博報堂生活綜研(上海)、北京にて昨年に続き研究成果を発表

2014 年 7 月 18 日
博報堂生活綜研(上海)、北京にて昨年に続き研究成果を発表
-「『信蜂(シンホウ)』、中国における新しい情報伝播者の誕生」を発表博報堂生活綜研(上海)は、中国伝媒大学広告学院と共同研究を行い、その結果を 7 月 18 日、北京において「生
活者動察 2014:信蜂」として発表いたしました。
中国において新しい情報伝播者が誕生しています。中国の生活者は、日米と比べ、友達を重要な情報源として
います。彼らは新鮮で有益な情報を友達から収集するためにオンライン・オフラインを問わず飛び回り、得た情報を
日常的に、知人の集合体である「圏子*1」と共有を繰り返していることがわかりました。こうした生活者が、情報という
蜜を求めて飛び回り、集めた蜜を自分の巣に持ち帰る蜜蜂に似ているところから、中国語で情報を意味する「信息」
の「信」を使って「信蜂(シンホウ)」と命名したものです。
本共同研究では、博報堂オリジナルのデータベース Global HABIT*2 や、博報堂生活綜研(上海)が独自考案した、
チャット式 MROC*3 などを活用、中国の生活者を対象とした定量調査・定性調査の両面からアプローチし、日米の生
活者との比較も行いました。「信蜂」を特徴づける研究結果は以下のようなものです。
・「新商品・サービスの情報」に関し、中国の生活者は、日米と比較すると、より「友達」を情報源とする傾向が見られ
ました。また、友達から得た情報を、ソーシャルメディア等で、さらに自身の「圏子」と共有する傾向が見られました。
・「新商品・サービスの情報の発信・受信の頻度」では、中国の生活者は、日米と比較して、より高頻度での受発信
を行っていることが判りました。
「生活者動察」は、博報堂生活綜研(上海)と中国伝媒大学広告学院による共同研究プロジェクトで、生活者の新
しい行動や欲求の洞察を行い、研究成果の発表を行っています。今回の発表は、2013 年の「創漩(ソウセン)」に続
く、二回目の発表になります。7 月 18 日の発表会は中国や日本の企業のマーケティング担当者や経営層、マスコミ
各社など、200 名を超える方々を対象に実施いたしました。なお、発表は、博報堂生活綜研(上海)の鐘鳴首席研
究員が行いました。
今後も博報堂生活綜研(上海)は、中国伝媒大学広告学院とのプロジェクトを継続して進め、独自の視点で生活者
を見つめ、新しい角度からの洞察を提言していきます。
*1
「圏子」…中国社会において、「家族」や「友達」、「同僚」などの共通の生活背景や志向などで結ばれる人たちの集まり。
Global HABIT は、博報堂 研究開発局が 2000 年から世界の主要 35 都市で毎年実施しているシングル・ソース調査及びデータベ
ースです。市場の成長を後押しする購買層である中・上位収入層に焦点を当てた調査で、グローバル・マーケティングに役立つデータ
ソースです。
*3
チャット式 MROC 調査は、MROC = Marketing Research Online Community と呼ばれるオンラインコミュニティ上で生活者の交流の
観察・傾聴による調査手法を、インスタントメッセンジャーアプリを活用して行う調査手法です。
*2
〈参考資料 1〉
■ 中国と日・米の情報の受発信の違い
日本やアメリカの生活者は、新商品やサービスに関する情報を、TV を始めとするマスメディアや、誰でも見られるよ
うなインターネットから得て、インターネットを通じて幅広く発信しています。一方で、中国では日本やアメリカに比べ
て友達からの情報入手が多く、また発信においてもアクセスする人を限定しないオープンなインターネットメディアよ
りも、微信や QQ などを通じた自分の友達に向けた情報発信が多いと言えます。つまり、友達から情報を得て友達に
情報を共有する、そんな中国ならではの特徴が見てとれます。
〈参考資料 2〉
■ 各国の「高受信・高発信者」の比率
「新商品・サービス情報の発信頻度/受信頻度」を見ると、「週 2 回以上発信・週 2 回以上受信」という「高発信・高
受信」の生活者は、中国では全体の 55%以上となりました。同じ数字で比較すると、アメリカは 44%、日本はたったの
10%。日本で言えば、逆に「低発信・低受信」の生活者が全体の約 6 割を占めています。デジタル先進国と言われ
る日本でも、生活者間では、少なくとも「新しい商品やサービス」についての情報はそれほど活発に受発信されてい
るわけではない、ということが分かります。
〈参考資料 3〉
■ 中国の「高受信・高発信者」の行動概念図
中国では、ある「圏子」の外、つまり
テレビ、新聞、雑誌、インターネット、
リアル店舗、知人や友人の口コミな
どの様々なメディアから、多くの情
報伝播者が有益な情報を探し出し、
それを「圏子」に持ち帰り、その中で
共有している様子がイメージできま
す。
それは、それぞれの「圏子」が、まる
で生活者たちの「巣」のように機能し
ており、多くの情報伝播者がその
「巣」の中の生活を充実させるため
に蜂のように飛び回り、外から価値
のある情報を持ち帰ってきているよ
うに見えます。
■ 中国における新しい情報伝播者たち:「信蜂(シンホウ)」
博報堂生活綜研(上海)は、この中国特有
の情報伝播者たちを「信蜂(シンホウ)」と捉
えました。
それは、「我先に新しい情報をキャッチす
るために飛び回り、常にそれらを『圏子』の
中で共有し合うことによって相互に利益を
享受し合う、多くの生活者たち」です。
〈参考資料 4〉
■ 「信蜂」の誕生の経緯
「信蜂」の誕生は、元々は、グローバルで起きた「ソーシャルメディアの浸透」が、人々を「発信」に駆り立てた、という
経緯があります。この点は、どの国でも同様のことです。ですが、その現象が、中国特有の文化である「圏子」に作用
して、「圏子」内のコミュニケーションが活性化し、更に、共通の関心や環境でつながる、多様な“ライト「圏子」”が生
まれました。この「圏子」内コミュニケーションの活性化と、多様な“ライト「圏子」”の出現により、生活者間の情報交
流の頻度と量が増大化し、その結果として「信蜂」が生まれた、と整理できます。
〈参考資料 5〉
■ 「信蜂」の情報伝播行動
「信蜂」の情報伝播行動は、以下の 3 つのキーワードで捉えられます。
1. 「相濡以墨」: 自分と「圏子」のつながりを固め、共存する潤いの場所を作る。
「泉が枯れたときに 2 匹の魚がお互いに唾を出し合って生き延びる」という意味の中国語の成語「相濡以沫」をア
レンジした造語。互いに「墨」=「情報」を出し合ってより良い暮らしを求める、という意味。
2. 「秀外恵中」: 「圏子」から信頼され、感謝されるために、友達に役に立つ情報を提供する。
日本語の「才色兼備」に近い意味の成語、「秀外慧中」をアレンジした造語。友達に対して「恵」=「give(与える)」
の精神で役立つ情報を提供する、という意味の造語。
3. 「各領風騒」: 「圏子」に一歩進んだ生活をもたらすために、自分が「圏子」をリードする。
中国語で、「各自が、それぞれ、様々な分野で突出してリードする」という意味。ここでは「『圏子』(友達の集合体)
を導く」、の意味。
これらの 3 つの行動の背景には、「『圏子』への帰属による安心感の追求」、そして「『圏子』というフィルターを通った
情報への依存」という 2 つの意識があり、更に言えば「圏子」とのインタラクティブな情報のやり取りを通じた「社会に
おける自分の存在感の確保し、彩りのある生活の創造する」というおおもとの欲求があると捉えられます。
「信蜂」の存在と発展は、全ての生活者に影響を及ぼし得るものであると考えられます。通常の情報受発信だけで
なく、体験の行動までもが「圏子」単位で同期する、すなわち、「グループ同期行動」が、今後更に増えていくでしょう。
また同時に、「圏子」を活性化させる、「圏活力」が強い情報へのニーズも高まっていくものと思われます。
〈参考資料 6〉
博報堂生活綜研(上海)
Hakuhodo Institute of Life and Living Shanghai
博報堂生活綜研(上海)は、株式会社博報堂の独資子会社として 2012 年に上海に設立された、中国の博報堂
グループのシンクタンク組織です。日本で蓄積してきた生活者研究のノウハウを生かし、中国における企業のマーケ
ティング活動をサポートしていくと同時に、これからの中国の新しい暮らしのあり方を、中国現地で洞察・提言する活
動を行っています。
現在の主要業務は、以下の通りです:
・ 生活者の本質的な欲求を洞察し、新しい暮らしのあり方を提言する「生活者動察」
・ 企業のマーケティング活動に資する新手法を開発する「新手法開発」
・ 生活者やマーケットの新しい見方を提示する「新視点提案」
これらの活動成果は、博報堂グループ拠点を介して顧客に提供しています。また、一部の内容は、発表会、博報
堂生活綜研(上海)ウェブサイト、出版物などの形式で対外的な発表も行っています。
2014.07.18
書籍「生活者動察 2014~信蜂」、中国
中国で出版
2014 年 7 月、博報堂生活綜研(上海
上海)の書籍「生活者動察 2014~信蜂:中国における
における新しい情報伝播者たち」
が中国で出版、販売開始されました。
。
著者:
出版社:
言語:
発行日:
価格:
版型:
ISBN:
博報堂生活綜研(上海)
文匯出版社
中国語(簡体字)
2014 年 7 月 11 日
48 元
889 x 1194 1/16
978-7-5496-1202-4
概要
インターネットやスマートフォンの普及、微博・微信
微信・Twitter・Line・
Facebook などのソーシャルメディアの台頭…これらの
これらの「世界共通」とも取れ
るトレンドは、世界の多くの国々や地域
地域の情報環境を大きく変貌させています。一方で、情報
情報の拡散の仕方に目を向
けると、各国での異なる特徴が感じ取
取れます。中国の情報伝播の特徴とは何なのか?なぜそのような
なぜそのような特徴があり、
そのことによる影響はどのように起きているのか
きているのか?
本書は、これらの疑問への解となる書籍
書籍です。本書では、中国特有の情報伝播方式が
が時代背景に合わせて変化
し、新しい情報伝播者たちが生まれた
まれた様を捉え、定量・定性の両面による総合的な分析を
を以って「信蜂(シンホウ)」
という新しい概念を提言しています。また
また、「信蜂」による社会への影響や、「信蜂」という新
新しい生活者像に合わせ
たマーケティングへの示唆の提示も行
行っています。
現在、全国(中国)の大手書店、またはオンラインブックストアで
またはオンラインブックストアで購入できます。
目次
はじめに
1.
2.
3.
4.
中国特有の情報伝播の構造
「信蜂」の行動と欲求
「信蜂」がもたらす現象
「信蜂」から発想されるマーケティング
されるマーケティング示唆
あとがき
本件に関するお問合せ:
博報堂生活綜研(上海)市場営銷諮詢有限公司
博報堂生活綜研
Tel. (+86)-21-6240-1515
Fax. (+86)-21-6211-7592
URL: http://www.shenghuozhe.cn