泣く子も笑う アートフォトスタジオ - sukasuka-ippo

取材ファイル vol.13
取材日 / 2016.06.15
取材 / 五本木愛・ゆっぴー・がらっぱち・ゆかねこ・pototon
子どもはじっとしてるのが苦手!だったらこちらが動けばいいじゃない!?
ご自身も障害児の親、ここではどんな子でもそのままでいい!
泣く子も笑う
アートフォトスタジオ
横須賀のバリアフリー子育て情報局
sukasuka-ippo
http://www.sukasuka-ippo.com
発行責任者/五本木 愛 編集 / 竹島
ドアを開けるなり目に飛び込んできたのは、写真家・斎藤さんの満面の笑みと素敵な写真の数々。飾らない人柄と熱いアーティスト
の思いにすぐに引き込まれたメンバー。聞けば、斎藤さんの 20 歳の息子さんも自閉症。障害のあるなしに関わらず子どもはジッとな
んかしてられない。ならば自分が子どもに合わせて動けばいいじゃない?肢体不自由の子の撮影はどうしよう…。肉体的・精神的な負
担にならない工夫をすればいいじゃない?柔軟な発想で、子どもや家族のありのままの姿を写真に収める斎藤さんの思いに迫ります!
■子どもは動くもの。だったらこっちも一緒に動けばいい!
昭和60年に『AT写真スタジオ』とし
て独立した当時は独身だった斎藤さん。
一般的なスタジオ同様、背景のロール
バックを付け替えていましたが、これだ
と両サイドに物がある状態で、子どもを
1面しかない背景の前でじっとさせてお
かなくてはいけませんでした。しかし、
自らが自閉症児の親になり、問題行動が
増え、とにかくじっとしていない5、6歳
の時期の息子さんを前にどうしようかと
後列右から時計回りに、斎藤さん、ゆか
考えた時にひらめいた!そこで、平成 12 ねこ、がらっぱち、ゆっぴー、五本木愛
年に現在の『アートフォトスタジオ』に移転する際、思い切って
そのロールバックをなくし、3面の壁に直接背景を描き、子ども
が自由に動いてもその動きに合わせて撮る側が移動しながらどこ
でもシャッターを切ることができるようにしました。「障害のあ
るお子さんの中には壁に寄りかかって立った方が安定する、安心
するという子もいて、そういう意味でもこのスタジオの造りは、
決して広くはありませんが、お子さんやご家族の皆さんに安心し
てもらえる空間にはなっているかなと思います。」と斎藤さん。
■自分の子育ては迷いの連続!でも、それでいい…
息子の障害については受け入れていたけど、育てづらさは確か
にあったと語る斎藤さん。「自分なんかが親でいいのかな」と自
問自答する日々、その時に小児科で診てくれていた広瀬誠先生と
いう方が「自問自答している親なら十分!そう思って接しても
らっている子どもは幸せだ」と言ってくれたその言葉に本当に勇
気づけられたというお話もあり、障害児を育てる親の気持ちも
しっかり汲んでくれる懐の深さが伝わってきました。
■写真には家族の姿がそのまま写るんです!
「38 年も写真屋をやっているとわかるんです。例えば、一見ギ
クシャクしているように見える家族でも、お父さんが不器用なだ
けのこともある。もちろん、それをご家族にもお伝えしちゃいま
すけどね。」と笑う斎藤さん。
ある肢体不自由の娘さんの成人式の家族写真を撮った時も、お
じいちゃん、おばあちゃんを始め、みんなにこやかなのに、お母
さんだけなぜかピリピリしてる。すると娘さんも個別の写真では
■アートフォトスタジオの基本情報
代表写真家 斎藤 記子(さいとう のりこ)
〒238-0012 横須賀市安浦町 1-10
TEL・FAX / 046-823-5346
携帯電話 / 090-4414-8926
営業時間 /10:00 ∼ 17:00 完全予約制
料金 / 証明写真 1,000円∼ / 記念写真12,000円∼
人気メニューは『写真 DE 絵本(普段着編)』
撮影 + 構成技術 +6 ページの写真ブック作成に加え
なんと撮影した全データ当日お渡し ! 22,000 円∼
詳しくはホームページで!
http://www.artphoto.e-yokosuka.jp
穏やかなのに、お母さんが入ると一緒にピリピリしちゃう。そう
いう空気は写真にも出てしまうのだとか。
「仕上がった写真について、どれをアルバムに残すかプロの目
で選んで提案するんですが、お母さんは不満そうでした。そう、
家族写真はピリピリも写るんです。でも私はそれも含めて、10 年、
20 年後にも良さが残る写真を選びます。お母さんって本当に大
変、必死になってしまう時期だってあります。でも時間が経って
見返すと、そういう自分も悪くないなって思えるんですよね。」
■家族写真からあふれる温かさは介護者にも伝わる
お子さんが体調を崩されて入院や介
護が必要になった時、あるご家族が家
族みんなが写る温かい写真をお子さん
の枕元に置いたそうです。人が大事に
しているものは周りも大事にしようと
思うもの。その子が家族に大事にされ
ていることは介護する側にも伝わった
というエピソードに一同納得。家族写
真は、ただ飾っておくだけのものでは
なく、その子を大事にしてほしいとい
う思いを周りの人と共有するツールに
もなるということを教わりました。
こちらの一押し『写真DE絵本』
。撮影した
全データもいただけるというのは嬉しい!
■プリント屋とは違う、写真屋としてのこだわり!
人の写真を撮り続けるには情熱が必要、でもそれを維持してい
る写真屋は少ないと語る斎藤さん。「料金はいくら?衣装はレン
タル?」という視点でスタジオを選ばれる親御さんも多くなりま
した。「でもそれだけじゃないんです。健常の方も同じですが、
障害を持っている方については特に肉体的・精神的に負担のない
ように気を配ります。例えばバギーのお子さんだと上下分かれて
いる2部式の着物で着付けの負担を軽減したり、寝たきりの状態
だと20 歳を過ぎるあたりから顔がわずかに下に引っ張られて表情
が変わってしまうので、美容師さんにそのあたりを調整しても
らったり…。また、白目になってしまうお子さんについては、同
じポーズで目だけを何枚も撮って、黒目の瞬間を後で合成するな
ど最小限の修正で自然に見える工夫をして、その子とご家族の魅
力な表情をカメラに収める努力をします。親御さんがお子さんの
チャームポイントを事前に教えてくださるとよりスムーズです。」
■sukasuka-ippo 代表・五本木愛の視点
今回の取材で感じたのは「障害児をこんなにのびの
び撮ってくれる写真館があるんだ!」という驚きでし
た。障害児で多動の我が子の七五三の写真を迷惑をか
けないように、短時間で撮影できるようにと腐心して
なんとか撮影してもらった苦労を私自分が経験したから余計に!
斎藤さんの「私に任せて!無理はさせないし、とにかく自然体
で撮るから!」という言葉はとてもありがたく響きました。スタ
ジオに飾ってある写真はどれも素敵で自然体。写真には家族のあ
りままが写ると仰ってましたが、私は斎藤さんの写真には斎藤さ
んの温かいお人柄をもそのまま写っているように感じました。