三島事業所 - 電業社機械製作所

Open up the future.
三島事業所
表紙説明
8月の早朝、裾野市十里木より望む富士山
(写真提供:元 当社製造部機械工作課 市川康夫氏)
撮影場所は左記地図の●印です。
第33巻 第1号 通巻第64号 2009
目 次
◆巻頭言
翻弄されるエンジニアの想いと未来への貢献……………………………………………………… 宇 野 美津夫
1
◆挨拶
瀨 宜 浩
3
RANSによる斜流ポンプの解析精度 ………………………………………………………………… 富 松 重 行
5
高比速度遠心ファンの開発…………………………………………………………………………… 中 山 淳
12
社長就任のご挨拶………………………………………………………………………………………
◆報文
大 場 慎
◆技術資料
オイルフリーの省エネ型ターボブロワ「ecoターボ」 …………………………………………… 奥 田 温 一
16
◆製品紹介
青森県 相原第2排水機場向け排水ポンプ ………………………………………………………… 石 谷 渉
19
宗 田 憲 郎
兵庫県中播磨県民局宮排水機場向け 排水ポンプ設備 …………………………………………… 深 澤 正 幸
21
佐々木 隆
磯子火力発電所新2号機向け循環水ポンプ………………………………………………………… 鍵 山 尚 久
25
勝 又 英 樹
中国地方整備局 狐川排水機場向け排水ポンプ設備の整備・更新……………………………… 石 倉 武 志
28
高 橋 亨 輔
サウジアラビア向け火力発電・海水淡水化設備用各種大形ポンプおよび送風機……………… 岩 渕 稔
31
勝 又 一 樹
東京都 小名木川排水機場ポンプ整備工事………………………………………………………… 福 嶋 超
36
平 野 貴 豊
斎 藤 洋 勝
ここで活躍しています −2008 製品紹介− ………………………………………………………………………
39
◆ニュース
海外で活躍する電業社のブロワ…………………………………………………………………………………………
45
アムステルダムに欧州事務所開設………………………………………………………………………………………
46
高圧ポンプ、ブロワ工場完成……………………………………………………………………………………………
47
IMPETUS CONTRACT 調印 ………………………………………………………………………………………………
48
◆特許と実用新案 ………………………………………………………………………………………………………… 49
DENGYOSHA
TECHNICAL
REVIEW
Vol.33 No.1 2009
CONTENTS
◆Foreword
Engineers Who Are Teased and Their Contribution to the Future …………………………… 1
M. Uno
◆Greeting …………………………………………………………………………………………… 3
N. Yanase
◆Technical Paper
Analysis Accuracy for Mixed Flow Pump using RANS ………………………………………… 5
S. Tomimatsu
Development of High Specific Speed Centrifugal Fan ……………………………………… 12
J. Nakayama and S. Oba
◆Technical Data
“eco Turbo” for Energy-saving and Oil-free ………………………………………………… 16
Y. Okuda
◆Product Introduction
Drainage Pump for Aihara Dai 2 Pumping Station……………………………………………
W. Ishitani and N. Souda
Miya Pumping Station for Hyogo Nakaharima ………………………………………………
M. Fukasawa and T. Sasaki
Circulating Water Pump for Isogo Thermal Power Station Unit No.2 ………………………
N. Kagiyama and H. Katsumata
Kitsunegawa Pumping Station for Chugoku Regional Development Bureau………………
T. Ishikura and K. Takahashi
Various Kinds of Large Pumps and Large Fans
for Power Station and Seawater Desalination Plant in Saudi Arabia ……………………
M. lwabuchi and K. Katsumata
Pump Repairing for Onagigawa Pumping Station ……………………………………………
H. Fukushima, T. Hirano and H. Saito
19
21
25
28
31
36
◆Activities ………………………………………………………………………………………… 39
◆Patent …………………………………………………………………………………………… 49
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
翻弄されるエンジニアの想いと未来への貢献
翻弄されるエンジニアの想いと
未来への貢献
宇野 美津夫
九州共立大学 工学部 教授
最近、テレビ番組でガラパゴス諸島に関する報道を目にする機会があった。海イグアナが、ガラパゴ
スで何千年、何万年をかけ、自分たちが住みやすい環境を見つけ、ある規律やモラルの下に餌場と生活
を守り続けてきたのに、イグアナから見れば、最近、島に入ってきた異星人とも思える人間が、利益獲
得のため、彼らが守ってきた場所を簡単に港に替え、家を建て、道路を作った。遺伝子に組み込まれた
場所に産卵に戻った海イグアナが、その変わり様を呆然と見つめている話である。これを見たとき、な
ぜか、昨年9月以降の世界経済変化の中、翻弄される技術屋さんの姿が重なった。科学技術をより良い
社会や人間生活の維持に役立てるための工学を実践し、磨きをかけてきたエンジニアの前に突然、マネー
ゲームの怪物が現れた。これまで培ってきた知識や経験をもとに環境負荷軽減、高効率化、省エネ技術、
製造技術を追求してきたエンジニアの努力とその想いが、サブプライムローンという異星人よって、技
術と関係のない要因で一変した様子である。
ところで、最近、年のせいかもしれないが、社会生活の中で直面する事態やマスメディアの報道に納
得いかず、思わず夫婦で異論を唱え、その憤りを酒の肴にして楽しむことが多くなってきた。その中で
技術や環境に関することを少し取り上げてみたい。身近なことを例に挙げれば、最近、我が家のアルミ
サッシ窓のパッキンが劣化し、気密性が悪くなった。取り替えようと思いサッシに記載されている製造
メーカに問い合わせたところ、そのメーカはすでに合併し、会社名を羅列した別の会社名に、そして、戻っ
てきた返答は「この形式のものは8年前に製造を中止しました」、本体ごと変えてくださいと言わんばか
りの妙に冷静な対応であった。こちらも我を取り戻し、冷静に年月を差し引きすると、どうも我が家建
築後7年目に規格品からはずされたようである。当然、本体にはまったく問題なかったため、早速ホー
ムセンターに行き、代用品を探し、加工して何とか対応した。おそらく製造者責任から考えれば、製造
メーカの技術者は建築材料としての寿命をたった7年と見積り、設計した訳ではないと信じる。つぎは、
我が家で重要な子供の成長記録の話である。30年ほど前になるが、子供が生まれた当時は、動画記録方
法といえばビデオであった。当然、技術者としての分解能に関するこだわりから、1秒あたりの画像数
が多い、今や絶滅機器のベータ方式ビデオカメラを選定した。次に選んだのは、そのイメージを引きず
り8mmビデオカメラであった。子供たちの過酷な使用状況、および時の経過に耐え切れず、我が家の記
録機器、再生機器は次々と壊れた。子供たちの巣立ちを機会に、バックアップを思い立ったが、この時、
これまで使ってきた機器は、希少高額のレア物になり、主流派はDVD・HDプレーヤー、最新派はブルー
レイに変化していた。それから急遽、救出作戦に執りかかり、努力の結果、すべてではなかったが、何
とか映像は救われた。結局、我が家で完全に被害を免れた唯一の記録画像は、静止画像のアナログ写真
であった。技術革新を追いつづけた新方式の記録媒体は次々と変化し、その生存期間も徐々に短くなっ
–1–
翻弄されるエンジニアの想いと未来への貢献
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ている。最近では、これまで威力を発揮したカメラもアナログからデジタルカメラに変わり、いつでも
見られると思い、画像ファイルはハードディスクやディスクに入れたままである。これも油断している
とこれまでのように数年で見られなくなるかも知れないという疑念が湧いてきた。さらに、最近、すべ
ての機器の使い方が、IT技術の発達でコンピュータのバージョンアップ感覚になったことである。次々と
登場する高速コンピュータによって、オペレーションシステムは変化し、それに対応したアプリケーショ
ンソフトは、アップデートを繰り返し、海外旅行の電源プラグのような変換ソフトウエアまで登場する。
これによって、これまでの研究で蓄えてきた貴重な実験データが利用できなくなる場合にも遭遇し、グ
ラフからデータを読み取るという地道な作業も経験した。古いデータは役立たないと言われればそれま
でであるが、それが重要な場合も応々にあることも事実である。現実の社会生活で使用する機械や機器
の原理や構造の基本的には変わらず、IT技術のように短期間でバージョンアップを繰り返す代物ではな
い。技術の進歩とともにいろんなものが次々と変化していくのはわかるが、貴重な資料は買い替えがで
きないのだから、基本となる機器と方式は残してほしい。また、最近の機器は、技術者が意図した想い
とは裏腹に、消費者の新しいもの好きに訴える販売戦略で買い替えサイクルが寿命より短くなり、修理
をお願いしても「買ったほうが安いですよ」の返答で、経済効果が技術や環境意識を凌駕している状況
に思える。
現在、世界経済の変化の中、その回復は地球温暖化防止技術でと、唱えられているグリーンニュー
ディール政策は、太陽光発電などの経済復活に絡めた報道合戦となり、これまでエコエネルギーの代表
として報道をにぎわしていた風力発電は、助成事業復活の要請が行われている状況である。この状況に
中、水力機械や空気機械は社会基盤維持の優等生として、目立たず地道な貢献を続けている。本来、環
境問題に関して、環境負荷の功罪を明らかにした上の幅広い論議であればよいのだが、ムードに流され、
知りえた不確かな情報をそのまま伝えるテレビコメンテータ感覚の情報発信は、人々に誤解を与え、判
断に悪影響を及ぼすことにもなりかねない。これらの状況を考えると、的確なデータ比較、実験での確認、
情報判断ができる工学的なセンスを有する人材の意見と貢献が、この地球の環境保全、永続的な生物の
営みにとっては不可欠な条件ではないだろうかと思う。
私の研究テーマは主にターボマシンに関することで、現在、ターボ機械協会の分科会「水力エネルギー
活用技術分科会」に所属し、そこで、毎年、全国各地で開催される市民フォーラム“水の力で地球の温
暖化を防ごう”のお手伝いをしている。地域の自治体や市民の関心の深さや、基調講演や講演のテーマ、
取り組まれている事例や個人的な挑戦など、地球環境保全を意識した活動がいろいろ行われている。また、
需要と供給の思惑が合致する生産者と消費者を直結し、中間コストやエネルギーの無駄を削減し、効率
的に活用をしようとする人々も現れてきた。個人の考え方や生き方を基に、生活維持と環境保全の効率
良い両立を考える人も増えてきたように思え、地域に根ざしたこれらの活動、想いが、今後の新たなる
技術貢献につながることを望んでいる。
最近、目まぐるしく変化する現実と地球環境の変化、身近な生活の中で気になることを書いていくう
ちに、将来に向けて、より良い社会や人間生活の維持に役立てるために工学を実践する地に足が付いた
機械エンジニアの貢献が必要となり、必ずやこの地球にとって、やさしく対応できるグループになるも
のと信じている。
–2–
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
社長就任のご挨拶
社長就任のご挨拶
瀨 宜浩
代表取締役社長
電業社機械製作所の社長就任に当り、ご挨拶申し上げます。
“私の略歴について その1 三島事業所時代”
私は昭和43年に入社し、三島事業所の木型・鋳物工場部門に配属となりました。20年間木型と鋳物の
製作に携わりましたが、当時、溶解はキューポラで、鋳型はセメントと水ガラスを粘結材として用いた
もので、強度がないため砂かみなどの欠陥も多く大変苦労しました。木型は今の現型ではなく、ポンプ
断面形状をかたどった板で砂を掻いて造型する掻き型という造型法で、今も残っていれば無形文化財に
なるほどの匠の技を用いたものでした。
その後の10年間は、機械工作部門と組立・試運転部門を、ポンプ・ブロワの製作工程に沿って経験し、
入社30年を経て製造部長まで務めました。現場での物造りは教科書には無いことばかりでしたが、すべ
て理に適ったもので、理を逸脱してまともな物はできませんでした。
事業所時代は現場の方々や諸先輩を初め多くの方々に公私とも大変お世話になり、心より感謝いたし
ております。
“その2 営業時代”
渡邉会長が社長に就任される時に、東京勤務となり営業本部で民需を統括することとなりました。赴
任しました平成13年度は民需全体での受注が33億円弱という惨憺たる結果で、私も正直大変焦りました。
また、受注内容も電力以外の一般民需はそのほとんどが送風機であったため、お客様へのご挨拶は「ポ
ンプの電業社でございます」というものでした。
この8年間の営業時代を振り返りますと、平成13年度の官民合わせて157億円を底にして、海外にも
力を入れた結果、民需の受注が徐々に上向いて来たというものでした。
“現在の営業状況について”
平成17年度以降、予測が困難な状況だった官需市場も昨年度、今年度と一応の落ち着きを取り戻し、
相応の受注を確保することができました。官公需物件はこれからも当社の主要なマーケットであり、ま
た組織体制としても中堅・若手が育っており、将来に大きな期待を持っております。
民需物件は、過去ほとんど実績の無かった重電メーカから、国内・海外パワープラント向け、あるい
は海外肥料プラント向けの大型案件を受注し、ビジネスパートナーとしてさらなる展開が期待できる状
況になっております。
一方、海外は、平成17年度からの3年間の平均受注額が32億円と着実に拡大しており、受注内容も粗
–3–
社長就任のご挨拶
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
利が改善されてきています。特に海外向けでは、エンドユーザと密接で、良い関係を製販一体で築いて
いくことが、当社の将来に最も重要な課題と認識しております。
国内・海外向けの商品に関しては、この数年、価格低減と信頼性の向上に努めてきた結果、多くのエ
ンドユーザやEPCコントラクタのベンダに登録されてきており、一つの実績が次の仕事に繋がるように
なってきました。
“今後の営業対応について”
サブプライム問題に端を発した金融危機は、実体経済を直撃し経済規模の縮小を招き、為替は円高と
なり海外市場での価格競争力の低下、および石油価格の50ドル割れは新規油井開発計画の遅延・凍結を
招き、当社にとり厳しい市場環境となりました。
ただし、どういう状況においても、お客様の信頼を第一に行動する電業社の特質を継続していくこと、
具体的には「仕様以上のものを、約束した期日に納め、トラブルが生じた時はお客様第一に問題解決を
図る姿勢」が受注に繋がるということを忘れないことだと思っております。
“第3次中期経営計画とグローバリゼーションについて”
今年は第3次中経営計画の2年目で、スローガンのグローバリゼーション、すなわち電業社の国際化
について私の認識を申し上げます。
当社の国際化とは、外国語を話し海外ビジネスの経験を積むことはもちろんですが、一番重要なのは
東京や三島から海外ユーザを見ることではなく、海外のお客様の視点で電業社を見ることだと思います。
米国・インド・東南アジア・サウジアラビアの視点で電業社を見ることにより、何が評価され何が信頼
を失うか、ユーザの求めていることを理解することだと思います。単にビジネスパートナーに留まらず、
お客様との個人的理解と関係を得て、初めて本当に世界の電業社と言えるようになると思います。
今後の具体的施策は、関係者の方とコンセンサスをもって立案してまいりますが、全社員が世界の中
での電業社という認識を共有していきたいと思っております。
“創立100周年を迎えるに当り”
来年は創立100年になりますが、ここまで当社が継続してこられたのも、社員の努力はもちろんですが、
お客様を始め、株主様、代理店や工事業者の皆様、納入業者の皆様など、当社を取り巻く大勢の皆様の
ご支援があったからこそと思っております。
私たちはこの100年を機に、改めて私たちを支援いただいている方々に感謝し、共に発展し、当社の安
定と存続を図っていくことを肝に銘じたいと思います。そして経営基盤をさらに堅固にするために、売
上規模で250億円レベルの達成とさらなる展開を目指したいと考えております。
“ご挨拶のさいごに”
ヒューストン事務所で気化器海水ポンプを受注した時の挨拶を紹介いたします。
「仕事は楽し、人との出会いのターミナル、仕事が人を繋ぎ、世界を繋ぐ!」
仕事で多くの経験と、新しい友人ができ世界が拡がる。本当に楽しいことです!
最後になりましたが、お客様を始め当社を支援していただいている皆様方のますますのご繁栄を願い、
社長就任のご挨拶とさせていただきます。
–4–
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
RANS による斜流ポンプの解析精度
RANS による斜流ポンプの解析精度
富松重行
Analysis Accuracy for Mixed Flow Pump using RANS
By Shigeyuki Tomimatsu
In recent years, the optimization technique is applied in order to optimize design parameters
having much effect on improvement for characteristics of a turbo-machinery. In the case of
optimization with CFD, if quality of an original mesh model is not fine, simulated optimum solution
is different from real optimum solution. Thus, it becomes more and more important to understand
the relationship between mesh quality and analysis accuracy in practical fields. In this report, the
relationships between mesh quality and analysis accuracy of mixed flow pumps are investigated.
1.はじめに
らに、斜流ポンプ解析へのテトラ+プリズムメッシュの
近年、流体機械の性能改善に効果的な設計パラメー
適用範囲について検討した。なお、解析はすべてレイノ
タの最適値を探索する設計手法として、最適化手法適用
ルズ平均乱流モデル(Reynolds Averaged Navier-Stokes
の取り組みが盛んに行われている
⑴∼⑶
。流体解析を行う
Simulation, RANS)により行っている。
場合、テトラ+プリズムメッシュを用いるよりもヘキサ
メッシュを用いたほうが精度良く解析できることはよ
2.Ns770斜流ポンプの解析
く知られている。一方、最適化を行う場合、設計変数ご
2−1 ヘキサメッシュモデルによる解析結果と実験
結果の比較
とにメッシュモデルを作成する方法としては、①リメッ
シュによる作成、②メッシュモーフィングによる作成、
図1に実験結果と比較するために行った流体解析で使
があげられる。メッシュモデルをリメッシュにより作成
用したNs770斜流ポンプの解析モデルを示す。図に示す
することを考えた場合、ヘキサメッシュでモデリングを
ように本解析では一流路モデルを使用した。羽根車前方
行うよりもテトラ+プリズムメッシュでモデリングを行
およびディフューザ後方にそれぞれ2Dの直管をつけて
うほうがメッシング作業の自動化を行いやすい。また、
いる。流体解析はANSYS CFX 11.0を用いて行った。解
メッシュモーフィングを行う場合、壁面に対してメッ
析に使用した乱流モデルはSSTモデルで、出口に流量、
シュを並行方向に変形することを考えると、三角形で構
入口に大気圧の圧力条件を与えている。本解析で使用
成されるテトラ+プリズムメッシュのほうがヘキサメッ
したメッシュモデルはヘキサメッシュにより作成して
シュよりもメッシュ品質への影響は少ないと考えられ
おり、羽根車、ディフューザ部のメッシュ数はともに約
る。
28万で、羽根周りのメッシュはCトポロジーで作成して
上 述 の よ う な 理 由 か ら、CFD(Computational Fluid
いる。また、メッシュの第一層目の高さは約0.01mmで
Dynamics)で使用するメッシュの品質と解析精度の関
係を理解しておくことは実務作業を行う上でもますま
す重要になっている。しかしながら、ポンプなどの流体
機械を対象としてメッシュ品質と解析精度の関係につい
て調べたデータはほとんどない。そこで、本報では、斜
流ポンプを対象として、ヘキサメッシュの仕様を変更す
図1 解析モデル
ることが解析結果に与える影響について検討した。さ
Fig. 1 Analysis model
–5–
RANS による斜流ポンプの解析精度
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ある。なお、SSTモデルを使用するにはy+<3の条件を
るが、計算時間を短縮するために羽根車とディフューザ
満たすメッシュモデルを使用することが推奨されている
部のみのモデルの解析結果を用いて検討を行う。
が、本解析でこの条件を満たすにはメッシュの第一層目
2−2 メッシュトポロジーの違いが解析結果に与え
る影響
の高さが平均で0.015mmとなる。
回転部分と静止部分のインターフェースモデルには
図3にメッシュトポロジーの違いが解析結果に与え
Stageモデルを用いた。なお、別途Frozen-Rotorモデルに
る影響について調べるために用いたメッシュモデルを示
よる解析を行ったが、StageモデルとFrozen-Rotorモデル
す。Cトポロジーのメッシュモデル、Oトポロジーのメッ
とでは解析結果に差はほとんど見られなかった。
シュモデルともにメッシュ数は約28万で、メッシュの
図2⒜に解析結果と実験結果の揚程を、⒝に軸動力を
第一層目の高さは約0.01mmである。なお、Cトポロジー
比較したグラフをそれぞれ示す。図⒜の縦軸は揚程Hを
のメッシュモデルは2−1節で扱ったものと同じもので
実験より得られた最高効率点での揚程HBEPで割った無次
ある。
元値を、横軸は流量Qを最高効率点での流量QBEPで割っ
図4⒜にこれらのメッシュモデルを使って解析した結
た無次元値をそれぞれ表す。また、図⒝の縦軸は軸動力
果から得られた揚程と流量の関係図を示す。図より、C
Lを最高効率点での軸動力LBEPで割った無次元値を表す。
トポロジーとOトポロジーの解析結果から求めた揚程は
なお、図中の四角印は実験結果を、丸印は図1に示すモ
ほぼ一致しており、トポロジーの違いが解析結果に及ぼ
デルの解析結果をそれぞれ表す。
す影響はほとんどないことがわかる。また、図⒝に軸動
図⒜より、揚程の実験結果と入口、出口直管および羽
力と流量の関係図を示す。Q/QBEP=0.2付近で、解析結果
根車、ディフューザ部を含んだモデルの解析結果は、不
より求めた軸動力にわずかな違いが見られるが、全体的
安定領域であるQ/QBEP=0.7周辺以外の部分ではほぼ一致
にほぼ一致しているということができる。
することがわかる。また、図⒝より軸動力の実験結果と
2−3 メッシュ数の違いが解析結果に与える影響
解析結果は、Q/QBEP=0.7以上の部分でほぼ一致すること
図5⒜にメッシュ数を変えたモデルを使用して得られ
がわかる。Q/QBEP=0.7以下の低流量域で実験結果と解析
た流量と揚程の関係図を示す。また、図⒝に軸動力と流
結果が合わない理由としては、今回の解析で用いたモデ
量の関係図を示す。メッシュ数はそれぞれ約28万、約
ルが一流路分しか模擬しておらず旋回防止リブのモデリ
57万、約89万であり、これらのモデルはCトポロジーで
ングを行っていないこと、また低流量域で流れが複雑で
作成している。なお、メッシュ数28万のモデルは2−1
あることなどが原因で精度の良い解析ができていないこ
節で扱ったものと同じである。
とが考えられる。
図より全流量域にわたって揚程はほぼ一致しており、
なお、次節以降では、羽根周りのメッシュトポロジー
メッシュ数の違いが与える影響はほとんどないことがわ
の違い、メッシュ数の違い、メッシュの第一層目の高さ
かる。すなわち、一流路あたり約28万程度のメッシュで
の違いが解析結果に与える影響についてそれぞれ検討す
あれば、精度の良い解析が行える結果となっている。こ
1.6
1.2
1.2
1.0
1.0
0.8
0.8
L/LBEP
H/HBEP
1.4
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
0.6
0.4
Experiment
Analysis
0.5
0.2
Q/QBEP
1.0
Experiment
Analysis
0.0
0.0
1.5
0.5
Q/QBEP
1.0
� 揚程
� 軸動力
� Head
� Shaft power
図2 解析結果と実験結果の比較
Fig. 2 Comparison of experimental and analysis results
–6–
1.5
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
RANS による斜流ポンプの解析精度
a C トポロジー
b O トポロジー
a C topology
b O topology
図3 ヘキサメッシュモデル
Fig. 3 Hexa mesh model
1.4
1.2
1.2
1
0.8
0.8
L/LBEP
H/HBEP
1
0.6
0.6
0.4
0.4
C topology
0.2
C topology
0.2
O topology
O topology
0
0
0.5
1
Q/QBEP
0
1.5
0
0.5
� 揚程
� ����
Q/QBEP
1
1.5
� 軸動力
� Shaft power
図4 トポロジーの違いによる解析結果の違い
Fig. 4 Difference of analysis results caused by topology difference
1.4
1.2
1.2
1
0.8
0.8
L/LBEP
H/HBEP
1
0.6
0.4
0.4
0.28M
0.57M
0.2
0.6
0.28M
0.57M
0.2
0.89M
0.89M
0
0
0.5
1
0
1.5
0
0.5
1
Q/QBEP
Q/QBEP
� 揚程
� Head
� 軸動力
� Shaft power
図5 メッシュ数の違いによる解析結果の違い
Fig. 5 Difference of analysis results caused by number of mesh
–7–
1.5
RANS による斜流ポンプの解析精度
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
1.2
1.6
1
1.4
0.8
L/LBEP
H/HBEP
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0.6
0.01mm(SST)
0.02mm(SST)
0.4
0.01mm(SST)
0.02mm(SST)
0.02mm(k-e)
0.04mm(k-e)
0.2
0.02mm(k-e)
0.04mm(k-e)
0
0
0.5
1
1.5
0
0.5
1
1.5
Q/QBEP
Q/QBEP
� 揚程
� 軸動力
� ����
� Shaft power
図6 メッシュ第一層目の高さと乱流モデルの違いによる解析結果の違い
Fig. 6 Difference of analysis results caused by difference of height in first cell and turbulence model
れに対して、軸動力はQ/QBEP=0.2付近で、解析結果より
ば条件の違いに関わらず解析結果から求めた揚程およ
求めた軸動力に違いが見られる。図2⒝より、この付近
び軸動力がほぼ一致しているが、図2⒜より揚程の場合
の軸動力の解析結果が実験結果を上回っていたことを考
はQ/QBEPが0.5∼0.8の範囲では実験結果と解析結果が一
えると、メッシュ数を増やすことによって解析精度が改
致していない。また、図2⒝より軸動力の場合はQ/QBEP
善されると考えられる。
が0.7未満では、実験結果と解析結果が一致していない。
2−4 メッシュの第一層目の高さの違いが解析結果
したがって、これらの範囲に関しては、解析に使用した
に与える影響
メッシュモデルの限界であると言える。ただし、前述の
図6⒜にメッシュの第一層目の高さを変化させたメッ
ように軸動力に関しては、Q/QBEPが0.2付近の結果はメッ
シュモデルを用いて解析した結果より作成した揚程と
シュ数を増やすことによって若干改善されると考えられ
流量の関係図を示す。また、図⒝に軸動力と流量の関
る。
係図を示す。メッシュの第一層目の高さはそれぞれ、
2−5 テトラ+プリズムメッシュによる解析
0.01mm、0.02mm、0.04mmとした。これらのモデル
図7に解析に使用したメッシュモデルを示す。なお、
はCトポロジーで作成しており、メッシュ数はいずれ
このメッシュモデルはCFX-Meshにより自動的に作成さ
も約28万である。なお、メッシュの第一層目の高さが
れたメッシュモデルである。すなわち、モデルを作成す
0.01mmのモデルは、2−1節で扱ったものと同じもの
である。前述のように、本解析でy+<3の条件を満た
すにはメッシュの第一層目の高さが平均で0.015mmと
なる。そこで、メッシュの第一層目の高さが0.01mm、
0.02mmのメッシュモデルには乱流モデルとしてSSTモ
デルを用い、0.02mmと0.04mmのメッシュモデルには
k-eモデルを用いた。
図よりQ/QBEP=0.2付近で解析結果から求めた揚程に差
があることがわかる。しかしながら、これ以外の部分で
は、メッシュの第一層目の高さと乱流モデルを変更して
も解析結果から求めた揚程がいずれの場合もほぼ一致し
ていることから、今回のケースではメッシュの第一層目
の高さが解析結果に与える影響は、低流量域で現れるこ
とがわかる。
図7 テトラ+プリズムメッシュモデル
なお、図4∼図6において、Q/QBEPが0.6以上であれ
Fig. 7 Mesh model of tetra + prism
–8–
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
RANS による斜流ポンプの解析精度
るにあたって、プリズムの第一層の高さを入力するなど
図より、特に低流量域で揚程、軸動力とも解析結果
の手動作業は行っていない。メッシュ数は約77万であ
に差が見られるが、最高効率点付近ではほとんど一致し
る。また、別途y+の値を確認したところ、y+<3の条
ており、最高効率点付近であればテトラ+プリズムメッ
件を満たさないので、乱流モデルとしてk-eモデルを用
シュを用いたk-eモデルによる解析でも、精度の良い解
いた。なお、解析は羽根車のみを対象として行っている。
析を行うことができることがわかる。
図8にヘキサメッシュとテトラ+プリズムメッシュの
解析結果から得た揚程と軸動力の比較図を示す。図⒜縦
3.Ns1080斜流ポンプの解析
軸の揚程Hは羽根車入口、出口の圧力より求め、2−1
次にNs1080斜流ポンプの解析結果について述べる。
節で述べたポンプの最高効率点での揚程HBEPで割った無
Ns770の解析と同様に、解析では一流路モデルを使用し
次元値を表す。同様に、横軸は流量Qを最高効率点での
た。また、羽根車前方およびディフューザ後方にそれぞ
流量QBEPで割った無次元値を表す。また、図⒝の縦軸は、
れ2Dの直管をつけている。解析に使用した乱流モデル、
軸動力Lを最高効率点での軸動力LBEPで割った無次元値
メッシュ作成の仕方などは図2に示す解析結果を得た際
を表す。なお、ヘキサメッシュモデルを用いた結果は、
のNs770の場合と同様である。
図1に示すモデルを解析した後、羽根車のみのデータを
図9⒜より、揚程の解析結果は実験結果とところどこ
取り出すことによって得ている。
ろ若干の違いがあるが、全体的に傾向は一致している。
1.2
2.0
1.8
1.0
1.6
0.8
1.2
L/LBEP
H/HBEP
1.4
1.0
0.8
0.4
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
0.6
Hexa(SST)
Tetra+Prism(k-e)
0.5
Q/Q
0.2
1.0
Hexa(SST)
Tetra+Prism(k-e)
0.0
0.0
1.5
� 揚程
� Head
0.5
Q/QBEP
1.0
1.5
� 軸動力
� Shaft power
図8 ヘキサメッシュとテトラ+プリズムメッシュの解析結果の比較
Fig. 8 Comparison between analysis result of hexa mesh and analysis result of tetra + prism mesh
1.8
1.2
Experiment
1.6
1.0
Analysis
1.4
0.8
L/LBEP
H/HBEP
1.2
1.0
0.8
0.4
0.6
0.4
Experiment
0.2
0.2
0.0
0.6
0.0
0.5
Q/QBEP
1.0
1.5
0.0
Analysis
0.0
0.5
Q/QBEP
1.0
� 揚程
� 軸動力
� ����
� Shaft power
図9 解析結果と実験結果の比較
Fig. 9 Comparison of experimental and analysis results
–9–
1.5
RANS による斜流ポンプの解析精度
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
しかしながら、図⒝に示すように、Q/QBEP=0.6未満の低
4.Ns540斜流ポンプの解析
流量域で実験結果と解析結果が合わないことがわかる。
次にNs540斜流ポンプの解析結果について述べる。
これは、Ns770の結果を比較した際にも現れた傾向であ
Ns770の解析と同様に、解析では一流路モデルを使用し
る。
た。また、羽根車前方およびディフューザ後方にそれぞ
図10にヘキサメッシュとテトラ+プリズムメッシュ
れ2Dの直管をつけている。解析に使用した乱流モデル、
の解析結果から得た揚程と軸動力の比較図を示す。メッ
メッシュ作成の仕方などは図2に示す解析結果を得た際
シュモデルの作成の仕方、揚程、軸動力の定義は2−5
のNs770の場合と同様である。
節で述べたものと同様である。
図11⒜より、締切点以外の部分では、実験結果および
図⒜より、Q/QBEP=0.6以上の領域で両解析結果より求
解析結果から求めた揚程はほぼ一致していることがわか
めた揚程はほぼ一致している。これに対して図⒝に示す
る。また、図11⒝より軸動力の実験結果と解析結果には
軸動力の結果では、Q/QBEP=1.0以上の領域では両者の結
わずかな違いが見られるが、締切点以外の傾向は予測す
果はほぼ一致しているが、Q/QBEP=0.6以上1.0未満の領
ることができている。なお、この実験結果は工場試験の
域では傾向は一致しているものの、結果に差のあること
データであり、実験精度は前述の二つの斜流ポンプほど
がわかる。
高くないと考えられる。
1.2
2.0
1.8
1.0
1.6
0.8
1.2
L/LBEP
H/HBEP
1.4
1.0
0.8
0.4
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
0.6
Hexa (SST)
Tetra+Prism(k-e)
0.5
Q/QBEP
0.2
1.0
Hexa (SST)
Tetra+Prism(k-e)
0.0
0.0
1.5
0.5
1.0
1.5
Q/QBEP
� 揚程
� ����
� 軸動力
� Shaft power
図 10 ヘキサメッシュとテトラ+プリズムメッシュの解析結果の比較
Fig.10 Comparison between analysis result of hexa mesh and analysis result of tetra + prism mesh
2.0
Experiment
Analysis
1.8
1.6
1.2
1.2
1.0
1.0
0.8
L/LBEP
H/HBEP
1.4
0.8
0.6
Experiment
0.4
0.4
Analysis
0.2
0.2
0.0
0.6
0.0
0.5
1.0
0.0
0.0
1.5
0.5
1.0
Q/QBEP
Q/QBEP
� 揚程
� Head
� 軸動力
� Shaft power
図 11 解析結果と実験結果の比較
Fig.11 Comparison of experimental and analysis results
– 10 –
1.5
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
RANS による斜流ポンプの解析精度
2.5
1.2
Hexa(SST)
Tetra+Prism(k-e)
1.0
0.8
1.5
L/LBEP
H/HBEP
2.0
1.0
0.6
0.4
0.5
Hexa(SST)
Tetra+Prism(k-e)
0.2
0.0
0.0
0.5
Q/QBEP
1.0
1.5
0.0
0.0
0.5
Q/QBEP
1.0
� 揚程
� 軸動力
� ����
� Shaft power
1.5
図 12 ヘキサメッシュとテトラ+プリズムメッシュの解析結果の比較
Fig.12 Comparison between analysis result of hexa mesh and analysis result of tetra + prism mesh
図12にヘキサメッシュとテトラ+プリズムメッシュ
⑶ メッシュの第一層目の高さを0.01mm、0.02mm、
の解析結果から得た揚程と軸動力の比較図を示す。メッ
0.04mmとしたモデルでSSTモデルとk-eモデルによ
シュモデルの作成の仕方、揚程、軸動力の定義は2−5
りNs770斜流ポンプを解析した結果、Q/QBEP=0.2付
節で述べたものと同様である。
近でメッシュの第一層目の高さと乱流モデルの変更
図より、揚程、軸動力ともにヘキサメッシュとテトラ
による影響があった。
+プリズムメッシュの解析結果とでは大きな差があるこ
⑷ Ns540斜流ポンプ以外の場合、最高効率点付近で
とがわかる。さらに、揚程の傾向は似たようなものとなっ
あれば、テトラ+プリズムメッシュで解析を行って
ているが、軸動力は異なる傾向を示している。したがっ
も結果の違いはほとんど見られなかった。
て、最高効率点付近であっても羽根車単体をテトラ+プ
リズムメッシュで解析する場合は、その扱いに注意する
必要があると言える。
<参考文献>
⑴ 用田敏彦、野中紀彦、田中雄司:ポンプ羽根車流路形状設計
支援システムの開発、Transactions of JSCES、(2001)
、Paper
No.20010042.
5.おわりに
⑵ 後藤 彰、足原浩介、Mehrdad ZANGENEH:3次元逆解法
によるターボ機械翼の最適設計、エバラ時報、No.198、
(2003)
、
RANSによる斜流ポンプの解析精度について検討した。
得られた結果を要約すると次のようになる。
pp.3-11.
⑶ 葛西則夫、宮内 直、福富純一郎:斜流ポンプ羽根車の羽根
負荷分布の最適化設計、第59回ターボ機械協会総会講演会論
⑴ CトポロジーおよびOトポロジーで作成したメッ
文集、(2008)、pp.156-159.
シュモデルを使用してNs770斜流ポンプの解析をし
た結果、全体的にはほぼ一致する結果となり、ト
<筆者紹介>
ポロジーの違いによる影響はほとんど見られなかっ
富松重行:2003年入社。ポンプ、送風機および流体関連機器の
研究開発に従事。現在、技術研究所 研究グループ た。
主任。博士(工学)。
⑵ メッシュ数が約28万、約57万、約89万のNs770
斜流ポンプのメッシュモデルを解析した結果、揚程
の違いはほとんどなく、メッシュ数の違いが与える
影響はほとんど見られなかった。
– 11 –
高比速度遠心ファンの開発
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
高比速度遠心ファンの開発
中 山 淳 大 場 慎
Development of High Specific Speed Centrifugal Fan
By Jun Nakayama and Shin Oba
High specific speed centrifugal fan has been often used as an induced draft fan for petrochemical
plant, various kinds of furnaces and power plant. In recent years, these plant capacities have been
increasing and fan capacities have been also.
Through customer’s technical evaluations, customers often require high-efficiency to save the life
cycle cost. Based on this viewpoint, high specific speed centrifugal fan which has high efficiency in
high flow rate region was developed.
The developed fan was examined on impeller and casing shape with CFD analysis in the
beginning, and then the conclusion was confirmed by a model fan test. As a result, improvement in
efficiency was achieved in high specific speed.
1.はじめに
3.新規開発の概要
高比速度遠心ファンの用途は、石油化学プラント向け
3−1 羽根車形状
の誘引送風機(IDF)を主とした各種炉や、ボイラのIDF
羽根車形状は通常平板を用いた2次元翼形状としてお
である。近年、プラントの大型化に伴い、送風機の大風
り、従来設計による羽根車のCFD解析を実施した。その
量化が進んでいる。また、技術審査段階でライフサイク
結果による羽根車速度ベクトルを図2に示す。Tip側で
ルコストの観点から効率を評価されることも多く、大風
は羽根車入口角度と、流れの角度が一致していないた
量域において従来よりも高効率性能を発揮する高比速度
め、羽根車入口近傍の衝突により負圧面側に局部的な速
遠心ファンが求められている。このため、本開発では高
度の増加が発生する。それにより、Tip側からHub側へ
比速度領域において流れ解析(CFD)を用いた形状検討
と向かう流れとなり、Tip側で流れの剥離が発生してい
を実施した後、モデル機を製作して検証した。その結果、
る。しかし、圧力面側では流れの剥離もなく比較的きれ
大幅な効率改善を達成できたので、以下にその概要につ
いに流れている。2次元翼形状では、Tip側およびHub
いて報告する。
側のいずれか、又はそれ以外の一部で最適な入口角度と
することは容易であるが、Tip側およびHub側共に最適
2.高比速度ファンの構造と特徴
な入口角度とすることは困難である。しかしながら、高
図1にファン・ブロワの概略選定範囲を示す。今回の
比速度遠心ファンにおいては、羽根車入口の衝突損失に
開発範囲は、遠心ファンの領域中で使用頻度が高く、現
よる羽根車の効率低下は大きく、改善の必要がある。そ
在高効率化が求められている高比速度領域を対象とし
こで、Tip側およびHub側共に最適な入口角度となるよ
た。開発した高比速度遠心ファンは、メンテナンス性お
うに、Tip側を回転方向へ前傾させた3次元的な翼形状
よびイニシャルコストを考慮して、従来のファンと同構
とした。それにより、Tip側の剥離の発生も無く損失を
造の鋼板製の羽根車およびケーシングを採用した。
低減することができた。新たに設計した羽根車の外観を
図3に示す。
– 12 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
高比速度遠心ファンの開発
1,000
ecoターボ
多段ブロワ
圧力 kPa
100
遠心ファン
10
高比速度遠心ファン
今回開発範囲
単段ブロワ
1
1
10
100
1,000
10,000
100,000
流量 m3/min
図1 ファン・ブロワの選定範囲
Fig. 1 Selection chart of fan and blower
Velocity
Tip
Inlet
120(m/s)
100
60
40
Outlet
80
20
0
Hub
� 負圧面側
図3 新設計羽根車の外観
Inlet
Fig. 3 View of new impeller
Tip
3−2 ケーシング形状
従来設計の鋼板製ケーシングは、製作面の優位性から
Outlet
幅方向が一定のケーシングとしてきた。そのため、本開
Hub
� 圧力面側
図2 従来羽根車の速度ベクトル
Fig. 2 Velocity vector of conventional impeller
発においても、まず従来設計のケーシング形状でモデル
試験を行ったが、ケーシング内の損失が大きいことを確
認した。そこで、損失の発生原因を把握するためCFD解
析による検証を行った。その結果、設計流量において
モデルの試験結果とCFD解析結果がほぼ一致したことか
ら、解析結果の妥当性が確認できたため、内部流れ状態
– 13 –
高比速度遠心ファンの開発
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
も実際の流れに近いものと想定し、CFD解析結果から内
断面内での速度分布の偏りが大きく、側板近傍の内側領
部流れを評価することにした。
域における速度が高い。この速度の偏りと2次流れによ
設計流量におけるケーシング内の流線分布を図4に示
り循環流れが発生することとなる。すなわち、この循環
す。流線表示は羽根車出口からケーシング出口までを対
流れにより、ケーシング内の摩擦損失が増大したことが
象とした。羽根車出口から出た流れは羽根車の回転方向
効率低下の原因と推定される。
と同方向に回転しながら増速され、主板側から側板側に
ケーシングを設計する際、羽根車特性とケーシング特
向かって流れている。本来なら、この流れはそのままケー
性が一致する流量を設計点とする。ここでの、羽根車特
シング出口に向かうはずであるが、側板側で増速された
性は、羽根車外径/枚数/出口角度などの形状より決定
流れは、ケーシングの舌部(巻始め)を通過し、再び側
され、ケーシング特性は、ケーシングの巻始め角度/ス
板側を回転する循環流れが発生している。そこで、ケー
ロート部流路面積などの形状より決定されるヘッドであ
シング内の循環流れをより詳細に把握するため、図5に
る。羽根車特性とケーシング特性のマッチングを考慮す
示す⒜180°断面、⒝270°断面、⒞0°断面における
ると、比速度の増加に伴って、ケーシングスロート部の
速度分布を図6に示す。断面内では反時計回りに回転す
流路面積が増加することになるため、ケーシング外径、
る2次流れがある。⒜180°断面では、比較的均一な速
又は幅方向を大きくする必要がある。そのため、従来ケー
度分布であるのに対して、⒝270°断面、⒞0°断面では、
シングでは、幅方向の拡大に伴い、循環流れが発生する
180°
270°
0
15
30
45
60
75(m/s)
0°
Velocity
図4 従来ケーシング CFD 解析結果
図5 ケーシング断面
Fig. 4 Streamline of conventional casing
Fig. 5 Outline of conventional casing
Velocity
75(m/s)
60
45
30
15
0
� 180°断面
� 270°断面
図6 従来ケーシングの速度分布
Fig. 6 Velocity contour of coventional casing
– 14 –
� 0°断面
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
高比速度遠心ファンの開発
基礎円の内側領域が拡大することとなる。そこで、新た
1.2
New
Initial
New_cal
� / �max
なケーシング設計では、基礎円の内側領域の面積をでき
1.0
るだけ小さくし、さらに、ケーシング舌部から出口へ向
�/�max
かって流路断面積が最適になるように形状を決定した。
0.8
循環流れの改善効果を確認するため、新設計したケー
シングを用いたCFD解析を実施した。その結果、従来ケー
0.6
�
�
シングと同様に羽根車出口から出た流れは羽根車の回転
方向と同方向に回転しながら、主板側から側板側に向か
0.4
う流れとなり、断面内の速度分布からも反時計周りに回
転する2次流れは存在するが、従来ケーシングに比べて、
�
0.2
�
ケーシング内の速度分布が均一化され、循環流れが改善
された。新ケーシングの有効性が確認できたことから、
0.0
0.0
モデル機を製作して実証を行うこととした。
0.1
0.2
0.3
0.4
�
0.5
図8 ファン性能比較
Fig. 8 Comparison of fan performance
4.試験結果
モデル機の試験状況を図7に、新旧ケーシングを使
用した場合のファン特性を図8に示す。ここで、横軸は
シングに比べて、圧力係数ψ の改善によって、最高効率
流量係数φ 、縦軸は圧力係数ψ 、動力係数λ 、効率比η /η max
で約8%改善された。また、試験結果とCFD解析結果を比
で あ る。 図 中“New”は 新 ケ ー シ ン グ、“Initial”は 従 来
較すると、最高効率付近では試験結果とよく一致してい
ケーシングの試験結果を示す。プロット点は新ケーシン
ることからも、CFD解析による事前予測が妥当な結果で
グのCFD解析結果を示す。従来ケーシングでは流量係数
あったといえる。
φ =0.28付近で最高効率であるのに対して、新ケーシング
では流量係数φ =0.32付近で最高効率となる。新旧の両
5.おわりに
ケーシング共に同一羽根車を使用しているため、動力係
今回、高比速度・高効率形遠心ファンの開発を行い、
数λ にほとんど違いはなく、新ケーシングでは従来ケー
効率改善を達成した。これにより、ランニングコストで
有利になることに加え、ライフサイクルコストや環境負
荷低減の面で大きな効果が期待できる。また、従来のファ
ンと同様に鋼板製の羽根車・ケーシングを採用した簡素
な構造となっているため、製作コストが安く、メンテナ
ンスが容易であることも優位性の一つである。
当社はこれまでの高比速度遠心ファンの納入実績を生
かしながら、さらに信頼性の高い高性能な製品を提供し、
顧客の満足を得るよう努力していく所存である。
<筆者紹介>
中山 淳:1997年入社。主に、ファン・ブロワの設計業務に従事。
現在、気体機械設計部 ブロワグループ 主任。
大場 慎:2005年入社。ポンプ、送風機および流体関連機器の
研究開発に従事。現在、技術研究所 開発グループ
図7 ファン性能試験
博士(工学)。
Fig. 7 Performance test
– 15 –
オイルフリーの省エネ型ターボブロワ「eco ターボ」
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
オイルフリーの省エネ型ターボブロワ「eco ターボ」
奥田温一
“eco Turbo” for Energy-saving and Oil-free
Yoshikazu Okuda
Air blower has been used for many types of equipment such as sewage or waste water treatment,
air conveying system for various kinds of powder, and medium or small size incinerator.
And the needs of energy-saving of the blowers for these equipments are very high, since these
electric powers require high consumption ratio in many cases.
In order to meet the above requirements, this paper introduces the outline of “eco Turbo”
adopting the advanced technologies, i.e. high-efficiency, compact, low noise achieved by oil-free
high-speed motor.
1.はじめに
1,000
下水処理および工場廃水処理として使用されるばっき
圧力 kPa
用ブロワをはじめ、各種の粉体を移送するエアコンベア
用、中小型の燃焼用などにエアブロワが使用されている。
これらの用途におけるブロワの消費電力は、その設備に
100
おいて大きな比率を占める場合が多く、それらのブロワ
10
の省エネのニーズは非常に高い。大型ブロワでは高効率
1
10
100
1,000
流量 m3/min
形が採用されてきているが、中小型の高効率ブロワの登
図1 ブロワ選定範囲
場が待たれていた。
Fig. 1 Application range of blower
このようなユーザの要望に応えたコンパクトで高効
率、低騒音、しかも最新の技術を取り入れたオイルフリー
高速モータ
の高速モータ駆動ターボブロワ「ecoターボ」の概要を
紹介する。
2.選定範囲
ブロワ
図 1 にecoタ ー ボ の 選 定 範 囲 を 示 す。 圧 力 は30∼
150kPa、流量は3∼200m3/min の広い範囲で最適なモ
デルを選択できる。
3.ブロワの構造
羽根車
空気ベアリング
図2 高速モータ駆動ブロワ構造図
図2にブロワの構造、図3にブロワの外観を示す。ブ
Fig. 2 Structure of blower driven by high speed motor
ロワ羽根車はインバータで駆動される高速モータの軸端
に直接取り付けられ、モータの軸受は高速回転に適した
空気ベアリングを採用している。モータはブロワ羽根車
防音施工されたキャビネット内に取り付けられるため低
が吸い込む空気で自己空冷され、またブロワとモータは
騒音、低振動である。インバータ装置はキャビネットと
– 16 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
オイルフリーの省エネ型ターボブロワ「eco ターボ」
スラストベアリング
ラジアルベアリング
図5 空気ベアリング外観
Fig. 5 View of air bearing
にコーティングを施工してあり十分な耐久性を有してい
る。
3−3 モータおよびインバータ
モータは三相誘導電動機を使用し、インバータにより
図3 ブロワ外観写真
Fig. 3 Outline view of blower
高速で運転されるが、高速回転に対しても堅牢で長期間
安定した運転が可能である。
インバータは機側または外部からの信号によりブロワ
一体となった制御盤内に取り付けられ、その制御盤の外
の回転速度制御ができる。また、インバータは国内、海
面に取り付けられたタッチパネル画面で、ブロワの運転
外の高調波対策指針に従った低ノイズタイプとなってい
を操作できる。運転状態や故障はこのタッチパネルに表
る。
示される。
3−1 羽根車
4.運転制御
羽根車は流れ解析に基づいて設計され、プラスター
運転制御は、機側のタッチパネルで手動、自動の切り
モールドの採用により形状が正確に形成されるとともに
替えができ、廃水処理用であればDOセンサなどの入力
表面は非常に滑らかであり、高効率形のアルミ合金製で
信号により回転速度制御が可能である。タッチパネルに
ある。
は、圧力、流量、回転速度、吐出し温度、モータ巻き線
3−2 空気ベアリング
温度などが表示でき、異常が検知された場合は、警報を
空気ベアリングは高速回転に伴い空気の粘性により
出すとともに自動的に停止する機能を備えている。
モータ軸周囲の空気を取り込み、軸受理論に基づく空気
また、要望によりインレットベーンを装備することも
の圧力よって軸が浮上する構造である。運転中は構造的
可能である。
に接触が無いため摩擦によるエネルギー損失がない。図
4に空気ベアリングの作動原理を示す。軸方向の荷重
5.特長
はスラスト空気ベアリングで支持する。図5に空気ベア
ecoターボの特長をまとめると以下のとおりである。
リングの外観を示す。潤滑は空気で行われるため、潤滑
① 3次元羽根車の採用により高効率である。
油などはいっさい不要でオイルフリーである。始動およ
② 空気ベアリングのため、軸受損失がなく、高効率
び停止時、ごく短時間軸と軸受は接触するが、軸受部材
羽根車と合わせて、ランニングコストが低い。
③ 空気ベアリングの採用により潤滑油が不要で、周
囲環境をクリーンに保つことができる。
④ 高速モータは空冷式のため、冷却水などのユー
ティリティが不要である。
⑤ 高速モータ直結駆動のため増速機、軸継手が不要
となり軽量で、省スペース形である。
高速回転での高圧空気の膜により浮上
⑥ インバータによる回転速度制御のため、部分負荷
図4 空気ベアリングの作動原理
でも高効率を維持しながら風量制御を行うことがで
Fig. 4 Operating principle of air bearing
き、消費電力を削減できる。
– 17 –
オイルフリーの省エネ型ターボブロワ「eco ターボ」
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
上昇はわずかで、狭い設置スペースでも周囲は高温
にならない。図6に設置例を示す。
⑩ システムが簡単で信頼性が高い。
⑪ 通常の点検は吸込フィルタの交換だけでよく、メ
ンテナンスコストはわずかである。
⑫ オールインワン構造のため基礎上に設置して、空
気配管および配線を行うだけでよく、据え付け工事
が簡単である。
⑬ 標準型を取りそろえてあり短納期である。
4.おわりに
図6 ブロワ設置例
Fig. 6 View of blower installation
資源の枯渇や地球温暖化防止の観点から、省エネル
ギーはあらゆる産業の現場で、最優先の課題となってい
る。本機がそのニーズに応えられる製品であることを確
⑦ タッチパネルで操作性がよく、運転状況の表示が
信する。
できると共に、自動制御運転が可能で、遠隔での監
今後もさらに改良を重ね、高効率で信頼性が高く使い
視も可能である。
やすい製品を提供していく所存である。
⑧ 80∼85dBAと低騒音で、しかも低振動のため、
周囲環境が静かである。
⑨ ブロワおよびモータからの放熱は、吸込空気と共
<筆者紹介>
奥田温一:1967年入社。主に、送風機・ブロワ設計業務に従事。
現在、気体機械設計部 技監。技術士(機械)
。
に排出されるため、ブロワが設置される室内の温度
– 18 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
青森県 相原第2排水機場向け排水ポンプ
青森県 相原第2排水機場向け排水ポンプ
石 谷 渉 宗 田 憲 郎
Drainage Pump for Aihara Dai 2 Pumping Station
By Wataru Ishitani and Norio Souda
The flood and the sediment disaster have damaged frequently in various places along Iwaki river
due to the downpour disaster that brings on a typhoon and a rainy season front. Iwaki river has
given the local populace rich natural environment, and has been utilized from long ago as the
place where industry in the region has been brought up. This pump has the role to prevent the
field in the area against flooding by draining To river that is the tributary of Iwaki river. This paper
introduces the outline of this pump .
1.はじめに
3.構造と特徴
岩木川は豊かな自然環境に恵まれ、地域の産業を育む
⑴ 構造
場として古くから利用されている。地域住民の生活と密
本ポンプの構造を図1、図2に示す。
着した川であるが、台風や前線に起因する豪雨災害によ
本ポンプはディーゼル機関駆動の横軸斜流ポンプであ
り、各地で度々洪水や土砂災害の被害を受けている。
る(図3)。
本ポンプは近隣地域を冠水から守り(湛水防除)、岩
本機は口径2,000mmであり、同構造のポンプとして
木川の支川である十川に排水する役割を担っている。
は最大級の容量となっている。
以下に本ポンプの概要を紹介する。
⑵ 特徴
通常大型横軸斜流ポンプでは、保守上の要求から、ケー
2.ポンプ仕様
シング、吸込エルボともども、水平二つ割りとする。本
機器の仕様を表1に示す。
機では現地におけるクレーン容量などを考慮して、ライ
ナケース(ディフューザケーシングと吸込エルボをつな
表1 ポンプ仕様
Table 1 Pump specifications
形
ぐテーパ状部品)を設け、本部品も水平二つ割り構造と
して、より保守の容易な構造となっている。
式
横軸斜流ポンプ
吸込/吐出し口径
2,000/2,000mm
また、機器を現地で分解・点検を行う際、精度よく組
10m3/s
み立てを行うために、各分割部品の位置決めはノックピ
4.9m
ンにより行う構造とし、あわせ面の穴加工を高精度NC
吐
全
出
し
揚
量
程
ポンプ回転速度
117.1min–1
ポ ン プ 効 率
87%以上
原
動
機
4サイクル
ディーゼル機関
原 動 機 出 力
670kW
原動機回転速度
1,000min–1
加工機により行っている。
排水用横軸ポンプでは水中軸受の潤滑にグリースを用
いている。グリースはポンプの外部に取り付けてある給
油用ポンプにより常時微量が供給される。劣化し軸受か
ら押し出されたグリースは、排水と共に吐出されていた。
減
速
機
横軸平行軸歯車減速機
減
速
比
1/8.538
本機では、環境を守るという視点から、排グリースが
96%
排水中に混ざることがないよう、軸貫通部のシール構造
減 速 機 効 率
を改良することにより、専用配管を通じて、ポンプ外部
に排出し、排油箱に回収する構造としている(図4)。
– 19 –
青森県 相原第2排水機場向け排水ポンプ
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
図3 機場据付状況
図1 口径 2,000mm 横軸斜流ポンプ
Fig. 3 View of site installation
Fig. 1 View of drainage pump
インペラ
ケーシング
グランドパッキン
外部軸受
水中
軸受メタル
グリス排油
グリス給油
オイルシール
図4 水中軸受詳細図
図2 ポンプ構造図
Fig. 4 Detail of submerged bearing
Fig. 2 Sectional view of pump
4.おわりに
本ポンプの導入によって、この地域の排水がスムーズ
に行われ、洪水や土砂災害などの被害がなくなることを
<筆者紹介>
石谷 渉:2005年入社。主に、ポンプの機器設計業務に従事。
現在、水力機械設計部 水力機械-2グループ。
宗田憲郎:1986年入社。現在、営業本部 東北支店 主事。
切望する。
最後に、本ポンプの設計にあたり、青森県西北地域県
民局殿を始めとする関係者の方々より、さまざまなご指
導、ご協力を賜りましたこと、この場をお借りして御礼
申し上げます。
– 20 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
兵庫県中播磨県民局宮排水機場向け 排水ポンプ設備
兵庫県中播磨県民局宮排水機場向け 排水ポンプ設備
深 澤 正 幸 佐 々 木 隆
Miya Pumping Station for Hyogo Nakaharima
By Masayuki Fukasawa and Takashi Sasaki
Miya Pumping Station was constructed to defend the life and the property of people from
inundation disasters. This project started since 1960’s and pumping station completed in 1975.
Now, Miya pumping station has been operating more than 30 years without trouble.
This time, two sets of “Lambda-21” which has two reduction gears vertical pumps (Discharge
diameter 1500mm) were delivered for expansion project of Miya pumping station. This temporary
expanded pumping station was built on the sea.
We succeeded the site trial operation. This paper briefly introduces the outline of this project.
1.はじめに
このたび、既設機場の改築に伴い、隣接する公有水面
宮排水機場は、高潮浸水被害から住民の生命や財産を
上の仮設排水機場に、吐出し量6.5m3/s、口径1,500mm
守り、安心して生活できる環境を確保するため、昭和40
の歯車減速機搭載型立軸斜流ポンプ(高流速、高比速度、
年代から始まった港湾高潮対策事業により建設され、昭
国交省揚排水ポンプ設備設計指針(案)同解説のⅡ型)
和50年に稼働を開始した(図1)。
2台を納入し、現地試運転を完了した(図2)。
以下にその概要を報告する。
姫路城
2
新幹線
姫路駅
山陽本線
2
飾磨
宮堀川
野田川
山陽
電鉄
本線
250
宮排水機場
市
川
中島地区物揚場
姫路港
図1 宮排水機場の位置
図2 減速機搭載型立軸ポンプ
fig. 1 Location of Miya Pumping Station
fig. 2 Reduction Gear-Mounted Vertical Pump
– 21 –
兵庫県中播磨県民局宮排水機場向け 排水ポンプ設備
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
主原動機用排気消音器
燃料貯油槽
仮設構台
海上
燃料移送ポンプ
宮水門
横軸二軸式ガスタービン
吐出弁
主ポンプ
主原動機用給気消音器
�1,500 可撓管
�2,200 可撓管
燃料小出槽室
1,900
仮設ポンプ室
21,950
16,000
1,000
1,000
10,500
1,200L 燃料小出槽
�2,200 放流管
仮設構台
公有水面
自家発電装置
(既設)宮排水機場
図3 据付平面図
fig. 3 Layout of pumping station
2.設備の概要と特徴
表1 主ポンプ仕様
Table 1 Pump specifications
図3に据付平面図、表1に主ポンプ仕様を示す。
ポンプ形式
本機場は、表2に示す技術を採用することにより、完
口
全無水化およびコンパクト化されている。なお、主ポン
全
径
揚
程
歯車減速機搭載型立軸斜流ポンプ(Ⅱ型)
1,500mm
3.7m
プなどのポンプ設備は、コンクリート製水槽上に設置さ
吐 出 し 量
6.5m3/s
れているが、放流管は設置期間が短いことから、仮設構
回 転 速 度
169min 1
台に設置された。
原動機出力
365.3kW
速度制御範囲
65∼100%
2−1 機場の完全無水化
台
数
–
2台
機場の無水化を図るために、減速機搭載型立軸ポンプ
とガスタービンの採用、セラミックス軸受、無注水メカ
ニカルシールによる主ポンプの無水化が図られている。
べ、主ポンプの吐出し量が1台あたり約5%アップしたが、
2−2 機場のコンパクト化
建屋面積は約523m2から約208m2(別棟の電気室を含む)
高流速、高比速度ポンプの採用により、既設設備に比
へと4割程度となり、大幅にコンパクト化した(図4)
。
表2 適用技術と効果
Table 2 Technologies and effect
適 用 箇 所
適用技術・設備
効果
減速機潤滑油は揚水による自己冷却
減速機搭載型立軸ポンプ
主 ポ ン プ
建屋は一床式にて対応可能
高流速、高比速度(Ⅱ型)
セラミックス軸受(水中軸受)
無注水メカニカルシール(軸封部)
原
動
機
電 源 設 備
二軸式横軸ガスタービン
自家発電装置ディーゼル機関
ラジエータ冷却方式
無水化
機場のコンパクト化
保守、点検作業の負担軽減
機場のコンパクト化
無水化
無水化
無水化
燃料系統設備
燃料系統小配管の二重化
燃料油流出防止
吸 込 水 槽
セミクローズ形吸込形状
機場のコンパクト化
– 22 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
兵庫県中播磨県民局宮排水機場向け 排水ポンプ設備
高さ方向は、歯車減速機搭載型立軸ポンプの採用により、
既設の二床式に対して一床式とすることができ、保守・
点検作業の負担を軽減することができる。
図5 主ポンプ搬入状況
(写真奥に見えるのがランプウェイ付貨物船)
fig. 5 View of carrying in pump
図4 宮仮設排水機場全景(右側は既設機場)
fig. 4 View of Miya pumpimg station
また、吸込水槽は、セミクローズ形吸込形状にするこ
とで、吸込流速の高流速化によるコンパクト化を図って
いる。
2−3 燃料系統設備の安全性向上
本機場は公有水面上にあるため、燃料油流出防止対策
として、燃料貯油槽および小出槽の設置レベル、燃料貯
油槽から小出槽までの燃料小配管のトラフへの収納、屋
外燃料小配管の耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管(HIVP
図6 減速機搭載型吐出しエルボ搬入状況
管)での被覆による二重化などを実施することで安全性
fig. 6 View of carrying in Reduction-gear
mounted discharge elbow
向上を図った。
3.主ポンプ設備の輸送、搬入および据付
使用した貨物船は、総トン数が98トン、甲板寸法が、
機場への進入道路が狭いため、工事に必要な機器およ
幅約7m、奥行き約27mであり、通常は、播磨灘に点在
び資材の輸送、搬入は海上から行った。
する島への食品などの輸送用に使用されている。
3−1 輸送および搬入
⑶ 機器搬入
⑴ 輸送ルート
海上からの搬入は、機場に併設された仮設構台で行っ
機器および資材は、飾磨港区中島地区にある物揚場ま
た。潮位が低い場合に、水面と仮設構台との高低差より、
で陸上輸送し、物揚場から宮排水機場までの約1.5キロ
ランプウェイの角度が大きくなってしまい、車輌の乗り
メートルの距離を海上輸送した。
入れが困難となるため、潮位の高い満潮時を選んで搬入
⑵ 海上輸送方法
した。
海上輸送には、ランプウェイ
注)
付貨物船を使用し、物
⑷ 海上輸送の安全管理
揚場および宮排水機場において、車輌ごと貨物船へ乗降
機場周辺の航路は、多くの船舶が航行または停舶して
する方法を採用した(図5、図6)。
いることから、輸送前に近隣企業、漁業協同組合および
注) ランプウェイ(Rampway)とは、トラックやトレーラーな
どの車輌が、自走で甲板へ乗り入れすることができる斜路の
ことをいう。
関連工事施工業者に内容を周知するとともに、輸送時は、
姫路港管理事務所と連絡、調整を密にし、入出港船舶の
情報を輸送作業員に周知して事故防止を図った。また、
– 23 –
兵庫県中播磨県民局宮排水機場向け 排水ポンプ設備
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
安全監視船を配備し、海上交通の安全を確保した。
4.おわりに
3−2 主ポンプ設備の据付
本機場は、仮設排水機場であり、今回設置された機器
本機場には、天井クレーン設備がないため、建屋施工
は、数年後の既設機場の更新時に、新設機場に移設され
前に60tラフタークレーンを用いて設備の据付を行った。
る予定ある。
減速機搭載型立軸ポンプは、減速機の軸心調整が現地に
最後に、本設備の施工にあたりご指導頂きました兵庫
おいて不要であり、歯車機構ケースの最上部にある固定
県中播磨県民局姫路港管理事務所ならびに関係各位皆様
軸継手と、原動機との継手を接続するだけで良いため、
に厚く御礼申し上げます。
従来の立軸ポンプに比べ、短時間で据付が実施できた。
<筆者紹介>
深澤正幸:2002年入社。主に、揚排水設備の計画に従事。現在、
大阪支店 技術グループ。
佐々木隆:2001年入社。主に、ポンプ設備のシステム設計に従事。
現在、プラント建設部 システム設計グループ。
– 24 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
磯子火力発電所新2号機向け循環水ポンプ
磯子火力発電所新2号機向け循環水ポンプ
鍵 山 尚 久 勝 又 英 樹
Circulating Water Pump for Isogo Thermal Power Station Unit No.2
By Naohisa Kagiyama and Hideki Katsumata
Isogo Thermal Power Station is located in Keihin industrial zone of southeast area of Yokohama
city. Unit No.2 was built as a new power station and old power station, which has been operated
for 30 years or more since the 1960's was removed. The purpose of replacing the power station is
to respond to the environmental improvement plan of Yokohama city, stability of the power supply
and reliability improvement to the metropolitan area. The circulating water pump having the
diameter of 3,000mm driven by a electric motor outputs 6,200kW was designed and manufactured
for Isogo Thermal Power Station Unit No.2 and test running in the site was completed. The outline
and feature of this pump is introduced.
1. はじめに
電源開発株式会社磯子火力発電所新2号機は、神奈川
県横浜市南東部の京浜工業地帯の一角に位置している。
昭和40年代から30年以上にわたり運転されてきた旧
発電所を撤去し、横浜市の環境改善計画への対応、首都
圏を中心とした地域への電力供給の安定性・信頼性向
上、設備老朽化への対応を目的として、平成10年より
建設、平成14年より営業運転を開始した新1号機に続
いて、建設された発電所である。
今回、同発電所新1号機に続き、新2号機向けに循環
水ポンプを製作、納入したので以下にその概要と特徴を
図1 据付外観
紹介する(図1)。
Fig. 1 View of installation
2.ポンプの構造と特徴
新1号機と新2号機のポンプ仕様の比較を表1に、新
表 1 ポンプ仕様
2号機の構造を図2に性能曲線を図3に示す。
Table 1 Pump specifications
ポンプ型式としては、二床式、床上吐出し、一重胴の
新2号機
新1号機
可動翼立軸斜流ポンプである。電動機頂部に翼角制御装
形 式 二床式立軸可動翼斜流ポンプ 二床式立軸可動翼斜流ポンプ
置を設け、近傍に設置した油圧ユニットからの制御油に
口 径
3,000mm
3,000mm
全 揚 程
195kPa
165kPa
吐出し量
3
91,000m /h
90,000m3/h
より可動翼操作を行う。
出 力
6,200kW
5,100kW
3.合理化提案
液 質
海水
海水
同発電所新1号機向け循環水ポンプの実績を活かし、
台 数
1台
1台
新2号機向け循環水ポンプの計画にあたっては、以下の
– 25 –
磯子火力発電所新2号機向け循環水ポンプ
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
合理化提案を行った。
⑴ 新2号機は新1号機より全揚程、吐出し量が若干
電動機架台
大きい仕様となっているが、回転速度ならびに、定
格点における翼角度を変更することにより同一部品
サーボシリンダ
から構成されるポンプ(サーボシリンダ部、電動機
吐出しエルボ
架台を除く)とした。これにより、多くの特殊工具
合成ゴム軸受
を新1・2号機で共用化した。
⑵ ポンプの性能試験は、JIS B 8327「模型によるポ
ンプ性能試験方法」に基づくこととし、新1号機の
模型性能試験結果を用いてポンプの寸法管理を行う
吐出しボウル
ことにより、新2号機としての模型性能試験の実施
合成ゴム軸受
を省略した。
吸込ベル
⑶ 新1号機納入時に実施した模型水槽試験を基に新
2号機水槽の健全性を評価することにより、模型水
槽試験を省略した。
4.おわりに
図2 ポンプ構造図
今回、新1号機の納入実績を活かした合理化提案を行
Fig. 2 Structure of pump
15
350
NPSH Req
全揚程(kPa)
300
10
100%翼開度
5
全揚程
250
NPSH(m)
400
200
110%
100%翼開度
150
80%
100
60%
30%
7,000
6,000
ポンプ効率(%)
軸動力
(kW)
50
0
90
80
0%
10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 吐出し量(m3/h)
ポンプ効率 0%
80%
60%
30%
6,200kW
軸動力
(sg:1.0193)
70
60
5,000
50
4,000
40
3,000
30
2,000
20
1,000
10
0
0
110%
100%
110%
100%
80%
60%
30%
0%
10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 吐出し量(m3/h)
図3 ポンプ性能曲線
Fig. 3 Characteristic curve
– 26 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
磯子火力発電所新2号機向け循環水ポンプ
うことができた。循環水ポンプは50%容量×2台が一般
<参考文献>
的であるが、本発電所は100%容量×1台であり、通常
⑴ 電源開発株式会社殿ホームページ
の発電所よりもさらに高い信頼性が要求される。今後と
<筆者紹介>
も、顧客の期待に答え、その設備の重要性を充分認識し
鍵山尚久:1996年入社。主に、産業向けポンプの見積計画に従
て、常に信頼性の高い製品を提供し、満足頂けるよう努
力していく所存である。
事。現在、産業システム技術部 水力グループ。
勝又英樹:1993年入社。主に、発電所向け立軸斜流ポンプの機
器設計業務に従事。現在、水力機械設計部 水力機械
おわりに、本ポンプの計画、製作にあたり、終始適切
−1グループ 主任。
な助言と御指導を頂いた電源開発株式会社殿の関係各位
に厚く御礼申し上げます。
– 27 –
中国地方整備局 狐川排水機場向け排水ポンプ設備の整備・更新
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
中国地方整備局 狐川排水機場向け排水ポンプ設備の
整備・更新
石 倉 武 志 高 橋 亨 輔
Kitsunegawa Pumping Station for Chugoku Regional Development Bureau
By Takeshi Ishikura and Kousuke Takahashi
The pump equipments for Kitsunegawa pumping station was renewed. This pumping station has
a role as drainage equipments for Tottori City northern area.
By this renewal and maintenance the simplification of the cooling water system was implemented
to improve the operation and maintenance, and the operation support system was introduced to
reduce pump operator's work burden. This paper reports on the outline of this project.
1.はじめに
狐川排水機場は、鳥取市街地北部の内水被害対策とし
2号主ポンプ
常時冷却水
ポンプ×2台
て、昭和51年に1号排水ポンプ、昭和62年に2号排水
ポンプが設置された総排水量10m3/sのポンプ場である。
このたび当社は、3ヶ年度にわたる整備・更新工事を
吸込水槽
受注し、今春、施工を完了した。この整備工事は、信頼
性の向上、維持管理性の向上を目的としたもので、冷却
初期冷却水
ポンプ×2台
水系統の簡素化、運転支援システムの導入などを実施し
1号主ポンプ
水封式真空
ポンプ×2台
た。以下、この工事概要を紹介する。
2.冷却水系統の簡素化
吸込水槽
冷却水槽
既設の冷却水系統は、地下冷却水槽に貯留した清水に
井戸
給水ポンプ×1台
よる清水冷却方式であり、給水ポンプ、初期冷却水ポン
プ、常時冷却水ポンプなどの冷却水系統機器ならびに、
図1 既設冷却水系統フロー
これらに付随する小配管や弁類が多く、システムが複雑
Fig. 1 Schematic diagram of existing cooling water system
であった。
図1に既設冷却水系統フローを示す。
頼性、維持管理性が向上した。
今回の整備工事にて、以下に示す機器の改造または更
新を行うことにより、冷却水系統の簡素化を実施した。
3.乾式満水ユニット(アントリア)の導入
① 1、2号主ポンプのグランド構造を無給水式に改
既設の呼び水用真空ポンプは、水の補給が必要な水封
造
式真空ポンプであった(図3)。
② 1号減速機を空冷式に更新
今回の整備工事では、水封式真空ポンプを弊社製品の
③ 1号ディーゼル機関を機付ラジエータ式に更新
乾式満水ユニット(アントリア)に更新した(図4)。
④ 2号ディーゼル機関を別置ラジエータ式に改造
アントリアは、水の補給が不要なる乾式真空ポンプで
⑤ 真空ポンプを乾式満水ユニットに更新
あることに加え、以下の特長がある。
図2に整備工事実施後のフローを示す。本図からも明
① 真空度の調整が容易である。
らかなように、冷却水系統のシステムが簡素化され、信
② 1日24時間の連続運転が可能なことから、主ポン
– 28 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
中国地方整備局 狐川排水機場向け排水ポンプ設備の整備・更新
プの満水待機運転が行える。
③ 気水分離が確実に行えるため、真空ポンプ腐食の
進行が非常に小さい。
別置ラジエータ
2号主ポンプ
④ 水封式に比較してメンテナンスが容易である。
4.運転支援機能付監視操作システムの導入
吸込水槽
近年、本機場周辺では浜坂遊水池設備の機側で整備が
行われたため、今回の整備工事において本機場操作室で
機付ラジエータ方式機関
1号主ポンプ
乾式満水
ユニット×1組
吸込水槽
浜坂遊水池周辺のゲート操作が行えるようになったが、
洪水時の状況に応じて主ポンプ以外に計7門のゲートを
適切に操作する必要があり、機場運用に熟練した操作判
断が求められる。
このため、今回の整備工事では、操作室内に設置され
図2 整備後の冷却水系統フロー
Fig. 2 Schematic diagram of improved cooling water system
ていた操作スイッチと状態表示灯のみの既設監視制御盤
を撤去し、代わりに遊水池のゲート操作までサポートす
る運転支援機能付監視操作卓の導入を行った(図5)。
システム構成図は図6に示す。
図3 既設真空ポンプ設置状況
Fig. 3 View of existing wet type vacuum pump
図5 運転支援機能付監視操作卓(整備後)
Fig. 5 View of supervisory computer control embedded operation
support program
本システムの特徴は以下のとおりである。
① モニタ画面上に表示された運転操作ガイダンスに
基づき、円滑に機場集中操作を行うことが可能。
② 狐川排水機場・浜坂遊水池設備に対する故障対応
支援機能および記録報管理支援機能の搭載。
③ 高齢者の操作性を考慮して、画面認識性(色彩/
画面配置)の向上を配慮したGUI画面設計。
④ 盤製品に対して積極的にエコロジー部材(環境配
慮型配線ダクトなど)を採用。
また、今回の整備工事では吐出樋門の安全確認用とし
図4 乾式満水ユニット設置状況(整備後)
Fig. 4 View of improved dry type vacuum pump system
てCCTVカメラを1台導入した。
– 29 –
中国地方整備局 狐川排水機場向け排水ポンプ設備の整備・更新
千代水
出張所
遠隔監視
端末
遠隔より総合的に狐川排水機場
および浜坂遊水池各設備
の監視を行う。
鳥取河川
国道事務所
遠隔監視
端末
WEB
所内に設置した遠隔監視端末から機場状態を監視するこ
とを可能にした(図6)。上述の機能については将来遠
隔から監視対象機場が増えた場合に備え、鳥取河川国道
事務所管轄地区の広域監視用WEB画面を準備した。
防災系ネットワーク
WEB &
APS通信
狐川排水機場
WEB
通信設備(別途工事)
CCTVカメラで安全を確認
しながら機場集中操作を行う。
6.おわりに
現在、公共投資の縮減が叫ばれている情勢のなか、ポ
ンプ設備の運転維持管理においても例外ではないことを
信号
運転支援機能付 CCTV
監視操作卓 操作卓
考えると、システムの簡素化や運転ガイダンス機能の導
入などのユニバーサルデザインの思想に基づいた形で作
信号
業者負担の軽減を考慮した機場設計を行う必要があると
2号
1号
系統 主ポンプ 主ポンプ 入出力
機器盤 機側盤 機側盤 中継盤
信号
浜坂遊水池
(ゲート3門)
狐川水門
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
信号
ゲート3門 アントリア等
の系統機器
信号
主ポンプ
考えている。
今回紙面で紹介した内容が、今後のポンプ設備の設計
方針に一石を投じることができれば幸いである。
吐出樋門
監視カメラ
最後に、国土交通省鳥取河川国道事務所殿、ならびに
多くの工事関係業者殿には、本整備・更新工事の施工に
図6 運転支援機能付監視操作/遠隔監視システム構成図
あたり、多大なご協力を頂いたことを深く感謝申し上げ
Fig. 6 System configuration of equipments in Kitsunegawa ます。
pump station
<筆者紹介>
5. 遠隔監視端末の導入
石倉武志:2005年入社。主に、揚排水ポンプ設備の計画に従事。
現在、大阪支店 技術グループ グループリーダー。
今回の整備工事では、狐川排水機場および浜坂遊水池
高橋亨輔:1995年入社。広域管理システムおよび電気計装制御
各設備を総合的に監視するため、狐川排水機場内にWEB
装置の設計に従事。現在、プラント建設部 電装シス
テム設計グループ 主任。
サーバを設置し、千代水出張所および鳥取河川国道事務
– 30 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
サウジアラビア向け火力発電・海水淡水化設備用各種大形ポンプおよび送風機
サウジアラビア向け
火力発電・海水淡水化設備用各種大形ポンプおよび送風機
岩 渕 稔 勝 又 一 樹
Various kinds of large Pumps and large Fans
for Power Station and Seawater Desalination Plant in Saudi Arabia
by Minoru lwabuchi and Kazuki Katsumata
Various kinds of large pumps and large fans were delivered for a power station and a seawater
desalination plant in Saudi Arabia.
Pumps for the power station were supplied for cooling the plant by seawater, seawater
transferring and FGD spraying and RO seawater pumps were supplied for the desalination plant.
In addition fans were supplied for forced draft air and gas recirculation of the power station.
The thermal power station generates 1,020 MW in total and the desalination plant supplies
drinking water of 212,000 m3/day.
1.はじめに
2.設備の概要
サウジアラビアで配電・給水事業を行う特別目的会
本プラントの全体フローを図2に示す。
社であるシュケイク水・電力会社(Shuqaiq Water and
Electricity Company)に、紅海沿岸に建設の原油焚火力
3.Plant Sea Water Supply Pump(P-SWSP)
発電設備(総出力1,020MW)、および海水淡水化設備(1
ポンプの火力発電設備に設置されるポンプでタービン
3
日当たり212,000m の飲料水を供給)用として、三菱重
を回した蒸気を水に戻すために復水器に冷却材として海
工業株式会社殿経由で、Plant Sea Water Supply Pump
水を供給するためのものである。
を始め全部で17台のポンプとFDFおよびGRFで合計12台
3−1 仕様および構造
の送風機を製作、納入したので以下に紹介する。
仕様を表1に、構造を図3に工場据付状態を図4に示
す。
本ポンプは電動機直結駆動の二床式タイプで、スラス
ト荷重はポンプの軸受で支持しており、スラスト容量が
大きいことからパッド式を採用している。
ポンプ水中軸受は、合成ゴム軸受を採用している。合
成ゴム軸受を採用した場合、通常は軸受潤滑水の注水配
管や計装機器が必要となるが、ポンプ床下長さも短く、
表1 Plant sea water supply pump 仕様
Table 1 Specifications of P-SWSP
型
式
立軸斜流ポンプ
口
径
102inch
全
揚
程
吐 出 し 量
21m
57,700m3/h
出
力
4,380kW
図1 建設場所
液
質
海水
Fig. 1 Location of construction
台
数
4台
– 31 –
サウジアラビア向け火力発電・海水淡水化設備用各種大形ポンプおよび送風機
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ボイラ
煙突
復水器
燃料
排煙脱硫装置
空気予熱器
GRF
蒸気
タービン
発電機
大気
FDF
復水器
RO
海水淡水化
プラント
FGDSP
ボイラ
Unit 2
Unit 3
R0-SWSP
P-SWSP
SWTP
海水取水口
図2 プラントの全体フロー
Fig. 2 Schematic diagram of plant
図4 ポンプ工場据付状況外観
Fig. 4 Outline view of P-SWSP
水中軸受が常時没水している箇所への設置のみとし、軸
受潤滑水の注水配管や計装機器を無くし、設備の簡素化
を行っている。
図3 Plant sea water supply pump 構造図
Fig. 3 Structure of P-SWSP
3−2 主要材質
主要部品の材質は、回転体のうち、インペラにはス
– 32 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
サウジアラビア向け火力発電・海水淡水化設備用各種大形ポンプおよび送風機
テンレス鋳鋼品:SCS16、外筒にはステンレス鋳鋼品:
4−2 主要材質
SCS16またはステンレス鋼板:SUS316L、主軸にはステ
本ポンプは、海水淡水化設備のRO膜が、腐食・溶解
ンレス鍛造品: SUS316Lを使用した。大口径オールステ
した金属の悪影響を受けないように、主要部品の材質と
ンレスポンプとしては、当社実績において最大のもので
しては、外筒および回転体のうち、インペラには二相ス
ある。
テンレス鋳鋼品:SCS10、主軸には二相ステンレス鍛造
品:UNS S31803(SUS329J3L相当)を使用した。これ
4.RO Sea Water Supply Pump(RO-SWSP)
らの材質の組合せは、海外向けの海水ポンプとしては、
RO Sea Water Supply Pumpは、海水淡水化設備に海
高級ではあるが耐食性を考慮した材質として一般的な材
水を供給するためのものである。
質の組み合わせである。
4−1 仕様および構造
ポンプの仕様を表2に、構造図を図5に示す。
5.Sea Water Transfer Pump(SWTP)
本ポンプは電動機直結駆動の二床式タイプで、スラス
Sea Water Transfer Pumpは、脱硫装置の排水に水質
ト荷重はポンプの自動調芯ころ軸受で支持している。
調整用の海水を供給するためのものである。
ポンプ水中軸受は、合成ゴム軸受を採用している。
5−1 仕様および構造
P-SWSPと同様に、ポンプ床下長さも短く、水中軸受が
ポンプの仕様を表3に、構造図を図6に示す。
常時没水している箇所への設置のみとし、軸受潤滑水の
本ポンプは、RO-SWSPと同様に電動機直結駆動の二
注水配管や計装機器を省略した。
床式タイプで、スラスト荷重はポンプの自動調芯ころ軸
表2 RO Sea water supply pump 仕様
表3 Sea water transfer pump 仕様
Table 2 Specifications of RO-SWSP
Table 3 Specifications of SWTP
型
式
立軸斜流ポンプ
型
式
立軸斜流ポンプ
口
径
72inch
口
径
72inch
程
26m
全
程
9m
全
揚
吐出し量
3
26,100m /h
揚
吐 出 し 量
27,300m3/h
出
力
2,550kW
出
力
1,080kW
液
質
海水
液
質
海水
台
数
2台
台
数
2台
図5 RO Sea water supply pump 構造図
図6 Sea water transfer pump 構造図
Fig. 5 Structure of RO-SWSP
Fig. 6 Structure of SWTP
– 33 –
サウジアラビア向け火力発電・海水淡水化設備用各種大形ポンプおよび送風機
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
受で支持している。
スト荷重はポンプの自動調芯ころ軸受で支持している。
ポンプ水中軸受は、合成ゴム軸受を採用している。
ポンプ水中軸受は、合成ゴム軸受を採用している。前
P-SWSPと同様に、ポンプ床下長さも短く、水中軸受が
述の各ポンプと異なり床下長さも長いため、水中軸受が
常時没水している箇所への設置のみとし、軸受潤滑水の
常時没水している箇所への設置のみとできないため、軸
注水配管や計装機器を省略した。
受潤滑水の注水配管や計装機器を必要とする。
5−2 主要材質
6−2 主要材質
主要部品の材質はP-SWSPと同様に、外筒および回転
本ポンプの扱う海水は、P-SWSPの放水路からの取水
体のうち、インペラにはステンレス鋳鋼品:SCS16、主
となるため、通常の海水温度よりも高いことから、より
軸にはステンレス鍛造品:SUS316Lを使用した。
耐食性を考慮して、主要部品の材質としては、外筒およ
び回転体のうち、インペラには二相ステンレス鋳鋼品:
6.FGD Spray Pump
SCS10、主軸には二相ステンレス鍛造品:UNS S31803
FGD Spray Pumpは、海水を吸収剤として使用する方
(SUS329J3L相当)を使用した。 式の排煙脱硫装置(Flue Gas Desulfurization)に、海水
を供給するためのものである。
7.Forced Draft Fan(FDF)
6−1 仕様および構造
FDFは、ボイラ炉内に燃焼用の空気を供給するための、
ポンプの仕様を表4に、構造図を図7に示す。
大容量・高圧の送風機である。
本ポンプは、電動機直結駆動の一床式タイプで、スラ
7−1 仕様および構造
FDFの仕様を表5に、構造図を図8に、工場組立時の
表4 FGD Spray pump 仕様
外観を図9に示す。本送風機は大型送風機であり、国内
Table 4 Specifications of FGD Spray pump
および海上輸送を考慮したケーシング分割としており、
型
式
立軸斜流ポンプ
口
径
32inch
また、内部に風量制御用の吸込ベーンを付属した構造と
程
19m
全
揚
吐出し量
している。
3
6,465m /h
出
力
500kW
液
質
海水
台
数
9台
表5 FDF 仕様
Table 5 Specifications of FDF
型式
#18 両吸込遠心送風機
風量
10,800m3/min
圧力
1,610mmAq
出力
3,750kW
温度
44℃
台数
6台
図7 FGD Spray pump 構造図
図8 FDF 構造図
Fig. 7 Structure of FGD Spray pump
Fig. 8 Structure of FDF
– 34 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
サウジアラビア向け火力発電・海水淡水化設備用各種大形ポンプおよび送風機
モータ側
反モータ側
図9 FDF 外観
図 10 GRF 構造図
Fig. 9 View of FDF
Fig.10 Structure of GRF
8.Flue Gas Recirculation Fan(GRF)
9.あとがき
GRFは、ボイラで発生する蒸気の温度調整を行うため
今回、サウジアラビアの火力発電設備および海水淡水
に、ボイラ出口のガスの一部をボイラ炉内に循環させる
化設備の新規建設にあたり、各種ポンプおよび送風機を
ための送風機である。取扱気体は、ダストを含む高温燃
納入した。各種機器は各設備において重要な機器であり、
焼ガスである。
また連続運転機器もあり、その用途においても、生活を
8−1 仕様および構造
する上で重要である電力と飲料水の安定供給という面か
GRFの仕様を表6に、構造図を図10に示す。本送風機
らも、信頼性の高い設備が求められている。
は排ガス内のダストによる摩耗対策として、肉盛溶接を
今後共、顧客の期待に応え、その設備の重要性を充分
施したライナを羽根車に取り付けている。また停止中の
に認識して、常に信頼性の高い製品を提供し、満足して
シャフトの熱変形や、羽根車のダスト付着を防ぐため、
頂けるよう努力していく所存である。
反モータ側にはターニング装置を付属している。軸封部
最後に各種ポンプおよび送風機の計画、製作にあたり、
は内部の高温ガスが吹き出さないように、エアーパージ
終始適切な助言と御指導を頂いた三菱重工業株式会社
をしている。
長崎造船所殿の関係各位に厚く御礼申し上げます。
表6 GRF 仕様
Table 6 Specifications of GRF
型式
#14 両吸込遠心送風機
風量
5,600m3/min
圧力
410mmAq
出力
530kW
温度
355℃(Combustion Gas)
台数
6台
<筆者紹介>
岩渕 稔:1981年入社。主に、発電所向け立軸斜流ポンプの機
器設計業務に従事。
現在、水力機械設計部水力機械−1Gr 主任。
勝又一樹:1994年入社。主に、ファン、ブロワの設計業務に従事。
現在、気体機械設計部 ファンGr 主任。
– 35 –
東京都 小名木川排水機場ポンプ整備工事
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
東京都 小名木川排水機場ポンプ整備工事
福 嶋 超 平 野 貴 豊 斎 藤 洋 勝
Pump Repairing for Onagigawa Pumping Station
By Haruka Fukushima, Takatoyo Hirano and Hirokatsu Saito
Four vertical axial flow pumps which flow rate is 18m3/s have been installed in Onagigawa pump
station have served as the big role for prevention of flood damage for neighboring local residential
land. The deterioration of drainage function and the faults have been concerned since it passed in
about 40 years after installation. This time, one of those pumps was repaired for function recovery.
1.はじめに
2.工事の概要
小名木川排水機場は大型排水機場として昭和44年
本機場には口径2,800mm立軸軸流ポンプが4台設置さ
に竣工され、平成元年に遠隔監視制御化の大規模なリ
れ、可動翼方式により排水量の調整が行われている。な
ニューアル工事を行った。その後、平成7年にポンプの
お、ポンプケーシングはコンクリートケーシングが採用
整備を実施し、東京都の荒川と隅田川に囲まれた地域の
されている。
宅地などの浸水被害防止に大きな役割を果している(図
図2に主ポンプ断面図、表1に主要機器一覧を示す。
1)。
設置後約40年の経過とともに、ポンプ設備の老朽化に
より排水機能の低下や停止が懸念されたため、今回機能
�可動翼装置
回復を目的に、ポンプ1台(1号機)の補修工事が行わ
れた。ここでは、その概要と特徴について紹介する。
�減速機
�減速機架台
�湾曲板
中
川
綾
瀬
川
江
戸
川
山
JR
中川
手
隅
田
川
線
JR総武線
�
木下川排水機場
旧中川
上野
秋葉原
新小岩
平井
両国
錦糸町
小名木川
�
小名木川排水機場
東京
小岩
中
川
荒
川
新
中
川
�拡がり管
�ケーシング
�シャフト
新川
東京湾
�インペラ部
旧
江
戸
川
図2 主ポンプ断面図
図1 小名木川排水機場位置図
Fig. 2 Sectional view of main pump
Fig. 1 Location of Onagigawa pumping station
– 36 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
東京都 小名木川排水機場ポンプ整備工事
表1 主要機器一覧
Table 1 List of main equipments
機器・設備名称
形 式
数量
仕 様
主 ポ ン プ
可動翼式立軸軸流ポンプ
4台
口径2,800mm×吐出し量18m3/s×全揚程3.9m×回転速度125min 1
–
–1
歯車減速機
かさ歯車減速機
4台
回転速度 125/600min
流 体 継 手
定油量型
4台
回転速度 125/600min 1
4サイクルディーゼル機関
4台
出力1,028kW(1,400PS)×回転速度600min 1
圧 油 設 備
電動歯車ポンプ他
4式
口径50mm他
潤滑油設備
電動歯車ポンプ他
4式
口径50mm他
機関付属設備
地下燃料タンク他
1式
容量15,000L他
冷却水設備
水中モータポンプ他
1式
口径200mm他
吸水渠設備
鋼製スルースゲート他
1式
経間3.5m×高さ2.0m他
吐出渠設備
鋼製スルースゲート他
1式
経間2.8m×高さ1.45m他
クレーン設備
電動運転台操作式
1基
定格荷重25t
原
動
機
–
–
本工事の主な整備内容を以下に示す。
⑴ No.1主ポンプ回転体および可動翼装置の工場搬入
整備
⑵ No.1主ポンプケーシングおよび吸込コーンの現地
整備
⑶ No.1流体継手の工場搬入整備
⑷ No.1ポンプ付属設備の更新
なお、原動機についても同年別途工事にて整備された。
3.工事の特徴
前項の整備内容に対し、今回実施した事項を以下に示
図3 主ポンプ分解状況
Fig. 3 Disassembling of main pump
す。
3−1 主ポンプ回転体および可動翼装置の工場搬入
整備(現地分解・再組立て含む)
シングなどに腐食による減肉や孔食がみられたため、充
現地でのポンプ分解手順は、①可動翼装置→②減速機
填材補修を行った。また、劣化状態を判断し、当初想定
→③減速機架台→④湾曲板→⑤拡がり管→⑥ケーシング
されていなかったカットレスカバー、ベアリングケース
→⑦シャフト→⑧インペラ部の順に実施した(図3)。
などの部品も追加交換した。
表2に主ポンプの分解部品点検の主な結果、整備内容
工場では、①インペラブレード作動試験、②耐圧・漏
を示す。工場における状態確認の結果、インペラ、ケー
洩試験(シャフト・ボス内)、③間隙寸法測定(ロッド部・
表2 主ポンプ主要部品点検結果と整備内容一覧
Table 2 List of inspection results and maintenance contents
回
転
体
可動翼装置
外
そ
筒
の
他
部 品
点検結果
整備内容
インペラブレード
軽微な孔食
充填材補修
充填材補修
ボス
パッキン挿入部に軽微な腐食
シャフト・ロッド
良好
−
各スリーブ・ブッシュ
外径に摺動傷・摩耗
新製交換
配圧弁・ライナ
良好
−
バルブコントロール
良好
消耗品交換
ピストンロッド
良好
−
湾曲板
全面に腐食
平滑仕上げ、再塗装
ケーシング
全面に腐食
充填材補修、平滑仕上げ、再塗装
ベアリングケース、カバー
全面に顕著な腐食
新製交換
カットレスベアリング
摺動傷・摩耗・ゴム剥離
新製交換
メカニカルシール
シート面欠損
新製交換
– 37 –
東京都 小名木川排水機場ポンプ整備工事
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ブレード取付け部)、④振れ試験(シャフト・ロッド)、
⑤浸透探傷検査(キー溝部)、⑥塗装膜厚検査などを行い、
良好な状態を確認した。
現 地 再 組 立 て に 当 た っ て は、 イ ン ペ ラ と ラ イ ナ の
ギャップを調整する冶具を製作し、分解前後で測定確認
することで、据付精度の確保を図った(図4)。そのほ
かに、軸芯計測、ディーゼル機関クランク軸デフレクショ
ン計測、塗装膜厚検査を行い、据付精度の確認を行いな
がら再組立を行った。
図5 ケーシング状態(サンドブラスト後)
Fig. 5 Appearance of casing after sandblasting
4.おわりに
今回、1号機の整備が行われたが、今後順次残りの3
台が行われる予定である。
本工事のような大型排水機場の整備は機場設備に対
し、構成部品ごとに必要な検査を実施・評価し、設備の
機能回復を図る必要がある。今後多くなると予想される
図4 主ポンプ取付調整冶具
Fig. 4 Tools for adjustment
大型排水機場の整備に当たり、参考になれば幸いである。
本工事を通じて、この大型排水機場の機能維持が地域
の方々に貢献できていることを再認識できた。
3−2 主ポンプケーシングおよび
吸込コーンの現地整備
最後に、本工事に関しましてご協力いただきました東
京都建設局ならびに関係各位に厚くお礼申し上げます。
コンクリートケーシングおよび吸込コーンの現地整備
は現地でサンドブラスト後に塗装を実施した。
なお、ケレン後に状態確認を行った結果、全面にわた
<参考文献>
⑴ 雨宮弘美、四宮伸浩:小名木川排水機場設備概要
り減肉、孔食がみられたため、充填材補修を施した(図
<筆者紹介>
5)。
福嶋 超:1995年入社。主に、揚・排水機場のエンジニアリン
グに従事。現在、社会システム 技術部 風力グルー
3−3 流体継手の工場搬入整備
流体継手はメーカ工場にて部品の交換や再塗装などの
整備を行った。
3−4 ポンプ付属設備の更新
プ主任。
平野貴豊:2001年入社。主に、ポンプ、送風機設備の施工に従事。
現在、プラント建設部 工事グループ。
斎藤洋勝:2002年入社。主に、官公需の営業に従事。現在、社
会システム営業部 1グループ。
圧油ポンプや計器類などの圧油設備の一部更新を行っ
た。
– 38 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ここで活躍しています
ここで活躍しています
− 2008 年 製品紹介−
1.ポンプ
1−1 東京都下水道局 堀切ポンプ所
⑴ 概要
堀切ポンプ所は、葛飾区の小菅処理区に設置されて
いる無人の雨水ポンプ所であり、現在は小菅水再生セン
ターよりの遠方制御にて運用されている。
雨水ポンプの設置台数は全6台であり、老朽化した3、
4号雨水ポンプ設備の機能向上を図る目的で、平成21年
3月に工事を完了した(図1)。
図2 WC セラミック軸受
最終号機となる№4雨水ポンプ設備が増設され、2008年
7月に完成した(図3)。
⑵ 特徴
ポンプは潤滑水回収装置付で、軸封装置にはメカニカ
ルシールを採用した。ディーゼル機関は防振台床を設け、
振動対策を実施している。なお、本工事は、ポンプ設備・
電気設備一括発注での施工である。
図1 ポンプ設置状況
⑶ ポンプ仕様
口径800mm立軸斜流ポンプ×1台(ディーゼル機関
駆動)
⑵ 特徴
80m3/min×4.3m×90kW×285min‒1
設置したポンプは、無注水タイプの先行待機(全速)
形電動機直結立軸斜流ポンプであり、近年東京都では主
流となっている。今回、無注水軸受として、従来の水中
軸受に対して優れた耐磨耗性を有するWCセラミック軸
受・炭素繊維スリーブを新しく開発し、これを採用した
(図2)。
⑶ 仕様
口径1,500mm立軸斜流ポンプ×1台(電動機駆動)
340m3/min×13m×1,030kW×360min–1
1−2 四国中央市 大江ポンプ場
⑴ 概要
図3 ポンプ設置状況
四国中央市の大江地区は愛媛県東部(四国地方の中央)
に位置する。この地域の雨水排水増強として、当機場の
– 39 –
ここで活躍しています
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
1−3 青森県東青地域県民局 堤川消流雪ポンプ場
⑴ 概要
青森県青森市内を流れる堤川から取水し、約600m先
の吐出し槽へ送水され、配水ポンプにて各融水先へ送水
される。今回、取水ポンプ1号機を納入した。現在、2
号機を施工中であり、今季から供用開始される(図4)。
図5 ポンプ設置状況
図4 ポンプ設置状況
⑵ 特徴
海 水 の 混 入 が 予 想 さ れ る た め、 材 質 は イ ン ペ ラ が
図6 ポンプ場外観
SCS14、スリーブと主軸がSUS316である。
⑶ 仕様
口径500mm両吸込渦巻ポンプ×2台(電動機駆動)
3
–1
⑶ 仕様
23.22m /min×9.0m×55kW×750min
口径150mm横軸多段渦巻ポンプ×2台(電動機駆動)
1−4 沖縄県農林水産部中部農林土木事務所
3.12m3/min×82m×75kW×1,750min–1
与勝2期地区揚水機場
1−5 柏原市国分市場 第1雨水ポンプ場
⑴ 概要
⑴ 概要
地下ダムから6台の井戸取水ポンプにて当機場の貯水
大阪府柏原市の国分排水区には、1982年8月の豪雨
槽(吸水槽)へ取水された農業用水を、ファームポンド
被害を契機に、総排水量90m3/minの国分市場第1雨水
へポンプ2台で揚水する。県営事業として施工される初
ポンプ場が建設された。今回、排水能力を140m3/minに
めての設備である(図5)。
増強させる目的で、2台の排水ポンプを増設し、2008
⑵ 特徴
年10月に供用開始された。
一般住宅地の中に機場があるため、ポンプ室内に吸音
⑵ 特徴
パネルを貼り付け騒音を軽減しており、ポンプ場は景観
今回増設した2台のポンプの内、1台はコラム式水中
に配慮されている(図6)。また、ポンプはフライホイー
ポンプ、残りの1台は着脱式水中ポンプで、何れも電動
ルを装着しており、落雷の多い地域における非常停電時
機が地下吸水槽内の水中に設置している構造であること
のポンプ急停止に備えている。
から、運転中の振動・騒音は小さく、上屋が省略された
コンパクトなポンプ場となっている(図7)。
– 40 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ここで活躍しています
図7 ポンプ場外観
図8 ポンプ外観
地上部には、2台のポンプそれぞれを中心で吊上げ、
1 3/4̋×4̋横型3連往復プランジャーポンプ×2台
吊下げ作業が可能となるよう、走行レールに曲線部分を
(電動機駆動)
有したメンテナンス用手動式門型クレーンを設置してい
8.34m3/h×19MPaG×55kW×1,500min–1
る。
1−7 東京電力株式会社 福島第一原子力発電所
5号機向け復水器連続洗浄装置ボール循環
⑶ 仕様
ポンプ
口径500mmコラム式水中斜流ポンプ×1台
3
–1
39.6m /min×10.8m×110kW×1,200min
⑴ 概要
口径300mm着脱式水中ポンプ×1台
発電所向け復水器潤滑水細管ラインにスポンジボール
3
‒1
10.2m /min×11.0m×30kW×1,200min
を移送し、細管内部の清掃を行う設備用のポンプであり、
1−6 石油資源開発株式会社 秋田鉱業所殿向け横
既設洗浄装置の老朽化、能力増強のため、2008年3月
型3連往復プランジャーポンプ
に6台納入をした。
⑴ 概要
⑵ 特徴
秋田鉱業所 由利原鉱場殿へ、坑廃水圧入ポンプを2
納入したポンプは、流体(海水)にスポンジボールが
台納入した。由利原油ガス田は、秋田市から南方50km
入るため、そのスポンジボールに損傷を与えない構造と
の鳥海山の北麓、由利高原に位置しており、1976年に
なっている。同用途のポンプを近年は東京電力株式会社
掘削した試掘井「由利原SK-1」の成功により誕生した鉱
殿、東北電力株式会社殿にも納入している。それはすべ
場である。
て他社既納品からの更新で、当社製ポンプがその信頼性、
⑵ 特徴
性能について評価され採用されたものである。
納入したポンプは、油ガス田より生産後に発生した坑
⑶ 仕様
廃水を地下へ圧入還元するためのポンプで、坑廃水(油
口径125mm×125mm片吸込渦巻ポンプ×6台
田水)の液質は腐食性があり、耐食性を考慮し接液部の
110m3/h×17m×11kW×1,500min–1
主要材質は、SUS316系を使用している。また、プラン
ジャーの材質は耐海水セラミックのコーティングの特殊
2.送風機
仕様で、他プラントの同用途ポンプで実績があり信頼性
2−1 岩手県盛岡地方振興局土木部 北山トンネル
があるのも特徴である(図8)。
⑴ 概要
⑶ 仕様
本工事は、一般国道455号北山トンネルに換気設備を
¡坑廃水圧入ポンプ
設置した。
– 41 –
ここで活躍しています
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
⑵ 特徴
本トンネル換気設備は、抗口の周辺環境と交通事情に
配慮し、上り線のみに設置。計測機器では、通常設置さ
れる煙霧透過率測定装置(VI計)を設置せず一酸化炭素
濃度測定装置(CO計)および風向風速測定装置(AV計)
の2つのみで制御している。高効率型ジェットファンを
採用し、高効率羽根車などの採用により電動機入力値の
低減を実現させた(ジェットファン効率は特記仕様書の
65%に対し、工場試験で3台の平均値が大幅に上回った
(図9))。
図 10 送風機設備外観
⑵ 特徴
本センターには片吸込多段ターボブロワ4台が設置さ
れており、本工事ではブロワ3台を撤去、2台を更新し
た。更新の2台については、既設3台分の仕様を満たせ
るように風量と動力のアップを図った。また既設は集中
給油装置であったが、危険分散のため今回工事で個別給
油方式に変更した。あわせてオイルミスト対策として、
図9 ジェットファン
ミストセパレータシステム(MSS-α)を採用すること
により環境対策も行った。
⑶ 仕様
⑶ 仕様
口径300×250mm片吸込多段ターボブロワ×2台
口径1,030mmジェットファン(高効率型)×3台
85m3/min×70.66kPa×140kW×3,000min‒1
25m3/s×30m/s×25kW×1,500mm‒1
2−3 大阪府堺市 泉北下水処理場
2−2 日本下水道事業団 渡良瀬川上流流域下水道
⑴ 概要
秋山川浄化センター
本設備はエアレーションによる下水の高度処理を行う
⑴ 概要
ための設備である。
本センターは栃木県南西部に位置し、万葉集に詠わ
歯車増速式単段ターボブロワは、2系反応タンクに送
れる秋山川や旗川に育まれた佐野市を処理区域とし、首
風するもので、床盤上にブロワ本体、歯車増速機、強制
都圏整備法に基づくモデル定住圏として発展が著しい
潤滑装置を取付けた構造とする。風量制御は、インレッ
地区でもある。秋山川の清流を復活するため、旧佐野市
トベーンにより行う。
が1971年に下水道工事を着手し、1993年には栃木県が
⑵ 特徴
下水道を整備する渡良瀬上流流域下水道事業に着手し、
設備の環境対策や電動機絶縁低下防止のため、ミスト
1994年に共用を開始した。
セパレータシステム(MSS-α)を採用した。逆止弁に
今回工事は水処理設備の増設と既設設備の老朽化に伴
はエア・アシスト型省エネ逆止弁(AAチェッキ弁)を
い、ブロワ2台の更新工事を行った(図10)。
採用することにより運用面での省エネ化も考慮された設
備である(図11、図12)。
– 42 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ここで活躍しています
二(口径1,530mmジェットファン×9台)、用瀬第三
(口径1,250mmジェットファン×3台)、高津原(口径
1,030mmジェットファン×2台)の5トンネル有り、
智頭用瀬トンネル以外の4トンネルを当社が受注してお
り、その中でも一番規模の大きいトンネル換気設備(延
長:2,827m)が用瀬第2トンネルである(図13)。
姫路鳥取線の開通により、鳥取市内∼大阪市内の所要
時間が約3時間20分から約2時間30分と、約50分短縮
された。
図 11 ミストセパレータシステム(MSS- α)
図 13 ジェットファン
⑵ 特徴
図 12 エア・アシスト型省エネ逆止弁(AA チェッキ)
す べ て の ジ ェ ッ ト フ ァ ン に 振 動 セ ン サ を 取 付 け、
ジェットファンの保全方式として、一般的に用いられた
時間基準方式に対して状態基準方式を採用している。
⑶ 仕様
ジェットファンの点検時に振動値を監査路から計測す
口径400×350mm片吸込高速単段ターボブロワ×2台
3
‒1
ることにより異常の早期発見が可能である。また、その
154m /min×46kPa×170kW×14,452min
推移を分析することにより、以後の進行を予測した適切
2−4 中国地方整備局鳥取河川国道事務所
な保全が可能となる。
用瀬第2トンネル
⑶ 仕様
⑴ 概要
口径1,530mmジェットファン(高効率型)×9台
中国横断自動車道姫路鳥取線は、鳥取県鳥取市∼兵庫
55m3/s×30m/s×50kW×1,200min–1
県姫路市に至る延長約86kmの高速自動車国道で、沿線
2−5 中国南京 化学プラント向け燃焼装置
地域の産業、経済、生活、文化の発展を図ることを目的
⑴ 概要
として計画している。その内、2009年3月に開通した
石油化学プラントなどで発生した廃液を処理する液中
智頭IC∼河原IC間15km区間のトンネル換気設備は、智
燃焼装置に使用される(図14)。
頭用瀬(口径1,250mmジェットファン×8台)、用瀬
⑵ 特徴
第一(口径1,530mmジェットファン×3台)、用瀬第
羽根車を直列2段(背面合せ)に配置した構造となっ
– 43 –
ここで活躍しています
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
ており、ケーシングは1段目で昇圧された流体を2段目
で吸込、さらに2段目で昇圧する構造となっている。各
段間はガラスクロスパッキンでシールでされている。
⑶ 仕様
#15番片吸込2段送風機
896m3/min×35.5kPa×850kW
図 14 送風機外観
– 44 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
海外で活躍する電業社のブロワ
海外で活躍する電業社のブロワ
米専門誌「Hydrocarbon Processing Magazine−2009
<記事の筆者紹介>
年2月号−Copyright@ 2009 Gulf Publishing Company」
Mr. Heinz P. Bloch
に当社の水平二つ割り多段ブロワ(SAUDI ARAMCO殿
Hydrocarbon Processing誌の機器および信頼性に関す
納入)が紹介されました。この記事の中では、各種ブロ
る記者。自身も専門技術者でありASMEの終身会員でも
ワに関する問題点と信頼性に関する考察と事例が述べら
あり、産業界で50年に渡る経験を持つ。保守費用の低減
れ、その比較において当社製ブロワが極めて長いMTBF
や故障回避に関してプロセスプラントに提言。400を超
(Mean Time Between Failure 平均故障間隔)を有する信
える記事や論文を数多く執筆。
頼性の高い製品として、近年のSAUDI ARAMCO殿への
(文責:浜田耕一)
納入例とあわせて紹介されています。
このように当社製品はSAUDI ARAMCO殿から引き続
き高い評価をいただいています。
Hydrocarbon Processing 誌表紙
記事面
– 45 –
アムステルダムに欧州事務所開設
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
アムステルダムに欧州事務所開設
2009年1月にオランダ・アムステルダムに欧州事
えや、原子力発電所
務所を開設しました。オランダ商工会議所への英文正
の新規建設の禁止
式 登 録 名 称 は「DMW Corporation Amsterdam Liaison
などが訴えられ、環
Office」。当社にとってはムンバイ・ヒューストン・大連
境保護国を標榜す
に次いで4番目の海外拠点となります。
るオランダはその
国内市場中心の従来型商売からの更なる飛躍・発展を
先頭に立って旗を
目指し、特にここ7−8年、当社は海外市場の開拓に努
振っています。この
めてきましたが、関係各位の御支援・御協力もあって、
流れもあって欧州
近年、輸出のシェアが伸長しつつあります。当社のポン
市場では2011年以降にLNGプラント建設需要が急増す
プ・送風機は原油採掘・圧送・海水淡水化プラント・発
ると見込まれています。当社もこの流れに乗り遅れない
電所・LNG基地などプラント用として最終納入先は中東・
よう欧州事務所の強化を図りながら対応して行きたいと
インド・米州などの産油・産ガス国が多いのですが、製
思っております。
品の性格上エンジニアリング会社経由の最終需要家納入
事務所はスキポール空港から列車で一駅7分、アム
となることが大部分です。そのエンジニアリング会社が
ステルダム南駅の駅前、ワールド・トレード・センター
数多く欧州に存在していること、また、エンジン・モータ・
(WTC)と言うアムステルダムのランドマーク的存在の
タービンと言った駆動機を欧州メーカから購入するケー
商業ビル群の一画にあります。A棟からH棟迄あり当社
スが多くなりつつあることから、欧州市場拡大のために
の事務所はB棟です。WTCの中には当社と取引関係にあ
は足掛かりとなる事務所開設が必要と考えてきました。
る日本の大手銀行・商社を含む30社を超える日本企業・
候補地としてはオランダ・英国・ドイツなどが挙がり
日本商工会議所、および、現地の銀行・保険会社・郵便
ましたが、その中で法人税率・政府の積極的外国企業誘
局・法律事務所・会計事務所・診療所・旅行代理店・不
致政策・生活の安全性などの面から総合判断の結果、オ
動産業者・レストラン・ホテル…ほとんどすべての業種
ランダと決定しました。次に都市についてですが、当
がセンター内に揃っており、朝出勤すると退社時迄ビル
社の顧客企業が本拠を置くハーグ・ライデン地区とヨー
群の外に出ることなく、しばしば一日が終わります。
ロッパ有数のハブ空港スキポールを擁するアムステルダ
オランダは世界でも有数の英語の良く通じる国です。
ムが検討の対象でした。結局、当初よりの目的である欧
空港・ホテルのほかは外国語が通じ難いドイツ・フラン
州各地への拡販・購買活動を最重視し、かつ、ハーグ・
ス・イタリア・スペインなどとは大きく異なります。街
ライデン地区へも最長片道40kmで到達できる国内外双
の老若男女、バス・タクシーの運転手、駅員・改札所、
方の移動の便利さからアムステルダムに決定しました。
店員、ウエイター・ウエイトレス…驚く程に良く英語が
オランダは国土の1/3が海面下です。15世紀から風
通じます。しかし、書類はすべてオランダ語。これが邦
車ポンプで海水を汲み出して干拓を続けて来ました。意
人駐在員の悩みの種です。税金支払通知・請求書・滞在
図した訳ではありませんが、吟味の結果として、来年で
許可証発行連絡…何が書いてあるのか、一言も分かりま
100年の節目を迎え、かつポンプ・回転機メーカで水車
せん。毎朝、近くに居るオランダ人に手紙を翻訳して貰
マークをロゴにする当社が風車の国に事務所を構えるに
うのが一日の始まりです。
至ったことにはご縁を感じざるを得ません。また、期せ
日本からの便は非常に便利です。また、アムステルダ
ずして、今年は1609年に徳川家康が日蘭修好条約に署
ムから先も何処にでも足を伸ばせます。欧州方面にお越
名押印してちょうど400周年。記念すべき年にご縁を感
しの際は是非お立ち寄り下さい。仕事の話は元より風車
じる国に事務所を開設したことになります。
の国の豊かな自然をご案内したいと存じます。
現在欧州ではCO2排出量の多い石炭火力の廃止・建替
事務所の前にて
(文責:保見吉裕)
– 46 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
高圧ポンプ、ブロワ工場完成
高圧ポンプ、ブロワ工場完成
高圧ポンプ・ブロワ工場の建設工事が完成し、本格的
に稼動を始めた。本工場は海外の石油プラント、海水淡
水化設備、発電所などに向けた高圧の横軸多段ポンプや
ブロワの専用工場であり、以下の特徴を備えている。
⑴ 流れ性を考慮した工場で大幅に生産性が向上
① 対象機種を高圧多段ポンプと多段ブロワの生産に
図1 工場外観
特化し、生産性を高めた専用工場である。
② 床面をフラット化することにより、台車上で組
立ながらスムーズに工場内を移動でき、天井クレー
ンを極力使用しないシステムとして作業効率向上を
図った。
③ 作業工程別に回転体専用エリア、本体組立エリア
に分割され、本体組立エリアは工程順に移動し、運
転エリアに向けて完成品となる。
④ インペラ加工、回転体組立後のダイナミックバラ
図2 試運転場と計測室
ンスから、試運転までを新工場内にて一貫作業とし
た自己完結型工場である。
⑵ 作業者に優しい空間と周囲環境に配慮した
工場
① 運転エリアと組立エリアを仕切る壁の一部を遮音
効果のある可動式扉にし、試運転時の騒音の拡散低
減を図っている。
② 研削エリアは可動式カバーで覆った防塵対策を行
図3 仕上組立場と機械加工場
い、バランシングマシンの周囲も可動式カバーにて
覆い、安全性と作業環境の改善を図っている。
③ 工場は敷地中央に配置され、壁はALCを使用した
防音対策を行い、屋根は二重構造として内側に断熱
伸びた現工場間の南北を移動する品物の運搬に用い
/防音用にグラスウールボードを張り、工場周囲へ
られ、南北方向の物流の改善を図っている。
の騒音にも配慮している。
⑷ 工場棟および倉庫棟の床面積
⑶ 倉庫棟の併設と無軌道台車導入による
工 場 棟
物流の改善
床 面 積
幅30m×全長70m
倉 庫 棟
① 専用工場で使用する部品はすべて工場内と併設し
た倉庫棟にて一括管理を行い、品物の移動を最小限
床 面 積
とした。なお、倉庫棟は専用工場用以外の、購入品、
完成品、治工具などの保管場所としても使用され、
総床面積
コンピュータ管理が可能なシステムとなっている。
2,261m2
機械、組立、運転エリア
幅12m×全長70m
1階
848m2
2階
926m2
小計
1,774m2
4,035m2
(文責:小川初夫)
② 倉庫棟内には10ton無軌道台車を設備し、東西に
– 47 –
IMPETUS CONTRACT 調印
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
IMPETUS CONTRACT 調印
当社は、本年2月にインド最大の石油ガス企業である
Oil and Natural Gas Corporation Limited(略称:ONGC)
と 納 入 機 器 の 予 備 品 に 係 わ るIMPETUS CONTRACT
に 調 印 し た。 今 回ONGCが 名 づ け た"IMPETUS"と は、
"Implementing Maintenance & Procurement Efforts
through Upgraded Systems"を略したものだが、英語で
は、"Impetus" と言えば、『機動力、はずみ』と言った
意味を持つため、その言葉と掛け合わせて使われた。実
際には、機器サプライヤとの間で予備品に関する単価
契約(Rate Contract)を結ぶことを意味するが、この
単価契約を結ぶことで、ONGCでは、①長期に渡りメー
契約調印時
カの純正部品の安定供給を受けられる。②都度の入札や
購入条件確定の手間が省け、予備品入手計画・発注が迅
め、手始めとして28アイテム(71台)の単価表を作成
速に行える。③予備品が確実かつ迅速に入手できること
した。この契約により、迅速な受発注が可能となり、能
で、無駄な予備品在庫を減らすことができる、と考えて
率向上に大きく寄与することが期待される。
いる。
掲載写真は、
弊社は、ONGC社に、2008年末までに87アイテム(200
調印時のものである。
台)の機器を納入している。それら全機器に対し、予備
瀨新社長(当時・常務)と顧客の契約
(文責:鈴木重雄)
品の単価契約表を作成するにはかなりの時間を要するた
– 48 –
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
特許と実用新案
特許と実用新案
「ターボ型ポンプ」
(特許第4240301号)
横軸ポンプなどにおいて、乾式真空ポンプを用い
制御
手段
て満水操作を行う場合、満水操作中に乾式真空ポン
プに水や塵芥が流れ込まないように、乾式真空ポン
4b
3
プとポンプケーシングとの間に気液分離用の大きな
4a(5)
4
真空タンクが設けられることがある。しかし、真空
2
タンクを設けると付属設備全体が大型化するととも
に製造コストが高くなるという問題があった。そこ
1
で真空タンクに替えて、ポンプケーシングと乾式真
最高水位WH
空ポンプを接続する吸気管の一部に立ち上がり部を
最低水位WL
形成して、この立ち上がり部の高さを所定値に設定
することにより、満水操作中に吸気管に吸引された
図1 水が立ち上がり部の頂部を越えないようにする技術
が提案されている。しかしながらこの技術は、満水
操作中にポンプケーシング内に外部から空気が流入
4
しないことを前提として立ち上がり部の高さを設定
しているため、ポンプケーシング内に外部から空気
4b
が流入した場合、立ち上がり部に空気が流入して立
ち上がり部の水位を押し上げ、水が頂部を越えて乾
Δh
式真空ポンプに流れ込み、これによって乾式真空ポ
5
(4a)
ンプが損傷するという問題があった。
h1
d
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、図
h0
1および図2に示すように、ポンプケーシング1の
上部に設けた開口部2と真空ポンプ3とを接続する
M
1
吸気管4の一部に逆U字状の立ち上がり部4aと立
ち下がり部4bを形成し、立ち上がり部4aを他の部
2
分より大径な気水分離管5で構成するとともに、気
図2 水分離管の高さh1を下記のように設定したもので
ある。
h1>h0+Δh、
2
めたエアリフトによる水位上昇分Δhを補正値とし
2
Δh≧(–250Q +95000Q)/ d
て加算した値に設定するため、満水操作中にポンプ
h0 :理論必要高さ
ケーシング内への空気の流入があっても、気水分離
Δh :エアリフトによる水位上昇分
管に吸引された水や塵芥が気水分離管の頂部を越え
Q
:空気流入量
て真空ポンプに流入することがなく、真空ポンプの
d
:気水分離管内径
損傷が防止されるという優れた効果が得られる。
本発明によれば、理論必要高さh0に、実験的に求
(文責:山田正嗣)
– 49 –
編集後記
電業社機械 Vol.33 No.1(2009)
編 集 後 記
◆この度の巻頭言は、九州共立大学教授の宇野美
◆最近、ポンプや送風機の性能開発に流れ解析を
津夫先生に「翻弄されるエンジニアの思いと未来
利用して数多くの成果をあげてきています。その
への貢献」という題目で、ご執筆頂きました。
ためには、解析精度をあらかじめ把握しておくこ
最近の機器は、技術者が意図した想いとは裏腹
とは重要となってきています。今回、3種類の斜
に、消費者の新しいもの好きに訴える販売戦略で
流ポンプについて、流れ解析技術の中核となる
買い替えサイクルが寿命より短くなり、経済効果
メッシュ品質と解析精度の関係を詳細に調べ、ま
が技術や環境意識を凌駕している状況に思える。
とめたので紹介します。当社の主力製品であるポ
そのような状況下、的確なデータ比較、実験での
ンプも、今回の研究で得られた知見をもとにさら
確認、情報判断ができる工学的なセンスを有する
に精度良い流れ解析を実施し、高性能化に努めて
人材の意見と貢献が、環境保全にとっては不可欠
まいります。
な条件である。また、将来に向けて、より良い社
◆サウジアラビア向け火力発電および海水淡水化
会や人間生活の維持に役立てるために工学を実践
設備用各種大型ポンプや送風機を納入しましたの
する地に足が付いた機械エンジニアの貢献が必要
で、その概要を紹介します。お客様のニーズに応
と述べておられ、機械エンジニアのこれからの行
え、常に信頼性の高い製品を供給していく所存で
動の重要性を感じました。
す。今後とも当社の製品をご愛顧のほどよろしく
ご多忙な公務をぬって、大変興味深いご寄稿を
お願い申し上げます。
頂きありがとうございました。
– 50 –
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山口・熊本・インド(ムンバイ)・米国(ヒューストン)
オランダ(アムステルダム)
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TEL 055(975)8221・FAX 055(975)5784
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TEL 055(975)8233・FAX 055(975)8239
静岡県駿東郡長泉町下土狩20番地の3(山光ビルA棟403号)
TEL 055(980)5822・FAX 055(988)5222
主要製品
各種ポンプ
各種送風機
各種ブロワ
ロートバルブ
ハウエルバンガーバルブ
廃水処理装置
廃棄物処理装置
自動除塵機
水中排砂ロボット
配電盤
電気制御計装装置
電気通信制御装置
流量計
広域水管理システム
<関連会社>
電業社工事㈱
㈱エコアドバンス
〒411-0943
本誌はインターネットで御覧いただけます。 電業社ホームページ http://www.dmw.co.jp
編集委員
電業社機械 第33巻第1号
監 修
委員長
委 員
発 行 日
平成21年6月29日
発 行 所
株式会社電業社機械製作所
浅見幸男
奥田温一
小澤文雄
中川原滋
彦坂典男
石塚博志
坂本 浩
幹 事
井戸章雄
事務局長 武田裕久
事務局
橋本久美子
鯉沼博行
工藤聖仁
山岸嗣宏
小山田嘉規
飯田隆二
田上愛香
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