18-H003 海外における IT 戦略・IT 利活用に関する調査研究 平成 19 年 3 月 財団法人 日本情報処理開発協会 本事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。 http://keirin.jp 1 はじめに 本資料は、財団法人日本情報処理開発協会が日本自転車振興会の補助金を受けて実施した平 成 18 年度情報化推進に関する調査研究等補助事業「海外における IT 戦略・IT 利活用に関する 調査研究」の一環として取りまとめたものである。 インターネットを中心とするITの進歩により、世界は知識の相互連鎖的な進化により高度な 付加価値が生み出される知識創発型社会に移行しつつある。知識創発のための環境整備をいか に行うかが、各国の重要課題となっており、欧米やアジアの国々は、IT政策を国家戦略の機軸 として位置づけ、積極的にその推進を行っている。わが国では、2001 年に「e-Japan 戦略」を 決定して以来、本格的にIT 基盤の整備に取り組んできており、2006年1月には新たに「IT新改 革戦略」を決定し、これまでのIT 基盤を活かし、かつ社会・経済システムを積極的に変革する IT 戦略の新たなフェーズに入っている。 本事業では、IT政策が各国の国家戦略の中心としてどのように位置づけられ、計画・実施さ れているかについて、欧米ならびにアジアの政府機関や国際機関等のIT政策情報の収集・分析を 通じて、IT政策に関わる実態と動向の調査を実施した。さらに、IT利活用が経済・社会のあら ゆる局面に求められていることから、欧米ならびにアジアの国々の定性的ならびに定量的の二 面からのIT利活用に関する調査を行い、日本との比較を行った。 平成 19 年 3 月 財団法人 日本情報処理開発協会 2 目 第1部 次 国際 IT ベンチマーク編 総論 1. 書式変更 : 箇条書きと段落番号 IT インフラ 2. 電子政府 3. e-ラーニング 4. e-ヘルス 5. 電子商取引 6. IT セキュリティ 7. 政府提言 第 2 部 IT 政策編 総論 1. 米国 2. カナダ 3. 欧州連合 4. 英国 5. アイスランド 6. フィンランド 7. デンマーク 8. ドイツ 9. フランス 10. インド 11. ベトナム 12. 中国 13. 台湾 14. 韓国 3 15. OECD Ⅰ 米 国 1. 米国における情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 研究開発 3.1 米国競争力イニシアチブ 3.2 連邦研究開発費 3.3 省庁間研究開発プログラム 4. 国土安全保障 5. 電子政府 5.1 E-Government プログラム Ⅱ カナダ 1. カナダにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 産業省 3.1 戦略目標 3.2 通信研究センター 3.3 技術パートナーシップカナダ 4. Government On-Line 4.1 概要 4.2 アクセス性の向上 4.3 サービスの質と応答性の向上 4.4 信頼の確保 5. CA*net4 5.1 概要 5.2 研究教育関連プログラム 4 Ⅲ 欧州連合 1. 欧州連合における情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. i2010 3.1 i2010 年次報告書 3.2 達成事項と 2006~2007 年の計画 4. フレームワークプログラム 4.1 第 6 次フレームワークプログラム 4.2 第 7 次フレームワーク・プログラム案 Ⅳ 英国 1. 英国における情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. e-Government Unit 3.1 政府 IT 活用戦略概要 3.2 市民および企業中心のサービス 3.3 シェアドサービス 3.4 IT プロフェッショナルの育成 4. 貿易産業省 4.1 科学技術政策 4.2 情報通信技術政策 Ⅴ アイスランド 1. アイスランドにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 2004-2007 年情報社会政策 3.1 機会 3.2 責任 3.3 安全 3.4 生活の質 5 4. ICT の利用状況 Ⅵ フィンランド 1. フィンランドにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 情報社会プログラム 3.1 情報社会評議会定期レポート 3.2 新情報社会戦略 4. ICT Cluster Finland Review 2006 4.1 通信政策 4.2 電子政府政策 Ⅶ デンマーク 1. デンマークにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. IT 行動計画 4. デンマーク電子政府戦略 2004-2006 4.1 実施体制 4.2 ビジョンと目標 4.3 実施計画 Ⅷ ドイツ 1. ドイツにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 連邦政府 3.1 国別改革プログラム 3.2 ドイツ・ハイテク戦略 4. 経済技術省 4.1 情報社会ドイツ 2010 4.2 法整備 6 5. 教育研究省 5.1 IKT 2020 5.2 先端技術 5.3 セキュリティ 6. E-Government 2.0 Ⅸ フランス 1. フランスにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. インターネット 3.1 PC 普及 3.2 アクセス 3.3 ブロードバンド 3.4 携帯電話 3.5 電子商取引 3.6 セキュリティ 4. 電子政府 4.1 国家近代化総局 4.2 利用状況 4.3 プロジェクト 5. 企業の競争力強化 5.1 中小零細企業 5.2 研究開発 Ⅹ インド 1. インドにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 第 10 次 5 カ年計画 3.1 目標 3.2 主要イニシアチブ/プロジェクト 4. 通信情報技術省の IT 政策 7 4.1 IT-ITES 産業の現況 4.2 E-ガバナンス 4.3 研究開発 ⅩⅠ ベトナム 1. ベトナムにおける情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 2010 年に向けた ICT 開発戦略 3.1 開発目標 3.2 戦略内容 4. 2005 年 ICT 現況 5. 2010 年に向けた電子商取引開発マスタープラン 6. IT 法 ⅩⅡ 中国 1. 中国における情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. 中国における情報技術政策 3.1 第 10 次 5 カ年計画の成果 3.2 第 11 次 5 カ年計画 3.3 国家情報化発展戦略 4. 香港における情報技術政策のポイント 5. IT 政策の担当機関 6. 香港における情報技術政策 6.1 2004 デジタル 21 戦略 6.2 2007 デジタル 21 戦略 ⅩⅢ 台湾 1. 台湾における情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 8 3. 情報化政策 3.1 チャレンジ 2008 重点計画 3.2 e-台湾計画 3.3 ブロードバンド整備計画 3.4 m-台湾計画 4. IT の利用状況 4.1 市民 4.2 企業 4.3 政府 ⅩⅣ 韓国 1. 韓国における情報技術政策のポイント 2. IT 政策の担当機関 3. u-IT839 戦略 4. u-KOREA マスタープラン . ⅩⅤ OECD 1. 「OECD 情報技術アウトルック 2006」のポイント 2. 組織 2.1 3. IT 政策の担当機関 OECD 情報技術アウトルック 2006 3.1 ICT 産業の概況 3.2 グローバルな事業再構築 3.3 サービスのグローバル化 3.4 競合国および成長の原動力としての中国 3.5 デジタルコンテンツの作成・配信・利用 3.6 雇用と競争力のための ICT スキル 3.7 新技術のアプリケーション 3.8 加盟国の IT 政策 9 第 3 部 出張報告 Ⅰ タイ、中国出張報告 II 欧米出張報告 図 表 第1部 目 次 国際 IT ベンチマーク編 総論 表 0-1 本報告書で用いている為替の換算レート一覧 1. IT インフラ 図 1-1 インターネット普及率(日本と欧米) 図 1-2 インターネット普及率(日本とアジア・オセアニア) 図 1-3 PC 普及率(日本と欧米) 図 1-4 PC 普及率(日本とアジア・オセアニア) 図 1-5 ブロードバンド普及率(日本と欧米) 図 1-6 ブロードバンド普及率(日本とアジア・オセアニア) 図 1-7 ブロードバンド月額利用料金(日本と欧米) 図 1-8 ブロードバンド月額利用料金(日本とアジア・オセアニア) 図 1-9 携帯電話普及率(日本と欧米) 図 1-10 携帯電話普及率(日本とアジア・オセアニア) 図 1-11 携帯電話月額利用料金(日本と欧米) 図 1-12 携帯電話月額利用料金(日本とアジア・オセアニア) 図 1-13 携帯ブロードバンド契約者数(日本と欧米) 図 1-14 携帯ブロードバンド契約者数(日本とアジア・オセアニア) 10 2. 電子政府 表 2-1 各国の電子政府レディネス 表 2-2 オンライン確定申告の有無 3. E-ラーニング 図 3-1 PC1 台当たりの生徒数(日本と欧米) 図 3-2 PC1 台当たりの生徒数(日本とアジア・オセアニア) 4. E-ヘルス 図 4-1 ウェブサイトを持っている医師の割合(欧州諸国) 図 4-2 ヘルス情報をインターネットで検索する割合(欧米諸国) 5. 電子商取引 図 5-1 電子商取引市場規模(B2B・B2C:日本と欧米) 図 5-2 電子商取引市場規模(B2B・B2C:日本とアジア・オセアニア) 図 5-3 国民 1 人当たりの電子商取引額(日本と欧米) 図 5-4 国民 1 人当たりの電子商取引額(日本とアジア・オセアニア) 図 5-5 企業におけるインターネット接続率(日本と欧米) 図 5-6 企業におけるインターネット接続率(日本とアジア・オセアニア) 図 5-7 調達・販売にインターネットを利用する企業の割合(日本と欧米) 図 5-8 調達・販売にインターネットを利用する企業の割合(日本とアジア・オセアニア) 6. IT セキュリティ 図 6-1 人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数(日本と欧米) 図 6-2 人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数(日本とアジア・オセアニア) 11 第 2 部 IT 政策編 総論 表1 主要国等における最近の情報技術政策経緯 Ⅰ 米 国 表Ⅰ-1 2007 年度研究開発予算 表Ⅰ-2 NITRD プログラム予算 表Ⅰ-3 国家ナノテクノロジー・イニシアチブ予算 Ⅱ カナダ 図Ⅱ-1 産業省の組織 表Ⅱ-1 産業省の部門別予算実績(2004-05 年度) Ⅲ 欧州連合 表Ⅲ-1 i2010 戦略: 2006~2007 年の計画 表Ⅲ-2 第 7 次フレームワークプログラム予算額の変化 Ⅳ 英 国 表Ⅳ-1 政府 IT 活用戦略の重点項目とその領域 Ⅴ アイスランド 表Ⅴ-1 2004-2007 年情報社会政策の主要目標と担当機関 Ⅵ フィンランド 表Ⅵ-1 市民向け電子政府サービス事例 12 Ⅶ デンマーク 図Ⅶ-1 電子政府実施体制 図Ⅶ-2 電子政府の実施計画 Ⅷ ドイツ 表Ⅷ-1 ハイテク戦略資金(2006 年~2009 年) Ⅸ フランス 表Ⅸ-1 フランスにおける情報社会の発展(2002 年~2005 年) 表Ⅸ-2 産業イノベーションのための結集プログラム Ⅹ インド 図Ⅹ-1 インドの IT-ITES の売上高 表Ⅹ-1 ミッション・モード・プロジェクト ⅩⅠ ベトナム 図ⅩⅠ-1 郵便電気通信省の組織 表ⅩⅠ-1 電話普及率 表ⅩⅠ-2 インターネット加入者および利用者(2003 年~2006 年) 表ⅩⅠ-3 ベトナムの ICT 市場(2000 年~2005 年) ⅩⅡ 中国 図ⅩⅡ-1 中国政府の情報化推進体制 表ⅩⅡ-1 IT 関連のハイテク産業プロジェクト重大項目 表ⅩⅡ-2 IT 関連の重大科学技術特別プロジェクト 表ⅩⅡ-3 電子政府の普及状況 13 ⅩⅢ 台湾 図ⅩⅢ-1 国家情報通信発展推進(NICI)委員会と関係政府機関 表ⅩⅢ-1 チャレンジ 2008 - 6 カ年国家発展重点計画の投資額の変更 表ⅩⅢ-2 台湾のブロードバンド発展予定表 ⅩⅣ 韓国 図ⅩⅣ-1 情報化推進委員会 IPC と関連機関 図ⅩⅣ-2 情報通信部の組織図 図ⅩⅣ-3 u-IT839 戦略:戦略項目の再調整 図ⅩⅣ-4 u-KOREA マスタープランのビジョン ⅩⅤ OECD 図ⅩⅤ-1 OECD の組織概要 図ⅩⅤ-2 ICT 企業上位 250 社の業績動向 図ⅩⅤ-3 OECD における ICT 商品貿易の流れ 図ⅩⅤ-4 ビジネスサービスおよびコンピュータ情報サービスにおける 輸出高上位 30 カ国のシェア(1995 年、2004 年) 図ⅩⅤ-5 OECD の IT 政策枠組み 第 3 部 出張報告 図 1 インターネット利用者数 図 2 携帯電話利用者数 図 3 タイの IT 投資額 図 4 タイの通信投資額 図 5 中国の IT 投資額 図 6 中国の通信投資額 表 1 タイの小・中学校、大学のインターネット普及率 (2000 年) 14 第1部 国際 IT ベンチマーク編 15 総 論 本調査は、公的機関が発表したデータを分析した報告書本文のまとめである。 本調査の中では日本の位置づけを把握するために、今回の調査対象国・地域として、以下の 欧米諸国 9 カ国と、アジア・オセアニア地域の 17 カ国・地域を取り上げている。 欧米諸国 アジア・オセアニア諸国・地域 ・米国 ・オーストラリア ・シンガポール ・カナダ ・ニュージーランド ・タイ ・英国 ・中国 ・ブルネイ ・ドイツ ・韓国 ・ベトナム ・フランス ・香港 ・ラオス ・スウェーデン ・台湾 ・カンボジア ・フィンランド ・インドネシア ・ミャンマー ・イタリア ・マレーシア ・インド ・アイルランド ・フィリピン 本調査では、以下の 6 つの項目から代表的な指標を取り上げており、データの揃っている指 標においては日本と欧米諸国、また日本とアジア・オセアニア諸国・地域における情報化の進 展を比較し、報告書本文の要点をまとめた後、最後に政策提言を行っている。 ① IT インフラ ② 電子政府 ③ E-ラーニング ④ E-ヘルス ⑤ 電子商取引 ⑥ IT セキュリティ ⑦ 政策提言 尚、電子商取引市場規模などの金額を表す単位は、全て表 0-1 の換算レート(2006 年 12 月 29 日時点)を用いた米国ドルに統一している。また、調査の結果、公的機関が指標データを発 表していない国については、図中に「N/A(Not Available)」と表記している。 16 表 0-1 国・地域名 本報告書で用いている為替の換算レート一覧 換算レート 国・地域名 換算レート 日本 $ 1=119.02 JPY 中国 $ 1=7.8041 CNY カナダ $ 1=1.1652 CAD 韓国 $ 1=930 KRW 英国 $ 1=0.5105691 GBP 香港 $ 1=7.7771 HKD EU $ 1=0.757748 EUR 台湾 $ 1=32.59 TWD オーストラリア $ 1=1.26839 AUD タイ $ 1=36.1 THB 書式変更 : 箇条書きと段落番号 出典:ワシントンコア作成 1. IT インフラ 第 1 章では、本調査の対象国と地域における情報技術(Information Technology: IT)、あ るいは情報通信技術(Information Communication Technology: ICT)についてアクセスの状 況と利用普及の実態を把握するため、 「インターネット普及率」、 「パーソナル・コンピュー タ(PC)普及率」、 「ブロードバンド普及率」、 「ブロードバンド月額利用料金」、 「携帯電話 普及率」、 「携帯電話月額利用料金」、そして「携帯ブロードバンド契約者数」などを代表的 な指標として取り上げている。 インターネット普及率(日本と欧米) 国際電気通信連合(International Telecommunications Union:ITU)が 2006 年 12 月に発表 した報告書(ITU Internet Report 2006:digital.life)の統計をもとに、日本と欧米の調査対 象国におけるインターネットの普及率(2005 年データ)を示したのが図 1-1 である。人口 100 人あたりのインターネット利用者が最も多い国はスウェーデン(76.5%)で、英国 (63.3%)、米国(63.0%)、カナダ(63.0%)、フィンランド(63.0%)などの各国がそれに 続いている。日本(50.2%)、イタリア(48.0%)、ドイツ(45.4%)、フランス(43.2%)な どでも人口の 5 割前後にインターネットが普及しており、普及率が 40%に満たなかったの はアイルランド(27.6%)のみであった. 17 90 % 76.5 80 70 63.0 63.0 60 63.3 63.0 50.2 45.4 50 48.0 43.2 40 27.6 30 20 10 ド ラ ン ア イ ル イ タ リ ア ド ラ ン ン フ ィ ン ー デ ス ス ウ ェ フ ラ ン イ ツ ド 英 国 ナ ダ カ 米 国 日 本 0 出典: (2005 年データ) :ITU 「ITU Internet Reports:digital.life」 ( 2006)Table5『 Internet users per 100 Inhabitants』 158-161 ページ。(ハードコピー) 注:日本、米国、カナダ、英国、スウェーデン、フィンランドの数値は推定値、あるいは他年度の数値。 図 1-1 インターネット普及率(日本と欧米) インターネット普及率(日本とアジア・オセアニア) ITU の統計をもとに日本とアジア諸国・地域でのインターネット普及率(人口 100 人あ たりのインターネット利用者数)を示したのが図 1-2 である。各国の普及率を比較すると、 この地域でインターネット利用者の人口比率が最も高いのはニュージーランド(79.5%) で、欧米諸国の中で普及率が最も高いスウェーデン(76.2%)よりも更に高い普及率を達 成している。前年比では 2004 年の 82.0%から微減しているものの、ITU 報告書の調査対象 国 206 カ国中においてもニュージーランドの普及率はアイスランド(87.8%)に次いで世 界で 2 番目に高い数値となっている。 18 90 % 79.4 80 70.4 70 60 50 68.4 57.9 58.0 50.1 50.2 42.4 40 30 15.3 20 8.4 10 7.2 5.3 11.0 12.7 5.4 0.4 0.3 オ ー ニ ス 日 ュ ト 本 ー ラ ジ リ ー ア ラ ン ド 中 国 韓 国 香 港 イ ン 台 ド 湾 ネ マ シ レ ア ー フ シ ィ ア シ リ ン ピ ガ ン ポ ー ル タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オ ン ス ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド 0 0.7 出典: (2005 年データ) :ITU 「ITU Internet Reports:digital.life」 ( 2006)Table5 『 Internet users per 100 Inhabitants』 158-161 ページ。(ハードコピー) 注:フィリピン、シンガポール、ブルネイ、カンボジアの数値は推定値、あるいは他年度の数値。 図 1-2 インターネット普及率(日本とアジア・オセアニア) ニュージーランド以外の国では、オーストラリア(70.4%)と韓国(68.4%)で 70%前後 の高普及率となっており、シンガポール(57.9%)、台湾(58.0%)、日本(50.2%)、香港(50.1%)、 マレーシア(42.4%)などがそれに続いている。その他の国々では普及率がまだ 2 割に達 しておらず、1 割に満たない国も少なくない。ただし、中国やインドでは人口が多いため に人口比の普及率は低いものの、インターネット利用者の数そのものは多く、中国(1 億 1,100 万人)は ITU 調査対象国 206 カ国の中でも米国に次ぐ 2 位に位置づけられており、 インド(6,000 万人)も同様に米国、中国、日本に続いて 4 位となっている。また、各国 の普及率を前年と比べると、大きい差は見られず、ほとんどの国で微増減となっている。 PC 普及率(日本と欧米) 調査対象国における情報技術の利用状況を把握するうえで、PC の普及率も重要な指標で ある。図 1-3 は ITU が発表した 2005 年データをもとに日本と欧米諸国の PC 普及率を比較 したものである。これによると、普及率が最も高いのはスウェーデン(77.2%)で、それ 19 に続く米国(76.2%)とカナダ(70.5%)でも普及率は 7 割以上となっている。前年比では スウェーデン(76.1%→77.2%)、米国(74.1%→76.2%)、フランス(48.7%→57.9%)などの 国々で増加傾向となっているが、フランス以外の欧米諸国ではそれほど目立った増減は見 られなかった。 100 % 90 70.5 70 60 77.2 76.2 80 60.4 54.2 57.9 54.5 50.3 48.2 50 40 31.5 30 20 10 ド ラ ン ド リ ア ア イ ル イ タ ラ ン ー デ ン フ ィ ン ン ス ス ウ ェ フ ラ ド イ ツ 英 国 カ ナ ダ 米 国 日 本 0 出典:(2005 年データ):ITU「ITU Internet Reports:digital.life」(2006)Table5『PCs per 100 Inhabitants』 158-161 ページ。(ハードコピー) 注:フランス以外の国の数値は推定値あるいは他年度の数値。 図 1-3 PC 普及率(日本と欧米) 日本での PC 普及率はスウェーデン、米国、カナダよりも低く、欧米諸国に比べて高水 準にあるとは言い難いが、総務省によると世帯比で見た場合、日本の PC 保有率は 2005 年 末に 80.5%(調査対象の 3,982 世帯のうち 3,206 世帯)と 8 割以上に達したと報告されてい る。そのうち、PC を 2 台以上保有している世帯が 29%を占めている。また、日本では PC ではなく、携帯端末からインターネットにアクセスする利用者も多く、全世帯の 9 割以上 が携帯電話か PHS を保有している。 20 PC 普及率(日本とアジア・オセアニア) ITU のデータをもとに、日本とアジア・オセアニア諸国における PC 普及率を比較したの が図 1-4 である。データが更新されていない国が多いためか、全体的に前年度とほぼ変わ らない数値となっている。一部、香港(58.9%→59.3%)、ラオス(0.4%→1.7%)、ミャンマ ー(0.6%→0.8%)、インド(1.2%→1.5%)の各国では前年よりも普及率が向上した。 シンガポールの PC 普及率はアジア・オセアニア地域だけでなく、世界的に見ても突出し て高く、ITU 報告書の調査対象 206 国中、2 位のスイス(86.18%)にも 5%以上の差をつけ た 1 位となっている。しかし、シンガポール以外の ASEAN 諸国ではマレーシアで普及率 が約 2 割に届いているのを除き、普及率は 1 割にも達していない。調査対象の 18 カ国中、 半数以上の 10 カ国で普及率が 1 割未満となっており、これらの国々では IT 化のインフラ 構築が遅れていることなどから国民の生活や経済活動において PC の使用がまだ一般的で はない様子がうかがわれる。 100 % 91.3 90 80 68.9 70 60 50 54.5 59.3 54.2 52.8 49.3 40 30 19.7 20 10 4.0 5.9 8.5 1.3 1.7 0.3 0.7 1.5 オ ー ニ ス 日 ュ ト 本 ー ラ ジ リ ー ア ラ ン ド 中 国 韓 国 香 港 イ ン 台 ド 湾 ネ マ シ レ ア ー フ シ ィ ア シ リ ン ピ ガ ン ポ ー ル タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オ ン ス ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド 0 4.5 1.4 出典:(2005 年データ):ITU「ITU Internet Reports:digital.life」(2006)Table5『PCs per 100 Inhabitants』 158-161 ページ。(ハードコピー) 注:日本、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、 シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、カンボジアの数値は推定値あるいは他年度の数値。 図 1-4 PC 普及率(日本とアジア・オセアニア) 21 ブロードバンド普及率(日本と欧米) 図 1-5 は ITU の 2005 年のデータをもとに、ブロードバンド接続の人口普及率(人口 100 人当たりのブロードバンド加入者数)を示したものである。調査対象 10 カ国中、最も普及 率が高いのはフィンランド(22.4%)で、カナダ(20.8%)とスウェーデン(20.3%)でも 2 割を超える普及率を達成している。また、日本(17.5%)、米国(16.6%)、英国(16.0%)、 フランス(15.6%)などでも普及率は比較的高くなっている。2004 年に普及率が 15%以上 だったのはカナダとフィンランドの 2 カ国だけであったのに対し、2005 年度に 15%に届か なかったのはドイツ(12.9%)とイタリア(11.7%)、そしてアイルランド(6.5%)の 3 カ 国だけとなり、全体的に普及率が伸びていることがわかる。 25 % 22.4 20.8 20 17.5 20.3 16.0 16.6 15 15.6 12.9 11.7 10 6.5 5 ド ラ ン ア イ ル イ タ リ ア ド ラ ン フ ィ ン ー デ ン ス ス ウ ェ フ ラ ン ド イ ツ 英 国 カ ナ ダ 米 国 日 本 0 出典: (2005 年データ) :ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 ( 2006)Table 6『 Total fixed broadband subscribers per 100 inhabitants, 2005』164-167 ページ。(ハードコピー) 図 1-5 ブロードバンド普及率(日本と欧米) 前年に引き続き、ブロードバンドの普及率は日本と欧米の調査対象国全てにおいて向上 している。加入者数の伸び率が特に顕著だったのは、アイルランド(前年比 78.0%増)と ドイツ(同 53.4%増)で、そのほかフィンランド(同 46.8%増)、イタリア(同 49.4%増)、 スウェーデン(同 48.6%増)などでも 50%近い増加率となっている。 22 ブロードバンド普及率(日本とアジア・オセアニア) アジア・オセアニア諸国・地域の国々におけるブロードバンド普及率を比較すると、図 1-6 にも示されている通り、韓国(25.2%)が調査対象 18 カ国中最も高い。韓国を追い上げて いるのは香港(23.6%)と台湾(20.1%)で、普及率が 20%以上に達している。日本(17.5%)、 シンガポール(15.3%)、オーストラリア(10.4%)の 3 カ国は、普及率が 10%を超えてお り、ニュージーランド(8.2%)も 1 割に届きつつある。それ以外の国々では、中国(2.9%) とマレーシア(1.9%)を除き、1 割以下の普及率となっている。 30 % 25.2 23.6 25 20 20.1 17.5 15.3 15 10 10.4 8.2 5 2.9 0.0 1.9 0.1 0.1 N/A 0.3 0.0 0.0 0.0 0.1 オ ー ニ ス 日 ュ ト 本 ー ラ ジ リ ー ア ラ ン ド 中 国 韓 国 香 港 イ ン 台 ド 湾 ネ マ シ レ ア ー フ シ ィ ア シ リ ン ピ ガ ン ポ ー ル タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オ ン ス ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド 0 出典: (2005 年データ) :ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 ( 2006)Table 6『 Total fixed broadband subscribers per 100 inhabitants, 2005』164-167 ページ。(ハードコピー) 注:タイ、カンボジアの数値は推定値あるいは他年度の数値。 図 1-6 ブロードバンド普及率(日本とアジア・オセアニア) 各国のブロードバンド普及率を前年(2004 年)と比べると、日本(14.9%→17.5%)、オ ーストラリア(7.8%→10.4%)、ニュージーランド(4.9%→8.2%)、中国(2.0%→2.9%)、韓 国(24.9%→25.2%)、香港(21.3%→23.6%)、台湾(16.5%→20.1%)、マレーシア(1.0%→1.9%)、 シンガポール(11.9%→15.3%)、ベトナム(0.0%→0.3%)などの各国で普及率が向上して いる。 23 ブロードバンド月額利用料金(日本と欧米) ITU のデータに基づき、各国のブロードバンド接続月額利用料金を低速ブロードバンド と高速ブロードバンドに分けて比較したものが図 1-7 である。ITU では、ダウンロードの スピードが 256~1,024 kbit/s のものを低速ブロードバンド、1,024 kbit/s 以上のものを高速ブ ロードバンドに分類している。 90 ドル 85.6 低速ブロードバンド 80 高速ブロードバンド 70 67.7 56.1 60 50.9 50 30 41.3 37.1 38.2 40 29.1 37.2 37.3 31.0 27.3 25.0 20 20.0 37.2 34.8 31.1 36.0 22.3 21.0 10 ラ ン ド ア ア イ ル ド ラ ン イ タ リ ン フ ィ ン ー デ ス ス ウ ェ フ ラ ン イ ツ ド 英 国 ナ ダ カ 米 国 日 本 0 出典: (2006 年データ) :ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 (2006)Table 7『Fixed broadband prices, 2006』 170-173 ページ。(ハードコピー) 注:低速ブロードバンドとは、ダウンロードのスピードが 256~1,024kbit/s のもの、高速ブロードバンド はそれ以上のものを指す。また、各国における料金は US ドルで統一している。 図 1-7 ブロードバンド月額利用料金(日本と欧米) まず、低速ブロードバンドの月額利用料金を見ると、調査対象の 10 カ国中最も低く設定 されているのがドイツで 21.0 ドルとなっている。フィンランド(22.3 ドル)、米国(25.0 ドル)、英国(27.3 ドル)、日本(29.1 ドル)においても 20 ドル台の料金が設定されてい る。アイルランド(31.1 ドル)、イタリア(34.8 ドル)、スウェーデン(36.0 ドル)、カナ ダ(37.1 ドル)、フランス(37.2 ドル)の 5 カ国では、月額 30 ドル台となっている。 また、各国の低速ブロードバンドの月額利用料金を前年(2004 年)と比べると、イタリ アを除いた 9 カ国で料金が下がっており、特にフィンランド(2004 年 55.2 ドル→2005 年 24 22.3 ドル)と米国(同 43.0 ドル→25.0 ドル)では 1 年間で大幅に下がっている。 ブロードバンド月額利用料金(日本とアジア・オセアニア) 図 1-8 は日本とアジア・オセアニア諸国・地域におけるブロードバンド接続の月額利用 料金について、低速ブロードバンドと高速ブロードバンドに分けて比べたものである。ま ず、18 カ国の低速ブロードバンド利用料金を比較すると、最も低価格なのは中国(9.8 ド ル)で 10 ドル以下に抑えられている。それに続くのはミャンマー(11.8 ドル)とタイ(17.4 ドル)、フィリピン(18.1 ドル)の 3 カ国で 20 ドル以下となっている。その他の国々を料 金の低い順に列挙すると、マレーシア(20.3 ドル)、インドネシア(20.6 ドル)、オースト ラリア(22.8 ドル)、香港(25.5 ドル)、台湾(26.1 ドル)、日本(29.1 ドル)の各国が 20 ドル台、そして韓国(37.8 ドル)、インド(45.3 ドル)、ニュージーランド(55.6 ドル)、 ベトナム(75.1 ドル)、シンガポール(90.1 ドル)、ブルネイ(99.9 ドル)、カンボジア(199.0 ドル)、ラオス(220.0 ドル)となっている。最低額と最高額に 700 ドル近い差があり、ブ ロードバンドの普及状況は国々で大きな格差がある様子が読み取れる。 ドル 700 650 低速ブロードバンド 600 高速ブロードバンド 699.0 550 500 450 400 350 300.0 300 250 220.0 99.9 24.8 17.4 75.1 45.3 20.5 18.7 11.8 タ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ オ カ ン ス ボ ミ ジア ャ ン マ ー イ ン ド ド 湾 ネ マ シア レ ー フ シア ィ シ リピ ン ガ ン ポ ー ル 国 国 港 香 韓 台 イ ン オ 199.0 141.6 150.3 ニ ー ス 日本 ュ トラ ー ジ リア ー ラ ン ド 50 0 40.6 51.2 41.3 51.4 55.6 53.3 42.2 14.6 37.8 25.5 26.1 20.6 26.1 9.8 20.3 18.1 22.8 38.2 29.1 中 100 90.1 90.7 73.2 ブ 200 150 出典: (2006 年データ) :ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 (2006)Table 7『Fixed broadband prices, 2006』 170-173 ページ。(ハードコピー) 注:低速ブロードバンドとは、ダウンロードのスピードが 256~1,024kbps のもの、高速ブロードバンドは それ以上のものを指す。また、各国における料金は US ドルで統一している。 図 1-8 ブロードバンド月額利用料金(日本とアジア・オセアニア) 25 携帯電話普及率(日本と欧米) ITU のデータによると、2005 年末の全世界における携帯電話契約者数(Cellular mobile subscribers)は 21 億 6,843 万人で、2000 年の 7 億 4,002 万人と比べると 5 年間で急速に増 えていることがわかる。2004 年末(17 億 5,194 万人)と比較しても 4 億人以上の大幅増と なっている。 図 1-9 からもわかるように、日本と欧米諸国における携帯電話の普及率は、全体的に高 水準であり、100 パーセント以上の普及率を達成している国が 3 ヵ国もある。ここで取り 上げている 10 カ国中、携帯電話の普及率が最も高いのはイタリア(124.3%)で、英国 (102.2%)とアイルランド(101.5%)でも普及率が 100%を超えている。これらの国々で は、携帯電話の契約者数が多いと同時に、1 人で複数の携帯電話を所有・契約している場 合も多いと考えられる。その他の 7 カ国でも普及率は全て 5 割以上で、フィンランド (99.7%)、ドイツ(95.8%)、スウェーデン(93.3%)では 100%近い普及率となっているほ か、フランス(79.4%)、日本(74.0%)、米国(67.6%)、カナダ(51.4%)など、総じて携 帯電話の所有が一般的となっている。 % 130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 124.3 102.2 99.7 95.8 101.5 93.3 74.0 79.4 67.6 ン ド ア ル ラ ア イ イ タ リ ン ド ン ラ デ ン フ ィ ス ウ ェ ー ラ ン ス ツ フ ド イ 国 英 ダ カ ナ 国 米 日 本 51.4 出典: (2005 年データ) :ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 (2006)Table2『Cellular mobile subscribers per 100 inhabitants』142-145 ページ。(ハードコピー) 注:英国の数値は推定値、あるいは他年度の数値。 図 1-9 携帯電話普及率(日本と欧米) 26 携帯電話普及率(日本とアジア・オセアニア) 日本とアジア・オセアニア諸国・地域の携帯電話普及率が図 1-10 に示されている。調査 対象の 18 カ国中、最も高い普及率を達成しているのは香港(123.5%)で、前年の 114.5% よりも更に 9 ポイント増加している。次に普及率が高いのはシンガポール(103.4%)で、 香港と同様に前年の 89.5%に比べてかなり向上している。台湾(97.4%)は 100.0%だった 前年よりやや減っているが、ほぼ 100%の域に留まっている。 それ以外の国ではオーストラリア(91.4%)とニュージーランド(87.6%)のオセアニア 2 カ国がともに前年を上回って 9 割前後の普及率となっているほか、韓国(79.4%)、マレ ーシア(75.2%)、日本(74.0%)などでも前年を上回り、普及率が 7 割を超えている。特 にマレーシアにおける伸びは著しく、前年の 58.7%から 16.5 ポイントも上昇している。ブ ルネイ(2004 年 40.1%→2005 年 56.3%)やインドネシア(同 13.5%→21.1%)、ラオス(同 3.5%→10.8%)、カンボジア(同 3.5%→7.6%)、インド(同 4.4%→8.2%)などでも普及率は かなり伸びており、途上国でも携帯電話が急速に普及しつつあることが読み取れる。 % 123.5 103.4 91.4 97.4 87.6 79.4 74.0 75.2 56.3 39.5 29.9 43.0 21.1 11.4 10.8 7.6 8.2 0.3 オ ー ニ ス 日 ュ ト 本 ー ラ ジ リ ー ア ラ ン ド 中 国 韓 国 香 港 イ ン 台 ド 湾 ネ マ シ レ ア ー フ シ ィ ア シ リ ン ピ ガ ン ポ ー ル タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オ ン ス ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド 130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 出典: (2005 年データ) :ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 (2006)Table2『Cellular mobile subscribers per 100 inhabitants』142-145 ページ。(ハードコピー) 注:タイとブルネイの数値は推定値、あるいは他年度の数値。 図 1-10 携帯電話普及率(日本とアジア・オセアニア) 27 携帯電話月額利用料金(日本と欧米) 図 1-11 は ITU のデータをもとに、日本と欧米諸国の携帯電話月額利用料金をピーク時に おける 1 分間の市内通話料金とオフ・ピーク時における 1 分間の市内通話料金(オフ・ピ ーク時)の 2 項目について比較したものである。同図に示されている金額は、各国におけ る代表的な業者の典型的パッケージ料金を 2006 年 8 月 21 日の為替レートで米ドルに換算 した金額となっている。 1分間の通話料金(ピーク時) 1.0 1分間の通話料金(オフ・ピーク時) ドル 0.8 0.71 0.6 0.52 0.38 0.4 0.32 0.24 0.2 0.10 0.08 0.26 0.10 0.01 タ リ ア ア イ ル ラ ン ド イ ス ウ ェ ー デ ン フ ィ ン ラ ン ド ラ ン ス フ ド イ ツ 英 国 カ ナ ダ 米 国 日 本 0.0 出典:(2006 年データ):ITU「ITU Internet Reports:digital.life」(2006)Table3『Cellular mobile prices』 148-151 ページ。(ハードコピー) 図 1-11 携帯電話月額利用料金(日本と欧米) 図 1-11 で取り上げている 10 カ国はすべて、ピーク時とオフ・ピーク時の 1 分間の通話料 金が同額となっている。10 カ国中、通話料金が最も安いのはカナダで、1 分間に 0.01 ドル となっている。前年度のカナダの通話料金はピーク時が 0.33 ドル、オフ・ピーク時は 0.04 ドルで、もともとオフ・ピーク時の料金は 10 カ国中最低だったが、更に低廉化が進んでい る。低廉化傾向は多くの国に見られ、日本(2005 年ピーク、オフピークともに 0.72 ドル →2006 年同 0.52 ドル)、米国(2005 年同 0.28 ドル→2006 年同 0.10 ドル)、フィンランド(2005 年同 0.20 ドル→2006 年 0.10 ドル)など、8 カ国で料金が前年と比べて低下している。イタ 28 リアは同横ばいで、前年よりも料金が高くなっているのはフランス(2005 年ピーク、オフ ピークともに 0.69 ドル→2006 年同 0.71 ドル)だけとなっている。 携帯電話月額利用料金(日本とアジア・オセアニア) 日本の携帯電話月額利用料金をアジア・オセアニア諸国の料金と比較したのが図 1-12 で ある。市内通話料金(1 分間)については、ピーク時、オフピーク時ともに最も安いのが 前年に引き続き香港とインド(ピーク、オフ・ピークとも 0.04 ドル)であり、タイ(同 0.05 ドル)や中国(同 0.07 ドル)がそれに続いている。ラオスの場合もピーク時が 0.08 ドル、オフ・ピーク時が 0.04 ドルと、通話料金が低価格に抑えられている。特に香港では 市民の収入に対する通話料金の割合が極めて低いため、携帯電話を利用しやすい環境にあ り、それが世界的にも突出して高い携帯電話の普及率につながっていると見られる。 逆に、最も通話料金が高いのは日本と台湾(両国とも同 0.52 ドル)であり、この 2 ヵ国 は欧米とアジア・オセアニアを合わせた中でもフランスに次いで 2 番目に通話料金が高く なっている。ニュージーランド(同 0.50 ドル)も欧米の調査対象国と比較すると料金はや や高い。ただし日本とニュージーランドでは料金が引き下げられる傾向にあり、日本は 0.72 ドルから 0.52 ドルへ、ニュージーランドは 0.56 ドルから 0.50 ドルへと 1 年間で金額が低 下している。 29 1分間の通話料金(ピーク時) 1分間の通話料金(オフ・ピーク時) ドル 1.0 0.8 0.6 0.52 0.52 0.50 0.35 0.4 0.38 0.17 0.15 0.11 0.09 0.10 0.13 0.14 0.2 0.07 0.05 0.04 0.12 0.08 0.11 0.04 イ ル タ 0.04 ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オス ン ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド マ ブ ド 湾 ネ シ レ ア ー フ シ ィ ア シ リ ン ピ ガ ン ポ ー ル 港 台 国 ン 香 国 中 韓 イ ー オ N/A ニ ュ ス 日本 ト ー ラリ ジ ー ア ラ ン ド 0.0 出典:(2006 年データ):ITU「ITU Internet Reports:digital.life」(2006)Table3『Cellular mobile prices』 148-151 ページ。(ハードコピー) 図 1-12 携帯電話月額利用料金(日本とアジア・オセアニア) 携帯ブロードバンド契約者数(日本と欧米) ITU の報告書では、携帯ブロードバンドを 256kbit/s 以上のキャパシティを備えたものと 定義しており、それ以下の第三世代携帯サービス(3G サービス)は対象に含めていない。 この定義に沿って集計された ITU のデータによると、2005 年末の時点の携帯ブロードバン ド契約者数は世界全体で約 6,025 万人となり、人口普及率(人口 100 人当たりの加入者数) は 0.93%、携帯電話契約者数全体に占める携帯ブロードバンド契約者数の割合は 2.8%とな っている。 図 1-13 は日本と欧米諸国の携帯ブロードバンド契約者数を示したものである。これは契 約者の数であって人口比の普及率ではないため、契約者数の少ない国の方が普及率が低い という意味ではない。 日本と欧米諸国の調査対象 10 カ国中、携帯ブロードバンド契約者数が最も多いのは日本 30 で、1,779.3 万人以上に及んでいる。次に多いのがイタリア(1,026.2 万人)で、英国(453.7 万人)、米国(436 万人)、ドイツ(228.9 万人)、フランス(158.3 万人)がそれに続いてい る。カナダ、スウェーデン、フィンランド、アイルランドの 4 カ国では契約者数が 100 万 人に達していない。 これら 10 カ国の携帯ブロードバンド契約者数を人口普及率で比較すると、1 番普及率が 高いのはイタリアの 17.7%で、次に高い日本は 13.9%となっている。その他の国々を普及 率の高い順に並べると、英国(7.6%)、スウェーデン(7.3%)、アイルランド(4.9%)、ド イツ(2.8%)、フランス(2.6%)、フィンランド(1.5%)、米国(1.5%)、カナダ(0.1%)と なる。 20,000 千人 17,793 15,000 10,262 10,000 4,537 4,360 5,000 2,289 1,583 661 35 205 78 ド ル ラ ン リ ア ア イ イ タ ド ン ン ラ ン フ ィ ス ウ ェ ー デ ン ス ツ フ ラ ド イ 英 国 ダ カ ナ 米 国 日 本 0 出典:(2005 年データ):ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 (2006) 『Mobile broadband subscribers and networks』154-156 ページ。(ハードコピー) 図 1-13 携帯ブロードバンド契約者数(日本と欧米) 31 携帯ブロードバンド契約者数(日本とアジア・オセアニア) 日本の携帯ブロードバンド契約者数をアジア・オセアニア諸国のデータと比べたのが図 1-14 である。18 カ国中、日本(1,779.3 万人)と韓国(1,253.1 万人)の契約者数が際立っ て多い。その他の国ではオーストラリア(80.1 万人)、香港(57.7 万人)、シンガポール (13.2 万人)、台湾(11.4 万人)などで契約者数が 10 万人を上回っている。 ただし、前セクションの欧米諸国の場合と同様、同データは契約者の数を比較したもの であり、人口比の普及率を示すものではないため、契約者数が少ない国のほうが、契約者 数が高い国よりも普及率が高い場合もある。ITU の統計によると、携帯ブロードバンドの 普及状況を人口普及率で比較した場合、これら 18 カ国中で韓国(26.0%)がトップとなっ ている。韓国の普及率は世界でも最も高く、2 位のイタリア(17. 7%)に大きく差を付け ている。日本(13. 9%)は 3 位に入っており、香港(8.2%)とブルネイ(8.1%)もそれぞ れ 5 位と 6 位に位置づけられている。 韓国は固定ブロードバンドと携帯ブロードバンドを合わせたブロードバンド普及率にお いても世界一で、人口の半数以上にブロードバンドが普及している。また、ブロードバン ド契約者の半数以上が携帯ブロードバンドのユーザであることが ITU の調べで判明してい る。 20,000 千人 17,793 15,000 12,531 10,000 5,000 ム ラ オ ン ス ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド イ N/A N/A N/A N/A N/A カ ト ナ ベ ル ネ タ イ 30 ブ 台 ド 湾 ネ マ シ レ ア ー フ シ ィ ア リ シ ン ピ ガ ン ポ ー ル ン 香 港 N/A 132 N/A イ ー ス 日 ュ ト 本 ー ラ ジ リ ー ア ラ ン ド 中 国 59 ニ オ 577 114 N/A 90 N/A 韓 国 801 0 出典:(2005 年データ):ITU「ITU Internet Reports:digital.life」 (2006) 『Mobile broadband subscribers and networks』154-156 ページ。(ハードコピー) 図 1-14 携帯ブロードバンド契約者数(日本とアジア・オセアニア) 32 2. 書式変更 : 箇条書きと段落番号 電子政府 第 2 章では、電子政府の実施状況について各国の進度を比較・分析し、調査対象国の現 状を取り上げている。本エグゼクティブ・サマリー編では、国連が毎年発表している「電 子政府レディネス」指標を取り上げるとともに、各国におけるオンライン確定申告の状況 を報告する。 電子政府レディネス 国連公共経済行政局(United Nations Online Network in Public Administration and Finance: UNPAN)が 2005 年に発表した「電子政府に関する報告書(UN Global E-Government Readiness Report 2005 From E-Government to E-Inclusion)」の中に公表されている「電子政府レディネ ス」ランキングによると、国連加盟国中、電子政府のレディネス指数が最も高いと評価さ れたのは、前年に引き続き米国であった。 この調査では、①ウェブサイトの内容(web measure index)、②情報通信インフラの整備 度(telecommunications infrastructure index)、③人的資源の育成度(human capital index)の 3 つの指標をもとに、総合的なスコアが計算されている。表 2-1 は、今回の調査対象国の ランクキングを示している。 表 2-1 各国の電子政府レディネス 2004 年 2005 年 ランク ランク 1位 1位 米国 0.9062 4位 3位 スウェーデン 0.8983 3位 4位 英国 0.8777 5位 5位 韓国 0.8727 6位 6位 オーストラリア 0.8679 8位 7位 シンガポール 0.8503 7位 8位 カナダ 0.8425 9位 9位 フィンランド 0.8231 12 位 11 位 ドイツ 0.8050 国名 33 2005 年 スコア 13 位 13 位 ニュージーランド 0.7987 18 位 14 位 日本 0.7801 19 位 20 位 アイルランド 0.7251 24 位 23 位 フランス 0.6925 26 位 25 位 イタリア 0.6794 47 位 41 位 フィリピン 0.5721 42 位 43 位 マレーシア 0.5706 50 位 46 位 タイ 0.5518 67 位 57 位 中国 0.5078 63 位 73 位 ブルネイ 0.4475 86 位 87 位 インド 0.4001 85 位 96 位 インドネシア 0.3819 112 位 105 位 ベトナム 0.3640 129 位 128 位 カンボジア 0.2989 123 位 129 位 ミャンマー 0.2959 144 位 147 位 ラオス 0.2421 N/A N/A 香港 N/A N/A N/A 台湾 N/A 出典: (2005 年データ) :UNPAN 「UN Global E-Government Readiness Report 2005」 (2005)『E-government Readiness Index 2005』196-199 ページ。 (2004 年デ ータ): UNPAN「UN Global E-Government Readiness Report 2004」 (2004)『E-government Readiness Index 2004』121-125 ページ。 オンライン確定申告の可・不可 電子政府の内容の充実化が進むとともに、オンライン手続きが可能な行政サービスの種 類も増えている。代表的な政府サービスのひとつである税金の申告手続きについて、オン ラインでの申告が可能かどうかを調査対象国別にまとめたものが表 2-2 に示されている。 政府による公開情報でオンライン確定申告の可・不可が確認できなかった国は「?」マーク で示されている。 34 表 2-2 日本 米国 カナダ ○ ○ ○ アイルラン オーストラ ニュージー オンライン確定申告の有無 英国 ドイツ スウェーデ フィンラン ン ド ○ フランス イタリア ○ ○ ○ ○ 中国 韓国 香港 台湾 ○ インドネシ マレーシア ド リア ランド ア ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ? ○ タイ ブルネイ ベトナム ラオス カンボジア ミャンマー インド ○ ? ? ? ? ? ○ シンガポー フィリピン ル ○ ○ 出典:ワシントンコア作成 米国では規模の大きい法人の納税について、2006 年から電子申告が義務化された。内国 歳入庁(Internal Revenue Service: IRS)は、2005 年 12 月 31 日以降の納税年度から、資産 が 5,000 万ドル以上で、年間 250 通以上の申告書類(法人所得税の申告書類、および従業 員人数分の所得税、その他の申告関連書類を含む)を提出する大企業に対して、法人所得 税(1120・1120S)の電子申告を義務付けている。内国歳入庁によると、2006 年 3 月の時点 で 450 社以上の大企業が電子申告しており、期限延長を含めた最終提出期限である 2006 年 9 月 15 日までには 1 万社以上の大企業が電子申告をすると見込まれている。 日本では、2003 年 2 月に施行された「行政手続等における情報通信の技術の利用に関す る法律(行政手続オンライン化法)」の規定を受けて、同年 11 月 4 日に「国税関係法令に 係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令」が施行された。これにより、 それまで書面でのみ提出可能だった国税関連の申告について、電子申告・納税システムの 具体的なオンライン手続きが規定され、国税庁のオンライン国税申告・納税システム「eタックス(e-Tax)」が 2004 年 2 月に開始されている。 35 3. 書式変更 : 箇条書きと段落番号 E-ラーニング 第 3 章では、調査対象国における「PC1 台当たりの生徒数」を比較して学校での PC の 導入状況をまとめ、情報技術が教育の分野にどれほど役立てられているかを分析している。 また、米国、英国、日本など 6 カ国の e ラーニング政策を調べ、教育現場の IT 化に向けて、 各国がどのような取り組みを行なっているかをまとめている。e-ラーニングのデータにつ いては国によって調査の対象や時期が異なり、データの収集や分類の方法にもばらつきが あるため、単に数値を比較することはあまり意味を持たない。そこで、ここではデータを その国の傾向としてとらえつつ、各国の事情を比べている。 PC1 台当たりの生徒数(日本と欧米) 図 3-1 は、日本と欧米諸国の学校における、コンピュータ 1 台当たりの生徒数を比べた もので、各国の教育現場における IT 化の進度を表す指標のひとつとして取り上げている。 PC1 台当たりの生徒数が少ない国では学校の IT 投資が充実しており、教育への情報通信技 術の活用に積極的に取り組んでいるとみなすことができる。 36 14 12.4 12 8.3 10 8 7.7 7.7 7.5 5.5 6 4.4 7.1 4.3 4 2 ド ラ ン ア ア イ ル イ タ リ ラ ン ン フ ィ ン ー デ ス ス ウ ェ フ ラ ン イ ツ ド 英 国 ナ ダ カ 米 国 日 本 ド N/A 0 出典:日本(2005 年データ):文部科学省「学校における情報教育の実体等に関する調査結果」(2006) 『コンピュータ整備の実態等』 米国(2003 年データ):米国政府「Internet Access in US Public Schools and Classrooms: 1994-2003」(2005) 『School Access』18 ページ。 カナダ(2003/2004 年データ) :Statistics Canada「Connectivity and ICT integration in Canadian elementary and secondary schools: First results from the Information and Communications Technologies in Schools Survey, 2003-2004)」(2004)『Connectedness, school year 2003/04』42 ページ。 英国、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、イタリア、アイルランド(2003 年データ) :OECD「Education at a Glance 2006」(2006)Chart D5.1.『Number of Students per computer』 図 3-1 PC1 台当たりの生徒数(日本と欧米) 図 3-1 に示される通り、データの入手できなかったフランスを除いた 9 カ国中、PC1 台 当たりの生徒数が最も少なかったのは英国(4.3 人)となっている。ただし、上述の通り、 これらの数値のデータ収集方法が国別で異なっていることから、比較には注意が必要であ る。まず、ここで引用したデータは、日本、米国、カナダの統計が小学校および中学・高等 学校を対象とした調査の平均値であるのに対し、OECD 統計による欧州各国の数値はセカ ンダリー・スクール、つまり日本の中学・高校にあたる学校だけを対象としている点に留意 する必要がある。また、英国の数値が「コンピュータ 1 台あたりの生徒数」であるのに対 し、2 番目に生徒数が少ない米国(4.4 人)の数値が「インターネットに接続したコンピュ ータ 1 台あたりの生徒数」であるため、 「PC1 台当たりの生徒数」を比べた場合には米国の ほうが低い数値となることが予想される。実際、欧州各国のデータとして採用した OECD 37 の調査(2003 年データ)では、米国における「コンピュータ 1 台当たりの生徒数」は 3.4 人という結果も出されている。さらに、数値の確実性という点で、同データを発表した OECD は、英国については調査回答数が少ないために適切な比較にはなっていない可能性 を指摘している。これについて、英国の文部省が発表している 2004 年のデータによると、 PC1 台あたりの生徒数は小学校(Primary)で 7.5 人、中高レベル(Secondary)では 4.9 人 とされており、英国の 1 台当たりの生徒数は実際には OECD データよりも多くなる可能性 を示唆するものとなっている。 PC1 台当たりの生徒数(日本とアジア・オセアニア) 日本を含むアジア・オセアニア地域の国々の学校における PC1 台あたりの生徒数を見る と図 3-2 に示されている通り、オーストラリア(3.6 人)と韓国(3.7 人)において、教育 分野での IT 化が進んでいる様子がうかがわれる。それに続くニュージーランド(4.0 人)、 香港(4.6 人)、および日本(7.7 人)でも PC1 台あたりの生徒数は比較的少ない。ここで 引用したデータは、日本以外の国については中等・高等レベル(Secondary)の学校を対象 としたものである点に留意する必要がある。前述の通り、日本の場合も中学校では 1 台あ たり 6.9 人、高校では同 5.7 人となっており、学年が高まるに連れて生徒数に対するコン ピュータの普及率が高くなっている。ちなみに、ニュージーランドの小学校(Primary)で の PC1 台当たりの生徒数は 5 人、香港の初等レベル(Primary)の学校では同 7.4 人となっ ている。また、タイの初等レベル(Primary)の学校では、PC1 台あたりの生徒数が 90 人 という調査結果も出ている。 38 30 24.0 25 20 15 10 7.7 3.6 5 3.7 4.0 N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A オ ー ニ ス 日 ュ ト 本 ー ラ ジ リ ー ア ラ ン ド 中 国 韓 国 香 港 イ ン 台 ド 湾 ネ マ シ レ ア ー フ シ ィ ア シ リ ン ピ ガ ン ポ ー ル タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オ ン ス ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド 0 4.6 出典:日本(2005 年データ):文部科学省「学校における情報教育の実体等に関する調査結果」(2006) 『コンピュータ整備の実態等』 オーストラリア、韓国(2003 年データ) :OECD「Education at a Glance 2006」 (2006)Chart D5.1『Number of Students per computer』 ニュージーランド(2005 年データ) :ニュージーランド教育省「ICT in Schools Report 2005」 ( 2005) 『 Average number of students per computer (in total)』34 ページ。 香 港 ( 2004 年 デ ー タ ): Education and Manpower Bureau 「 Empowering Learning and Teaching with Information Technology」(2004)1 ページ。 タイ(2004 年データ) :NECTEC 「Thailand ICT Indicators 2005」 (2005) 『Students to Computer Ratio (2004)』 16 ページ。 図 3-2 4. PC1 台当たりの生徒数(日本とアジア・オセアニア) 書式変更 : 箇条書きと段落番号 E-ヘルス E-ヘルスとは、医療分野における情報通信技術の利活用を指す。診察予約やカルテ、処 方箋、診断画像、検査結果などの電子化により、患者と医療提供者双方の負担を軽減させ て医療を合理化したり、医療ミスの防止につなげたりすることを目指し、各国で医療の IT 化が進められている。本章では、 「ウェブサイトを持っている医師の割合」および「ヘルス 情報をインターネットで検索する割合」の 2 つの指標を取り上げ、各国において情報技術 が医療の現場でどの程度取り入れられているかを比較している。 39 ウェブサイトを持っている医師の割合(欧州諸国) 各国の医療の現場で情報技術がどれほど活用されているかを示す指標のひとつとして、 ウェブサイトを持っている医師の割合を挙げることができる。ここでは開業医を対象にし た調査結果を引用して、欧州諸国でウェブサイトを開設している医師の割合を比較してい る。 eUSER の統計によると、図 4-1 に示されている通りウェブサイトを持つ医師の割合が最 も高いのはフィンランド(53%)とスウェーデン(49%)で、開業医の約半数が診療案内 や連絡先を掲示したウェブサイトを設けている。また、英国でも独自のウェブサイトを開 設する医師の数が増えている。英国の場合、病院や公の診療所は全てウェブサイトがあり、 全国的なガイドラインに沿った形式で基本的な情報を提供している。 60 % 53 49 50 43 40 32 30 22 20 12 9 10 ン ド ア タ リ イ ル ラ ア イ ン ド フ ィ ン ラ デ ン ス ウ ェ ー ス フ ラ ン イ ツ ド ナ ダ N/A カ 米 国 日 本 N/A 英 国 N/A 0 出典: (2002 年データ) :eUSER「eHealth Country Brief: France」(2005) 『General Practitioners with Websites』 図 4-1 ウェブサイトを持っている医師の割合(欧州諸国) 図 4-2 は、調査直前の 12 カ月間にインターネットを使ってヘルス関連情報を検索したこ とのある人が各国の 15 歳以上の人口中に占める割合を示している。米国では 4 割以上の人 が医療情報の検索にインターネットを利用しており、欧州においても利用が 2 割を超えて 40 いる国が多い。ヘルス関連情報の入手にインターネットを利用する人の数は、その国にお けるインターネットの普及率や、信頼できる医療情報が政府や医療機関からその国の言語 でどれほど豊富に提供されているかによっても左右されると見られる。 50 % 45 40 31 30 30 23 24 24 20 14 12 10 ラ ン ド ア イ ル イ タ リ ア ラ ン ド フ ィ ン ー デ ン ス ウ ェ フ ラ ン ス ツ ド イ 英 国 ダ カ ナ 日 本 N/A 0 米 国 0N/A 0 出典: (2002-2003 年データ) :eUSER「eHealth Country Brief: France」(2005)『 Internet Use for Searching Health Information』 図 4-2 5. ヘルス情報をインターネットで検索する割合(欧米諸国) 書式変更 : 箇条書きと段落番号 電子商取引 第 5 章では、調査対象国・地域における電子商取引市場規模を比較し、その進展状況を 分析している。本調査では、「電子商取引市場規模」、「国民 1 人当たりの電子商取引額」、 「企業におけるインターネット接続率」、「調達・販売にインターネットを利用する企業の 割合」の 4 項目を取り上げている。 電子商取引市場規模(日本と欧米) 日本と欧米各国の電子商取引市場における企業間取引(B2B)と、企業・消費者間の取 引(B2C)を合わせた市場の規模は、図 5-1 のようになっている。ここで取り上げている 41 電子商取引は原則的に EDI(Electronic Data Interchange)を含めた、つまり、VAN や専用回 線などによる、インターネット以外の電子媒体を介した商取引も計算に入れた広義の E コ マースの数値を取り上げている。ただし、日本と米国の政府による資料には同数値が EDI を含むと明記されているが、カナダや英国の場合はインターネット上の商取引の数値であ り、その他の国々については EDI を含むかどうかについて資料に明記されていない。 25,000 億ドル B2C 294 20,000 B2B 1,300 15,000 18,820 18,210 10,000 422 ド リ ア N/A ル ラ タ イ ア ン ラ ィ イ ン デ ス ウ フ N/A ド ン ン ス ツ 36 1,135 N/A ン 158 3,814 イ ド 国 1,038 英 ダ ナ カ 国 米 日 本 0 フ 355 ラ 103 206 ェ ー 5,000 注:フィンランドの数値については B2B と B2C の内訳が公表されていない。 出典:日本(2005 年データ) :経済産業省「平成 17 年度電子商取引に関する市場調査 報告書」 (2006) (2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=119.02 円で換算)29-32 ページ。 米国(2004 年データ) :米国政府「 E-Commerce 2004」 (2006) 『US Shipments, Sales, Revenues and E-commerce:2004 and 2003』2 ページ。 カナダ(2005 年データ) :カナダ政府「Survey of Electronic Commerce and Technology」 (2006) 『Value of online sales』(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=1.1652 加ドルで換算) 英 国 ( 2004 年 デ ー タ ): 英 国 政 府 「 Information and Communication Technology Activity of UK businesses, 2004」(2006)(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=0.510569 英ポンドで換 算)2-3 ページ。 ドイツ(2005 年データ) :ドイツ政府「Monitoring the Information Economy-9 th Factual Report」 ( 2006) 『Germany:E-Commerce turnover in billion Euros, 2002-2009』(2006 年 12 月 29 日時点での為替レ ート 1 米ドル=0.757758 ユーロで換算) フランス(2004 年データ) :電子商取引推進センター「海外における EC 推進状況調査報告書 2005」 ( 2006) 『表 1-91 フランスの電子商取引市場の規模推移』European Information Technology Observatory..91 ページ。(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=0.757748 ユーロで換算) フィンランド(2005 年データ) :フィンランド政府「Finland:Value of online trading up 40% in 2005」 (January 11, 2006)(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=0.757748 ユーロで換算) 図 5-1 電子商取引市場規模(B2B・B2C:日本と欧米) 42 電子商取引市場規模(日本とアジア・オセアニア) 政府や公的機関による 2005 年データ収集が可能であったアジア諸国と日本(2005 年:1 兆 9,114 億ドル)の電子商取引市場を比較すると、日本の電子商取引市場が他国を大きく 引き離して最大規模で、2 位は韓国(2005 年:3,854 億ドル)となっている。ただし、こ こでも日本と韓国の B2B 市場規模が EDI を含んでいるのに対し、その他の国々のデータは オーストラリアのようにインターネットを介した電子商取引のみを対象としていたり、あ るいは EDI を含んでいるかどうかについて資料に明記されていないという点を考慮に入れ た上で数値を見比べる必要がある。また、韓国とタイの市場規模合計額には B2G の数値も 含まれている。調査対象年度としては基本的に 2005 年のデータを取り上げており、日本、 中国、オーストラリア、韓国、台湾の各国については 2005 年データを引用しているが、香 港は 2004 年、そしてタイは 2003 年の数値となっている。 43 億ドル 25,000 B2C B2B 294 20,000 15,000 18,820 10,000 85 3,432 20 イ N/A N/A N/A ト ナ タ イ ル ネ ブ N/A N/A ム ラ オ カ ン ス ボ ミ ジア ャ ン マ ー イ ン ド N/A N/A N/A 16 台 湾 ネ シ マ レ ア ー フ シア ィ シ リピ ン ガ ン ポ ー ル ド ン 香 港 N/A N/A イ ス 日本 ト ー ラリ ジ ー ア ラ ン ド ー ュ オ 66 35 ニ 中 国 N/A 0 0 658 韓 国 312 ベ 5,000 注 1:オーストラリアと香港、台湾の数値については B2B と B2C の内訳が公表されておらず、合計額の みとなっている。 注 2:韓国政府によるデータの合計には、B2G(Business to Government)とその他(Others)が含ま れている。 注 3:タイ政府によるデータの合計には B2G(Business to Government)が含まれている。 出典:日本(2005 年データ) :経済産業省「平成 17 年度電子商取引に関する市場調査 報告書」 (2006) (2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=119.02 円で換算)29-32 ページ。 オーストラリア(2005 年データ):オーストラリア政府「Business Use of Information Technology, 2004-2005」(2006)(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=1.26839 豪ドルで換算) 中国(2005 年データ):電子商取引推進協議会「海外における EC 推進状況調査報告書 2005」(2006) (2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=7.8041CNY で換算)(ハードコピー)30 ページ。 韓国(2005 年データ):韓国政府「E-commerce in 2005 and the Fourth Quarter 2005」(2006)(2006 年 12 月 29 日時点の為替レート 1 米ドル=930 ウォンで換算) 香港(2004 年データ):香港政府「Business Receipts From Selling Goods, Services or Information Through Electronic Means 2004」(2005)(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル= 7.7771 HKD で換算) 台湾(2005 年データ):台湾政府「e-Taiwan」(2006)『Enterprise online transaction value』(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=32.59 台湾ドルで換算)6 ページ。(ハードコピー) タイ(2003 年データ):NECTEC「Thailand ICT Indicators 2005」(2006)『E-commerce transaction value (2003)』(2006 年 12 月 29 日時点での為替レート 1 米ドル=36.1 バーツで換算)45 ページ。 図 5-2 電子商取引市場規模(B2B・B2C:日本とアジア・オセアニア) 44 国民 1 人当たりの電子商取引額(日本と欧米) 電子商取引市場の規模と同様に、 「国民 1 人当たりの電子商取引額」にも各国の電子商取 引の進展状況が反映されている。ここでは米国中央情報局(Central Intelligence Agency: CIA)が発表している人口データを用い、図 5-1 に引用されている各国の電子商取引額を それぞれの人口で割って国民 1 人当たりの電子商取引額を算出し、図 5-3 にその結果を示 している。中央情報局は、国勢調査局によるデータをもとに世界各国の統計的な情報をま とめ、「ワールド・ファクト・ブック(World Fact Book)」の中で公開している。 16,000 ドル 14,996 14,000 12,000 10,000 8,000 6,537 6,000 5,140 4,000 2,298 2,124 681 N/A N/A ル ラ リ ア ア イ ン ラ デ ン フ ィ ス ウ ェ ー ン ス ツ フ ラ ド イ 英 国 ダ カ ナ 米 国 日 本 ン ド N/A 0 ン ド 933 イ タ 2,000 注 1:各国の数値は、図 5-1 の数値を人口(米中央情報局公開数値)で割って計算したもの。 図 5-3 国民 1 人当たりの電子商取引額(日本と欧米) このデータを比較すると、国民 1 人当たりの電子商取引額が最も高いのは日本(1 万 4,996 ドル)で、2 位の米国(6,537 ドル)の 2 倍以上となっている。日本と米国の電子商取引市 場規模にはさほどの差は無いが、米国の人口(2 億 9,844 万 4,215 人)が日本の人口(1 億 2,746 万 3,611 人)の 2.3 倍以上あることから、1 人当たりの取引額は日本の方が大幅に高 くなる。その他の国々では、額が高い順にドイツ(5,140 ドル)、英国(2,298 ドル)、フラ ンス(2,124 ドル)、カナダ(933 ドル)、フィンランド(681 ドル)となっており、スウェ 45 ーデン、イタリア、アイルランドの 3 ヵ国については今回データが入手できなかった。 国民 1 人当たりの電子商取引額(日本とアジア・オセアニア) 日本とアジア・オセアニアの国々における国民 1 人当たりの電子商取引額が図 5-4 に示さ れている。ここでも調査年度の違い(日本、中国、オーストラリア、韓国、台湾は 2005 年、香港は 2004 年、タイは 2003 年)や、EDI の扱いの違いなどに留意したうえで数値を 見比べる必要がある。 下図からも明らかな通り、データを入手できた 6 カ国中、1 人当たりの電子商取引額が 最も高いのは日本(1 万 4,996 ドル)で、次に多い韓国(7,891 ドル)を大幅に上回ってい る。その他の国々は、額の高い順にオーストラリア(1,541 ドル)、香港(511 ドル)、台湾 (286 ドル)、中国(52 ドル)、タイ(27 ドル)となっており、それ以外の 11 ヵ国につい ては政府や公的機関によるデータが入手できなかった。 16,000 ドル 14,996 14,000 12,000 10,000 7,891 8,000 6,000 4,000 1,541 N/A N/A N/A N/A 27 N/A N/A N/A N/A N/A N/A タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ オ カ ン ス ボ ミ ジア ャ ン マ ー イ ン ド 香 港 韓 国 オ ー 日 ニ スト 本 ュ ー ラリ ジ ー ア ラ ン ド 286 イ ン 台 ド 湾 ネ マ シア レ ー フ シア ィ シ リピ ン ガ ン ポ ー ル 511 N/A 52 0 中 国 2,000 注 1:各国の数値は、図 5-2 の数値を人口(米中央情報局公開数値)で割って計算したもの。 図 5-4 国民 1 人当たりの電子商取引額(日本とアジア・オセアニア) 46 企業におけるインターネット接続率(日本と欧米) 日本や欧米の調査対象国の企業では、全体的にインターネット接続率が高くなっており、 日本(97.6%:サンプル数 1,406)、フィンランド(97.0%、サンプル数不明、常勤従業員 10 名以上の企業)、ドイツ(96.0%:サンプル数 502)、英国(95.0%:サンプル数 2,716)、ス ウェーデン(95.0%:サンプル数不明、従業員数 10 名以上の企業)、米国(94.0%:サンプ ル数 501)、イタリア(92.0%:サンプル数 504)、アイルランド(92.0%:サンプル数 11,056、 従業員数 10 人以上の企業)などの国々では接続率が 9 割以上となっている。 % 100 97.6 95 97.0 96.0 95.0 94.0 95.0 92.0 90 92.0 88.0 85 81.6 80 75 ド ン ア ア イ ル ラ タ リ ド ラ ン ー フ ィ ェ イ ン ン デ ス ス ウ フ ラ ン イ ツ ド 国 英 ナ ダ カ 国 米 日 本 70 出典:日本(2005 年データ):総務省「平成 17 年通信利用動向調査報告書 企業編」(2006)『インター ネットの利用状況』14 ページ。 米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア(2004 年データ) :英国貿易産業省「DTI International Benchmarking Study 2004」(2004) Table 17『Technologies used by business』31 ページ。 カナダ(2005 年データ):カナダ政府「The Daily:Electronic commerce and technology」 ( 2006) 『Internet use and presence of Web sites』8 ページ。 スウェーデン(2005 年データ):スウェーデン政府「Use of ICT in Swedish enterprises 2005」 (2005)Table 4『 Share of enterprises with access to the Internet by size and industry, year 2005, 10 employees or more, per cent』44 ページ。 フィンランド(2004 年データ):EuroStat「Share of enterprises having access to the Internet」 アイルランド(2005 年データ):アイルランド政府「Information Society and Telecommunications 2005 」 (2006) Table 3.4 『Main results of enterprise ICT Survey, as percentage of all enterprises-March 2004 and 2005』 23 ページ。 図 5-5 企業におけるインターネット接続率(日本と欧米) 47 企業におけるインターネット接続率(日本とアジア・オセアニア) 日本とアジア・オセアニア諸国の企業についてインターネット接続率を比べると、図 5-6 に示されている通り、韓国(100%:サンプル数 500)における接続率が最も高くなってい る。また、日本(97.6%:サンプル数 1,406)とニュージーランド(94.5%:サンプル数不 明)でも、接続率は 9 割以上に達している。 100 90 80 % 97.6 94.5 100.0 82.8 77.0 71.0 70 62.4 60 54.7 50 38.3 40 30 20 N/A N/A N/A N/A N/A タ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ オ カ ン ス ボ ミ ジア ャ ン マ ー イ ン ド N/A イ ン 台湾 ド ネ マ シア レ ー フ シア ィ シ リピ ン ガ ン ポ ー ル 港 国 N/A N/A 香 韓 中 オ ー 日 ニ スト 本 ュ ラ ー ジ リア ー ラ ン ド 国 N/A 0 ブ 10 出典:日本(2005 年データ):総務省「平成 17 年通信利用動向調査報告書 企業編」(2006)『インタ ーネットの利用状況』14 ページ。 オーストラリア(2005 年データ) :オーストラリア政府「Australian Bureau of Statistics survey of Business Use of Information Technology」(2006)『Business use of selected technologies』 ニュージーランド(2001 年データ):OECD「OECD Key IT indicators」(2006)7a.『Internet penetration by size class, 2005. Percentage of businesses with 10 or more employees』 韓国(2004 年データ):英国貿易産業省「DTI International Benchmarking Study 2004」(2004) Table 17 『Technologies used by business』31 ページ。 香港(2005 年データ):香港政府「Annual Survey on Information Technology Usage and Penetration in Business Sector」(2005) 『Internet Usage-Establishments having Internet Connection』 台湾(2005 年データ):台湾政府「e-Taiwan」(2006) 6 ページ。(ハードコピー) フィリピン、タイ(2002 年データ) :UNCTAD「E-Commerce and Development Report 2004」 (2004)Annex I Table 1.11『ICT usage in enterprises, 2002, or latest available year-Proportion of firms with internet access』20 ページ。 シンガポール(2005 年データ) :シンガポール政府「Measuring Infocomm Usage by Companies, 2005」Figure 2『Usage of Internet』 図 5-6 企業におけるインターネット接続率(日本とアジア・オセアニア) 48 調達・販売にインターネットを利用する企業の割合(日本と欧米) 図 5-7 は、日本と欧米諸国ににおけるインターネットを使った調達と販売を実施してい る企業の割合を示したもので、各国とも販売よりも調達にインターネットを利用する企業 の割合が高い様子がわかる。まず、インターネットを利用した調達を実施している企業の 割合を比較すると、米国が 58.0%(サンプル数 501)と最も高率で、アイルランド(54.0%、 サンプル数不明)、英国(50.8%、サンプル数不明)、カナダ(43.4%、サンプル数不明)、 ドイツ(41.5%、サンプル数不明)、スウェーデン(41.1%、サンプル数不明)、フランス(33.0%、 サンプル数 501)の国々がそれに続いている。次に、販売にインターネットを利用する企 業の割合を見ると、米国(34.0%、サンプル数 501)、英国(25.2%、サンプル数不明)、ア イルランド(24.0%、サンプル数不明)、スウェーデン(23.2%、サンプル数不明)、フラン ス(22.0%、サンプル数 501)などの国々で利用率が 2 割を超えている。 % 70 調達 58.0 60 43.4 40 41.5 41.1 34.0 33.0 30 25.2 20.1 20 54.0 販売 50.8 50 23.2 22.0 16.0 15.2 24.0 19.1 17.4 7.3 10 4.2 2.7 ル ラ ン タ リ ド ア ド ア イ イ ン ラ ィ フ ス ウ フ ェ ー ン デ ラ ン ン ス ツ イ ド 国 英 ダ ナ カ 国 米 日 本 0 出典:日本(2004 年データ):総務省「平成 17 年通信利用動向調査報告書 企業編」(2006)『インター ネットを利用した調達及び販売の導入状況』93 ページ。 米国、フランス(2004 年データ):英国貿易産業省「DTI International Benchmarking Study 2004」(2004) Fig. 7.3a『Businesses that place orders online, 2002 to 2004 (%) 』Fig. 7.3b『Businesses that allow customers to order online, 2002 to 2004』74 ページ。 カナダ(2005 年データ):カナダ政府「Business and government use of information and communications technologies 」( 2006 )『 Enterprises that sell goods/services over the Internet 』『 Enterprises that purchase goods/services over the Internet』 英国、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、イタリア(2005 年データ) :OECD「OECD Key ICT indicators」 (2006)7b. 『Internet selling and purchasing, 2005. Percentage of businesses with 10 or more employee』 アイルランド(2005 年データ):アイルランド政府「Information Society and Telecommunications 2005 」 (2006)Table 3.6『 Purchases and sales via e-commerce-March 2004 and 2005』25 ページ。 図 5-7 調達・販売にインターネットを利用する企業の割合(日本と欧米) 49 調達・販売にインターネットを利用する企業の割合(日本とアジア・オセアニア) 調達に関するデータのある 7 カ国のうち、インターネットを通じた調達を実施している 企業の割合が最も高いのはオーストラリア(33.0%、サンプル数不明)で、韓国(29.5%、 サンプル数不明)とニュージーランド(26.8%、サンプル数不明)でも利用率は 3 割前後 となっている。それに続く日本(20.1%、サンプル数 1,406)、香港(15.4%、サンプル数不 明)、台湾(11.8%、サンプル数不明)などでも、1 割から 2 割程度の企業で調達にインタ ーネットが活用されている。販売にインターネットを利用する企業の割合については、デ ータのある 8 カ国中、日本(サンプル数 1,406)が 15.2%で最も高くなっている。その他、 オーストラリア(12.0%、サンプル数不明)、ニュージーランド(10.7%、サンプル数不明)、 タイ(9.9%、サンプル数不明)などでも 10%前後の利用率が見られている。 35 % 33.0 調達 販売 29.5 30 26.8 25 20.1 15.2 15.4 11.8 10.7 5 2.5 1.8 港 国 N/A 香 韓 中 国 N/A 0 オ ー 日 ニ スト 本 ュ ラ ー ジ リア ー ラ ン ド 9.9 8.7 7.7 1.9 N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オス ン ボ ミ ジア ャ ン マ ー イ ン ド 10 ド 湾 ネ マ シア レ ー フ シア ィ シ リピ ン ガ ン ポ ー ル 12.0 台 15 イ ン 20 出典:日本(2005 年データ):総務省「平成 17 年通信利用動向調査報告書 企業編」(2006)『インター ネットを利用した調達及び販売の導入状況』93 ページ。 オーストラリア(2005 年データ) :オーストラリア政府「Australian Bureau of Statistics survey of Business Use of Information Technology」(2006)『Orders for goods and services via the Internet or Web』 韓国、ニュージーランド(2005 年データ、ニュージーランドのみ 2001 年データ):OECD「OECD Key Indicators」(2006)7b『Internet selling and purchasing, 2005. Percentage of businesses with 10 or more employee』 香港(2005 年データ) :香港政府「Summary of Survey Results/Annual Survey on Information Technology Usage and Penetration in the Business Sector」(2005)『Electronic Business』 台湾(2005 年データ):台湾政府「e-Taiwan」(2006)ハードコピー、6 ページ。 フィリピン、タイ(2002 年データ) :UNCTAD「E-Commerce and Development Report 2004」 (2004)Annex I Table 1.11『ICT usage in enterprises, 2002, or latest available year-Proportion of firms with internet access』20 ページ。 図 5-8 調達・販売にインターネットを利用する企業の割合(日本とアジア・オセアニア) 50 6. 書式変更 : 箇条書きと段落番号 IT セキュリティ 第 6 章では、「人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数」、および「IT セキュリティ上の 被害を受けた企業・団体の割合」という 2 つの指標を取り上げ、IT セキュリティを取り巻 く各国の状況をまとめている。IT セキュリティの問題は、個人情報保護やネットワークの 安全性・信頼性などにも深く関わっているため、電子商取引はもちろんのこと、医療や教 育の電子化、行政手続の電子申請など、社会の基幹分野の電子化を進めていくのと同時に セキュリティ対策も強化していくことが各国の課題となっている。 人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数(日本と欧米) 図 6-1 は、各国の人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数を示したもので、OECD が 2005 年に発表したデータ(2004 年 7 月)を引用している。各国に存在するセキュアサーバ数を 人口比で見ると、セキュアサーバ数が最も多い米国では 10 万人当たり 69 台で、OECD 加 盟国中 1 位のアイスランド(同 85.7 台)に次いで世界のトップレベルにある。それに続く カナダ(同 47.9 台)や英国(同 34.3 台)を大きく引き離している。また、スウェーデン (同 31.5 台)、アイルランド(同 30.1 台)などでも人口比のセキュアサーバ数が比較的高 く、OECD 加盟国全体の人口比平均台数である 27 台を上回っている。一方、フィンランド (10 万人当たり 24.1 台)とドイツ(同 16.0 台)、日本(同 15.4 台)、フランス(同 6.2 台)、 イタリア(同 3.4 台)の各国では、人口比のセキュアサーバ台数が OECD の平均値を下回 った。 51 80.0 台 67.9 70.0 60.0 47.9 50.0 40.0 34.3 31.5 30.1 30.0 24.1 16.0 15.4 20.0 6.2 10.0 3.4 ド ラ ン ド リ ア ア イ ル イ タ ラ ン ン ー デ フ ィ ン ン ス ス ウ ェ フ ラ ド イ ツ 英 国 カ ナ ダ 米 国 日 本 0.0 出典:(2004 年データ):OECD「OECD Communications Outlook 2005」(2005)Table 5.10『Secure Servers in OECD Countries, 1998-2002』157 ページ。(ハードコピー) 図 6-1 人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数(日本と欧米) 人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数(日本とアジア・オセアニア) 日本とアジア・オセアニア諸国における人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数が図 6-2 に示されている。アジア・オセアニア地域の OECD 加盟国のうち、セキュアサーバの絶対 数が最も多いのは日本(1 万 9,610 台)であるが、人口 10 万人当たりの台数となると、ニ ュージーランド(41.3 台)とオーストラリア(40.4 台)のほうが日本の台数(15.4 台)を 大きく上回っている。ニュージーランドとオーストラリアの人口比セキュアサーバ数は、 欧米諸国と比べても米国とカナダに次ぐ高い水準にある。 52 45.0 台 40.4 40.0 41.3 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 15.4 10.0 1.8 5.0 N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A オ ー ニ ス 日 ュ ト 本 ー ラ ジ リ ー ア ラ ン ド 中 国 韓 国 香 港 イ ン 台 ド 湾 ネ マ シ レ ア ー フ シ ィ ア シ リ ン ピ ガ ン ポ ー ル タ ブ イ ル ネ ベ イ ト ナ ム ラ カ オ ン ス ボ ミ ジ ャ ア ン マ ー イ ン ド 0.0 出典:(2004 年データ):OECD「OECD Communications Outlook 2005」(2005)Table 5.10『Secure Servers in OECD Countries, 1998-2002』157 ページ。(ハードコピー) 図 6-2 人口 10 万人当たりのセキュアサーバ数(日本とアジア・オセアニア) インターネットの利用にあたって、どの国でもセキュリティ上の不安、特に個人情報の 保護に不安を抱いているユーザは少なくない。総務省が 2005 年に実施した調査の結果によ ると、日本ではインターネット利用者の半数以上にあたる 56.9%が個人情報の保護に不安 を感じており、ウィルス感染への心配(46.9%)、電子的決済手段の信頼性への不安(34.6%) など、安全面を懸念している利用者が多いことが明らかになっている。こうした安全面の 不安は、インターネットの利用者にとって、通信料金や PC などの機器のコスト、機器の 操作方法習得などよりも大きな懸念材料となっている。 7. 書式変更 : 箇条書きと段落番号 政策提言 以下は、2006 年度 IT ベンチマーク調査に取り上げた定量・定性データをベースとして、 「IT インフラ」と「IT 利活用」という点から政策提言をまとめたものである。「IT インフ ラ」改善や「IT 利活用」促進を行う上での重要なポイントは、本調査で取り上げた情報以 外の様々な観点・要素からも導き出されるものであるが、ここでは本調査の内容に限定し た立場から、今後の日本の IT 環境向上に役立つと思われる点を挙げている。日本が他国に 53 比べて進んでいる分野には◎、他国に遅れはとっていないが、改善の余地がある分野には ○、そして日本が他国よりも遅れている分野は△で表されている。 IT インフラ 低速・高速ブロードバンドの利用料金が比較的低く設定されている日本は、 ブロードバンドの普及率が高い。プロバイダー間の競争を維持・促進し、質 の高いブロードバンド・サービスを低価格で提供し続けることが期待され る。 日本は、携帯ブロードバンドが他国に比べると広範に亘り普及している。高 機能で使いやすいサービスと手ごろな利用料金を提供することが、携帯ブロ ードバンドをより普及させていく鍵となる。 日本ではインターネット接続技術のひとつとして、積極的に光ファイバーを 導入している。今後は、より速い高速ブロードバンド・サービスを提供する ために、光ファイバーの普及を積極的に行っていくことが期待される。 他の先進国に比べて、日本における人口 100 万人あたりのセキュアサーバ数 は非常に少ない。日本の電子商取引市場規模は、1 位の米国とあまり変わら ない大きさであるが、セキュアサーバ数は米国の約 1/5 となっている。IT セ キュリティ上の問題により被害を受けた日本の企業・団体の割合は減少傾向 にあるが、依然として深刻な問題となっている。情報技術の発展に伴い社会 の IT 化が急速に進んでいる中、日本はより積極的にセキュリティ対策を進 めていく必要がある。 IT 利活用 日本の電子商取引市場規模は年々増加の傾向にあり、1位の米国との差も縮 まっている。この調子で市場規模を拡大していくことが期待される。特に、 日本の国民 1 人当たりに換算した電子商取引額は約 1 万 5,000 ドルで、2 位 の台湾とも約 2 倍の差をつけており、他国を圧倒している。 日本の企業におけるインターネット接続率は高く、過去 4 年間安定している。 企業の規模や産業の種類に関わらず、全体的に企業によるインターネット利 用度が向上している。 日本の電子政府の評価は徐々に高まってきているが、オンライン・サービス の拡張や検索機能の改善など、常に積極的な姿勢で電子政府の取り組みを行 っていくことが重要である。 インターネットを利用して調達・販売を行っている日本の企業の割合は、他 の欧米先進国よりも低い。セキュリティ面に関する安全性に不安を抱いてい る企業が多いため、セキュリティ対策を強化することによって、調達・販売 にインターネットを利用する企業が増える可能性が高い。 54 ◎ ◎ ◎ △ ◎ ○ ○ △ 第2部 IT 政策編 55 総 論 情報技術(IT: Information Technology)政策は、欧米の先進主要国のみならずアジア諸国 や国際機関等でも活発に議論されており、今や特定な国のみの政策にとどまらずグローバ ルなテーマとなった。また、世界的な IT 不況の中でも、各国並びに国際機関が経済発展の 推進力として情報技術に寄せる期待は変わっていない。 米国では、電子政府政策の実施において主導的役割を担う行政管理予算局は 2005 年 12 月、「Expanding E-Government: Improved Service Delivery for the American People Using Information Technology」を発表した。レポートでは、サービス提供の向上、エンタープラ イズ・アーキテクチャの役割の拡大、来年の大統領管理目標の一環として達成すべき目標 についてまとめている。また、ブッシュ大統領は 2006 年 1 月の年頭教書演説で①A Strong America Leading the World ②American Competitiveness Initiative(米国競争力イニシアチブ) ③The Advanced Energy Initiative ④Affordable and Accessible Health Care との 4 つのイニシア チブを発表した。この内、特に IT とのつながりの深いのは②の「米国競争力イニシアチブ」 である。同イニシアチブは、研究投資の増額、技術革新の促進、数学・科学を中心とした 教育の充実を柱とする。 カナダでは、1999 年に開始された「Government On-Line」イニシアチブが、2006 年 3 月 に終了し、130 のサービスがオンライン化されている。本イニシアチブでは、カナダ政府 ポータルサイトのアクセス性の向上、サービスの質と応答性の向上、信頼の確保が実現し た。また、カナダ産業省は、農村北方開発のためのブロードバンド試験プログラム、国家 衛星構想などのプログラムを通じて、カナダの全コミュニティへの情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)の普及を促進した。コミュニティにアクセスポ イントを設置する「コミュニティ・アクセス・プログラム」もこうした取り組みの一環と して 2006 年まで 2 年間延長されている。 一方、欧州連合では、2005 年 6 月、情報社会政策「i2010: European Information So ciety 2010」が採択された。i2010 イニシアチブは、成長と雇用の促進を目指すリスボン 戦略において中心的役割を果たす政策のひとつで、2005~2010 年に実施する主な行動を 定めている。英国では e-Envoy 局に代わる新組織として設立された e-Government Unit に、2005 年 1 月、最高情報責任者(CIO: Chief Information Officer)カウンシルが設置 された。CIO カウンシルは 2005 年 11 月、英国政府の IT 活用戦略「政府の変革 - 技術の 56 力」を発表した。戦略の実施時期は、フェーズ 1(2005 年 11 月~2007 年 7 月)、フェー ズ 2(2007 年 8 月~2011 年)、フェーズ 3(2011 年以降~)に分かれている。フェーズ 1 の変革は、21 世紀の政府のビジョンとして、①利用者中心②シェアドサービス③IT プロ フェッショナルの育成の 3 つを重点項目としている。アイスランドは、情報社会の発展に おいて、すでに優れた成果を収めており、1996 年以降実施されてきた各種プロジェクトは 2003 年 2 月に正式に完了している。現在は 2004 年 4 月に発表された、2004-2007 年を対 象とした情報社会政策文書「万人のための資源:2004-2007 年アイスランド政府情報社会 政策」を実施している。フィンランドは、2003 年 6 月、情報社会の発展を方向付け、省 庁間の協力を調整するための組織として情報社会評議会を設置、2003 年 9 月には政府の 包括的な情報社会政策プログラムが策定された。2015 年までを対象とした新しい国家情報 社会戦略の策定が 2006 年中に行われる予定である。また、2004 年 1 月に発表された、2 004~2007 年を対象とした「国家ブロードバンド戦略」の中間目標は、接続数、地域カバ レージともに前倒しで達成されている。デンマークでは、2003 年 10 月に IT 行動計画「U sing IT Wisely」が発表されている。この計画は、世界の ICT 主導国としてのデンマーク の地位強化を目標としている。また、デンマークの電子政府政策は、2001 年の「Project e-Government」からスタートし、現在は「デンマーク電子政府戦略 2004–2006」を実施 中である。そのビジョンは、 「デジタル化は、市民や企業に高品質のサービスを提供する効 率的で一貫性ある公的部門の創造に貢献しなければならない」と述べられている。ドイツ では、2006 年 8 月、技術革新政策に焦点化した新たな包括的国家プログラムとして「ド イツ・ハイテク戦略」が承認されている。同プログラムは、教育研究省の主導により省庁 横断で推進し、科学界、産業界、市民社会との協力も求められる。2006 年 3 月、連邦内 閣は、ドイツ・ハイテク戦略の一環として経済技術省に新しい連邦政府アクションプログ ラム「情報社会ドイツ 2010」を 2006 年 8 月までに策定することを指示、同プログラムは 2006 年 11 月に承認されている。フランスでは、2002 年 11 月に発表された「RE/SO 20 07(情報社会におけるデジタル共和国構想)」が IT 政策の柱として位置づけられ、これに 沿った様々な施策が実施されている。2006 年 7 月には第 5 回情報社会省庁間委員会が開 催され、RE/SO 2007 が実施されてきた結果として、フランスはデジタル大国として認め られるようになった、としている。 インドでは、2002 年 12 月に承認された、2007 年までを対象とする「第 10 次 5 カ年計画」 が実施され、ソフトウェアおよび IT サービスの持続的成長の確保と、グローバル市場にお けるインドのシェア拡大などが目指されている。ベトナムでは、ICT が優先化や開発支援 を必要としている主要経済産業であり、経済発展に大きく貢献すると判断し、2005 年 10 57 月、「2010 年に向けた IT 開発戦略」を発表した。主要経済分野に幅広く ICT を適用し、e市民、e-政府、e-企業、e-取引、e-商業を計画し、ASEAN 諸国の平均以上の水準まで発展 させることを目標としている。中国では、2001 年から開始された「第 10 次 5 ヵ年計画」 が終了し、2006 年 3 月、中国共産党中央委員会全体会議で「第 11 次 5 カ年計画(2006~ 2010 年)」策定に関する提案が採択された。「第 11 次 5 カ年計画」では、情報技術分野で の独創能力、情報化発展能力を強化し、国民経済と社会の情報化に有力な基盤を提供して いくことが重視されている。また,2006 年 5 月、中国共産党と国務院は、次の 15 年間の 情報化目標を定めた「国家情報化発展戦略(2006 年~2020 年)」を発表した。戦略の実施 は、情報社会に向かって進む中国の基盤をなし、情報化は社会経済発展促進において重要 な役割を果たすとされている。香港特別行政区政府は、2006 年 10 月、「2007 デジタル 21 戦略」について、2 カ月間にわたる公的諮問を行うと発表した。同戦略は、2007 年上半期 に発表される予定である。 「2004 デジタル 21 戦略」が世界的デジタル都市の地位を維持す る青写真であったのに対し、新戦略は世界的デジタル都市としての役割強化をビジョンと して掲げている。台湾政府では、2002 年 5 月に承認された「チャレンジ 2008 計画」の一 環として「e-台湾計画」が実施されている。同計画は、2008 年までに台湾をハイテクサー ビスの島にし、アジアで最も進んだ電子国家にすることである。また、国家的公共事業計 画「新十大建設計画」の一環として、モバイルインターネットの可能性を認識し、その競 争力を高めるべく、「m-台湾計画」が実施されている。韓国では、情報通信省が 2006 年 2 月、IT839 戦略の戦略項目を一部統合/追加した「u-IT839 戦略」を発表した。新戦略では、 技術革新を考慮して一部項目が統合されるとともに、ソフトウェア競争力を強化する政策 目的を反映した新項目が追加された。さらに 2006 年 3 月、情報化推進委員会の決議を受け て、世界初のユビキタス社会に向けて「u-Korea マスタープラン」が最終承認を受けた。 「u-Korea マスタープラン」は、 「Broadband IT Korea VISION 2007」を受け継ぐ政策であり、 IT を活用して新しい社会経済的要求に対応し、全国的な技術革新を実現して、ユビキタス 社会の世界最先進国となる青写真を描いている。 2006 年 10 月、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力 開発機構)は「OECD 情報技術アウトルック 2006」を発表した。これは、近年の IT 産業 の動向と発展、その経済社会への影響を調査・分析した報告書である。 表1に主要国等における最近の情報技術政策の経緯を示す。 58 表1 国・地域・ 主要国等における最近の情報技術政策経緯 発表時期 テーマ・概 要 国際機関 米 国 2002 年 2 月 「A Nation Online」 2001 年 9 月、1 億 4,300 万人(人口の 54%)、インターネットを使用。 1 億 7,400 万人(人口の 66%)、コンピュータを使用 2002 年 2 月 「デジタル・エコノミー 2002」 景気後退にもかかわらず、米国産業は国内の IT 資本ストックを形成 し続け、経済基盤の持続的強化をもたらしていると結論 2002 年 2 月 「E-government Strategy」 24 のイニシアチブ(24 の行政サービス)を電子政府構想の具体策と して発表 2003 年 2 月 「サイバー空間セキュア化のための国家戦略」 3 つの戦略目標:①米国の重要インフラに対するサイバー攻撃の防 止、②サイバー攻撃に対する国の脆弱性の低減、③サイバー攻撃発 生時の損害と回復時間の最小化 2003 年 12 月 「デジタル・エコノミー 2003」 IT 産業は、経済成長率 2.9%のうち 0.8%を占有、また、IT は市民 生活に深く浸透し、経済全体の成長に欠かせない存在となっている と結論 カナダ 2002 年 3 月 「2002‐2003 年における計画・優先的政策に関するリポート」 5 つの戦略目標:①革新、②接続性、③市場、④投資、⑤貿易 2004 年 4 月 「開かれた社会を守る: カナダの国家安全保障方針」 国民全体の安全への脅威に対応する総合的な戦略と行動計画を示す 2004 年 5 月 「電子認証原則」 21 世紀経済のデジタル環境における信頼性の構築 59 欧州連合 2000 年 6 月 「eEurope 2002 アクションプラン」 3 つの主要目標:①より低価格で速度の速い、より安全なインター ネット、②人材及びスキルへの投資、③インターネット利用の推進 2002 年 5 月 「eEurope 2005 アクションプラン」 広範に利用可能なブロードバンド・インフラストラクチャに基づい たセキュリティの高いサービス、アプリケーション、コンテンツの 開発の活性化。 2002 年 6 月 「第 6 次フレームワークプログラム」 研究開発予算総額は 175 億ユーロ。第 5 次と比較して 17%の増加 2005 年 6 月 「i2010:European Information Society 2010」 3 つの重点分野:①単一欧州情報空間の創設、②ICT 関連の技術革 新・投資、③持続可能な開発、公共サービスや生活の質の向上を実 現する情報格差のない社会 2007 年 1 月 「第7次フレームワークプログラム」 研究実施手段よりもテーマの重視などを新たな特徴とする。4 つの プログラム:①産学連携、②基礎研究、③人材育成、④基盤整備。 予算は、2006 年 7 月時点で 505 億 521 万ユーロ。 英 国 2000 年 9 月 「UK オンライン」 5 つの目標:①人々の自信、②ビジネスとしての成功、③見本とし ての政府等 2000 年 9 月 「UK Online 年次レポート 2000 年 第 1 版」 5 つのゴール:①人々の自信②ビジネスとしての成功③見本として の政府④世界一級の供給センター 2001 年 11 月 「UK Online 年次レポート 2001 年 第 2 版」 5 つの重要課題:①市場の近代化、②国民の能力向上、③企業の活 性化、④政府のオンライン化、⑤世界的水準のサービス提供 2002 年 11 月 「UK Online 年次レポート 2002 年 第 3 版」 3 つの目標:①英国を電子ビジネスにおける世界のリーダーとして 発展させる②2005 年までに全ての行政サービスが電子的に利用で きるようにする③2005 年まで希望者全員がインターネットにアク セスできることを保証する 60 2003 年 12 月 「UK Online 年次レポート 2003 年 第 4 版」 ICT を活用してサービス提供を変革し、公共部門全体の運営効率を 改善することを将来の課題として特定し、こうした変革を支える 5 つの原則を提示 2005 年 11 月 「政府の変革-技術の力」 英国政府の IT 活用戦略。実施時期は、フェーズ 1(2005 年 11 月~ 2007 年 7 月)、フェーズ 2(2007 年 8 月~2011 年)、フェーズ 3(2011 年以降~)に分かれている。フェーズ 1 の 3 つの重点項目:①利用 者中心②シェアドサービス③IT プロフェッショナルの育成 アイスランド 2000 年 3 月 「2000-2002 年電子政府および電子商取引プロジェクト計画」 情報社会政策の実施において、電子商取引と電子政府を優先的プロ ジェクトに指定し、この分野への資金割当を増額すべきであると提 案。 2004 年 4 月 「万人のための資源:2004-2007 年情報社会政策」 2004-2007 年度を対象とした情報社会政策。将来ビジョンは①機会 (Opportunity)② 責 任 (Responsibility)③ 安 全 (Security)④ 生 活 の 質(Quality of Life)、の 4 つの主要目標から構成される フィンランド 2000 年 6 月 「情報社会としてのフィンランド」 フィンランドの情報社会の利点、問題及び課題を明記。優先順位と しては、教育、知識、及び研究の強化等。 2001 年 6 月 「情報社会諮問委員会による 2001 年レポート」 2000 年 6 月に発表された「情報社会としてのフィンランド」の評価 と 2 つの政策分野(①社会における情報通信技術の幅広い活用、② 全国民が利用可能な情報社会のサービスと機会の実現)における新 たな提言 2001 年 12 月 「新世紀の公共サービス-オンライン政府推進のための 2002~2003 年アクション・プログラム」 オンライン政府の実現を妨げる4つの問題領域とオンライン政府推 進のための行動計画(2002 年~2003 年) 61 2003 年 9 月 「情報社会政策プログラム」 情報社会の提供する機会の活用に焦点を当てており、その目的は、 ①競争力と生産性の向上、②社会的・地域的平等の促進、③情報通 信技術の効果的な利用を通じた市民の幸福と生活の質の向上 2003 年 9 月 「国家情報セキュリティ戦略」 情報社会のサービスに対する一般市民及び企業の信頼度を高めるこ とが目的 2004 年 1 月 「国家ブロードバンド戦略」 目標:①ネットワーク事業者間の競争、②サービス及びコンテンツ 提供、③需要の拡大、④競争の乏しい地域への特別措置、⑤無線ブ ロードバンド開発への投資、⑥接続の高速化 デンマーク 2001 年 など 「Project e-Government」 デンマーク政府、地方自治体連合、広域自治体連合、コペンハーゲ ン市、フレデリクスブルグ市による共同イニシアチブ。目標は、公 共部門全体にわたって、電子政府への移行を調整すること。 2002 年 「IT for All-Denmark’s Future」 個人、企業、社会の価値創造、政策策定におけるユーザーの視点な どに焦点を当てた IT 行動計画。7 つの政策分野で目標設定①企業、 産業における IT 活用促進②競争的な通信部門③IT コンピテンスの 強化④公的部門の IT 活用⑤IT セキュリティ⑥インターネット上の コンテンツ利用⑦EU への貢献 2003 年 10 月 「Using IT Wisely-An Action Plan for ICT and Telecommunication Policy」 世界の ICT 主導国としてデンマークの地位強化を目標とする IT 行動 計画。ICT 活用が最高の価値を生み出す分野、特に、知識社会の強 化に焦点を当てている。 2004 年 12 月 「デンマーク電子政府戦略 2004-2006」 ビジョンは「デジタル化は、市民や企業に高品質のサービスを提供 する 効 率 的 で 一 貫 性 あ る公 的部 門の 創 造 に 貢 献し なけ れ ば な らな い」 62 ドイツ 2002 年 2 月 「Information Society Germany」 1999 年 9 月に発表された「21 世紀の情報社会におけるイノベーショ ンと雇用」の 7 つの中心的アクション・プログラムの進捗状況を評 価 2002 年 2 月 「IT-Research 2006」 2002 年から 2006 年までに、総額 15 億ユーロを研究プロジェクトの 助成に投じ、さらに 15 億ユーロを研究機関への支援として投資 2003 年 3 月 「Agenda 2010」 労働市場の改革、長期的な社会保障制度の再構築、経済成長の推進 をめざす包括的な政府プログラム 2003 年 12 月 「情報社会ドイツ 2006」 ①電子経済、②テクノロジーの研究開発、③教育と訓練、④電子政 府、⑤eCARD イニシアチブ/デジタル署名、⑥電子保健⑦IT セキュリ ティの各分野でそれぞれ具体的な達成目標と達成期限を設定 2006 年 8 月 「ドイツ・ハイテク戦略」 技術革新政策に焦点化した包括的国家プログラム。2006~2009 年に かけて実施あれ、総額 146 億ユーロが投入される。 2006 年 11 月 「情報社会ドイツ 2010(iD2010)」 「情報社会ドイツ 2006」を継承する包括的情報社会政策。重点項 目:、①法的、技術的な基礎条件の改善②政府と産業界が統合され た知識社会③ICT セキュリティの向上④ICT 研究およびマーケット アプローチ(知的資産の評価手法)開発の支援 フランス 2002 年 11 月 「情報社会におけるディジタル共和国構想:RE/SO 2007」 二大目標:①フランスの情報化の遅れに終止符を打つ、②全国民の ための情報社会の実現 2004 年 2 月 「電子政府推進プロジェクト ADELE」 国家が広範かつ革新的に情報技術を利用するという先駆的役割を果 たすことで、フランス市民の生活の簡素化をめざす E-Government 実現のための長期にわたる統一的共通枠組み インド 2002 年 12 月 「第 10 次 5 カ年計画」 2007 年までを対象とする国家開発計画。目標は、ソフトウェアおよ び IT サービスの持続的成長の確保と、グローバル市場におけるイン 63 ドのシェア拡大などで、GDP の年間成長率を 8%にすることが最重要 課題。 ベトナム 2001 年 「IT利用と開発のための計画」 目標は 2005 年までにベトナムの情報化を世界標準に合わせること。 2005 年 9 月 「2010 年に向けた電子商取引開発マスタープラン」 2010 年にまでに達成すべき目標として大企業の 60%、中小企業の 80%が電子商取引を採用することを掲げ、全世帯の 10%がオンライ ンで買い物ができる周辺環境を整えていく、ことを挙げている。 2005 年 10 月 「2010 年に向けたIT開発戦略」 主要経済分野に幅広く ICT を適用し、e-市民、e-政府、e-企業、e取引、e-商業を計画し、ASEAN 諸国の平均以上の水準まで発展させ る。 中 国 2001 年 「第 10 次 5 カ年計画」 ハイテクとその産業化の発展を重点的におしすすめ、情報技術、バ イオテクノロジー、先進的な製造技術、新素材技術、航空および宇 宙開発技術、新エネルギー技術、海洋技術などの発展を目指す 2006 年 3 月 「第 11 次 5 カ年計画」 情報技術分野での独創能力、情報化発展能力を強化し、国民経済と 社会の情報化に有力な基盤を提供していくことを重視。 2006 年 5 月 「国家情報化発展戦略」 2020 年までの情報化目標を定めたもので,電子政府の普及、先端的 ネットワーク文化の建設,国家的情報セキュリティの強化,情報イ ンフラの整備などが戦略的重点に挙げられている。 香 港 2001 年 5 月 「2001 Digital 21 IT Strategy」 インターネットで接続された世界において、世界有数の e-business コミュニティかつディジタル都市としての地位確立を目指す。 2004 年 3 月 「2004 Digital 21 IT Strategy」 世界の主要デジタル都市としての香港の地位を維持するための総合 的な青写真である。8つの焦点分野:①政府のリーダーシップ、② 持続可能な電子政府プログラム、③インフラおよびビジネス環境、 ④組織の見直し、⑤技術開発、⑥活力あふれる IT 産業、⑦知識経済 における人的資源、⑧デジタルデバイドの解消 64 台 湾 2002 年 6 月 「e-台湾プロジェクト」 最適なハイテク「グリーン・シリコン・アイランド」を実現し、アジ アのe-リーダーの一国に生まれ変わることをめざす 2003 年 11 月 「m-台湾プロジェクト」 「新 10 大建設計画の」のひとつ。公共ブロードバンドダクト網の建 設,二重ネットワーク利用環境の構築を行う。 韓国 2002 年 4 月 「e-Korea Vision 2006」 目的は政府・企業・個人の情報力を強化すること。4つの実行計画: ①電子政府、②デジタルデバイドの是正、③スパムメール・ウイル スの撲滅、④個人情報保護問題 2003 年 12 月 「Broadband IT Korea 2007」 4 大重点課題:①知識情報社会の全面化(インターネットの一層の 普及など)、②知識情報社会の土壌づくり、③IT 新成長動力創出の 基盤づくり、④グローバル情報社会を目指す国際協力の強化 2004 年 6 月 「u-Korea推進計画」 ユビキタス社会を 2007 年までに実現する。ユビキタス・コンピュー ティング技術を基盤にして、国家のすべてのレベルを知能化、ネッ トワーク化して経済発展などを追及する戦略 2004 年 7 月 「IT839 戦略」 ユビキタス社会「u-Korea」を実現する具体的な行動計画。8 大新規 サービス、3 大先端インフラ、9 大新成長動力を推進する。 2006 年 2 月 「u-IT839 戦略」 IT-839 計画を簡素化するとともに、IT サービスやソフト・インフラ ウェアや Broadband Convergence Service を追加し、計画の名称を u-IT839 に変更した。2006 年~2010 年に生産額を年平均 14%押し上 げることが期待されている。 2006 年 3 月 「u-KOREAマスタープラン」 ビジョン:世界最高の u-インフラストラクチャに基づく世界初の u社会を実現することで、韓国を先進的な国家に変革する。 65 1. 米 国 クリントン政権(1993 年 1 月~2001 年 1 月)は、政権発足当初から、国内経済の活性化 に向けた IT を重要政策課題として位置付け、その強化に積極的に取組んできた。 ブッシュ政権が誕生してからは、2002 年 2 月に「A Nation Online」、「デジタル・エコノ ミー 2002」、「E-government Strategy」、2003 年 12 月に「デジタル・エコノミー 2003」 が発表された。 「A Nation Online」は米国民における IT 普及状況調査のレポートであり、2001 年 9 月時 点、米国民の 54%が、インターネットを使用し、66%がコンピュータを使用していたこと が述べられている。 「デジタル・エコノミー 2002」は IT とマクロ経済を分析したレポートであり、景気後 退にもかかわらず、米国産業は国内の IT 資本ストックを形成し続け、経済基盤の持続的強 化をもたらしていると分析している。 「E-government Strategy」では 24 のイニシアチブ(24 の行政サービス)が電子政府構想の 具体策として明らかにされた。24 のイニシアチブは G2C(G2C: Government to Citizen)、 C2B(Government to Business)、G2G(Government to Government)、政府内効率効果の主要 4 ポートフォリオに分かれる。さらに 2004 年春、OMB は、5 つの Line of Business タスク フォースを結成すると発表した。E-Government イニシアチブは現在、開発実装段階を完了 し、サービス料金によって支えられる成熟したサービス提供へと移行しつつある。 「デジタル・エコノミー 2003」では,米国のIT産業は2001~2002年の縮小期を経て, 再び力強い伸びを示し始めていると指摘。2003年,IT生産業の寄与は,推定経済成長率2.9% のうち0.8%までになった。 2001 年の同時多発テロ攻撃をきっかけに、情報システムの保護等のサイバーセキュリテ ィの強化を国家戦略に挙げている。2003 年 2 月、ホワイトハウスは「サイバー空間セキュ ア化のための国家戦略」を発表した。戦略目標として、以下の 3 項目が挙げられている。 ①米国の重要インフラに対するサイバー攻撃の防止、②サイバー攻撃に対する国の脆弱性 の低減、③サイバー攻撃発生時の損害と回復時間の最小化。 66 ブッシュ統領は 2004 年 8 月、大統領令「Homeland Security Presidential Directive 12 (HSPD12)」を発表した。これは、物理的なテロやサイバーテロに備えて連邦政府の施設 やネットワークのセキュリティを強化することを目的に、政府全体で利用可能な ID カー ドを発行するよう義務付けるものである。 ブッシュ大統領は 2006 年 1 月の年頭教書演説で、①A Strong America Leading the World ②American Competitiveness Initiative(米国競争力イニシアチブ)③The Advanced Energy Initiative④Affordable and Accessible Health Care との 4 つのイニシアチブを発表した。 このうち、特に IT とのつながりの深いのは②の「米国競争力イニシアチブ」である。 「米 国競争力イニシアチブ」にコンピュータ・サイエンスを始めとする IT 分野の強化が盛り込 ま れ た こ と に よ り 、 多 機 関 ネ ッ ト ワ ー キ ン グ IT 研 究 開 発 ( NITRD: Networking and Information Technology Research and Development)プログラムの 2007 年度予算は、前年度 比 2.4%増の約 31 億ドル(約 3,600 億円)を要求した。 2. カナダ カナダでは、1999 年に開始された「Government On-Line」イニシアチブが、2006 年 3 月 に終了し、130 のサービスがオンライン化されている。本イニシアチブでは、カナダ政府 ポータルサイトのアクセス性の向上、サービスの質と応答性の向上、信頼の確保が実現し た。 2002 年 3 月、産業省は、「2002‐2003 年における計画・優先的政策に関するリポート」 を発表した。以下の 5 つの戦略目標に重点を置いている。 ① 革新-カナダの革新達成能力を向上させる ② 接続性-カナダをインターネット接続性が世界で最も高い国にする ③ 市場-公正かつ効率的な競争力のある市場を構築する ④ 投資-カナダを国内及び国外の投資に適した場所へと向上させる ⑤ 貿易-世界貿易のカナダのシェアを増やすためカナダ国民と共に一丸となって努力す る 67 5 つの戦略目標のうち、 「接続性」は CANARIE によるカナダにおけるネットワーク・イ ンフラストラクチャの開発の支援などを通して達成される。 2004 年 4 月、カナダ政府はカナダ国民が直面する安全上の脅威に対して、調和のとれた 対応が必要となるため、包括的かつ統一的な「国家安全保障政策」を発表した。 また、2004 年 5 月、カナダ産業大臣は 21 世紀経済のデジタル環境における信頼性を構 築するために電子認証原則を発表した。 産業省では、21 世紀型経済の構築に向けて、2005-06 年度は①公正・効率的・競争的市 場②革新的経済③競争的産業および持続可能なコミュニティ、の 3 つの戦略目標を掲げて いる。ICT は、これら 3 つの戦略目標すべてに関係している。戦略目標①では電子商取引、 同②では、ICT、ナノテクノロジーなどの実現技術の研究開発、同③ではインフラの普及 とデジタル格差の是正、などが焦点となる。 また、カナダ産業省は、農村北方開発のためのブロードバンド試験プログラム、国家衛 星構想などのプログラムを通じて、カナダの全コミュニティへの ICT の普及を促進した。 コミュニティにアクセスポイントを設置する「コミュニティ・アクセス・プログラム」も こうした取り組みの一環として 2006 年まで 2 年間延長されている。 3. 欧州連合 欧州では、2005 年 6 月、情報社会政策「i2010: European Information Society 2010」が採 択された。i2010 イニシアチブは、成長と雇用の促進を目指すリスボン戦略において中心 的役割を果たす政策のひとつで、2005~2010 年に実施する主な行動を定めている。 i2010 イニシアチブでは、情報社会・メディア政策の重点分野として、①情報社会及び メディアのオープンで競争的な域内市場を促進する「単一欧州情報空間」の創設、②ICT 関連の技術革新・投資、③持続可能な開発、公共サービスや生活の質の向上を実現する情 報格差のない社会、が掲げられた。 欧州委員会は 2006 年 5 月、i2010 イニシアチブの第 1 回年次報告書を発表し、2006~2007 年に実施される情報社会・メディア政策の行動をアップデートした。報告書では、それま 68 での i2010 の達成事項をまとめるとともに、EU の ICT の発展を踏まえて i2010 の主要行動 を見直している。本報告書は、結論として、政策立案者が ICT 部門の成長促進政策を策定 すべきだとし、具体的な優先項目として、ブロードバンド戦略の実施、コンテンツと周波 数に対する一貫性あるアプローチ、統合的な研究技術革新戦略、より野心的な公共サービ スを挙げている。 フレームワーク・プログラムは 1984 年以来、EU における研究開発への主たる資金提供 方法となっている。2002 年 6 月に発表された現行の第 6 次フレームワーク・プログラムは 2006 年末まで実施された。2007 年 1 月 1 日からは、第 7 次フレームワーク・プログラムに 移行している。 4. 英 国 1996 年 2 月、英国政府による最初の包括的な IT 政策である「情報社会イニシアチブ」 が発表された。その後、「情報社会イニシアチブ」は、2000 年 9 月に新たに「UK Online」 という IT 政策に置き換わった。 2001 年 11 月、「UK Online 年次レポート 2001 年」(第 2 版)が発表された。①市場の 近代化、②国民の能力向上、③企業の活性化、④政府のオンライン化、⑤世界的水準のサ ービス提供という 5 つの重要課題を取り上げ、以下の 3 つの目標を表明した。 ① 2002 年までに英国を電子商取引の世界でもっとも整備された安全な環境にする。 ② 2005 年まで希望者全員がインターネットにアクセスできることを保証する。 ③ 2005 年までにすべての行政サービスが電子的に利用できるようにする。 2002 年 11 月には、 「UK Online 年次レポート 2002 年」 (第 3 版)が発表され、以下の 3 つの目標を表明した。 ① 英国を電子ビジネスにおける世界のリーダーとして発展させる。 ② 2005 年までにすべての行政サービスが電子的に利用できるようにし、重要なサービス においては高いレベルでの使用を実現させる。 ③ 2005 年まで希望者全員がインターネットにアクセスできることを保証する。 2003 年 12 月、「UK Online 年次レポート 2003 年」(第 4 版)を発表するとともに、従 来の e-Envoy 局に代えて e-Government Unit を設置する考えを明らかにした。また、2004 69 年 3 月、e-Government Unit は UK Online に代わる市民向けの公共サービス・ポータルとし て「Direct.gov」の運営を開始した。 e-Government Unit には、2005 年 1 月に最高情報責任者(CIO: Chief Information Officer) カウンシルが設立された。CIO カウンシルは 2005 年 11 月、英国政府の IT 活用戦略「政府 の変革 - 技術の力」を発表した。本戦略の実施時期は、フェーズ 1(2005 年 11 月~2007 年 7 月)、フェーズ 2(2007 年 8 月~2011 年)、フェーズ 3(2011 年以降~)に分かれてい る。また、フェーズ 1 の変革は、21 世紀の政府のビジョンとして、①利用者中心②シェア ドサービス③IT プロフェッショナルの育成の 3 つを重点項目としている。 5. アイスランド アイスランドでは、1995 年 4 月の政府政策宣言で初めて、行政改善と経済振興のための IT 活用について政府目標が定められた。 1996 年 10 月に発表された情報社会の諸問題に関する政府戦略を示すペーパー「1996 年 情報社会ビジョン」の中では、保健医療や教育などの社会的な目標についても、IT 活用を 1996 年という比較的早い時期に視野に入れていた。 また、ICT が急速に発展し、電子商取引促進に向けた国際的な取り組みが高まる中で、 2000 年 3 月、 「2000-2002 年電子政府および電子商取引プロジェクト計画」を発表し、情報 社会政策の実施において電子商取引と電子政府を新たな優先的プロジェクトに指定し、こ の分野への資金割当を増額すべきであるとしている。 2004 年 4 月、アイスランド首相府は、2004-2007 年を対象とした新たな情報社会政策文 書「万人のための資源:2004-2007 年アイスランド政府情報社会政策」を発表した。現在 のアイスランドの情報社会開発は、本政策をもとに実施されている。 6. フィンランド 2000 年 6 月、情報社会諮問委員会(ISAB: Information Society Advisory Board)は「情報 社会としてのフィンランド」を発表した。この報告書の目的は、フィンランドにおける情 報社会の発展の全体的な展望を示し、開発およびアクションのためのプロポーザルを作成 70 することである。 2001 年 6 月、情報社会諮問委員会は「情報社会諮問委員会による 2001 年レポート」を 発表した。同レポートでは、 「情報社会としてのフィンランド」における提言の実施状況の 評価と新たな政策提案を行っている。情報社会諮問委員会は 2 つの政策分野(①社会にお ける情報通信技術の幅広い活用、②全国民が利用可能な情報社会のサービスと機会の実現) において新たに提言を行った。 2001 年 12 月、情報社会諮問委員会は、電子政府計画に関するレポート、 「新世紀の公共 サービス - オンライン政府推進のための 2002~2003 年アクション・プログラム」を発表 した。同レポートでは、オンライン政府の実現を妨げる 4 つの問題領域(①オンライン・ サービスの開発、実装、配信、②オンライン・サービスへの需要とサービス品質、③アク セス性、有用性、利用者のサービス活用能力、④オンライン・サービス開発の先導と調整) とオンライン政府推進のための行動計画(2002 年~2003 年)について記している。 2003 年 9 月、フィンランド政府は重点分野の省庁間協力を促進するため、①情報社会政 策プログラム、②雇用政策プログラム、③起業政策プログラム④市民参加政策プログラム、 の 4 つの政策プログラムに着手した。情報社会政策プログラムの実施状況の評価は、情報 社会評議会が担当する。2006 年 1 月、情報社会プログラムを運営する閣僚グループは、2015 年までを対象とする新しい国家情報社会戦略)の策定準備を開始することを決定した。 また、2004 年 1 月に発表された 2004~2007 年を対象とした「国家ブロードバンド戦略」 の中間目標は、接続数、地域カバレージともに前倒しで達成されている。 7. デンマーク デンマークにおける IT 活用は 1970 年代および 80 年代の公的部門の電算化から始まっ た。90 年代に入ると、IT 政策の焦点は従来の非ネットワーク型の IT から、インターネッ トを中心とした通信技術の活用へと移行し、1995 年には、世界の情報社会発展の最前線に デンマークを押し上げる同国初の本格的 ICT 戦略「From Vision to Action—Info-Society 2000」と、同戦略に対応した「1995 年 IT 行動計画」が発表された。 その後、デンマーク政府は毎年のように IT 行動計画を発表するようになる。2002 年に 71 発表された行動計画「IT for All- Denmark's Future」は、それまでの ICT 政策が技術一辺倒 であったとの反省から、よりバランスのとれた「現実路線」に向かい、個人、企業、社会 の価値創造、政策策定におけるユーザーの視点などに焦点を当てた。 現行の IT 行動計画は、2003 年 10 月に発表された「Using IT Wisely」である。この計画 は、世界の ICT 主導国としてデンマークの地位強化を目標とする。この計画で、政府の取 り組みは、ICT 活用が最高の価値を生み出す分野、特に、知識社会の強化に焦点を当てて いる。 デンマークの電子政府政策は、2001 年の「Project e-Government」から始まり、現在は、 2004 年 2 月に発表された「デンマーク電子政府戦略 2004-2006」を実施中である。そのビ ジョンは「デジタル化は、市民や企業に高品質のサービスを提供する効率的で一貫性ある 公的部門の創造に貢献しなければならない」と述べられている。 8. ドイツ 2002 年 2 月、経済技術省と教育研究省は「Information Society Germany」を発表した。こ の報告書では「21 世紀の情報社会におけるイノベーションと雇用」の 7 つの中心的アクシ ョン・プログラム(①新しいメディアへのアクセス、②教育におけるマルチメディア、③ 機密性とセキュリティ、④革新的雇用 - 新しいアプリケーション、⑤技術とインフラス トラクチャにおける先導的地位、⑥近代的行政に向けた電子政府、⑦欧州および国際協力) における進捗状況を評価している。 2002 年 2 月に、教育研究省は、情報通信技術分野の研究助成プログラム、「IT Research 2006」を発表した。教育研究省は、IT Research 2006 プログラムの枠内で、2002~2006 年 の 5 年間に、総額 15 億ユーロを研究プロジェクトの助成に投じるほか、さらに 15 億ユー ロを研究機関への支援として投資する予定である。 2003 年 3 月、シュレーダー首相は、ドイツ連邦議会で「Agenda 2010」を発表した。こ れは、経済改革プログラムであり、2010 年までに成長と雇用を促進し、企業や個人の責任 を強化し、社会保障制度を健全で持続可能な財政基盤に乗せることを目的としている。 2005 年 12 月、メルケルメルケル新政権は、シュレーダー前政権の「Agenda 2010」を受 72 け継ぐ構造改革プログラム「技術革新促進、セキュリティ強化、ドイツ統一の完成」を発 表した。 また、2006 年 8 月、連邦政府は、技術革新政策に焦点化した包括的国家プログラムとし て「ドイツ・ハイテク戦略」を承認した。同プログラムは、教育研究省の主導により省庁 横断で推進し、科学界、産業界、市民社会との協力も求められる。 2006 年 3 月、連邦内閣は、ドイツ・ハイテク戦略の一環として経済技術省に連邦政府ア クションプログラム「iD2010:情報社会ドイツ 2010」を 2006 年 8 月までに策定すること を指示、同プログラムは 2006 年 11 月に承認された。iD2010 の重点項目は、①法的、技術 的な基礎条件の改善②政府と産業界が統合された知識社会③ICT セキュリティの向上④ ICT 研究およびマーケットアプローチ(知的資産の評価手法)開発の支援、である。 さらに、連邦政府は 2006 年 9 月、技術革新を通じた行政改革計画「技術革新を通じた未 来志向の行政」を発表した。この計画で内務省は、人事管理、行政プロセス、組織、電子 政府など連邦レベルでの行政近代化戦略を提示している。電子政府には特に大きな役割が 与えられ、同計画の一部として、 「BundOnline 2005」の後継プログラム「E-Government 2.0」 が策定された。 9. フランス 2002 年 11 月、ラファラン首相は、全国民のための情報社会を目指すフランスの包括的 IT 推進計画である「RE/SO 2007(情報社会におけるデジタル共和国構想)」を発表した。 RE/SO 2007 が取り組む分野は、固定電話、携帯電話、インターネットを中心とする通信イ ンフラの整備から、電子商取引、セキュリティ、法的枠組みの整備、学校におけるインタ ーネット環境の整備、ゲーム産業の育成、電子政府など、きわめて多岐にわたっている。 2006 年 7 月には第 5 回情報社会省庁間委員会(CISI)が開催された。このとき発表され たコミュニケは、2002 年 11 月から RE/SO 2007 が実施されてきた結果として、フランスは デジタル大国として認められるようになった、としている。第 5 回 CISI では、①インター ネット②電子政府③企業の競争力強化の 3 つの柱について、今後も情報技術の発展を促進 するための計画を確認している。 73 フランス政府は 2006 年 1 月、国家電子政府開発機関である電子政府推進庁(ADAE)と 他の 3 つの政府機関を統合し、国家近代化総局(DGME)を設置した。過去数年間に電子 政府関連機関が増えてきており、e-サービスによる公共部門の近代化の担当機関を一元化 して取り組みを簡素化するのが設置のねらいである。 2004 年 2 月に発表された電子政府推進プログラム「ADELE 2004/2007」はその後、「電 子政府主導計画」の一部となり、DGME はこの計画の実施を ADAE から引き継いでいる。 10. インド 1998 年、当時のパジパイ(Atal Behari Vajpayee)首相は就任後、IT の振興が政府にとっ て 5 大優先分野の一つであることを表明し、10 年以内にインドを世界最大のソフトウェア 開発国および輸出国の一つにすると宣言した。これに基づき、1998 年 5 月、インドの IT 政策を立案して政府に提言することを目的として、首相府に情報技術ソフトウェア開発タ スクフォースが設置された。 このタスクフォースは、1998 年 7 月にソフトウェアおよび関連サービスを対象とする情 報技術アクションプラン、1998 年 10 月にハードウェアに焦点を当てた IT アクションプラ ン II、1999 年 4 月に長期的な IT アクションプラン III を発表した。 インドの開発計画である 5 カ年計画は 1951 年から策定されている。バジパイ前首相を議 長としたインド計画評議会は、2002 年から 2007 年までを対象とする第 10 次 5 カ年計画を 制定した。同計画は 2002 年 12 月、国家開発評議会により承認され、ソフトウェアおよび IT サービスの持続的成長の確保と、グローバル市場におけるインドのシェア拡大などが目 指されている。 11. ベトナム ベトナム政府は、IT 産業がベトナムの経済発展にとって戦略的な役割を果たすとの理解 に立ち、1995 年 4 月に「IT2000 計画(ベトナム情報化基本計画)」を発表した。IT2000 計 画は 2000 年を目標にベトナムの情報化を推進するとの観点から名づけられたものである。 特徴としては、世界から適切な技術移転を行うこと、オープンシステムであること、アプ リケーション志向型であることなどが挙げられる。 74 IT2000 計画に続く国家 IT 計画としては、2001 年に科学技術環境省により IT 政策の草案 が提出され、同年首相が発表した「IT 利用と開発のための 2005 年計画」がある。この計 画は、2005 年までにベトナムの情報化を世界標準に合わせることを目標にしている。 2005 年 10 月に発表された「2010 年に向けた IT 開発戦略」では、ASEAN 諸国より高水 準の e-国家、e-政府、e-企業、e-取引、e-商業の形成を目指している。目標として、インタ ーネット利用者を総人口の 25~35%、IT 産業の平均年間成長率を 20~25%とし、IT 開発 においては人材開発が決定的要因である、としている。 2005 年 9 月に発表された「2010 年に向けた電子商取引開発マスタープラン」では、2010 年にまでに達成すべき目標として大企業の 60%、中小企業の 80%が電子商取引を採用する ことを掲げ、全世帯の 10%がオンラインで買い物ができる周辺環境を整えていく、として いる。 ベトナム政府は 2004 年から、 「2010 年に向けた電子政府開発マスタープラン」の策定を 進めている。この計画では 2010 年までに達成すべき目標として、政府機関の管理能力強化、 企業や市民へのサービス提供、ICT インフラの構築、法環境の整備などを掲げている。 12. 中 国 中国では 1953 年以来、社会主義計画経済の典型的な手法として、旧ソ連に倣って「5 カ 年計画」を策定し、国家建設を進めてきた。 2005 年 10 月、中国共産党中央委員会は「国民経済と社会発展の第 11 次 5 カ年計画に関 する中国共産党中央の提言」を可決した。その後、2006 年 3 月、全国人民代表会議の承認 を受けた後、2006~2010 年の基本政策にあたる「第 11 次 5 カ年計画」が発表された。 「第 11 次 5 カ年計画」では、情報技術分野での独創能力、情報化発展能力を強化し、国民経済 と社会の情報化に有力な基盤を提供していくことが重視されている。 また 2006 年 5 月、中国共産党と国務院は、次の 15 年間の情報化目標を定めた「国家情 報化発展戦略(2006 年~2020 年)」を発表した。戦略の実施は、情報社会に向かって進む 中国の基盤をなし、情報化は社会経済発展促進において重要な役割を果たすとされている。 75 2004 年 3 月、香港政府は「1998 デジタル 21 戦略」 「2001 デジタル 21 戦略」に続く包括 的 IT 活用戦略「2004 デジタル 21 戦略」を発表した。同戦略は、世界の主要デジタル都市 としての香港の地位を維持するための総合的な青写真である。焦点分野は、①政府のリー ダーシップ、②持続可能な電子政府プログラム、③インフラおよびビジネス環境、④組織 の見直し、⑤技術開発、⑥活力あふれる IT 産業、⑦知識経済における人的資源、⑧デジタ ルデバイドの解消、の 8 つである。 「2004 デジタル 21 戦略」のイニシアチブの多くは成功 裏に完了しており、残りのイニシアチブも予定通り実施が進められている。 2006 年 10 月、香港政府は「2007 デジタル 21 戦略」について、2 カ月間にわたる公的諮 問を行うと発表した。同戦略は、2007 年上半期に発表される予定である。「2004 デジタル 21 戦略」が世界的デジタル都市の地位を維持する青写真であったのに対し、新戦略は世界 的デジタル都市としての役割強化をビジョンとして掲げている。 このビジョンを達成するため、①先端技術と技術革新の促進②技術協力および貿易の中 継③次世代公共サービスの実現④格差なき知識社会の構築、という 4 つの行動領域を設置 し、2004 戦略の達成事項をさらに発展させようとしている。 13. 台湾 2002 年 5 月、行政院は 2002 年から 6 年間の国家発展計画を定めた「挑戦 2008 年-6 カ 年国家発展計画」を策定、その一環として「e-台湾計画」が 実 施 さ れ て い る 。同計画は、 2008 年までに台湾をハイテクサービスの島にし、アジアで最も進んだ電子国家にすること である。 2003 年 11 月 に 発 表 さ れ た「 新 10 大 建 設 計 画 」の 中 で は 、モ バ イ ル イ ン タ ー ネ ッ ト の 可 能 性 を 認 識 し 、 そ の 競 争 力 を 高 め る べ く 、「 m-台 湾 計 画 」 が 提 案 さ れ 、 2005 年 ~ 2009 年 の 5 年 間 で 370 億 台 湾 元( 約 1,340 億 円 )の 政 府 予 算 が 割 り 当 て ら れ て いる。 14. 韓国 韓国政府は、2002 年に基本的 IT 戦略「e-Korea Vision2006(第三次情報化促進基本計画)」 76 を発表後、同戦略の見直しを進め、2002 年 12 月には情報通信部(MIC)が 2007 年までに ユビキタスな情報スーパーハイウェイを構築する計画を策定していることを明らかにした。 ユビキタス社会実現に向けて韓国政府は 2003 年 12 月、情報化基本計画「Broadband IT Korea Vision 2007」を発表した。この計画は、①知識情報社会の全面化(インターネット の一層の普及など)、②知識情報社会の土壌づくり、③IT 新成長動力創出の基盤づくり、 ④グローバル情報社会を目指す国際協力の強化、を 4 大重点課題とする。 MIC は 2004 年 6 月、ユビキタス社会を 2007 年までに実現する「u-Korea 推進計画」を 発表した。これは、ユビキタス・コンピューティング技術を基盤にして、国家のすべての レベルを知能化、ネットワーク化して経済発展などを追及する戦略である。 さらに、ユビキタス社会「u-Korea」を実現する具体的な行動計画として MIC は 2004 年 7 月、8 大新サービス、3 大インフラストラクチュア、9 大ハードウェア関連事業からなる 「IT839 戦略」を発表した。 2006 年 2 月,MIC は「IT839 戦略」の戦略項目を一部統合/追加した「u-IT839」戦略を 発表した。u-IT839 戦略では、特に IT サービスとソフト・インフラウェアの 2 項目が追加 され、ソフトウェア産業が強化される。 さらに 2006 年 3 月、 「Broadband IT Korea VISION 2007」を受け継ぐ政策である「u-Korea マスタープラン」が情報化推進委員会の決議を受けて、最終承認を受けた。この計画は、 IT を活用して新しい社会経済的要求に対応し、全国的な技術革新を実現して、ユビキタス 社会の世界最先進国となる青写真を描いている。 15. OECD OECD は、経済・社会のあらゆる分野の問題について国際的な研究・分析、政策提言を 行なっている。IT についても例外ではなく、その対象範囲はデジタル経済、セキュリティ とプライバシー、電気通信、インターネットなど、多岐にわたり、2006 年もそれぞれの分 野で多数の報告書が発表された。 その中で、2006 年 10 月、OECD は「OECD 情報技術アウトルック 2006」を発表した。 77 これは、近年の IT 産業の動向と発展、その経済社会への影響を調査・分析した報告書であ る。報告書の中では、2006 年の IT 支出、ICT 市場のデータも力強く広範な成長を裏付け ているとし、ICT 支出が最も急速に伸びているのは中国、ロシア、インドなどの OECD 以 外の新成長国であると分析している。 78 Ⅰ 米 79 国 Ⅰ 1. • 米 国 米国における情報技術政策のポイント IT 政策に関係する機関は、連邦省庁のように政策を実施する機関と、大統領府の行政 管理予算局のように、それを管理・調整する機関の 2 種類に大別される。 • 本報告書では、研究開発、国土安全保障、電子政府の 3 分野について概観した。 • 2003 年の米国の R&D 集約度は 2.60 だが、年々減少しつつある。 • IT 研究開発は、2006 年 1 月の「米国競争力イニシアチブ」によって基礎研究が強化さ れる。 • 2007 年度の連邦 R&D 費は約 137 億ドル。防衛及び宇宙関連重視の傾向は変わらない。 • IT 関連の R&D には、エネルギー省、全米科学財団などが単独で行うプログラムと複 数の機関が参加する省庁間プログラムがある。 • 主な IT 関連省庁間プログラムは、多機関ネットワーキング IT 研究開発プログラム、 多機関国家ナノテクノロジー・イニシアチブが継続された。 • 国土安全保障関連の IT 政策は、国土安全保障省が主導する US-VISIT プログラム(渡 航者検査)、サイバースペースのセキュリティ確保などがある。 • 行政管理予算局は 2005 年 12 月に E-Government イニシアチブの成果と将来目標につい てレポートを発表した。 • E-Government イニシアチブは現在、開発実装段階を完了し、サービス料金によって支 えられる成熟したサービス提供へと移行しつつある。 • 2007 年度予算では、政府の IT および関連するサポートサービスに 640 億ドルが提案 された。 2. IT 政策の担当機関 米国の政策実施にあたっては大統領に大きな権限が与えられており、大統領の下には、 大統領府、連邦省庁、独立機関が置かれている。IT 政策に関係する機関は、連邦省庁のよ うに政策を実施する機関と、大統領府の行政管理予算局(OMB: Office of Management and Budget)のように、それを管理・調整する機関の 2 種類に大別される。 (1) 大統領府 大統領府は、大統領を補佐するさまざまな機関で構成されている。IT 関連の研究開発分 80 野は科学技術政策局(OSTP: Office of Science and Technology Policy)が、電子政府分野は OMB が政策の策定・管理・調整において主導的役割を果たし、それぞれ実施する連邦省庁、 独立機関と連携している。 (2) 連邦省庁 連邦省庁は、OMB や議会の承認を得ながら、IT 政策を実施する。各省庁は、それぞれ 独自の政策を実施するほか、複数の省庁にまたがって実施される政策(省庁間研究開発プ ログラムなど)にも参加する。 2001 年の同時多発テロ事件以降、「国土の安全保障」と「海外における対テロ戦争の勝 利」が国家的な優先課題の一部となってきたことから、IT 政策についても、国土安全保障 省、国防総省が他の省庁に比べて大きな役割を担っている。 (3) 独立機関 連邦政府には、各省の管轄下に置かれていない独立機関が約 70 ある。IT 政策を実施す る主な独立機関は次の通り。 • 研究開発:全米科学財団(NSF: National Science Foundation)、航空宇宙局(NASA: National Aeronautics and Space Administration) • 安全保障:国家安全保障局(NSA: National Security Agency) • 電子政府:連邦調達庁(GSA: General Service Administration)、会計監査院(GAO: General Accounting Office)、環境保護局(Environmental Protection Agency)、中小企業庁(Small Business Administration)、国立公文書館(National Archives and Records Administration)、 社会保障庁(SSA: Social Security Administration) 関連ウェブサイト FIRSTGOV.gov: http://www.firstgov.gov/index.shtml 3. 研究開発 OCED によると、米国の研究開発(R&D)集約度(R&D intensity; 研究開発費の GDP に 占める割合)は、2001 年の 2.73%を頂点にして 2002 年 2.66%、2003 年 2.60%と下降して いる。 81 世界的に見ると、2003 年に R&D 集約度が 3 を超えた国はスウェーデン(3.98%)、フィ ンランド(3.49%)、日本(3.15%)、アイスランド(3.04%)の 4 カ国しかなく、米国はこ れらに次ぐ 5 位となっている。 R&D 支出の伸びは 1995 年以来、米国および日本(ともに年 2.7%)が EU(平均年 3.3%) よりも鈍化している。米国の支出額の全加盟地域に占める割合は最も大きく約 42%、EU は 30%、日本は 17%であった。 関連ウェブサイト OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2005: http://www.oecd.org/document/43/0,2340,en_2825_497105_35455595_1_1_1_1,00.html 3.1 米国競争力イニシアチブ 予算教書発表に先立って、ブッシュ大統領は 2006 年 1 月の年頭教書演説で、①A Strong America Leading the World②American Competitiveness Initiative(米国競争力イニシアチブ) ③The Advanced Energy Initiative④Affordable and Accessible Health Care との 4 つのイニシア チブを発表した。 このうち、特に IT とのつながりの深いのは②の「米国競争力イニシアチブ」である。同 イニシアチブは、研究投資の増額、技術革新の促進、数学・科学を中心とした教育の充実 を柱とし、2007 年度単年で 59 億ドル(約 6,800 億円、200 年 7 月 8 日時点での為替レート 1 ドル=114.68 円で換算、以下同様)、向こう 10 年間で 1,360 億ドル(約 15 兆 6,000 億円) が投入される。 この予算は、特に次の 3 つの機関における基礎研究の強化に利用される。 • 全米科学財団(NSF): 物理科学分野の主たる資金提供元。ナノテク、ネットワーク IT、物理、化学、材料、数学などの基礎研究を対象とする。 • エネルギー省(DOE): 科学局がナノテクノロジー、バイオテクノロジー、ハイエン ド・コンピューティング、高度ネットワーキング、エネルギー技術など、経済的重要 性のある基礎研究の助成、インフラ整備を担当。具体的には、民間のスーパーコンピ ュータ、原子レベルで材料・化学・生命物質を研究する X 線利用施設など。 82 • 商務省米国標準技術局(NIST): 新材料、プロセス、エレクトニクス、コンピューテ ィングおよび IT、高度製造統合、バイオテクノロジー、新エネルギー源(水素など)、 ナノテクノロジーなどを支援する連邦政府機関。産業界や政府機関で使用される規格 も策定する。 関連ウェブサイト State of the Union: American Competitiveness Initiative: http://www.whitehouse.gov/news/releases/2006/01/20060131-5.html 3.2 連邦研究開発費 2007 年度予算は、連邦 R&D 費として約 137 億ドル(約 1 兆 5,700 万円)を要求した。 この数字から、米国政府予算において R&D 費が予算総額に占める割合は約 5.5%と試算さ れる。従来同様、防衛および宇宙開発の重視が続き、国防総省(DOD)の R&D 費は前年 度比 3%増、連邦 R&D 費全体の約 54%を占めており、防衛関連と非防衛関連の差はひろ がる一方である。これに対し、連邦科学技術(FS&T: Federal Science and Technology)予算 は、新たな知識と技術の創出に焦点を当てており、防衛関連の開発・試験・評価の資金は 含まない。2007 年度の FS&T 予算要求額は約 600 億ドル(約 6 兆 9,000 億円)だった。 表Ⅰ-1 2007 年度研究開発予算 (単位:100 万ドル) 2005 年度実績 2006 年度推定 2007 年度提案 2006-2007 年度 2006-2007 年度 増減額 増減率 国防省(DOD) 69,743 71,946 74,234 2,288 3% 保健福祉省(HHS) 28,687 28,767 28,737 –30 0% 米航空宇宙局(NASA) 10,197 11,394 12,245 851 7% エネルギー省(DOE) 8,596 8,563 9,158 595 7% 全米科学財団(NSF) 4,138 4,199 4,548 349 8% 農務省(DOA) 2,410 2,411 2,012 –399 –17% 国土安全保障省(DHA) 1,182 1,484 1,508 24 2% 商務省(DOC) 1,133 1,079 1,065 –14 –1% 退役軍人省(VA) 742 765 765 内務省(DOI) 622 637 600 –37 –6% 運輸省(DOT) 549 704 557 –147 –21% 環境保護局(EPA) その他 640 600 557 –43 –7% 1,235 1,232 1,218 –14 –1% 83 129,874 合計 133,781 137,204 3,423 3% Source: OMB, "Analytical Perspectives, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007" 関連ウェブサイト FY 2007 Budget: http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/ Analytical Perspectives, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007: http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/pdf/spec.pdf 3.3 省庁間研究開発プログラム 2007 年度予算でも多機関にわたり調整の必要な研究投資に焦点が継続されている。以下 では、この数年来実施されている IT 関連の多機関イニシアチブを 2 件取り上げる。 (1) NITRD プログラム 多機関ネットワーキング IT 研究開発(NITRD: Networking and Information Technology Research and Development)プログラムは、ハイエンド・コンピューティング・システム、 大規模ネットワーキング、ソフトウェア開発、高信頼システム、情報管理、サイバーセキ ュリティなどの分野で各機関の研究を計画・調整する。 2007 年度予算は、同プログラムに前年度比 2.4%増の約 31 億ドル(約 3,600 億円)を要 求した。増額の要因は、大統領提案の米国競争力イニシアチブにコンピュータ・サイエン スを始めとする IT 分野の強化が盛り込まれたことにある。2007 年度予算では、NITRD プ ログラムに合計 8 つの PCA(Program Component Areas)が設けられており、ハイエンド・ コンピューティング関連の領域としては、①ハイエンド・コピューティング・インフラス トラクチャおよびアプリケーション②ハイエンド・コンピューティング研究開発、の 2 つ がある。 表Ⅰ-2 NITRD プログラム予算 (単位: 100 万ドル) 2005 年度実績 2006 年度推定 2007 年度提案 2006-2007 年 2006-2007 年 度増減額 度増減率 国防総省(DOD) 775 1,128 1,018 –110 全米科学財団(NSF) 811 810 904 94 12% 保健福祉省(HHS) 571 551 541 –10 –2% エネルギー省(DOE) 377 384 473 89 23% 84 –10% 米航空宇宙局(NASA) 商務省(NIST) 163 78 82 4 5% 60 60 65 5 8% 4 6 6 2,761 3,017 3,089 72 2% 環境保護庁 合計 Source: OMB, "Analytical Perspectives, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007" NITRD プログラムでは、連邦ハイエンド・コンピューティング計画(Federal Plan for High-End Computing)、連邦サイバーセキュリティ情報保証計画(CSIA: Federal Plan for Cyber Security and Information Assurance R&D)などの計画が実施されている。 関連ウェブサイト National Coordination Office for Networking and Information Technology Research and Development: http://www.nitrd.gov/ (2) ナノテクノロジー 2007 年 度 予 算 は 、 多 機 関 国 家 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー ・ イ ニ シ ア チ ブ ( NNI: National Nanotechnology Initiative)に前年度比 1.3%減となる約 13 億ドル(約 1,490 億円)を要求し た。減額の主な要因は、国防総省が 2006 年度の特別費を 2007 年度予算から除外したこと にある。 NII の焦点は、物質を分子・原子レベルで操作する材料・装置・システムを開発するこ とに置かれる。応用分野は、医療分野の診断・治療、ナノスケールの製造、環境監視・保 護、エネルギー生成・保存、電子機器開発など。NII のもとで参加機関は、学際研究拠点 (COE: Center of Excellence)、ナノテク従事者の教育・研修、インフラ開発などを通じ、研 究者主導の基礎・応用研究を継続する。 表Ⅰ-3 国家ナノテクノロジー・イニシアチブ予算 (単位: 100 万ドル) 2005 年度実 績 2006 年度推 定 2007 年度提 2006-2007 年度 2006-2007 年度 案 増減額 増減率 全米科学財団(NSA) 335 344 373 29 8% 国防総省(DOD) 352 435 345 –90 –21% エネルギー省(DOE) 208 207 258 51 25% 保健福祉省(HHS) 168 175 173 –2 –1% 79 76 86 10 13% 商務省(DOC) 85 米航空宇宙局(NASA) 環境保護庁(EPA) 45 7 50 5 25 9 –25 4 –50% 80% 農務省(DOA) 3 5 5 NA NA 司法省(DOJ) 2 1 1 0 0% 合計 1 1 NA -1 -100% Source: OMB, "Analytical Perspectives, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007" 関連ウェブサイト National Nanotechnology Initiative: http://www.nano.gov/ 4. 国土安全保障 国土安全保障費は 2001 年の同時多発テロ事件以降大幅に増加し、2007 年度予算では前 年度比 6.3%増の 583 億ドル(約 6 兆 6,853 億円)が計上された。32 の政府機関に配分さ れるが、国土安全保障省(DHS)、国防総省(DOD)、保健福祉省(HHS)、司法省(DOJ)、 エネルギー省(DOE)の 5 省で総額の 93%を占める。 (1) US-VISIT US-VISIT プログラムは、海外からの渡航者を検査し、危害を及ぼす恐れのある人物を排 除する連邦の主要プログラム。国土安全保障省が国務省(DOS)及び司法省と協力しなが ら進める。同プログラムでは現在、デジタル形式で渡航者の指紋と写真を収集している。 2007 年度予算では 3 億 9,950 万ドル(約 458 億 1,000 万円)が要求された。この中には、 FBI の統合型自動指紋識別システム(IAFIS: Integrated Automated Fingerprint Identification System)と国土安全保障省の指紋システムの統合・相互運用性向上のための予算 6,000 万 ドル(約 68 億円)が含まれる。 (2) サイバースペースのセキュリティ 重要インフラの保護は、2003 年 12 月に署名された国家政策「国土安全保障大統領令 7」 (HSPD7: Homeland Security Policy Directive 7)」に基づいて実施される。国土安全保障省が 中心だが、農務省(DOA)、エネルギー省など、多くの機関がそれぞれ所管のインフラの 保護措置を講じる。 86 国 土 安 全 保 障 省 は 2007 年 度 予 算 の 中 で は 、 IT イ ン フ ラ 改 革 プ ロ グ ラ ム ( ITP: IT Infrastructure Transformation Program)に 3,630 万ドル(約 41 億 6,000 万円)を要求した。 同プログラムは、国土安全保障省の 22 部門の IT インフラを「One Infrastructure」に統合す ることで、セキュアネットワークの構築、信頼ある電子メール通信の確立、ヘルプデスク および関連サービスの再構築、データセンター数の削減と再編、デスクトップワークステ ーションおよびサイト・サービス環境の標準化と近代化、音声ビデオ無線インフラの近代 化を実現する。 関連ウェブサイト Department of Homeland Security: http://www.dhs.gov/dhspublic/index.jsp 5. 電子政府 5.1 E-Government プログラム 2005 年は、2002 年電子政府法(E-Government Act of 2002)の制定から 3 年目を迎えた。 OMB は 12 月、それまでの主な成果と将来目標についてレポート「Expanding E-Government: Improved Service Delivery for the American People Using Information Technology」を発表した。 レポートでは、サービス提供の向上、エンタープライズ・アーキテクチャの役割の拡大、 来年の大統領管理目標(PMA: President's Management Agenda)の一環として達成すべき目 標についてまとめている。 (1) 2005 年までの達成事項 2001 年秋、OMB と連邦政府機関は 24 の E-Government イニシアチブを策定した。24 の イニシアチブは G2C(G2C: Government to Citizen)、C2B(Government to Business)、G2G (Government to Government)、政府内効率効果の主要 4 ポートフォリオに分かれる。さら に 2004 年春、OMB は、5 つの Line of Business(LOB)タスクフォースを結成すると発表 した。4 つのポートフォリオおよび LOB について、2005 年までの主な達成事項を以下にま とめる。 • G2C ポートフォリオ: 社会保障関連のサイトは市民の訪問数が 1 月あたり 19 万人、給 付金プログラムへの推薦件数が 1 月に 12 万 8,000 件を数える。2005 年の確定申告期に (IRS は内国歳入庁)を使って無料で確定申 は、510 万人以上の市民が「IRS Free File」 87 告した。 • G2B ポートフォリオ: 2005 年 8 月までに E-Rulemaking イニシアチブの規則策定プロセ スに、多数のサービスチャネルを通じて一般市民約 160 万人が参加した。 • G2G ポートフォリオ: 2005 年 10 月現在、1,500 件以上の助成金プログラムがオンライ ンで募集されていた。これまでに 17 万件の助成金申請が電子的に受領された。さらに、 災害管理相互運用サービスが 111 件の災害状況と 624 件の研修で使用された。 • 政府内効率効果(IEE: Internal Efficiency and Effective)ポートフォリオ: 連邦職員募集 に 190 万 枚 の 履 歴 書 が 送 付 さ れ て き た 。 E-Training は 、 専 用 の Web ペ ー ジ (www.GoLearn.gov)で 65 万人のユーザーが登録し、130 万コースが実施された。 • LOB: 財務管理、人事管理の分野では COE(Centers Of Excellence)へ移行を計画し、 保健、訴訟管理、助成金管理、サイバーセキュリティは現行作業を継続した。 E-Government イニシアチブは現在、開発実装段階を完了し、サービス料金によって支え られる成熟したサービス提供へと移行しつつある。 (2) 2007 年度予算から 2007 年度予算では、政府の IT および関連サポートサービスに 640 億ドル(約 7 兆 3,400 億円)が提案された。前年度の実施額からは約 3%の増額である。 以下、この政府 IT 支出に含まれるプロジェクト事例を一部紹介する。 • 国土安全保障省は、運用効率の向上、国土安全保障の目的で IT 支出を約 21%増額す る。その多くは、オフィスオートメーションおよびインフラストラクチャの最適化に よる省内の情報共有改善努力である。 • 司法省は国土安全保障省と共同で、訴訟管理情報を共有する業務およびアーキテクチ ャ・ソリューションを開発した。 • 保健福祉省(HHS: Health and Human Services)は、全米医療 IT コーディネータ室 (ONCHIT: National Coordinator for Health Information Technology)を通じて連邦保健ア ーキテクチャ(FHA: Federal Health Architecture)への取り組みを継続する。 • 保健情報技術(HIT: Health Information Technology)イニシアチブも継続し、保健関連 の IT 投資は前年度比 5.3%増の 46 億ドル(約 5,300 億円)。 • 現在の 26 助成機関、900 以上のプログラムが年間 5,260 億ドル(約 60 兆 3,000 億円) を提供している。助成金管理(GM: Grants Management)プロセスおよびシステムは、 機関ごとに進展しているが、機関横断チームが、各機関がメンバーとして参加する「共 88 同事業体(consortia)」をベースにした実施方法を策定した。この方法で、2008 年から 2015 年までに 240 億ドル(約 2 兆 8,000 億円)以上の費用が削減されると推定されて いる。 関連ウェブサイト Expanding E-Government: http://www.whitehouse.gov/omb/egov/e-2-reports.html 89 Ⅱ カナダ 90 Ⅱ 1. カナダ カナダにおける情報技術政策のポイント • 2006 年 2 月、保守党のハーパー党首が首相に就任した。 • IT 政策は産業省、電子政府政策は公共事業政府サービス省が担当している。 • 産業省のスペクトル IT 電気通信部門は広範にわたる IT 政策を実施している。 • 産業省の 2005-06 年度の戦略目標は、 公正・効率的・競争的市場 革新的経済 競争 的産業および持続可能なコミュニティ。 • 産業省の IT 政策は、情報通信技術(ICT: Information Communication and Technology)、 ナノテクノロジーなどの実現技術の研究開発、電子商取引の促進など。 • 産業省参加の ICT 研究機関は、通信研究センター、技術パートナーシップカナダおよ び CANARIE, Inc.である。 • 「Government On-Line」イニシアチブは 2006 年 3 月に終了し、130 のサービスがオン ライン化された。 • 「Government On-Line」ではカナダ政府ポータルのアクセス性の向上、サービスの質 と応答性の向上、信頼の確保が実現した。 • CA*net4 は 2005 年、ユーコン州、ノースウェスト・テリトリーズ州、さらに、カナダ 最大の民間研究機関「Nortel Networks」へ接続を拡張した。 2. IT 政策の担当機関 2006 年 2 月、保守党のハーパー党首(Stephen Harper)が首相として正式に任命され、 13 年ぶりに保守系の新内閣が発足した。これに伴って連邦政府の行政機構においては外務 省(Foreign Affairs)と国際貿易省(International Trade Canada)が再統合された。 IT 政策は主に産業省(Industry Canada)が担当する。産業省の中で、広範にわたる IT 政 策の実施を担当するのは、スペクトル IT 電気通信(SITT)部門である。IT 関連の研究開 発は、通信研究センターや、業務部門局の監督下にある技術パートナーシップカナダが担 当する。電子政府政策を主導するのは公共事業政府サービス省である。 91 産業大臣(Minister) • 政務次官(Parliamentary Secretary) • 保健大臣兼北オンタリオ連邦経済開発イニシアチブ担当大臣(Minister of Health and the Minister for the Federal Economic Development Initiative for Northern Ontario) • 同大臣付政務次官(Parliamentary Secretary) 副大臣(Deputy Minister) • 上級副大臣補(Senior Associate Deputy Minister) ¾ 人事管理局(Human Resources Branch) ¾ 最高情報局(Chief Information Office) ¾ 監査・評価部門(Controllership and Administration Sector) ¾ 通信研究センター(Communications Research Centre Canada) ¾ 消費者問題局(Office of Consumer Affairs) ¾ 業務部門(Operations Sector) 技術パートナーシップカナダ(Technology Partnership Canada) • 競争促進局(Competition Bureau) • 政策部門(Policy Sector) • 産業部門(Industry Sector) • ス ペ ク ト ル IT 電 気 通 信 部 門 (Spectrum, Information Technologies and Telecommunications) • 産業ポートフォリオ局(Corporate and Portfolio Office) • 事業法・顧問局(Business Law and Counsel) 図Ⅱ-1 産業省の組織 関連ウェブサイト Government of Canada: http://www.gc.ca/main_e.html The Prime Minister: http://www.pm.gc.ca/eng/pm.asp?featureId=7 3. 産業省 3.1 戦略目標 産業省の任務は、知識経済の中でカナダ国民の生産性と競争力を向上させ、生活水準と 生活の質を引き上げることである。産業省の政策、プログラム、サービスは、次のような ダイナミックで革新的な経済成長を支える。 • カナダ国民の雇用拡大と賃金水準の向上 • 生産性向上と技術革新を通じたより力強い事業成長 • 消費者、企業、投資家に市場が公正、効率的、競争的であるとの信頼を与える • カナダ国民の経済、環境、社会的利害を総合 92 産業省では、21 世紀型経済の構築に向けて 2005-06 年度は 公正・効率的・競争的市場 革新的経済 競争的産業および持続可能なコミュニティ、の 3 つの戦略目標を掲げてい る。 ICT は、これら 3 つの戦略目標すべてに関係している。戦略目標 では電子商取引、同 では、ICT、ナノテクノロジーなどの実現技術の研究開発、同 ではインフラの普及とデジ タル格差の是正、などが焦点となる。 ICT 部門の生産額がカナダの GDP に占める割合は 1997 年の 4.0%から 2006 年には 5.6% に増加し、606 億カナダドル(約 6 兆 2,500 億円、2006 年 7 月 4 日時点での為替レート 1 カナダドル=103.19 円で換算、以下同様))となった。 表Ⅱ-1 産業省の部門別予算実績(2004-05 年度) (単位:100 万カナダドル) 部門別資金 政策部門 公 正 ・ 効 率 革新的経済 競 争 的 産 業 部門管理 と持続可能 的・競争的 なコミュニ 市場 ティ 6.7 19.9 10.5 部門小計 37.1 0 73.2 125.7 36.6 0 0 36.6 SITT 部門 52 1.7 107.5 161.3 事業部門 47 0 306.5 353.6 産業部門 競争局 198.9 通信研究センター 0 41 0 41 技術パートナーシップカナダ 0 323 0 323 消費者問題局 5 0 0 5 0.6 0 15 最高情報局 その他 合計 148 459 565.1 15.6 108 108 108 1,280.00 Source: Industry Canada "Performance Report – For the Period Ending March 31, 2005" (1) 公正・効率的・競争的市場 (a) 企業、消費者、投資家のための市場枠組み 産業大臣は 2005 年 5 月、周波数政策枠組み(Spectrum Policy Framework)の全面改訂を 開始し、ディスカッションペーパーを発表した。このペーパーの焦点は、周波数資源利用 93 の柔軟性、新技術導入の促進、効率的規制、市場中心のライセンス付与、ライセンス不要 周波数などの問題に当てられた。 SITT 部門は、カナダ市民のプライバシーを保護し、侵入的なテレマーケティングを制限 する法律を作成している。通信法(Telecommunications Act)を改正する「Bill C-37」は、 2004 年 12 月に提出され、審議が続けられている。 (b) 市場の公正かつ効果的運営 産業省の緊急通信プログラム(Emergency Telecommunications Program)は、国家の重要 インフラが破壊された場合にカナダ市民が基本的サービスにアクセスできるようにしてい る。 また、産業省は、通信業界の協力を得て通信インフラのサイバーセキュリティ向上にも取 り組んでいる。 (c) 電子商取引の促進 産業省は 2004 年 5 月、スパム対策計画「Anti-Spam Action Plan for Canada」発表し、同 計画の実施を監視および調整する官民共同のタスクフォースを設置した。2005 年 5 月に発 表された最終報告書は、法的措置、業界標準、最優良事例、市民教育、国際協力などの問 題について勧告している。 カナダの電子商取引売上高は 2005 年、前年度比 38.4%増の総額約 392 億カナダドル(約 4 兆 450 億円、2006 年 7 月 4 日時点での為替レート 1 カナダドル=103.19 円で換算、以下 同様)となり、4 年連続の 2 桁成長を記録した。 (2) 革新的経済 知識経済における競争は、戦略的な実現技術の開発を、特に ICT、ナノテク、支援技術 の分野で必要としている。無線、セキュリティ、フォトニクスなどへの投資は、カナダの 国際競争力の源となり、カナダ企業の生産性を確保する。 カナダ政府は 2005 年度予算でもインテリジェント・システム(IS: Intelligent System; 知 覚、思考、行動するという人間の能力を模倣する技術)および先端ロボティクスの研究機 関 Precarn Inc.に 2,000 万カナダドル(約 21 億円)を拠出した。Precarn( Pre-Competitive Applied 94 Research Network)は、カナダの企業、学術・研究・政府機関で構成される非営利団体で、 1987 年に設立された。資源、製造、環境、安全など多分野で民間主導の研究プロジェクト に資金を提供する。 (3) 競争的産業および持続可能なコミュニティ (a) デジタル格差の是正・知識共有 カナダ産業省では、個人、企業、コミュニティのデジタル経済への参加を促進し、デジ タル格差の是正を図っている。2004-05 年度も、必要なスキル、能力、ツールを提供する 「SchoolNet」プログラム(1999 年に世界で初めて国内のすべての公立学校、公共図書館を インターネットに接続した)などが継続された。 (b) 地方へのデジタル経済の普及 2004-05 年 度 も 産 業 省 は 、 農 村 北 方 開 発 の た め の ブ ロ ー ド バ ン ド 試 験 プ ロ グ ラ ム (Broadband for Rural Northern Development Pilot Program)、国家衛星構想(National Satellite Initiative、衛星通信でしかサービスを提供できない遠隔地のコミュニティのネットワーク 接続を改善する)などのプログラムで、カナダの全コミュニティへの ICT の普及を促進し た。コミュニティにアクセスポントを設置する「Community Access Program」もこうした 取り組みの一環として 2006 年まで 2 年間延長されることが決まった。 関連ウェブサイト Industry Canada: http://www.ic.gc.ca/cmb/welcomeic.nsf/icPages/Menu-e Performance Report – For the Period Ending March 31, 2005: http://www.ic.gc.ca/cmb/welcomeic.nsf/vRTF/PublicationDPR2005/$file/DPROct2005-E.pdf (October 2005) Statistics Canada: The Daily, April 20, 2006: http://www.statcan.ca/Daily/English/060420/d060420b.htm March 2006 - Canadian ICT Sector Profile (2005): http://strategis.ic.gc.ca/epic/internet/inict-tic.nsf/en/h_it07229e.html 3.2 通信研究センター 産業省傘下の通信研究センター(CRC: Communications Research Centre)は、50 年以上 の歴史を誇る高度通信研究開発の中心的研究施設で、R&D 活動のほか、技術移転・商用化、 国際協力なども手掛ける。 95 CRC の戦略的焦点分野は、 ブロードバンド 無線周波数 国防 ネットワーク・セキュ リティ コンバージェンス アプリケーション(e-ラーニング、e-ヘルスなど)である。 関連ウェブサイト Communications Research Centre: http://www.crc.ca/en/html/crc/home/home 3.3 技術パートナーシップカナダ 技術パートナーシップカナダ(TPC: Technology Partnership Canada)は、産業省所管の特 別運営機関で、1996 年から民間企業への資金提供を通じてその研究開発を支援している。 TPC は、カナダ国立研究所(NRC: National Research Council)の産業研究支援プログラ ム(IRAP: Industrial Research Assistance Program)との共同ベンチャーとして、従業員 500 人未満の中小企業を支援する TPC-IRAP プログラムも実施し、その資金を 50%ずつ NRC と折半している。 具 体 的 な 支 援 分 野 は 環 境 航 空 ・ 防 衛 ( A&D: Aerospace and Defence) 実 現 技 術 (Enabling Technology)などである。実現技術には、先端材料処理およびアプリケーショ ン、先端製造処理技術、バイオテクロノジーなどがあり、ICT もこの実現技術の中に含ま れている。 IT の支援分野としては、以下がある。 • 医療関係(遠隔医療、画像診断) • 高度ソフトウェア技術(電子商取引、インターネットソフトウェア) • マイクロエレクトロニクスおよび光技術 • 高度インフラ技術(ブロードバンドネットワーク・ソフト、高度無線技術) 2004-05 年度は、31 の新規プロジェクトに総額 2 億 5,650 万カナダドル(約 264 億 6,800 円)を投資した。さらに TPC-IRAP プログラムを通じて 40 のプロジェクトを総額 1,579 万 カナダドル(約 16 億 2,900 万円)で契約している。 累計すると 2005 年 3 月末現在、TPC の R&D 活動(IPC-IRAP プログラムを含む)は合 96 計 693 プロジェクト、金額では 28 億カナダドル(約 2,900 億円)に上り、このうち、21 億カナダドル(約 2,200 億円)がすでに支払われている。総額の 88.6%は中小企業を対象 としたもの。 関連ウェブサイト Technology Partnerships Canada: http://tpc-ptc.ic.gc.ca/epic/internet/intpc-ptc.nsf/en/Home 4. Government On-Line 4.1 概要 1999 年に開始されたカナダ政府の「Government On-Line」イニシアチブは、2006 年 3 月 に終了した。以下、同イニシアチブの目標、成果、資金、実施体制を概観する。 (1) 目標 Government On-line イニシアチブの目標は一貫して次の 3 点に集約されていた。 • 利用者のニーズに応じて情報やサービスが整理され、世界中に 24 時間英仏語で提供さ れるアクセスしやすいオンライン政府を実現する。 • 効率的で適時の電子サービスを実装し、サービスの質や応答性を高める。 • 電子トランザクションを安全に保ち、個人情報を保護することで、オンラインサービ スの信頼性を確立する。 (2) 成果 主な成果は参加した 34 の政府機関で以下を実現したことである。 • 130 の最もよく利用されるサービスの設計とオンライン提供の加速化 • 利用者に情報サービスを提供する電子チャネルの利用法の抜本的見直し • 利用者の便益確保に向けた経験、手法、ツールなどの共有 • 将来のより高度なオンライン・トランザクションに対応できるセキュアな電子インフ ラストラクチャの構築 インターネット・ユーザーの 71%がカナダ政府の Web サイトを過去 12 カ月以内に訪問 したことがあり、カナダ政府とのトランザクション件数の総数は 2001 年の約 4 億 7,000 万 件から 2005 年には約 11 億件へと増加した。利用者の 94%はサービスに満足している。 97 (3) 資金 6 年間に Government On-Line イニシアチブに投入された連邦政府の資金は総額 8 億 8,000 万カナダドル(約 910 億円)に上る。このほか、各政府機関、その他のパートナーが独自 の資金を投入してサービスを開発した。 Government On-Line イニシアチブの分野別資金は、 共通セキュアインフラ 4 億 7,600 万カナダドル(約 495 億円) オンラインサービス提供プロジェクト 2 億 6,200 万カナダ ドル(約 270 億円) ゲートウェイ/クラスタ 9,500 万カナダドル(約 98 億円) リーダ ーシップ、ポリシー、標準 4,700 万カナダドル(約 48 億円)となっている。 (4) 実施体制 Government On-Line イニシアチブの実施の主導権は、2003 年を境にしてカナダ財務委員 会事務局(TBS: Treasury Board Secretariat)から公共事業政府サービス省(PWGSC)へと 移った。TBS では現在、次世代サービス提供のための課題や戦略に焦点を当てている。 個々のサービスについては、政府機関の長が各種の省庁間サービス委員会を組織し、イ ニシアチブを監視することで、単一窓口の提供を目指している。 4.2 アクセス性の向上 (1) クラスタリングと「No Wrong Door」 クラスタリングの原則は、ユーザーの状況に応じて情報を集約・構成することで、シー ムレースなサービスをユーザーに提供することである。2001 年、カナダ政府はメインとな る「Government of Canada」サイトを立ち上げ、オンラインサービス提供に利用者中心のア プローチを導入した。この Web の最も大きな特徴は、同じ情報やサービスに通じる複数の 経路が確保されていること(「No Wrong Door」アプローチ)である。 市民および居住者向けサイト(Canadians and Residents Gateway)では、求人情報など、日 常的なサービスへのアクセスに No Wrong Door アプローチを採用している。外国人向けサ イト(Non-Canadians Gateway)は、外国人がカナダでビジネス、旅行、就業、研究するた めの単一の窓口を提供する。企業向けサイト(Business Gateway)は、企業経営全般に必要 な情報サービスの単一窓口となっている。 98 2005 年 9 月に発足した新組織「Service Canada」では、オンライン、電話、対人を統合 する単一ネットワークを利用し、カナダの市民に政府サービスを「ワンストップ」で提供 するサービス統合を目指している。サービス内容は、社会保障番号カードの発行、パスポ ート発給、年金プラン、ジョブ・マッチングなどである。人材技能開発省が推進する。 (2) Common Look and Feel カナダ政府は、トップおよびサイドのメニューバーなどのデザイン要素に一貫性を保つ 一連の標準「Common Look and Feel」を策定している。公共的な Web サイト上の情報のア クセシビリティを最大化することなどを目指し、2000 年 5 月から実装が開始された。 (3) 技術的障壁の克服 Web アクセシビリティの基本原理は、多様なユーザーのニーズを満足できる Web サイト とソフトウェアの設計である。 (4) 言語的障壁の克服 2005 年 7 月には、Web サイトの公用語使用に関する指令(Directive on the Use of Official Languages)が実施された。同指令は、Web サイトが一般市民との通信やサービス提供に関 する言語的な義務を遵守し、英語版とフランス語版のサイトが同じ品質で同時に提供され なければならない、としている。 (5) 市民の参加の促進 Government On-Line では、利用者をターゲティングしたサービスが開発されている。 「Consultation Portal」や「eDiscussion」フォーラムは、政治や政策について意見を表明し 参加する機会を一般市民に提供する機会を提供している。 4.3 サービスの質と応答性の向上 2005 年、政府サービスでは合計 7,210 万件のトランザクションがあった。インターネッ トの利用率は 2002 年の 22%からかなり増加しており、インターネットをサービス提供チ ャネルとしてカナダ市民が高く評価していることがうかがえる。インターネットの利点は、 政府とのやりとりが簡素化される 意思決定に必要な情報提供などがある。以下、この 2 点について述べる。 99 (1) サービスの簡素化 カナダ連邦政府の簡素化されたインタラクションの事例として有名なのは、カナダ歳入 庁(Canada Revenue Agency)の電子個人納税サービス「NetFile」である。この e-サービス の利用率は 2000 年の 31%から 2004 年には 47%へと増加している。特に初回利用者は、申 告から税還付まで 2 週間しかかからない迅速性、特別なスキルや知識を必要としない点を 高く評価している。 産業省の消費者向け情報サイト「Canadian Consumer Information Gateway」は、製品や食 品のリコールリスト、最新の詐欺事件などの警告から、消費者が自分に適したクレジット カードの選択や自動車の購入/リースの判断に利用する計算機まで、広範にわたる消費者 情報を提供する。 (2) 企業意思決定のための情報提供 農務省、Canadian Commercial Corporation、Export Development Canada、民族遺産省は共 同で「Canadian Trade Commissioner Service」を開発した。同サイトではカスタマイズされ た市場情報、ビジネスの手がかりとなる情報を提供するほか、現在では、Export Development Canada の貿易金融リスク管理ツール、その他の協力機関のサービスにもアクセスできる。 カナダ統計局は、音声、画像、表、グラフ、分析・説明の文章を使用した「e-Book」を 提供している。同局の利用者は、企業、労働組合、研究機関、一般市民、他の政府部門な どで、質の高い情報サービスを広範な利用者に向けてコスト効率よく提供することが課題 とされてきていた。e-Book はこの課題を解決するツールとして注目されている。 4.4 信頼の確保 (1) セキュアなトランザクション オンラインサービス提供の中核に位置付けられるのが「Secure Channel」である。Secure Channel は、強力なアクセス・コントロール、ファイアウォール、暗号化などを含む一連 のセキュリティ・ソリューションを提供する電子的プラットフォームである。連邦政府省 庁は、この Secure Channel を共通インフラとして利用することで、利用者のセキュリティ とプライバシーに対する信頼を獲得している。なお、Secure Channel は、登録認証ツール として e-Pass と呼ばれる共通パスワードを採用しており、カナダ歳入庁の税務サービス 100 「My.Account」や人材技能開発省の「ROE Web」 (雇用記録のオンライン提出)などがある。 (2) 個人の安全 公共安全緊急対策省の「Canadian Cyber Incident Response Centre」は、サイバーセキュリ ティ事故対応を調整し、サイバー脅威環境を監視する。 関連ウェブサイト Government On-Line 2006 Annual Report: http://www.gol-ged.gc.ca/rpt2006/rpt/rpt00_e.asp 5. CA*net4 5.1 概要 CA*net4 は、カナダの超広帯域研究教育ネットワーク CA*net の第四世代にあたるネット ワークで、1990 年にスタートした。カナダ産業省傘下の非営利組織 CANARIE Inc.がプロ ジェクトごとに参加機関に資金を提供している。CANARIE が 1999 年以降 CA*net4 に投資 した金額は総額 6,800 万カナダドル(約 70 億円)を超える。プロジェクト数は 100 以上で、 教育、医療、ビジネス、文化など多岐にわたる。 (1) 技術的特徴 CA*net4 の転送速度は、前世代から 8 倍に増加し、大規模プロジェクトにも利用される ようになった。CA*net4 では、UCLP(User Controlled LightPath)ソフトウェアを利用する ことで、ネットワーク・ユーザーが必要とする光パス(光ネットワーク上で任意の 2 点間 の固定帯域を提供する専用通信チャネル)を結合、分割、相互接続し、専用のサブネット ワークを構築できる。 (2) 接続先 カ ナダ に は現 在、 13 の地 域光 研究 ネッ トワ ー ク( ORANs: Regional Optical Research Networks)が存在する。オンリオ州、ケベック州、アルバータ州、ニュー・ブランズウィ ック州、ブリティシュ・コロンビア州などの規模が大きい。CA*net4 は地域のネットワー クを全国的、国際的に接続する役割を担う。 2005 年、CA*net4 は、ユーコン州、ノースウェスト・テリトリーズ州、さらに、カナダ 最大の民間研究機関「Nortel Networks」へ接続を拡張した。 101 5.2 研究教育関連プログラム (1) CANARIE 接続プログラム(CCP: CANARIE Connections Program) 2005 年 3 月に開始された。投資額は 1,000 万カナダドル(約 10 億円)。大量データの送 受信に必要な帯域を提供する。25 の連邦研究所および民間研究施設が参加する。一例にカ ナダ国立研究所(National Research Council)のハーツバーグ宇宙物理研究所(Herzberg Institute of Astrophysics)がある。同研究所では、毎月、数百テラバイトのデータを宇宙望 遠鏡から受信し、遠隔地にいる研究者間で共有する。 (2) 先端アプリケーションズ・プログラム(AAP: Advanced Applications Program) 同プログラムのもとで、2004 年には総額約 420 万カナダドル(約 4 億 3,000 万円)を投 資し、10 のプロジェクトが実施された。 (3) インテリジェント・インフラストラクチャ・プログラム(CIIP: CANARIE Intelligent Infrastructure Program) 2005 年 3 月に開始された。投資総額は 1,500 万カナダドル(約 15 億円)。CA*net4、UCLP ソフトウェア、サービス指向アーキテクチャを統合して、ブロードバンド・ネットワーク や Web サービスをプロセス制御、計測システム、センサーネットワークなど、産業アプリ ケーションに応用する。 (4) インタラクティブ・メディア先端研究(ARIM: Applied Research in Interactive Media) 2004 年初めに開始された。このプログラムで CANARIE は、民族遺産省のカナダ文化オ ンライン(Canadian Culture Online)プログラムから資金援助を受けている。 関連ウェブサイト CANARIE: http://www.canarie.ca/about/index.html 2004-2005 Annual Report: http://www.canarie.ca/annualreport/areport_2005.pdf 102 Ⅲ 欧州連合 103 Ⅲ 1. • 欧州連合 欧州連合における情報技術政策のポイント 2006 年春の欧州理事会(European Spring Council 2006)で、リスボン戦略実施におけ る主な問題点と今後の施策がまとめられた。 • i2010 イニシアチブは、成長と雇用の促進を目指すリスボン戦略において中心的役割を 果たす政策の一つで、2005 年~2010 年に実施する主な行動を定めている。 • i2010 イニシアチブの第 1 回年次報告書は、2006~2007 年に実施される情報社会・メ ディア政策をアップデートした。 • 報告書で取り上げられた領域は、①単一欧州情報空間②技術革新と研究投資③デジタ ル格差の是正・公共サービス・生活の質、である。 • EU の研究開発費の GDP 比を 2010 年までに 3%に高めるのは難しいことが確認されて いる。 • EU の研究助成プログラムとして現在、第 6 次フレームワークプログラムが進行中であ る。 • 第 6 次フレームワークプログラムのテーマ領域である情報社会技術(IST: Information Society Technology)では、アンビエント・インテリジェンスのビジョンの下で①ハー ドウェアおよびソフトウェアの利用促進②欧州産業界の競争性を高め、市民が知識社 会発展の恩恵に浴すること、の 2 点を目標としている。 • 2006 年 7 月、閣僚理事会は第 7 次フレームワークプログラムの予算配分案を承認した。 2. IT 政策の担当機関 欧州委員会における IT 政策の担当部門は次の通り • 情報社会政策(i2010)は情報社会総局が担当する。 • 研究開発全般(フレームワークプログラムを含む)は研究総局が担当するが、IST テ ーマについては情報社会総局(Information Society DG))が運営している。 3. i2010 2005 年 2 月、欧州委員会は eEurope2002 および eEurope2005 の出発点となったリスボン 戦略の中間レビューを発表し、これを踏まえて 2005 年 5 月、情報社会政策「i2010: European 104 Information Society 2010」を採択した。i2010 イニシアチブは、成長と雇用の促進を目指す リスボン戦略において中心的役割を果たす政策の一つで、2005~2010 年に実施する主な行 動を定めている。 3.1 i2010 年次報告書 欧州委員会が 2006 年 5 月に発表した i2010 イニシアチブの第 1 回年次報告書は、2006 ~2007 年に実施される情報社会・メディア政策の行動をアップデートした。報告書は、そ れまでの i2010 の達成事項をまとめるとともに、EU の ICT の発展を踏まえて i2010 の主要 行動を見直した。 報告書は結論として、政策立案者が ICT 部門の成長促進政策を策定すべきだとし、具体 的な優先項目として、ブロードバンド戦略の実施、コンテンツと周波数に対する一貫性あ るアプローチ、統合的な研究技術革新戦略、より野心的な公共サービスを挙げた。 3.2 達成事項と 2006~2007 年の計画 (1) 単一欧州情報空間 i2010 は、デジタルコンバージェンスが大きな変化をもたらすと考え、単一市場の強化 から十分な受益を確保することを目指している。i2010 は、コンバージェンスに関して、 速度、豊かで多様な多言語コンテンツ、相互運用性、セキュリティの 4 つを課題としてい る。i2010 は、投資と競争を促進するため、情報社会およびメディアサービスの一貫した 枠組みを求める一方で、公共の利益を目的とし、消費者の利益保護を確保している。 2005 年、欧州委員会は、消費者の利益を増進し、投資と技術革新を刺激する競争的環境 を確保するため、電気通信の規制枠組みの見直しを開始した。この作業は 2006 年に完了す る。その一環として、欧州委員会は関連市場の勧告についても見直しを行う。欧州委員会 はこのほか、携帯ネットワークにおける国際ローミングのコストを削減し、単一市場を促 進することを目的とする規制も準備している。 欧州委員会は今後、無線周波数の利用を促進する周波数管理改革を提案する予定である。 欧州レベルでの一貫したアプローチは、たとえば、アナログテレビからデジタルテレビへ の移行による周波数開放などを通じて、欧州の成長と雇用に直接的影響を与えると見られ 105 ている。その結果、無線ブロードバンドや新しい汎欧州サービスの開発が促進される可能 性がある。欧州委員会はこのほか、モバイル TV の標準化と相互運用性についても調査を 実施する予定である。 2005 年、欧州委員会は、TV 類似サービスを提供する全企業に対して、サービス提供に 利用する技術に関係なく、均等な条件を創設する国境なきテレビ(TVWF: Television without Frontiers)指令の提案書を採択した。この提案は今後、欧州理事会と欧州議会の共同決定 手続きを受ける予定である。 新しい機器、ネットワーク、サービスの登場で、EU は、デジタル著作権が保護された コンテンツの提供、デジタル著作権管理(DRM: Digital Rights Management)ソリューショ ンの導入、消費者およびデータ保護の規則更新の必要性、不正コピーされたコンテンツの オンライン配信の取り締まりなど、新たな課題に対応しなければならなくなる。EU 規模 のオンライン音楽サービス著作権管理に関する勧告は、汎欧州サービスへの障害を除去す ることによって単一情報空間(Single Information Space)を確立するための最初の一歩であ る。 欧州市民と消費者は、コンバージェンス、より多様な情報への容易なアクセス、独自コ ンテンツの作成などから、幅広い便益を引き出すことができる。2006 年には、2005 年に開 始された欧州委員会の Film Online イニシアチブを拡張した Content Online イニシアチブに 関するコミュニケがこれらの問題を取り上げる。ただし、セキュリティやプライバシーの 懸念から、多くの人々が依然として情報社会やメディアサービスの利用を渋っている。ス パムとマルウェアに関するコミュニケ、サイバー犯罪に関するコミュニケ、新セキュリテ ィ戦略は、セキュリティの懸念全般に対応する。 (2) 技術革新と研究投資 (a) 研究と技術革新 2006 年リスボン戦略年次報告書(2006 Lisbon Annual Progress Report on Growth and Jobs) において、2010 年までに研究開発費の GDP 比 3%の数値目標には到達できないことが確認 されている。しかし、EU における研究の重要性は変わらず、第 7 次フレームワークプロ グラムで提案された ICT 研究の優先事項は、欧州理事会および欧州議会で広範な支持を得 ている。報告書は、知識と技術革新への投資を増額する具体的提案を開始し、技術革新の 可能性が大きい領域として公共調達などを特定した。 106 改訂版リスボン戦略の諸目標に対する一貫した総合的対応として、欧州委員会はすでに 2005 年に競争力技術革新プログラム(CIP: Competitiveness and Innovation Programme)を採 択している。CIP は、2007 年から 2013 年を対象とし、予算総額は約 36 億ユーロ(約 5,300 億円、2006 年 8 月 13 日時点での為替レート 1 ユーロ=147.83 円で換算、以下同様)。CIP には、①起業と技術革新②ICT 政策支援③インテリジェント・エネルギーの 3 つのプログ ラムがあり、②の ICT 政策支援は i2010 の優先項目に直接結びついている。 (b) ICT の採用 ソフトウェアとサービス・アーキテクチャは、企業内のビジネスプロセスの統合だけで なく、企業間のネットワーキングも可能にし、新しい共同環境を構築している。これらの 発展の背景にある重要な実現技術は、グリッド技術とサービス指向アーキテクチャで、い ずれの分野も欧州が研究を主導している。ICT は、製造業や小売業における RIFD(Radio Frequency Identification)の普及ですでに明らかになったように、企業や市場に大きな影響 を与える。欧州委員会は、RFID について標準化、相互運用性、周波数ニーズ、プライバ シー、データ保護などの問題について諮問を実施し、2006 年中に政策提案を行う。 企業が ICT 投資とビジネスプロセスの再編を並行して実施すれば、効率性の向上につな がる。ただし、スキルとコンピテンシーは依然としてネックとなっており、欧州 e スキル ズフォーラム(European eSkills Forum)がこれに対応している。eBSN(European eBusiness Support Network for SME)は、欧州における既存の e-ビジネス政策イニシアチブの相乗効 果を高め、ICT の利用を通じた中小企業の競争力強化を目指す。さらに i2010 では、企業 による ICT 採用への技術的、組織的、法的障害を除去する必要性に対応する。 (3) デジタル格差の是正、公共サービス、生活の質 (a) デジタル格差の是正 i2010 イニシアチブは、多岐にわたるデジタル格差是正(eInclusion)政策を取り込むこ とで、持続可能な成長と欧州の社会モデルを支える。i2010 に定められるデジタル格差是 正政策が対応する問題には、高齢化、アクセシビリティ、電子政府、デジタルリテラシー、 文化などが含まれる。2005 および 2006 年初め、それぞれ、ブロードバンド格差の是正、 e-アクセシビリティに関するコミュニケが発行された。 (b) 公共サービス 107 改訂版のリスボン戦略は、成長と競争力の目標実現における公共サービスの役割を強調 する。公共サービスにおける ICT 利用は、公的資金の持続と行政手続きの簡素化を図るも ので、加盟国が主な実現手段と ICT を活用した公共サービスの整合的実施の諸目標に合意 することで、目標の具体化が進展している。 (c) 生活の質 生活の質と持続可能な発展への ICT の貢献はまだ十分に認識されていない。このため、 i2010 では、高齢化社会、安全でクリーンな輸送、文化的多様性など、主な社会的課題に 関するフラッグシップ・イニシアチブを立ち上げることで、この問題の認知度を高めるこ とを目指す。 表Ⅲ-1 i2010 戦略: 2006~2007 年の計画 ①単一欧州情報空間 • e-コミュニケーション規制枠組みを見直す提案書の作成(関連市場の勧告、国際ローミング規制 の見直しを含む) • 周波数の効率的管理の促進 • • モバイル TV サービスに関する標準化および相互運用性の進展度の評価 Film Online イニシアチブを Content Online イニシアチブに拡張し、2006 年末までにコミュニケの 形で提案 EU セキュリティ戦略に関する次期コミュニケ(2006 年初め)、サイバー犯罪に関するコミュニケ、 スパムおよびマルウェアに関するコミュニケにおいて信頼、プライバシー、セキュリティに取り 組む • • • 新しい技術的発展を考慮して消費者保護規制枠組みを見直す i2010 ハイレベルグループを通じ、加盟国と協力しながら、コンバージェンスの政策的含意を分 析 ②技術革新と研究投資 研究と技術革新 • • • • • • • ICT の採用 • • 第 7 次フレームワークプログラムの採択 2 つの共同技術イニシアチブ(Joint Technology Initiative) (ナノエレクト ロニクス、組込みシステム)の提案 ICT の研究および技術革新に関するコミュニケの発行 公共調達指令の適用分析 ICT 標準化の検討 ICT 政策支援プログラムの採択 ICT タスクフォースおよび i2010 ハイレベルグループ内における ICT 部 門の競争力の検討 RFID に関する議論の完了と 2006 年末のコミュニケ発表 e-ビジネス政策と動向のレビュー(2006 年)、必要な政策の策定(2007 年) ③デジタル格差の是正・公共サービス・生活の質 108 デジタル格差の是正 • • • • 公共サービス • • • 生活の質 • • • • e-アクセシビリティ・コミュニケのフォローアップ ブロ ー ドバ ン ドの 最 優良 事 例を 交 換す る 情報 プ ラッ ト フォ ー ム構 築 支 援、農村地方のブロードバンドに関するカンファレンスの開催 デジタル格差是正(eInclusion)に関するリガ・カンファレンスの閣僚宣 言を加盟各国とともに作成 デジタルリテラシーに関する作業のフォローアップ(e-ラーニング・カ ンファレンス、生涯学習と技術革新を支援する教育研修 ICT に関するコ ミュニケ) 電子政府行動計画(eGovernment Action Plan)の開始と ICT を利用した公 共サービスの戦略提案 EU 公衆衛生ポータルの立ち上げ、電子保健の相互運用性に関する勧告の 作成 公共サービスのオンライン化の技術・法・組織的ソリューションをテス トする試験プロジェクトの立ち上げ ICT フラグシップ・イニシアチブ「高齢化社会における一人暮らしのた めの ICT」の立ち上げ 「インテリジェントカー」フラッグシップ・イニシアチブの実施 「デジタルライブラリ」フラッグシップ・イニシアチブの実施、デジタ ル化とデジタル保存に関する勧告、科学情報デジタルライブラリに関す るコミュニケ ICT フラグシップ・イニシアチブ「持続可能な成長のための ICT」の提 案 Source: European Commission "i2010 -- First Annual Report on the European Information Society"より作成 関連ウェブサイト i2010 – First Annual Report : http://www.europa.eu.int/information_society/eeurope/i2010/docs/annual_report/com_2006_215_en.pdf 4. フレームワークプログラム フレームワークプログラムは、欧州委員会研究総局が担当している研究助成プログラム であり、2002 年に開始された第 6 次フレームワークプログラム(FP6: Sixth Framework Programme)は 2006 年末まで実施された。 4.1 第 6 次フレームワークプログラム (1) 2004 年度活動概要 欧州委員会は 2005 年 10 月、2004 年の研究および技術開発活動に関する年次報告書を発 表した。以下は、この報告書に基づいて FP6 の進捗状況をまとめている。 109 (a) 提案件数・予算概要 プログラム開始時の FP6 の予算は 2002~2006 年の 4 年間で 175 億ユーロ(約 2 兆 5,900 億円)だったが、EU 拡大に伴って 192 億ユーロ(約 2 兆 8,400 億円)まで増額し、新規加 盟国の参加も促進された。 2004 年は約 1 万 6,000 件の提案(参加者 8 万 4,400 人)を受け付け、そのうち約 2,000 件(参加者 1 万 3,700 人)に総額 42 億ユーロ(約 6,200 億円)以上が提供された。 (b) テーマ領域/特定プログラム FP6 の優先テーマ領域は①生命科学、ゲノム学、バイオテクノロジー②情報社会技術③ ナノテクノロジー、ナノサイエンス、多機能材料、製造プロセスおよび機器④航空工学、 宇宙⑤食糧品質、安全⑥持続可能な発展、グローバルな変化、生態系⑦知識社会における 市民と統治、の 7 つであった。 「欧州研究圏(ERA: European Research Area)の創設」特定プログラムでは、2004 年、 8,500 件以上の提案が受け付けられ、800 件以上が資金提供に選定された。内訳は 90%が 人事、残りは研究および技術革新、研究インフラ、科学と社会に対するものであった。 「ERA の統合および強化」特定プログラムで、7,300 件以上の提案が提出され、うち約 1,100 万件(参加者 1 万 1,400 人以上)が資金提供に選定された。 政策への科学的支援(SSP: Scientific Support to Policy)および新未来科学技術(NEST: New and Emerging Science and Technology)に関する FP6 の新たな活動でも、120 件以上が資金 提供を受け、成功した。NEST プロジェクトは、科学分野において新たな展望を探り、新 たな挑戦を行う、あるいはリスクの高い学際的な研究を促進するためのもので、従来の研 究プロジェクトを超えた先端的研究を広範にカバーする。 関連ウェブサイト Annual Report 2005: http://ec.europa.eu/research/reports/2005/index_en.html Annual Report 2004: http://europa.eu/eur-lex/lex/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2005:0517:FIN:EN:PDF (2) IST FP6 のテーマ領域である IST では、アンビエント・インテリジェンス(ambient intelligent; 110 インタラクティブなインテリジェント環境)のビジョンの下、①ハードウェアおよびソフ トウェアの利用促進②欧州産業界の競争性を高め、市民が知識社会発展の恩恵に浴するこ と、の 2 点を目標としている。このテーマ領域の総予算は 36 億 2,500 万ユーロ(約 5,360 億円)。技術的重点領域は次の通り。 • コンピューティング・システムのセキュリティ、市民のプライバシーを確保する技術 の研究 • 高齢者、障害者を含む万人が情報社会にアクセスできるアンビエント・インテリジェ ンス、インタラクティブでインテリジェントなシステム(保健、交通、安全、観光、 文化、環境)の開発 • 電子およびモバイル・コマースの開発(セキュアなトランザクションのための技術と インフラ、新しい就業方法、学習技術と知識活用システム、統合ビジネス管理、オン ライン行政) • グローバル・リソース情報データベース(GRID: Global Resource Information Database) システムを含む大規模分散システムおよびプラットフォームの開発(環境、エネルギ ー、保健、運輸、工業デザインの各分野) 関連ウェブサイト European Commission: http://ec.europa.eu/index_en.htm FP6: http://ec.europa.eu/research/fp6/index_en.cfm 4.2 第 7 次フレームワーク・プログラム案 第 7 次フレームワーク・プログラム(FP7 Seventh Framework Programme; 2007 年~2013 年)では、過去のフレームワークプログラムの実績に基づいてそれをさらに推し進め、欧 州における知識経済社会の発展を目指す。 欧州委員会は 2005 年 4 月に FP7 案を欧州理事会および欧州議会に提出した。現在は、 この両機関の承認を必要とする共同決定手続きが進められている最中である。 (1) プログラム FP7 プログラム案は、研究実施手段よりもテーマの重視などを新たな特徴とし、次の 4 つのプログラムから構成される。 • 産学連携(Co-operation):研究活動の調整支援(共同プロジェクトおよびネットワー 111 クから、国家研究プログラムの調整まで)。下位プログラムには、①共同研究(EU 研 究資金の大部分を占める)②共同技術イニシアチブ(欧州技術プラットフォームの活 動を基礎とする)③EU 以外の研究プログラムの調整④国際調整の 4 つがある。 • 基礎研究(Ideas):科学技術分野(工学、社会・人文科学を含む)全般にわたって欧 州の研究活動のダイナミズム、創造性、卓越性を促進する。欧州科学評議会が活動を 監督する。 • 人材育成(People):マリーキュリーアクション(人材流動化関連)を実施して、研究 開発の人材を質的および量的に強化する。 • 基盤整備(Capacities): 研究インフラ、中小企業のための研究、欧州の諸地域の潜在 的研究を支援するとともに、統合 EU の研究能力の活用を促進する。 優先テーマ領域は FP6 の 7 件を引き継いだが、新たに宇宙と安全の 2 件が加えられ、合 計 9 件になった。宇宙と研究はいずれも産学連携プログラムの中に含まれている。 (2) 予算 2006 年 7 月、閣僚理事会は FP7 の予算配分案を承認し、欧州議会に提出した。欧州議会 は、年内に開催する会議で、同案を支持すると見られている。FP7 は、2007 年 1 月 1 日か ら開始される。 2005 年 4 月のプログラム案で 727 億 2,600 万ユーロ(約 10 兆 7,500 億円)だった予算総 額は、2006 年 7 月時点では 505 億 521 万ユーロ(約 7 兆 4730 億円)へと大幅に減額され ている。 表Ⅲ-2 第 7 次フレームワークプログラム予算額の変化 (単位:100 万ユーロ) 2005 年 4 月 2006 年 5 月 2006 年 7 月 テーマ領域/特定プログラム/プロジェクト 保健 8,317 5,984 6,050 食品、農業、バイオテクノロジー 2,455 1,935 1,935 12,670 9,110 9,110 ナノサイエンス、ナノテク、材料、新製造技術 4,832 3,467 3,500 エネルギー 2,931 2,265 2,300 情報通信技術 環境(気候変動) 2,535 1,886 1,900 運輸(航空を含む) 5,940 4,180 4,180 792 607 610 社会経済科学および人文科学 112 安全と宇宙 3,960 (宇宙) 1,430 2,858 (安全) 1,350 小計 44,432 32,292 欧州研究評議会 11,862 7,460 32,365 7,460 マリーキュリーアクション 7,129 4,727 4,728 研究インフラストラクチャ 3,961 2,008 1,850 中小企業のための研究 1,901 1,266 1,336 知識基盤地域 158 126 126 潜在的研究 554 350 370 社会の中の科学 554 359 280 358 182 185 70 研究政策の策定 国際協力 小計 7,486 4,291 4,217 共同研究センター活動(非原子力) 1,817 1,751 1,751 72,726 50,521 50,521 3,092 2,751 2,700 欧州委員会合計 欧州原子力共同体(EURATOM)原子力研究研修活動 Source: Budget breakdown of the Seventh Framework Programme of the European Community (EC) (2007-2013) and Euratom (2007-2011) 関連ウェブサイト Europe's Information Society (Thematic Portal): http://www.europa.eu.int/information_society/index_en.htm development of ICT research in FP7: http://ec.europa.eu/information_society/research/eu_research/fp7_ist/index_en.htm Towards FP7 (Cordis guide): http://cordis.europa.eu/fp7/ Budget: http://cordis.europa.eu/fp7/budget.htm 113 Ⅳ 英 114 国 Ⅳ 1. • 英 国 英国における情報技術政策のポイント 内閣府の e-Government Unit は、2004 年 5 月に e-Envoy に代わり設置され、英国の電子 政府政策を主導している。 • e-Government Unit には、2005 年 1 月に最高情報責任者カウンシルが設立された。 • CIO カウンシルは 2005 年 11 月、英国政府の IT 活用戦略「政府の変革 - 技術の力 (Transformational Government - Enabled by Technology)」を発表した。 • 同戦略の実施時期は、フェーズ 1(2005 年 11 月~2007 年 7 月)、フェーズ 2(2007 年 8 月~2011 年)、フェーズ 3(2011 年以降~)に分かれる。 • 2006 年 3 月に発表した実施計画「Transformational Government - Implementation Plan」 は、それまでの達成事項とフェーズ 1 で残された取り組みについて概要を示したもの。 • フェーズ 1 の変革は、21 世紀の政府のビジョンとして①利用者中心②シェアドサービ ス③IT プロフェッショナルの育成の 3 つを柱としている。 • 科学技術政策を主導する貿易産業省科学技術局(OST)は 2006 年から科学技術革新局 (OSI)に変更された。 • 2005/06 年度の OSI の予算は、年間総額 34 億ポンドまで増加した。 • 2004 年の 10 カ年科学技術投資枠組みでは、英国の研究開発投資を GDP 比で 2.5%ま で高める目標が設置されている。 2. IT 政策の担当機関 英国の IT 政策の担当機関は次のとおり。 • 各省庁の電子サービスの提供を管理する e-Government Unit は、内閣府(Cabinet Office) に置かれている。 • 地方政府の電子化は、コミュニティ地方政府省(DCLG: Department for Communities and Local Government)が担当する。 • IT プ ロ ジ ェ ク ト の 調 達 や 電 子 公 共 調 達 は 、 財 務 省 の 英 国 商 務 局 ( OGC: Office of Government Commerce)が担当する。 • 一般市民のセキュリティは内務省が担当する。 • IT 関連の科学技術政策は、貿易産業省が担当する。 • 貿易産業省は、企業支援の一環として、企業の ICT 利用のほか、通信・放送分野も担 115 当し、独立規制機関の通信庁(Ofcom: Office of Communications)と連携している。同 省傘下の科学技術革新局(OSI: Office of Science and Innovation)は、IT 関連の研究開 発を含む科学技術政策全般を担当する。 関連ウェブサイト 10 Downing Street: http://www.number10.gov.uk/output/Page1.asp Department for Communities and Local Government: http://www.communities.gov.uk/ 3. e-Government Unit e-Government Unit は、2004 年 5 月に e-Envoy に代わり設置され、英国の電子政府政策を 主導している。 e-Government Unit には、2005 年 1 月に最高情報責任者(CIO: Chief Information Officer) カウンシルが設立された。カウンシルは、政府 CIO 以下、28 人の中央・地方政府および公 共機関の CIO で構成され、組織間の連携を図っている。カウンシルの CIO は、e-Government Unit の最高責任者も兼任している。 3.1 政府 IT 活用戦略概要 CIO カウンシルは 2005 年 11 月、英国政府の IT 活用戦略「政府の変革 - 技術の力 (Transformational Government - Enabled by Technology)」を発表した(以下、「戦略」と略 記する)。 (1) 対象期間 戦略の実施時期は、フェーズ 1(2005 年 11 月~2007 年 7 月)、フェーズ 2(2007 年 8 月 ~2011 年)、フェーズ 3(2011 年以降~)に分かれ、各フェーズの優先項目は次のように なっている。 (a) フェーズ 1 • 医療ネットワーク(Connecting for Health)、刑事裁判システム(Criminal Justice System)、 教育におけるテクノロジー活用戦略(Harnessing Technology Strategy in Education)など の個別プログラムを実施する。 116 • デジタル戦略(Connecting the UK: the Digital Strategy)を通じてデジタル格差を是正す る。 • IT プロフェッショナル(専門的人材)を育成する。 • 2006 年以降の変革を主導する主要なポストや組織を創設する。 • 包括的歳出見直し(CSR: Comprehensive Spending Review)プロセスを活用して計画と 目標を明確化する。 • 全レベルの政府および公共機関と協力して、特定の共有アクションの機会を特定する。 (b) フェーズ 2 • 市民と企業を中心とした公共サービスへの変革を実現する。 • 現行および予定投資の財務およびサービス利益を実現する。 • 変化と新しい文化の普及を図る。 (c) フェーズ 3 • 市民および企業が自宅、職場、公共の場で、あるいは移動中にサービスを利用する。 • 政策立案者がサービス設計時にテクノロジーを活用し、政策目標を達成する。 • 省庁間、中央政府・地方政府間、公的部門、民間部門、ボランタリー部門間の境界の 重要性が低下する。 (2) フェーズ 1 の 3 つの柱 フェーズ 1 の変革は、21 世紀の政府のビジョンとして、①利用者中心②シェアドサービ ス③IT プロフェッショナルの育成の 3 つを重点項目としている。それぞれの項目の概要は 次のようになる。 • IT の実現するサービスは、提供者ではなく、市民または企業を中心に設計され、また、 近代的で調整されたチャネルを通じて提供されなければならない。 • 政府は、フロントオフィス/バックオフィス、情報/インフラストラクチャを問わず、 シェアドサービスへ移行し、標準化、簡素化、共有によって効率を高めなければなら ない。 • IT が実現する計画、提供、管理、スキル、ガバナンスの観点から、政府の専門性を広 げ、深めなければならない。公的部門の変革には、強いリーダーシップ、さらに、資 金面や行動面でのインセンティブが必要になる。 以下では、内閣府が 2006 年 3 月に発表した実施計画「Transformational Government - 117 Implementation Plan」に従って、フェーズ 1 の変革を概観する。フェーズ 1 は、2006 年 11 月を一区切りとし、達成事項とその後の展望を含めた年次報告書が発行される予定である。 したがって、各重点項目について、下位領域ごとに過去の実績、2006 年 11 月までの達成 目標を中心に記述している。 表Ⅳ-1 政府 IT 活用戦略の重点項目とその領域 重点項目 領域 調整・監督機関 市 民 お よ び 企 業 体系的協力 サービス変革委員会(STB) 中心のサービス 利用者グループディレクター サービス設計原則 サービス設計局 近代的チャネル 中央情報局(CIO) シ ェ ア ド サ ー ビ カスタマーサービスセンター ス 人事財務その他コーポレートサービ ス 汎政府シェアドサービス委員会(PBSSB) 共通インフラ 共通インフラストラクチャ委員会 データ共有 データ共有に関する閣僚委員会(Misc 31) 情報保証 情報保証中央スポンサー ID 管理 内務省 技術標準とアーキテクチャ CTO カウンシル 文化の共有 IT プロフェッシ ポートフォリオ管理 CIO カウンシル ョナルの育成 ガバメント IT プロフェッション 信頼あるプロジェクト提供 サプライヤ管理 技術革新 Source: CIO Council, "Transformational Government - Implementation Plan"より作成 3.2 市民および企業中心のサービス 戦略は、①市民、企業、公務員との体系的協力②利用者グループディレクター(Customer Group Directors)の役割③サービス提供の標準策定のためのサービス設計原則の必要性④ 市民および企業がサービスにアクセスする近代的チャネルの開発の必要性、の 4 つの領域 にフォーカスする。 (1) 体系的協力 政府の利用者調査を促進する計画が開始された。 (2) 利用者グループディレクター 118 高齢者グループのディレクター(Chief Executive of the Pension Service)グループと農民 のディレクター(Director, Sustainable Farming Strategy)の 2 人が任命されており、各利用 者グループの視点から省庁全体のサービス改善を主導する。 (3) サービス設計原則 政府は、公的部門の高官から構成される委員会を設置した。事務局は内閣府内に置かれ、 4 回の会合が開かれたほか、実務レベルの担当者ネットワークのおかげで試験と開発を迅 速にこなすことが可能になった。委員会は、中央・地方政府および民間部門の常勤サービ ス設計経験者で構成される内閣府内のサービス設計局(Service Design Authority)によって サポートされる。 2006 年 11 月までにサービス変革委員会(STB: Service Transformation Board)は、サービ ス提供の障壁に対処するための情報センターとなり、そのネットワークを通じて障壁を特 定し、それらを解消するためにこの情報センターのリソースを活用し、委員会メンバーを 通じて省庁の決定を実施する。2007 年、STB は、これらのイニシアチブの効果を追跡し、 その成果について報告する。 (4) 近代的チャネル 戦略は、利用者情報、セルフサービス・トランザクション、キャンペーンサポートのた めに、オンラインサービスの窓口を Directgov(一般市民向け)および Business Link(企業 向け)に一本化すべきであると述べている。2006 年 11 月までに各省庁は、戦略に従って その Web サイトを見直し、総数を減らし、Directgov と Business Link に集約する。 なお、より効率的なサービス提供を目指す内閣府の戦略の一環で、Directgov の運営は 2006 年 4 月 以 降 、 e-Government Unit か ら 内 閣 府 中 央 情 報 局 ( COI: Central Office of Information)に移管されている。 3.3 シェアドサービス 関連する複数の機関が共通して持っている部門をそれぞれ機関内から切り離して、共同 センター型の新機関を設立し、そこで業務など請け負う、新しい形のアウトソーシングを 「シェアドサービス」と言う。英国政府のシェアドサービス課題に関する現在の進捗、機 会、ツールキット、最優良実践(ベストプラクティス)は CIO カウンシルの Web サイト 119 で公開されている。 (1) カスタマーサービスセンター 2006 年度予算で、大蔵大臣は、サービスが一般市民に提供されるチャネルの検討を発表 した。この作業では、サービスの電子的提供、コールセンター、地方政府ネットワークの 更なる改善が検証される。 (2) 人事財務その他コーポレートサービス 戦略は、共有された人事・財務その他のコーポレートサービス(総務)への焦点化の重 要性を強調している。政府のシェアドサービス課題を承認し、指揮する汎政府シェアドサ ービス委員会(PGSSB: Pan-Government Shared Services Board)の活動などを行う。 (3) 共通インフラストラクチャ 公共部門における共通インフラのベストプラクティス提供について情報と支援を提供す る共通インフラストラクチャ委員会が設置されている。同委員会では、共通インフラのロ ードマップについての作業を開始しており、2006 年 11 月までに発行する。 (4) データ共有 データ共有は、新しい公共サービスの設計と既存サービスの向上の一環として行われて いる。政府は、そのデータ共有戦略を明確化すること、そして、情報共有にかかわるサー ビスの信頼維持に何をなすべきかを判断することに取り組んでいる。 (5) 情報管理 CTO(Chief Technology Officer)カウンシルは、技術標準、ポリシー、アーキテクチャな どの技術的問題のガバナンスを実施する。進捗レポートが 2006 年 11 月に発表される。 (6) 情報保証 戦略は、政府 IT システムがセキュアでユーザーにとって便利でなければならず、また、 政府が今後、そのリスク管理モデルを見直し、 「政府ネットワークのシンプルな階層モデル を策定し、電子的に保持された情報の保護マーキング方式の利用方法をアップデートする」 と述べている。戦略はまた、政府が民間部門と共同でインターネットの安全を促進し、情 報保証された物品やサービスの利用可能性を促進するとも述べている。 120 (7) ID 管理 戦略は、生体認証 ID カードと国民 ID データベース(National Identify Register)に集約 される幅広い措置を通じて、一組の ID 管理ソリューションに基づく ID 管理への全体論的 アプローチの創出を約束した。 (8) 技術標準とアーキテクチャ 戦略は、CIO カウンシルが政府全体の標準およびアーキテクチャへの一貫したアプロー チを決定し、オープンな規格と商用製品を使用してレガシーシステムを徐々に更新してい くと述べている。CTO カウンシルは、CIO カウンシルに代わってこのアプローチの詳細を 策定する。 (9) 文化の共有 戦略は、「シェアドサービスの課題がより幅広い公的部門にとって大きな文化的シフト」 であると認識し、これに対応する多数のアクションを同定した。 3.4 IT プロフェッショナルの育成 (1) ポートフォリオ管理 戦略は、ポートフォリオ(資源の配分が最も効果的となる組み合わせ)レベルでの技術 全体の管理が必要だと指摘する。これは、政府が需要に対応し、一般的課題を予期し、無 駄を同定し、比較的価値の低いプロジェクトに取り組み、少ないキャパシティで競争する 際の優先項目を定められるようにするものである。 CIO カウンシルは、政府全体と組織レベルの両方で、標準のデータ定義を用いたポート フォリオ管理への共通アプローチを開発中である。これは、労働年金省と歳入税関庁にお ける既存のグッドプラクティスを拡張するもので、実際の作業は商務局(OGC)で実施さ れている。 2006 年 11 月までに、このアプローチは、次の 4 つの主要開発ポートフォリオ上で情報 をまとめるのに使用される。 • それぞれが政府全体でリソースを大量に使用する「大規模プロジェクト」 • すべての開発活動がシェアドサービスプログラム内でポートフォリオとして管理する 財務人事分野のプロジェクト 121 • ID およびデータ共有プログラム。プロジェクトの規模、相互依存性、専門的リソース の不足について活動ポートフォリオ全体にわたる検討を必要する。 • レガシーシステムの置き換え。スキル不足に対応する。 (2) ガバメント IT プロフェッション 戦略は、中央政府とそれ以外のより幅広い公共セクターにわたる能力、文化、技能、ア イデンティティを形成する「ガバメント IT プロフェッション」への新アプローチを約束し た。このアプローチは、政府のための専門技能(Professional Skills for Government)プログ ラムの一貫で、CIO コミュニティのビジネスニーズを満足し、IT プロフェッショナルから のフィードバックに直接対応する。 2005 年 7 月には、公共部門における IT 専門家のキャリアパスを開発するプログラム「ガ バメント IT プロフェッション」を開始した。同プログラムでは、キャリアパスの明確化に 加えて、IT 専門家間のネットワーク構築、グッドプラクティスの普及、キャリア開発に関 する情報やアドバイスの提供も行っている。 (3) 信頼あるプロジェクト提供 内閣府はすでに以下を実施している。 • 上級責任者助言サービス(Senior Responsible Owner mentoring service)などの、ミッシ ョンクリティカルな重要プログラムを支援するため内閣府が提供できるサービスの定 義。 • プログラム提供ディレクター・サービスの確立と、内務省の全国犯罪者管理サービス (National Offender Management Service)および青年司法委員会(Youth Justice Board) における主要プログラムに参加する。 • 成功プロジェクトに関する監査局(National Audit Office)報告書に盛り込むため、事 例研究と CIO について協議する(2006 年 11 月まで)。 (4) サプライヤ管理 戦略は、政府のサプライヤ管理の向上を実現する戦略を定めた。労働年金省 CIO が委員 長を務める CIO カウンシルの下位部門が、商務局(OGC)のサプライヤー・リレーション ズ・チームの支援を受けてこのサプライヤ管理イニシアチブを実施している。IT 業界の業 界団体「Intellect」に諮問した後、CIO カウンシルは、公共部門の CIO や、政府にとって 戦略上最も重要な IT サプライヤの上級幹部を集めて、戦略サプライヤ委員会を組織した。 122 同委員会は、サプライヤ管理を推進する共同戦略プラットフォームの働きをする。 (5) 技術革新 戦略は、公的部門における持続的技術革新と知識共有を確保する効果的プロセスの必要 性を強調した。CIO カウンシルは、政府 IT コミュニティ内でより体系的に情報を共有し始 め、民間部門、ボランタリー部門、コミュニティ、大学などと共同で、戦略の実施と革新 的ソリューションの提供に取り組んでいる。 関連ウェブサイト Chief Officer Council: http://www.cio.gov.uk Transformational Government - Enabled by Technology: http://www.cio.gov.uk/transformational_government/strategy/ Transformational Government – Implementation Plan: http://www.cio.gov.uk/documents/pdf/transgov/transgov-strategy.pdf 4. 貿易産業省 貿易産業省(DTI)が大蔵省と共有する総合的公共サービス協定(PSA: Public Service Agreement)目標は、「経済サイクル全体にわたって英国の生産性を高め、競争力をつけ、 主たる産業競争国との距離を縮めるという政府の長期的目標について、2008 年までにさら なる実績をあげること」とされている。DTI は 2003 年、この PSA 目標に貢献するための 戦略を発表、2004 年には 5 カ年計画を発表した。 これらの戦略や計画を反映する形で、現在の DTI の目標は「事業成功の条件を整え、グ ローバル化の課題に英国が対応できるようにする」と定められている。この目標の達成に 向けて、①世界クラスの科学および技術革新②事業成功の支援③公正な市場④安全、持続 可能、安価なエネルギー⑤政府資産および政務の管理、の 5 つの戦略目標に引き続きフォ ーカスする。 4.1 科学技術政策 (1) 組織変更 2005 年末に同省は、DTI の効果的統合の実現と、グローバル化の課題に対応した企業、 123 技術革新、知識経済への戦略的焦点化を目標として、科学、技術革新、企業支援の分野で 組織変更を検討し、技術革新グループ(Innovation Group)を科学技術局(OST: Office of Science and Technology)へ統合し、新たに科学技術革新局(OSI: Office of Science and Innovation)を設置することが決定された。 政府最高科学顧問(Governments Chief Scientific Advisor)が率いる OSI は、英国の研究 基盤の優秀性をさらに開発すること、技術やその他ビジネス上の革新を促進することの 2 つを目指す。具体的目標として①科学予算の管理を通じて科学工学基盤を維持し、向上さ せる②大学および研究機関からの知識移転と商用化の促進③政府省庁の科学技術(S&T) 活用の成果向上④EU および国際的活動の英国科学への恩恵を最適化⑤科学工学ベースと ユーザーの間の人材やアイデアの流れを向上⑥科学と他の社会分野間の関係改善⑦科学問 題について政府大臣へ助言、などがあげられる。IT 関連の研究開発は OSI が担当する。 (2) 科学技術投資枠組み 2004 年 、 政 府 は 10 カ 年 の 科 学 技 術 投 資 枠 組 み ( Science and Innovation Investment Framework)を発表した。これは、英国の科学および技術革新の長期的ビジョンを定め、 2014 年までに政府と民間を合わせた英国の研究開発投資額を GDP 比で 2.5%まで高めると いう野心的数値目標を定めている。OECD によるとこの数値は 2003 年に 1.89%だった。 2006 年 3 月に発表されたディスカッションペーパー「Science and Innovation Investment Framework 2004-2014: Next Steps」は、上記枠組みを推進するステップを示すものである。 知識集約ビジネスが増加する中で、①技術革新の増大を通じて、科学への公的投資の経済 への影響を最大化する②研究評議会の効果を高める③大学の研究支援④世界的保健研究の 試験⑤科学、技術、工学、数学(STEM: Science Technology, Engineering and Mathematics) 技能の供給増加、の 5 つの主要政策分野が示された。 (3) 科学予算 OST(現 OSI)は、8 つの研究評議会を通じた研究用科学予算の配分を担当する。1997 年から 2007 年にかけて科学支出は 2 倍以上に増加し、2005-06 年度は総額 34 億ポンド(約 7,300 億円、2006 年 8 月 3 日時点での為替レート 1 ポンド=215.07 円で換算、以下同様) に達した。 IT 関連では、インテリジェント・インフラストラクチャ・システム(IIS: Intelligent 124 Infrastructure Systems)プロジェクトで、堅牢、持続可能、安全な IIS の設計と実装へ向け た今後 50 年間の技術利用方法について調査が行われた。また、サイバー信頼および犯罪防 止(Cyber Trust and Crime Prevention)プロジェクトの 1 年間にわたる検討では、高速道路 利用者の課金から犯罪者の追跡まで幅広い分野で将来の ICT 利用に焦点が当てられた。 4.2 情報通信技術政策 (1) 2006-08 年事業計画(Business Plan)から DTI の 2006-08 年事業計画では以下の ICT 関連プロジェクトが予定されている。 • EU の i2010 戦略の下で 2007 年末までにオーディオビジュアル・サービス指令の 2006-07 年度定期検討・改訂を通じて、e-コミュニケーションとコンテンツの欧州単一 市場実現へ向けてリーダーシップを継続する。 • 文化メディアスポーツ省(DCMS)と共同で、デジタルテレビ移行プログラムを主導 し、2012 年までの移行を実現する。 • デジタル戦略(Connecting the UK: the Digital Strategy)を発展させ、2006 年を通じてデ ジタル格差の是正を政策策定やサービス提供に反映させる。 (2) e-ビジネス環境 DTI の具体的 PSA の一つは、「企業の ICT 利用を国際的な比較で判断して、英国が広範 で競争的なブロードバンド市場を備えた、世界で e-ビジネスに最も適した国」となること である。 英国は今なお欧州でも最も急速にブロードバンド市場が成長している市場の一つで、 DSL カバレージの向上などを主因として、その市場の広範性においては G8 で首位にある。 DSL は現在、全世帯の 99.6%をカバーし、ケーブル、無線を合計した総カバレージは 99.7% にも達する。ただし、通信速度については、1~2Mbps のサービスでは優れているが、4~ 8Mbps では他国に後れを取っている。 DTI は、電子商取引ネットワークおよびサービスの規制枠組みの策定も担当する。詳細 な規則とその実施および執行は、通信部門の独立規制機関である通信庁(Ofcom)が行い、 DTI は Ofcom その他の関係機関との緊密な連携により、必要な調整を図る。 (a) インターネットを通じた販売と購入 125 2004 年インターネットによる販売額は前年比 81%増の 711 億ポンド(約 15 兆 3,000 億 円)だった。これに対し、その他の電子ネットワークによる販売額は 1,981 億ポンド(約 42 億 6,000 億円)で依然としてインターネットを大幅に上回っている。 英国企業のインターネットを通じた購入額は 2004 年、前年比 64%増の 624 億ポンド(約 13 億 4,200 億円)だった。この金額は、2004 年英国企業の総購入額の 4.4%近くを占めた。 (b) 一般世帯への電子商取引売上 2003 年に一般世帯への電子商取引売上総額に占めるインターネット販売の割合は約 4 分 の 3 で、それほど多くない。2004 年、一般世帯へのインターネット売上高は 181 億ポンド (約 3 兆 8,900 億円)で、前年の 108 億ポンド(約 2 兆 3,220 億円)から増加した。これ は、英国企業のインターネット売上総額の 4 分の 1 を占め、2002 年の 30%、2003 年の 27% からさらに減少する傾向にある。 関連ウェブサイト DTI: http://www.dti.gov.uk Department of Trade and Industry: departmental report 2006 [Cm 6826]. http://www.dti.gov.uk/about/strategy-objectives/annual-spending/page28803.html departmental report 2006: http://reporting.dti.gov.uk/cgi-bin/rr.cgi/http://www.dti.gov.uk/files/file28518.pdf 126 Ⅴ アイスランド 127 Ⅴ 1. アイスランド アイスランドにおける情報技術政策のポイント • 情報社会政策は首相府が主導し、プロジェクトごとに担当する省庁が決まっている。 • 1996 年 10 月、アイスランド政府は「1996 年情報社会ビジョン」を発表した。 • 2000 年 3 月、情報社会タスクフォースは「2000-2002 年電子政府および電子商取引プ ロジェクト計画(2000-2002 年電子政府および電子商取引プロジェクト計画)」を発表 し、電子政府と電子商取引を新たな優先プロジェクトとした。 • 首相府は 2004 年 4 月、2004-2007 年を対象とした新たな情報社会政策「万人のための 資源:2004-2007 年情報社会政策」を発表した。 • 「 2004-2007 年 ア イ ス ラ ン ド 政 府 情 報 社 会 政 策 」 の 将 来 ビ ジ ョ ン は 、 ① 機 会 (Opportunity)②責任(Responsibility)③安全(Security)④生活の質(Quality of Life)、 の 4 つの主要目標から構成される。 • 2005 年、家庭でのインターネット接続は EU 平均よりもアイスランドの方が普及し、 デジタル格差も小さいと考えられる。 2. IT 政策の担当機関 2006 年 5 月の地方選挙で、ハルドール・アウスグリムソン(Halldór Ásgrímsson)首相率 いる進歩党が惨敗し、6 月、同首相が辞任を表明、独立党のゲイル・ホルデ(Geir H. Haarde) 外相を新首相とする新内閣が発足した。 情報社会政策は首相府(Prime Minister's Office)が主導し、プロジェクトごとに担当する 省庁が決まっている 関連ウェブサイト Government Offices of Iceland: http://www.government.is/ 3. 2004-2007 年情報社会政策 アイスランドでは、1995 年 4 月の政府政策宣言で初めて、行政改善と経済振興のための IT 活用について政府目標が定められた。 128 1996 年 10 月、アイスランド政府は、情報社会の諸問題に関する政府戦略を示すペーパ ー「1996 年情報社会ビジョン(The Icelandic Government's Vision of the Information Society)」 を発表した。 その後、ICT が急速に発展し、電子商取引促進に向けた国際的な取り組みが高まる中 で、アイスランド政府の情報社会タスクフォースは焦点分野の見直しが必要だと考えた。 同タスクフォースは 2000 年 3 月、「2000-2002 年電子政府および電子商取引プロジェク ト計画(Project Plan for the Development of e-commerce and e-government 2000-2002)」を発表 し、情報社会政策の実施において電子商取引と電子政府を新たな優先的プロジェクトに指 定し、この分野への資金割当を増額すべきであると提案した。 アイスランドの情報社会開発に向けて、1996 年以降上記の政策のもとに実施されてきた 各種プロジェクトは、2003 年 2 月に正式に完了、かなりの成功を収めたと評価された。そ して、この成功をさらに押し進め、経験に基づいて政策を見直すことが決定された。 当時、アイスランドはすでに、コンピュータの所有、利用ともアイスランドはかなり進 んでおり、たとえば、2002 年時点でアイスランドの全世帯の 83.2%が PC を所有し、全世 帯の 77.9%がインターネットにアクセス可能だった。このため、その後の数年間に情報社 会という重要な分野において取り組むべき主要な課題については、いっそうの検討が必要 とされた。一つのポイントは、以前の目標をより明確にすることであった。そこでは、数 量的側面、ハードウェア、ソフトウェアは議論の中心的テーマとはならず、むしろ、この 国の一般市民がいかに技術から恩恵を受け、その生活の質を向上させ、自分たちのコミュ ニティを繁栄させるか、に置かれた。 首相府は、自治体首長、技術者、経営者などで構成される政策策定委員会の議論をとり まとめて、2004 年 4 月、2004-2007 年を対象とした新たな情報社会政策文書「万人のため の資源:2004-2007 年アイスランド政府情報社会政策(Resources to Serve Everyone: Policy of the Government of Iceland on the Information Society 2004-2007)」を発表した。 このペーパーに示された将来のビジョンは以下の通り。 • 情報および知識活用の前線にある民主的社会において、個人がさまざまな機会を持つ。 129 • だれもが成熟、生活の質の向上、および責任の引き受けが可能である。 • このような目的を達成するため、アイスランドの優位性と空間的性質、およびその国 民に関わる機会を活用しなければならない。 • そのための正しいツールは、安全で効果的な IT である。 このような将来ビジョンは、①機会(Opportunity)②責任(Responsibility)③安全(Security) ④生活の質(Quality of Life)の 4 つの主要目標から構成される。以下ではそれぞれの主要 目標について概要をまとめた。 表Ⅴ-1 2004-2007 年情報社会政策の主要目標と担当機関 主要目標 領域 機会 民主主義と政府機関 (Opportunity) e-ビジネスと雇用部門 広報宣伝活動と意識向上 責任 万人のためのアクセス (Responsibility)万人の責任 安全 通信 ((Security) 電子署名 標準化 倫理とセキュリティ 生活の質 教育・科学 ( Quality of 文化 Life) 環境問題 保健医療 社会サービス 担当機関 首相府、司法教会省、社会問題省、財務省ほか 通商産業省、通信省ほか 通商産業省、教育科学文化省、首相府、財務省ほか 首相府、社会問題省 教育科学文化省、司法省 通信省、財務省、教育科学文化省、保健社会保障省 財務省 首相府、通商産業省 司法教会省、通信省(郵便通信局)、財務省 教育科学文化省、農務省ほか 教育科学文化省 財務省、環境省、農務省ほか 保健社会保障省 社会問題省 Source: Resources to Serve Everyone: Policy of the Government of Iceland on the Information Society より作成 3.1 機会 主要目標「機会(Opportunity)」は、「個人および企業が希望する場所で希望するときに 知識を交換および入手し、通信し、事業を行う機会がより多く与えられる」と定められる。 首相府は、電子政府に焦点化するために特別プロジェクト管理チームを任命する。この チームは、2004 年から 2007 年にかけて、主要目標「機会」へ向けた取り組みの中で公的 機関の支援を行う。 (1) 民主主義と政府機関 130 • 国および地方政府レベルの両方で行政が、たとえば、公的機関による電子サービス提 供などにより、一般市民や産業界の利益のための効率性およびサービスの改善を導く。 • 小さな行政府が電子政府を採用し、状況の変化に対応できる方法に特別な検討を加え るべきである。 • 情報通信と電子政府において重要な役割を果たす電子サービス(包括的ポータル)を 確立する。このポータルは、政府機関と通信するアイスランド国内および海外の個人 や企業が利用する。目標は、公的サービスへアクセスを容易にし、利用者がどの機関 が必要とするサービスを提供するか、あらかじめ知らなくてもよいこと(ワンストッ プサービス)。 • 今後の一般的政策は、一般市民と企業が最低のコストでアクセスできる最も重要な公 的情報の作成に関するものである。 • 公的および公式機関の間の協議と対話が増加する可能性のある手段および領域につい て調査を行う。たとえば、特定の問題について議論できるインターネット上の掲示板 を設置する実験などがある。 • 地方および議会選挙の選挙人名簿の作成を開始する。目的は、投票者が任意の投票所 を選んで投票できるようにすること。司法省、社会問題省は、2006 年の次回地方選挙 中にこの分野で共同実験プロジェクトを実施することを提案している。 • 補給品の公共調達のほとんどが 2005 年までに電子的に行われる。 • 公的機関は、IT およびその運用のサービスの中の特定の中核機能、ソフトウェア開発、 サービスが整備され、実用的と見なされる場合にこれを調達する。 (2) e-ビジネスと雇用部門 • 産業界を強化し、新たな雇用機会を創出し、技術革新を刺激し、スピンオフ企業を育 成するために IT を活用する。 • 技術の利用と特性について、また、市民や企業の要件について研究を強化しなければ ならない。 • e-ビジネスの障壁を法律、規制、公的機関の運営手続きから取り除く。 • 一般企業に対する IT 企業の優位を確保する。 • 科学技術政策評議会(Science and Technology Policy Council)によって IT が特別な扱い を受けることを提案する。 • アイスランドの観光業界は、予約と支払が電子的に完了するよう、これまで以上に電 子商取引の採用支援を受ける。 131 (3) 広報宣伝活動と意識向上 • 電子商取引の技術的法的側面について周知する。正確な情報を作成し、特にインター ネットでアクセス可能とすること。 • 科学コミュニティ、企業、一般市民にインターネットを通じて国際的データベース (www.hvar.is)について周知し、継続的アクセスを保証する。 • すでに政府機関によって提供されている電子サービスについてその概要を策定する。 3.2 責任 主要目標「責任(Responsibility)」は、「社会の各分野の指導者は、市民の利益のために IT が利用され、多様な個人がその恩恵にあずかるよう責任を負い、協力しなければならな い」と定められる。 (1) 万人のためのアクセス • 情報のソースへの便利なアクセスが確保される必要がある。これは、たとえば、学校 や公立図書館にコンピュータやインターネットを利用可能にすることで実現する。 • 一部の主要自治体および国のサービス機関において、サービスがインターネットで利 用可能になると同時に、インターネットへの一般市民のアクセスが確保される。 • 情報社会において不利な立場にある人々にコース選択が保障される必要がある。 • 公的部門の電子サービスが、盲人、視覚障害者などさまざまなグループのニーズに適 合するようにしなければならない。企業は、これと同じ方針に従うよう促される。 (2) 万人の責任 • 変化の時代において児童福祉へ特別の注意を払う。親や学校は、複雑な情報社会の中 で子どもたちのコンピュータ、インターネット、電話の利用について責任を負うよう 促されている。 • 児童や青少年にコンピュータが及ぼす影響の研究に援助が与えられる。 3.3 安全 主要目標「安全(Security)」は、 「市民や企業は安全で信頼ある高速ネットワークへ競争 力ある価格でアクセスできることが保証される。情報の安全と個人のプライバシーの保護 は、情報社会の発展における指導的原則である」と定められる。 132 (1) 通信 • 2004 年中にアイスランドの通信に関する長期計画が策定される。 • 安価でセキュアな通信へ一般市民がアクセスできるようにする措置が取られる。人口 疎らな地域の居住者を含め、希望するすべてのアイスランド国民が高速ネットワーク に接続し、十分な通信サービスを享受できるためのソリューションを見つける必要が ある。 • 目標は、2006 年までに主要政府機関が高速ネットワークに接続され、同年中にそれら の間のセキュアな通信を実現する。 • アイスランドの大学および研究機関と海外の研究ネットワークの間に高容量接続を構 築し、国際的な研究開発に参加する道を確保する。 • 2005 年に医療機関が効率的高速接続と保健サービスネットワークに接続される。 • アイスランドの公道における携帯電話サービスの利用改善が実現する。 • アイスランドのあらゆる地域に到達するデジタルテレビの伝送システムを開発するた めの支援が行われる。 • 自治体は、2005 年までに自治体の管理下にあるすべての義務教育学校、主要文化機関 に高速接続を提供する。 (2) 電子署名 • あらゆる通信パートナーをはっきりと特定できるよう電子証明書の一般的で広範な使 用を目指す。 • 電子証明書と証明サービスを通じたオープンだが標準化された市場がアイスランドの 目標。 • 適切な時期に隣国の公開鍵インフラストラクチャ(PKI)と統合することを目指して、 欧州および国際的標準に準拠する。 (3) 標準化 • 国際標準の導入と利用拡大は、アイスランドの社会において奨励される。行政システ ム構築に助言を与える目的で、電子政府への標準適用のための政策を策定する。 (4) 倫理とセキュリティ • 司法教会省に関連する主題カテゴリーについて、IT 政策が策定される。 • ICT の利用、電子的テロからの保護、迷惑メール、消費者保護、インターネット上の 133 わいせつ物など倫理的問題などに関連するセキュリティ問題において、公的機関の間 の作業分担について検討する委員会が設置される。 • 情報システムのセキュリティ向上と個人情報保護の強化に対する支援が与えられる。 • セキュリティ問題、消費者保護、プライバシー保護、テクノロジーの利用拡大に関連 した倫理的問題についての指針や教材の伝達に対して支援が与えられる。 • アイスランドにおける一般的通信ネットワークの運用、および国外での接続のため、 セキュリティ標準を確立する。 • ネットワークや情報システムの不断の運用を確保するため、セキュリティ問題および 保護について海外における協議へのアイスランドの参加を増やす。 3.4 生活の質 主要目標「生活の質(Quality of Life)」は、 「生活の質の向上とより豊かな社会は、教育、 文化、および保健における IT の潜在性を活用することにより支えられる」と定められる。 (1) 教育・科学 • 教育文化における IT 利用に関する教育科学文化省の政策を見直す。 • 時間的、空間的に独立した学習を可能にするため、遠隔教育のさらなる発展を支援す る。インターネットを通じて提供するコースを増やすため、教育施設の増加が促進さ れる。あらゆる種類の生涯学習の強化と学校、企業、家庭の協力強化のため IT が使用 される。 • 教育分野で IT を適用するために、新しいアイデアに基づいてカリキュラムを作成する とき、大きな努力をはらう。 • 教師には、デジタルコース教材の利用する際にカウンセリング、サポート、トレーニ • IT 分野で教師教育を強化し、中等学校や大学レベルで IT の専門研究を支援する試み ングが提供される。 を継続する。 • 科学および学問研究のさまざまな分野の中でデータベースを調整する努力がなされる。 (2) 文化 • 情報社会の中でアイスランド語の地位を守る作業を継続する。 • デジタル映画、デジタルテレビ、コンピュータゲーム、マルチメディア一般など、近 代的メディアの利用進展が促進される。 134 • 教育システムのニーズを念頭において、文化財のデジタル複製のためのキャンペーン を進める。デジタル文化財の保護に関して政策が策定される。 • 電子化した文化財リストが国際規格に従って作成される。。 • スポーツや青少年活動において、親や参加者への情報伝達を向上させるため、ICT の 利用が強化される。スポーツおよび青少年組織のサービスと運営に関する情報がイン ターネット上で利用可能になる。 (3) 環境問題 • 地域発展と家族政策に関連した技術使用や、 「Local Agenda 21」の主要目標に従って一 般市民の通勤を減らす方法について可能性を探求する。 • アイスランドのデジタル地理データベースおよび植生マップに重点を置いた、同国の 自然に関する統合データベースを開発する試みを行う。衛星データや地理情報システ ムなど、この分野の最新技術を活用する長期的なプロジェクトである。 • 個人と企業によるインターネット上の情報(自然環境、土壌、天候・気候など)への アクセスが向上する。 • 地震、火山の噴火、突風、なだれなどの自然災害の監視に IT がかなりの程度利用され る。 (4) 保健医療 • 医療機関を結び、たとえば、遠隔医療などを可能にする保健医療ネットワークを 2006 年末までに完全稼動させる。 • 病院、保健医療センター、および独立系の保健医療事業者の間で等しい程度、すべて の保健医療サービスの電子カルテを導入する件について、体系的な措置を取る。 • 2005 年までに国家社会保障機関(State Social Security Institute)と保健医療従事者(専 門医、理学療法士、歯科医など)の間で電子的トランザクションを実現する。 • 2006 年までに国家社会保障機関と一般市民の間の電子的トランザクションを実施す る。 • 障害者が保険料システムとのコミュニケーションにおいて IT を使用しなければなら ない可能性について調査を行う。 (5) 社会サービス • 国および地方政府による提供される一般的公益サービスの一環として、最も重要な家 族関係の情報やサービスをインターネット上でアクセス可能にする試みがなされる。 135 アイスランド在住の外国人のニーズが特に考慮される。 • 障害者のための社会サービスを向上させるため IT を使用する。 関連ウェブサイト Resources to Serve Everyone -- Policy of the Government of Iceland on the Information Society 2004 – 2007 http://eng.forsaetisraduneyti.is/information-society/English/nr/1327 4. ICT の利用状況 アイスランド統計局(Statistics Iceland)は 2006 年 3 月、アイスランドの家庭と個人によ る ICT およびインターネットの利用に関する第 5 回調査を実施した。焦点は、個人による コンピュータおよびインターネット関連活動、インターネット利用の目的、電子商取引、 公的機関とのインタラクションのためのインターネット利用に当てられた。 (1) 個人 アイスランドにおいてコンピュータとインターネットの利用は広範に普及している。 2006 年には、16~74 歳の個人 10 人中 9 人までがコンピュータとインターネットを利用し た。それまでの年と同じように、インターネットは主として、情報検索と通信に利用され ている。2006 年には、16~74 歳の人口の 31%が調査までの過去 3 カ月間にインターネッ ト上で物品またはサービスを注文した。インターネット利用者の大多数は、インターネッ ト上での公的機関とのやり取りに関心を示している。 (2) 家庭 家庭については、アイスランドの世帯の約 84%がコンピュータを保有し、83%がインタ ーネットにアクセスしている。ADSL、SDSL(Symmetric Digital Subscriber Line)などの xDSL 接続を中心とする高速インターネット接続がある世帯の割合は 2002 年の 26%から 2006 年 には 85%へと増加している。 16 歳未満の児童のいる家庭は、成員がすべて 16 歳以上の世帯よりも、ICT を所有する 割合が高い。2006 年、児童のいる世帯の 95%がコンピュータを持ち、インターネットにア クセスするのに対し、子どものいない世帯は 78%がコンピュータを保有、75%がインター ネットに接続した。 136 高速インターネット接続は、低所得者層よりも高所得者層に多く見られる。高所得者世 帯の 98%が xDSL に接続していたのに対し、低所得者層でこの種の接続があるのは 64%に とどまった。 (3) EU との比較 2005 年、家庭でのインターネット接続は、EU の平均よりもアイスランドの方が普及し た。この年、EU 諸国の世帯の 48%がインターネットに接続したのに対し、アイスランド では 84%だった。同じ年、EU の人口 16~74 歳の 43%が定期的インターネット利用者だ ったのに対し、アイスランドのこの年齢層の 81%が少なくとも週に 1 回インターネットを 利用した。このことから、デジタル格差はアイスランドの方が EU よりも小さいと考えら れる。 関連ウェブサイト Statistics Iceland: http://www.statice.is/ 137 Ⅵ フィンランド 138 Ⅵ 1. フィンランド フィンランドにおける情報技術政策のポイント • 2003 年 9 月、フィンランド政府は情報社会政策プログラムを開始した。 • 情報社会評議会は、フィンランドの情報社会政策を主導している。 • 情報社会評議会は 2006 年 2 月、ICT を利用した生産性向上をテーマとして第 2 回定期 レポートを発表した。 • 情報社会評議会の各部会は、2010 年までの Strategic intent(戦略的意図計画)を策定し た。 • 2015 年までの国家情報社会戦略が 2006 年中に策定される予定。 • 2004~2007 年の国家ブロードバンド戦略の中間目標は、接続数、地域カバレージとも 前倒しで達成された。 • 電子政府は現在、分散化モデルから集中化モデルへ方向転換が目指されている。 • KuntaTIME ワーキンググループは、国と自治体の情報管理と情報社会の発展を目的と する。 • KuntaIT 部門(内務省)は、フィンランドの中央政府、地方政府間の情報管理協力を強 化する 2. IT 政策の担当機関 ヴァンハネン(Matti Vanhanen)首相は 2003 年 6 月に就任した。情報社会政策について、 機関間の調整を担当する情報社会評議会(Information Society Council)は、首相の直下に 置かれている。 情報社会政策に関係する他の主要政府機関を分野別に示すと、次のようになる。 • 通信:運輸通信省が政策の策定・実施を担当する。フィンランド通信規制局(FICORA: Finnish Communications Regulatory Authority)は、運輸通信省から分離した通信部門の 独立監督機関である。 • 研 究 開 発 : 通 商 産 業 省 傘 下 の フ ィ ン ラ ン ド 技 術 庁 ( TEKES: Finnish Agency for Technology and Innovation)は、同国における主要公的資金提供機関の一つで、主に科 学技術分野の調査や研究開発に対して経済的な援助を行う。 • 電子政府:調整機関は、財務省内の国家 IT 管理部門(State IT Management Unit)であ 139 る 。 内 務 省 内 の 情 報 管 理 顧 問 委 員 会 ( JUHTA: Advisory Committee on Information Management in Public Administration)は、中央政府と地方政府の情報管理協力を促進す る。2006 年 1 月、その調整機関として内務省内に KuntaIT 部門を設置することが提案 された。 関連ウェブサイト Ministries: http://www.valtioneuvosto.fi/ministeriot/en.jsp 3. 情報社会プログラム 情報社会の発展は、現政権の主な戦略目標の一つである。この目標に向けて 2003 年 9 月、フィンランド政府は、情報社会政策プログラム(Information Society Policy Programme) を開始し、さまざまな関係機関(政府省庁および機関、企業、労働組合、大学など)を調 整する情報社会評議会を設置した。プログラムは、すべての省とフィンランド社会全体の 関係者が参加する総合的な取り組みであり、ヴァンハネン首相が主導し、5 人のメンバー からなる閣僚グループが運営にあたる。 プログラムのミッションは、万人のための情報社会(An Information Society for All)で ある。これは、市民一人一人がその居住地や社会的地位に関係なく情報社会サービスを利 用できる社会を意味する。プログラムでは、電子サービスにおける高いレベルの信頼形成、 公的機関内部の生産性拡大とプロセスのリエンジニアリング、フィンランド企業の競争力 向上も目指す。 情報社会プログラムは、フィンランドの IT 政策にとどまらず、より幅広い社会政策の一 環でもある。近い将来、フィンランドは、高齢化社会や社会および保健医療サービスのニ ーズ拡大といった課題に対応する方法を見出さなければならない。また、フィンランドは、 グローバル市場の緊密化に対処し、競争激化に立ち向かう準備も必要としている。ICT の 活用はこうした問題への取り組みに役立つと考えられる。 フィンランドにおいて情報社会は急速に発展してきた。たとえば、インターネットの利 用は、フィンランド人の 75%が過去 3 カ月以内にインターネットにアクセスするまでに拡 大し、ブロードバンドのカバレージは 95%以上になった。また、中央政府のオンライン公 共サービスは、年間 31%増加し、インターネット購入も大幅に増加した。フィンランドは 140 近年の国際比較でも上位にランクされている。しかし、特に電子民主主義、遠隔勤務、eラーニングの各分野では、まだ多くの課題が残されている。ICT はまた、公的部門の生産 性とそのサービス提供を高める上で大きな要素となりうる。 3.1 情報社会評議会定期レポート 情報社会評議会は 2006 年 2 月、前年に続く 2 回目の定期レポートを発表した。このレポ ートで同評議会は、フィンランドにおける情報社会の発展とその課題を検討している。レ ポートのテーマは、ICT を利用した生産性向上である。 生産性向上のための施策事例として、以下が実施されている。 • IT 対応度改善への意欲は、情報社会プログラムと市民参加政策プログラムなどの全国 プログラム、その他のキャンペーンを活用して、改善することができる。 • 2005 年秋には、図書員の研修や、市民の e-サービス利用のガイダンスを提供するため に「Finland on the Web」キャンペーンが組織された。 • 学習ビジネスクラスターの www.learningbusiness.fi サービスは、情報産業の専門性開発 と生産性向上をもたらすデジタルサービスを 1 カ所に集めた。このポータルは、183 のコンテンツおよびテクノロジーサービス企業、87 の民間および公的支援機関、100 以上のクライアント事例およびエキスパート・プロファイル/インタビュー、サービ ス紹介などがある。 情報社会評議会は部会(Section)に分かれており、それぞれが 2010 年までの Strategic intent(戦略的意図計画)を策定した。同計画は、テーマごとに 2010 年の理想像、生産性 とのかかわり、重要措置を示している。 (1) 市民の情報社会活用能力 • 一般家庭に ICT サポートスペシャリストを派遣して、課税控除など PC を利用する作業 を支援する。 • 新しいアプリケーションの開発には日常生活のニーズが必要である。 • 零細企業の IT 活用を支援するための組織が必要である。 • 免税措置(付加価値税 VAT など)などによって起業を促進する。 (2) 職業生活 141 • フィランドアカデミー(Academy of Finland; 基礎研究に対する資金助成を行っている 主要な国立機関)と TEKES は、大学や企業とともに、生産性向上のための独自研究プ ロジェクトを育成しなければならない。 • グローバル化が不規則な労働をもたらす中で、IT を活用したネットワーク・ベースの 労働が重要となる。 (3) 研修・研究・製品開発 研修、研究、製品開発の間の協力を促進し、2006~2015 年に生産性の向上を目指す国家 戦略 LUMOUS が策定・実施される。この戦略では、変化の管理に関するプロジェクト、 オープンな教材環境、モバイル・ラーニング、あらゆる学習レベルを包括する全国規模の 仮想学校を扱う。 (4) 社会福祉および保健医療 • 社会福祉および保健医療情報の専門家が認定されるポータルを立ち上げる。これによ り、すべてのサービスプロバイダが情報への効率的なチャネルを持つことになる。 • 各プロバイダは、電子フォーマットの標準に準拠して患者の情報を記録する義務を負 う。収集された情報は、必要とするすべての人々が利用できるようになる。 (5) ビジネスとコンテンツのデジタル化 • 情報セキュリティの基本方針と重要措置は、運輸通信省によるフィンランド国家情報 セキュリティ戦略(National Information Security Strategy for Finland)の中に定められる。 • 公的部門の成功も、民間部門の生産拡大を加速している。電子請求の促進などで機会 が生まれ、中小企業で最もよく利用される電子アプリケーションの一つになった。2007 年から、公的部門では請求書をすべて電子的フォーマットで送受信することが義務付 けられる。 • 2006 年 6 月から、メッセージ業者の外部ローミング原則を定めることによって商用電 子メッセージの安全確保が可能になった。 (6) 行政における ICT 活用 • 電子行政の主要アクターが共通の戦略を受け入れ、採択する。 • 様々な行政機関の ICT 利用能力を強化する。電子行政の戦略的意図の達成には、産業 界や商業界との協力の強化、技術革新と研究が必要とされる。 • 中央の公共サービスと電子トランザクションは、市民向け政府ポータル suomi.fi に集中 142 させる。政府と利用者のインタフェースが統合される。サービスは、特定の共有サー ビス、情報、技術アーキテクチャに従って構築される。 • 電子トランザクションの目標と原則が各機関のアクションプランに組み入れられる。 (7) 通信インフラおよびデジタルテレビ • テレビは 2007 年 8 月末までに完全デジタル化される。 • テレビチャンネルは、モバイル TV、IPTV などの新しい配信経路を使用する。高精彩 テレビ(HDTV: High Definition Television)の利用が開始される。 • 北部・東部フィンランドにブロードバンドを提供し、平等性を確保するには特別な努 力が必要となる。 関連ウェブサイト Information Society Programme: http://www.tietoyhteiskuntaohjelma.fi/en_GB/ Information Society Council's report: http://www.tietoyhteiskuntaohjelma.fi/tietoyhteiskuntaneuvosto/en_GB/information_society_council/ 3.2 新情報社会戦略 2006 年 1 月、情報社会プログラムの閣僚グループは、新しい国家情報社会戦略(National Information Society Strategy)の策定準備を開始することを決定した。この戦略は、政府情 報社会プログラムの一環として 2006 年中に策定されるもので、情報社会評議会の最後のレ ポートになる。 2015 年を達成期限とする同戦略は、フィンランドをより革新的かつ競争的にすることを 目標に掲げ、特にサービス提供、スキル、技術革新に焦点を当てる。 戦略策定にあたっては、以下の 15 件の活動が考慮される。いずれも情報社会評議会が 2006 年 2 月の定期レポートで生産性と効率性を高める実践的施策として提案したもので、 実施の担当機関と責任にも言及している。 (1) LUMOUS 2006~2015 年に研修・研究・製品開発の協力および生産性を向上させる LUMOUS 戦略 を 2006 年中に策定する。次期政権は、政府プログラムの一環として同戦略を実施する。 143 (2) 職業文化の育成、生産性、ICT 支援作業手順 教育省は成果達成手順と資金提供ソリューションを通じて大学などが社会人の専門能力 開発を検討するようにする。中核目標は、ICT の可能性を十分に開発および利用すること により、作業プロセスの生産性を高めることである。 (3) 日常生活の基盤としてのユビキタスな通信戦略 運輸通信省が日常生活のための全国通信戦略(National U Strategy)を策定し、実施する。 すでに実施されているブロードバンド、デジタルテレビ、情報セキュリティ、交通安全の 戦略がこの新しい戦略のもとに包含される。 (4) 公共機関が万人にサービス提供する共同プロセス 市民向け政府ポータル Suomi.fi 開発の延長として、行政 e-トランザクションの共通イン タフェースを策定および実装する。 (5) 社会福祉と保健医療のソフトウェアアーキテクチャ サービスシステムをサポートするため、情報保護の要求に応えるコスト効果の高いソフ トウェアアーキテクチャを構築する。 また保健、福祉、サービスシステムについて信頼ある情報を生成し、市民がサービスの 提供元を選択し、自分の情報を管理し、サービスシステムと電子的にフレキシブルに対話 できるようにすることで、市民の立場を強化する。 (6) 情報社会のニーズに応える著作権法 貿易産業省と教育省は、社会で起きた変化に基づいて著作権が詳細に評価されるよう、 広範な改革を準備する。 (7) 情報の共同利用促進 ターゲットを絞った開発を加速するため、公的機関や非営利組織においてクリエイティ ブ・コモンズ(CC: Creative Commons; 法的手段により出版物の創造、流通、検索の便宜を 図るウェブ上のプロジェクト、またそれを実施する非営利団体)ライセンシングを実施す ること。 144 (8) 情報社会サービスにおける図書館の役割の強化 地方の情報社会サービスポイントとしての図書館の役割を強化する。 (9) 家庭で情報通信サービスを受ける権利 一般市民が家庭で、ブロードバンドの設置、ウイルス駆除、配信リストの作成などの ICT サポートを専門家から受けられるようにする。 (10) テレビサービスの質の向上 2008~2010 年に HDTV の試験が行われ、2007 年秋にデジタルテレビへの移行が完了す る。テレビサービスは全国通信戦略の中に組み込まれる。 デジタルテレビの普及と HDTV の初期段階で必要とされる開発活動が強化され、TV バ リューチェーンのすべての部分で革新的知識が増加する。特に、インターネットおよびデ ジタル TV ネットワークで提供される多様な公共サービスの開発が重視される。技術の発 展により可能になる新コンテンツの製作プロセスとフォーマットは、研修機関などの公的 機関において開発および実装される。 (11) 知識経済の指標、測定基準 ニューエコノミーに適した指標、測定基準を開発する研究開発プロジェクトを発足させ る。このプロジェクトは、新指標の試験とフィードバックの重要性を認識する企業および コミュニティの協力で実施される。 (12) 管理および専門家活動のための会議運営 管理および専門家活動のために最も優れた会議運営方法が選択され、積極的に利用され る。ICT を活用した会議運営方法を開発することによって、管理および専門作業の効率性 を高めるため、活動機関にどのような可能性が存在するかを明確にするプロジェクトが立 ち上げられる。 (13) 地域技術革新プロセスと生産性プロセスの自己更新 地域レベルの技術革新と生産性向上を促進するプロジェクトの連携を強化する。地域の 公的機関の生産性への取り組みや、最重要クラスターの革新的開発での ICT の活用を具体 的目標とする。 145 (14) 国際市場向けの製品化 ビジネス活動のコンセプトと運用モデルの開発が、製品開発プロジェクトと同等にみな される。 (15) 生産性向上の方法について開発と普及ワークショップ 支援方法の開発および普及のため、第 2 回定期レポートの内容が 2006 年中に実施される。 この取り組みにおいて、国家の重要政策が実施され、国家情報社会戦略に組み入れられる。 関連ウェブサイト Finnish government : http://www.government.fi/etusivu/en.jsp Information society policy program: http://www.government.fi/toiminta/politiikkaohjelmat/tietoyhteiskuntaohjelma/en.jsp Press releases 7.3.06: http://www.government.fi/ajankohtaista/tiedotteet/tiedote/en.jsp?toid=5471&c=0&moid=5473&oid=149620 Press releases 18.1.2006: http://www.government.fi/ajankohtaista/tiedotteet/tiedote/en.jsp?toid=5471&c=0&moid=5473&oid=149068 4. ICT Cluster Finland Review 2006 フィンランド情報社会開発センター(TIEKE: Finnish Information Society Development Centre)は、情報化社会のために民間企業や公的機関の専門性、技術開発を促進する非営 利機関で、ネットワークづくりを行うほか、関係者と協力して情報社会を促進する具体的 プロジェクトの発足も手がける。 TIEKE は 2006 年 5 月に「ICT Cluster Finland Review 2006」を発表した。このレビューで は、フィンランドの主導的プレーヤーによる革新的なアイデアや製品、実践について記事 を掲載している。以下では政府が主導的に関与している戦略やプロジェクトを中心に取り 上げている。 関連ウェブサイト ICT Cluster Finland Review 2006: http://www.tieke.fi/review2006 4.1 通信政策 146 (1) 国家ブロードバンド戦略 2004~2007 年の国家ブロードバンド戦略の中間目標は、2005 年末までに 100 万件の接続 を実現し、高速接続の利用において、フィンランドを欧州の主導国の一つにすることだっ た。これらの目標を達成するため、フィンランド政府は、59 の異なる施策からなる広範な プログラムを開始した。 目標は、当初のスケジュールよりも早く達成された。100 万接続は 2005 年夏に達成され、 同年末には 120 万接続に達し、2Mbit/s 以上の接続も増加した。 広範な地域カバレージも予定より早く達成された。目標は 2005 年末までに 95%以上の 世帯でブロードバンドアクセスを実現することだったが、これは 9 月には達成された。特 に地理的に不利な立場にある島嶼部や、東部・北部フィンランドの発展は、新しい無線技 術によって支えられた。2005 年末までにはフィンランド世帯の 47%がブロードバンド接続 を獲得した。 (2) 通信ネットワークのセキュリティ フィンランド通信規制局(FICORA: Finnish Communications Regulatory Authority)は、運 輸通信省から分離した通信部門の独立監督機関である。FICORA は、非常に広範な事業を 行っており、フィンランド国内の通信業界の指導および監督に加え、情報セキュリティ事 件を処理し、情報セキュリティ状況について警告を発する。 (a) 通信規制 2004 年末に FICORA は、電子メールサービスの情報セキュリティに関する規則を発表し た。この規則によると、外部ネットワークへ悪意あるソフトウェアやスパムが流出するの を防ぐため、通信事業者は、特定の条件下で消費者のアカウントからの発信電子メールト ラフィックを制限することができる。この規制が実施されて以降、フィンランドの通信ネ ットワークのスパム数は大幅に減少した。 2006 年初め、FICORA は、インターネットアクセスサービスの情報セキュリティについ ても規則を定めた。その目的は、通信事業者のコアネットワークと消費者のアカウントの 両方について、インターネットアクセスの情報セキュリティとユーザビリティを高めるこ とである。 147 (b) CERT-FI 2002 年に FICORA 内に設置された CERT-FI(Computer Emergency Response Team FICORA) は、通信ネットワークおよびサービスにおける情報セキュリティ事件を処理する国家機関 で、小規模ながら、フィンランド社会の便益のため、質の高い情報サービスを提供してき た。CERT-FI の最も重要なサービスは、情報セキュリティ事件の機密処理と解決、多面的 な状況認知サービス、教育啓蒙活動である。 設立当初から CERT-FI は、その取り組みを通信ネットワークとサービスの情報セキュリ ティ管理に焦点化し、成果をあげてきた。しかし、電子トランザクションの増加と、IT 関 連の役割の集中化により、CERT-FI は、通信事業者以外にも利用者ベースを広げることが 求められるようになっている。 4.2 電子政府政策 (1) 分散化から集中化へ 1990 年代初め、景気低迷と財務危機の中にあったフィンランドでは、成果ベース管理の 導入加速化が決定される一方で、公的部門の分散化も進んだ。その結果、政府機関は効率 性を高め、IT システムの場合、特定のニーズを最もよく満足するソリューションを購入で きるようになった。 フィンランド政府は現在、分散化モデルから集中化モデルへと方向転換することを目指 している。戦略の実施は、財務省内の国家 IT 管理部門(State IT Management Unit)が担当 する。現行の法律は、システムの互換性と共通のインタフェースについて広範で拘束力あ る指示を可能にしている。フィンランド議会は現在、国家共同購入庁がすべての基本的 IT システムの購入を扱えるよう検討中である。 一例として、フィンランド政府は今では数百の異なる財務および人事管理システムが稼 動している。これは、サービスキャパシティと生産性を向上させることを目的として、政 府規模で財務および人事管理を開発する KIEKU プログラムの下で可能になった。財務お よびスタッフ管理情報システムは統合され、運用は地域のサービスセンターで管理されて いる。約 5,000 人が財務および人事管理に常勤で雇用され、システム開発費用は年間約 4,200 万ユーロ(約 2006 年 8 月 13 日時点での為替レート 1 ユーロ=149.81 円で換算、以下同様) 148 かかり、約 800 の異なる情報システムが使用されている。KIEKU プロジェクトの具体的数 値目標は、運用効率を 5 年で 40%増加させることである。 (2) 中央政府と地方政府の協力 中央および地方政府もまた、電子サービスの開発に積極的に協力している。共同で開発 および維持されているサービスの例には、市民向け政府ポータル(suomi.fi, yrityssuomi.fi など)、電子フォームサービス、公共部門担当者ディレクトリ、企業情報電子レポーティン グ共同モデルが含まれる。シェアドサービスも概ね成功し、Lomake.fi サービスは、犯罪レ ポーティングや賃貸住宅の空き部屋検索など多数の人気の高い市民サービスを提供してい る。 表Ⅵ-1 市民向け電子政府サービス事例 政府機関 内容 犯罪報告は利用者が多く、2005 年はインターネット経由で前年度比 16%増の 3 万 1,000 件が提出された。内務省警察局が監督するこのサービスで、市民は、盗難、 所持品の損失、パスポート、ID カードなどの紛失や盗難を届け出ることができる。 保険会社にも犯罪レポートを同時に直接送付することが可能。内務省は現在、この サービスを他の犯罪にも拡張するかどうかを検討中である。 フィンランド税 納税者がより簡単かつ便利に税務申告を提出して修正することが可能な拡張オンラ 務 局 (FTA: The インサービスを準備している。2006 年半ばまでに利用者が税務 ID の詳細情報を修 Finnish Tax 正できるようにすることを目指しており、長期的には、インターネット経由で事前 Administration's) に記入した納税フォームを送信できるようになる。 警察局 (内務省) 運輸通信省 Journey.fi サービスは、入力データに基づいて、全国のある住所から別の住所までの ルートと予定表を作成する。他のスケジュール検索エンジンと異なり、1 回の入力 で種類の異なる交通機関をピックアップしてくれる。 Source: eFinland.fr などより作成 (3) TIME から Kunta TIME へ TIME ワーキングググループは、政府の情報管理ポリシー策定と調整向上のためのプロ グラムを作成した。改革の中心目標は、政府の ICT 運用が利用者向けサービスを改善し、 運用をより効率的にするよう、開発を支援することであった。 TIME ワーキキンググループの最終報告書に基づいて、この目標を実施するため、政府 の情報管理を改革する ValtIT プロジェクトが発足した。2005 年春、財務省に国家 IT 管理 部門が設立され、国家 IT マネジャーが任命された。また、国の IT 幹部グループが運営を 開始した。 149 TIME ワーキンググループを引き継いだ KuntaTIME ワーキンググループは、国と自治体 の情報管理と情報社会の発展を目的とし、社会的影響の大きい次の 4 つの重要分野に焦点 を当てる。 • 公的機関における情報管理の運営メカニズムの開発 • 社会福祉および公的保健医療のための共有デジタル顧客情報管理とアーカイブシステ ム、全国的機関の設置 • 行政における戦略および運用部門の発展 • 全国のデジタルアーカビングにおける共通デジタルトランザクションの開発 KuntaTIME ワーキンググループでは、将来、公共機関の ICT 活動のために独立した省、 および基盤となる省庁グループを設置することを提案している。 (4) Kunta IT 部門 ヴァンハネン首相は 2005 年 10 月、フィンランドの中央政府、地方政府間の情報管理協 力を強化する組織 KuntaIT(countyIT)を準備するワーキンググループを設置した。同ワー キンググループは、この組織の課題を策定するとともに、共同データシステム購入の資金 提供モデル、国家情報管理の共同機関へと移行する計画を提案することになっている。 ワーキンググループは 2006 年 1 月、KuntaIT 部門を内務省内に設置することを提案した。 同部門は、ICT 利用の観点からサービス開発手段を特定する。ワーキンググループでは、 自治体と国家行政全体の情報管理の緊密化が組織の合理化、可用性の向上、サービスの質 の向上、サービス構造の改革実現を可能にすると考えている。 KuntaIT 部門は、KuntaTIME ワーキンググループの提案に基づいて作業を進め、遅くて も 2007 年初めに運営を開始する。 関連ウェブサイト e.Finland: http://e.finland.fi/ 150 Ⅶ デンマーク 151 Ⅶ 1. • デンマーク デンマークにおける情報技術政策のポイント ICT 政策(市民、企業、公的部門)の全般的責任は科学技術イノベーション省が受け持 つ。科学技術イノベーション省は、国立 IT 電気通信庁の技術的支援を受けながら、政 府 ICT 政策の策定および調整を担当する • デンマークの ICT 政策は 1994 年の「情報社会 2000」レポートから始まり、年度ごとの 行動計画が発表されてきた。現行の IT 行動計画は、2003 年 10 月に発表された「Using IT Wisely」である。この計画は、世界の ICT 主導国としてデンマークの地位強化を目 標とする。 • デンマークの電子政府政策は、2001 年の「Project e-Government」からスタートし、現 在は「デンマーク電子政府戦略 2004–2006」を実施中である。そのビジョンは、「デジ タル化は、市民や企業に高品質のサービスを提供する効率的で一貫性ある公的部門の 創造に貢献しなければならない」と述べられている。 • 公的部門全体の電子政府化を担当する機関として、電子政府委員会、デジタルタスク フォースのほかに、MVTU 内の IT 政策センターがあり、協力体制の下で電子政府推進 に取り組んでいる。 2. IT 政策の担当機関 首相はアナス・フォ・ラスムセン(Anders Fogh Rasmussen; 2005 年 2 月再任)。現政権は デンマークを競争力ある知識社会にすることを目指している。 ICT 政策(市民、企業、公的部門)の全般的責任は科学技術イノベーション省(MVTU: Ministry of Science, Technology and Innovation)が受け持つ。MVTU は、国立 IT 電気通信庁 (National IT and Telecom Agency)の技術的支援を受けながら、政府 ICT 政策の策定および 調整を担当する。 (1) 科学技術イノベーション省 MVTU は、旧研究情報技術省(MITR: Ministry of Research and Information Technology)の 後継機関として 2001 年に設置された。MVTU は、研究教育(大学)、産業研究、国家技術 イノベーション政策を担当する。 152 (2) 国立 IT 電気通信庁 2002 年に当時の国立電気通信庁(National Telecom Agency)を組織変更し、MVTU の一 部門として設置された規制機関である。政府の ICT 政策の策定と実施を担当し、ネットワ ーク社会の実現に向けて IT および通信の枠組みおよび条件の整備を目的としている。 関連ウェブサイト Ministries: http://www.stm.dk/Index/mainstart.asp?o=24&n=1&h=8&s=2 3. IT 行動計画 デンマークにおける IT 活用は 1970 年代および 80 年代の公的部門の電算化から始まった。 90 年代に入ると、IT 政策の焦点は従来の非ネットワーク型の IT から、インターネットを 中心とした通信技術の活用へと移行した。その後の ICT 政策では、情報社会の発展過程に 全国民を取り込むことが主要課題の一つとなった。 1994 年、デンマーク政府は当時の MITR の監督下に情報社会 2000 委員会(Information Society 2000 Committee) を 設 置 し た 。 同 委 員 会 が 草 案 作 成 し た レ ポ ー ト 「 Info-society 2000—Report from the Committee on the Information Society by the Year 2000」におけるデンマ ーク型 ICT 開発は、市場の力と公的部門の関与の混合に基礎を置いた。 このレポートに基づいて 1995 年には、世界の情報社会発展の最前線にデンマークを押し 上げる同国初の本格的 ICT 戦略「From Vision to Action—Info-Society 2000」と、同戦略に対 応した「1995 年 IT 行動計画(1995 IT Action Plan)」が発表された。 その後、デンマーク政府は毎年のように MITR が作成した行動計画を議会に提出するよ うになる。2002 年に発表された次期行動計画「IT for All- Denmark's Future」は、それまで の ICT 政策が技術一辺倒であったとの反省から、よりバランスのとれた「現実路線」に向 かい、個人、企業、社会の価値創造、政策策定におけるユーザーの視点などに焦点を当て た。次の 7 つの政策分野で目標設定がなされている。 • 企業、産業における IT 活用促進 • 競争的な通信部門 153 • IT コンピテンスの強化 • 公的部門の IT 活用 • IT セキュリティ • インターネット上のコンテンツ利用 • EU への貢献 現行の IT 行動計画は、2003 年 10 月に発表された「Using IT Wisely」である。この計画 は、世界の ICT 主導国としてデンマークの地位強化を目標とする。この計画で、政府の取 り組みは、ICT 活用が最高の価値を生み出す分野、特に、知識社会の強化に焦点を当てて いる。現在、ICT 政策は次の 3 つを目標にしている。 • 企業、産業の成長 • 知識社会への国民の適応 • 公的部門の改革 4. デンマーク電子政府戦略 2004-2006 2001 年、デンマーク政府、地方自治体連合(Local Government Denmark)、広域自治体連 合(Danish Regions)、コペンハーゲン市、フレデリクスブルグ市の共同イニシアチブとし て「Project e-Government」がスタートした。その目標は、公的部門全体にわたって電子政 府への移行を調整することだった。指針となったのは、電子政府の実施は個別の機関が行 うが、それには法的、技術的、組織的問題について中央からの指導や解決策が必要となる という考え方である。 デジタル化の利益を享受するには、戦略的決定と個別のソリューションに横断的な協力 が必要とされる。しかし、Project e-Government では個々の機関の責任にまで踏み込むこと がなかった。このため、2003 年、政府と地方自治体は、プロジェクトを 2006 年末まで延 長することを決定した。その後、デンマーク政府は、それまでの電子政府戦略を見直し、 2004 年 か ら 2006 年 ま で の 3 年 間 に お よ ぶ 新 戦 略 と し て 「 デ ン マ ー ク 電 子 政 府 戦 略 2004-2006(The Danish eGovernment Strategy 2004-2006 - realising the potential)」を翌 2004 年 2 月に発表した。 「デンマーク電子政府戦略 2004–2006」の中で、公的部門は各方面から圧力を受けてい る、と述べられている。たとえば、高齢化、市民や企業からの要求、予算、競争力などの 要素が一体となって、公的部門全体の運営、組織編制、課題遂行、作業環境などの刷新を 154 迫っているのである。戦略は、これを実現するものとして電子政府を位置付けている。 4.1 実施体制 2001 年まですべての国家的 ICT および電子政府政策は、MVTU によって策定されてい た。しかし、その後は、公的部門の分散化方針に従って、電子政府の実施はほぼすべての 政府機関によって分担されるようになった。 2001 年には、財務省が、電子政府委員会とデジタルタスクフォースを設置し、電子政府 政策のリーダーシップ、策定、調整への焦点化が一層進んだ。この結果、MVTU では、公 的部門における ICT 開発や標準策定に集中することになった。両省の役割が分化した背景 事情としては、公共政策目標全体の中で電子政府のニーズが高まったこと、政府規模で省 庁間に共通するソリューションが必要とされたこと、電子政府への投資からより多くのリ ターンが求められるようになったこと、などがある。 現在は、公的部門全体の電子政府化を担当する機関として、上記の電子政府委員会、デ ジタルタスクフォースのほかに、MVTU 内の IT 政策センターがあり、協力体制の下で電 子政府推進に取り組んでいる。 (1) 電子政府委員会 財務省次官が委員長を務め、国、広域自治体、地方自治体の代表者がメンバーになる。 電子政府を主導し、横断的問題について議論する。ただし、電子政府の導入について具体 的な決定を行う権限はない。同委員会の主な役割は次の通り。 • 電子政府の条件整備 • 電子政府の概観と政府内での広報 • 電子政府導入の進捗保証 (2) デジタルタスクフォース 電子政府委員会によって任命され、同委員会の監督の下、電子政府政策の実施について 責任を負う。また、電子政府委員会の事務局でもあり、デンマークの電子政府の要件と活 動を明確にしなければならない。業務内容は次の通り。 • 電子政府戦略の目的と内容について情報提供して電子政府の普及を促進 • 電子政府委員会に代わって横断的なフォローアップと調整を実施 155 • 電子政府委員会が優先するプロジェクトを実施 • 横断的イニシアチブのニーズを継続的に監視し、委員会に提案 • 関係当局との連携により、選択された焦点分野、事業分野でプロジェクトを遂行 デジタルタスクフォースは 2005 年に再編され、現在は財務省行政政策センターの一部に なっている。その目的は、電子政府における部門間協力を維持及び開発するとともに、電 子政府と他の近代化政策の統一性を強化することである。 (3) IT 政策センター IT 政策センターの主な役割は、電子政府政策が ICT の十分な技術的理解に基づいて実施 されるようにすることである。さらに、ICT 政策を従来から主導してきた MVTU 内の機関 として、過去の ICT 政策と現行の電子政府政策の連続性を確保することもその役割の一つ になっている。 政府財務委員会(Government Finance Committee):監督および調整 メンバー: 財務相(委員長) 経済経営問題相 内務保健相 電子政府委員会(Joint Board of e-government):行政指 導 メンバー: 財務相(委員長) 経済経営問題相 内務保健相 科学技術イノベーション相 Project E-Government 財務省 デジタルタスクフォ ース (Danish Digital Task Force) 電子政府戦略を主導 (共同委員会の 事務局) 主な調整委員会 国家 IT 評議会 (State IT Council) 国家 IT フォーラム (State IT Forum) IT セキュリティ評議会 (IT Security Council) 調整情報委員会 (Coordinating Information Committee) 地方デジタル化委員会 (Municipal Digitalization Council) 156 デジタル県 (Digital Counties) 科学技術イノ ベーション省 IT 政策センター (IT-Policy Centre) (政府 ICT 政策 を主導) ICT 政策 Source: OECD (2006). OECD e-Government Studies: Denmark 図Ⅶ-1 4.2 電子政府実施体制 ビジョンと目標 デンマーク政府は、電子政府のビジョンを次のように述べている。 「デジタル化は、市民 や企業に高品質のサービスを提供する効率的で一貫性ある公的部門の創造に貢献しなけれ ばならない」。 このビジョンに対する取り組みを促進し、その実現進捗を監視するため、以下の 6 つの 目標を策定した。さらに、それぞれの目的について、2006 年末までに達成すべき数値を優 先順位の高い順番に掲げている。 (1) 公的部門が市民や企業に一貫性あるサービスを提供すること。 • 住民の 60%以上が公的部門のデジタルサービスを使用する。 • 全企業の 95%以上が公的部門のデジタルサービスを使用する。 • 全公共機関の 60%以上が市民や企業から全文書の 4 分の 1 以上を電子的形式で受け取 る。 • デジタルサービス/業務遂行の一貫性に対する市民や企業の満足度が向上する。 • 公的部門のデジタルサービスに対する市民や企業の満足度が向上する。 (2) サービスの品質とリソース公開 157 • 全デジタル化プロジェクトの 75%以上がリソースを公開する。25%以上が大規模にそ れを行う。 • 公共サービスの品質に対する市民と企業の満足度が向上する。 • 行政手続きの処理時間が短縮される。 (3) 公的部門の仕事と通信をデジタル化 • 全公共機関の 80%以上が他の公共機関から送付される全文書の 60%以上をデジタル形 式で受信する。 • 全公共機関の 60%以上が他の公共機関、市民、企業とデジタル形式で安全に通信でき る。 • 全公共機関の 40%以上が電子案件管理を利用する。 • 全公共機関の 40%以上がデジタル請求書を使用してデジタル形式で購入を実施する。 (4) 一貫性と柔軟性を備えたインフラストラクチャ • 全公共機関の 15%未満が公的部門の共通ソリューションの不在が重大な障害であると する。 • 全公共機関の 15%未満が公的部門の共通標準の不在が重大な障害であるとする。 • 全公共機関の 15%未満が適切な法改正の不在が重大な障害であるとする。 • 新しい電子文書処理ソリューションを購入または開発する公共機関の 80%以上が、共 同電子文書管理システム(JEDM: Joint Electronic Document Management System)プロジ ェクトが公開した標準と推奨事項を使用する。 • 電子政府認証(OCES: Public Certificate for Electric Service)規格を実装した 110 万件以 上のデジタル署名証明書が、市民、労働者、企業に発行されること。 • 電子案件および文書処理ソリューションを購入または開発した公的機関の 80%以上が、 JEDM で発行された標準や勧告を使用する。パートナーの関連データにアクセスできず に障害となっている公的機関ができるだけ少ないこと。 (5) 公的部門のマネジャーが主導し、ビジョン実現能力を確保する • 公共機関の 10%未満がデジタル化に関する政治的決断と明確な目的の欠如が重大な障 害であるとする。 • 公共機関の 20%未満がデジタル化作業のリソース配分の欠如が重大な障害であるとす る。 • 全デジタル化プロジェクトの 75%以上が仕事の簡素化をもたらし、25%以上で大規模 158 な簡素化が行われる。 • 公共機関の大部分でデジタル化が効率性戦略の一部をなし、その監督機関の契約や行 動計画をもたらす。 • 公共機関の上級幹部の大部分(IT 管理を除く)が、その組織独自のデジタル化プロジ ェクトで正式な役割(運営委員会の会長、プロジェクトオーナーなど)を担う。 4.3 実施計画 Project eGovernment の課題は、上述のビジョンおよび目標を実現できる枠組みとソリュ ーションを提供することである。そのための枠組みとして、焦点領域、事業領域、主要デ 目標 ビジョン ジタル化プロジェクトの 3 つのカテゴリが用意されている。 デジタル化は、市民や企業に高品質のサービスを提供する効率的で一貫性ある公的部門の創造 に貢献しなければならない。 公 的 部 門 が 市 民 や サービスの品質 公 的 部 門 の 仕 事 一 貫 性 と 柔 軟 性 公 的 部 門 の マ ネ ジ ャ 企 業 に 一 貫 性 あ る と リ ソ ー ス の 公 と 通 信 を デ ジ タ を 備 え た イ ン フ ーが主導し、ビジョン ラストラクチャ 実現能力を確保 ル化 サービスを提供す 開 ること 事業領域 主要デジタル化プロジェクト Source: Danish Government (2004). The Danish Government eGovernment Strategy 2004-2006 159 その他地方イニシアチブ 個別公的機関のイニシアチブ 警察のシステム近代化 内国歳入庁のシステム近代化 EPJ www.sundhed.dk www.virk.de eDay JEDM 児童および青少年保護 インフラの強化 G2B サービス マネジメントとス キルの強化 組織と企業文化の 刷新 コミュニケーショ ンと知識共有の向 上 インセンティブと 財政支援の開発 医薬品 焦点分野 統一的な市民およ び企業向けサービ ス 効果測定 地方 図Ⅶ-2 電子政府の実施計画 (1) 焦点分野 焦点分野は、電子政府関係機関に適切な枠組みを用意するものである。IT インフラスト ラクチャなど、いくつかの領域では既に十分な成果を上げているが、デジタルスキルの開 発、コミュニケーション、マネジメントなどの分野では、一層の取り組みが必要とされて いる。 (a) 効果測定 • 効果測定と効果実現のツールおよび方法を分析、開発する • 効果目標を策定し、既存の公立戦略、達成目標、行動計画に盛り込む方法を記述する。 • 公的部門、民間部門を問わず、取り組みの再編に成功し、継続的に利益を生み出して いる優れたデジタル化プログラムの実施例を伝達する。 (b) マネジメントとスキルの強化 • 優れたデジタル管理のためのチェックリストを策定する。 「デジタル・マネジャー」 「デ ジタル・スタッフ・メンバー」「デジタル・プロジェクト・マネジャー」などに必要な スキルを含む。 • 協力、通信、役割や責任の分担、専門性の要件と育成、現行ソリューションの知識な どに関連して、個別のプロジェクトや機関が評価に使用できる HR インデックスを作成 する。 • 知識共有を促進するために、公的部門の諸機関の垣根を越えて、デジタル化要員(ス タフ・メンバー)を交換できる可能性を分析する。 (c) 組織と企業文化の刷新 • 従来の行政の垣根(国、広域自治体、地方自治体)を越えてソリューションを再編し なければならないサービスニーズを特定する。 • ユーザー中心のサービス促進を目指して、市民の「ライフイベント」と対応する「企 業イベント」のカタログを作成する。 • 文化変容、作業分析、再設計などに対応したツールを準備し、横断的協力を促進する。 (d) コミュニケーションと知識共有の向上 • eGovernment 戦略のコンテンツと目標について知識を拡充する。 160 • デジタル化プロジェクトで使用するツール作成とベストプラクティスの収集。 • 相互知識共有の確保。サプライヤ、ソリューション、資金、組織変更、人事に関する 教訓を関連公共機関で体系的に共有する。 • 企業と市民のデジタルサービス利用を動機付けるマーケティング、コミュニケーショ ン、インセンティブ戦略を提供する。 (e) インセンティブと財政支援 • 費用対効果の問題を除去または制限する多数の資金提供モデルを提供し、貸付金のプ ール、多年度予算協定などの必要性を評価する。 • データとデジタルサービスが機関の垣根を越えて利用できるソリューションを確立で きるよう、公的機関を支援する。 (f) インフラの強化 • 公的機関アーキテクチャ枠組み(IT アーキテクチャ白書など)の策定を強化する。 • IT 評議会の報告書「IT Security in the State Sector 2003」に基づく国家 IT セキュリティ・ コンセプトを確立する。 • 市民と企業が自身のデータにアクセス可能にする。 • 国家ウェブサイトの共通「ルック&フィール」を確立する可能性を検証し、ユーザー が他のサービスを利用しやすくする。 • 公的部門におけるモバイル技術の利用可能性を分析する。 (2) 事業領域 事業領域には、2 つの目標がある。一つが公的部門の最も重要な事業領域におけるデジ タル化の推進、もう一つが電子政府計画全体の先行事例としての役割である。現在は、G2B (Government to Business)サービス、児童および年少者の保護、医療管理の 3 つがある。 (a) 子ども・青少年保護 社会問題省、地方自治体連合、広域自治体連合、コペンハーゲン市、フレデリクスブル グ市、科学技術イノベーション省、デジタルタスクフォースが共同で実施する。児童およ び青少年保護関連のデジタル化を支援するためのビジネスモデルを作成する。目的は、よ り体系化された案件処理、児童のニーズとの適合性改善、管理情報システムの改善、公的 機関の横断的協力など。 (b) 医薬品 161 医師が薬品を処方してから患者が正しい薬を適量、適時に受け取るまで、プロセス全体 をデジタルでサポートするビジネスモデルが策定される。内務保健省、社会問題省、デン マーク医薬品庁(Danish Medicines Agency)、地方自治体連合、広域自治体連合、フレデリ クスバーグ市、コペンハーゲン市、科学技術イノベーション省、財務省、デジタルタスク フォースの共同事業である。 (c) G2B サービス 企業向けデジタルサービスが公的機関の垣根を越えて統一的に提供されること、企業に よる行政手続が、デジタル通信の利用を通じて負担軽減されること、参加機関の効率性向 上に電子政府が貢献すること、がねらいである。 これまでの主な成果は、公的サービスおよび情報に企業がアクセスできるポータルサイ ト(www.virk.de)が設置されたことである。これに加えて、公的機関への報告活動のデジタ ル化も提案されている。 (3) 主要デジタル化プロジェクト 主要デジタル化プロジェクトは、戦略の目標達成の大きく貢献するものである。このカ テゴリには、Project eGovernment 委員会が開始したもの(eDay、JEDM など)とその他の 機関が開始したものがある。 (a) eDay 公的部門におけるデジタル作業および通信を促進することを目的とする。デジタル通信 の普及に伴ってシステムの案件処理時間が短縮され、公的機関がこれまで郵便にかけてき た莫大な経費を節減することができる。 第 1 回 eDay は 2003 年 9 月に開催された。この日以降、公的機関には、他の機関との文 書のやり取りを電子的に行うことを要求する権限が付与された。評価の結果、eDay は、目 に見える効果をもたらし、期日を定めた共通目標に合意するやり方がデジタル化推進でも 有効な戦略と考えられるようになった。 2005 年 2 月には、機密情報を含む個人情報の政府組織間通信をすべて電子化することを 目的として eDay2 が実施された。これにより、2005 年 11 月までに紙ベースの通信をさら に 40%削減することが期待された。また eDay2 では、政府が、市民と企業の両方に対し、 162 政府機関とのデジタル通信を可能な限り要求し、電子的返信を受け取る権利を与えた。こ れらの通信をセキュアに保ち、必要に応じて認証するにはデジタル署名が利用される。 (b) 共同電子文書管理(JEDM) 枠組み協定を通じて、公的部門全体に魅力的な JEDM ソリューションを供給することを 目的とする。JEDM プロジェクトは、この枠組み協定による購入を選択した公的機関に電 子政府への完全移行と質量両面での利益獲得の機会を与える。効率性改善、日常業務の簡 素化、内部的協力や市民、企業、他の公的機関との協力改善がねらいである。 関連ウェブサイト The Danish eGovernment Strategy 2004-2006: http://www.e.gov.dk/uploads/media/strategy_pixi.pdf#search='The%20Danish%20eGovernment%20Strategy' 163 Ⅷ ドイツ 164 Ⅷ 1. • ドイツ ドイツにおける情報技術政策のポイント メルケル新政権は 2005 年 12 月、シュレーダー前政権の「Agenda 2010」を受け継ぐ構 造改革プログラムを発表した。 • 連邦政府は 2006 年 8 月、技術革新政策に焦点化した「ドイツ・ハイテク戦略」を発表 した。2006 年~2009 年に実施され、総額 146 億ユーロ(約 2 兆 1,900 億円)が投入さ れる。経済技術省、教育研究省の IT 政策の多くが、このハイテク戦略の一環として策 定および実施される。 • 包括的情報社会政策として 2003 年~2006 年には「情報社会ドイツ 2006」が実施され てきた。この政策は今後、2006 年 11 月に承認された「情報社会ドイツ 2010」へと継 承され、特にブロードバンドや無線利用などが推進される。 • 情報通信サービスの法整備も継続しており、2006 年にはテレサービスとテレメディア を一括して扱うテレメディア法などが成立した。 • 教育研究省は、「ドイツ・ハイテク戦略」の一環として、2007 年から 10 年間にわたる 新情報通信技術研究開発プログラム「IKT 2020」を策定中。同省が手掛ける先端的 IT 研究分野は、ナノテクノロジー、マイクロシステム、セキュリティなどである。 • ド イ ツ 連 邦 政 府 は 2006 年 9 月 、 技 術 革 新 を 通 じ た 行 政 改 革 計 画 の 一 環 と し て 、 「BundOnline 2005」の後継プログラムである「E-Government 2.0」を策定した。このプ ログラムの具体的計画には、2008 年までの電子身分証明書導入、市民ポータルの設置、 行政通信インフラの設置などがある。 2. IT 政策の担当機関 2005 年 9 月の総選挙で野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が勝利し、アン ゲラ・メルケル(Angela Merkel)党首を首相とする新内閣が 11 月に発足した。総選挙で の得票差が僅かであったため、CDU/CSU は社会民主党(SPD)と大連立を組んでいる。連 立協定では IT 政策に関して以下が明示されている。 • 「ドイツ・ハイテク戦略(Die Hightech-Strategie für Deutschland)」行動計画による最新 技術への重点化 • 効率的行政に基づき近代的国家を目指す前政権のドイツオンライン (Deutschland-Online)計画の継承 165 また、新内閣発足に伴い、旧経済労働省は経済技術省と労働社会省に分割された。ドイ ツにおける IT 政策の担当省は、経済技術省、教育研究省が中心となる。 関連ウェブサイト ドイツ政府ホームページ: http://www.bundesregierung.de/ 3. 連邦政府 3.1 国別改革プログラム EU のリスボン戦略では、経済成長の維持と高水準の雇用を達成するため、欧州の競争 力の基盤強化が謳われている。欧州委員会は、EU 加盟諸国にリスボン戦略に沿った 2005 年~2008 年の国別改革プログラム(NRP: National Reform Program)を策定して欧州委員会 に提出するよう求めてきたが、ドイツ政府も 2005 年 12 月、 「 "Innovation forcieren - Sicherheit im Wandel fördern - Deutsche Einheit vollenden"(技術革新促進、セキュリティ強化、ドイツ 統一の完成)」と題するプログラムを承認した。このプログラムでドイツ政府は、同国が抱 える雇用問題、財政赤字、グローバリゼーション、少子高齢化などの課題に対応したい考 えである。 3.2 ドイツ・ハイテク戦略 2006 年 8 月、連邦政府は、技術革新政策に焦点化した包括的国家プログラムとして「ド イツ・ハイテク戦略」を承認した。同プログラムは、教育研究省の主導により省庁横断で 推進し、科学界、産業界、市民社会との協力も求められる。このプログラムは 150 万人分 の新規雇用を創出すると予測されている。 連邦政府は 2006 年~2009 年に、ドイツ再統合以来最大の公共研究投資となる、総額約 146 億ユーロ(約 2 兆 1,900 億円 2006 年 10 月 4 日時点での為替レート 1 ユーロ=149.89 円で換算、以下同様)をこの戦略に投入する。内訳は、17 のハイテク部門の研究および新 技術普及資金が約 120 億ユーロ(約 1 兆 8,000 億円)、複数部門にまたがる施策が 27 億ユ ーロ(約 3,800 億円)となっている。ICT 部門の資金は 11 億 8000 万ユーロ(約 1,800 億円) である。 166 ドイツ・ハイテク戦略の中で連邦邦府は、今後数年間にわたる多数のテーマ別プログラ ムを策定している。IT 関連のプロジェクトとその担当省庁は次の通り。 • 情報社会ドイツ 2010:経済技術省、内務省、教育研究省 • IKT 2020:教育研究省 • ナノイニシアチブ:連邦政府 表Ⅷ-1 ハイテク戦略資金(2006 年~2009 年) (単位:100 万ユーロ) 17 のハイテク部門(小計) 11,940 ナノテクノロジー 640 バイオテクノロジー 430 マイクロシステム技術 220 光技術 310 材料技術 420 宇宙技術 3,650 情報通信技術 1,180 250 生産技術 2,000 エネルギー技術 環境技術 420 交通技術 770 航空技術 270 海洋技術 150 保健研究および医療工学 800 農業 300 安全研究 80 サービス 50 複数部門にまたがる施策(小計) 2,660 600 科学および経済の強化 1,840 中小企業支援 テクノロジー企業設立支援 220 14,000 合計 Source: BMBF, "Die Hightech-Strategie für Deutschland" 関連ウェブサイト Die Hightech-Strategie für Deutschland (Langfassung): http://www.bmbf.de/pub/bmbf_hts_lang.pdf 4. 経済技術省 4.1 情報社会ドイツ 2010 167 2006 年 3 月、連邦内閣は、ドイツ・ハイテク戦略の一環として経済技術省に新しい連邦 政府アクションプログラム「情報社会ドイツ 2010 (iD2010; Informationsgesellschaft Deutschland 2010)」を 2006 年 8 月までに策定することを指示、2006 年 11 月に同プログラ ムを承認した。この新情報社会プログラムは、リスボン戦略に沿った EU の情報社会戦略 「i2010 - 成長と雇用のための欧州情報社会(A European Information Society for Growth and Employment)」の実施を後押しするものである。 iD2010 の重点項目は、①法的、技術的な基礎条件の改善②政府と産業界が統合された知 識社会③ICT セキュリティの向上④ICT 研究およびマーケットアプローチ(知的資産の評 価手法)開発の支援、である。 iD2010 の具体的な行動分野は次の通り。 • ブロードバンド・インターネットの普及 • 無線サービスのためのデジタル化推進 • 通信規制の調整戦略と近代的な周波数政策 • デジタルコンバージェンスの諸要件に対応した近代的なメディア法 • マルチメディア技術の促進 4.2 法整備 連邦および各州では 1997 年以来、情報通信サービスの従来の法的枠組みを拡張すること が中核的課題となっている。 (1) 通信法 通信法(TKG: Telekommunikationsgesetz)の一部をなす法律として、連邦政府が 2006 年 5 月に可決した通信規則改正法草案は、近代的ブロードバンドネットワークの技術革新、 投資を促進するとともに消費者保護の権利強化を目標とする。 (2) テレメディア法 ドイツでは 1997 年以降、物品サービスを中心とした「テレサービス」とニュースサービ スなど情報提供を中心とした「メディアサービス」を区別し、それぞれテレサービス法 (TDG: Teledienstegesetz)、メディアサービス法(MDStV: Mediendienste-Staatsvertrag)とい 168 う別々の法律で規制してきた。連邦政府が 2006 年 6 月に可決したテレメディア法(TMG: Tlemediaengestz)は、コンバージェンスなどの技術動向を考慮し、両者のサービスを区別 することなく一括して「テレメディアサービス」として扱う。新法は、サービスの提供方 法にかかわらず有効で、既存の法的枠組みを簡素化するものである。 (3) 情報公開法 連邦政府が 2006 年 5 月に可決した情報公開法案(IWG: Informationsweiterverwendungsgesetz)は、公的部門の情報公開に関する欧州指令 (2003/98/EG)を国内法化したものである。公的機関の持つ情報は、680 億ユーロ(約 10 兆円)の経済価値を持つと推計され、情報社会の経済発展に重要な役割を担う。 関連ウェブサイト Federal Ministry of Economics and Technology: http://www.bmwi.bund.de/English/Navigation/root.html The information society: http://www.bmwi.bund.de/English/Navigation/Economy/information-society.html The regulatory environment for future mobile multimedia services: The German ICT Market PDF (July 2006): http://www.itu.int/osg/spu/ni/multimobile/papers/FMMS_GermanycasestudyITU.pdf 5. 教育研究省 5.1 IKT 2020 教育研究省は現在、ドイツ・ハイテク戦略の一環として 2007 年 3 月から 10 年間にわた って実施される新研究促進プログラム「IKT 2020(IKT: Information, Kommunikation, und Technologie)」を策定中である。同プログラムでは、科学界や産業界との連携を密にし、ド イツにおける研究成果の活用状況を改善することが目指される。 以下のトピックについて、経済的機会や研究のニーズが見出されている。 • 組み込みシステム • IT セキュリティと信頼性 • マン・マシン・インタラクション • シミュレーション • グリッド・コンピューティング • マルチメディア • RFID 169 • 印刷エレクトロニクス • ドレスデン・イノベーション・プラットフォーム 上記以外にも次のような重点的な技術促進分野が挙がっている。 • インテリジェントシステム • 知識管理、e-ラーニング • 中小企業や政府における安全なモバイル ICT 利用(SimoBIT) • 次世代検索技術(セマンティック技術)を開発する独仏共同プロジェクト(QUAERO) • e-エネルギー(エネルギー供給の ICT 制御と最適化) • e-シミュレーション(部品、製品、プロセスを Web ベースでシミュレーション) • e-ロボティクス(Web ベースで自動制御) 5.2 先端技術 (1) ナノテクノロジー ナノテクノロジーの活用は、すべての産業に大きな影響を及ぼし、2015 年には市場規模 が 10 億ユーロ(約 1,500 億円)に達すると予想されている。ドイツでは、今日すでに約 560 社の企業(うち 440 社以上が中小企業)がナノテクノロジーに取り組んでいる。しか し、多くの業界や企業は、ナノテクノロジーの可能性を見過ごし、外国の競争相手にチャ ンスを与えているという認識がない。このため、経済技術省と教育研究省は、まだ研究成 果を活用していない業界との話し合いを計画している。複数の研究技術革新イニシアチブ の中心になるのは、テーマ別プログラムの一つとして連邦政府が実施するナノイニシアチ ブ 2010(Nanoinitiative 2010)である。 (2) マイクロシステム 中小企業の技術革新障壁を低減するため、教育研究省は、システムやコンポーネントを μm(1mm の 1000 分の 1)レベルまで微細化するマイクロシステム・プログラムを通じて 研究パートナーとの共同研究開発プロジェクトを促進している。医療工学では従来、マイ クロシステム技術がよく利用されてきたが、現在は、ロジスティクス、バイオテクノロジ ー、農業、食料、電子産業にまで広がっている。IT 関連の分野にはロジスティクスにおけ る RFID や、EU のアンビエント・インテリジェンス・イニシアチブへの参加などがある。 5.3 セキュリティ 170 (1) 教育研究省のセキュリティ研究 教育研究省のセキュリティ研究の目的は、市民の安全向上とドイツ国民の人権(特に個 人の自由な意思決定を保障する自由権)の保護である。教育研究省が新たに準備している プログラムは、これまで十分でなかった分野、すなわち、テロや犯罪、破壊行為、一連の 自然災害や事故に対するセキュリティの実現を目指している。 (2) 国家レベルのセキュリティ研究 市民の安全研究は、国家レベルでも、連邦の研究機関、フラウンホーファー財団 (Fraunhofer-Gesellschaft)、ドイツ航空宇宙センター(DLR: Deutsches Zentrum für Luft- und Raumfahrt )、 応 用 自 然 科 学 研 究 所 ( FAGAN: Forschungsgesellschaft für Angewandte Naturwissenschaften)、連邦政府の研究開発促進プログラム(ICT 技術、マイクロシステム 技術、ソフトウェア、宇宙旅行、バイオテクノロジーなど)の参加企業および大学で広範 に実施されている。 欧州委員会は、第 7 次フレームワークプログラムで、初めて欧州レベルのセキュリティ 研究に助成金を交付し、その金額は年間約 2 億ユーロ(約 300 億円)にも上る。ドイツ連 邦政府も、汎欧州的なセキュリティ研究にドイツ国民が関心を持ち、財政的に負担してく れるよう、担当省庁との集中的対話を始めた。一方、ドイツ国内についても、国家的なセ キュリティ研究プログラムが策定段階にあり、2007 年半ばから実施される予定。その予算 規模は 2010 年まで毎年、年間 4,000 万ユーロ(約 60 億円)である。 関連ウェブサイト Bundesministerium für Bildung und Forschung: http://www.bmbf.de/ Hightech-Strategie: http://www.bmbf.de/de/6608.php 6. E-Government 2.0 (1) E-Government 2.0 策定の経緯 連邦政府は、2005 年 11 月の連立協定などにおいて、①官僚主義の削減②国家財政の強 化③革新的、効果的、効率的行政による国家の行動能力の向上、の 3 点を目標とした。ド イツの革新的技術を促進するため、電子政府を戦略的に活用することが期待されている。 171 連邦政府は、2006 年 3 月の内閣決議で内務省に対し、連邦政府のための適切な電子政府 戦略を作成し、将来の所轄分野の変更を準備するよう要請した。新戦略は、 「i2010 -- 成長 と雇用のための欧州情報社会」における欧州委員会の電子政府目標に沿うとともに、国家 的技術革新政策であるドイツ・ハイテク戦略の一環でもある。 ドイツの連邦政府は 2006 年 9 月、行政改革計画「技術革新を通じた未来志向の行政 (Zukunftsorientierte Verwaltung durch Innovationen)」を発表した。この計画で内務省は、人 事管理、行政プロセス、組織、電子政府など連邦レベルでの行政近代化戦略を提示してい る。電子政府には特に大きな役割が与えられ、同計画の一部として、BundOnline 2005 の後 継プログラム「E-Government 2.0」が策定された。 (2) 行動領域 連邦政府は、電子政府を通じた行政近代化プロセスの促進とドイツの地位向上を目指し、 ①ポートフォリオ②プロセスチェーン③ID 認証④通信の 4 つの行動領域を決定している。 (a) ポートフォリオ(連邦政府の電子政府提供をニーズに応じて質的及び量的に策定する) 産業界、市民、政府が 2010 年には国のオンラインサービスを必要な範囲で電子的に利用 できるようになることが目指される。 (b) プロセスチェーン(プロセスチェーンを通じた産業界と政府の電子的共同作業) 産業界と政府が協力すれば、効率性を大幅に改善できる可能性がある。今日すでに、企 業と市民は、既存の電子政府サービスの利用から年間約 4 億 3,000 万ユーロ(約 640 億円) を節減することに成功している。2010 年には、行政手続きのコスト削減と官僚主義削減お よび法執行適正化プログラムへの貢献を目指して、政府と産業界が統合されたビジネス・ ワークフローと相互運用可能な IT システムを利用する。 (c) ID 認証(電子身分証明書の導入と E-Identity 計画の策定) ネット上の安全なトランザクションは、安全なインフラストラクチャや強力なオンライ ンサービスとともに、参加者の正確な識別や法的に有効な意思表示を必要とする。産業界 と政府が連携したトランザクションは、独自の ID 認証を使用し、必要に応じて、適切な 署名手法を併用する。 • 連邦政府は、2008 年までには電子身分証明書(ePA: elektronischen Personalausweises; e-ID カード)を導入する予定。これにより、健康保険カード、雇用カードを含む従来の個 人 ID カードは統合型 ID カードシステムへと進化する。 172 • 省庁間で個人データを交換すれば、市民が省庁ごとにデータを登録する必要がない。 省庁横断型の電子政府でこれを実現するのが、E-Identity 計画である。 (d) 通信(市民、企業、政府のための安全な通信インフラ) • 国家認定の市民ポータルは、民間事業者の設備を活用し、ニュース配信、信頼ある認 証、データを永続的に安全に保存するストレージ空間を実現する。 • ドイツオンライン計画の枠組みの中でドイツ行政通信インフラ(KIVD: Kommunikationsinfrastruktur der Deutschen Verwaltung)を設置し、連邦、州、自治体に よって安全な電子通信が実現される。 (3) 実施 E-Government プログラムは関連機関が多数あり、開発中の電子政府サービスの数が多い。 E-Government プログラムを経済効率よく実現するには、以下が鍵となる。 • 多機関のより緊密な協力 • 同種の課題に対する共通ソリューションの準備と活用 • 電子政府への連邦投資確保 (a) プログラム管理とプロジェクト管理 E-Government プログラムの実施では、内務省が関係機関、パートナーと共同で、施策調 整と行動領域ごとのプログラム管理を担当する。 4 つの行動領域にはそれぞれ具体的なプロジェクト管理が定められ、担当機関で実施さ れる。ドイツオンライン計画との調整および協力は、内務省を通じて実施される。なお、 ドイツオンライン計画は 2007 年 2 月までに E-Government プログラムの最初の実施計画に 統合される予定である。この実施計画は毎年、内閣が発表し、アップデートする。 (b) 連邦機関のコンピテンス強化 政府機関や企業の従業員は、それぞれの業務に役立てるために、電子政府コンピテンス センター(E-Government-Kompetenzzentrum)を自由に利用して知識管理を行えるようにな る予定である。同センターは、内務省の行動領域「プロセスチェーン」の施策を通じて 2007 年に設置され、政府と産業界の調整役を果たす。 (c) 法改正 173 電子政府に関する法律の改正や 調整は、連邦政府共同議院規則( GGO: Gemeinsamen Geschäftsordnung der Bundesministerien)において継続的課題とされている。2006 年末まで には単独の電子政府法が必要かどうかについて調査が行われる。必要ならば、草案作成が 2007 年初めから開始される。 (d) 広報宣伝活動 E-Government プログラムで達成された成果の公開と積極的な宣伝活動は、問題の解決策 そのものと同様に重要である。内務省はすべての電子政府関連テーマを調整し、必要なマ ーケティング方法の策定および実施に際して支援を提供する。 関連ウェブサイト Bundesministerium des Innern: http://www.bmi.bund.de/ Übersicht der PDF-Dokumente zum Thema Verwaltungsmodernisierung und E-Government: E-Government 2.0 - Das Programm des Bundes (PDF): http://www.bmi.bund.de/Internet/Content/Common/Anlagen/Themen/Moderne__Verwaltung/DatenundFakten/EGovernment__zwei__null,templateId=raw,property=publicationFile.pdf/E-Government_zwei_null.pdf 174 Ⅸ フランス 175 Ⅸ 1. • フランス フランスにおける情報技術政策のポイント 2006 年 7 月の第 5 回情報社会省庁間委員会では、①インターネット②電子政府③企業 の競争力強化の 3 つの柱について、情報技術の発展を促進するための計画を確認した。 • 2005 年、フランス人の 2 分の 1 以上がインターネットにアクセスしている。 • 2005 年、ブロードバンドの加入件数は 1,000 万件近く。 • 2005 年、10 人に 8 人のフランス人(79.7%)が携帯電話に加入している • 携帯電話の空白地帯解消に向けて公的資金が投入されている。 • セキュリティ政策は、インタネット・サービス・プロバイダの信頼マーク、スパム情 報サイトの設置、製品およびサービスのセキュリティ認定など。 • フランスの国家電子政府開発機関である電子政府推進庁と他の 3 つの政府機関を統合 し、国家近代化総局を設置した。 • 国家近代化総局は現在、電子政府推進プログラム ADELE を含む電子政府主導計画を実 施している。 • オンライン税申告は、利用者が前年比 3 倍の 370 万人に増加した。 • 2007 年夏に行政窓口 mon.service-public.fr を正式オープンする。 • 政府は 2 年前から競争力と成長を促進するため、新技術産業を発展させる野心的政策 に取り組んでいる。 • 産業技術革新庁は 2006 年 4 月、産業イノベーションのための結集プログラムの支援プ ロジェクト 5 件を発表した。 • 中小企業の ICT 活用戦略 TIC&PME 2010 は 2007 年も継続される。 2. IT 政策の担当機関 3 つの主要テーマがあり、それぞれについて、1 つまたは 2 つの政府機関が調整にあたる。 • 電子政府: 国家近代化総局(DGME: Direction générale pur la modernisationi de l'État) • サ ー ビ ス お よ び 技 術 開 発 : メ デ ィ ア 開 発 局 ( DDM: Direction du développement des médias)/企業総局(DGE: Direction générale des entreprises) • 市民の利用拡大: インターネット利用委員会(DUI: Délégation aux usages de l'Internet) 上記機関の活動は、次のようなさまざまな補完的組織の中で行なわれる活動に基づいて 176 いる。 • デジタル戦略委員会(Comité stratégique pour le numériqure): テレビ放送のデジタル化、 アナログ放送の完全停止、開放された周波数の活用を目指して、活動の調整や指導を 行う。 • 情報技術高等会議(Conseil supérieur des technologies de l'information): 首相の監督下に 置かれる。 • 国土整備地方開発局(Délégation à l'aménagement et à la compétitivié des territoires): 特 に国土のデジタル整備に関連した問題を審議する。 次の 2 つの省庁間委員会は、情報社会に関してさまざまな関係者が参加する活動の一貫 性を保っている。 • 情報社会省庁間委員会(CISI: Comités interministérials pour la Société d’Information) • 国 土 整 備 省 庁 間 委 員 会 ( CIADT: Comitési interministérials d’aménagement et de développement du territoire) 2006 年 7 月には第 5 回 CISI が開催された。このとき発表されたコミュニケは、2002 年 11 月から RE/SO 2007 計画(pour une REpublicque numerique dans la SOciete de l'information, 情報社会におけるデジタル共和国構想)が実施されてきた結果として、フランスはデジタ ル大国として認められるようになった、としている。第 5 回 CISI では、①インターネット ②電子政府③企業の競争力強化の 3 つの柱について、今後も情報技術の発展を促進するた めの計画を確認している。 CISI は 1998 年に設立された。新技術の統合と開発のため、政策の方向性や重点行動項 目を決定する。また、イニシアチブの実施と情報社会の発展状況を評価する。さらに、ICT に関連した技術的、社会的、法的問題の解決にも取りくむ。 関連ウェブサイト Porteil du gouvernement: http://www.premier-ministre.gouv.fr/fr/ 3. インターネット 3.1 PC 普及 PC の世帯普及率は 2005 年第 3 四半期に 49.1%に達し、現在は 50%という象徴的水準を 177 越えている。RE/SO 2007 計画の中間評価によると、PC の世帯普及率は 2005 年も成長率 10%を維持し、力強い成長が続いている。 ノート PC の普及率も同様に成長している。2002 年から倍増し、2006 年には 13%に達す る見通し。インターネットへのアクセス率の上昇とともにノート PC 普及率も上昇し、モ バイル IT の利用を可能にしている。 3.2 アクセス 2005 年第 4 四半期には、11 歳以上のフランス人 2,600 万人以上(全人口の 50.5%に相当) が自宅または職場・学校でインターネットに接続した。年間の増加率は 10.25%に達した。 インターネットアクセスの成長は、特に家庭でのアクセス増加に因るところが大きい。 フランスでは 2005 年第 4 四半期、1,300 万件以上のインターネット加入があり、年間成長 率は 10%だった。このうち 900 万回線は個人向けである。家庭でインターネット接続を利 用できる世帯の割合は 2002 年の 25%に対し、2006 年は 38%になった。 ブロードバンドの普及などにより、インターネット利用時間は大幅に増加した。2005 年 9 月に実施された調査によると、フランス人は 1 週間に 12 時間 30 分以上インターネット を利用する。 3.3 ブロードバンド 家 庭 で の イ ン タ ー ネ ッ ト ア ク セ ス の 成 長 を 特 徴 付け て い る ブ ロ ー バ ン ド の 普 及 は、 RE/SO 2007 計画の中間評価によっても強調されている。ブロードバンドの加入件数は、例 外的成長を見せ、現在ではインターネット加入の約 4 分の 3 を占めている。 2002 年末、160 万件しかなかったブロードバンド加入件数は、2005 年 12 月には前年同 期比 44%増の 1,000 万件近くに達した。ブロードバンドの普及率(全人口に占める回線数 の割合)は 2004 年には 8%だったが、2005 年には 15%まで増加した。 ADSL 対応の電話回線は急速に増加しており、2006 年末には人口の 98%に達する見通し。 2004 年 9 月の CIADT の目標に従って、2005 年には各県の人口の 70%弱が ADSL にアクセ 178 スした。シラク大統領は 2002 年、全コミューンが 2007 年までにブロードバンドアクセス の恩恵を受けるようにする、という目標を決定している。 これまでブロードバンドに関して後れをとっていたフランスは、こうした未曾有の成長 のおかげで現在では欧州の平均を上回っており、今後、欧州のベルギーやドイツと並んで、 世界の主要国の仲間入りをすると見られている。 第 5 回 CISI では、農村部でブロードバンドをカバーする政府計画が承認された。この計 画は 2007 年から、事業者と協力しながら、ADSL、または Wimax などの代替技術により、 未カバーの内地および海外県のコミューンを支援する。国家によって提供される支援額は、 一般の場合には総費用の 50%まで、財政逼迫しているコミューンまたは海外県にあるコミ ューンの場合には 80%まで、が目標となる。CISI は、カバー率の達成目標を 2006 年末ま でに人口の 98%、県別に 85%以上、2007 年末までには人口の 99%、県別に 90%とした。 3.4 携帯電話 携帯電話の利用者数は 2005 年第 3 四半期に 4,800 万人を超え、前年同期比で 7%以上増 加した。10 人に 8 人のフランス人(79.7%)が携帯電話に加入していることになる。また、 総通信時間は前年度比 10.5%増の 820 億分に達した。 また、2007 年末までに携帯電話のいわゆる空白地帯にある約 3,000 のコミューンをカバ ーする全国協定の実施が継続されている。 2003 年 7 月に調印されたこの計画の第 1 フェーズで、国はこれまでに 4,400 万ユーロ(約 68 億円、2006 年 12 月 3 日付け為替レート 1 ユーロ=153.63 円で換算、以下同様)を投入 し、2005 年末現在、314 地域でサービス提供が開始されている。残りの 40%のコミューン が関係する第 2 フェーズは、2005 年 7 月にスタートし、2005 年末に 64 地域でサービス提 供が始まった。 3.5 電子商取引 オンライン購入をしたことがあるインターネット利用者の数は、2005 年第 4 四半期に前 年同期比 40%増の 1,340 万人に達した。この数字は、欧州では、ドイツ(2,500 万人)、ベ 179 ルギー(2,100 万人)に次いで 3 位。オンライン購入件数は、インターネット利用者数の 3 分の 2 倍のペースで増加し続けている。 電子商取引の件数は 2005 年、50%増加した。これは、オンライン購入に対する国民の信 頼が向上したことによって実現したと考えられる。実際、2005 年 2 月、ネットワーク犯罪 の被害を受けたのはインターネット利用者のわずか 3%、支払方法の不正による被害は 2% だった。 3.6 セキュリティ 第 5 回 CISI では、セキュリティに関して以下のようなプログラムが確認された。 • インターネット・サービス・プロバイダの信頼マーク • スパム情報サイトの設置 • インターネット・トランザクションのセキュリティ向上 • 信頼ある製品およびサービスの提供開発 • 意識向上と警告網の促進 表Ⅸ-1 フランスにおける情報社会の発展(2002 年~2005 年) 指標 単位 2002 年 2004 年 2005 年 機器の設置 家庭への PC 設置 全世帯に占める% 36% 44% ノート PC の保有 全世帯に占める% 3% 8% 11% 学生に占める% 3% 8% 11% 7,600 25,976 33,453 9.1 12.3 13.3 ブロードバンドが利用できるコミューン 数 50% インターネット利用 ブロードバンドアクセス 100 万件 加入件数に占め る% 20% 55% 71% アンバンドリング 100 万回線 6 1,600 2,800 完全アンバンドリング 100 万回線 1 100 600 インターネット加入 インターネット利用 利用時間 週当たりの時間数 9.1 12.3 13.3 電子商取引金額 100 万ユーロ 527 1,108 1,691 オンライン購入 100 万件 5.4 10.6 13.4 遠隔税申告件数 100 万件 0.3 1.2 3.7 音楽の合法的遠隔課金 100 万ユーロ NA 8.52 32.4 携帯電話 180 3,073 2,496 カバーされた町 数 携帯電話加入 100 万回線 38.5 44.5 48 普及率 人口に占める割合 64% 74% 80% 携帯電話トラフィック 10 億分 SMS 100 万メッセージ 52 74 82 1,700 3,000 3,400 Source: La société de l'information en France en 2006 4. 電子政府 4.1 国家近代化総局 フランス政府は 2006 年 1 月、国家電子政府開発機関である電子政府推進庁(ADAE: Agence pour le Developpement de l'Administration Electronique)と他の 3 つの政府機関を統合 し、国家近代化総局(DGME)を設置した。過去数年間に電子政府関連機関が増えてきて おり、e-サービスによる公共部門の近代化の担当機関を一元化して取り組みを簡素化する のが設置のねらいである。 (1) 組織とミッション DGME は、経済財務産業大臣の監督下に置かれ、他の省や、民間部門、海外から引き抜 かれた 160 人の専門家で構成される。彼らは、①品質および単純化②政府機能の近代化③ 電子行政を担当する 3 つのグループに分かれる。 DGME のミッションは、他の省の改革プログラムを調整し、試験プロジェクト、実地検 査、その他の施策により近代化活動を監督することである。 (2) 電子政府主導計画 2004 年 2 月に発表された電子政府推進プログラム ADELE(ADministration ELEctronique 2004/2007)はその後、電子政府主導計画(Schéma directeur l'administration electronique)の 一部となった。DGME はこの計画の実施を ADAE から引き継いでいる。 電子政府主導計画には、相互運用性およびセキュリティ・リポジトリ、行政データの交 換スキーマに加えて、電子政府プロジェクトの分散化原則が盛り込まれており、公的資金 の効率的管理、行政の簡素化を実現する。 電子政府主導計画は 47 のイニシアチブからなり、それらは次の 3 つの軸にまとめられる。 181 • 省庁横断型テーマ(人的資源、危機管理、デジタル ID、サービスセキュリティなど) • 新サービス(シニア向けサービス、零細企業向けサービス、各機関向けサービス、家 庭サービスなど) • 部門別テーマ(財務、金融、防衛、環境と持続可能な発展、雇用と社会参加、公衆衛 生、社会的団結など) 4.2 利用状況 (1) オンライン税申告の成功 2005 年には、370 万人がオンライン税申告をした。この数字は 2004 年の 3 倍、2002 年 のサービス開始から 20 倍に伸びている。税申告にインターネットを選択したのは、納税者 の 11%である。 この成功に直面して、情報インフラが整備され、2006 年は 570 万件近くの電子申請の処 理を確実にすることができた。今年はさらに多くの利用者が見込まれるため、システムが 大幅に拡張され、1,000 万件申告(1 時間あたり 2 万 5000 件以上)に対応できる。 新システムで税申告は大幅に簡素化された。税務署がフォームに記入し、市民はその情 報を確認した後で署名して返信するだけでよく、情報の修正、追加も可能である。オンラ イン申告のもう一つの利点は、さまざまな証明書の提出が不要で、ただちに納税額を知ら されることである。このサービスは、5 月初めに本稼動する。 (2) その他のオンライン・サービスの発展 住所を移転したフランス世帯の 20%がオンライン住所変更を使用している。自動車の担 保無設定証明の 70%近く(1 年あたり 500 万件)は、téléc@rte grise(灰色のカード)を利 用してオンラインで提供される。さらに、犯罪記録の請求はほとんどがオンラインで行わ れている(利用者数 120 万人)。 行政手続きのオンライン化目標に達成するため、これから年末にかけて 600 のフォーム が完全に電子化される。2007 年末までには、すべてのフォームを電子化することが目標と なっている。 新サービスとして、婚姻証明書や死亡証明書のオンライン請求が 2006 年末までに実現す 182 る予定である。 4.3 プロジェクト 第 5 回 CISI では、革新技術の動員による公的サービスの改善政策として以下が確認され た。 (1) mon.service-public.fr CISI は 、 現 行 の 行 政 窓 口 サ イ ト serivce-public.fr を パ ー ソ ナ ラ イ ズ し た サ イ ト mon.serivce-public.fr を 2007 年夏に正式にオープンする目標を確認した。利用者は、興味あ る項目を選択し、パーソナライズド・サービスに直接アクセスし、選択したチャネル(電 子メール、SMS、ポータルから直接)で個人向け情報または警告を受信する。 (2) 公的調査の電子化 CISI は、公的アンケートの枠組みにおける閲覧および個人情報の様式を多様化し、改善 することを決定した。現在の情報の使用方法(紙文書、新聞の意見広告など)も存続する が、公的調査報告書のオンライン化や、市民がインターネット経由で参加し、意見表明す ることによっても補完するものとする。 (3) 個人医療記録 個人医療記録(DMP: Dossier medical personnel)は、患者の監督の下でコンピュータ化さ れ、安全が確保された統一的な文書であり、患者の同意があれば保健従事者が患者の医療 履歴の追跡に不可欠な情報を得ることできる。 CISI は、開発のための行動計画を承認し、2007 年半ばまでの普及目標を確認した。これ に従い、2007 年半ばまでに全国で導入が進められる。すでに 2006 年 6 月から、厚生連帯 省が認可した 6 つの共同事業体によって 17 カ所で試験フェーズが実施されている (4) 運転免許証の全国システムの改定 内務省の管理する運転免許証の電子申請が 2009 年に改定される。目的は、市民がテレサ ービス経由で自分の個人データに直接参照できるようにすること、規制の発展に完全に適 応すること、最近の欧州指令に準拠して将来的に欧州運転免許を扱えるようにすることで 183 ある。 (5) 公共地理情報ポータル CISI は、地理情報サービスのインターネットサイト geportail.fr の開発計画を確認した。 このサイトは、2006 年 6 月に立ち上げられ、公共地理情報ポータルを設置した欧州初の国 となったが、その後も 2006 年いっぱいサイト拡充が続けられる。プロジェクト Géoportal は、国家、公的機関、他の公的パートナー(特に地方自治体)によって収集された地理デ ータを、一般市民が自由に利用できるようにすることを目的としている。 (6) ina.fr フランス国立視聴覚研究所(INA: Institut National de l'Audiovisuel)は 2006 年 4 月、同研 究所のサイト( www.ina.fr)上で一般市民に向けにオンラインのデジタル視聴覚アーカイ ブサービスの提供を開始した。2009 年まで継続する。 (7) デジタル資産 文化通信省では 2007 年、約 160 万点のデジタル作品およびリソースにワンクリックでア クセスできるサービスを提供するポータルサイト(culture.fr)開始する。 5. 企業の競争力強化 5.1 中小零細企業 フランス企業のほぼすべてがインターネットに接続し、従業員 6 人~200 人の企業でも、 93%がインターネットにアクセスしている。ただし、地理的な分布や、企業の規模によっ ては、若干の不均衡も存在する。例えば、ブロードバンドアクセスは、従業員 6 人~9 人 の企業では 2 分の 1 以上が利用するのに対し、従業員 50 人~200 人の企業では 90%以上で ある。 従業員 6 人~9 人の零細企業 230 万社の置かれた状況は今日、大企業の利用方法に比べ て立ち遅れている。実際零細企業の 85%は、コンピュータを導入しているが、その利用方 法は極めて基本的な段階にとどまっている。それらの零細企業のうち、インターネットで アクセスできるのは 71%しかなく、70 万社はデジタル経済から完全に切り離されている。 第 5 回 CISI では、中小零細企業のインターネット利用に関して、以下が確認された。 184 (1) 中小零細企業のインターネット利用促進 2005 年末に産業担当大臣により開始された TIC&PME (Technologies de l'Informationo et de la Communication et le Petites et Moyennes Entreprises)2010 戦略は、中小企業、零細企業の ICT 利用の促進を目的とする。具体的には、航空業界や自動車業界をモデルにしたデジタ ル・チェーンを実現するツール開発が課題とされるほか、企業間データ交換フォーマット の標準化を促進し、ツールの相互運用性を確保する。 TIC&PME は 2007 年も継続実施される。 • 新規提案募集は 500 万ユーロ(約 7 億 7,000 万円)が割り当てられ、2007 年に始まる 予定。これは、企業間関係の管理において ICT ソリューションを十分に活用し、ツー ル開発を促進することを目的としたもの。 • 2007 年も、企業における技術革新促進のため、地方自治体の活動に 500 万ユーロ(約 7 億 7,000 万円)が充当される。 (2) 零細企業のデジタル経済への参入 中小企業商業手工業自由業省は、Programme Croissance PME(中小企業の発展プログラ ム)の枠組みの中で、零細企業による ICT 利用増加の減速要因を取り除く大規模プロジェ クトを開始することを決定した。Entrepreneurs, faites le choix de l'economie numérique(起業 家は、デジタル経済を選択する)という表題のこのプロジェクトは、2006 年秋に開始され、 予算総額は 700 万ユーロ(約 11 億万円)。零細企業のための ICT 利用の無料の入門講座「デ ジタル経済へのパスポート」で、2 万枚の「パスポート」を発行する予定である。 5.2 研究開発 フランス政府は、2 年前から、競争力と成長を促進するため、新技術産業を中心として 産業全般を発展させる野心的政策に取り組んでいる。産業技術開発庁(AII: Agence de l'innovaton industrielle)は 2005 年 8 月に創設された。AII は、ハイテク産業の成長促進を目 的とし、将来の市場獲得の観点から、急激な技術変化に対応した新製品の設計および製造 を実現するプロジェクトを選定する。 AII は 2006 年 4 月、産業イノベーションのための結集プログラムの支援プロジェクト 5 件を公表した。これらプロジェクトの実現のため、770 の高度資格者の職と 230 の新たな 185 ポストが創設される予定である。 表Ⅸ-2 プロジェクト名 産業イノベーションのための結集プログラム 概要 バイオハブ(BioHub) バイオテクノロジーにより穀物から化学製品代替品を開発するプロジェ クト。仏ロケット社が主導。総額 9,800 万ユーロ(約 150 億円)を予定し、 うち 2,200 万ユーロ(約 34 億円)が補助金、2,100 万ユーロ(約 32 円)が 融資として支援される予定。開発期間は 6 年。 ホームズ(HOMES) 省エネ効果の高い建築物の開発プロジェクト。仏シュネディール電気社が 主導。総額 8,800 万ユーロ(約 140 億円)を予定し、うち 2,400 万ユーロ (約 37 億円)が補助金、1,500 万ユーロ(約 23 円)が融資として支援さ れる予定。開発期間は 5 年。 ネオバル(NeoVal) 新世代自動地下鉄車輌の開発プロジェクト。独シーメンス交通システム社 が主導。総額 6,200 万ユーロ(約 92 億円)を予定し、うち 1,100 万ユーロ (約 17 億円)が補助金、1,500 万ユーロ(約 23 億円)が融資として支援 される予定。開発期間は 5 年。 クワェロー(QUAERO) 欧州マルチメディア検索エンジンの開発プロジェクト。仏トムソン社と独 ベルテルスマン社が主導。総額 2 億 5,000 万ユーロ(約 380 億円)を予定 し、うち 6,000 万ユーロ(約 92 億円)が補助金、3,000 万ユーロ(46 億円) が融資として支援される予定。開発期間は 5 年。 TVMSL ハイブリット(衛星・地上放送)モバイルテレビの開発プロジェクト。仏 アルカテル社が主導。総額 9,800 万ユーロ(約 150 億円)を予定し、うち 1,700 万ユーロ(約 26 億円)が補助金、2,100 万ユーロ(約 32 億円)が融 資として支援される予定。開発期間は 4 年。 Source: AII, Communiqué (20 avril 2006) 第 5 回 CISI では、企業の競争力向上のために以下のプログラムが確認された。 (1) 研究および産業のための高速計算 高速計算分野へのフランス政府の投資政策を合理化するとともに、この部門におけるフ ランスの遅れを取り戻ため、CISI は、民間団体 GENC(Grand equipment national pour le calcul intensif)を創設することを決定した。GENCI は、国、大学、さらに、国立科学研究センタ ー(CNRS: Centre nationale de la recheche scientifique)や仏原子力庁(CEA: Commissariat à l'Énergie Atomique)など、高速計算が必要な主要研究機関を結びつける役割を果たす。 また、2007 年度予算から、科学コミュニティおよび業界のための大型計算機設置資金を 2.5 倍に増額する。この努力は、4 年間でドイツに追いつくことを目標にして来年も継続さ れる見通しである。 (2) ICT 技術者の育成 186 CISI は、以下を目的として、ICT に関連した職業および教育のオンライン・リスト Metiers du Web を作成することを決定した。 • 求職者に対して、1 日 24 時間情報を提供することで、ICT の技術について指導する。 • 資格なき青少年が ICT 部門の職を得られるよう促進する。 • 雇用の需給バランスを最適化する。 • 仕事での ICT の革新的利用を促進する。 CISI は、DUI に 2007 年 6 月までにリストをオンライン化するように委託した。 関連ウェブサイト Portail du gouvernmen/ premimier ministre -- accueil: http://www.premier-ministre.gouv.fr/fr/ Communication: http://www.premier-ministre.gouv.fr/thematique/communication_m134/ CISI 1 - PDF (Comité Interministériel pour la Société de I'nformation) http://www.premier-ministre.gouv.fr/IMG/pdf/CISI.pdf CISI 2 - PDF (La société de l'information en France en 2006): http://www.premier-ministre.gouv.fr/IMG/pdf/CISI_1.pdf Le développement de l’économie numérique: http://www.premier-ministre.gouv.fr/chantiers/societe_information_701/les_grands_axes_702/developpement_ec onomie_numerique_56916.html AII: http://www.aii.fr/srt/aii/home L'AII lance les premiers PMII le 25 avril 2006: http://www.aii.fr/upload/flb/96/Dossier_de_presse_1146047080747.pdf 187 Ⅹ インド 188 Ⅹ 1. インド インドにおける情報技術政策のポイント • 連邦政府では通信情報技術省、特に同省情報技術部が IT 政策を担当している。 • 2002 年~2007 年対象の第 10 次 5 カ年計画では、ソフトウェアおよび IT サービスの持 続的成長の確保と、グローバル市場におけるインドのシェア拡大などが主要目標とな っている。 • IT 産業は第 10 次計画の終了年度(2006-2007 年度末)までに 2 兆 8,200 億ルピー(約 7 兆 3,800 億円)の目標生産額を達成すると見られている。 • インターネット加入者ベースは、現在の 400 万人から 2007 年までに 3,500 万人を超え る見通しである。 • E-ガバナンスは第 10 次 5 カ年計画の重点分野の一つとなった。 • 2003 年~2007 年を対象とした国家 e-ガバナンス計画が現在、実施されている。 2. IT 政策の担当機関 首相はマンモハン・シン(Manmohan, Singh; 2004 年 5 月就任)。インドには中央政府と 州政府があり、それぞれ議会と行政組織を持っている。IT 政策の所管官庁として、連邦政 府では通信情報技術省(MCIT: Ministry of Communication and Information Technology)が、 州政府では各州情報技術省が担当している。 MCIT の前身の情報技術省(Ministry of Information Technology)は、1999 年に設立され た。その後、2001 年に通信と情報技術の融合に対応すべく、通信省と合併し、MCIT が誕 生した。このため、MCIT は、 • 情報技術部(DIT: Department of Information Technology) • 通信部(Department of Telecommunications) • 郵政部(Department of Posts) の 3 部で構成されている。同省傘下には、以下のような IT 関連機関が設置されている。 • 国立情報科学センター(NIC: National Informatics Centre):研究機関 • 高度コンピューティング開発センター(C-DAC: Centre for Development of Advanced Computing):研究機関 • 電 子 技 術 電 子 材 料 セ ン タ ー ( C-MET: Centre for Electronic Materials for Electronics 189 Technology):研究機関 • ソフトウェア・テクノロジー・パーク(STPI: Software Technology Park India):ソフト ウェア産業の振興機関 関連ウェブサイト A Gateway to Government of India Info over the web: http://indiaimage.nic.in/ Central Govt. (Ind. Depts.): http://goidirectory.nic.in/exe.htm - idep 3. 第 10 次 5 カ年計画 1998 年、当時のパジパイ(Atal Behari Vajpayee)首相は就任後、IT の振興が政府にと って 5 大優先分野の一つであることを表明し、10 年以内にインドを世界最大のソフトウェ ア開発国および輸出国の一つにすると宣言した。これに基づき、1998 年 5 月、インドの IT 政策を立案して政府に提言することを目的として、首相府に情報技術ソフトウェア開発タ スクフォース(National Task Force on Information Technology and Software Development)が 設置された。 このタスクフォースは、1998 年 7 月にソフトウェアおよび関連サービスを対象とする情 報技術アクションプラン(IT Action Plan)、1998 年 10 月にハードウェアに焦点を当てた IT アクションプラン II(IT Action Plan II)、1999 年 4 月に長期的な IT アクションプラン III を発表した。 インドの開発計画である 5 カ年計画は 1951 年から策定されている。バジパイ前首相を議 長としたインド計画評議会(Planning Commission)は、2002 年から 2007 年までを対象と する第 10 次 5 カ年計画(10th Five Year Plan)を制定した。同計画は 2002 年 12 月、国家開 発評議会により承認された。この計画では、GDP の年間成長率を 8%にすることが最重要 課題とされている。ちなみに、すでに原案が発表されている第 11 次 5 カ年計画は、2007 年~2012 年を対象とし、目標成長率は 9%である。 3.1 目標 (1) 主要目標 IT 部門に関するインド政府の無干渉主義政策は第 10 次計画においても継続し、政府は 190 IT 部門の成長を促進する触媒の役割にとどめる。主要目標は次の通り。 • ソフトウェアおよび IT サービスの持続的成長の確保と、グローバル市場におけるイン ドのシェア拡大。 • インドをハードウェア製造部門の主要国とするために基本政策枠組みを策定。 • IT 利用拡大により、効率性、透明性、応答性の高いガバナンスを促進するため、適切 な政策的介入を考案。 • 現地の要求を満足し、国内市場を拡大するため、インド諸言語でソフトウェアの開発 および利用を促進。 • IT を安価で使いやすく、日常生活において有用とするため、IT を大衆のものとするの に必要な措置を実施。 • IT における人材、スキル、研究開発の質を高めるため、必要な政策枠組みを策定。 (2) 数値目標 IT に関する第 10 次計画作業部会(Tenth Plan Working Group)の勧告や他のソースから 利用可能な情報に基づき、以下が予想されている。 • IT 産業は第 10 次計画の終了年度(2006-2007 年度末)までに 2 兆 8,200 億ルピー(約 7 兆 3,800 億円、2006 年 11 月 5 日時点での為替レート 1 ルピー=2.6183 円で換算、以下 同様)の目標生産額を達成すると見られている。内訳は、ソフトウェア部門が 2 兆 1,300 億ルピー(約 5 兆 5,700 億円)、ハードウェア部門が 6,900 億ルピー(1 兆 8,000 億円) である。 • ソフトウェアおよび IT サービスの輸出高が 2008 年末までに 870 億ドル(約 10 兆 2,000 億円)に成長する。ソフトウェアの目標輸出高が 500 億ドル(約 5 兆 8,600 億円)、ハ ードウェア目標輸出高は 100 億ドル(約 1 兆 2,000 億円)。 • 上の成長率を考慮すると、IT 輸出は 2008 年、全輸出高の 35%を占めるようになる。 現在は 14%である。ソフトウェアおよび IT サービスは 2008 年までに GDP の 7.7%を 占めるようになる見通し。 • 世界のソフトウェア市場におけるインドのシェアは第 10 次計画の最終年度末までに現 在の 2%から 6%に増加すると予想される。 • インドの IT 支出は GDP の約 0.7%。ちなみにマレーシアは 1.3%、シンガポールは 2.5% である。インドは PC の台数、インターネット・ユーザー数、ケーブル TV 加入者数、 固定電話回線数で中国よりも 5 年遅れている。 • インターネット加入者ベースは、現在の 400 万人から 2007 年までに 3,500 万人を超え る見通しである。 191 • IT 産業は 2008 年までに 700 万人の雇用を創出すると見られる。ハードウェア部門は 480 万人に雇用を提供し、ソフトウェア部門と IT 対応サービスは 220 万人にとどまる。 • 人口 1,000 人あたりの PC 普及率は、2008 年までに現在の 5.8 から 20 になる。 (3) 重点分野 情報技術部(DIT)は、IT 部門推進の中核機関の働きをし、中央および州政府と民間部 門のさまざまなイニシアチブを促進および調整する。第 10 次計画における IT 部門の主要 な重点分野は以下のとおり。 • ソフトウェア開発および輸出、IT サービス:ソフトウェア輸出の新市場開拓 • 優先分野:e-ガバナンス、インド諸言語によるソフトウェア開発(大衆向け IT)、遠隔 教育、E-コマース、サイバーセキュリティ、人材開発、である。 • 大学での IT 教育および研究の促進:対象分野は、Bluetooth(無線通信規格の一つ)技 術、E-コマース、ナノテクノロジー、生物情報科学ソリューションなど。 • IT 部門における外国投資の促進:政策の簡素化、通信 IT インフラの強化およびアップ グレードによる。 3.2 主要イニシアチブ/プロジェクト (1) ソフトウェア・テクノロジー・パーク(STPI: Software Technology Park of India) STPI は、ソフトウェア輸出業者向けサービスと中小企業向けインキュベーション・イン フラストラクチャを提供する「単一窓口」の役割を果たしている。既存の 35 の政府ソフト ウェア・テクノロジー・パークと 25 の民間 STP がインドのソフトウェア輸出高に大きく 貢献したことから、政府は、民間部門の新しい STP の設置を促進している。 2005 年~2006 年にはジャム、ジョードプール、シリグリにおける新センター建設を委託 した。これら 4 つのセンターを追加した結果、2005 年 12 月末現在、合計 6,129 ユニット が稼動し、4,088 ユニットが輸出を行っている。STPI のメンバー・ユニットは、2004 年~ 2005 年に 7,401 億 9,000 万ルピー(約 1 兆 9,380 億円)を超えるソフトウェアを輸出した。 このソフトウェア輸出額は、2005 年~2006 年中に約 9,500 億ルピー(約 2 兆 5,000 億円) になると推定されている。 (2) メディア・ラボ・アジア DIT は、マサチューセッツ工科大学の協力を得て、メディア・ラボ・アジアを実施して 192 きた。プロジェクトの目的は、最新の ICT 開発を通じてデジタル・デバイドを是正し、市 民、特に農村部の利益のためにこれらの技術を配備し、ビジネス機会を提供することによ って、彼らに力を与えることである。 (3) コミュニティ情報センター(CIC: Community Information Centre) 政府は、北東およびシッキム地方の 487 ブロックに CIC を推定約 24 億 2,000 万ルピー(約 63 億 3,600 万円)で設置し、ブロックレベルで接続を提供する野心的プロジェクトを採択 した。このプロジェクトは、地域における IT インフラストラクチャの開発と、保健医療、 遠隔教育、人材開発、e-ガバナンス、データ伝送、文書化、国難管理、災害管理などにお ける IT 利用促進を目指す。 現在は、さらにジャムおよびカシミール地方の 112 の CIC が市民中心サービスを提供中。 同地方では 2006 年 7 月までに新たに 23 の CIC が開設される。また、アンダマンおよびニ コバル諸島(41 カ所)、ラクシャドウィープ諸島(30 カ所)の公立学校で、ICT を利用し た教育を提供するために CIC が建設中である。 (4) コンピュータとのインド諸語インターフェース(大衆向け IT) 英語話者は、IT サービスに容易にアクセスが可能だが、第 10 次計画での真の課題は、 さまざまなインド言語によるコンピュータ・インタフェース確立のためのソフトウェア作 成にある、とされている。この試みでは、人々が現地語でコンピュータを使用できるよう にするため、適切なソフトウェアと技術を開発する。 また、DIT では、一般市民にさまざまなインド言語でツールやフォントを提供するイニ シアチブを採択している。 (5) E-コマース E-コマースは、B2B のサプライ・チェーン・マネジメントと、B2C の顧客関係管理で効 率性を実現している。第 9 次計画で、E-コマース推進のために取られたさまざまな技術開 発(情報通信インフラの強化、IT セキュリティなど)と規制イニシアチブ(法的・規制枠 組みなど)が第 10 次計画でも実施される。 (6) IT セキュリティ 第 10 次計画でインド企業、政府機関などは、IT セキュリティの研修を受講する必要が 193 あり、専門機関は、セキュリティ問題への対応するため新たな開発を行う必要がある。ま た、暗号化の分野でも研究が求められている。 (7) 通信インフラの整備 通信業界は現在、総合的開発および成長の主たる原動力として高く評価されている。約 1 億 2,500 万人の電話加入者(2005 年 12 月末現在)は、アジアで 2 番目に多い。 通信業界における民間部門の割合は 48%以上に増加し、携帯電話の割合は 55%まで増加 した。2007 年末までに、2,500 万の電話回線、すなわち、電話密度(teledensity; 人口 100 人あたりの通信回線数)にして約 22%を達成する目標が設定されている。 (8) IT 法の改正 2000 年 IT 法(The Information Technology Act 2000)は、国内の IT 産業の基本的規制枠 組みを提供する。2000 年通信コンバージェンス法(CCB: Communication Convergence Bill) は、議会に上程され、通信、IT、メディアなど、各種サービスの収束実現のため、施行、 運用が待たれている。しかし、IT 部門の最適成長を確保するには、複数の関連する問題を 効果的に分類する必要がある。 IT 法を見直すため、情報技術法の専門家委員会が設置され、2000 年 IT 法以降の国内お よび国際的発展を踏まえて適切な改正を提案する。この委員会勧告に従って、IT 法の改正 案がまもなく議会に提出される予定である。 (9) 高等中学および高等教育機関プログラム 高等中学への接続提供と、高等教育機関の IT インフラ改善の 2 つのプログラムが試験的 に実施されている。高等中学プログラムの対象となる 140 の学校と 7 つの研修センターは、 インターネットおよびイントラネット接続、教育コンテンツをホスティングしたポータル へのアクセスが実現した。 (10) 電子材料の戦略 電子材料の発展は、IT および通信、原子力、宇宙、およびその他の分野において、新し いフロンティアを切り拓いた。新しい先端材料も、電子部品・デバイスの微細化において 重要な役割を果たす。 194 関連ウェブサイト Planning Commission: http://planningcommission.nic.in/ National Plans: http://planningcommission.nic.in/plans/planrel/plansf.htm 10th Five Year Plan (2002-2007): http://planningcommission.nic.in/plans/planrel/fiveyr/welcome.html Mid-Term Appraisal of the Tenth Five Year Plan (2002-2007): http://planningcommission.nic.in/midterm/midtermapp.html 4. 通信情報技術省の IT 政策 以下では、通信情報技術省 DIT 発行の「Information Technology Annual Report 2005-2006」 に基づき、同省の最新の IT 政策と産業動向を概観している。 4.1 IT-ITES 産業の現況 インドでは、IT および関連ビジネスサービスを IT-ITES(IT-enabled business services)と 呼んでいる。これを細目に分類すると、ソフトウェアおよび IT サービス、ハードウェア、 IT-BPO(IT-Business Process Outsourcing)、エンジニアリングおよび R&D サービスの 4 項 目がある。 (1) 売上高 インドの IT-ITES は目覚しい成長を続けており、2005-06 年度の年間売上高は前年度比 28%増で 360 億ドル(約 4 兆 2,000 億円)を超える見通しである。IT サービスおよびソフ トウェアの売上高は、インドの IT-ITES 売上高において最大のシェアを占め、その割合は 2004-05 年度、47%だった。これに、ハードウェア(21%)、ITES-BPO(18%)、エンジニ アリングおよび R&D サービス(14%)が続いている。 (2) 輸出高 ソフトウェアおよび IT サービスの輸出高は総売上高の 64%を占める。技能を有する人 材、品質、サービス、コスト優位性、環境などが、オフショアサービスの需要を喚起し、 インドの輸出主導経済を加速している。インドの IT-ITES 輸出高は 2003-04 年度の 133 億 ドル(約 1 兆 5,600 億円)から 2004-05 年度は 182 億ドル(約 2 兆 1,400 億円)へ増加して おり、2005-06 年度は 239 億ドル(約 2 兆 8,000 億円)に達すると推計されている。 195 エンジニアリングおよびR&Dサービス ハードウェア IT ES-BPO ソフトウェアおよびIT サービス 20 17.5 18 16 13.5 10億ドル 14 12 10.4 10 8 5.9 6 4 5.9 3.4 2.9 6.9 7.2 5.2 3.9 4.8 2 0 2003-04 年度 2004-05 年度 2005-06 年度( 推計) Source: IDC, NASSCOM 図Ⅹ-1 4.2 (単位: 10 億ドル) インドの IT-ITES の売上高 E-ガバナンス E-ガバナンスは、効率性と透明性を改善する中央・州政府機関や公益機関によって大き く促進される。第 10 次 5 カ年計画において、この分野のイニシアチブは、必要な枠組みを 設置し、必要なインフラストラクチャを建設する。主要スキームには、多機能アプリケー ション・コミュニティ・センター(Multi-functional Application Community Centre)、国立 SMART 政府研究所(NISG: National Institute of SMART Government)の支援、ID/SMART カ ードを利用した市民データベースの開発、ローカル言語ツールおよびコンテンツの開発、 などがある。 現在は、e-ガバナンス・インフラストラクチャの建設、ミッション・モード・プロジェ クト(MMP: Mission Mode Project)の実施、成功した e-ガバナンス・プロジェクトの評価 と普及、ソフトウェア・アプリケーション/ソリューションの開発、地理情報システム/ 196 衛星利用測位システム(GIS/GPS)、標準化、コンテンツ開発、など、さまざまな IT 活動 が実施されている。 インド政府は現在、2003 年~2007 年を対象とした国家 E-ガバナンス計画(NEGP: National e-Governance Plan)を実施している。中央政府、州、統合サービスの各レベルで、MMP を 実施することを目指す。目的は、市民および企業を中心としたガバナンス環境を創設し、 適切なガバナンスと制度的メカニズムを策定し、中核インフラを構築し、主要政策を策定 し、民間部門の技術および金融リソースを国家の e-ガバナンス活動に振り向けることであ る。 MMP は、(a)中央政府(b)州政府(c)統合サービス(d)サポート・コンポーネントの 4 つのカ テゴリに分類されている。 表Ⅹ-1 ミッション・モード・プロジェクト (a) 中央政府カテゴリ プロジェクト名 所得税 担当省庁・部門 内 容 財 務 省 / 中 央 直 光ファイバー専用回線、バックアップ用 ISDN 回線、僻地向け 接税委員会 VSAT 接続の異種混合ネットワークで、インド全国の 510 都市、 745 の税務署と、約 1 万 2000 人のオンラインユーザーをカバーす る。 パスポートビザお 外務省/内務省 よび移民 MCA21 企業問題省 企業問題省の近代化・電算化プログラム。完全ペーパーレスで企 業の提出書類を電子的に処理する。 保険 銀行部 全国市民データベ 内 務 省 / 登 録 部 全国国民登録(National Population Register)、全国市民登録(National ース (RGI) Register of Indian Citizens)、 全 国 居 住 登 録 (National Register of Residency; 非市民向け)の作成準備が目標。国民 ID 番号(National Identity Number)、多目 的国民 ID カード(Multi-purpose National Identity Card; 市 民 向 け ) 、 多 目 的 居 住 カ ー ド (Multi-purpose Residency Card; 非市民向け)が配布される。 物品税 年金 バンキング e-オフィス 歳入部/物品税 関税部 年金福祉部/歳 出部 銀行部 行政改革公務 部 (b)州政府カテゴリ 197 プロジェクト名 土地登記 担当省庁・部門 内 容 地方開発省 土地登記および関連情報のオンデマンド配信、オンライン変更申 請、苦情申し立ておよび追跡、区画位置詳細および所有者情報。 道路交通 輸 送 道 路 ハ イ 運転免許および車両登録書の電算化、州および全国の道路交通長 ウェイ省 官を結ぶデータベースの開発 資産登録 土 地 資 源 部 / 情 財産所有詳細情報の電子記録 報技術部 農業協力部 農業マーケティング関連分野出での効果的かつ迅速な情報交換 のため、全国規模の通信ネットワークを構築。農業コミュニティ への市場情報提供とマーケティング機会の拡大。マーケティング 監査部、国立情報科学センター、州政府の共同事業。 農業 財務 自治体 村会(Gram Panchayat) 税 警察 雇用 財務省 都市開発貧困 削減省 地方議会省 財務省 内務省 労働雇用省 (c)統合サービス・カテゴリ プロジェクト名 担当省庁・部門 内 容 EDI(E-Commerce) 商務省/商務部 E-Biz 産 業 政 策 推 進 中央および地方政府 G2B サービスの単一窓口を設置して e-ビ 部/情報技術部 ジネスを促進する。書式や手続きを見直し、 情報技術部は、2007 年までに全国 10 万カ所に共同サービスセ ンターを設置し、それらを多くの政府サービスのフロントエン ドとして、また、農村部の市民がインターネットに接続する手 段として活用することを計画している。 インド政府ポータ 情報技術部、行 インド政府ポータルは、市民サービスの提供のため、政府部門 ル 政改革公務部 (行政府、司法府、立法府、憲法機関)の情報にアクセスする 統一ポータル、また、e-ガバナンス・イニシアチブを実施する 主要ファシリテータになるよう構想された。現在、最初のバー ジョンが運用されており、http://india.gov.in で参照することが できる。 サービス提供ゲー 情報技術部 サービス・アクセス・プロバイダと、各省庁のバックエンド・ トウェイ アプリケーション間の通信リンクを実現し、共同サービスを促 進する。国家 SMART 政府研究所は、サービス提供ゲートウェ イのための、試験プロジェクトを開始した。 共同サービスセン 情報技術部 ター E-裁判所 法務部、内務省 198 E-調達 商務部 e-調達ソリューションは、国立情報科学センターで導入されて おり、今後、他の政府部門にも段階的に拡張する計画だ。この ソリューションは、エンドユーザーの要求で始まるビジネスプ ロセスにも対応し、入札から、契約、発注までを処理する。こ の中には、さまざまな段階でのワークフロー、ビジネスユーザ ーを促進するサプライヤ向け機能、複数支払いゲートウェイと の統合、デジタル署名および暗号化、セキュア監査提供などが 含まれる。 (d)サポート・コンポーネント・カテゴリ プロジェクト名 担当省庁・部門 内 容 中核政策 情報技術部 中核インフラスト 情報技術部 ラクチャ サポート・インフ 情報技術部 ラストラクチャ 技術支援 情報技術部 R&D 情報技術部 人材開発と研修 情 報 技 術 部 / 行 政改革公務部 認知度と評価 情 報 技 術 部 / 行 E-アセスメントでは、さまざまな州にまたがって実施する e-ガ 政改革公務部 バナンス・プロジェクトを一覧化し、効率性と持続可能性の観 点からプロジェクトの要約/詳細評価を実施する計画である。 E-Governance Assessment Framework 2.0 が策定され、情報技術 部 Web サイトでパブリックドメインとして公開される。総合ガ イダンスを提供し、e-アセスメント・プログラムを運営するた めにワーキングループが設置されている。39 の e-ガバナンス・ プロ ジェクト の要約/ 評価を実 施するた めに作業 指示書が 発 行されている。 組織構造 情報技術部/行 政改革公務部 Source: "Information Technology Annual Report 2005-2006"; NASSCOM, "Strategic Review 2006" 4.3 研究開発 (1) 地理情報システムおよびリモートセンシングサービス 国立情報科学センター(NIC: National Informatics Centre)は、NICNET 上に空間データ・ インフラストラクチャを開発した。これは、さまざまなテーマ・レイヤーをもつ全国レベ ルの空間データベース開発と、さまざまなユーザー・グループに向けた空間データサービ スおよびアプリケーション提供を促進する。これまでに、行政区境界データベースが作成 され、全国的枠組みとデータ開発が地方の村落まで行き渡っている。 199 (2) 技術開発評議会(TDC: Technology Development Council) TDC の目的は、IT の研究開発を促進し、フリーおよびオープンソース・ソフトウェアを 促進し、IT のアプリケーションを促進することである。これにより、産業部門における製 品およびプロセス開発の効率的でコスト効果の高いソリューションを促進する。TDC の下 で検討・支援されるその他の分野には、車両スキャナー(車両認識)、認可および検査シス テム、運輸アプリケーション用マルチアプリケーション・スマートカード、支払いシステ ム用スマートカード、AyuSoft(病気の診断と治療、ダイエットとライフスタイル向上のた めの意思決定支援システム)などがある。 (3) 高度コンピューティング開発センター(C-DAC: Centre for Development of Advance Computing) C-DAC は、技術能力強化に取り組むインドにおいて、情報通信エレクトロニクス技術の 重要な研究開発組織となっている。C-DAC は、DIT と協力しながら、インドの IT 政策を 実施する。今日、C-DAC は全国 10 カ所に、14 の研究所を持ち、約 2,100 人が従事してい る。 (4) ナノエレクトロニクス 政府はすでにバンガロールのインド科学大学院大学(IISc: Indian Institute of Science)と ボンベイのインド工科大学(IIT: Indian Institute of Technology)にナノエレクトロニクス・ センターを設立する共同プロジェクトを承認している。5 年間で総額 9 億 9,800 万ルピー (約 26 億 1,300 万円)を投資する見通し。 関連ウェブサイト Department of Information Technology: http://www.mit.gov.in/ Information Technology Annual Report 2005-2006: http://www.mit.gov.in/annualreport2005-06.pdf 200 ⅩⅠ ベトナム 201 ⅩⅠ 1. • ベトナム ベトナムにおける情報技術政策のポイント ICT は郵便電気通信省、研究開発は科学技術省、人材開発や e-ラーニングは教育訓練 省が担当する。 • 2001 年に発表された「IT 利用と開発のための 2005 年計画」は、2005 年までにベトナ ムの情報化を世界標準に合わせることを目標にしている。 • 2005 年 10 月に発表された「2010 年に向けた IT 開発戦略」では、ASEAN 諸国より高 水準の e-国家、e-政府、e-企業、e-取引、e-商業の形成を目指す。2005 年~2006 年にか けて、ベトナムではインターネットが最も急速な成長率を示し、インターネット加入 者は 80%増加した。 • 2005 年 9 月、「2010 年に向けた電子商取引開発マスタープラン」が発表された。2005 年~2006 年には、電子商取引の発展にとって重要な電子取引法、商取引法、民法など が施行されている。 • 2006 年 6 月に採択された IT 法では、IT 部門への投資、電子商取引、ソフトウェア開 発、ウェブサイトの利用、インターネット利用、知的財産権などについて定めている。 2. IT 政策の担当機関 ICT は郵便電気通信省、研究開発は科学技術省、人材開発や e-ラーニングは教育訓練省 が担当する。 2010 年 に向 けた IT 開発 戦略 は、 郵 便電 気通 信省 の情 報技 術産 業部 ( Department of Information Technology Industry)が策定した。郵便電気通信省は、郵便、通信、情報技術、 エレクトロニクス、インターネット、無線技術、無線周波数管理、情報インフラ、公共サ ービス管理の施策策定、規制を担当する。 202 郵便電気通信大臣(Minister of Posts and Telematics) 郵便電気通信副大臣(Vice Minister of Posts and Telematics) 諮問委員会(Consultative board) • 郵便部(Department of Posts) • 通信部(Department of Telecommunications) • 情報技術産業部(Department of Information Technology Industry) • 科学技術部(Department of Science & Technology) • 計画財務部(Department of Planning & Finance) • 国際協力部(Department of International Cooperation) • 法務部(Department of Legal Affair) • 総務人事部(Department of Organisation and Human Resources) • 監査部(Department of Inspection) • 事務局(Ministry Office) 機能部門(Functional unit) • 無線周波数部(Radio Frequency Department) • 郵便電気通信品質管理局(Posts and Telematics Quality Control Directorate) • IT アプリケーション推進局(Directorate for IT Application Promotion) 傘下団体(Member unit) • 国家郵便電気通信戦略研究所(National Institute of Posts and Telematics Strategy) • ベトナム・インターネット・ネットワーク情報センター(VNNIC: Vietnam Internet Network Information Center) • 郵便電気通信情報センター(Posts and Telematics Information Center) • 郵便電気通信ジャーナル(Posts and Telecommunications Journal) • ベトナム郵便電気通信新聞(Vietnam Posts and Telematics Newspaper) • 郵便電気通信出版局(Posts and Telematics Publishing House) • ベトナム公益通信サービス基金(Vietnam Public-utility Telecommunication service Fund) • ベ ト ナ ム ・ コ ン ピ ュ ー タ 緊 急 時 対 応 チ ー ム (VNCERT: Viet Nam Computer Emergency Response Teams) 公社(Enterprise) ベトナム・マルチメディア公社(VTC: Vietnam Multimedia Corporation) Source: 郵便電気通信省のホームページから作成 図ⅩⅠ-1 郵便電気通信省の組織 関連ウェブサイト Ministry of Post and Telematics: http://www.mpt.gov.vn/details_e.asp?Object=271032875&news_ID=4539827 3. 2010 年に向けた ICT 開発戦略 ベトナム政府は、IT 産業がベトナムの経済発展にとって戦略的な役割を果たすとの理解 に立ち、1995 年 4 月,「IT2000 計画(ベトナム情報化基本計画)」を発表した。 203 「IT2000 計画」に続く国家 IT 計画としては、2001 年に科学技術環境省(当時)により IT 政策の草案が提出され、同年首相が発表した「IT 利用と開発のための 2005 年計画(The Master Plan for Information Technology Use and Development in Vietnam by 2005)」がある。こ の計画は、2005 年までにベトナムの情報化を世界標準に合わせることを目標にしている。 ベトナム政府は、ICT が優先化や開発支援を必要としている主要経済産業であり、経済 発展に大きく貢献すると判断し、2010 年、2015 年、2020 年を区切りとして ICT 開発の方 向性を定める政策を策定した。2005 年に首相は、2005 年 6 月 10 日付けで Decision No. 246/2005/QD-TTg を発行し、 「2010 年に向けた IT 開発戦略(Strategy for development of ICT in Vietnam and the vision to 2010)」を承認、同戦略は 2005 年 10 月に発表された。 3.1 開発目標 (1) 2010 年までの開発目標 • 主要経済分野に幅広く ICT を適用する。e-市民、e-政府、e-企業、e-取引、e-商業を計 画し、ASEAN 諸国の平均以上の水準まで発展させる。 • ICT 産業が先進的主要産業となり、2010 年までに年間成長率 20~25%、総売上高 60~ 70 億ドル(約 7,300 億円~約 8,500 億円、2007 年 1 月 31 日付け為替レート 1 ドル=121.85 円で換算、以下同様)とする。 • 大容量、高速、高品質、低価格の情報通信インフラが全国をカバーする。2010 年まで に国家の電話普及率が人口 100 人あたり 32~42 台となる。インターネット加入率は人 口 100 人あたり 8~12 人(うち 30%はブロードバンド加入者)、PC 普及率は人口 100 人あたり 10 台を超える。 • 主要 ICT 施設の研修が ASEAN 諸国の質、水準に達する。政府高官、従業員、公務員、 全教育レベルの教師、医師、看護婦、大学生、専門学校生、職業訓練生、高校生(50%)、 中学生(30%以上)が ICT を使用し、インターネットを活用することができる。 (2) 2015 年に向けた開発の方向性 • あらゆる領域で幅広く ICT を活用し、すべての部門で情報と知識を効率的に活用する。 e-市民、e-政府、e-企業、e-取引、e-商業を ASEAN 諸国の平均以上の水準に高める。情 報社会を構築する。 • ICT 産業が平均年間成長率 20%、総売上高約 150 億ドル(約 1 兆 8,300 億円)を達成す る。 204 • 情報通信インフラが力強く成長し、社会全体の情報交換需要を満足する。電話普及率 が人口 100 人あたり 50 台を超え、うち固定電話が 20 台以上、携帯電話が 30 台以上に なる。 • 大学での ICT 教育が ASEAN 諸国の品質、水準に達する。ICT 専攻の大学卒業生の 80% が国際労働市場に参加する十分な専門的資格と外国語の知識を獲得する。 (3) 2020 年に向けたビジョン ICT をコアとして、知識社会および情報社会の発展から見て先進国となるため、社会経 済の再構築を急速に進め、国家の工業化、近代化の実現に大きく寄与する。 3.2 戦略内容 (1) ICT の開発と応用 • e-市民の形成と発展:市、町、村の若年層の 80%が ICT を使用し、インターネットを 利用できるようにする。ICT を農民の生活に利用し、農村部と都市部の数値的格差を 狭める。人々がラジオ、テレビ、インターネット、Web サイトを通じて情報知識への 高速アクセスが可能になる。電子管理システムを全国の 80%以上の病院に電子管理シ ステムを普及させる。医療従事者の 70%以上に情報工学を普及させる。 • e-政府の形成と発展:中央レベルから省庁、省庁レベルの機関、政府付属機関、省 (province)、中央直轄市への円滑で迅速な支持・管理・情報交換システムを確保する。 100%の政府機関がそれぞれの活動、法律、政策、規制、行政手続、作業プロセス、投 資プロジェクト、入札、調達について全情報を掲載した Web サイトを設置する。金融、 銀行業、通関情報システムがアジアの先進国と同等の水準に達する。ハノイおよびホ ーチミン市でアジア地域の平均的水準以上の e-政府を形成する、など。 • e-企業の形成と発展:通信、銀行、通関、航空、観光、徴税などの高度に国際統合さ れた経済サービス部門に積極的に ICT を利用し、各部門の管理能力とサービス品質が 地域の先進レベルに達するようにする。企業の 50%~70%が ICT を管理活動、ブラン ド広告、マーケティング、市場拡大、監視、製造プロセスの自動化、設計、検査、製 品品質評価に利用する。ハノイおよびホーチミン市の企業の 50%以上が統計報告、税 申告、登録、企業登録証を電子ネットワークを通じて取得する。企業の 40%以上が申 告、登録、通関許可証の取得を電子ネットワーク経由で行う。 • e-取引と e-商業の発展:e-取引、e-商業の環境整備と開発促進。付加価値ネットワーク、 サプライ・チェーン管理のシステムなどを整備する。全経済的取引の 25~30%が e- 205 取引システムを通じて実行される。e-取引の金額が 2002 年と比べて 10 倍に増加する。 (2) ICT 産業の発展 通信ネットワークを拡張および開発し、ソフトウェア産業、情報コンテンツ産業を発展 させる。ソフトウェア産業と情報コンテンツ産業の年平均成長率 40%を維持し、2010 年ま でに総売上高約 12 億ドル(約 1,460 億円)を達成する。電子機器、コンピュータ、通信機 器の組み立て、部品製造、新機器の設計および製造の中心国となる。コンピュータ・ハー ドウェア産業は年平均 20%の割合で成長し、2010 年までに約 30 億ドル(約 3,660 億円) の総売上高を達成する。通信機器製造産業は年平均成長率 22%、総売上高 7 億ドル(約 850 億円)を達成する。電子産業(民生および産業用)は、平均年間成長率 22%、総売上高 20 億ドル(約 2,400 億円)を達成する。ベトナム製の PC、携帯電話、ソフトウェアが市場シ ェアを独占し、10 億ドル(約 1,200 億円)以上の輸出高を達成する。 (3) 情報通信インフラの発展 社会全体の情報交換需要を満足するため、情報通信インフラを構築する。ベトナムの通 信インターネット・インフラが最新技術を装備し、急速に発展し、ユーザーに広範で高品 質のサービスを提供し、ASEAN+3 地域の平均と同等またはそれ以上の安全性、機密性、 価格を実現する。すべての経済部門が通信インターネットサービスの提供に参加するため の条件を整備する。新興企業を支援し、それらの企業が 2010 年までに通信およびインター ネット市場のシェア 40~50%を獲得できるようにする。 すべての省庁、部門、国家行政機関、省(province)および地域行政機関がブロードバ ンド・インターネットに接続する。全国のコミューンに 100%電話が敷設される。コミュ ーンの郵便文化施設、コミュニティ教育センターが 100%インターネットに接続される。 全国の地域および多数のコミューンに 100%、ASEAN+3 地域の平均以下の価格でブロード バンド・サービスが提供される。研究機関、大学、短大、専門学校、高校でインターネッ トへの高速アクセスが可能になる。中学校、病院の 90%以上がインターネットに接続され る。 (4) ICT 人材の育成 主要大学の ICT 研修が、知識、スキル、外国語の点で ASEAN 諸国の先進的な水準、質 に達する。主要大学の ICT 専攻卒業生の 70%が国際労働市場に参加できる十分な資格と外 国の知識を持つ。大学、短大、専門学校卒業生の 100%が仕事でコンピュータとインター 206 ネットを使用できる。2010 年までに、10 万人以上が ICT で短大卒業、大学卒業、それ以 上の学位を取得し、うち 20%がアジアまたは国際的水準に達する。大学、短大、高校の 100% が独自の Web サイトを持つ。大学、短大、専門学校の ICT 担当講師の質と量を引き上げ、 講師 1 人あたりの受け持ち人数を 15 人以下にする。教師訓練大学・短大が全国の学校に十 分な数の情報工学担当講師を共有する。政府高官、公務員、全教育レベルの教師、医師、 看護婦、大学生、短大生、専門学校、職業訓練校、高校の学生の大部分、中学校の生徒の 50%、人口の一部が、希望すれば ICT の応用および、インターネットの分野で研修を受け ることができるようになる。政府省庁、部門、省(province)、都市の大部分で、指導者が 水から情報を管理し、ICT 管理研修コースにも出席する。 関連ウェブサイト Hoh Chi Min City Investment and Trade Promotion Center: http://www.itpc.hochiminhcity.gov.vn/en/business_news 4. 2005 年 ICT 現況 2005 年は、 「IT 利用と開発のための 2005 年計画」 (2001 年~2005 年)の完了から「2010 年に向けた IT 開発戦略」 (2006 年~2010 年)の開始へ移行する重要な時期であった。以下 では、電話普及率、インターネット加入・利用率、ICT 市場について現況を示し、2005 年 計画の数値目標の達成状況を評価する。 (1) 電話普及率 ベトナムでは固定電話と携帯電話を合わせると、2005 年に人口 100 人あたり 29.42 台に なった。固定電話台数の平均成長率 44.1%(2000 年~2005 年)は、アジアの 11.9%、世界 の 5.3%と比較して高水準である。一方、携帯電話の平均年間成長率 62.7%(2000 年~2005 年)は、中国の 35.8%やマレーシアの 30.7%などよりも高い。 表ⅩⅠ-1 電話普及率 ベトナム(2005 年)アジア(2005 年)世界(2005 年) 人口 100 人あたりの電話台数 29.42 37.39 人口 100 人あたりの携帯電話台数 10.68 22.24 31.9 人口 100 人あたりの固定電話台数 18.73 15.76 19.84 44.10% 11.90% 5.30% 固定電話台数の平均伸び率(2000 年~2005 年) Source: ITU(2006) 207 49.45 (2) インターネット加入者および利用者 2005 年~2006 年にかけて、ベトナムではインターネットが最も急速な成長率を示し、イ ンターネット加入者は 80%増加した。 表ⅩⅠ-2 インターネット加入者および利用者(2003 年~2006 年) (単位:人) 年 月 加入者 利用者 2003 年 5 月 450,000 2004 年 5 月 1,124,000 1,709,000 4,311,000 2005 年 5 月 1,899,000 7,185,000 2006 年 5 月 3,541,000 12,912,000 Source: Vietnam Internet Network Information Center (3) ICT 市場 ベトナムの ICT 市場は 2005 年、8 億 2,800 万ドル(約 1,010 億円)に達した。対前年度 比 20.8%増は、アジア太平洋地域の平均成長率の 2 倍である。ハードウェアの成長率は 15.6%、ソフトウェアの成長率は 41.4%だった。 ICT 市場の成長率そのものは前年度ほど高くないが、世界の ICT 支出の伸び率 7%に比 べれば、目覚しい成長を続けていると言える。また 2005 年計画におけるソフトウェア産業 の目標成長率 30~35%も達成している。 表ⅩⅠ-3 ベトナムの ICT 市場(2000 年~2005 年) 年 ソフトウェア/ サービス ハードウェア 2000 年 50 250 300 -- 2001 年 60 280 340 13.3 2002 年 75 325 400 17.6 2003 年 105 410 515 28.8 2004 年 140 545 685 33 2005 年 198 630 828 20.9 Source: Hochiminh Computer Association (4) 人材育成 208 合計(100 万ド ル) 成長率(%) 過去 5 年間に多数の IT 研修促進措置が実施されてきた。教育訓練省は、主要 IT 施設で 英語の研修コースを実施した。首相は、「2010 年に向けた IT 人材開発計画(Plan of IT manpower development by year 2010)」を承認する決定(Decision No. 131/204/QD-TTg)に署 名した。しかし、IT 人材は依然として量、質ともに不十分で、特にプロジェクト管理、ソ リューション、マーケティング、品質管理で不足している。一方、ソフトウェア輸出の増 加が IT 人材の需要増にもつながっている。 ベトナムには現在、以下の 8 箇所のソフトウェア・パークがある。 • サイゴン・ソフトウェア・パーク(Saigon Software Park) • クアンチュン・ソフトウェア・シティ(Quang Trung Software City) • イータウン(E-Town) • ダナン・ソフトウェア・センター(Danang Software Centre) • カントー・ソフトウェア・センター(Can Tho Software Centre) • フエ・ソフトウェア・センター(Hue Software Centre) • ハイフォン・ソフトウェア・センター(Haiphong Software Centre) • ユニソフト(Unisoft; National University of Ho Chi Minh City) これらのセンターに位置するソフトウェア会社は全国の約 6 分の 1 を占め、3,700 人を 超える IT 人材を雇用し、ソフトウェア産業全体の売上高に貢献している。 関連ウェブサイト HCA (Hoh-Chi-Min Computer Association): http://www.hca.org.vn/?set_language=en 5. 2010 年に向けた電子商取引開発マスタープラン 首相は 2005 年 9 月、 「 2010 年に向けた電子商取引開発マスタープラン(The Master plan on e-commerce development in the 2006-2010 period)」を承認する決定(No.222/2005/QD-TTg) に署名した。この決定に従って、電子商取引の発展が商業の発展に貢献し、企業の競争力 を高めるとの見地から、ベトナム政府は、法環境の整備、政策や枠組みの策定を行うとと もに、電子商取引活動に支援する公共サービスを提供する。 2005 年~2006 年には、マスタープラン以外にも、電子商取引の発展にとって重要な電子 取引法(Electronic Transaction Law)、商取引法(Trade Law)、民法(Civil Law)などの電 209 子商取引関連法が施行されている。これらの法律は、知的財産権、通関、入札など、電子 商取引活動に必要な法的枠組みを形成するものである。 マスタープランは、2010 年までに達成すべき電子商取引の目標として以下の 4 項目を提 案している。 • 大企業の約 60%が B2B 電子商取引を行う。 • 中小企業の約 80%が電子商取引を採用し、B2B または B2C 電子商取引を実施する。 • 世帯の約 10%が B2B または C2C 電子商取引を行う。 • 政府入札が政府機関の Web サイトで公表され、政府調達では電子商取引トランザクシ ョンが利用される。 これらの目標を達成するため、マスタープランでは以下の 6 件の施策を提案した。 (a) 電子商取引の研修、宣伝、普及 • 教育機関における電子商取引の定期研修、公務員および民間企業人向けの高度な電子 商取引研修 • 市民向け電子商取引の宣伝および普及 (b) 法制度の改善 • 電子商取引の全側面を規制する法律文書の草案作成と発行 • 法律文書の見直し、補足、改善 (c) 政府機関に電子商取引支援サービスの提供、政府購入への電子商取引利用を義務付け • 全政府機関がインターネット上でサービスを提供 • 政府購入への入札を改善 (d) 海外への技術移転促進をベースにした電子商取引支援技術の開発 • 電子商取引技術開発への投資促進 • 銀行サービス、特に電子支払いの新技術導入促進 • 一部主要産業の電子商取引ネットワーク構築 (e) 電子商取引関連の法規制実施 • 電子商取引の法規制を実施する効果的メカニズムを構築 • 電子商取引統計のための迅速な行動 (f) 電子商取引に関する国際協力 • 地域および国際的経済機関との多国間協力の優先 210 上記の政策は 2006 年~2010 年に 6 件のプログラムを通じて実施される。各プログラム には複数のプロジェクトが含まれる。 (a) 電子商取引の普及、宣伝、研修プログラム:4 プロジェクト (b) 電子商取引の法制度整備改善プロジェクト:3 プロジェクト (c) 電子商取引支援サービスの提供および政府購入への電子商取引の応用のためのプログ ラム:5 プロジェクト (d) 電子商取引技術開発プログラム:3 プロジェクト (e) 電子商取引法規制実施プログラム:3 プロジェクト (f) 電子商取引国際協力プログラム:2 プロジェクト 各プロジェクトは、1 つの省が主導し、他の省庁または自治体と協力の下で実施される。 関連ウェブサイト Ministry of Trade: http://www.mot.gov.vn/moten/render.userLayoutRootNode.uP Report on eCommerce development of Vietnam 2005: http://www.mot.gov.vn/moten/tag.idempotent.render.userLayoutRootNode.target.n169.uP 6. IT 法 2006 年 6 月、ベトナム国会は IT 法(Low on Information Technology)を採択した。IT 法 は、IT 部門への投資、電子商取引、ソフトウェア開発、Web サイトの利用、インターネッ ト利用、知的財産権、その他急成長中のハイテク産業の諸問題に関連した数多くの条項を 含む。以下では、IT 法のハイライトを紹介する。 (1) IT 法の適用範囲 IT 法は、ベトナムにおいてインターネット上でサービスを提供する外国企業にも適用さ れると解釈される。第 2 条によると、IT 法は、ベトナム国内の組織および個人、さらに、 ベトナムで情報技術の利用および開発活動に参加する外国の組織および個人にも適用可能 である。今後制定される IT 法の実施命令(implementing decree)は、IT 法の適用範囲を厳 密に定める可能性が高い。 (2) 政府の IT 振興政策 ベトナムの IT 法は過去数年間に急速に成長し、同国内において多数のソフトウェア・ア 211 ウトソーシング・プロジェクトが実施された。IT 法は、こうした動向に対応して政府が IT 部門を優先することを確認している。この点に関して、第 5 条は、政府が以下の政策を実 施する、としている。 • ベトナムの社会経済発展戦略、工業化と近代化において情報技術の応用と発展を優先 する。 • 対外的問題(外国企業との提携)、国土安全、防衛のニーズを満足する IT 利用および 開発活動に従事する組織および個人の条件を整備する。国内のニーズおよび輸出ニー ズを満足するため、IT の主要経済部門への発展を促進する。 • IT 部門への投資促進 • 多数の主要部門で IT 利用の国家予算確保を優先し、IT 産業の基盤を築くとともに IT 人材を育成する。 • IT 部門への投資を促進する。 • 国家情報インフラの開発に有利な条件を整備する。 • 農業部門、農村地域、離島、僻地、国境地域における IT 利用、少数民族、障害者に関 連した IT 利用の開発活動に従事する組織および個人に有利な政策を策定する。 • 国際交流、国際協力を促進する。 • 国外の IT 関連ベトナム企業との協力を促進する。 (3) 知的財産 IT 法の第 12 条は、 「情報技術活動における知的財産権の侵害、情報技術製品の不法製作・ 流通、他の組織および個人の Web サイトの模倣、Web サイトを利用する組織のドメイン名 に関して不法なリンクを作成すること」を禁止している。ただし、どのようなリンクが不 法と見なされるのか、については明確にしてない。この点に関しては、今後、実施規則で 方向性が示されるものと思われる。 (4) 1Web サイトの管理 ベトナム・インターネット・ネットワーク情報センター(VNNIC: Vietnam Internet Network Information Center)は、ベトナムの.vn ドメインを管理している。IT 法は.vn ドメインを使 用しない Web サイトに関する規定を含み、第 23 条によると.vn 以外のドメインを使用する ベトナムの企業または個人は、そのサイトの使用について郵便電気通信省に報告しなけれ ばならない。 Web サイトの所有者は、設置時にその Web サイトの基本的内容について郵便電気通信省 212 に報告しなければならない。情報は電子メールで送信され、統計作成や効果的管理の目的 にのみ収集される。 (5) スパム規制 第 70 条は、スパム対策規定を含む。具体的には、組織または個人は、ネットワーク環境 で情報を送信する際、その名称を秘匿したり、他の組織または個人の名称を借用たりする ことはできない。 (6) 外国の IT 技能証の認定 第 43 条は、IT 研修の実施、IT 技能証の発行、ベトナムで使用される外国の IT 技能証の 認定について、郵便電気通信省が教育訓練省、労働退役軍人社会問題省と協力することを 定めている。 関連ウェブサイト New Information Technology Law: http://www.treutlerlaw.com/ITLaw.html 213 ⅩⅡ 中国 214 ⅩⅡ 1. • 中国 中国における情報技術政策のポイント 「第 10 次 5 カ年計画」の実施期間(2001 年~2005 年)中、中国の情報化は、良好な 基盤が築かれ、新たな段階を迎えている。 • 主なデジタル化指標の伸び(2000 年→2005 年)は次の通り。 • ¾ 電話加入者の総数: 2.3 億人→7.4 億人 ¾ 固定電話普及率: 人口 100 人あたり 12 台→27 台 ¾ 移動電話の普及率: 人口 100 人あたり 7 台→30 台 ¾ テレビの普及率: 総人口の 93.7%→95.29% ¾ ケーブル TV の加入率: 24.3%→33% ¾ インターネット利用者数: 2,250 万人→1 億 1,100 万人 2006 年 3 月、全国人民代表会議の承認を受けた後、2006 年~2010 年の基本政策にあた る「第 11 次 5 カ年計画」が発表された。 • 「第 11 次 5 カ年計画」では、情報技術分野での独創能力、情報化発展能力を強化し、 国民経済と社会の情報化に有力な基盤を提供していくことが重視されている。 • 情報化の具体的分野には、ハイテク産業の発展、工業化による情報化促進、サービス 業の発展、科学技術などがある。 2. IT 政策の担当機関 (1) 国家情報化指導グループ(State Infomatization Leading Group) 情報化分野の最高レベルの意思決定・調整機関として 2001 年 8 月に設置された。現在は 温家宝首相が委員長を務める。 (2) 国務院情報化作業事務室(State Council Informatization Office) 国家の情報化分野の意思決定を効率よく実行すべく、各省庁の役割・利益を調整する機 関で、国家情報化指導グループの指導を受けて、実務を担当している。 情報化作業事務室は、次の 4 つのグループに分かれている。 • 政策企画グループ: 情報化分野の法律・規定の策定 • 推進応用グループ: 電子商取引の推進 215 • ネットワーク情報セキュリティグループ: 情報セキュリティ関係 • 総合グループ: 情報化作業事務室の秘書局 (3) 国家電子政府標準化総体グループ 国 務 院 情 報 化 作 業 事 務 室 と 国 家 標 準 化 管 理 委 員 会 ( Standardization Administration of China)は 2002 年 2 月、電子政府の発展推進を目的として国家電子政府標準化総体グルー プ(General Group of E-government Standards, http://www.egs.org.cn)を認可・設立している。 (4) 情報産業部(Ministry of Information Industry) 情報産業(通信・ネットワーク、電子情報機器製造、ソフトウェアなど)を監督する。 (5) 国家発展改革委員会(National Development and Reform Commission)) 情報産業におけるマクロ政策(複数部門にまたがる法規の起草取りまとめなど)、携帯電 話、デジタルテレビなどの基本戦略を担当する。 国務院 国家情報化指導グループ (情報化分野の最高レベルの意思決 定・調整機関。温家宝首相が委員 国務院情報化作業事務室 (各部からの出向者で構成される) IT 関連省庁(情報産業部、国家発展改革委員会ほか) (国家情報化指導グループおよび国務院情報化作業事務室 の 図ⅩⅡ-1 中国政府の情報化推進体制 関連ウェブサイト 調査・情報提供 > アジア情報化ポータルサイト > アジア情報化レポート > 中華人民共和国: http://www.cicc.or.jp/japanese/kunibetsu/pdf_ppt/china.pdf 216 3. 中国における情報技術政策 3.1 第 10 次 5 カ年計画の成果 「第 10 次 5 カ年計画」の実施期間(2001 年~2005 年)中、中国は全面的な「小康社会」 の建設と社会主義の現代化という新たな発展の段階を迎えた。全体的に見て、中国の情報 化は、良好な基盤が築かれ、新たな段階を迎えている。 (1) 産業の電子化 国民経済と社会の発展の領域での情報技術の利用効果は日々顕著なものとなっている。 • 農業の情報化は着実に進められている。中央および地方政府の農業関連事業管理部門 は、いずれも各自の優位性を利用して農業の情報化を進め、農業領域における IT の開 発と利用には初歩段階での成果があった。 • IT による既存産業の改造には、次々と新たな進展があった。機械、電力、石油化学、 自動車などの既存の工業においては IT の応用が急速に進み、プロセス技術と設備の水 準は著しく向上した。工作機械業界のデジタル制御化には大きな進展があり、国産の 数値制御(NC: Numerical Control)工作機械の技術水準は向上を続けている。 • 電子商取引の発展は良好であり、ネットショピング、オンライン決済、物流発送、認 証サービスなどのシステムがほぼ確立され、大型企業は中国の電子商取引発展におけ る中堅的な地位を得、消費者向けの電子商取引は着実な発展を遂げている。 • 社会の情報化は著しく加速し、教育、文化、衛生などの社会公共分野での情報化は庶 民の生活に恵みをもたらし、遠隔教育、デジタル図書館、突発的な公共衛生事件に対 する応急体制、疾病の予防体制などの整備によって大きな社会的利益が得られ、IT に よる社会発展の促進、社会調和の増進などの面で大量の成果が蓄積された。 (2) 電子政務 電子政務には着実な進展があり、政府の職能転換、行政効率向上などの有効な手段とな っている。政務部門は IT を利用して情報の開示を拡大し、情報資源の共有を促進し、政務 の協力を推進して行政効率を高め、公共サービスを改善することにより、政府の職能転換 を効率的に進めた。これらにより国の電子政務の全体的な枠組みがほぼ完成し、政府ウェ 217 ブサイトの構築と利用には著しい進展が見られ、中央政府のポータルサイトも正式に開設 された。地方政府のウェブサイトの機能は整備が進み、政府ウェブサイトは政府が社会に 管理とサービスを提供するための重要な窓口になりつつある。 (3) 情報産業 情報産業は急成長を持続しており、経済成長に関する貢献度も着実に上昇している。情 報産業は中国の WTO 加盟による厳しい試練に望んでいるものの、グローバルな情報産業 の大規模な転換という歴史的なチャンスを捉え、GDP の 2 倍という高速度で成長を続けて いる。 「第 10 次 5 カ年計画」期間中は、電子情報産業において一定以上の規模を有する企業の 年間売上の平均増加率は 27.3%に達しており、産業の規模は 5 年間で 2.3 倍に拡大した。 通信事業の総量と事業収入は、年平均でそれぞれ 27.6%と 13.4%増加し、5 年間の外資導 入の累計額は 1,000 億ドル(約 12 兆円、2006 年 12 月 20 日付為替レート 1 米ドル=118.02 円で換算)に達している。 (4) 情報ネットワーク 情報ネットワークは飛躍的な発展を実現することにより経済と社会の発展を支える最も 重要なインフラ施設となっている。2000 年~2005 年で、中国の電話加入者の総数は 2.3 億 人から 7.4 億人に増加し、新規加入者数は年平均 1 億人となっている。固定電話の普及率 は人口 100 人あたり 12 台から 27 台に増加し、移動電話の普及率は人口 100 人あたり 7 台 から 30 台に増えている。テレビの普及率は総人口の 93.7%から 95.29%に上昇し、ケーブ ル TV の加入率は 24.3%から 33%に上昇している。すべての農村への電話の普及を目指す 村村通電話プロジェクトは第 10 次 5 カ年計画の目標を前倒しで達成した。インターネット の利用者数は 2000 年の 2,250 万人から 2005 年には 1 億 1,100 万人に増加した。 (5) 情報セキュリティ 情報セキュリティの基本的な作業とインフラ整備が著しく進展した。国による情報セキ ュリティ戦略が制定、実施され、情報セキュリティの管理体制と運営メカニズムの整備が 一段と進んだ。情報セキュリティレベルの保護は着実に進められ、基本的な情報ネットワ ークと重要情報システムの安全保護水準は向上を続けている。情報セキュリティに対する リスク評価は実施準備の段階に入っており、暗号技術を基本とする情報保護とネットワー クの信用体制の整備も始動している。情報セキュリティ応急処理協調体制がほぼ形成され、 基本情報網と重要情報システムには応急処理準備案が制定された。また、一部の重要情報 218 システムでは、災害準備センターの建設が進み、情報セキュリティ通報体制が重要な役割 を発揮している。インターネットの安全管理が一段と整備され、ネット詐欺、ネット賭博、 わいせつ情報頒布などのネット犯罪行為の撲滅力を拡大し、大きな成果が得られた。社会 のあらゆる方面にわたり、あまねく情報セキュリティ意識が強化された。 3.2 第 11 次 5 カ年計画 2006 年 3 月、全国人民代表会議の承認を受けた後、2006 年~2010 年の基本政策にあた る「第 11 次 5 カ年計画」が発表された。 「第 11 次 5 カ年計画」では、情報技術分野での独 創能力、情報化発展能力を強化し、国民経済と社会の情報化に有力な基盤を提供していく ことが重視されている。 (1) 要点 「第 11 次 5 カ年計画」は、 「第 10 次 5 カ年計画」の精神を受け継ぐだけでなく、現状に 基づいて策定された。同計画の要綱は合計 48 章からなり、特に第 3 章では、以下の 2 つの 経済発展指標を示している。 • GDP 成長率指標: 5 年間にわたり年率で 7.5%を目標にしている。 • エネルギー消費量と環境汚染の管理に関する指標: エネルギーおよび環境保護への投 資額とその GDP 成長率の関係を反映する。 新計画の要点は次の通り。 • 「開発への科学的アプローチ」と「調和ある社会主義国家の建設」の戦略的コンセプ トを採択する。 • 計画に定められた目標は、人間、社会、環境、経済の諸問題への関心を反映する。 • 計画に定められた第一の目標は、新たな社会主義国家の建設である。 • 産業構造はさらに発展および強化する必要があるが、焦点は、規模ではなく強度に置 かれる。 • サービス産業強化の取り組みが初めて実施される。これは、第 3 次産業の発展が後れ、 産業構造全体、雇用、競争力にマイナスの影響を与えているためである。 • 人間と環境の関係について、計画は、2 つの基本的原則、すなわり、省エネルギー、お よび環境保護を含む。 • 自己革新と人材育成が明確化されている。 • 計画は、発展だけでなく、改革にも関係する。さらなる発展と開放の両方の目的に 2 219 章が当てられている。さらに、農村開発、科学と教育、調和ある社会の特定分野の改 革についても、それぞれ 1 章があてられている。 • 経済発展、政治的文明の建設、文化社会的建設の総合的開発戦略に基づき、計画に記 述されたすべての定義、目的、目標、指標が人間を中心としている。 (2) ハイテク産業の発展 「第 11 次 5 カ年計画」では、ハイテク産業が従来の加工組み立て中心から、自主的な研 究開発、製造に移行するよう促進し、競争力ある先導的産業、産業基地、ブランド形成を 加速化させる。 特に電子情報製造業のグレードアップを目指し、以下に取り組む。 • 集積回路、ソフトウェア、デバイスなどの中核的産業を発展させる。 • 光通信、無線通信、高性能計算、ネットワーク設備などの情報産業群を重点的に育成 する • ソフトウェア、マイクロエレクトロニクス、オプトエレクトロニクスなどの産業基地 を建設する。 • オプトエレクトロニクス産業チェーンの形成を促進する。 表ⅩⅡ-1 集積回路とソフトウェア 新世代ネットワーク 先進的コンピューティング IT 関連のハイテク産業プロジェクト重大項目 集積回路研究開発センターを建設し、90nm 以下の集積回路工程技術 の産業化を実現する。 次世代インターネットモデルプロジェクト、全国をカバーするデジ タルテレビ網と自主的知的財産権を備える移動通信モデル網を建設 する。新世代ネットワークの重要な技術、重要なソフトウェアの産 業化を実現し、新世代情報ネットワーク基礎施設を建設する。デジ タルオーディオビデオ製品産業化特別プロジェクトを実施する。 高性能コンピューティングシステム技術を開発し、先進的コンピュ ーティングプラットフォームを建設し、高性能コンピュータの産業 化を実現する。 Source: 第 11 次 5 カ年計画要綱 (3) 工業化と情報化の連携 「第 11 次 5 カ年計画」では、情報化によって工業化を先導し、工業化によって情報化を 促進し、経済社会の情報化水準を向上させる。以下のいずれも情報化項目についても、 「第 10 次 5 カ年計画」の成果を踏まえた上でその延長として実施される。 220 • 製造業の情報化: 情報化によって製造業を改造し、生産設備のデジタル化、生産プロ セスのインテリジェント化と企業管理の情報化を推進し、製造業の開発・設計、生産・ 製造、物流・在庫と市場営業の変革を促進する。 • 情報資源の開発: 国家基礎情報ベースの建設を早め、基礎情報共有を促進する。情報 資源の構造を最適化する。生産、流通、科学技術、人口、資源、生態環境などの分野 の情報採集を強化し、情報資源の開発、適時の処理、伝播の共有および有効利用を強 化する。 • 情報インフラストラクチャの整備: ネットワークの融合を積極的に推進する。ブロー ドバンド通信網を建設および整備し、ブロードバンド・ユーザー・アクセス・ネット ワークの発展を速め、新世代通信ネットワークの建設を着実に推進する。有線、地上、 衛星伝送を一体に集めたデジタルテレビネットワークを建設する。次世代ネットワー クを構築し、商業化応用を早める。ネットワーク規格を制定および整備し、相互連絡 相互通信と資源共有を促進する。 • 情報セキュリティの強化: 積極的に防御し、総合的に防止し、情報安全保障能力を高 める。安全モニタリング、緊急時対応、暗号管理、ネットワーク認証などの情報安全 インフラストラクチャの建設を強化する。。基礎情報ネットワークと国家重要情報シス テムの安全保護を強化する。情報安全製品の産業化を促進する。コンサルティング、 測定評価、災害準備などの情報安全サービスを発展させる。 (4) サービス部門の発展 「第 11 次 5 カ年計画」では、市場化、産業化、社会化の方向を堅持し、分野を開拓拡大 し、規模を拡大し、構造を最適化し、機能を増強し、市場を規範化し、サービス部門の比 重と水準を高める。新計画では、電子政務もこのサービス部門の発展の中で言及されてい る。 • 電子ビジネスの発展: 電子ビジネスインフラストラクチャ、法的環境、信用、安全認 証システムを確立し、健全化させ、安全、便利、快速のオンライン支払いサービスプ ラットフォームを建設する。企業間の電子ビジネスを発展させ、中小企業、重点業界 および区域に的を絞った第三者電子ビジネス取引とサービスを普及させる。 • 電子政務の実現: ネットワーク資源を統合し、統一した電子政務ネットワークを建設 し、政務情報プラットフォーム、データ交換センター、デジタル認証センターを構築 し、部門間情報共有と業務共同を推進する。 (5) 科学技術 221 「第 11 次 5 カ年計画」では、国家中長期科学および技術発展計画を実施し、自主創新、 重点乗り越え、発展支持、未来を導く、という方針に従い、国家創新体系の建設を速め、 企業の創新能力を絶えず増強し、科学技術と経済、教育との密接な結合を強化し、科学技 術の全体的実力と産業の技術水準を全面的に向上させる。 表ⅩⅡ-2 IT 関連の重大科学技術特別プロジェクト 中核的電子デバイス、ハイエンド ハイエンド電子汎用デバイスと高信頼性ネットワーク化基礎ソフ 汎 用チ ッ プ お よび基 礎 ソ フ ト ウ トウェア、情報セキュリティに必要なチップとデバイスなどの技術 を開発する ェア 超 大規 模 集 積 回路 製 造 技 術お よ 60nm から 45nm までの高速低電力消費チップと新型シリコン集積 び工程セット 回路の製造工程技術、中核的集積回路装備技術を開発する。 次 世代 ブ ロ ー ドバ ン ド無 線 移 動 新世代ブロードバンド無線移動通信ネットワーク、端末と応用技術 通信 を開発する ハイエンド数値制御(NC)工作機 ハイエンド数値制御(NC)工作機械と基礎製造のセット技術を開発 械と基礎製造技術 し、デジタル化およびインテリジェント化制御ユニットを研究す る。 Source: 第 11 次 5 カ年計画要綱 関連ウェブサイト China Mapping out The 11th Five-Year Development Guidelines: http://www.china.org.cn/english/features/guideline/156529.htm 11th Five-Year Guideline > Key Points of the 11th Five-Year Guidelines: http://www.china.org.cn/english/2006lh/160403.htm Getting to Know the 11th Five-Year Guidelines (2006-2010): http://www.china.org.cn/english/MATERIAL/160349.htm 3.3 国家情報化発展戦略 2006 年 5 月、中国共産党と国務院は、次の 15 年間の情報化目標を定めた「国家情報化 発展戦略(2006 年~2020 年)」を発表した。戦略の実施は、情報社会に向かって進む中国 の基盤をなし、情報化は社会経済発展促進において重要な役割を果たすとされている。 情報化発展の戦略目標は次の通り。 • 全国的な情報インフラの普及 • 情報技術革新能力の強化 • 情報産業構造の最適化 222 • 情報セキュリティの向上 • 情報を中心とした国民経済および社会の効果的構築 • 情報化政策および制度の確立 • 市民の情報技術活用能力の向上 情報化発展の戦略的重点は次の 9 項目である。 • 国民経済の情報化促進(主に農業、工業、サービス業が対象) • 電子政府の普及 • 先端的なネットワーク文化の建設 • 社会の情報化推進(特に教育、医療・衛生、雇用・社会保障、地域が対象) • 情報インフラの整備 • 情報資源の開発と効率的利用 • 情報産業の競争力強化 • 国家的情報セキュリティシステムの構築 • 情報技術の応用力と人材の育成 関連ウェブサイト The State Informatization Development Strategy: http://english.sina.com/technology/1/2006/0509/75208.html 4. 香港における情報技術政策のポイント • 2006 年 9 月、オンライン政府情報サービスを提供する新ワンストップ・ポータルGovHK ( www.gov.hk)が開設された。 • 2006 年 10 月、香港政府は「2007 デジタル 21 戦略(Digital 21 Strategy)」について、2 カ月間にわたる公的諮問を行うと発表した。 • 「2007 デジタル 21 戦略」は、世界的デジタル都市としての役割強化というビジョンを 実現するため、①先端技術と技術革新の促進②技術協力および貿易の中継③次世代公 共サービスの実現④格差なき知識社会の構築、という 4 つの行動領域を決定している。 5. IT 政策の担当機関 香港の IT 政策は、主に工商業・科学技術局(Commerce, Industry and Technology Bureau) が担当し、特に同局内の政府最高情報責任者事務局(OGCIO: Office of the Government Chief 223 Information Officer, 2004 年 7 月設立)が中心的役割を果たしている。2005 年 1 月には新た な政府最高情報責任者(GCIO)が任命された。 財 務 長 官 ( Financial Secretary) が 委 員 長 を 務 め る ハ イ レ ベ ル の 電 子 政 府 運 営 委 員 会 (EGSC: E-government Steering Committee, 2004 年 9 月設立)は、電子政府プログラムの戦 略を承認し、目標を設定し、政府各局間あるいは各局と OGCIO 間の調整を行う。 通信業界を監督する香港電信管理局(OFTA: Office of the Telecommunications Authority) は、工商業・科学技術局通信技術部所管の独立行政機関で、1993 年 1 月設立された。 関連ウェブサイト Commerce, Industry and Technology Bureau: http://www.citb.gov.hk/about/index.htm 6. 6.1 香港における情報技術政策 2004 デジタル 21 戦略 1998 年に「デジタル 21」と呼ばれる総合的なサイバーシティーを実現するための計画が 発表され、2004 年 3 月には第 3 版となる「2004 デジタル 21 戦略」が発表された。同戦略 は、世界的デジタル都市の地位を維持するための総合的な青写真である。焦点分野は、① 政府のリーダーシップ②持続可能な電子政府プログラム③インフラおよびビジネス環境④ 組織の見直し⑤技術開発⑥活力あふれる IT 産業⑦知識経済における人的資源⑧デジタル デバイドの解消、の 8 つである。 (1) デジタル接続の現状 デジタル接続について、香港の現状は次のようにまとめられる。 • ブロードバンドがすべての商業および居住建築物で利用可能になった。 • 携帯電話の普及率: 2006 年 125%(2003 年 104%) • 世帯 PC 普及率: 2005 年 70%(2003 年 68%) • 世帯ブロードバンド普及率: 2006 年 66%(2003 年 50%) • 企業インターネット普及率: 2005 年 60%(2003 年 48%) • 企業の 50%以上が電子商取引を採用(2005 年) (2) イニシアチブの実施状況 「2004 デジタル 21 戦略」のイニシアチブの多くは成功裏に完了しており、残りのイニ 224 シアチブも予定通り実施が進められている。以下に 2006 年の達成状況をまとめる。 • 4 月に 5 つの研究開発センターが設立された。①自動車部品およびアクセサリ・シス テム②ロジスティクスおよびサプライチェーンマネジメント実現技術③ナノテクノロ ジーおよび先端材料④情報通信技術⑤テキスタイルおよび衣服、の 5 分野に戦略的焦 点を定める。 • 7 月、迷惑メール法(Unsolicited Electronic Messages Bill)が立法会に上程された。 • 政府 IT システムの知的財産所有を広げる 3 年間の予備計画が実施された。 • 第 3 世代携帯電話の革新的アプリケーション開発を支援する 3G Cyberport プロジェク トが完了した。 (3) 電子政府の現状 香港政府は政府内の電算化に関連する 2 つの重要な役割を担う。まず、IT 産業が盛んに なり、他の業界を効果的に支えるのに必要なインフラを整備する役割、もう一つは政府内 部の必要性から IT を利用する利用者としての役割である。 表ⅩⅡ-3 電子政府の普及状況 PC を所有する職員の割合(2006 年 7 月) 74.20% インターネットアクセスが可能な職員の割合(2006 年 7 月) 64.10% 内部電子メールにアクセスできる職員の割合(2006 年 7 月) 63.10% Source: 香港政府ホームページより作成 (4) 政府ポータル 広 範 な オ ン ラ イ ン 政 府 情 報 を 提 供 す る 政 府 の 新 ワ ン ス ト ッ プ ・ ポ ー タ ル GovHK (www.gov.hk)が 2006 年 9 月に開設された。GovHK は、一般市民のニーズと関心に焦点を 当てて、最も人気のあるオンライン政府情報およびサービスを提供する市民中心のアプロ ーチを採用している。インターネット上では 1,200 件の政府 e-サービスと 200 以上の政府 ウェブサイトが利用できるにもかかわらず、これまでは、行政機構に通じていなければ一 般市民が情報やサービスを見つけるのは難しかった。新サイトでは、情報やサービスを利 用者グループ別、テーマ分野別に整理し、提供機関は異なっても関連するコンテンツをま とめ、シンプルでユーザーフレンドリーなインタフェースで提供している。 225 利用者グループは、居住者(Residents)、企業(Business & Trade)、非居住者(Non-Residents) の 3 つがある。居住者セクションでは、11 の市民関心分野に分かれたテーマが用意されて いる(①通信、技術②文化、レジャー、スポーツ③教育、研修④雇用⑤環境⑥政府、法令 ⑦保健医療サービス⑧住宅社会サービス⑨移民サービス⑩納税⑪運輸、交通)。企業セクシ ョンでは、香港および中国本土でのビジネスに関連したコンテンツが提供される。非居住 者セクションでは、香港での観光、投資、留学、仕事、生活に関心ある人々向けに情報と サービスが提供される。検索サービスが拡張されたほか、政府ディレクトリ、ニュース、 天気予報、交通情報など、よく利用される情報も用意されている。 関連ウェブサイト Digital 21 Strategy: http://www.info.gov.hk/digital21/eng/aboutus.html E-Government: http://www.info.gov.hk/digital21/eng/itstructure/struct_it.html 6.2 2007 デジタル 21 戦略 2006 年 10 月、香港政府は「2007 デジタル 21 戦略」について、2 カ月間にわたる公的諮 問を行うと発表した。同戦略は、2007 年上半期に発表される予定である。公的諮問および 発表後の戦略実施にあたって、政府機関の調整は、OGCIO が担当する。 「2004 デジタル 21 戦略」が世界的デジタル都市の地位を維持する青写真であったのに 対し、新戦略は世界的デジタル都市としての役割強化をビジョンとして掲げている。 このビジョンを達成するため、①先端技術と技術革新の促進②技術協力および貿易の中 継③次世代公共サービスの実現④格差なき知識社会の構築、という 4 つの行動領域を設置 し、2004 戦略の達成事項をさらに発展させようとしている。以下に各分野ごとの概要をま とめる。 (1) 先端技術と技術革新の促進 • 技術革新の中心となるサイバーポートとサイエンスパークを人材育成とインフラ整備 により強化する。 • 新たに設置された研究開発センターを通じて技術革新の移転と商用化を促進する。 • 通信技術、デジタルコンテンツ開発、センサーおよび識別技術、ソフトウェア開発お よびパッケージ化、次世代インターネットなどの重要技術分野を焦点化し、支援する。 226 (2) 技術協力および貿易の中継 • 技術革新、情報管理、技術開発について中国当局および広東省と協力するためのルー ト作りを行う。 • コンピテンシー基準の開発を通じて ICT 人材の技能向上を促進し、活力ある ICT 業界 をつくる。 • 技術関連ビジネスを繁栄させるビジネス環境を整備する。 ¾ 情報セキュリティ: 2008 年に市民が参照できるリスク評価および電子認証枠組み を発行する。 ¾ プライバシー保護: 個人データのプライバシーを保護する取り組みを継続する。 ¾ 知的財産権の保護: 知的財産権を保護する法律を制定するとともに、合法的なソ フトウェアダウンロード文化を育成するために必要なデジタル著作権管理を導入 する。 ¾ データ標準の策定: さまざまな業界と共同で、付加価値サービス提供を促進する 業界別データ標準を策定する。 ¾ 規制枠組み: 通信と放送の規制当局を統合して、単一の規制機関を設立する。現 在は OFTA が通信業界を監督している。 (3) 次世代公共サービスの実現 • 政府内および一般市民向けのサービスの両方で、e-ビジネスの採用などを主導する。 • 電子政府プログラムの焦点は、利用者参加と情報管理を強調する市民中心のサービス 提供である。政府機関全体でサービス統合の取り組みが強化される。 • 政府情報サービスの単一窓口として 2006 年 9 月に立ち上げられた新政府ポータル GovHK( www.gov.hk)は、市民中心のサービス提供への転換に必要とされるプラット フォームとなる。 • e-チャネルの増加に伴い、利用者のニーズや価値判断に応じて提供チャネル合理化の可 能性を検討する必要がある。このため、2007 年にはチャネル管理戦略が策定される。 • 財務委員会の承認を受けて、試験的電子調達プロジェクトを実施する。また、民間業 者の電子商取引採用を促進できるよう、まず政府における導入推進計画を策定する。 • 従来の電子政府投資を基礎として次世代政府を構築する。保健医療および交通は、官 民両部門にまたがるサービスと高度な統合と個人化が期待される分野である。 (4) 格差なき知識社会の構築 227 • 次の 5 つの目標に向かってディスカッションを主導する。①全市民のためのブロード バンド接続②全学生の ICT 施設利用を実現し、学習を支援③業界のソフトウェアソリ ューション利用を低廉化④情報管理⑤デジタル著作権管理のインフラ構築と文化育成 • 2007 年に第 3 次教育 IT 戦略を 2007 年に発表し、教育部門が ICT 活用により学習と知 識を豊かにするための施策を提案する。 • デジタル格差是正戦略を策定するタスクフォースを設置する。 関連ウェブサイト Digital 21 Strategy: http://www.info.gov.hk/digital21/eng/aboutus.html Consultation Paper: http://www.info.gov.hk/digital21/eng/strategy_consultation/D21ConsultationPaper(E).pdf 228 ⅩⅢ 台湾 229 ⅩⅢ 1. • 台湾 台湾における情報技術政策のポイント 国家情報通信発展推進委員会は、国家的な ICT プロジェクト(e-台湾プログラム、m台湾プログラムなど)の策定と省庁間の調整を担当する。 • 行政院は 2002 年 5 月に台湾の国家的競争力を強化する「チャレンジ 2008 - 6 カ年国家 発展重点計画」を発表した。 • 「チャレンジ 2008 計画」は立案から 3 年が経過した 2005 年 1 月に中間見直しが行な われ、投資額が変更された。 • 国家情報通信発展推進委員会は 2002 年 5 月、「チャレンジ 2008 計画」の 10 大計画の 一つとして、e-台湾計画を策定した。同計画の目的は 2008 年までに台湾をハイテクサ ービスの島にし、アジアで最も先進的な電子国家にすることである。e-台湾計画は現在、 ①インフラストラクチャ②産業の電子化③社会の電子化④政府の電子化⑤情報格差の 解消、の 5 つを柱としている。 • 新 10 大建設計画の一つである m-台湾計画では、2005 年~2009 年までの 5 年間に 370 億台湾元の政府予算が割り当てられている。 • 2005 年の一般インターネット利用者数は 1,320 万人(前年度から 100 万人増)。 • 2006 年 6 月の日常的インターネット利用者数は 968 万人(前年度比 3%増)。 • 2006 年第 2 四半期末の携帯電話加入件数は 2,280 万件(対前期比 1.3%増)。 • 台湾産業界のインターネット普及率は 2005 年、83%(対前年度比 2 ポイント増)。ア クセス手段は xDSL が 75%でトップ、次は専用回線である。 • 2005 年 9 月末までに台湾の全政府機関はブロードバンドアクセスが可能になった。公 務員の 93%がインターネットにアクセスし、95%は業務に電子メールを使用している。 2. IT 政策の担当機関 行政院に 2001 年 4 月設置された国家情報通信発展推進(NICI: National Information & Communications Initiative)委員会は、国家的な ICT プロジェクト(e-台湾プログラム、m台湾プログラムなど)の策定と省庁間の調整を担当する。 NICI 委員会は、以下の政府機関と協力しながら、この作業を進めている。 • 行政院研究発展考核委員会(REDC: Research, Development, and Evaluation Commission): 230 電子政府を担当。 • 行政院科学技術諮問グループ(STAG: Science & Technology Advisory Group):情報格差 の解消、および社会の電子化(教育、娯楽、保健医療、輸送)を担当。 • 交通部電信総局(DGT: The Directorate General of Telecommunications):通信インフラの 整備を担当(台湾の通信規制当局)。 • 経済部(MOEA)技術処(DOIT: Department of Industrial Technology):産業技術の政策 策定、開発、環境整備を担当。 財団法人資訊工業策進会(III: Institute for Information Technology)は、経済部の委託を受 け IT 関連の調査を実施している。 行政院(Executive Yuan) NICI 委員会(National Information & Communications Initiative Committee) • 委員長 • 副委員長 委員会 事務局長 NICI 民 間 諮 問 委 員 会 (NICI (Executive Secretary) Civil Advisory Committee) NICI 機能チーム(NICI Function Teams) • 国際協力および標準(International Cooperation & Standards) • 社会の電子化(e-Society) • 電 子 政 府 (e-Government):行 政 院 研 究 発 展 考 核 委 員 会 (REDC: Research, Development, and Evaluation Commission) • インフラストラクチャ(Infrastructure): 交通部電信総局(DGT: The Directorate General of Telecommunications) • 産業の電子化(e-Industry): 経済部技術処(DOIT: Department of Industrial Technology) • 情 報 格 差 の 解 消 (e-Opportunity): 行 政 院 科 学 技 術 諮 問 グ ル ー プ (STAG: Science & Technology Advisory Group, Executive Yuan) • 政策決定(Policy Planning): 行政院科学技術諮問グループ(STAG: Science & Technology Advisory Group, Executive Yuan) Source: e-Taiwan 2004 231 図ⅩⅢ-1 国家情報通信発展推進(NICI)委員会と関係政府機関 関連ウェブサイト NICI: http://www.nici.nat.gov.tw/content/application/nici/english/ REDC: http://www.rdec.gov.tw/dp.asp?mp=4 STAG: http://www.stag.gov.tw/content/application/stag/about/index-english.php?ico=1&selname=about DOIT, MOEA (English): http://doit.moea.gov.tw/newenglish/00_whatsnew/whatsnew.asp III: http://www.iii.org.tw/english/ 3. 情報化政策 3.1 チャレンジ 2008 重点計画 行政院は 2002 年 5 月に台湾の国家的競争力を強化するチャレンジ 2008 - 6 カ年国家発展 重点計画(Challenge 2008 - Six-Year National Development Program)を発表した。同計画で は、10 大計画(①e-世代人材育成計画②文化創意産業発展計画③国際創新研究発展基地計 画④産業高度化計画⑤観光客倍増計画⑥e-台湾計画⑦運営本部計画⑧全島運輸機関整備計 画⑨新故郷をつくる計画⑩水および緑建設計画)が実施されている。 (1) 目標 この計画の 7 大目標は次の通り。 • 少なくとも数項目の分野で世界一の製品と技術を生み出す • 海外からの旅行者の数を 2 倍以上にする • 研究開発費の GDP 比を 3%とする • 失業率を 4%以下とする • 経済成長率を 5%以上とする。 • ブロードバンド利用者数を 600 万人以上とする。 • 新たな事業機会を 70 万件創出する (2) 予算および支出額 この計画は立案から 3 年が経過した 2005 年 1 月に中間見直しが行われ、投資額が変更さ れた。2002 年から 2005 年第 1 四半期までの支出予定額は 6,854 億台湾元(約 2 兆 4,700 億 円、2006 年 12 月 13 日付け為替レート 1 台湾元=3.60 円で換算、以下同様)だったが、実 際に支出された額は 6,533 億元(約 2 兆 3,500 億円)であり、予算に占める執行率は 95.3% 232 となっている。 表ⅩⅢ-1 チャレンジ 2008 - 6 カ年国家発展重点計画の投資額の変更 (単位: 億台湾元) 2002 年策定当時 2005 年 1 月中間見直し 26,533 25,325 12,720 10,327 地方予算 1,164 1,611 特殊基金 3,296 2,646 民間参画投資 9,353 7,679 0 3,063 総額 中央政府予算 その他 10 大計画 e-世代人材育成計画 342 95 文化創意産業発展計画 225 119 国際創新研究発展基地計画 1,801 1,104 産業高付加価値化計画 3,184 2,532 観光客倍増計画 e-台湾計画 運営本部計画 全島運輸機関整備計画 848 586 3,950 3,428 515 576 12,552 12,861 新故郷をつくる計画 386 505 水および緑建設計画 2,731 3,489 Source: 世界経済情報サービス(WEIS), ARC レポート 2005 (台湾)より作成 (3) 産業高付加価値化計画 10 大計画の一つである産業高付加価値化計画では、将来の生産高 1 兆台湾元が期待され る両兆産業(半導体、フラットディスプレイ)に続く第 3 の 1 兆元産業として、通信産業 と機械産業を発展させている。この計画においてデジタルコンテンツ産業は、バイオテク ノロジー産業とともに明星産業(花形産業)とされている。 2005 年におけるデジタルコンテンツ産業の生産高は前年度比 15%増の 2,902 億元(約 1 兆 4,400 億円)だった。最大の品目はソフトウェアで 1,448 億台湾元(約 5,210 億円、前年 度比 20%増)、その他ではモバイルアプリケーションの 183 億台湾元(約 660 億円、同 20% 増)が好調だったが、151 億台湾元(約 540 億円)のデジタルゲームは新作のヒットが少 なかった。2006 年のデジタルコンテンツ産業全体の目標生産高は 3,660 億台湾元(約 1 兆 3,100 億円)である。 233 (4) 国際創新研究発展基地計画 10 大計画の一つである国際創新研究開発基地計画では、産業ハイテク研究の一環として ナノテクノロジーが組み込まれている。卓越した学術研究、ナノテクノロジーの産業化、 革新施設の建設と共同運用、人材育成などに対して 2003 年~2008 年に政府資金 211 億台 湾元(約 760 億円)を投入し、うち産業化への投資が 65%以上を占める。2008 年の目標は、 ナノテク技術利用企業 800 社以上、関連産業生産額 3,000 億元となっている。 関連ウェブサイト CICC: http://www.cicc.or.jp/japanese/index.html 参考資料: 世界経済情報サービス(WEIS), ARC レポート 2005 (台湾) 3.2 e-台湾計画 NICI 委員会は 2002 年 5 月、チャレンジ 2008 計画の 10 大計画の一つとして e-台湾 (e-Taiwan)計画を策定した。同計の目的は 2008 年までに台湾をハイテクサービスの島に し、アジアで最も先進的な電子国家にすることである。e-台湾計画は現在、①インフラス トラクチャ②産業の電子化③社会の電子化④政府の電子化⑤情報格差の解消、の 5 つを柱 としている。 分野別の具体的数値目標は以下の通り。 (経済発展) • 2 万人の雇用創出 • 電子サービス総収入 3,000 億台湾元(約 1 兆 800 億円)の実現 • ビジネスにおける電子業務処理の普及率を 60%以上 • 電子商取引の比率を GDP 比 15% (情報の応用) • 社会および政府の電子化(e-Society と e-Government)の比率を世界 5 位以内 • e-ビジネス利用率を世界 10 位以内 (政府サービス) • 電子政府政策に対する一般国民の満足度 75%を達成 • 600 種類のオンライン公共サービスを提供 • 5 年以内に全 G2B2C 業務の 55%をオンライン化 234 (インフラストラクチャ整備) • 全人口の 50%をオンライン化 • ブロードバンド利用者数を 600 万人に拡大 関連ウェブサイト e-Policy > e-Taiwan Program 2004: http://www.find.org.tw/eng/news.asp?pos=0&subjectid=6&msgid=165 3.3 ブロードバンド整備計画 台湾政府は 2004 年 6 月にブロードバンド整備計画を提案した。FTTH (Fiber To The Home) と無線 LAN(WLAN)の促進を図るべく、段階ごとに使用ネットワーク、速度、加入者、 キラーアプリケーションなどの目標を定めており、第 2 段階(2006~2008 年)、第 3 段階 (2009~2010 年)では、FTTH をネットワークの主流にし、普及させることを明確化して いる。 表ⅩⅢ-2 項目 ネット ワーク 速 度 (bps) 加入者 キラー アプリ ケーシ ョン 台湾のブロードバンド発展予定表 第 1 段階 2004~2005 年 第 2 段階 2006~2007 年 第 3 段階 2008~2010 年 高品質 FTTH が主流 FTTH が普及 固定 (50M) WLAN (4M) 30 万人 25 万人 試験利用者 試験利用者 固 定・ 無 線ビ デオ ア プリ ケ ーション 二重ネットワーク モ バイ ル 電話ア プリ ケ ーシ ョン WLAN-モバ イル二重ネ ットワーク (4M~ 50M) 200 万人 170 万人 家庭利用者 利用者 高 品 質イ ン ター ネ ット ビ デ オサービス モバイルラーニング モバイルヘルスケア インターネット電話 固定 (50M~ 100M) WLAN-モバ イル二重ネ ットワーク (10M~ 100M) 420 万人 470 万人 家庭利用者 利用者 ブロ ー ドバ ン ド マ ルチ メ デ ィアアプリケーション 固定(50M~ 100M) source: NICI III-FIND が実施したインターネット加入調査は、台湾のブロードバンド加入件数が 2006 年第 2 四半期までに 428 万件に達したことを示した。利用技術別の内訳は、DSL が 383 万 8,000 件、ケーブルモデムが 38 万 2,000 件、光ファイバーが 4 万 5,000 件、専用回線が 1 万 1,000 件であった。 235 光ファイバーの加入件数は、2006 年 2 四半期には前期比 36%増と堅調な伸びを続けた(第 1 四半期の伸び率は 17%)。DSL の伸び率は 2%、ケーブルモデムと専用回線はほぼ横ばい であった。 3.4 m-台湾計画 行政院は 2003 年 11 月、チャレンジ 2008 重点計画の中から台湾の国際競争力の向上に資 する公共建設事業をリストアップして「新 10 大建設計画」を策定した。投資総額は民間投 資などを加え 9,235 億元(約 3 兆 3,246 億元)になる見通し。 新 10 大建設計画の一つである m-台湾(m-Taiwan)計画では、2005 年~2009 年までの 5 年間に 370 億台湾元(約 1,300 億円)の政府予算が割り当てられている。これは次の 2 つ のインフラ整備に充てられる。 • ブロードバンドダクト建設計画による公共ブロードバンドダクト網の建設に 300 億台 湾元(約 1,100 億円)。この公共ダクトは、光ファイバーなどのブロードバンドインタ ーネット整備のため、電気通信事業者にリースされる予定である。 • 二重ネットワーク利用環境の構築に 70 億台湾元(約 250 億円)。スムーズなモバイル 通信と無線 LAN(WLAN)インターネットサービスからなる二重ネットワークを実現 する。 経済部工業局は、高速無線通信技術の WiMAX を m-台湾計画の重要な技術項目に選定し、 2005 年下半期に試験を開始する。2006 年には WiMAX 試験場テストを行えるようにし、 WiMAX フォーラムの同意を得て同年中に WiMAX 認証実験室を設立する。 4. IT の利用状況 4.1 市民 (1) インターネット利用者 一般インターネット利用者数(これまでにインターネットを利用したことがあるすべて の個人として定義)は 2005 年、前年から 100 万人増加して 1,320 万人に達した。また、日 常的インターネット利用者数は 2006 年 6 月に前年度比 3%増となる 968 万人に達した。 236 (2) モバイルインターネット • 携帯電話の普及率: 国家通信委員会(NCC: National Communications Commission)が発 表したデータによると、2006 年第 2 四半期末の携帯電話加入件数(2G および 3G、PHS を含む)は、対前期比 1.3%増の 2,280 万件だった。この総数は、普及率約 100%に相 当し、ほぼ一人に 1 台ずつ携帯電話が普及しているということになる。 • SMS テキストメッセージ: 2006 年第 2 四半期には携帯電話を使用して約 8 億 7,000 万 件のテキストメッセージが送信されたが、これは第 1 四半期の 9 億件と比べて 3.4%減 少した。しかし、5 月の月間総数は再び 3 億件を超えた。 • モバイルインターネット: NCC のデータによると、2006 年第 2 四半期には前期 8.1%増 となる 887 万件のモバイルインターネット加入件数があった。GPRS(General Packet Radio Service)は、加入件数 549 万件(全体の 62%)で、依然としてモバイルインタ ーネット技術の主流にとどまっている。 • 3G と付加価値モバイルサービス: 2006 年第 2 四半期には 3G 加入件数は未だ携帯電話 加入件数全体のわずか 9.6%を占めるに過ぎないが、3G サービスの需要は目覚しく成 長している。 関連ウェブサイト e-Figures > General Internet users 2005: http://www.find.org.tw/eng/news.asp?msgid=220&subjectid=8&pos=1 e-Figures > Regular Internet users Q2 2006: http://www.find.org.tw/eng/news.asp?pos=1&subjectid=8&msgid=254 e-Figures > Mobile phone subscribers Q2 2006 http://www.find.org.tw/eng/news.asp?msgid=264&subjectid=7&pos=0 e-Figures > The Mobile Internet in Taiwan-Q2 2006 (1): http://www.find.org.tw/eng/news.asp?pos=0&subjectid=17&msgid=262 e-Figures > The Mobile Internet in Taiwan-Q2 2006 (2): http://www.find.org.tw/eng/news.asp?pos=0&subjectid=17&msgid=263 4.2 企業 経済部(MOEA)DOIT は、III-ACI-FIND に台湾における企業のインターネット利用調 査を委託した。インターネット利用と IT システム採用の最新動向をより明確に把握するた め、2005 年 8 月 25 日~9 月 30 日に合計 4,500 社の企業を対象に聞き取り調査が行なわれ た。 237 (1) 企業のインターネット普及率 台湾産業界のインターネット普及率は 2005 年、対前年度比 2 ポイント増の 83%だった。 インターネットアクセスが可能な企業におけるブロードバンド普及率は 96%である。。 (2) 企業のインターネットアクセス方法 台湾の産業界全体にとって、xDSL は最も一般的なインターネットアクセス方法であり、 平均で 75%の企業が xDSL を使用している。その次に普及しているのは専用回線である。 また、光ファイバー接続は堅調な伸びを示しており、2004 年の 1.3%から 2005 年には 4.9% へと約 3 倍に増えた。市場におけるこのセグメントの成長が期待される。 (3) 企業のインターネットインフラ 台湾企業のコンピュータ所有率は 92%である。所有企業のうち 79%は電子メールアプリ ケーションを使用し、37%は自社ウェブサイトを運営している。56%は LAN、35%はイン トラネット、20%は WLAN を設置している。 (4) 企業間電子商取引 調査結果は、オンライン販売とオンライン購入を含む台湾の電子商取引市場の規模が 2004 年の 1,778 億 6,000 万台湾元(約 4,200 億円)から 2004 年には 2,147 億台湾元(約 7,700 円)に 20.7%増加したことを示している。 (5) e-アプリケーション 情報システム・アプリケーションに関しては 2005 年、企業資源計画(ERP: Enterprise Resource Planning)が最もよく利用され、前年比 2.1%増の 12.9%の企業が利用した。その 次は顧客関係管理(CRM: Customer Relationship Management)で 8.6%だった。 関連ウェブサイト Business online 2005: http://www.find.org.tw/eng/news.asp?pos=0&subjectid=4&msgid=217 4.3 政府 (1) 行政サービスネットワーク(GSN:Government Service Network) GSN の立案と構築は、行政院の研究発展考核委員会(RDEC: Research Development and 238 Evaluation Commission)が責任を負っている。GSN はすべてのレベルの行政機関に対する バックボーンネットワークであり、行政機関は GSN によって公的サービス、管理、特別な アプリケーションを提供できる。行政機関はまた、グローバルな情報交換が可能な環境を 構築するためにインターネットサービスプロバイダとも接続しており、一般家庭や海外か らも利用できる。 (2) 電子政府の現状 2005 年 9 月末までに台湾の全政府機関はブロードバンドアクセスが可能になった。公務 員の 98%がインターネットにアクセスし、95%は業務に電子メールを使用している。政府 機関には総数 1 万 4,205 のデータ回線が設置され、ダイヤルアップ・インターネット・ア カウントが 9,820、電子メールアカウントは 2 万 2,297、電子メールサーバは 750 台、仮想 インターネット・ホストは 480 だった。 (3) 国際評価 米国ブラウン大学が毎年実施している世界電子政府レポートで、台湾はスコア 49.8%で 昨年の 1 位から第 2 位に順位を下げた。1 位は韓国、3 位はシンガポール、4 位は米国、5 位はカナダだった。 関連ウェブサイト e-Figures > Government online 2005 http://www.find.org.tw/eng/news.asp?msgid=229&subjectid=16&pos=1 e-News > Taiwan Remains Top....: http://www.find.org.tw/eng/news.asp?pos=0&subjectid=2&msgid=252 239 ⅩⅣ 韓国 240 ⅩⅣ 1. 韓国 韓国における情報技術政策のポイント • 韓国電算院は 2006 年に韓国情報社会庁に名称変更した。 • 情報通信省は 2004 年から 8 大新サービス、3 大インフラストラクチャ、9 大ハードウ ェア関連事業からなる IT839 戦略を実施し、WiBro、DMB などの新技術/インフラで 成果を上げている。 • 情報通信省は 2006 年 2 月、IT839 戦略の戦略項目を一部統合/追加した u-IT839 戦略 を発表した。 • u-IT839 戦略では、特に IT サービスとソフト・インフラウェアの 2 項目が追加され、 • 2006 年 3 月、世界初のユビキタス社会を目指す u-KOREA マスタープラン(2006 年~ ソフトウェア産業が強化される。 2010 年)が承認された。 • u-Korea マスタープランは、①政府②国土③経済④社会環境⑤個人生活の 5 分野にわた る達成目標、さらに①グローバル化②産業インフラストラクチャ③社会インフラスト ラクチャ④技術開発の 4 つの原動力について最適化目標を定めている。 • u-Korea マスタープランでは 2015 年までに 1 人あたり GDP3 万ドルという目標を明示 している。 2. IT 政策の担当機関 (1) 政府全体の情報化推進体制 1995 年制定の情報化促進基本法(Basic Act on Informatization Promotion)に沿って国家的 な 情 報 化 活 動 を 見 直 す た め 、 1996 年 に 情 報 化 推 進 委 員 会 ( IPC: Information Promotion Committee)が設置された。 IPC は情報化推進に関連する政策やプロジェクトの実施を調整する。委員長(首相)の 下、国会事務総長(Secretary General of National Assembly)が推薦する 24 人のメンバーで 構成される。 241 情報化推進委員会 (IPC: Informatization Promotion Committee) 委員長: 首相 (Chairman: Prime Minister) 委員: 大臣 24 名 (Members: 24 Ministers) 情報通信部 (Ministry of Information & Communication) 韓国情報社会庁 (National Information Society Agency) 情報化執行委員会 (Informatization Executive Committee) 委員長: 主席首相補佐官 (Chairman: Chief Assistant to the Prime Minister) 委員: 副大臣 25 名 (Members: 25 Deputy Ministers) 情報化小委員会 (Informatization Sub-committee) 情報推進諮問委員会 (Informatization Promotion Advisory Committee) 業界、学界、研究機関の専 門家で構成 国家情報評価委員会 (National Information Evaluation Committee) 業界、学界、研究機関の専 門家で構成 関連中央政府部門 (Related Central Administrative Government) 委員会 (Committee) 支援機関 (Supportive Organization) 組織 情報化推進委員会 (IPC: Informatization Promotion Committee) 情報化執行委員会 (Informatization Executive Committee) 情報化小委員会 (Informatization Subcommittee) 情報推進諮問委員会 (Informatization Promotion Advisory Committee) 主要機関 情報化推進関連の政策およびプロジェ クト実施調整 IPC が提出または委託した問題の議論 と評価 情報化推進と情報スーパーハイウェイ 構築の実施計画および成果の検討 IPC に提出された問題と情報化政策全 般について助言 Source: 2006 National Informatization White Paper 図ⅩⅣ-1 情報化推進委員会 IPC と関連機関 (2) 情報通信部 情報通信部(MIC: Ministry of Information and Communication)は、IPC に代わって管理業 242 務を担当する。1994 年、分散していた IT 関連部門を統合して設立された。 2006 年 3 月にノ・ジュンヒョン(Rho Jun-hyong)新大臣が就任、翌月同大臣の下で組織 の変更が行われている。 政策補佐官 (Policy Advisor to Minister) 監査官 (Inspector General) 大臣(Minister) 副大臣(Vice Minister) 無線研究所 (Radio Research Laboratory) 中央無線管理局(Central Radio Management Office) 韓国通信委員会事務局 (Secretariat of Korea Communications Commission) 国家コンピューティング情報 資源局 (National Computing & Information Resources Administration) 郵便サービス事務局 (Office of Postal Service) 政策管理広報室(Policy management & Public Relation Office) ユビキタス社会戦略室 (Ubiquitous Society Strategy Office) 通信放送政策室 (Telecommunications & Broadcasting Policy Office) 情報通信政策室 (Information & Communication Policy Office) 国際 ICT 協力室 (International ICT Cooperation Office) 無線放送戦略計画局 (Radio & Broadcasting Strategic Planning Bureau) ソフトウェア産業局(Software Industry Bureau) 情報セキュリティプライバシー局 (Information Security Privacy Bureau) 総務部(General Services Division) Source: 情報通信部ホームページより作成 243 情報通信事務官研修所 (Information & Communication Officials Training Institute) 知識情報サービスセンター (Knowledge Information Service Center of MIC) 供給建設局(Supply & Constructions Office of MIC) 地域通信局(Regional Communications Office)8 カ所 図ⅩⅣ-2 情報通信部の組織図 関連ウェブサイト About the MIC > Organization Chart http://www.mic.go.kr/eng/index.jsp (3) 電子政府の推進体制 電 子 政 府 政 策 は 、 大 統 領 諮 問 機 関 で あ る 行 政 の 改 革 ・ 分 散 化 に 関 す る 大 統 領 委 員会 (PCGID: Presidential Committee on Government Innovation and Decentralization)が決定し、 各分野の担当部および各自治体で実施される。 PCGID には、行政、財務、税制、地方分権化、電子政府の 5 つの小委員会が設置されて いる。電子政府小委員会(e-Government sub-committee)は、複数の政府機関にまたがって 電子政府プロジェクトを推進し、プロジェクト間の政策調整を行う。同委員会は、民間部 門の専門家 1 名が管理し、政府機関の事務総長や民間部門の代表者をメンバーとする。 行政自治部(MOGAHA: Ministry of Government Administration & Home Affairs)では、電 子政府関連プロジェクトを推進するために電子政府局(Bureau of e-Government)を設置し て組織を強化し、関連政策を実施している。 (4) 情報化支援機関 韓国の情報化支援機関には、韓国情報社会庁(NISA: National Information Society Agency, 2006 年に韓国電算院(NCA: National Computerization Agency)から名称を変更)、韓国デジ タル機会促進庁(KADOP: Korean Agency for Digital Opportunity & Promotion)、韓国情報セ キュリティ庁(KISA: Korea Information Security Agency)などがある。NCA は例年、国家 情報化白書(National Informatization White Paper)を発行している。 関連ウェブサイト MIC > About MIC > Organizations: http://www.mic.go.kr/index.jsp National Information Society Agency: http://www.nca.or.kr/ 3. u-IT839 戦略 2004 年、MIC は、IT839 戦略の名の下、8 大新サービス、3 大インフラストラクチャ、9 244 大ハードウェア関連事業からなる新成長戦略を発表した。 2006 年 2 月には、IT-839 計画を簡素化するとともに、IT サービスやソフト・インフラウ ェア(IT 利用に最も適した環境を構築するための共通ソフトウェア・ベース)や BCS (Broadband Convergence Service)を追加し、計画の名称を u-IT839 に変更した。u-IT839 計画は、2006 年~2010 年に生産額を年平均 14%押し上げることが期待されている。 MIC では、市場の活性化、ソフトウェア/部品/材料産業の強化、業界統合、世界にお ける指導的地位の維持などを通じて u-IT839 戦略を実施したい考えである。 (1) 戦略項目の再調整 2003 年 8 月の新成長原動力決定基準に従って策定された IT839 戦略は、すでに幅広く受 け入れられ、現在は民間投資が行なわれている。したがって、戦略項目の再調整は、IT 技 術、市場環境、優先政策を反映しながら、IT839 戦略の枠組みの中で行われる。 再調整は一部項目に限られ、各分野のコンセプトと役割を明確に定義しつつ、839 部門 相互の関連を最大化することが目指される。新戦略のコンセプトは、サービス=IT 産業発 展の契機、インフラストラクチャ=知識経済の要件、新成長原動力=1 人あたり 3 万ドル (約 363 万円)を実現する高収益産業、である。 新戦略では、技術革新を考慮して一部項目が統合されるとともに、ソフトウェア競争力 を強化する政策目的を反映した新項目が追加される。さらに、8 大サービスには将来動向 (産業間の融合など)、9 大新成長原動力には新たな活力が反映される。具体的な変更は以 下の通り。 (a) ソフトウェア産業の強化:ソフトウェア立国を目指した u-IT839 戦略にはすべてのソフ トウェア関連分野が含まれる。サービス→インフラ→新成長原動力というバリューチ ェーンに沿って「IT サービス」と「ソフト・インフラウェア」の 2 項目を追加し、現 行の「組み込みソフトウェア」および「デジタル・コンテンツ/ソフトウェア・ソリ ューション」とともに、ソフトウェア産業発展のために一貫性あるラインナップが形 成される。 (b) 8 大サービス:以下のように、将来の技術的進歩が考慮されるとともに、融合傾向に適 245 応するように戦略項目が調整されている。 • 従来の「W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)」が「HSDPA(High-Speed Dwonlink Packet Access)/W-CDMA」に変更された。 • デジタル化促進のための「衛星/地上波 DMB(Digital Multimedia Broadcasting)」お よび「地上波 DTV」が統合されて「DMB/DTV サービス」に拡張されている。 • 放送と通信の融合や、産業間の融合を加速化する中核的サービス要素である IP メ ディアが「BcN(Broadband convergence Network)」から切り離され、新たに「BCS」 が追加された。 • 「インターネット電話(VoIP)サービス」はすでに提供され、競争的市場が創設さ れた。さまざまなコンバージェンス・サービスとともに成長することが期待される ため、8 大サービスからは除外された。 • 従来のテレマティクスが「テレマティクス/位置ベース・サービス」に拡張されて いる。 • 3 大インフラ分野から、機器やサービスなどの産業要素が抽出され、9 大成長原動 力または 8 大サービスに移行された。 • USN(Ubiquitous Sensor Network)の機械要素(チップ、タグ、リーダーなど)が 「RFID/USN デバイス」に移動された。IP メディアのようなサービス要素が「BCS」 に移動された。次世代インターネットアドレス指定システムの IPv6 が「ブロード バンド・コンバージェンス・ネットワーク」に統合された。 (c) 9 大成長原動力:以下のように、対象分野を拡大するための調整が行なわれた。 • 「次世代モバイル通信機器」 「テレマティクス機器」が「モ ハンドセットの融合で、 バイル通信/テレマティクス機器」に統合された。 • 「BcN」と「ホーム・ネットワーク機器」が統合され、固定回線ベースの通信機器 を包含する「ブロードバンド/ホーム・ネットワーク機器」に名称変更された。 • 次世代 PC は、現在大きい関心を集めるコンピューティング分野の成長活力を増す ため、「次世代コンピューティング/周辺機器」に拡張されている。 • IT SoC は、システム関連の IT 部品/材料を開発するため、「IT SoC/コンバージェン ス部品」に拡張された。 246 IT839 戦略 u-IT839 戦略 W-CDMA HSDPA/W-CDMA WiBro WiBro (統合) 衛星/地上波 DMB BCS 地上波 DTV DMB/DTV サービス ホーム・ネットワーク・サービス u-Home サービス テレマティクス・サービス テレマティクス/LBS RFID ベース・サービス RFID/USN ベース・サービス インターネット電話(VoIP) IT サービス (除外) BcN BcN USN USN (統合) IPV6 ソフト・インフラウェア 次世代通信機器 モバイル通信/テレマティクス機器 ホーム・ネットワーク機器 ブロードバンド/ホーム・ネットワーク機器 デジタル TV/放送機器 デジタル TV/放送機器 次世代 PC 次世代コンピューティング/周辺機器 インテリジェント・サービス・ロボット インテリジェント・サービス・ロボット IT SoC IT SoC/コンバージェンス/部品 テレマティクス機器 RFID/USN 機器 (統合) 組み込みソフトウェア デジタル・コンテンツ/ソフトウェア・ ソ リューション 組み込みソフトウェア デジタル・コンテンツ/ソフトウェア・ソリ ューション Source: Ministry of Information and Communication, "IT 839 Strategy" 図ⅩⅣ-3 u-IT839 戦略:戦略項目の再調整 (2) 期待される成果 (a) 市場中心の u-IT839 戦略を実施することにより、新たな IT 成長の時代が開かれる。 • u-IT839 戦略の各分野で平均年成長率 14%を実現する。 • u-IT839 戦略の活動に基づき、新たな付加価値を生み出し、2006 年~2010 年累計の生 産額を 575 兆ウォン(約 74 兆 3,000 億円)とする。 (b)ユビキタス社会のための世界最高の IT インフラが早期に確立される。 • 通信、放送、インターネットを融合する BcN が完成する。 • 継続的な RFID 投資を促進し、u-IT クラスタを創設することにより、早期に USN を確 立する。さらに、IT 利用のためのソフト・インフラウェアが拡張される。 関連ウエブサイト MIC Home > Publication: http://www.mic.go.kr/index.jsp IT839 Strategy download: http://eng.mic.go.kr/eng/secureDN.tdf?seq=6&idx=2&board_id=E_04_03 247 4. u-KOREA マスタープラン 2004 年以来、韓国は、将来の情報化パラダイムがユビキタス社会へと移行するのに伴い、 開発戦略を策定するための調査を実施してきた。2005 年から「u-KOREA マスタープラン」 の策定準備が始まり、2006 年 3 月、情報化推進委員会の決議を受けて、世界初のユビキタ ス社会に向けて同計画は最終承認を受けた。 「u-Korea マスタープラン」は、情報化推進枠組み法第 5 条に基づき、 「Broadband IT Korea VISION 2007」を受け継ぐ政策である。この計画は、IT を活用して新しい社会経済的要求 に対応し、全国的な技術革新を実現して、ユビキタス社会の世界最先進国となる青写真を 描いている。 (1) 概要 「u-KOREA マスタープラン」のビジョンは、世界最高の u-インフラストラクチャに基 づく世界初の u-社会を実現することで、韓国を先進的な国家に変革することである。 このビジョンの下、マスタープランは、①政府②国土③経済④社会環境⑤個人生活の 5 分野にわたる達成目標、さらに①グローバル化②産業インフラストラクチャ③社会インフ ラストラクチャ④技術開発の 4 つの原動力について最適化目標を定めている。 248 ビジョン: 最高の u-インフラストラクチャに基づく世界初の u 社会 5 分野の達成目標 ①親しみやすい政府 ②インテリジェントな国土 ③経済の再生 ④安全な社会環境 ⑤u-ライフサービス 4 原動力の最適化 ①u-グローバル化の原動力 ②u-産業の原動力 ③社会インフラストラクチャの簡素化 ④透明な技術インフラストラクチャ Source: 2006 Informatization White Paper 図ⅩⅣ-4 u-KOREA マスタープランのビジョン (2) 実施フェーズ u-KOREA マスタープランは、①確立フェーズ(2006 年~2010 年)②安定化フェーズ(2011 年~2015 年)の 2 段階で推進される。 確立フェーズでは、BcN や USN などのネットワーク向上や法制度の整備を通じて、2010 年までにユビキタス社会に必要なインフラストラクチャの構築を行う。経済面では、韓国 の人口 1 人あたり GDP2 万 2,000 ドル(約 267 万円)、国家競争力世界 15 位以内を実現す る。社会面では、快適な交通/文化/住宅環境の整備、生活水準の向上、安全な社会の構築 により、韓国は生活の質で世界 25 位以内を目指す。 安定化フェーズでは、2015 年までに主要公共施設のインテリジェンス化、全産業部門へ のユビキタス・サービスの普及を実現する。経済面では、人口 1 人あたり GDP は 3 万ドル (約 363 万円)を実現し、国家競争力世界 10 位以内を実現する。社会面では、市民の満足 度が高く、生活の質、生活水準、物質的な豊かさの点で世界 20 位を目指す。 (3) 5 分野の達成目標 • 親しみやすい政府: ユビキタス IT の活用により親しみやすい政府を追求し、サプライ 249 ヤ志向の行政サービスから利用者および現場志向のサービスへ進化する。 • インテリジェントな国土: 現状認定と自動応答にユビキタスな IT 機能を使用して「イ ンテリジェントな国土」を実現する。 • 経済の再生: RFID/USN、モバイル・インターネット、インテリジェント・ロボット、 デジタル TV など、さまざまな技術を利用して経済システムの透明性を高め、国家経 済を再活性化するとともに、従来産業の活性化により成長可能性を高める。 • 安全な社会環境: バイオセンサー、高性能コンピュータ、衛星通信、RFID/USN などの さまざまな新技術が実現するリアルタイムデータ収集により、災害や疫病を予防する 環境をつくり、安全で清潔な社会を確立する。 • u-ライフサービス: ホームネットワーキング、インテリジェント・ロボットなどを通 じて個人の好みや環境に応じたサービスを提供し、便利で豊な生活条件を整備する。 (4) 4 原動力の最適化 • u-グローバル化の原動力(バランスのとれたグローバル・リーダーシップ): u-IT の主 導国となるため、IT 貿易および国際協力を強化し、グローバルな標準化活動を積極的 に主導する。 • u-産業の原動力(エコロジカルな産業インフラストラクチャ): 中核技術を開発する ため、e-クラスタを推進し、テストベッドを確立する。産業を活性化する。さまざま なユビキタス・サービスを統合するため、統合 u-インフラストラクチャを構築する。 • 社会インフラストラクチャの簡素化: u-サービスを経験する機会を拡大して市民の合 意を形成する。ユビキタス社会のための安全で信頼できる政策を策定する。プライバ シー保護のための政策を強化する。 • 透明な技術インフラストラクチャ: いつでもどこでもアクセスできるユビキタスネッ トワークを構築する。u-Korea 推進のためのアプリケーション技術を開発する。グロー バル市場での競争力を高めるため、標準化された環境を構築する。u-Korea の主原動力 として IT839 戦略を推進する。 関連ウェブサイト Publications: http://www.ipc.go.kr/ipceng/public/public_manager.jsp 2006 Informatization White Paper, p.10-12.: http://www.ipc.go.kr/ipceng/public/public_view.jsp?num=2360&fn=&req=&pgno=1 250 ⅩⅤ OECD 251 ⅩⅤ 1. • OECD 「OECD 情報技術アウトルック 2006」のポイント OECD は 2006 年 10 月、IT 産業の動向と発展、その経済社会への影響をレビューする OECD 情報技術アウトルック 2006 を発表した。 • アウトルック 2006 のトピックは、IT 部門の国際化、ICT が実現するサービスのグロー バル化、中国における IT 産業とインターネットの成長、デジタルコンテンツ、スキル と雇用、新技術の利用、加盟国の IT 政策などである。 • 世界全体の ICT 産業は 2006 年に 6%の成長が見込まれる。 • 新成長国の台頭に伴い、世界の 2000~2005 年の ICT 支出は年率で 5.6%の増加となっ た。 • 中国の 2005 年の ICT 支出は、2000 年以降の年率 22%の伸びを受けて、推計で 1,180 億ドルに達した。 • 中国は、同国で ICT 製品の組み立てを行う外国の ICT 企業やサードパーティの受注メ ーカーを誘致することで急成長している。 • 今後技術が進歩する可能性のある分野としては,ユビキタス・ネットワーク,自然災 害渓谷システム,双方向性ウエブ,ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技 術の融合などである。 2. 組織 経済協力開発機構(OECD: Organisation for Economic Cooperation and Development)は、 第 2 次世界大戦後の欧州経済復興を目的とした欧州経済協力機構(OEEC: Organisation for European Economic Co-operation)を前身として 1961 年に設立された。 現在の加盟国は次の 30 カ国である。 • 設立当時からの加盟国(20 カ国): オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、 フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、ルクセンブ ルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トル コ、英国、米国 • その後の加盟国(10 カ国): 日本、フィンランド、オーストラリア、ニュージーラン ド、メキシコ、チェコ、ハンガリー、ポーランド、韓国、スロバキア 252 OECD の組織は大きく分けて、理事会と委員会、事務局の 2 つの流れで構成されている。 これら 2 つを束ねるのが、理事会の議長を務める事務総長である。アンヘル・グリア(Ángel Gurría)事務総長は 2006 年 6 月に就任した。 事務総長(Secretary General) 理事会(Council) • 閣僚理事会 • 通常理事会 事務局(Secretariat) 委員会(Committee) • 作業部会(Working Group) • 専門家グループ(Expert Source: OECD 東京ホームページより作成 図ⅩⅤ-1 OECD の組織概要 関連ウェブサイト OECDの組織: http://www.oecdtokyo.org/outline/about04.html (1) 理事会 理事会は OECD の最高機関であり、すべての加盟国が参加する閣僚理事会(年 1 回春開 催)と常任代表による通常理事会(頻繁に開催)を招集する。 (2) 委員会 委員会は加盟国の代表によって構成され、年次作業計画を作成するとともに、作業部会 や専門家グル-プの補佐を受け、広範な分野にわたる研究調査を行う(委員会、作業部会 などの数は約 200、各国からの年間延べ参加者は約 4 万人に上る)。 (3)事務局 OECD 事務局は、約 2,000 人のスタッフ(経済、法律、社会科学などの専門家約 700 人や 253 行政官も含む)で構成され、事務総長が統括する。理事会の決定に従って各種実務を分担 し、委員会などの作業を補佐する。 関連ウェブサイト Overview of the OECD: http://www.oecd.org/document/18/0,2340,en_2649_201185_2068050_1_1_1_1,00.htm l 2.1 IT 政策の担当機関 情 報 コ ン ピ ュ ー タ 通 信 政 策 委 員 会 ( ICCP: Committee for Information, Computer and Communication Policy)は、デジタル経済に起因する諸問題、グローバルな情報インフラの 発展、グローバルな情報社会への進化に取り組んでいる。1983 年に科学技術政策委員会か ら独立して設立された。 情報コンピュータ通信政策委員会は、年 2 回の本会合のほか、テーマ別の作業部会など を通じた活動を行い、通信、情報技術に関する業界/政策分析報告書(「Outlook」)をそれ ぞれほぼ隔年で発行する。 同委員会の主な作業部会は次の通り。 • 情報経済に関する作業部会(WPIE: Working Party on the Information Economy) • 情報セキュリティプライバシーに関する作業部会(WPISP: Working Party on Information Security and Privacy) 関連ウェブサイト Information and Communication Technologies: http://www.oecd.org/topic/0,2686,en_2649_37441_1_1_1_1_37441,00.html 3. OECD 情報技術アウトルック 2006 OECD は 2006 年 10 月、IT 産業の動向と発展、その経済社会への影響をレビューする 「OECD 情報技術アウトルック 2006(2006OECD Information Technology Outlook)」(以下、 アウトルック 2006 とする)を発表した。 254 2006 年度は特に、IT 部門の国際化、ICT が実現するサービスのグローバル化、中国にお ける IT 産業とインターネットの成長を重点的に取り上げている。その他のトピックは、デ ジタルコンテンツ、スキルと雇用、新技術の利用、OECD 諸国の政策策定および優先項目 などである。以下では、これらについてハイライトをまとめている。 3.1 ICT 産業の概況 世界全体の ICT 産業は 2006 年に 6%の成長が見込まれ、OECD 域内の成長は、米国が景 気の回復を牽引していた前回のアウトルック 2004 発行当時に比べ均衡のとれたものにな ると見られる。マクロ経済パフォーマンスの改善を受けて、総投資は今や OECD 全域で増 加しており、ICT が総投資に占める割合も大きい。一部の ICT セグメント(インターネッ ト関連投資、携帯端末、消費者向けアプリケーション)は活力に満ちており、ベンチャー キャピタルの多くが引き続き ICT に流入しているほか、合併買収(M&A)も活発に行われ ている。ただし、予測された均衡ある持続的成長も、多くの製品や市場分野が 20~30%と いう急成長を遂げた 1990 年代の再現にはならないであろうと指摘されている。 2006 年の IT 支出、ICT 市場のデータも力強く広範な成長を裏付けている。新成長国の 台頭に伴い、世界の 2000~2005 年の ICT 支出は年率で 5.6%の増加となった。OECD の支 出は 4.2%増で、OECD の世界市場シェアは 2000 年の 89%から 2006 年には 83%へと低下 した。ICT 支出が最も急速に伸びているのは OECD 以外の新成長国である。中国の 2005 年の ICT 支出は、2000 年以降の年率 22%の伸びを受けて、推計で 1,180 億ドル(約 13 兆 9,000 億円、2006 年 12 月 22 日付け為替レート 1 ドル=118.19 円で換算)に達した。2000 ~2005 年の ICT 支出の伸びが最も大きいグループには、中国以外にもロシア(年率 25%) やインド(同 23%)など OECD 非加盟の 9 カ国が入った。これに続くグループには、イン ドネシア、南アフリカ、OECD 加盟の東欧諸国も含まれる。これらの国々における活力あ ふれる成長は、世界貿易、直接投資、合併買収におけるシェア拡大に反映されている。 ICT 分野のトップ企業は力強く回復しており、今や収益は 2000 年に比べ 20%以上伸び ている。2001~2002 年の大幅な収益落ち込みと多額の損失を経て、利益も大幅に増加して いる。しかし、その雇用は依然として横ばいにとどまっている。ハードメーカーの売上高 ランキングでは、日本のエレクトロニクス大手がランクを落とす一方、日本以外のアジア メーカーがランクを大幅に上げている。ICT 製品では中国企業が、IT サービスではインド 企業が、ますます重要な役割を果たすようになっている。半導体は、ICT 設備の主要部品 255 であり、ICT 市場動向を示す中心的指標の一つである。その売上は特にアジアで急速に成 長しているが、世界全体では 2004~2005 年に急速に成長した後、2006 年は幾分減速する と見られる。 ICT 分野の研究開発(R&D)は、この分野ばかりでなく、産業界全般にとっても成長と 変革の原動力となっている。R&D の動きは、一部で減速の兆しが出ているにもかかわらず、 活力に満ちている。OECD 加盟 19 カ国の R&D 関連の政府統計によれば、ICT 分野の R&D 費の GDP 比は過去 10 年間に 0.1 ポイント上昇し、0.4%強に達している。特に伸びている のは電子部品、ソフトウェア、IT サービスである。ICT 分野のトップ企業は R&D 集約度(投 資額に占める研究開発費の割合)を高めており、エレクトロニクス、部品、通信などに多額 の資金を投じている。 売上高 雇用 R&D支出 125 120 115 110 105 100 95 90 85 80 2000 2001 2002 2003 2004 2005 Source: OECD, Compiled from annual reports, SEC filings and market financials. 図ⅩⅤ-2 3.2 ICT 企業上位 250 社の業績動向 グローバルな事業再構築 東欧および OECD 非加盟の発展途上国は、ICT の生産国と同時に成長市場としても、重 要な役割を果たし、その役割は大きくなっている。この新しいグローバル化の波は、企業 256 が生産コストの差額や途上国の急速な生産能力の成長を活用する中で、主に効率性追求の 競争によって牽引されてきた。 ICT 製品貿易は、2003~2004 年に力強く回復した後、2005 年に再び安定的な伸びとなっ たが、2006 年には製品貿易全体とほぼ同じ伸びになると見込まれる。しかし、一次産品価 格の急騰や ICT 機器の価格下落基調に隠れて見えにくくなっているものの、2005 年と 2006 年の ICT 製品貿易(数量ベース)は比較的堅調なパフォーマンスとなっている。OECD の ICT 製品輸出は、電子部品や AV その他の ICT 関連機器の伸びに牽引され、2004 年にピー クを更新した。OECD の ICT 製品輸入も、通信機器や AV 機器の伸びに牽引され、新たな ピークをつけた。しかし、ICT 製品が製品貿易全体に占めるシェアは 13.2%と 1996 年の水 準に比べ微増にとどまっている。アイルランドは、ICT サービス及びソフトウェア商品に 関して OCED 最大の輸出国であり、2004 年の輸出高は 200 億ドル(約 2 兆 4,000 億ドル) におよぶ。 OECD諸国への輸出 非OECD諸国への輸出 OECD諸国からの輸入 非OECD諸国からの輸入 280 260 240 220 200 180 160 140 120 100 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 Source: OECD ITS database 図ⅩⅤ-3 OECD における ICT 商品貿易の流れ (1996 年~2004 年, 1999 年を 100 とした変化) 貿易および海外直接投資(FDI: Foreign Direct Investment)の方向は大きく変化した。ICT 製造およびサービスが非 OECD 諸国へシフトし、今日まで、較的低価格の輸出向けプロセ ス/アセンブリ、サービスに焦点を当ててきた中国、インド、東欧諸国が、韓国、アイル 257 ランドと並ぶ主要 ICT 生産国および輸出国の仲間入りを果たした。 世界全体の FDI フローは、2004 年に 2002 年と 2003 年の不振から持ち直して増加に転じ、 2005 年にはさらに増勢を強めたが、2006 年にも総じて良好な見通しとなっている。FDI の主要な要素である M&A も急増している。ICT 企業をターゲットとするクロスボーダー M&A は 2005 年に金額ベースで 47%増加したが、クロスボーダーM&A 総額の約 20%は ICT 企業をターゲットにしたものである。2006 年上期も M&A は活況を呈し、ドットコムブー ム以来の最高に達している。 3.3 サービスのグローバル化 ICT 分野の急速な技術進歩により、サービスの貿易可能性が増すとともに、じかに向き 合うことを必要としない、ICT が実現する多くのサービスを遠隔地から提供することがで きるようになっている。サービス業務とサービス貿易は依然として OECD 諸国が大半を占 めているが、多くの非 OECD 諸国の方が伸びは速い。コンピュータ、情報サービス、その 他の企業向けサービスの分野では、中国がすでに輸出の約 6.5%を、インドが輸入の約 5% を占めている。 258 % 1995 2004 14 12 10 8 6 4 2 米 国 英 ド国 ア オラ イツ イ ン ル ダ ラ フ ン ラ ド イ ンス タ リア 日 本 中 国 ベ 香 ル 港 ギ オ スペ ー シ ー イ ン ス ン ス ガポトリ ア ウ ー ェ ー ル デ イ ン ン デ カナ ド ン ダ マ ー ス ク イ イ ン 韓ス ドネ 国 イ シ ス サ ノルラエ ア ウ ル ジ ウェル ク ア ー セ ラ ン ビ ブ ア ブ ル ラ ク ジ ロ ル シ オ ア ー ス タ トラ イ レ リア バ ノン 0 Source: Based on IMF balance of Payments database, March 2006 図ⅩⅤ-4 ビジネスサービスおよびコンピュータ情報サービスにおける 輸出高上位 30 カ国のシェア(1995 年、2004 年) ICT インフラやビジネス枠組みの広範な発展は、新興国からのサービス供給が増加する 大きな可能性を示している。これらの国々、とりわけインドのサービス会社は世界的なビ ジネスモデルとサービス戦略を採用し、OECD 諸国にプレゼンスを確立し、OECD 諸国の 企業と競争するようになった。しかし、新興国の国内需要が増加し、その市場が国際市場 に開放されるにつれて、OECD 諸国のサービス会社も新市場での活動を拡大している。 国際的なサービス供給力を強化しつつある国々も国内の能力と自国の IT/ソフトウエ アサービスサプライヤーの競争力を強化する戦略を積極的に推し進めている。海外からサ ービスを調達している企業や国は、自らの将来の発展と成長がサービスの品質に左右され ることを認識しており、たとえば情報セキュリティやプライバシーなどがますます脚光を 浴びている。 259 3.4 競合国および成長の原動力としての中国 中国は、他の主要なアジアの ICT 生産国とは異なり、中国で ICT 製品の組み立てを行う 外国の ICT 企業やサードパーティの受注メーカーを誘致することで急成長している。中国 は 2004 年に米国を追い抜いて世界最大の ICT 製品輸出国となり、2006 年前半も ICT 輸出 は好調を保っていた。中国から輸出されているのは主にコンピュータや関連機器であるが、 そうした製品は、他のアジア諸国から輸入が増えている電子部品に大きく依存している。 輸出志向型の ICT 投資や中国国内市場の急速な発展の結果、中国向け投資は高水準となっ ている。2005 年の中国向け ICT 関連 FDI 流入額は約 210 億ドル(約 2 兆 4,900 億円)であ った。ICT 分野の外国関連企業の従業員 1 人当たり付加価値額は着実に増加しており、設 計、検査、R&D など技術的により複雑な業務も中国へのシフトが進んでいる。 中国の ICT 企業は、比較的小規模で技術的ノウハウでは劣るものの、生産輸出能力を急 速に高めており、技術、ブランド、販路を求めて海外にも投資している。ただし、中国の ICT 産業は低コスト生産から高付加価値のモノやサービスへの移行を果たさなければなら ない。より一般的に見て、中国企業は ICT を自社のバリュー・チェーンに組み込む必要が ある。政府は、国内情報産業の構造変化、国有 ICT 企業の創設、国内の技術革新能力の向 上を加速することに焦点を当てており、中国独自の ICT 規格の策定も進めている。 需要面では、中国の ICT 市場規模は第 6 位で、インドの約 2.5 倍であるが、2005 年で見 ても依然としてその市場規模は米国の約 10 分の 1 に過ぎなかった。中国は既に世界最大の 携帯電話市場、世界第 2 位の PC 市場(都市部での世帯普及率は 1997 年~2003 年の間、2 年毎にほぼ倍増)である。 2005 年末現在、中国のインターネット利用者は 1 億 1,100 万人、うちブロードバンド利 用者は 6,430 万人であった。調査によれば、中国企業の半分以上、場合によっては 4 分の 3 もの企業がインターネットを利用しており、電子商取引は急速に伸びている。にもかか わらず、ブロードバンド利用者は全人口の約 4%、インターネット利用者は約 8%に過ぎず、 電子商取引は OECD 諸国に比べると比較的遅れており、また、都市部と農村部のデジタル デバイドも依然として著しい。 3.5 デジタルコンテンツの作成・配信・利用 260 デジタルコンテンツは今や ICT 産業の重要な柱の 1 つである。技術革新や新たな消費者 ニーズが、新規またはより直接的な創造的供給形態、新しい配信方法、潜在的に改善され た利用方法をもたらしている。 コンテンツ産業はデジタルコンテンツの商用アプリケーションへと移行しているが、そ の成功の度合いはさまざまである。ゲーム、音楽、科学出版、モバイルコンテンツなどの 業界はそれぞれ独特の性格を有しているが、デジタルコンテンツはどの業界にとっても主 要な原動力となっている。新しいタイプのコンテンツが開発されたり(オンラインゲーム など)、テレビなどの従来のエンターテインメントに取って代わったりしている。会費(ゲ ーム)やペイパーユーズ(音楽)など、新しいビジネスモデルが試されている。 モバイル/無線サービス、コンテンツ保護、配信システムを含む、ネットワーク、ソフ トウェア、ハードウェアの技術進歩が続き、より先進的なデジタルコンテンツの開発を可 能にした。デジタルコンテンツの生産では、コンテンツ開発者、機器製造者、配信者間で 合意が必要となるため、協力の強化が大きな課題になっている。実装が成功にするには、 支払いシステム、コンテンツ保護技術など、適切でコスト効率の良いインフラ・サービス が必要とされる。コンテンツの相互運用性や互換性の問題も解決する必要がある。 3.6 雇用と競争力のための ICT スキル ICT スキルはますます職場で必要となっている。雇用者全体の 5%が ICT 専門職に、約 20%が ICT を利用している職種に就いている。ICT 専門職の定義は進化しており、ICT 分 野の専門スキルばかりでなく、ビジネスやマーケティングなど ICT 以外のスキルも要求さ れるようになっている。 ICT の急速な技術的発展と貿易および投資サービスの継続的自由化が意味するところは、 テレマーケティング・サービスが今や世界中どこからでも提供することができる、という ことである。分析によれば、最大で雇用者全体の 20%が ICT の実現する海外への業務移転 (オフショアリング)の影響を受ける可能性がある。ただし、これだけの雇用が必ず海外 に移転されるということではなく、雇用労働者全体の約 20%が世界中どこからでも行える 仕事や職務に就いているということである。さらに、ICT によりサービスがグローバル化 しているということは、どの国でもこれらの職種の雇用が増えるということでもある。ICT の実現するサービスのグローバル化は、各国がそれらのサービスで雇用を創出できるとい うことを意味する。インドや中国など、サービス提供国の規模を考えると、当面、ICT ス 261 キルと第 3 次教育を身に付けた労働者の不足に悩まされることはないであろう。それどこ ろか、これらの労働者は増加する傾向にある。 3.7 新技術のアプリケーション 多くの新しい ICT アプリケーションは大きな可能性を秘めており、異なる技術の連結や 集約により基本的役割を果たすとともに、甚大な経済的・社会的影響をおよぼす可能性が 高い。こうした新技術の 1 つとして、ヒトやモノが場所に関係なくリアルタイムで情報の 追跡、貯蔵、処理ができるようにするユビキタス・ネットワークが挙げられる。RFID(Radio Frequency Identification; IC チップを利用した非接触認証技術)その他のセンサー技術など のアプリケーションはますます安価になり、投資は増え、アプリケーションは商用へと移 行している。位置情報を利用する LBS(Location Based Service)はさまざまな位置決定技 術を利用してモノや利用者を追いかけるものであり、その最も一般的なアプリケーション はナビゲーションと資産追跡管理である。 災害は大きな経済的損失(2005 年には総額で 1 兆 7,000 億ドル(約 200 兆円)に達した) をもたらすとされ、その影響を軽減する上で、自然災害防止警戒技術(津波早期警報シス テムなど)の重要性が高まっている。利用者参加型のウェブ(ウェブ 2.0)は、インター ネット利用者がコンテンツの作成、インターネットのカスタマイズ、さまざまな分野向け のアプリケーションの開発に積極的に参加するものである。その最も一般的な形態の 1 つ がブログであり、その数は 2006 年半ば時点で約 5,000 万に上っている。 ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術の融合は大きなチャンスと課題をも たらす可能性が大きい。ヘルスケアとロボット工学などのアプリケーションの融合を受け て、OECD 諸国はその潜在的な影響を評価する動きを強めている。たとえば、神経(ニュ ーロ)テクノロジーは、エレクトロニクスとエンジニアリングの人の神経システムへの適 用である。 3.8 加盟国の IT 政策 ICT は、技術革新と経済的成長の源泉として評価され、各国の国家 ICT 戦略は、政策の 実効性を最大化し、より的を絞り込んだ政策やプログラムの提供を改善するため、各国は、 政府の各レベルを通じて垂直的に、また各省庁を横断して水平的にも政策調整を強化して 262 いる。OECD 諸国が ICT の利用、基礎的スキル、コンテンツの強化拡充で成果を上げるに つれ、焦点はブロードバンド、より先進的なスキル、高度なコンテンツなどを通じてこれ らの成果を深めることに移行している。 優先的政策の全般的移行は、これらの変化を反映している。調整と政策策定には一層焦 点が置かれ、ICT 分野の R&D 強化、技術革新、ICT の普及と利用(ブロードバンドとオン ライン政府)、ICT スキルと雇用の向上(特に ICT 教育)、デジタルコンテンツ、知的財産 権保護、オンラインの信頼向上などにも注力している。こうした政策枠組みの向上や、優 先的政策の動向は、OECD 諸国、非 OECD 諸国を問わず、重要な一般的教訓を与えている。 ICT 政策 ICT 技術革新 の促進 普及/利用拡 大 R&D プ ロ グ ラ ム 家庭および個 人への普及 政府開発 企業への普及 健全な ICT ビジネス環 境の維持 ICT 市場の競争 ICT 政策 オンライン の信頼促進 電子支払い/決 済 規格 情報システム およびネット ワークのセキ ュリティ ブロードバン ド プライバシー 保護 一般ネットワ ークインフラ 消費者保護 知的財産権 貿易および FDI ベンチャーフ ァイナンス 専門職/管理職 の ICT スキル 技術革新ネッ トワーク 組織変更 国際協力 電子政府 コンテンツ Source: OECD Information Technology Outlook 2006. 図ⅩⅤ-5 OECD の IT 政策枠組み 大半の国では評価が依然として大きな弱点となっている。たとえば、ブロードバンドの 普及に注力しているにもかかわらず、ブロードバンド政策の評価を行っている国はほとん 263 どない。各国の評価と政策への影響を比較するには、IT 政策の実効性を評価するための手 法を共有し、その質を高めていく必要がある。特に、政府間で評価の方法論が統一される まで、各国の評価を比較するのは難しい。 関連ウェブサイト OECD 東京 : http://www.oecdtokyo.org/ 「情報技術アウトルック 2006 年版」 : http://www.oecd.org/document/10/0,2340,en_2649_37441_37486858_1_1_1_37441,00.html 264
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