圧力計に関するJIS規格 長野計器(株) 阿部 正一 1.圧力計に関するJIS規格 2.JIS B 7505 アネロイド型圧力計 3.JIS B7610 重錘形圧力天びん 4.JIS B7547 デジタル圧力計の特性評価 方法及び校正方法 5.まとめ 1.圧力計に関するJIS規格 1) JIS B 7505 アネロイド型圧力計 アネロイド型圧力計の規格 1部~3部までの構成 2) JIS B7610 重錘形圧力天びん 0.1MPa~500MPaの圧力標準器として使用される重錘形圧 力天びんの規格 1部~3部までの構成 3) JIS B 7547 デジタル圧力計の特性評価方法及び校正方法 圧力標準器として使用されるデジタル圧力計の評価方法の 規格 2.JIS B 7505 アネロイド型圧力計 1)規格の構成 ①アネロイド型圧力計とは 液体を使用しない圧力計の総称、アネロイド型圧力計の感圧 素子にはブルドン管のほかベローズ、ダイアフラム等がある ②第1部 ブルドン管圧力計(規格制定:2007年) ブルドン管圧力計の構造、精度等級などの技術的要求事 項、試験方法を定めたもの ③第2部 取引又は証明用-機械式(規格制定:2008年) 計量法特定計量器検定検査規則(検則)をJIS化したものの内、 機械式の技術的要求事項、試験方法を定めたもの ④第3部 取引又は証明用-電気式(規格制定:2008年) 検則をJIS化したものの内、電気式の技術的要求事項、試験 方法を定めたもの 2.JIS B 7505 第1部:ブルドン管圧力計 2) 第1部のポイント ①ブルドン管圧力計の技術基準、評価方法を規定 ブルドン管圧力計にJISマークを表示するためには、第1 部の要求事項を満たすことが必要 ②元になった規格 規格内容の国際整合を図るため、OIML R 101の内容をで きるだけ取り込んで制定 2.JIS B 7505 第1部:ブルドン管圧力計 3)規格の内容 ①精度等級 0.6%、1%、1.6%、2.5%、4%級の5等級に分類 ②定格条件 ・JIS C1804 環境区分C、クラスC1 ・周囲温度及び圧力媒体温度:-5℃~45℃ ・湿度:5%~95%(氷結なし) ・飛まつ(雨、雪等)なし、結露あり ・常用圧力:最大圧力の3/4以下(最大圧力が100MPa以上は 2/3以下) ・変動圧:最大圧力の2/3以下(最大圧力が100MPa以上は1/2 以下) 2.JIS B 7505 第1部:ブルドン管圧力計 ③特殊な用途 蒸気用、 耐熱用、耐振用、蒸気・耐振用、耐熱・耐振用、耐 食用、密閉形が規定されている ・蒸気用:一時的な高温に耐える、記号M ・耐熱用:最高環境温度80℃、記号H ・耐振用:振動、脈動で指針の振れが一般条件を越える環境 で使用、記号V ・蒸気・耐振用:蒸気用と耐振用の環境で使用可、記号MV ・耐熱・耐振用:耐熱用と耐振用の環境で使用可、記号HV ・耐食用:腐食性圧力媒体に使用、材質は当事者間で協議 ・密閉形:飛まつに対する保護をしたもの、保護の程度は当事 者間で協議 2.JIS B 7505 第1部:ブルドン管圧力計 ④大きさ 目盛板の外形寸法で表す 50mm、60mm、75mm、100mm、150mm、200mm ⑤試験 ・器差試験(器差、ヒステリシス差は最大許容誤差以内) ・漏えい試験(圧力降下が1%F.S.以内) ・繰り返し試験(最大許容誤差の1/3以下) ・静圧試験(110%F.S.又は105%F.S.を印加し器差試験を満足) ・耐久試験(15000回~1000回の脈動圧を加え器差試験を満足) ・耐振試験(振幅1mm又は加速度6.9m/s2で加振し器差試験を 満足) ・耐熱試験(100℃で器差試験、最大試験圧力は最大圧力の2/3) 2.JIS B 7505 第2部:取引又は証明用-機械式 第3部:取引又は証明用-電気式 4)第2部、第3部のポイント ①計量法の検則の内容を規格化 将来検則のJIS引用のため制定 ②計量法の検則の構造及び性能の技術上の基準及び試験方 法を定めたもの ③機械式と電気式では、規格内容が異なり、規格を分けた 第2部は機械式、第3部は電気式 ④計ることができる圧力:0.1MPa~200.2MPa 2.JIS B 7505 第2部及び第3部 5)規格の内容 ①構造に関しては第1部と同等 ②性能試験 ・一般条件:1部とほぼ同じ ・最大許容誤差:第1部の1.6級と同一 ・静圧試験、漏洩試験、耐久試験:1部と同じ ・耐振試験:規定していない。 ・温度試験:機械式は規定していない。23℃±5℃以外で試験をす る場合は、温度補正可 電気式はー10℃、40℃においても最大許容誤差内であることを 要求 ・電気式:電源電圧変化、静電気、バーストノイズ、瞬間的な電源 電圧変動、放射電磁界イミュニティに対する要求あり 3.JIS B 7610 重錘形圧力天びん 規格の内容 重錘形圧力天びん(従来、重錘形圧力計、重錘形圧力基準器、 デッドウエイトテスター等といわれていた)の技術基準、試験 方法、使用方法を規定した。2008年制定 元になった規格はOIML R 110 1)第1部 ①計量上の要求事項 ・測定範囲の区分:最大圧力の10%~100%は主測定範囲、 10%未満は補助測定範囲(最大許容誤差が異なる) ・精度等級と最大許容誤差:0.01級~0.2級の5等級(1,2,5) ・不確かさの分類:有効断面積、重錘質量、その他使用上の 不確かさ、それぞれの不確かさの二乗の比率は50:40:10 3.JIS B 7610 重錘形圧力天びん ・ピストン自由回転時間:精度等級、最大圧力によって2分~6 分(最大圧力の20%での圧力における自由回転時間) ・降下速度:圧力媒体、精度等級によって0.4mm~3mm ・重錘質量の調整:精度等級0.01、0.02級は0.0015%、0.05級 は0.005%、0.1、0,2級は0.015% ・識別限界:主測定範囲において最大許容誤差の10%以下 ・圧力の計算方法:換算式、重錘表示圧力の和 ②技術上の要求事項 ・環境条件:10℃~35℃ ・温度検出:温度計を取り付け又は取付が可能のこと ・圧力基準高さ:表示又は取説による明確化 ・ピストン高さ位置:検出手段があること 3.JIS B 7610 重錘形圧力天びん ・水準調整:精度等級0.01級は1.5mrad、他は3mrad以内に調 整可能 ・重錘皿とピストンとの相互位置(直角度):精度等級0.01級は 1.5mrad、他は3mrad以内 ・重錘の要件:質量は1,2,5の圧力に対応、0.02級までは非磁性 ・ピストンシリンダの材料:有効断面積の長期安定性維持可能 ③表示 ・重錘形圧力天びん:製造番号及び形式記号、製造年月、精度 等級、測定範囲 ・ピストンシリンダ:固有の識別番号、質量調整の場合は圧力 ・重錘:固有の識別番号、質量調整の場合はピストンシリンダ 番号及び圧力 ④操作手順書、試験報告書(圧力計算式、不確かさを記載)を 付属すること 3.JIS B 7610 重錘形圧力天びん 2)第2部 重錘形圧力天びんの試験方法、試験結果の評価方法を規定 ①計量上の要求事項、技術上の要求事項の試験方法(回転時 間、降下速度、重錘質量、等) ②有効断面積の評価方法 ・標準器の要件:0.01級、0.02級は試験全体の不確かさが最大許 容誤差の1/2、その他は、2等級以上高い精度等級のもの ・試験ポイント:0.01級、0.02級は10点、その他は6点 ・有効断面積の計算方法:重錘質量、校正圧力等から算出 ・不確かさの評価:有効断面積の標準偏差 ③質量の計算方法:有効断面積、重力加速度等から算出 ④有効断面積の圧力係数の計算方法:各圧力による有効断 面積から算出(形状、材料特性からの算出式は信頼性が低い) 3.JIS B 7610 重錘形圧力天びん 3)第3部 重錘形圧力天びんの使用方法、使用時の不確かさの評価方 法、圧力計の校正方法について規定。重錘形圧力天びんを 有効に使用するための規格として制定 ①使用上必要な使用環境、必要な設備要件、準備・動作確認、 保管・管理 ②圧力計を校正するときに必要な要素 ・記録:校正場所、条件の情報、被校正器、標準器の情報等 ・圧力の計算方法:換算式、重錘表示圧力の和(重力加速度 補正要) ・不確かさの評価方法:有効断面積、力、高さ、その他 ③圧力計の校正方法について ④重錘形圧力天びんを使用して圧力計を校正するユーザに は、是非理解して欲しい内容 4.JIS B 7547 デジタル圧力計の 特性評価方法及び校正方法 1)規格の内容 デジタル圧力計の特性評価方法と校正方法を一連の行為とし て規定し、使用時の測定結果の信頼性の評価のために、特性 評価結果と校正結果の利用方法を規定している 規格制定:2008年 ①装置 デジタル圧力計を評価するときの装置 装置の構成、設置及び点検、使用圧力媒体、試験・校正の 準備について規定 4.JIS B 7547 デジタル圧力計の 特性評価方法及び校正方法 ②入出力特性試験 ・校正作業から入出力特性を求める方法:測定点は特性を評 価する上で十分な点数とし、3往復実施 ・デジタル圧力計の特性:表示値の偏差、校正曲線、直線性、 測定値のばらつき(標準偏差)、繰り返し性 ・分解能、表示の安定性、ライン圧力の影響、経時変化 ③環境感受性試験 デジタル圧力計の使用環境の影響を評価 ・電源電圧:基準電圧の±10%を変動させ評価 ・電気的干渉:コモンモード(商用電源周波数で250v)、シリー ズモード(商用電源周波数で1v)で評価 ・接地:出力端子の設置の有無による出力変化 ・外部磁界:商用電源の周波数の交流及び直流で400A/m ・周囲温度:使用温度の下限、上限を含む温度で実施 4.JIS B 7547 デジタル圧力計の 特性評価方法及び校正方法 ③環境感受性試験 ・湿度:最高使用温度90%RH と校正環境との変化量を評価 ・姿勢:前後左右への3度の傾斜による変化量を評価 ・衝撃:JIS C60068-2-27,31,32による(例50m/s2、3回以上等) ・振動:JIS C60068-2-6,64による(例10Hz~55Hz、 50m/s2 ) ④オーバーレンジ:許容オーバレンジ圧力を印加、レンジの下 限及びスパンの変化を評価 ⑤校正 ・標準器:被校正器の管理精度の1/3以下の不確かさ(測定シス テムを含む) ・校正環境:19℃~25℃、30%RH~80%RH ・校正手順:測定点数9~11、圧力保持時間は5分以上推奨、公 称圧力と測定圧力は3%以内 ・記録:使用機器、被測定器の公称精度、周囲温度等 4.JIS B 7547 デジタル圧力計の 特性評価方法及び校正方法 ⑥被校正器が示す圧力の不確かさ ・不確かさの要因 ⑦不確かさの定量方法 ・印加した圧力の不確かさ:標準器、ヘッド差、使用環境、経時変 化等(標準器がデジタル圧力計の場合下記内容も考慮) ・測定値のばらつきによる不確かさ:測定値の標準偏差 ・ヒステリシス差による不確かさ ・表示分解能又は安定性による不確かさ:いずれか大きい方 ・温度特性による不確かさ:温度特性の表示方法により異なる ・姿勢特性に起因する不確かさ ・供給電源電圧変動による不確かさ ・直線性に起因する不確かさ:公称値に換算する場合考慮 ・ライン圧力の影響による不確かさ:差圧の場合 ・不確かさの合成:各要因の2乗和平方根 4.JIS B 7547 デジタル圧力計の 特性評価方法及び校正方法 ⑧不確かさを含む校正結果の表現方法 ・校正値 各校正圧力点に、その点における偏差の平均値を加算 必要に応じ校正圧力値又は表示値を公称値に換算 ・不確かさ 包含係数k=2として拡張不確かさを算出 ISO/IEC Guide 98-3 の附属書Gを参照 5.まとめ 1)JIS B 7505 アネロイド型圧力計 ①アネロイド型圧力計の JISマーク表示制度の基本となる規格 ②特定計量器の検定制度の規格 ③圧力計メーカが主に利用する規格 ④圧力計の仕様、技術基準はユーザが、圧力計を使用する場 合に参考になる。使用環境、測定範囲等の参考にして欲しい 2)JIS B 7610 重錘形圧力天びん ①圧力標準器として多く使用されている重錘形圧力天びんの構 造、性能、評価方法、使用方法に関する規格 ②ユーザが圧力計の校正に用いる標準器として重錘形圧力天 びんを使用する場合に、利用して欲しい 5.まとめ 3)JIS B 7547 デジタル圧力計の特性評価方法及び校正方法 ①デジタル圧力計の特性評価と校正結果の不確かさの評価方 法に関する規格 ②デジタル圧力計を校正する場合、又はデジタル圧力計で、圧 力を測定する場合の不確かさの評価に使用して欲しい。機械 式圧力計の校正においても共通事項が多い 4)これらの規格を理解して、有効に活用して安全で、信頼性を 確保した圧力計の校正、圧力計測を行って欲しい
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