第5部 アメリカの経常収支赤字の持続可能性

第5部
第8章
アメリカの経常収支赤字の持続可能性
アメリカへの資金流入の変化と世界経済への影響∗
一橋大学大学院商学研究科教授
小川
一橋大学大学院経済学研究科博士課程
英治†
工藤
健
1.はじめに
近年、アメリカをめぐる国際資本フローに大きな変化が見られている。1990 年代後半か
ら 2001 年にかけて一貫してアメリカへの資本流入が増加する傾向にあったが、2001 年後
半以降、そのアメリカへの資本流入の増加傾向が止まり、むしろアメリカへの資本流入が
急減し、さらには、逆流する様相を示している。このようなアメリカをめぐる国際資本フ
ローの変化は、アメリカ経済に影響を及ぼすとともに世界経済にも影響を及ぼすほどのイ
ンパクトとなる可能性がある。
アメリカ経済に及ぼす影響として最大の問題は、アメリカの経常収支赤字のファイナン
スが難しくなることである。アメリカに向かって大量に資本が流入する状況においては、
たとえアメリカの経常収支赤字が大きくとも、その経常収支赤字がその資本流入によって
ファイナンスされているかぎり、アメリカの経常収支赤字の問題、とりわけ、経常収支赤
字の持続可能性の問題は露呈しない。しかし、アメリカに向かって資本が流入しなくなっ
てくると、アメリカの経常収支赤字の持続可能性の問題が深刻に表面化してくるであろう。
アメリカへの資本流入が減少し、さらにアメリカから資本が逆流することそれ自体、ド
ルの減価を引き起こす可能性を高める。それに加えて、1980 年代後半におけるアメリカの
「双子の赤字」が深刻化したときのように、アメリカの経常収支赤字の持続可能性の問題が
露呈すれば、累積経常収支赤字が、リスクプレミアムの増加を通じて為替相場に影響を及
ぼし、ドルを一層減価させることになるであろう。このようにして発生するドルの減価は、
アメリカの輸出や貿易収支には良い影響を及ぼす一方、アメリカ以外の世界経済には輸出
や貿易収支に悪い影響を及ぼす。とりわけ、ドルに対して変動為替相場制度を採用してい
∗
本稿は、財務省財務総合政策研究所の『アメリカ経済研究会』における提出論文である。座長の伊藤隆敏先生(東京
大学先端科学技術研究センター)を始めとする研究会のメンバーより有益なコメントをいただいた。
† e-mail: [email protected]
る日本や EU 諸国には輸出の減少を通じて、経済活動全体に影響が及んでくる可能性があ
る。
本稿では、アメリカをめぐる国際資本フローの変化を概観した上で、国際資本流入によ
って支えられてきたアメリカの経常収支赤字の持続可能性について考察する。その際に、
アメリカの経常収支赤字が持続するか否かを、国内貯蓄投資バランスと貿易フローと国際
資本フローの 3 つの視座から Mann (2002)が検討していることを参考にして、同様のアプ
ローチより実証的にアメリカの経常収支の持続可能性について分析を行う1。彼女はこれら
の視座から統計データを整理して、アメリカにおける現在の水準の経常収支赤字は長期的
に持続不可能であろうと結論している。さらに、持続不可能であったアメリカの経常収支
赤字がいかに国際資本フローによって支えられてきたかを考察するために、経常収支赤字
と国際資本フローの関係が長期的に安定した関係にあったかどうかを実証的に分析する。
最後に、最近のアメリカの国際資本フローの変化に言及しながら、今後、アメリカ及び世
界において起こり得る経済の変化やその問題点を指摘する。
2.アメリカをめぐる国際資本フロー
図表1a と図表 1b は、それぞれアメリカの国際収支表の内の金融収支をグロスで表現し
たものである。これらの図表は、1990 年代後半から 2001 年にかけてアメリカの資本流入
もアメリカからの資本流出も増加する傾向にあったものの、2001 年後半から資本流入も資
本流出も急速に減少していることを示している。その背景として、アメリカにおける IT
ブームの終息(あるいは、IT バブルの崩壊)とともに、2001 年 9 月 11 日の同時テロやイ
ラク攻撃の可能性の高まりによる世界的なリスクが高まるなか、リスク・マネーがグロー
バルに流れ難くなりつつある。換言すれば、世界の資本がアメリカに流出せず、国内にと
どまる傾向が高まり、各国でホームバイアスを高めている可能性がある。
アメリカをめぐる国際資本フローを分類別に見てみよう。アメリカへの資本流入(図表
1a)については、2001 年に入って、証券投資やその他投資はそれほど減少していないも
のの、直接投資が減少している。ただ、2001 年第 3 四半期はすべての分類においてアメ
リカへの資本流入が急減した。一方、アメリカからの資本流出(図表 1b)においては、
2001 年に、証券投資とその他投資が減少している。資本流入と同様に、2001 年第 3 四半
1 Mann (2003)では、アメリカ国内経済の貯蓄投資の視点と世界経済の国際資本フローの視点の2つに焦点が当てら
れている。
1
期はすべての分類においてアメリカへの資本流入が急減した。
世界のどの地域からアメリカへ資本が流入しているか、あるいは、アメリカからどの地
域へ資本が流出しているかを見ると、従来は、アメリカへの資本流入もアメリカからの資
本流出も対 EU のシェアが最も高かった(図表 2)。1990 年代後半から 2001 年までのア
メリカをめぐる国際資本フローの急増において EU の寄与度が高かった。しかしながら、
図表 2 あるいは図表 3 に示されるように、2001 年以降、アメリカの資本流出入における
対 EU のシェアが低下した。特に、EU からアメリカへの資本流入が急減した。一方、日
本からアメリカへの資本流入はそれほど減少していない(図表 3)。
一方で、経常収支赤字は 1990 年ごろに縮小に向かったものの、90 年代に入ってから再
び拡大を続け、80 年代半ばの水準を超える赤字を記録している(図表 4)。加えて、アメ
リカで経常収支赤字を累積し、国際資本流入が続くことにより、アメリカは対外債務残高
を積み増しており、1990 年代には、それまでの対外純債権国から対外純債務国に転落した
(図表 5)。
このように、アメリカが対外債務残高を積み上げる中でも経常収支赤字を持続している
ことから、蓄積している対外債務が実際に返済可能であるかという疑問が起こる。そして、
アメリカの経常収支赤字が持続不可能であったにもかかわらず、アメリカへの大量の資本
流入によってその経常収支赤字がファイナンスされてきた。しかし、このような国際資本
フローに変化が起こるならば、これまで通りに経常収支赤字をファイナンスするに十分な
だけの資本がアメリカに流入しなくなるかもしれない。このように、それまで経常収支赤
字をファイナンスされていた資本流入が途絶えることになると、アメリカ経済はドルの減
価などの急激な調整を要することになり、それはアメリカ経済のみならず世界経済に影響
を及ぼす可能性がある2。
Mann (2002)は、アメリカの経常収支赤字が持続するか否かを、国内貯蓄投資バランス
と貿易フローと国際資本フローの 3 つの視座から検討している。彼女はこれらの視座から
統計データを整理して、アメリカにおける現在の水準の経常収支赤字は長期的に持続不可
2
経済調整の際に開発途上諸国のように深刻な金融危機を伴うかどうかについては懐疑的な見方もある。McKinnon
(2001)はドルが国際的な名目アンカーの役割を果たしており、ドル建て資産の流動性はきわめて高く、準備資産として
も有用であるから、
「ドル危機」のような形での経済調整は起こりにくいと主張する。Mann (2002)はアメリカの金融
市場における金融商品の多様性は、それがない開発途上諸国に比べて金融脆弱性の影響を和らげる効果をもつと考えて
いる。こうした影響で危機的な状況が緩和される可能性はあるが、いわゆる「ドル体制」が永続する保証はなく、また、
アメリカ経済全体の対外債務の返済可能性が問われる際にドル建て資産の間での代替がその問題を根本的に解決する
とは考えにくい。したがって、アメリカの経常収支赤字の長期的な持続可能性を、他の国々とほぼ同じ枠組みで議論す
ることは可能であると考えられる。
2
能であろうと結論している。これら 3 つの視座は、経常収支を中心として対外債務の返済
可能性と密接な関係を持っている。まず、経常収支赤字および対外債務の変化との関係を
起点として、経常収支赤字の持続可能性に関する 3 つの視座を整理してみよう。
最初に、国内貯蓄投資ギャップの推移を民間部門と政府部門に分けて見てみよう。図表
6 は、1960 年から 2001 年までの民間部門および政府部門の貯蓄投資ギャップの推移を示
している。1990 年代末までほぼ一貫して民間部門が貯蓄超過、政府部門が投資超過になっ
ているが、1980 年代後半に政府部門の投資超過が民間部門の貯蓄超過分を大きくしのぎ、
この時期の経常収支赤字の要因となっていることが分かる。これは、この時期に「双子の
赤字」が問題になっていたこととも符合する。
その後、政府部門の投資超過幅が減少したのに伴い、経常収支赤字も減少していった。
しかしながら、1992 年以降、政府部門の投資超過が急速に減少する一方で、それを上回る
勢いで民間部門の貯蓄超過が減少していき、2000 年頃には以前の立場が逆転して、政府部
門の貯蓄超過をしのぐ民間部門の投資超過が記録されている。これは、民間部門の高収益
が世界の資本をひきつけていることと関係すると考えられる。ここから、1980 年代と異な
り、この時期における経常収支赤字幅の拡大は、民間部門が主導しているものであるとい
えよう。
次に、財・サービスの輸出入の推移を図表7から見てみる3。貿易収支は 1980 年代初め
まではほぼ均衡に近く推移していたが、1980 年代半ばに対 GDP 比で 4%弱程度の輸入超
過になった。これは、この時期の経常収支赤字にほぼ等しい水準である。その後、1990
年代初めまで貿易赤字は減少を続けたが、1990 年代に入ると徐々に赤字幅が拡大し、2000
年頃には以前の赤字幅をしのいで対 GDP 比で 4%程度に達している。この事実は、この年
の経常収支赤字幅が対 GDP 比で 4%を超えていることとも符合する。以上より、貿易フロ
ーと経常収支赤字、ひいては対外債務の変化が密接な関係を持つことが分かる。
最後に、国際資本フローの推移を概観しよう。図表 8 では、純資本流入の対 GDP 比が
示されている。1980 年代初頭までは国際資本フローは均衡の近傍で推移していたが、1983
年以降ほぼ一貫して、資本流入超過の状態が続いていることが見て取れる。図表 9 では資
本フローを直接投資と証券投資とその他投資に分類して、それぞれの推移を表している。
Mann (2002)は、輸出入の項目を消費財、資本財とサービスに分けて概観している。また、貿易収支項目と、アメリ
カと外国の相対 GDP 水準との関係についても分析している。その結果、アメリカの輸出入の所得弾力性が非対称であ
ることを指摘している。
3
3
ここからは、1990 年代に入っていずれの分類の資本フローもよりボラタイルになってきて
いることが分かる。
したがって、1990 年代のアメリカの経常収支赤字が国際資本フローによってファイナン
スされていたと推測することができる。これは、アメリカが世界の投資家に収益を提供す
る「繁栄のオアシス」(Mann(2002))であるということを意味している可能性がある。この
際、資産市場の活況と崩落によって、特に証券投資のボラティリティが、経常収支赤字の
ファイナンスに大きな影響を及ぼす恐れがあると考えられる。
3.経常収支赤字の持続可能性に関する 3 つの視座
この節では、Mann (2002)によって提示された経常収支赤字の持続可能性に関する 3 つ
の視座を、本稿の分析枠組みに従って整理し、経常収支赤字の持続可能性を分析する際に
用いる分析手法を簡単に紹介する。
本稿で用いる時系列分析の手法は、1980 年代にアメリカの財政赤字の持続可能性につい
て分析した Hamilton and Flavin (1986)に始まり、Trehan and Walsh (1991), Husted
(1992)らによって経常収支赤字の持続可能性の分析に応用されたものである。
Husted(1992)は、市場割引率が固定されている場合について、対外債務が返済可能であ
るためには、貿易収支の輸出項目と輸入項目が共和分関係にあることが必要条件となると
して分析を行なっている。
Trehan and Walsh(1991)は、市場割引率が可変である場合に分析を拡張している。この
場合、対外債務水準が定常であることが、債務返済を可能とすることにとっての十分条件
になる。この点で、彼らは必要条件と十分条件の両方について吟味していることになる。
その手法を用いて、彼らは単位根検定の結果から、戦後のアメリカの対外債務は返済可能
であると結論している。
Ahmed and Rogers(1995)は、Bohn(1995)が政府債務の分析に用いた方法を応用して、
市場割引率が可変である場合に関連する諸変数が共和分関係にあり、かつ共和分ベクトル
が一定の制約を満たすことが対外債務の返済可能性の必要十分条件であることを示してい
る。彼らは 19 世紀以来の長期にわたる貿易収支項目の年次データを用いて分析を行ない、
アメリカおよびイギリスの対外債務は返済可能であると結論している。
以上の研究では、主に貿易収支項目を用いて対外債務の返済可能性を検証していたが、
Matsubayashi(2002)は、民間部門と政府部門を分割して、各々の貯蓄投資関係を分析する
4
ことで経常収支赤字の持続可能性を検討している。その際に、市場割引率が固定されてい
ると仮定して必要条件を導出し、その他に十分条件についても検討している4。彼は、1975
年から 1998 年第 2 四半期までのデータからは、アメリカの経常収支赤字が持続可能であ
ると結論している。
この節では、Bohn(1995), Ahmed and Rogers(1995)らによって展開された、市場割引率
が確率的な場合にも適用することができる分析手法を用いて、アメリカの対外債務の返済
可能性にとっての必要十分条件を検討する。その際に、先行研究で分析されている国内貯
蓄投資バランスや貿易フローの視座に加えて、国際資本フローの視座からも分析を行なう。
これは、1990 年代のアメリカが国際資本をひきつけることによって経常収支赤字をファイ
ナンスしていたという見方を検証するものである。
(1) 国内貯蓄投資バランスの視座
第一の視座として国内の貯蓄投資バランスから経常収支赤字の持続可能性を考察するこ
とができる。まず、国全体の対外債務残高の変化 Dt − Dt −1 は、経常収支赤字 CADt に等し
い。すなわち、対外債務残高は、経常収支赤字をファイナンスするための資本流入によっ
て積み増していくことになる。この関係は、ある時点 t における経済全体の「予算制約」
と解釈することができる。
次に、国内の貯蓄投資行動を民間部門と政府部門に分けて考える5。ある時点 t における
民間部門の予算制約として、民間部門の対外資産と対政府資産からなる民間部門の資産残
高の変化 At − At −1 は、その利子受取 rt At −1 と貯蓄投資のギャップ St − I t との合計に等しい。
一方、政府部門の予算制約は、政府部門の債務の変化 Bt − Bt −1 は、その利子支払い rt Bt −1 と
財政赤字 Gt − Tt との合計に等しい。
民間部門の保有する対政府資産と政府部門の民間部門に対する債務が等しく、相殺され
ることから、国全体の対外債務残高の変化 Dt − Dt −1 は、民間部門の資産残高の変化
At − At −1 と政府部門の債務の変化 Bt − Bt −1 の合計に等しい。したがって、経常収支赤字は、
国全体の対外純利子支払い rt Dt −1 と投資貯蓄のギャップ I t − St と財政赤字 Gt − Tt との合計
に等しい。このようにして、ある時点における経常収支赤字と国内貯蓄投資バランス(投
彼は、十分条件については市場割引率の固定性を前提としない Trehan and Walsh(1991)の方法を用いている。
Matsubayashi(2002)は民間部門と政府部門の各々の予算制約が満たされているかどうかについても、必要条件と十
分条件の点から分析を行なっているが、本稿では経常収支の持続可能性に絞って分析するため、部門ごとの予算制約の
吟味は行なわない。
4
5
5
資貯蓄ギャップと財政赤字)の関係が得られる。
これらから、国内貯蓄投資バランスに基づいた経済の異時点間の予算制約が得られる。
この国全体の対外債務の返済可能性は、ある時間視野において(無限期間の時間視野を持っ
ていれば無限期間において)、国全体の対外純債務がゼロであること(横断面条件)を満た
さなければならない。この条件が満たされるためには、当初の対外債務残高と、現在及び
将来の国内貯蓄投資バランス(投資貯蓄ギャップと財政赤字)の現在割引価値とが等しく
なる必要がある。つまり、当初の対外債務残高が現在及び将来の純貯蓄あるいは国内貯蓄
投資バランス(投資貯蓄ギャップと財政赤字)によって返済されることが、この経済にと
っての経常収支赤字持続性条件になるのである。
Ahmed and Rogers(1995)は、計量分析が可能な形に変形して、経常収支赤字が持続可
能であるための必要十分条件を導出している。Ahmed and Rogers(1995)は、一定の条件
の下で対外純利子支払い rt Dt −1 と投資 I t と政府支出 Gt と貯蓄 St と税収 Tt が共和分関係に
あり、かつこれらの共和分ベクトル (1, 1, 1, − 1, − 1) を持つことが、前述の横断面条件が満
たされ、すなわち経常収支赤字の持続可能性の条件が満たされるための必要十分条件とな
ることを示している6。したがって、前述した変数の間の共和分関係を検定することによっ
て、われわれは経常収支赤字の持続可能性の条件を検証することができる。
(2) 経常勘定と貿易フローの視座
次に、経常収支赤字の持続可能性を検討する際の第二の視座として、貿易フローの視点
から対外債務の返済可能性を考えてみる。前述した背景にしたがい、以下において分析の
枠組みを示すことにしよう。まず、労働所得の純受け取りや経常移転などの項目を捨象す
ると、経常収支赤字 CADt は、対外純利子支払い rt Dt と貿易・サービス収支赤字 M t − X t の
合計となる。ただし、 X t , M t はそれぞれ、財およびサービスの輸出、輸入を表す。
これらから、貿易フローに基づいた経済の異時点間の予算制約が得られる。この国全体
の対外債務の返済可能性は、ある時間視野において(無限期間の時間視野を持っていれば無
6
ここで満たされるべき前提条件は以下のとおりである。(i) I t , G t , S t , Tt がすべて I(1)過程にしたがう、(ii)効用関数
が時間に関して分離可能であり、消費の限界効用 u ' (C t ) の系列がランダムウォークにしたがい、主観的割引因子 β が
β ∈ (0,1) を満たすこと、(iii)すべてのリスクが時間に関して不変であること、すなわち、確率的割引因子と各変数の
共分散が時間に関して不変であること、(iv)対外債務残高の系列が I(1)過程にしたがう、および(v)期待値オペレータ E t
が合理的期待を表すこと。以上の仮定の下で、Ahmed and Rogers(1995)は(7)式の右辺が定常であることと関係する諸
変数が共和分関係にあることが同値であることを示している。
6
限期間において)、国全体の対外純債務がゼロであること(横断面条件)を満たさなければ
ならない。この条件が満たされるためには、当初の対外債務残高と、現在及び将来の純輸
出(輸出−輸入)の現在割引価値とが等しくなる必要がある。つまり、当初の対外債務残
高が現在及び将来の純輸出(輸出−輸入)によって返済されることが、この経済にとって
の経常収支赤字持続性条件になるのである。
したがって、経常収支赤字の持続可能性に関する必要十分条件は、対外純利子支払い rt Dt
と輸出 X t と輸入 M t が共和分関係にあり、かつ共和分ベクトル (1, − 1, 1) を持つことである。
したがって、貿易フローの視座に基づく場合、経常収支赤字の持続可能性を検証するため
に、前述した変数の共和分関係を検定すればよい。
(3) 国際資本フローの視座
最後に、国際資本フローの視座から経常収支赤字の持続可能性の条件を説明する。国際
収支の定義より、経常収支は、資本収支と外貨準備増減の合計に等しい。あるいは、経常
収支赤字 CADt は、資本流入 Fint マイナス資本流出 Foutt と外貨準備増減 ∆Rt の合計に等
しい。
これらから、国際資本フローに基づいた経済の異時点間の予算制約が得られる。この国
全体の対外債務の返済可能性は、ある時間視野において(無限期間の時間視野を持っていれ
ば無限期間において)、国全体の対外純債務がゼロであること(横断面条件)を満たさなけ
ればならない。この条件が満たされるためには、当初の対外債務残高と、現在及び将来の
資本流入マイナス資本流出及び外貨準備増減の現在割引価値とが等しくなる必要がある。
他の視座からの分析と異なり、資本流入 Fint と資本流出 Foutt と外貨準備増減 ∆Rt が共
和分関係にあり、かつ共和分ベクトル (1, − 1, − 1) を持つことは、経常収支赤字が持続可能
であるための必要条件であるが、十分条件とはならない。そこで、Trehan and Walsh(1991)
と同様の方法を用いて、対外債務が 1 次の和分過程にしたがうことを検定することによっ
て十分条件を確認する。
4.経常収支赤字の持続可能性に関する実証分析
この節では、アメリカの経常収支赤字が持続可能であるかどうかを、対外債務の返済可
能性という点から検証する。その検証にあたって、前節で展開した 3 つの視座に基づいて、
該当する変数の共和分関係を見ることになる。そこで、まず、実証分析において用いるデ
7
ータと分析に用いる方法を紹介する。その後に、それぞれの視座に基づいた検証の結果を
述べることにする。
(1) データと分析方法
ここでは、今回の分析に使用するデータを紹介する。すべてのデータについて原変数と
それを GDP で基準化したものを準備した。国内貯蓄投資バランスの視座からの検証に用
いるデータのほとんどは、アメリカの商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis)の
国民所得生産勘定(National Income and Production Account Tables)の第 5.1 表を参照し
ており、国際収支に関するデータは同じく商務省経済分析局の国際収支統計
(International Transactions Accounts)の第 1 表を参照している。いずれも季節調整済み
のデータである。本稿末尾の図表 10 にすべてのデータの出典を示している。標本期間は、
国内貯蓄投資バランスに関するものは 1960 年第 1 四半期から 2002 年第 3 四半期であり、
国際収支に関するデータは 2002 年第 4 四半期までカバーしている。したがって、データ
全体の標本数はそれぞれ、171 および 172 となる。
まず、国内貯蓄投資バランスの視座からの検証に用いるデータについて紹介する。対外
債務の利払い rt Dt −1 としてネットの対外債務の利子支払い RD を用いている。民間貯蓄水
準 S t として民間粗貯蓄 PS、民間投資水準 I t として民間粗投資 PI、政府支出 Gt として政府
粗貯蓄 GS、政府収入 Tt として政府粗投資 GE をそれぞれ用いている。また、民間と政府
の貯蓄、投資水準をそれぞれ合算した国民粗貯蓄 NS、国民粗投資 NI も分析の対象とした。
さらに、粗投資から粗貯蓄を差し引いた貯蓄投資ギャップとして、民間部門の PIS、政府
部門の GIS、および経済全体の NIS についても同様の分析を行なっている。
次に、貿易フローの視座からの検証に用いるデータを紹介する。まず、対外純利子支払
いについては前と同じくネットの対外債務の利子支払い RD を用いる。輸出 X t については
財・サービスの輸出 EX を、輸入 M t については財・サービスの輸入 IM を用いる。また、
対外純利子支払い rt Dt −1 と輸入 M t を合わせた変数として MM も使用している。さらに、
輸出と輸入の代わりに貿易収支 TB を用い、最後にすべての変数を合わせた形で経常収支
赤字 CAD の分析も行なっている。
最後に、国際資本フローの視座からの検証には以下のデータが用いられる。まず、外貨
準備増減 ∆Rt として RES を用いる。資本流入 Fin t として FIN、資本流出 Fout t として FOUT
をそれぞれ用いている。また、それぞれの資本移動項目について細分化した分析も行なっ
8
ている。その分析には、資本流入 Fin t として対内直接投資 DIIN、対内証券投資 PIIN、お
よび対内その他投資 OIIN を、資本流出 Fout t として対外直接投資 DIOUT、対外証券投資
PIOUT、対外その他投資 OIOUT をそれぞれ使用している。そして、直接投資バランス
DIB、証券投資バランス PIB、その他投資バランス OIB を用いた分析と、資本収支全体
FB を用いた分析も行なっている。
以上のデータを用いて、前節の枠組みにしたがって分析を行なう。具体的には該当する
変数間の共和分関係を、Johansen の方法で共和分検定を実施することで検証する7。この
際、各々の体系においてすべての変数が共和分の要素となりうるかどうかを、各変数の長
期的関係からの除外、定常性、および外生性の検定を行なうことによって確認する。もし
該当する変数が共和分の要素として相応しいならば、いずれの検定においても帰無仮説を
棄却することが予想される。結果として、その体系全体として共和分関係にあることが確
認される。そして、共和分が確認された組み合わせについて、前節において課されている
共和分ベクトルの制約の検定を行なう8。ある変数の組み合わせが、これらの検定をすべて
通過した場合に、経常収支赤字の持続可能性の条件が満たされていると、われわれは結論
することになる。以下において、前節で紹介した 3 つの視座から経常収支赤字の持続可能
性の条件を検証する。
(2) 国内貯蓄投資バランスの視座からの検証
ここでは、国内貯蓄投資バランスの視座から、経常収支赤字の持続可能性について検証
する。共和分関係の項、すなわち、対外純利子支払い rt Dt −1 と投資 I t と政府支出 Gt と貯蓄
St と税収 Tt について、次のようなパターンを考えることにする。
(a) 対外純利子支払い+民間投資+政府投資−民間貯蓄−政府貯蓄
GDP で基準化しない場合については、図表 11.1 の Johansen 検定の結果から共和分の
ランクは 3 となる。次に、各変数について長期的関係からの除外、定常性、および外生性
について検定した結果が図表 11.2 から図表 11.4 に示されている。その結果、図表 11.3 に
おいて GS が I(0)であることが棄却できず、図表 11.4 からは RD と GE が外生となること
が棄却することができない。したがって、この体系のいくつかの変数が共和分関係にない
7
ここでは、有意水準の臨界点として Osterwald-Lenum(1992)の第 1 表を用いる。
8 宮尾(2003)は、これらの共和分ベクトルに一定の線形制約が課されていることに着目し、Engle-Granger 検定の枠
組みで分析を行なっている。彼は、RD+IM−EX の系列に単位根検定をかけているが、これは、RD,IM,EX の共和分
ベクトルに(1,1,−1)の制約を課して Engle-Granger 検定を行なうこととほぼ似ているといえる。
9
ということは否定することができない。
GDP で基準化した場合について見てみる。この場合、図表 11.1 から共和分のランクが
1 となることが分かる。また、図表 11.2 および図表 11.4 から、PI および GE が共和分体
系から除外されることは否定することができない。
以上の結果から、この定式化においては、アメリカの経常収支赤字は持続不可能である
という結論が導き出される。
(b) 対外純利子支払い+国内投資−国内貯蓄
民間投資と政府投資を合わせて国内投資に、民間貯蓄と政府貯蓄を合わせて国内貯蓄と
してそれぞれ定義し、部門の区別を取り除いたものにしている。
GDP で基準化しない場合については、図表 11.1 から共和分のランクが 3 でふるランク
となることが分かる。これは、共和分体系を構成する各々の変数の階差が I(0)過程にした
がうと想定することと矛盾する。GDP で基準化した場合については、図表 11.1 の結果か
ら共和分のランクが 1 となる。しかしながら、図表 11.4 の外生性の検定において、NI お
よび NS が外生であることが棄却することができない。
したがって、この定式化においても、アメリカの経常収支赤字は持続不可能であるとい
う結論が導き出される。
(c) 対外純利子支払い+民間貯蓄投資ギャップ+政府貯蓄投資ギャップ
視点を変えて、民間部門の貯蓄投資ギャップと政府部門の貯蓄投資ギャップの点から見
ている。ここでは共和分ベクトルが満たすべき制約が (1,1,1) となる。この定式化において
は、図表 11.1 から、GDP で基準化するか否かに関わらず、共和分のランクが 0 になる。
したがって、この場合は、アメリカの経常収支赤字は持続不可能であるという結論が導き
出されることになる。
(d) 対外純利子支払い+国内貯蓄投資ギャップ
部門の区別を取り除いたものになっている。この定式化については、図表 11.1 の結果か
ら、GDP で基準化しない場合は共和分のランクが 0 となり、GDP で基準化する場合は共
和分のランクが 1 となる。そして、図表 11.2 から図表 11.4 の結果より、この体系におい
てはすべての変数を含む共和分関係が成り立っていることが示される。しかしながら、図
10
表 11.1 で示されているように、共和分ベクトルの線形制約の尤度比検定の結果、前節で導
出された制約を満足しないことが分かる。
したがって、以上の分析から、国内貯蓄投資バランスの視座において、アメリカの経常
収支赤字は持続不可能であるということが示された。
(3) 貿易フローの視座からの検証
ここでは、貿易フローの視座から、経常収支赤字の持続可能性について検証する。共和
分関係の項、すなわち、対外純利子支払い rt Dt と輸出 X t と輸入 M t について、次のような
パターンを考えることにする。
(a) 対外純利子支払い+輸入−輸出
この定式化に基づくと、図表 12.1 から、GDP で基準化するか否かに関わらず共和分の
ランクが 0 となるので、この定式化からは、アメリカの経常収支赤字は持続不可能である
ということができる。
(b) 対外純利子支払いと輸入の合計−輸出
ここでは、対外純利子支払い RD と輸入 IM を合わせた変数 MM を用いている。図表
12.1 から、この定式化において、GDP で基準化しない場合には共和分のランクが 1 とな
り、GDP で基準化した場合にはランクが 0 となる。前者について、各変数が共和分の要
素となる要件を満たすかどうかを検証すると、図表 12.4 の結果から、EX が外生であると
いう仮説が棄却することができないことが分かる。したがって、この定式化からは、アメ
リカの経常収支赤字は持続不可能であるということになる。
(c) 対外利払い−貿易収支
ここでは、輸出入の部分を貿易収支 TB で置き換えている。この定式化にしたがうと、
図表 12.1 において、GDP で基準化するか否かにかかわらず、共和分のランクが 0 となる
ことが分かる。したがって、この定式化からは、アメリカの経常収支赤字は持続不可能で
あるということができる。
(d) 経常収支
ここでは、全体を経常収支に近似して単位根検定を行なう。この定式化に基づく場合は、
11
経常収支赤字 CAD が定常であることが、経常収支赤字の持続可能性を満たすための要件
となる。それを検証しているのが図表 12.5 の ADF 検定の結果である。いずれもこの系列
が単位根を持つことが棄却できていない。ここから、GDP で基準化するか否かにかかわら
ず、アメリカの経常収支赤字は持続不可能であると結論づけられる。
以上の結果から、貿易フローの視座に基づくと、アメリカの経常収支赤字が持続不可能
であるという結論が得られることが分かる。
(4) 国際資本フローの視座からの検証
最後に、国際資本フローの視座から経常収支赤字の持続可能性について検証する。ここ
では、資本流入 Fint と資本流出 Foutt と外貨準備増減 ∆Rt といった共和分関係の項につい
て、次のようなパターンを考えることにする。
(a) 資本流入−資本流出−外貨準備増減
図表 13.1 から分かるとおり、この定式化にしたがうと、GDP で基準化しない場合は共
和分のランクが 2 となる。各変数が共和分の要素としての要件を満たすかどうかを検証す
ると、図表 13.2 からは FOUT、FIN が長期的関係から除外されることを棄却することが
できず、図表 13.3 からはすべての変数が定常である可能性を棄却することができなかった。
一方、GDP で基準化した場合には共和分のランクが 1 となる。しかしながら、図表 13.2
および図表 13.4 より、FOUT と FIN が体系から除外されることを棄却することができず、
図表 13.3 からは RES が定常である可能性を棄却することができなかった。
この定式化において RES を除いたとき、図表 13.1 から、GDP で基準化しない場合は共
和分のランクが 1 であり、GDP で基準化した場合はランクが 0 であった。前者の体系に
ついて、各変数の長期的均衡関係からの除外、定常性、および外生性を検定した結果、図
表 13.2 から図表 13.4 で分かるとおり、FIN、FOUT ともにいずれの帰無仮説も棄却する
ことができず、これらの変数は共和分の要素をなさない可能性を否定することができなか
った。
したがって、ここからは、アメリカの経常収支赤字が持続不可能であるという結果が得
られる。
(b) 直接投資流入+証券投資流入+その他投資流入−直接投資流出−証券投資流出−その
他投資流出−外貨準備増減
12
直接投資、証券投資、その他投資の各項目に分割したものを分析している。この定式化
において、GDP で基準化しない場合、共和分のランクが 7 でフルランクとなり、矛盾す
る。一方、GDP で基準化した場合について見ると、図表 13.1 から共和分のランクが 4 に
なることが分かる。しかしながら、図表 13.3 より、RES が定常であることを棄却するこ
とができず、また図表 13.4 より、PIOUT と OIOUT と DIIN が体系から除外されること
を棄却することができない。
この定式化の下で RES を除いたとき、図表 13.1 より、GDP で基準化しない場合は、共
和分のランクが 4 となり、GDP で基準化した場合は共和分のランクが 3 となることが分
かった。そこで、これらの体系において各変数が共和分の要素として相応しいか否かを図
表 13.2 から図表 13.4 のように検定した。すると、図表 13.3 より、前者の体系においては
OIOUT と RES 以外の変数が定常であり、後者の体系においては RES が定常であること
を棄却することができなかった。
したがって、この定式化においては、アメリカの経常収支赤字が持続不可能であると結
論することができる。
(c) 直接投資収支+証券投資収支+その他投資収支−外貨準備増減
収支項目ごとに合算したものになっている。
図表 13.1 から、この定式化においては、
GDP で基準化しない場合は共和分のランクが 3 となることが分かる。この体系において
は、図表 13.3 より RES が定常である可能性を棄却することができない。一方、GDP で基
準化した場合、共和分のランクは 2 となる。しかしながら、図表 13.2 と図表 13.4 からは
DIB と PIB が共和分関係から除外されることを棄却することができず、図表 13.3 からは
OIB と RES が定常であることを棄却することができない。
この定式化において RES を除くと、図表 13.1 の結果から、GDP で基準化しない場合は
共和分のランクは 2 となる。一方、GDP で基準化した場合はランクが 1 になる。前者の
体系においては図表 13.2 から図表 13.4 のように、各変数に関する共和分からの除外、定
常性、外生性の検定もすべて棄却しており、これらの体系は全体として共和分関係にある
ことが分かる。一方、後者の体系においては PIB が体系から除外される恐れがある。
最後に、前者の体系が前節で述べたような共和分ベクトルに関する線形制約を満たすか
どうかを検定した。その結果は図表 13.1 の右端に掲載されている。この検定において、線
形制約を満たすという帰無仮説は棄却されている。
13
以上から、この定式化の下では、アメリカの経常収支赤字が持続不可能であるという結
果が得られた。
(d) 投資収支−外貨準備増減
最後に投資収支をすべて合算した形で検定を行なうことにする。 図表 13.1 から、この
定式化においては、GDP で基準化しない場合は共和分のランクがフルランクとなり矛盾す
る結果を招くが、GDP で基準化するか場合は、共和分のランクが 1 となることが分かる。
また、図表 13.3 より、いずれの場合も RES が定常である可能性が棄却することができず、
図表 13.2 および図表 13.4 より、FB が体系から除外されることも棄却することができな
い。
これらの体系から RES を除いて単位根検定を行なった結果が図表 13.5 に示されている。
この場合、FB は定常でなければならないが、検定結果から I(1)であることを否定するこ
とができない。したがって、この場合もアメリカの経常収支赤字は持続不可能であるとい
うことになる。
以上の分析から、国際資本フローの視座から見た場合も、アメリカの経常収支赤字は現
在の水準で持続不可能であることが判明した。
5.経常収支赤字のファイナンス要因の分析
前節では、経常収支赤字の持続可能性について、国内貯蓄投資関係、貿易フロー、およ
び国際資本フローの視座から分析を行なった。その結果、いずれの側面から見ても、経常
収支赤字は現在の水準では持続不可能であるという結論が得られた。この節では、経常収
支が資本フローによって長期的にどのような形でファイナンスされているかを分析する。
国際収支表より、外貨準備増減 ∆Rt は経常収支赤字 CADt と資本収支 FBt の合計に等し
い。前節の実証結果において、図表 12.5 から経常収支赤字 CADt が非定常である。その一
方で、外貨準備増減 ∆Rt が定常であることが図表 13.3 から判明しており、それらの事実に
整合的であるためには、経常収支赤字 CADt と資本収支 FBt が共和分している必要がある。
そこで、経常収支赤字と資本フローの長期的な関係を見るために共和分検定を行なって
みた。図表 14.1 に示されている結果を見ると、GDP で基準化しない場合は共和分のラン
クがフルランクとなり矛盾であるが、GDP で基準化する場合は、経常収支赤字 CAD と資
本収支 FB は 1 個の共和分ベクトルを持ち、長期的にほぼ一対一に対応していることが分
14
かる。
さらに、資本収支 FBt を直接投資収支 DIBt と証券投資収支 PIBt とその他投資収支 OIBt に
分けると、外貨準備増減 ∆Rt は、経常収支赤字 CADt と直接投資収支 DIBt と証券投資収支
PIBt とその他投資収支 OIBt に等しい。
外貨準備増減 ∆Rt が定常であるためには、経常収支赤字 CADt と直接投資収支 DIBt と証券
投資収支 PIBt とその他投資収支 OIBt が共和分の関係を持つ必要がある。そこで、これらに
ついて共和分関係の分析を行なうと、図表 14.1 から分かるとおり、ここからも共和分関係
が見出される。その中でも、経常収支赤字のファイナンスに貢献しているのはどの項目か
ということを分析していこう。
もし、共和分ベクトルに含まれるある変数が I(0)であったり、外生性が認められるなら
ば、その変数は経常収支赤字と資本収支の共和分関係に貢献していないことになる。そこ
で、前述の共和分ベクトルに含まれる各変数に関して、定常性、共和分ベクトルからの除
外可能性、外生性をそれぞれ検定する。その結果は図表 14.2 と図表 14.3 と図表 14.4 にそ
れぞれ示されている。
図表 14.1 で示されているとおり、GDP で基準化しない場合は共和分ベクトルのランク
は 2 であり、GDP で基準化する場合はランクが 1 となる。これに従って図表 14.2 と図表
14.3 と図表 14.4 を見ると、GDP で基準化しない体系では経常収支赤字 CAD が共和分関
係から除外されることを否定することができない。一方、GDP で基準化した体系において
は、OIB が体系から除外されることを棄却することができない。そこで、OIB を除外した
体系について共和分検定を行なうと、共和分のランクが 0 となり、長期的均衡関係が見出
せなかった。
以上の結果から、アメリカの巨額の経常収支赤字は証券投資のみによってファイナンス
されていたのではなく、さまざまな形態の資本流入によってファイナンスされていた可能
性を指摘することができる。
6.国際資本フローの変化の影響
(1) 為替相場による調整と世界経済への影響
今日のところまではアメリカの経常収支赤字がアメリカへの国際資本流入によって支え
られてきたが、アメリカをめぐる国際資本フローに変化が起こると、とりわけ、アメリカ
への国際資本流入が急減すると、アメリカの経常収支赤字を維持することが困難となる可
15
能性が大きい。経常収支赤字が増大するなか、アメリカへの資本流入が減少した場合には、
アメリカの経常収支赤字が持続不可能であることが懸念され、その持続不可能な経常収支
赤字は為替相場によって調整されることになるであろう。
Mann(2003)の試算によれば、
『エコノミスト』の金融機関へのサーベイ調査に基づいて、
世界経済の富の増加の 55%のみがアメリカ資産に運用されるならば、アメリカの経常収支
をファイナンスするには不十分であり、2002 年水準から 40%のドルの減価が発生しなけ
ればならないであろうと予測されている。さらに、Mann(2003)が指摘するように、この
ようなドルの大きな減価が発生すれば、世界の投資家はドル建て資産からドル以外の通貨
建ての資産にポートフォリオ需要をシフトさせると考えられる。そして、一層のドルの減
価をもたらすことになる。発生の確率は低いかもしれないが、このようなドルの減価とド
ル離れの悪循環に陥る可能性もある。このように、ドル建て資産に対するリスクプレミア
ムの増大は、ドルの減価をもたらすのみならず、ドル建て金利が上昇することになるであ
ろう。
ドルの減価は、アメリカ経済にとっては経常収支赤字を減少させることに貢献すること
となり、経常収支赤字の持続可能性を回復させることになるであろう。しかし、財政赤字
が減少しないかぎりは、この経常収支赤字の持続可能性の回復は、ドルの減価が相対価格
効果および交易条件を通じた所得効果によって輸入を減少させることによって達成される。
そのため、アメリカ経済にとって必ずしも望ましい姿で経常収支赤字の持続可能性が回復
されることとはならない。とりわけ、ドルの減価による交易条件の悪化は、アメリカ経済
の購買力を低下させることから、アメリカ経済自体にとってマイナスの影響をもたらす。
一方、ドルの減価は、世界経済に対してもマイナスの影響をもたらすであろう。日本や
EU 諸国のようにドルに対して変動為替相場制度を採用している国々では、ドルに対して
自国通貨の増価に直面することとなる。日本や EU 諸国の経済が好調であるために自国通
貨が増価するのと違って、現在の日本や EU 諸国の状況においてはドルに対する自国通貨
の増価のマイナスの影響はこれらの経済に対してインパクトが大きいであろう。さらに、
アメリカにおける交易条件の悪化によるアメリカ経済の購買力の低下は、世界経済に対し
てマイナスの影響を及ぼす可能性がある。
(2) 調整速度とアメリカ経済・世界経済への影響
ドルの減価から始まるこれらの一連の調整は、緩やかに行われた場合と急激に行われた
16
場合とで、アメリカ経済と世界経済に及ぼす影響は異なってくるであろう。これらの調整
は、ドルの減価とドル離れの悪循環が発生することになると、その調整は、深刻化するこ
とになるとともに、加速化する可能性もある。
持続可能性がないとみなされうるアメリカの経常収支赤字が世界からアメリカへの国際
資本流入によって支持されている背景には、ドルが基軸通貨であることが関係している9。
したがって、ドルが基軸通貨として信認を維持しているかぎりは、ドルの減価とドル離れ
の悪循環は発生しにくい状況にある。しかしながら、基軸通貨としてのドルの信認は、ド
ルの基軸通貨としての地位の慣性の原因となっているものの、ネットワーク外部性が作用
するなか、ドルの一般受容性に大きく関わっている。ドルの一般受容性は、世界の経済主
体がドルには一般受容性があると信認を置くことによって、一般受容性が現れるというよ
うに、自己実現的な特徴を有する。このような状況において、いったんアメリカの経常収
支赤字の持続不可能性を国際資本フローによって支持されないかもしれないということが
世界の経済主体、とりわけ国際的な投資家に予想されると、経常収支赤字の持続不可能性
の露呈によって、ドルの減価とドル離れの悪循環が一気に深刻化する可能性がある。
基軸通貨としてのドルの慣性が作用しているため、ドルの減価とドル離れの悪循環を伴
いながら、ドルの減価から始まるこれらの一連の調整が急激に起こる可能性は極めて小さ
いと予想される。しかしながら、いったんこのような急激な調整が起こると、ドルの急激
な減価やドル建て金利の急騰に対してアメリカ経済及び世界経済が即座に対応することが
できないために、これらの経済に対して様々な悪影響を及ぼすであろう。とりわけ、急激
な、そして、ドルの大きな減価が発生すると、アメリカ経済を除く世界経済の輸出に打撃
を与え、世界的な不況及びデフレを深刻なものとするであろう。
しかしながら、実際問題としては、これらの調整が緩やかに行われる可能性が極めて高
いと期待される。調整が穏やかに行われる場合には、アメリカ経済及び世界経済に及ぼす
影響は時間を通じて分散されることから、単位時間当たりの影響度は相対的に小さくなる
であろう。それは、Mann の試算によるドルの 40%の減価が 1 年以内に起こるのか、ある
いは、5 年またはそれ以上の年月をかけて起こるのかを比較すれば、明らかである。また、
時間をかけて調整が行われれば、民間経済主体も、直接投資による生産拠点の移転などに
よって対応することが可能である。さらには、アメリカ政府を含む、世界各国の政府が政
9 基軸通貨としてのドルに関する理論的・実証的分析については、小川(1998)を参照せよ。
17
策対応を採用する時間的余地が残されていることも、調整過程における経済への影響を緩
和することにおいては重要である。
(3) 政策対応
最後に、アメリカ及びその他の主要先進諸国の政府の政策対応に言及しよう。
先ず第一に、アメリカの経常収支赤字の根本的原因であるアメリカの財政赤字を縮小す
ることをアメリカ政府は目ざすことが最も重要な施策であることは言うまでもない。財政
赤字の拡大は経常収支赤字を拡大するばかりではなく、国債が大量に発行される。アメリ
カのように、民間貯蓄が不足気味である場合には、大量に発行された国債は外国人に保有
されることとなり、経常収支赤字拡大とともに対外債務が累積・増大することになる。ア
メリカの対外債務の累積は、ドルの一層の減価とドル建て金利上昇の要因となることから、
十分に注意を払う必要がある。
ドル建て資産に対するリスクプレミアムの増大によるドル建て金利及び世界的な金利の
上昇に対しては、現在の世界的なデフレ傾向の状況を考慮に入れると、金利上昇を放置す
るわけにはいかない。金利上昇を抑制するためには、アメリカで金融緩和政策を維持し続
けることが必要である。しかしながら、アメリカのみで金融緩和政策を維持する一方、ア
メリカ以外の国、特に、経済規模の大きな先進諸国でアメリカの金融政策に同調しない金
融政策が採用されると、ドルが一層減価する可能性がある。したがって、ドルの一層の減
価を抑制するためにも、アメリカとその他の主要先進諸国との間で協調的な金融緩和政策
が採用されるべきである。
7.結論
本稿では、アメリカをめぐる国際資本フローについて、1990 年代後半から 2001 年にか
けて資本流入が増加していたが、近年、資本流入が急減していることを概観した。一方、
国内貯蓄投資バランスと貿易フローと国際資本フローの視座からアメリカの経常収支赤字
が持続不可能であることを確認した上で、その持続不可能な経常収支赤字が国際資本フロ
ーによってファイナンスされていることによって、経常収支と資本収支の合計である国際
収支全体が長期的に持続可能であるかどうかを考察した。
経常収支赤字の持続可能性は、直接的に貿易フローの観点から説明することができる。
一方、経常収支は国内貯蓄投資バランスに等しいので、国内貯蓄投資バランスの観点から
18
経常収支の赤字の持続可能性を考察することができる。さらに、経常収支赤字は資本収支
黒字にも対応するので、資本収支黒字の長期的安定性を分析することによって、経常収支
赤字の持続可能性を考察することもできる。本稿の実証分析によって、国内貯蓄投資バラ
ンスと貿易フローと国際資本フローのいずれの視点からも、アメリカの経常収支赤字は長
期的に持続不可能であることが明らかとなった。このことは、アメリカの対外投資ポジシ
ョンが一貫して悪化しつづけると同時に、1990 年代半ばからの経常収支赤字の急速な赤字
が進行したことによって、アメリカの対外的な「予算制約」が破綻する方向に向かってい
ることを示唆しているのかもしれない。
しかしながら、アメリカの経常収支赤字がアメリカへの国際資本流入によってファイナ
ンスされることによって、経常収支と資本収支を含む国際収支全体は長期的に持続可能に
あることが明らかとなった。さらに、経常収支赤字が証券投資ばかりでなく直接投資やそ
の他投資を含む広範な形態の国際資本流入によってファイナンスされている可能性がある
という結果が得られた。このように、これまでの国際資本フローのパターンが続くことを
前提とすれば、たとえアメリカの経常収支赤字が3つの視座から見て持続不可能だとして
も、その持続不可能な経常収支赤字をファイナンスするように十分にアメリカへ資本が流
入することによって、アメリカの国際収支は破綻をきたさないであろう。また、経常収支
赤字が証券投資ばかりでなく直接投資やその他投資を含む広範な形態の国際資本流入によ
ってファイナンスされてきたことから、たとえ証券投資だけが逆流を引き起こしたとして
も、長期的には直接投資やその他投資が経常収支赤字のファイナンスを支える可能性があ
る。
一方、最近のアメリカをめぐる国際資本フローの変化(アメリカへの資本流入の縮小あ
るいは資本フローの欧州への逆流)が構造的・恒久的なものであれば、そもそも持続不可
能な経常収支赤字をファイナンスすることができない。その場合には、アメリカの経常収
支赤字の持続不可能性が露呈することによって、アメリカは、資本流入の減速さらには資
本流出が発生し、国際資本フローによってファイナンスされない、一層深刻な持続不可能
な経常収支赤字に直面することとなるであろう。また、その調整過程において、ドルが減
価することが予想される。ドルの減価は、アメリカ経済に対して経常収支を改善する効果
をもたらすものの、交易条件の悪化を通じてマイナスの所得効果をもたらす。一方、ドル
の減価は、相対価格効果とともにアメリカへのマイナスの所得効果が世界経済に波及する
ことによって、世界経済に対してマイナスのインパクトをもたらすと予想される。
19
Appendix :経常収支に対する 3 つの視座の理論フレームワーク
(1) 国内貯蓄投資バランスの視座
先ず、各期末の対外債務残高 Dt の変化と経常収支赤字 CADt との関係が次のように表さ
れる。
(A1)
Dt − Dt −1 = CADt
すなわち、対外債務残高は、経常収支赤字をファイナンスするための資本流入によって積
み増していくことになる。この関係は、ある時点 t における経済全体の「予算制約」と解
釈することができる。
次に、国内の貯蓄投資行動を民間部門と政府部門に分けて見てみよう10。ある時点 t にお
ける民間部門の予算制約として、
(A2)
At − At −1 = rt At −1 + S t − I t
が成り立つ。ただし、 rt は利子率、 At は対外資産と対政府資産からなる民間部門の資産残
高、 S t , I t はそれぞれ、民間部門の貯蓄と投資水準を表す。
一方、政府部門の予算制約は、
(A3)
Bt − Bt −1 = rt Bt −1 + Gt − Tt
となる。ただし、 Bt は政府部門の債務、 Gt と Tt はそれぞれ、政府の支出と収入を表す。
政府部門の債務は、民間部門と外国の居住者によって保有される。
民間部門の保有する対政府資産と政府部門の民間部門に対する債務が等しくなることか
ら Bt − At = Dt が成り立つので、(A2)式および(A3)式を合わせると、
(A4)
CADt = rt Dt −1 + I t + Gt − S t − Tt
として経常収支赤字と国内貯蓄投資バランスの関係が得られる。
ここで、民間経済主体の確率的割引因子を Qt , t + k = [ β k u ' (C t + k ) / u ' (C t )] とする。ただし、
C t は消費水準、 u (⋅) は効用関数であり、 u ' (⋅) > 0, u ' ' (⋅) < 0 が成り立つと仮定する。また、
Qt ,t = 1 を満たすとする。そして、異時点間消費に関するオイラー条件は、
(A5)
⎡
⎛ k
⎞⎤
E t ⎢Qt ,t + k ⎜ ∏ (1 + rt + j ) ⎟⎥ = 1
⎜ j =0
⎟⎥
⎢⎣
⎝
⎠⎦
Matsubayashi(2002)は民間部門と政府部門の各々の予算制約が満たされているかどうかについても、必要条件と十
分条件の点から分析を行なっているが、本稿では経常収支の持続可能性に絞って分析するため、部門ごとの予算制約の
吟味は行なわない。
10
20
のようになる。
(A1)式と(A4)式を合わせて、 Dt について逐次代入を行ない、その結果について(A5)式を
用いて整理すると、次のような形で、国内貯蓄投資バランスに基づいた経済の異時点間の
予算制約が得られる。
(A6)
∞
∞
∞
k =0
k =0
∞
k =0
E t ∑ (Qt ,t + k I t + k ) + E t ∑ (Qt ,t + k Gt + k ) − E t ∑ (Qt ,t + k S t + k )
− E t ∑ (Qt ,t + k Tt + k ) + (1 + rt ) Dt −1 = lim E t (Qt ,t + K Dt + K )
K →∞
k =0
ここで、(A6)式に基づいて対外債務の返済可能性を検討してみる。まず、この体系の横
断面条件 lim K →∞ E t (Qt ,t + K Dt + K ) = 0 が満たされるとすると、
∞
(1 + rt ) Dt −1 = E t ∑ Qt ,t + k ( S t + k + Tt + k − I t + k − Gt + k )
k =0
が成り立つ。これは、この経済の最終的な対外債務残高の現在割引価値がゼロに収束する
ためには、すなわち横断面条件が満たされるためには、当初の対外債務残高と、現在及び
将来の純貯蓄の現在割引価値とが等しくなる必要があることを示している。つまり、当初
の対外債務残高が現在と将来の純貯蓄によって返済されることが、この経済にとっての経
常収支赤字持続性条件になるのである。
Ahmed and Rogers(1995)は、(A6)式を計量分析が可能な形に変形して、経常収支赤字
が持続可能であるための必要十分条件を導出している。(A6)式の両辺について階差をとっ
て式を整理すると、
∞
∞
∞
k =0
k =0
∆E t ∑ (Qt ,t + k I t + k ) + ∆E t ∑ (Qt ,t + k Gt + k ) − ∆E t ∑ (Qt ,t + k S t + k )
k =0
(A7)
∞
− ∆E t ∑ (Qt ,t + k Tt + k ) + (rt Dt −1 + I t + Gt − S t − Tt )
k =0
= lim E t (Qt ,t + K Dt + K ) − lim E t −1 (Qt −1,t + K −1 Dt + K −1 )
K →∞
K →∞
が得られる。ただし、 ∆ は階差オペレータである。
Ahmed and Rogers(1995)は(A7)式から、一定の条件の下で rt Dt −1 , I t , Gt , S t , Tt が共和分関
係にあり、かつ共和分ベクトル (1, 1, 1, − 1, − 1) を持つことが、前述の横断面条件が満たさ
れる、すなわち経常収支赤字の持続可能性の条件が満たされるための必要十分条件となる
ことを示している11。したがって、前述した変数の間の共和分関係を検定することによっ
11
ここで満たされるべき前提条件は以下のとおりである。(i) I t , G t , S t , Tt がすべて I(1)過程にしたがう、(ii)効用関数
21
て、われわれは経常収支赤字の持続可能性の条件を検証することができる。
(2) 経常勘定と貿易フローの視座
まず、労働所得の純受け取りや経常移転などの項目を捨象すると、経常収支赤字を次の
ように表すことができる。
(A8)
CADt = rt − X t + M t
ただし、 X t , M t はそれぞれ、財およびサービスの輸出、輸入を表す。
(A1)式と(A8)式を合わせて Dt について逐次代入を行ない、その結果について(A5)式を用
いて整理すると、次のような形で、貿易フローに基づいた経済の異時点間の予算制約が得
られる。
(A9)
∞
∞
k =0
k =0
E t ∑ (Qt ,t + k M t + k ) − E t ∑ (Qt ,t + k X t + k ) + (1 + rt ) Dt −1
= lim E t (Qt ,t + K Dt + K )
K →∞
ここで、国内貯蓄投資バランスに基づく異時点間の予算制約と同様の議論を行なうこと
ができる。すなわち、(A9)式からこの体系の横断面条件が満たされるとき、期首の対外債
務残高が、現在及び将来の純輸出によって返済されることが分かる。そして、また同様に
して、(A9)式の両辺に階差をとって式を整理すると、
(A10)
∞
∞
k =0
k =0
∆E t ∑ (Qt ,t + k M t + k ) − ∆E t ∑ (Qt ,t + k X t + k ) + (rt Dt −1 − X t + M t )
= lim E t (Qt ,t + K Dt + K ) − lim E t −1 (Qt −1,t + K −1 Dt + K −1 )
K →∞
K →∞
が得られ、経常収支赤字の持続可能性に関する必要十分条件は、 rt Dt −1 , X t , M t が共和分関
係にあり、かつ共和分ベクトル (1, − 1, 1) を持つことだということが分かる。したがって、
貿易フローの視座に基づく場合、経常収支赤字の持続可能性を検証するために、われわれ
は前述した変数の共和分関係を検定すればよい。
(3) 国際資本フローの視座
が時間に関して分離可能であり、消費の限界効用 u ' (C t ) の系列がランダムウォークにしたがい、主観的割引因子 β が
β ∈ (0,1) を満たすこと、(iii)すべてのリスクが時間に関して不変であること、すなわち、確率的割引因子と各変数の
共分散が時間に関して不変であること、(iv)対外債務残高の系列が I(1)過程にしたがう、および(v)期待値オペレータ E t
が合理的期待を表すこと。以上の仮定の下で、Ahmed and Rogers(1995)は(7)式の右辺が定常であることと関係する諸
変数が共和分関係にあることが同値であることを示している。
22
まず、国際収支の定義式より、
(A11)
CADt = Fin t − Fout t − ∆Rt
として経常収支と資本フローの関係が得られる。ただし、 Fint と Foutt はそれぞれ、資本
流入、資本流出であり、 Rt は外貨準備残高である。
(A1)式に(A11)式を代入して前向きに解いて整理すると、
(A12)
∞
∞
∞
k =0
k =0
k =0
E t ∑ Fin t + k − E t ∑ Fout t + k − E t ∑ ∆Rt + k + Dt −1 = lim E t Dt + K
K →∞
が得られる。この式の両辺について階差をとって整理すると、
(A13)
∞
∞
∞
k =0
k =0
k =0
∆E t ∑ Fin t + k − ∆E t ∑ Fout t + k − ∆E t ∑ ∆Rt + k + ( Fin t − Fout t − ∆Rt )
= lim E t Dt + K − lim E t −1 Dt + K −1
K →∞
K →∞
となる。
他の視座からの分析と異なり、(A13)式において、 Fin t , Fout t , ∆Rt が共和分関係にあり、
かつ共和分ベクトル (1, − 1, − 1) を持つことは、経常収支赤字が持続可能であるための必要
条件であるが、十分条件とはならない。これは、(A13)式の左辺第 1 項から第 3 項におい
て各変数が確率的割引因子によって加重されていないことが原因になっているためである。
そこで、Trehan and Walsh(1991)と同様の方法を用いて、対外債務が 1 次の和分過程にし
たがうことを検定することによって十分条件を確認する。
したがって、国際資本フローの視座から経常収支赤字の持続可能性を検討するために、
われわれは前述した共和分関係が満たされることを確認した場合、さらに十分条件も考慮
しなければならないことになる。
23
参考文献
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∼
アジア通貨危機の再検討∼』,東洋経済新報社.
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Applications to U.S. Federal Budget and Current Account Deficits”, Journal of
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25
Data: IMF, Balance of Payments Statistics
26
1998Q3
1999Q1
1999Q3
2000Q1
2000Q3
2001Q1
2001Q3
2002Q1
2002Q3
1999Q1
1999Q3
2000Q1
2000Q3
2001Q1
2001Q3
2002Q1
2002Q3
1995Q3
1995Q1
1994Q3
1994Q1
1993Q3
1993Q1
1992Q3
1992Q1
1991Q3
1991Q1
1990Q3
1990Q1
1989Q3
1989Q1
1988Q3
1988Q1
1987Q3
1987Q1
1986Q3
1998Q1
-250
1998Q3
その他投資(資産)
証券投資(資産)
直接投資(資産)
1997Q3
-150
1998Q1
-100
1997Q1
-50
1997Q3
0
1996Q3
50
1997Q1
100
1996Q1
図表1b:アメリカの金融勘定の資産サイド
1996Q3
Data: IMF, Balance of Payments Statistics
1996Q1
1995Q3
1995Q1
1994Q3
1994Q1
1993Q3
1993Q1
1992Q3
1992Q1
1991Q3
10億ドル
1991Q1
1990Q3
1990Q1
1989Q3
1989Q1
1988Q3
1988Q1
1987Q3
-200
1987Q1
1986Q1
1985Q3
1985Q1
300
1986Q3
1986Q1
1985Q3
1985Q1
10億ドル
図表1a:アメリカの金融勘定の負債サイド
350
その他投資(負債)
証券投資(負債)
直接投資(負債)
250
200
150
100
50
0
-50
-100
27
Data: Bureau of Economic Analysis, U.S. International Transactions Accounts Data
1998.3
1999.1
1999.3
2000.1
2000.3
2001.1
2001.3
2002.1
2002.3
1999.1
1999.3
2000.1
2000.3
2001.1
2001.3
2002.1
2002.3
1995.3
1995.1
1994.3
1994.1
1993.3
1993.1
1992.3
1992.1
1991.3
1991.1
1990.3
1990.1
1989.3
1989.1
1988.3
1988.1
1998.1
-50000
1998.3
0
1997.3
50000
1998.1
100000
1997.1
150000
1997.3
200000
1996.3
その他からの資本流入
アジア・アフリカからの資本流入
日本からの資本流入
EUからの資本流入
1997.1
図表3:アメリカの対地域別の金融勘定
1996.1
100万ドル
350000
1996.3
data: Bureau of Economic Analysis, U.S. International Transactions Accounts Data
1996.1
1995.3
1995.1
1994.3
1994.1
1993.3
1993.1
1992.3
1992.1
1991.3
1991.1
1990.3
1990.1
1989.3
1989.1
1988.3
250000
1987.3
1987.1
1986.3
1986.1
300000
1988.1
300000
1987.3
1987.1
1986.3
1986.1
100万ドル
400000
図表2:アメリカの対EUの金融勘定
その他への資本流出
その他からの資本流入
EUへの資本流出
EUからの資本流入
200000
100000
0
-100000
-200000
-300000
28
-5.00
-10.00
-15.00
-20.00
-25.00
国際投資ポジション
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
% 対GDP比
% 対GDP比
1960:1
1961:1
1962:1
1963:1
1964:1
1965:1
1966:1
1967:1
1968:1
1969:1
1970:1
1971:1
1972:1
1973:1
1974:1
1975:1
1976:1
1977:1
1978:1
1979:1
1980:1
1981:1
1982:1
1983:1
1984:1
1985:1
1986:1
1987:1
1988:1
1989:1
1990:1
1991:1
1992:1
1993:1
1994:1
1995:1
1996:1
1997:1
1998:1
1999:1
2000:1
2001:1
2002:1
図表4:アメリカの経常収支の推移
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
経常収支
図表5:アメリカの国際投資ポジション
15.00
10.00
5.00
0.00
1960:1
1961:1
1962:1
1963:1
1964:1
1965:1
1966:1
1967:1
1968:1
1969:1
1970:1
1971:1
1972:1
1973:1
1974:1
1975:1
1976:1
1977:1
1978:1
1979:1
1980:1
1981:1
1982:1
1983:1
1984:1
1985:1
1986:1
1987:1
1988:1
1989:1
1990:1
1991:1
1992:1
1993:1
1994:1
1995:1
1996:1
1997:1
1998:1
1999:1
2000:1
2001:1
2002:1
% 対GDP比
-2
財・サービスの輸出
29
民間部門
財・サービスの輸入
2002Q1
2001Q1
2000Q1
1999Q1
1998Q1
1997Q1
1996Q1
1995Q1
1994Q1
1993Q1
1992Q1
1991Q1
1990Q1
1989Q1
1988Q1
1987Q1
1986Q1
1985Q1
1984Q1
1983Q1
1982Q1
1981Q1
1980Q1
1979Q1
1978Q1
1977Q1
1976Q1
1975Q1
1974Q1
1973Q1
1972Q1
1971Q1
1970Q1
1969Q1
1968Q1
1967Q1
1966Q1
1965Q1
1964Q1
1963Q1
1962Q1
1961Q1
1960Q1
% 対GDP比
図表6:アメリカの部門別の貯蓄投資ギャップ
10
8
6
4
2
0
-4
-6
-8
-10
政府部門
図表7:アメリカの財・サービスの輸出入
16
14
12
10
8
6
4
2
0
-1
1960:1
1961:1
1962:1
1963:1
1964:1
1965:1
1966:1
1967:1
1968:1
1969:1
1970:1
1971:1
1972:1
1973:1
1974:1
1975:1
1976:1
1977:1
1978:1
1979:1
1980:1
1981:1
1982:1
1983:1
1984:1
1985:1
1986:1
1987:1
1988:1
1989:1
1990:1
1991:1
1992:1
1993:1
1994:1
1995:1
1996:1
1997:1
1998:1
1999:1
2000:1
2001:1
2002:1
-1
1960:1
1961:1
1962:1
1963:1
1964:1
1965:1
1966:1
1967:1
1968:1
1969:1
1970:1
1971:1
1972:1
1973:1
1974:1
1975:1
1976:1
1977:1
1978:1
1979:1
1980:1
1981:1
1982:1
1983:1
1984:1
1985:1
1986:1
1987:1
1988:1
1989:1
1990:1
1991:1
1992:1
1993:1
1994:1
1995:1
1996:1
1997:1
1998:1
1999:1
2000:1
2001:1
2002:1
% 対GDP比
% 対GDP比
図表8:アメリカの純資本流入
7
6
5
4
3
2
1
0
-2
-3
純資本流入
図表9:アメリカの項目別の純資本流入
5
4
3
2
1
0
-2
-3
-4
-5
直接投資
証券投資
30
その他投資
図表10:データの出典
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
変数名
RD
NS
NI
PS
GS
PI
GE
NIS
PIS
GIS
EX
IM
MM
TB
CAD
FOUT
FIN
RES
DIOUT
PIOUT
OIOUT
DIIN
PIIN
OIIN
FB
DIB
PIB
OIB
定義
対外債務の利払い
粗貯蓄
粗投資
民間粗貯蓄
政府粗貯蓄
民間粗投資
政府粗投資
貯蓄投資バランス
出典
ITA, Table1, SA
NIPA, Table5.1
NIPA, Table5.1
NIPA, Table5.1
NIPA, Table5.1
NIPA, Table5.1
NIPA, Table5.1
参照
- line 13 - line 30
line 1
line 18
line 2
line 11
line 19
line 20
No.3 - No.2
No.6 - No.4
No.7 - No.5
民間貯蓄投資バランス
政府貯蓄投資バランス
財・サービスの輸出
財・サービスの輸入
輸入+利払い
貿易収支
経常収支赤字
資本収支(資産)
資本収支(負債)
外貨準備増減
対外直接投資
対外証券投資
対外その他投資
対内直接投資
対内証券投資
対内その他投資
資本収支
直接投資収支
証券投資収支
その他投資収支
ITA, Table1, SA line 2
ITA, Table1, SA - line 19
No.11 + No.12 + No.1
No.11 + No.12
ITA,
ITA,
ITA,
ITA,
ITA,
ITA,
ITA,
ITA,
ITA,
ITA,
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
Table1, SA
- line 76
- line 40
line 55
line 41
- line 51
- line 52
- line 53 - line 54
line 64
line 65 + line 66
line 67 + line 68 + line 69
No.16
No.19
No.20
No.21
+
+
+
+
データ
ITA:International Transactions Accounts (Bereau of Economic Analysis)
NIPA:National Income and Production Account Tables (Bereau of Economic Analysis)
31
No.17
No.22
No.23
No.24
図表11:国内貯蓄・投資バランスから見た経常収支赤字の持続可能性
図表11.1:共和分検定の結果
共和分体系
Trace Trace95 Trace90 L-max L-max95
0.367 144.04 68.52 64.84 73.26 33.46
0.211 70.79 47.21 43.95 37.89 27.07
0.143 32.89 29.68 26.79 24.72 20.97
0.050
8.17 15.41 13.33
8.12 14.07
0.000
0.06
3.76
2.69
0.06
3.76
0.121 36.37 29.68 26.79 20.55 20.97
0.068 15.82 15.41 13.33 11.27 14.07
0.028
4.55
3.76
2.69
4.55
3.76
0.101 23.30 29.68 26.79 17.33 20.97
0.021
5.97 15.41 13.33
3.40 14.07
0.016
2.57
3.76
2.69
2.57
3.76
0.072 12.12 15.41 13.33 12.07 14.07
0.000
0.05
3.76
2.69
0.05
3.76
GDPで基準化した場合
0.216 73.78 68.52 64.84 41.66 33.46
0.097 32.13 47.21 43.95 17.44 27.07
0.051 14.69 29.68 26.79
8.96 20.97
0.027
5.72 15.41 13.33
4.71 14.07
0.006
1.01
3.76
2.69
1.01
3.76
0.183 47.71 29.68 26.79 34.65 20.97
0.070 13.06 15.41 13.33 12.48 14.07
0.003
0.58
3.76
2.69
0.58
3.76
0.080 25.13 29.68 26.79 14.19 20.97
0.045 10.94 15.41 13.33
7.93 14.07
0.018
3.01
3.76
2.69
3.01
3.76
0.132 27.07 15.41 13.33 24.18 14.07
0.017
2.89
3.76
2.69
2.89
3.76
ラグ Rank 固有値
RD,PI,GE,PS,GS
12
RD,NI,NS
11
RD,PIS,GIS
10
RD,NIS
11
RD,PI,GE,PS,GS
1
RD,NS,NI
1
RD,PIS,GIS
1
RD,NIS
1
0
1
2
3
4
0
1
2
0
1
2
0
1
0
1
2
3
4
0
1
2
0
1
2
0
1
L-max90
30.90
24.73
18.60
12.07
2.69
18.60
12.07
2.69
18.60
12.07
2.69
12.07
2.69
共和分ベクトル
1.000, -0.018, -0.099, 0.037, 0.006
1.000, 0.039, -0.460, 0.067, -0.020
1.000, -0.032, -0.151, 0.064, 0.045
1.000, 0.210, -0.208
1.000, 0.443, -0.403
1.000, 0.019, -0.014
30.90 1.000, -0.010, -0.031, 0.060, 0.032
24.73
18.60
12.07
2.69
18.60 1.000, 0.091, -0.070
12.07
2.69
18.60
12.07
2.69
12.07 1.000, 0.141
2.69
注1:ラグはベクトル自己回帰のラグの長さを表している。ここでは、赤池の情報量基準(AIC)を用いてラグの長さを決定している。
注2:Traceはトレース検定の検定統計量を表し、L-maxは最大固有値検定の検定統計量を表す。
注3:右端の尤度比検定は、各々の共和分ベクトルに課された線形制約が満たされるか否かの検定結果を示している。
32
LR p値
19.04 0.00
34.22
0.00
17.11
0.00
9.18
0.00
図表11.2:各変数の長期的関係からの除外の検定
共和分体系
RD,PI,GE,PS,GS
RD,NI,NS
RD,NIS
RD,PIS,GIS
RD,PI,GE,PS,GS
RD,NI,NS
RD,NIS
RD,PIS,GIS
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
3
3
7.81 29.32 17.11 25.58 34.91 14.07
3
0
0
GDPで基準化した場合
1
1
3.84 24.19
1.11
2.51 20.82 11.09
1
1
3.84 17.04 20.45 14.14
0
1
1
3.84 11.14 20.29
Rank 自由度
図表11.3:各変数の定常性の検定
共和分体系
RD,PI,GE,PS,GS
RD,NI,NS
RD,NIS
RD,PIS,GIS
RD,PI,GE,PS,GS
RD,NI,NS
RD,NIS
RD,PIS,GIS
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
3
2
5.99 10.01 18.03 18.50 18.15
4.73
3
0
0
GDPで基準化した場合
1
4
9.49 36.51 29.04 37.96 36.27 34.32
1
2
5.99 30.73 32.44 31.02
0
1
1
3.84 20.29 11.14
Rank 自由度
図表11.4:各変数の外生性の検定
共和分体系
RD,PI,GE,PS,GS
RD,NI,NS
RD,NIS
RD,PIS,GIS
RD,PI,GE,PS,GS
RD,NI,NS
RD,NIS
RD,PIS,GIS
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
3
3
7.81
2.73 21.82
6.17 28.92 52.72
3
0
0
GDPで基準化した場合
1
1
3.84 17.00
0.65
0.79 16.71
4.27
1
1
3.84 10.35
0.88
3.04
0
1
1
3.84
3.84 16.34
Rank 自由度
33
図表12:貿易フローから見た経常収支赤字の持続可能性
図表12.1:共和分検定の結果
共和分体系
ラグ Rank 固有値
RD,IM,EX
4
MM,EX
10
RD,TB
3
RD,IM,EX
2
MM,EX
4
RD,TB
1
0
1
2
0
1
0
1
0.126
0.038
0.003
0.221
0.009
0.048
0.015
0
1
2
0
1
0
1
0.051
0.013
0.000
0.031
0.000
0.068
0.000
Trace Trace95 Trace90 L-max L-max95
29.52 29.68 26.79 22.60 20.97
6.92 15.41 13.33
6.43 14.07
0.49
3.76
2.69
0.49
3.76
41.81 15.41 13.33 40.41 14.07
1.40
3.76
2.69
1.40
3.76
10.80 15.41 13.33
8.33 14.07
2.47
3.76
2.69
2.47
3.76
GDPで基準化した場合
11.27 29.68 26.79
8.97 20.97
2.30 15.41 13.33
2.30 14.07
0.00
3.76
2.69
0.00
3.76
5.39 15.41 13.33
5.31 14.07
0.07
3.76
2.69
0.07
3.76
12.13 15.41 13.33 12.10 14.07
0.03
3.76
2.69
0.03
3.76
共和分ベクトル
18.60
12.07
2.69
12.07 1.000, -1.564
2.69
12.07
2.69
L-max90
LR
38.11
p値
0.00
18.60
12.07
2.69
12.07
2.69
12.07
2.69
注1:ラグはベクトル自己回帰のラグの長さを表している。ここでは、赤池の情報量基準(AIC)を用いてラグの長さを決定している。
注2:Traceはトレース検定の検定統計量を表し、L-maxは最大固有値検定の検定統計量を表す。
注3:右端の尤度比検定は、各々の共和分ベクトルに課された線形制約が満たされるか否かの検定結果を示している。
図表12.2:各変数の長期的関係からの除外の検定
共和分体系
RD,IM,EX
MM,EX
RD,TB
RD,IM,EX
MM,EX
RD,TB
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
0
1
1
3.84 14.75 24.61
0
GDPで基準化した場合
0
0
0
Rank 自由度
図表12.3:各変数の定常性の検定
共和分体系
RD,IM,EX
MM,EX
RD,TB
RD,IM,EX
MM,EX
RD,TB
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
0
1
1
3.84 24.61 14.75
0
GDPで基準化した場合
0
0
0
Rank 自由度
図表12.4:各変数の外生性の検定
共和分体系
RD,IM,EX
MM,EX
RD,TB
RD,IM,EX
MM,EX
RD,TB
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
0
1
1
3.84 35.60
3.29
0
GDPで基準化した場合
0
0
0
Rank 自由度
34
図表12.5:経常収支赤字に関する単位根検定
変数
CAD
CAD
ラグ 自由度 ドリフト トレンド
タイプ
t値
95%点 F値
165 YES
YES
t(rho-1)/tao 9.133 -3.41 53.405
0
166 Trend=0 test
-0.168
*
*
Testing for constant=0
GDPで基準化した場合
165 YES
YES
t(rho-1)/tao 2.601 -3.41 8.473
0
166 Trend=0 test
0.778
Testing for constant=0
注1:ADF検定のラグの長さは赤池の情報量基準(AIC)によって決定している。
35
ψ
95%点
結論
0.000 53.405
6.25
Series contains a U.R.
0.867
with drift
41.432
4.68
有意水準
0.000
0.437
8.473
6.25
17.633
4.68
Series contains a U.R.
with drift
図表13:国際資本フローから見た経常収支赤字の持続可能性
図表13.1:共和分検定の結果
共和分体系
ラグ Rank 固有値
FOUT,FIN,RES
12
FOUT,FIN
11
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
12
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
12
DIB,PIB,OIB,RES
12
DIB,PIB,OIB
12
FB,RES
12
FOUT,FIN,RES
3
FOUT,FIN
5
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
12
12
DIB,PIB,OIB,RES
4
DIB,PIB,OIB
12
FB,RES
4
0
1
2
0
1
0
1
2
3
4
5
6
0
1
2
3
4
5
0
1
2
3
0
1
2
0
1
0.289
0.122
0.008
0.172
0.001
0.476
0.415
0.358
0.202
0.164
0.077
0.029
0.500
0.371
0.228
0.160
0.045
0.040
0.371
0.221
0.129
0.000
0.365
0.160
0.003
0.152
0.067
0 0.158
1 0.068
2 0.014
0 0.067
1 0.013
0 0.293
1 0.245
2 0.193
3 0.137
4 0.109
5 0.054
6 0.000
0 0.286
1 0.240
2 0.129
3 0.114
4 0.052
5 0.000
0 0.146
1 0.109
2 0.064
3 0.011
0 0.174
1 0.074
2 0.003
0 0.1325
1 0.0062
Trace Trace95 Trace90 L-max L-max95
76.55 29.68 26.79 54.56 20.97
21.98 15.41 13.33 20.73 14.07
1.25
3.76
2.69
1.25
3.76
30.53 15.41 13.33 30.42 14.07
0.11
3.76
2.69
0.11
3.76
342.37 124.24 118.50 103.31 45.28
239.06 94.15 89.48 85.75 39.37
153.30 68.52 64.84 70.88 33.46
82.43 47.21 43.95 36.18 27.07
46.25 29.68 26.79 28.73 20.97
17.52 15.41 13.33 12.77 14.07
4.75
3.76
2.69
4.75
3.76
267.98 94.15 89.48 110.74 39.37
157.24 68.52 64.84 74.15 33.46
83.09 47.21 43.95 41.40 27.07
41.69 29.68 26.79 27.86 20.97
13.83 15.41 13.33
7.39 14.07
6.44
3.76
2.69
6.44
3.76
136.36 47.21 43.95 74.22 27.07
62.13 29.68 26.79 40.05 20.97
22.08 15.41 13.33 22.07 14.07
0.01
3.76
2.69
0.01
3.76
101.14 29.68 26.79 72.70 20.97
28.44 15.41 13.33 27.95 14.07
0.48
3.76
2.69
0.48
3.76
37.52 15.41 13.33 26.35 14.07
11.17
3.76
2.69 11.17
3.76
GDPで基準化した場合
43.28 29.68 26.79 29.09 20.97
14.19 15.41 13.33 11.88 14.07
2.31
3.76
2.69
2.31
3.76
13.94 15.41 13.33 11.67 14.07
2.27
3.76
2.69
2.27
3.76
185.70 124.24 118.50 55.57 45.28
130.13 94.15 89.48 45.00 39.37
85.13 68.52 64.84 34.28 33.46
50.86 47.21 43.95 23.50 27.07
27.35 29.68 26.79 18.45 20.97
8.90 15.41 13.33
8.90 14.07
0.00
3.76
2.69
0.00
3.76
147.85 94.15 89.48 53.91 39.37
93.94 68.52 64.84 43.95 33.46
49.98 47.21 43.95 22.16 27.07
27.83 29.68 26.79 19.36 20.97
8.47 15.41 13.33
8.47 14.07
0.00
3.76
2.69
0.00
3.76
58.89 47.21 43.95 26.50 27.07
32.40 29.68 26.79 19.44 20.97
12.96 15.41 13.33 11.18 14.07
1.78
3.76
2.69
1.78
3.76
43.27 29.68 26.79 30.49 20.97
12.78 15.41 13.33 12.33 14.07
0.45
3.76
2.69
0.45
3.76
24.92 15.41 13.33 23.88 14.07
1.04
3.76
2.69
1.04
3.76
L-max90
18.60
12.07
2.69
12.07
2.69
42.32
36.76
30.90
24.73
18.60
12.07
2.69
36.76
30.90
24.73
18.60
12.07
2.69
24.73
18.60
12.07
2.69
18.60
12.07
2.69
12.07
2.69
18.60
12.07
2.69
12.07
2.69
42.32
36.76
30.90
24.73
18.60
12.07
2.69
36.76
30.90
24.73
18.60
12.07
2.69
24.73
18.60
12.07
2.69
18.60
12.07
2.69
12.07
2.69
共和分ベクトル
1.000, 0.969, 89.650
1.000, -5.277, 208.413
LR p値
10.34 0.00
1.000, 6.924
10.45
1.000, 2.878, -5.993, -40.647, 30.996, 1.047, -113.662
1.000, 0.350, -0.554, -2.096, 0.461, 0.418, 0.229
1.000, -1.530, 0.752, -2.096, 2.162, 0.723, 10.323
1.000, -1.633, -0.317, 1.673, -2.471, 1.046, 19.289
1.000, -0.303, -0.134, -0.932, 0.775, -0.309, -2.897
1.000, 21.419, 6.612, -55.024, 27.686, -14.426, 51.212
1.000, -0.465, 1.129, -2.301, 0.722, -0.475, -0.178
1.000,
1.000,
1.000,
1.000,
0.238, -0.493, -2.422, 0.852, 0.429 11.78
-0.038, -0.305, -0.042, -0.622, -0.036
-0.330, 0.918, -2.707, 3.841, -0.186
-0.921, 0.199, -0.973, 1.105, -0.003
0.00
1.000, -0.212, -0.020, 0.705
1.000, -5.154, 6.920, -30.778
1.000, -0.398, 0.101, 22.957
21.07
0.00
1.000, -0.221, -0.027
1.000, -2.487, 3.746
27.47
0.00
1.000, -5.761, -165.932
26.31
0.00
1.000, -0.388, 0.105, 0.930, -1.034, 0.228, 2.680
17.00
0.00
1.000, 0.085, -0.649, -0.631, -0.327, 0.25 14.74
1.000, 7.922, -13.260, -29.350, 11.682, 6.303
1.000, 0.786, -0.855, -2.092, 0.473, -0.839
0.00
1.000, 0.364, -0.727, 9.089
1.000, -1.915, 3.922, 10.648
16.23
0.00
1.000, -0.078, -0.570
26.61
0.00
1.000, 78.212
22.84
0.00
1.000, 25.448
1.000, -25.666
1.000, 0.703, -1.561, -2.333, 0.386, 0.208, -3.897
1.000, -1.111, 1.639, 4.098, -1.816, -2.236, -9.842
1.000, -1.476, 0.329, -0.553, 1.494, 0.349, 0.237
注1:ラグはベクトル自己回帰のラグの長さを表している。ここでは、赤池の情報量基準(AIC)を用いてラグの長さを決定している。
注2:Traceはトレース検定の検定統計量を表し、L-maxは最大固有値検定の検定統計量を表す。
注3:右端の尤度比検定は、各々の共和分ベクトルに課された線形制約が満たされるか否かの検定結果を示している。
36
0.00
図表13.2:各変数の長期的関係からの除外の検定
共和分体系
FOUT,FIN,RES
FIN,FOUT
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
DIB,PIB,OIB,RES
DIB,PIB,OIB
FB,RES
FOUT,FIN,RES
FIN,FOUT
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
DIB,PIB,OIB,RES
DIB,PIB,OIB
FB,RES
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
2
2
5.99
1.13
1.28 36.55
1
1
3.84
0.06
1.21
7
4
4
9.49 53.23 25.36 48.64 56.45 34.17 52.68
3
3
7.81 70.93 27.93 28.29 25.00
2
2
5.99 71.08 20.28 19.98
2
GDPで基準化した場合
1
1
3.84
0.08
0.80 17.20
0
4
4
9.49 17.55 15.15 24.92 18.19 12.10 15.51 24.65
3
3
7.81 18.18
8.52 25.99 16.52
8.99 19.36
2
2
5.99
1.74
3.10
9.17 13.80
1
1
3.84
8.53
0.11
8.55
1
1
3.84
0.39 22.65
Rank 自由度
図表13.3:各変数の定常性の検定
共和分体系
FOUT,FIN,RES
FIN,FOUT
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
DIB,PIB,OIB,RES
DIB,PIB,OIB
FB,RES
FOUT,FIN,RES
FIN,FOUT
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
DIB,PIB,OIB,RES
DIB,PIB,OIB
FB,RES
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
2
1
3.84
1.26
0.08
0.38
1
1
3.84
1.21
0.06
7
4
2
5.99
0.85
0.22 10.98
2.13
3.51 12.06
3
1
3.84
6.17 18.30 17.30
0.04
2
1
3.84
8.18 19.97 11.00
2
GDPで基準化した場合
1
2
5.99 22.28 17.70
1.27
0
4
3
7.81 18.54 21.74 16.52 19.14 17.89
9.96
5.12
3
3
7.81
17.3 20.23 15.21 18.06 16.43
7.4
2
2
5.99
9.10 15.41
5.12
1.93
1
2
5.99 11.71 25.40 17.79
1
1
3.84 22.65
0.39
Rank 自由度
図表13.4:各変数の外生性の検定
共和分体系
FOUT,FIN,RES
FIN,FOUT
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
DIB,PIB,OIB,RES
DIB,PIB,OIB
FB,RES
FOUT,FIN,RES
FIN,FOUT
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN,RES
DIOUT,PIOUT,OIOUT,DIIN,PIIN,OIIN
DIB,PIB,OIB,RES
DIB,PIB,OIB
FB,RES
95%点 変数1 変数2 変数3 変数4 変数5 変数6 変数7
2
2
5.99 33.00 11.32 17.16
1
1
3.84
1.81
5.41
7
4
4
9.49 36.74 43.51 24.35 32.59 37.87 57.17
3
3
7.81 68.38 14.66 38.69 24.25
2
2
5.99 71.20 13.31 28.20
2
GDPで基準化した場合
1
1
3.84
0.21
0.01 17.21
0
4
4
9.49 26.83
6.14
8.11
8.48 12.44 13.71 22.03
3
3
7.81
25.2
4.8
2.91
7.98 10.28 12.89
2
2
5.99
0.99
2.34
9.77 13.21
1
1
3.84
10.7
0.38
9.77
1
1
3.84
0.05 22.11
Rank 自由度
37
図表13.5:資本収支に関する単位根検定
変数
FB
FB
ラグ 自由度 ドリフト トレンド
タイプ
t値
95%点 F値
144 YES
YES
t(rho-1)/tao 1.829 -3.41 4.693
12
145 YES
NO
t(rho-1)/mu 3.066 -2.86 6.030
146 Constant=0 test
1.586
GDPで基準化した場合
164 YES
YES
t(rho-1)/tao -3.069 -3.41 5.109
2
165 YES
NO
t(rho-1)/mu -1.369 -2.86 1.269
166 NO
NO
t(rho-1)
-0.843 -1.95
有意水準
0.011
0.003
0.113
0.007
0.284
ψ
95%点
結論
4.693
6.25
Series contains a U.R.
6.030
4.59 with zero drift
5.109
1.269
6.25
Series contains a U.R.
4.59 with zero drift
図表14:経常収支赤字のファイナンス
図表14.1:経常収支と資本フローの共和分検定
共和分体系
ラグ Rank 固有値
CAD,FB
6
CAD,DIB,PIB,OIB
12
CAD,FB
1
CAD,DIB,PIB,OIB
12
CAD,DIB,PIB
11
0
1
0
1
2
3
0.122
0.038
0.444
0.220
0.078
0.002
0
1
0
1
2
3
0
1
2
0.532
0.000
0.264
0.092
0.046
0.010
0.103
0.045
0.001
Trace Trace95 Trace90 L-max
21.59 28.00 15.41 13.33
6.41
6.41
3.76
2.69
93.94 146.85 47.21 43.95
39.64 52.92 29.68 26.79
13.01 13.27 15.41 13.33
0.27
0.27
3.76
2.69
GDPで基準化した場合
129.91 129.91 15.41 13.33
0.01
0.01
3.76
2.69
49.11 73.68 47.21 43.95
15.40 24.57 29.68 26.79
7.55
9.17 15.41 13.33
1.62
1.62
3.76
2.69
17.43 24.95 29.68 26.79
7.44
7.53 15.41 13.33
0.08
0.08
3.76
2.69
L-max95 L-max90
1.000,
1.000,
1.000,
1.000,
共和分ベクトル
-1.000
1.846
7.974, -1.179, -3.907
3.767, -5.590, 3.058
14.07
3.76
27.07
20.97
14.07
3.76
12.07
2.69
24.73
18.60
12.07
2.69
14.07
3.76
27.07
20.97
14.07
3.76
20.97
14.07
3.76
12.07 1.000, -1.052
2.69
24.73 1.000, -2.330, -1.366, 0.279
18.60
12.07
2.69
18.60
12.07
2.69
注1:ラグはベクトル自己回帰のラグの長さを表している。ここでは、赤池の情報量基準(AIC)を用いてラグの長さを決定している。
注2:Traceはトレース検定の検定統計量を表し、L-maxは最大固有値検定の検定統計量を表す。
注3:右端の尤度比検定は、各々の共和分ベクトルに課された線形制約が満たされるか否かの検定結果を示している。
38
図表14.2:共和分関係における各変数の定常性の検定
共和分体系
CAD,DIB,PIB,OIB
CAD,DIB,PIB,OIB
CAD,DIB,PIB
95%点 CAD
2
2
5.99
1.04
GDPで基準化した場合
1
1
3.84
9.95
0
Rank 自由度
DIB
37.93
PIB
5.07
OIB
7.44
16.43
8.08
0.75
DIB
41.67
PIB
20.61
OIB
19.52
24.19
7.12
5.15
DIB
75.40
PIB
8.42
OIB
49.04
22.67
6.25
19.88
図表14.3:共和分関係における変数の除外の検定
共和分体系
CAD,DIB,PIB,OIB
CAD,DIB,PIB,OIB
CAD,DIB,PIB
95%点 CAD
2
2
5.99
4.48
GDPで基準化した場合
2
2
5.99
7.83
0
Rank 自由度
図表14.4:共和分関係における外生性の検定
共和分体系
CAD,DIB,PIB,OIB
CAD,DIB,PIB,OIB
CAD,DIB,PIB
95%点 CAD
2
2
5.99 20.38
GDPで基準化した場合
2
2
5.99 12.35
0
Rank 自由度
39