目下、商品数が少ない。
・ 中国での販売許可取得が不要。(たばこ・
酒・薬品などの一部商品は除く)。
・ 海外からの配送のため時間がかかる。
配送にかかる時間
・ 中国国内保税倉庫からの配送の
ため、上海市内であれば数日で配
送。
商品価格
・ 海外からの配送のため、物流コストが高い。
・ 海外から中国保税区まではコンテ
・ サイトによっては、出店条件や費用が高いこ
ナ便で配送されることが多く、物流
とも。
コストが抑えられる。
・ 中国現地での法人や倉庫、人材の雇用が
不要。
メリット・デメリット
・ 一回の購入金額は 1000 元まで。
・ 政府が立ち上げたプラットフォーム
・ 購入した量や額が多いと、場合によっては、
税関に個人輸入とみなされず一般貿易とし
なので、左記のような課税リスクな
し。
て課税されるリスクも。
海外の通販サイトで中国向け販売を行っている企業は別として、現時点で中国国内の政府系・民間系の越境E
Cサイトに出店・出品している企業は、大半が大手企業や有名ブランドです。その原因としては、Tモールグローバ
ルの場合、保証金や費用・手数料が高いので出店のハードルが高いためです。そして、政府系の跨境通(KJT)
の場合、まだ政府にとって同サイトの運用は試行段階なので、販売商品をベビー用品・化粧品・などの既に知名度
あるいは人気のある商品に限っていることやあまり宣伝PRを行っていないためかと思います。
しかしながら、昨年から貿易会社や卸・小売業者を中心に、越境ECサイトに出店する企業が増えている同時に、
メーカーへの出品誘致も加速しています。越境ECサイトでの販売は、一般貿易での輸出販売と比べて、一部の商
品を除き販売許可を必要としていないことや、課税面で優遇されているため、参入企業の増加と販売商品が多様
化すると見込まれています。中国の越境ECビジネスは、最近日本でも話題の「爆買い」と同様に、売上拡大のチ
ャンスが期待できる市場であり、引き続き今後の動向に注目です。
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香川県上海ビジネスサポーター 川田真理子
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