RK003:201* AESJ-SC-RK03 :201* 学会の マーク 審査 日本原子力学会標準 原子力発電所の確率論的リスク評価標準で 公衆 共通に使用される用語の定義:201* 201*年 月 一 般 社 団 法 人 日本原子力学会 審査 公衆 RK003:201* まえがき 原子力発電所の確率論的リスク評価標準で共通に使用される用語の定義:201*は,日本 原子力学会が標準委員会・リスク専門部会にて制定する標準に共通する「用語及び定義, 略語」について検討し,リスク専門部会,標準委員会での審議を経て策定・発行したもの です。 リスク専門部会が制定する標準には, 「用語及び定義,略語」が記載されています。記載 審査 されている用語には,既発行の複数のリスク評価標準にて重複しているものがあります。 また,それぞれの標準に適合するべく表現を見直している場合も見られます。これは,標 準の制定時期によって,用語の定義を見直し,より適切なものに改訂されることによって います。 新たに標準を作成する場合に, 「用語及び定義,略語」を定めるにあたり,既発行の標準 の調査を実施していますが,引用規格に記載されている用語も必要に応じて記載していま す。その場合には,複数の標準にて定義される「用語及び定義,略語」を相互に整合させ ることが必要となります。 標準を利用する立場の観点からは,いくつかの問題点が指摘されます。まず,標準によ って用語の定義が異なる場合には混乱を引き起こす可能性があります。次に,他の標準と 共通の用語とその標準特有の定義として使用する用語が同列に記載されているため,両者 の判別が困難となります。 公衆 リスク専門部会にて制定する標準に共通する「用語及び定義,略語」について共通用語 集を制定することにより,これらの課題に対処することといたしました。 i 以上 ii RK00*:201* FOREWORD Terms and definitions used commonly in the Probabilistic risk assessment (PRA) standards for nuclear power plants 201* has been established and issued by the Atomic Energy Society of Japan (AESJ) through the discussion at the Risk Technical Committee and the Standards Committee. The standard describes the "technical terms and definitions, and acronyms" that appears commonly in risk-related standards issued by the AESJ. 審査 The standards established by the Risk Technical Committee include a chapter that specifies "technical terms and definitions, and acronyms". Some of the terms are listed in more than one standard redundantly. The definitions in those are subtly different from each other because they are respectively revised in conformity to individual usage in the standard. The usage of the technical terms may be slightly different and be updated to be most appropriate for periods of the standard published. When we establish a new standard, the "technical terms and definitions, and acronyms" listed in the previously published standards are investigated. Even if a technical terms and definitions appear in the above cited standards, they appear in duplicate in some situations to enhance usability of users. In that case, the definition in more than one standard should be consistent with each other. From the perspective of standard users, the present situation raises a few problems. First, 公衆 different definitions in the standard terminology might cause confusions to users. Secondly, it is difficult to identify the technical terms which are used in special meaning in the standard only. Accordingly, the Risk Technical Committee has decided to establish a standard for common terminology, "technical terms and definitions, and acronyms" for the PRA standards. 制定:201*年 月 日 この標準についての意見又は質問は,(社)日本原子力学会事務局標準委員会担当(〒105-0004 区新橋 2-3-7 TEL 03-3508-1263)にご連絡ください。 東京都港 RK003:201* 免責条項 この標準は,審議の公正,中立,透明性を確保することを基本方針とした標準委員会規約に従 って,所属業種のバランスに配慮して選出された委員で構成された委員会にて,専門知識及び関 心を有する人々が参加できるように配慮しながら審議され,さらにその草案に対して産業界,学 界,規制当局を含め広く社会から意見を求める公衆審査の手続きを経て制定されました。 (社) 日本原子力学会は,この標準に関する説明責任を有しますが,この標準に基づく設備の 建設,維持,廃止等の活動に起因する損害に対しては責任を有しません。また,この標準に関連 審査 して主張される特許権及び著作権の有効性を判断する責任もそれらの利用によって生じた特許 権及び著作権の侵害に係る損害賠償請求に応ずる責任もありません。そうした責任はすべてこの 標準の利用者にあります。 なお,この標準の審議に規制当局,産業界の委員が参加していますが,このことはこの標準が 規制当局及び産業界によって承認されたことを意味するものではありません。 Disclaimer This Standard was developed and approved by the Standards Committee of AESJ in accordance with the Standards Committee Rules, which assure fairness, impartiality, and transparency in the process of deliberating on a standard. The Committee is composed of individuals who are competent or interested 公衆 in the subject and elected, keeping the balance of organizations they belong in the subject, with their professional affiliations well-balanced as specified in the Rules. Furthermore, the standard proposed by the Committee was made available for public review and comment, providing an opportunity for additional input from industry, academia, regulatory agencies and the public-at-large. AESJ accepts the responsibility for interpreting this standard, but no responsibility is assumed for any detriment caused by the actions based on this standard during construction, operation, or decommissioning of facilities. AESJ does not endorse or approve any item, construction, device, or activity based on this standard. AESJ does not take any position with respect to the validity of any patent rights or copyrights claimed in relation to any items mentioned in this document, nor assume any liability for the infringement of patent rights or copyrights as a result of using this standard. The risk of infringement of such rights shall be assumed entirely by the users. The Committee acknowledges with appreciation the participation by regulatory agency representatives and industry-affiliated representatives, whose contribution is not to be interpreted that the government or industry has endorsed this standard. iii iv RK00*:201* 著作権 文書による出版者の事前了解なしに,この標準のいかなる形の複写・転載も行ってはなりません。 この標準の著作権は,全て(社)日本原子力学会に帰属します。 Copyright permission of AESJ. 審査 No part of this publication may be reproduced in any form without the prior written Copyright © 2009 Atomic Energy Society of Japan 公衆 All Rights Reserved. RK003:201* (社)日本原子力学会における原子力標準の策定について “原子力発電所の確率論的リスク評価標準で共通に使用される用語の定義”は,1999 年 9 月 22 日に設置された(社)日本原子力学会標準委員会(Standards Committee of AESJ)が,原子力施設の 安全性と信頼性を確保してその技術水準の維持・向上を図る観点から,原子力施設の設計・建設・ 運転・廃止などの活動において実現すべき技術のあり方を,原子力技術の提供者,利用者,専門 家の有する最新の知見を踏まえ,影響を受ける可能性のある関係者の意見をパブリックコメント 化した原子力標準の一つです。 審査 をも通じて聴取するなど公平,公正,公開の原則を遵守しながら審議し,合意したところを文書 この委員会は,産業界と学界が共同して我が国の経済的,社会的環境,国民性,産業構造,技 術の発達等を十分勘案し,市場における健全な製品を識別する基準を消費者に提供することを目 指して,合意できるところを原子力標準として随時制定し,それを最新の知見を反映して改定し ていくことを使命にしています。これにより,消費者が当該技術についての最新の知見を迅速に 利用することが可能になる一方,市場競争に参加している生産者は,当該技術が標準化されたこ とを前提として,比較優位性を生み出す技術領域の開発に努力を集中することが可能になります。 また,我が国においてはこれまで,国民の生活の質を確保し,経済社会の安定な発展を支える ため,国が規制行政活動の一部として所要の標準を国家標準として制定し,行政判断に使用して きましたが,技術革新のスピードが速く,新技術の利用範囲が連続的に拡大していく今日にあっ ては,技術の変化に合わせて国家標準を適正化していく作業が追いつかないため,国民が最新の 技術知見の利益を享受するのに遅れを生じるおそれが指摘されていました。しかしながら,この ような委員会の活動が活発になされ,そこで国民の合意を得て制定されたいわゆるコンセンサス 公衆 標準を国が行政ニーズに応じて利用していくことになれば,小さい行政コストで新しい技術的知 見を迅速に国民の利用に供する環境が整備されることになります。さらに,これを国際標準化し ていく努力を行うことも学会でこそ可能であり,これの実現は我が国の国際技術戦略上重要な貢 献となるでしょう。 標準委員会は,専門家集団の果たすべきこのような役割と責任を意識しながら,ボランティア 精神を基盤に,原子力施設において今後予想される上記のニーズに対応する標準策定活動を行う ために,公平,公正,公開の原則に則って運営規約を定め,発電炉,原子燃料サイクル,研究炉 の 3 分野で部会を設置して活動を行ってきましたが,この度専門部会組織を見直し,新たにリス ク,システム安全,基盤・応用技術,原子燃料サイクルの4専門部会で活動の充実を図ることと しました。因みにこの標準はリスク専門部会にて作成,審議しました。この標準が上の趣旨を踏 まえて各方面で活用されることを期待します。なお,この内容については原則として 5 年ごとに 改定することとしておりますので,本委員会はこの標準の利用に際してのご質問や改定に向けて のご提案をいつでも歓迎します。 201*年 月 標準委員会 委員長 v 宮野 廣 vi RK00*:201* リスク専門部会の活動について リスク専門部会(以下,本専門部会)は,標準委員会の専門部会構成の見直しに伴い,リスク 情報活用の為の考え方,各原子力施設における PRA(Probabilistic Risk Assessment)の手法およ びそれから得られるリスク情報を各分野に於いて活用する為の具体的方法などに関連した標準 の整備を行う専門部会として,2008 年 12 月以来,活動を行っています。 審査 PRA は 1960 年代に米国において研究開発が進められ,1975 年の WASH-1400,さらに 1991 年 の NUREG-1150 に至り,その後の PRA の礎が築かれました。PRA には,原子力施設からの定量 的リスクに加え,リスクに寄与する要因やその寄与の程度などのリスク情報を把握できるという 利点があり,このことを踏まえて,欧米では PRA から得られるリスク情報の活用が進んできて います。我が国においても,安全評価としての利用を経て,リスク情報を規制や安全確保活動に 活用する動きが活発化し,原子力安全委員会あるいは原子力安全・保安院から,安全規制の合理 性・整合性・透明性を向上し,安全規制活動のための資源の適正配分を図るため,リスク情報を 活用した安全規制を導入していく,との基本的考え方が示されています。標準委員会は,これら に先駆け,2002 年に“原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価手順”を制定して いましたが,我が国におけるリスク情報活用が本格的な活用の段階に入ろうとしていることから, 標準整備の一層の充実と促進を図ることとしました。 本専門部会としては,既に整備してきた標準について,PRA 技術の進歩に加え,活用事例の 公衆 増加に伴う評価経験の蓄積などに基づき,より合理的で使いやすいものに見直して行くとともに, さらに新たな PRA 手法あるいは活用分野の拡大に備え,整備していく標準の範囲を拡張してい くことが必要と考えています。また,リスク情報活用の活性化を促すことが延いては合理的効率 的な標準策定につながると考え,傘下に戦略タスクを設け,リスク情報活用への関連する組織に おける取組みが円滑に進むように,標準策定の視点からの意見交換の場を提供し,そこから標準 策定のロードマップ検討を経て,時宜を得て必要な標準を策定することとしています。 本専門部会は公開で行われていますので,事前に連絡頂ければ傍聴することができます。また 審議過程は議事録として残し,ホームページにも掲載されますので,活動状況を確認いただくこ とも可能です。 標準は,新技術の開発状況や新たに得られた知見に基づいて適切に改定されていくことによって, その利用価値が維持できるものです。そのため,少なくとも年に一度は本専門部会で改定の必要 性について検討を行い,原則として5年毎に改定版を作成していくこととしてその原案を作成し ていきたいと考えています。 201*年 月 標準委員会 リスク専門部会 部会長 山口 彰 RK003:201* 標準委員会,専門部会,分科会 委員名簿 標 準 委 員 会 (順不同,敬称略) (201*年 月 日現在) 宮野 廣 法政大学 副委員長 有冨 正憲 東京工業大学 委員 千種 直樹 関西電力(株) 副委員長 関村 直人 東京大学 委員 常松 睦生 原子燃料工業(株) 幹事 岡本 孝司 東京大学 委員 津山 雅樹 一般社団法人 幹事 山口 彰 大阪大学 委員 中井 良大 (独)日本原子力研究開発機構 委員 青柳 春樹 日本原燃(株) 委員 西岡 周二 日本原子力保険プール 委員 井口 哲夫 名古屋大学 委員 西脇 由弘 東京大学 委員 鶴来 俊弘 中部電力(株) 委員 林 大作 日揮(株) 委員 岩田 修一 東京大学 委員 谷本 亮二 三菱マテリアル(株) 委員 牧 委員 本間俊充 (独)日本原子力研究開発機構 原子力安全・保安院 委員 古川 雄二 三菱重工業(株) 委員 水繰 浩一 九州電力(株) 委員 山下 和彦 東京電力(株) 委員 伊藤 慎一郎 経済産業省 審査 委員長 委員 岡本 太志 富士電機㈱ 委員 小原 徹 東京工業大学 委員 加藤 正美 (独)原子力安全基盤機構 委員 喜多尾 憲助 裕之 一般社団法人 日本電機工業会 日本原子力技術協 会 公衆 ISO/TC85・IEC/TC45 国内委員会 委員 三枝 利有 (財)電力中央研究所 委員 谷川 尚司 日立 GE ニュークリア ・エナジー(株) 旧委員(所属は退任時所属) 平野 雅司((独)日本原子力研究開発機構) 常時参加者 小口 大学) 一成(原子燃料工業(株)), 菊池 恂(内閣府 vii 原子力安全委員会事務局),中村 隆夫(大阪 viii RK00*:201* リスク専門部会 (順不同,敬称略) (201*年 月 山口 彰 大阪大学 副部会長 山下 正弘 (独)原子力安全基盤機構 委員 関根 啓二 日本原燃(株) 幹事 成宮 祥介 関西電力(株) 委員 高田 毅士 東京大学 委員 岡本 孝司 東京大学 委員 竹山 弘恭 中部電力(株) 委員 日野 裕司 経済産業省 審査 部会長 日現在) 委員 野中 信之 (独)日本原子力研究開発機構 原子力安全・保安院 委員 橋本 和典 (株)東芝 委員 梶本 光廣 (独)原子力安全基盤機構 委員 福山 智 日本原子力発電(株) 委員 河合 勝則 三菱重工業(株) 委員 本間 俊充 (独)日本原子力研究開発機構 委員 喜多 利亘 (株)テプコシステムズ 委員 馬場 厚視 三菱原子燃料(株) 委員 北村 豊 (株)三菱総研 委員 松本 精二 日本エヌ・ユー・エス(株) 委員 桐本 順広 (財)電力中央研究所 委員 宮田 浩一 東京電力(株) 委員 倉本 孝弘 (株)原子力エンジニアリング 委員 守屋 公三明 (株)日立GE・ニュークリア・ 委員 越塚 誠一 東京大学 委員 佐々木 委員 村田 エナジー 憲明 (独)原子力安全基盤機構 尚之 一般社団法人 公衆 術協会 日本原子力技 委員 山本 章夫 名古屋大学 委員 吉田 一雄 (独)日本原子力研究開発機構 委員 STEVEN WOODY EPSTEIN( (Scandpower Inc.) 旧委員(所属は退任時所属) 小野 祐二(経済産業省原子力安全・保安院), 座間 了(三菱原子燃料(株)) 常時参加者 安田 宗浩(関西電力(株)) 俊行(一般社団法人 日本原子力技術協会) ,松岡 由 RK003:201* 標準の利用に当たって 標準は対象とする技術,活動あるいは結果の仕様についての関係者のコンセンサスを規 定しているものです。標準にはこうあるべきという義務的事項の他,こうあってもよいと して合意された非義務的な事項も含まれています。しかし,標準は,対象としている技術, 活動あるいは結果の仕様について,規定している以外のものを排除するものではありませ ん。 審査 また,標準が規定のために引用している他規格・標準は,記載された年度版のものに限 定されます。標準は全体として利用されることを前提に作成されており,公式な解釈は標 準委員会が行ないます。標準委員会はそれ以外の解釈については責任を持ちません。標準 を使用するにあたってはこれらのことを踏まえて下さい。 なお,標準委員会では,技術の進歩に対応するため,定期的に標準を見直しています。 公衆 利用にあたっては,標準が最新版であることを確認して下さい。 ix 審査 公衆 AESJ-SCRK00*:201* 目 次 1. 適用範囲 ..................................................................................................................................... 1 2. 用語及び定義,略語 ................................................................................................................. 1 公衆 審査 解説 .................................................................................................................................................... 14 (1) 審査 公衆 AESJ-SCRK00*:201* 日本原子力学会標準 原子力発電所の確率論的リスク評価標準で 共通に使用される用語の定義:201* 適用範囲 1. 審査 Terms and Definitions used Commonly in the Probabilistic Risk Asssessment (PRA) Standards for Nuclear Power Plants : 201* この標準は,原子力学会標準委員会が発行する原子力発電所の確率論的リスク評価 (以下,PRAという)標準で使用する用語及び定義,略語を規定する。 なお,ある用語が,本標準と個別のリスク評価標準の両方で定義がなされている場合に は,個別の確率論的リスク評価標準で規定されている定義を優先する。 用語及び定義,略語 2. 原子力発電所の確率論的リスク評価標準に使用する用語の定義を示す。また,略語の定 2.1 公衆 義を表 1 に示す。 アンアベイラビリティ (Unavailability) 評価対象期間にわたって,ある構築物,系統及び機器が機能を果たすことが出来ない状 態となる平均的な確率。 注記 試験及びメンテナンスによるアンアベイラビリティは評価対象期間と待機除外期 間を考慮する。また,機器故障確率を含む場合と含まない場合とがある。 2.2 安全機能 (Safety Function) 原子力発電所の安全性を確保するために必要な各種の機能。 2.3 一般パラメータ (Generic Data) 当該プラント固有のデータのみを用いずに,複数のプラントに関連したデータ又は専門 家判断等を活用して作成された PRA 用パラメータ。 例 原子力業界のデータに基づく起因事象発生頻度,故障確率の一般パラメータ,一般 2 RK00*:201* 産業の類似機器の一般パラメータ 2.4 イベントツリー (Event Tree, ET) 構築物,系統及び機器の損傷,並びに故障及び事故などの起因事象を出発点に,事象が どのように進展して最終状態に至るかを,関連する緩和設備の作動の成否などを分岐とし 2.5 外的事象 (External Event) 審査 て樹形状に展開した図式。 原子力発電所の外部で発生する地震,津波,洪水等によって引き起こされる起因事象。 若しくは,内部で発生する火災又は溢水等によって引き起こされる起因事象(機器ランダ ム故障及び人的過誤を除く)。 2.6 格納容器イベントツリー (Containment Event Tree) プラント損傷状態を出発点として,事象がどのように進展して格納容器機能喪失に至る 2.7 公衆 かを,関連する緩和設備の作動の成否などを分岐として樹形状に展開した図式。 格納容器機能損失 (Containment Failure) 格納容器バイパス及び/又は格納容器破損によって,原子炉施設の放射性物質の閉じ込め 機能が喪失すること。 2.8 格納容器機能喪失頻度 (Containment Failure Frequency, CFF) 単位時間・プラント当たりの格納容器機能喪失事故の発生回数,又はその期待値。 2.9 格納容器バイパス (Containment Bypass) 燃料から放出された放射性物質が格納容器雰囲気を経由することなく環境に直接放出さ れる事象。 2.10 格納容器破損 (Containment Damage) 3 RK003:201* 格納容器の放射性物質閉じ込め機能が,限界耐力以上の負荷によって構造的な損傷によ り喪失すること。 2.11 格納容器破損頻度 (Containment Damage Frequency) 2.12 審査 単位時間・プラント当たりの格納容器破損事故の発生回数,又はその期待値。 格納容器破損モード (Containment Damage Mode) 炉心損傷事故時の格納容器の放射性物質閉じ込め機能に着目した格納容器の最終状態を, 格納容器破損に至るメカニズムに基づいて分類したもの。 注記 格納容器破損モードには,格納容器破損には含まれない格納容器ベント,格納容 器が健全に維持されるもの,及び格納容器バイパスも含める。 2.13 緩和設備 (Mitigation System) 起因事象の影響を緩和し炉心損傷及び/又は格納容器機能喪失への波及を阻止する機能を もつ設備。 原子炉停止系,非常用炉心冷却系,残留熱除去系,原子炉格納容器スプレイ系 注記 常用系の設備であっても安全機能を有する場合には,緩和設備に含める。 2.14 公衆 例 緩和操作 (Operation for Mitigation) 起因事象の影響を緩和し炉心損傷及び/又は格納容器機能喪失への波及を阻止するために, 主に運転員が行う操作。 2.15 起因事象 (Initiating Event) 通常の運転状態を妨げる事象であって,炉心損傷及び/又は格納容器機能喪失へ波及する 可能性のあるもの。 2.16 起因事象従属性 (Initiating Event Dependency) 起因事象が,その事象の緩和設備の動作に影響を及ぼすこと。 例 外部電源の喪失又は補機冷却水系の喪失は,関連する緩和設備のアンアベイラビ リティに影響を与える。 4 RK00*:201* 2.17 基事象 (Basic Event) フォールトツリー解析において,それ以上展開しない事象。 例 人的過誤,機械的故障,境界条件に関連する事象 2.18 共通原因故障 (Common Cause Failure) 2.19 許容時間 (Time Margin) 審査 共通の原因によって,同時又は短期間のうちに 2 つ以上の機器に発生する従属故障。 起因事象が発生した場合に,炉心損傷及び/又は格納容器機能喪失への拡大防止の観点か ら,緩和設備の作動開始又は緩和操作の遂行までに許容される時間余裕。 2.20 行動形成因子 (Performance Shaping Factor, PSF) 人間信頼性解析で考慮する人的過誤確率に影響をもつ因子。 例 トレーニングレベル,操作の難易度,操作に必要とされる時間に対して許容され 2.21 公衆 る時間的裕度 故障モード (Failure Mode) 機器の故障の態様。 例 2.22 起動失敗,継続運転失敗,リーク 最終状態 (End State) 事故シーケンスの結果として生ずるプラント等の状態。 注記 レベル 1PRA での最終状態は,成功状態及び炉心損傷状態である。レベル 1PRA の 評価結果を基にレベル 2PRA を実施する場合には最終状態を細分化する(2.46 プ ラント損傷状態参照) 。 2.23 最小カットセット (Minimal Cut Set) 頂上事象を引き起こす基事象の最小の組合せ。 注記 ミニマルカットセットともいう。 5 RK003:201* 2.24 サポート系 (Support System) フロントライン系の機能を支援する系統。 例 電気系統,補機冷却水系統,海水系統,空気系統,換気空調系統 2.25 事故シーケンス (Accident Sequence) 審査 起因事象の発生から緩和機能及び人的操作の成功又は失敗の組合せを経て望ましくない 最終状態(炉心損傷,放射性物質放出,公衆被ばくなど)に至る経路。 2.26 事故シナリオ (Accident Scenario) 事故に至るまでの事象連鎖の因果関係を表したもの。 2.27 システム (System) 特定の機能又はその一部を達成するための建物・構築物,機器・配管系,運転員又はそ 2.27.1 公衆 れらによって構成されるもの。 システム解析 (System Analysis) システムの構成及び構成要素を分析してシステム信頼性を評価すること。 2.28 シビアアクシデント (Severe Accident) 設計基準事故を超える事象であって,安全設計の評価上想定された手段では炉心又は使 用済燃料の適切な冷却,反応度の制御ができない状態であり,その結果,炉心又は使用済 燃料の重大な損傷に至る事象。 2.28.1 シビアアクシデント対策設備 (Severe Accident Management Measure) シビアアクシデントに対し施す措置,すなわち,シビアアクシデントの発生防止措置, シビアアクシデントに拡大した場合の影響緩和措置,あるいは安全状態の安定的かつ長期 的な確保のための措置に用いる設備。 6 RK00*:201* 2.29 使命時間 (Mission Time) ある系統又は機器が要求される安全機能を果たすために必要な運転継続時間。 2.30 従属故障 (Dependent Failure) 2.31 重要度 (Importance) 審査 ある事象が発生したことで必然的に発生する,他の“構築物,系統及び機器”の故障。 炉心損傷頻度及び格納容器機能喪失頻度などに対する構築物,系統及び機器の寄与度。 注記 重要度の指標については様々な提案がある。 例 Fussell-Vesely 重要度,リスク増加価値(Risk Achievement Worth,RAW) ,リスク低 減価値(Risk Reduction Worth,RRW) 2.32 人的過誤 (Human Error) 運転員又は保修員が実施する操作に関連する過誤。 要求時の操作忘れ,選択時に操作を誤る 注記 意図的に行われる悪意の行為は含まない。 2.33 公衆 例 成功基準 (Success Criteria) 所定の安全機能を遂行するために必要とされる緩和設備若しくは緩和操作の組合せ,又 は緩和設備若しくは緩和操作がその機能を達成するために必要とされる条件。 例 2.34 機器の作動台数,機器の容量,機器の使命時間 専門家 (Expert) 特定の技術問題において,理論,モデル,又は経験の評価を含む論証に基づく解説又は 意見を基にして自分自身の判断を提供できる者,若しくは複数の“自分自身の判断を提供 できる者”からの判断の根拠を評価し,統合できる者。 2.35 専門家判断 (Expert Judgement) 専門家より提供される情報。 7 RK003:201* 2.36 ソースターム (Source Term) レベル 2PRA で評価される,環境に放出される放射性物質の種類,性状,放出量,放出時 期,放出継続時間,放出エネルギーのこと。 2.37 頂上事象 (Top Event) 注記 審査 フォールトツリーにおいて,展開の起点となる事象。 系統・機器等の機能喪失とするのが通常である。 2.38 点推定値 (Point Estimate) 単一の数値の形で与えられるパラメータの推定値,又はそれを用いて算出された炉心損 傷頻度等の推定値。 例 確率変数の標本の平均値は,その確率変数の平均の点推定値としてよく用いられる。 炉心損傷頻度の点推定値という場合,基事象の平均値を用いて評価した単一の炉 心損傷頻度を表すことが多い。 2.39 公衆 内的事象 (Internal Event) 原子力発電所の機器のランダム故障又は人的過誤などの内部の原因によって引き起こさ れる起因事象。 注記 外部電源の喪失はその原因が原子力発電所外部にある場合も含めて内的事象とし て扱われる。また,原子力発電所の内部における火災又は溢水によって発生する 起因事象は外的事象に分類している。 2.40 人間信頼性解析 (Human Reliability Analysis) フォールトツリーで展開される頂上事象に対し有意な影響を及ぼすと考えられるタス クについて,その遂行過程で起こり得る一連の人的過誤を同定し,それらの人的過誤の発 生確率を定量化し,タスクの失敗確率を求める技法。 注記 タスクとは,ある目的を達成するために要求される操作のまとまった単位 2.41 パラメータ (Parameter) 確率分布を特徴付ける数。 8 RK00*:201* 注記 確率論及び統計学における母数のこと。特に PRA では起因事象発生頻度,機器故 障率又は機器故障確率,アンアベイラビリティ,平均復旧時間などを指す。 2.42 ピアレビュー (Peer Review) 実施者とは独立した PRA の専門家によって,対象とする PRA が関連する標準にそって 2.43 審査 実施されているかを評価すること。 フォールトツリー (Fault Tree, FT) 頂上事象について,AND ゲート及び OR ゲートなどの論理記号を使用して,その発生の 原因をたどって樹形状に展開した図式。 2.44 復旧時間 (Recovery Time) 機器の故障が発生した時点から,その機能が回復するまでの時間。 2.45 プラントウォークダウン (Plant Walkdown, PWD) 公衆 PRA を実施する上で必要な情報について,机上の情報を補足し,正確さを確認するため に実施する,原子力発電所内の現地調査。 注記 原子力発電所敷地内を含めて現地調査を行う場合は,サイト・プラントウォークダ ウンという。 2.46 プラント損傷状態 (Plant Damage State) 格納容器機能喪失に影響を与える緩和機能の成否,物理的化学的現象,格納容器破損時 期及び格納容器破損モード,それぞれの観点から類似の特徴を持つ炉心損傷に至る事故シ ーケンスの最終状態を類型化したもの。 2.47 プラント状態 (Plant Operational State, POS) 原子炉圧力,温度及び水位が予め定める範囲内にあり,事故に対応する緩和設備の状態 が評価にあたって同等とみなせるプラント運転状態。 注記 レベル 1PRA で事故事象をモデル化する場合,プラントシステムの状態(運転,待 機,使用不可)によって特徴付けられているプラント運転状態と定義される。プ 9 RK003:201* ラント状態の設定では,崩壊熱レベル,原子炉圧力,温度,水位,停止時の操作, 保守点検などの作業の進捗に伴って変化する緩和設備の状態などを考慮する。例 えば,水位は,使用できる緩和設備が相違する可能性があり,また燃料露出まで の時間余裕が相違するため,POS 分類で考慮する項目になる。 2.48 フロントライン系 (Frontline System) 2.49 ヘディング (Heading) 審査 所定の安全機能を直接果たす系統。 イベントツリーにおいて,その成否を用いて事象の進展をモデル化するための条件とし て選定されたもの。 注記 システム,運転性,運転員操作,環境など 2.50 ランダム故障 (Random Failure) 2.51 公衆 設備の偶発的な故障。 リスク (Risk) 望ましくない事象の発生確率とその事象による被害の大きさとの積和又は組み合わせ。 (解説3参照) 2.52 リスク情報 (Risk Information) PRAの結果及びその過程から得られる情報。 注記 例えば次のものがある。 ・ 原子力発電所のリスクの程度についての情報(リスク指標のうち,リスクの絶対 値,リスクの変化量など) ・ 系統・機器などがリスクへ与える影響に関する情報(リスク指標のうち,重要度な ど) ・ 上記2つの情報の不確実さに関する情報 ・ プラント損傷状態及び格納容器破損モードに含まれる最小カットセット 10 RK00*:201* 2.53 レベル 1PRA (Level 1 PRA) 炉心損傷頻度の評価までを行う確率論的リスク評価。 2.54 レベル 2PRA (Level 2 PRA) 環境へ多量の放射性物質を放出する事故シーケンスの発生頻度及びソースタームの評価 2.55 レベル3PRA (Level 3 PRA) 審査 までを行う確率論的リスク評価。 レベル2PRAで得られたソースタームとその発生頻度をもとに,公衆のリスクの評価まで を行う確率論的リスク評価。 2.56 露出時間 (Exposure Time) 関心のある事象が発生し得る期間の長さ。 注記 暴露時間ともいう。原子炉臨界炉年,サイト暦時間又は発電時間のような対象と する期間の単位を明確にする。リスクにさらされる時間(time at risk)ともいう。対 公衆 象として時間だけではなくデマンド回数等も含む場合は“露出データ”又は“暴 露データ”という。 2.57 炉心損傷 (Core Damage) 炉心の露出又は過熱によって生ずる燃料の重大な損傷。 2.58 炉心損傷事故 (Core Damage Accident) 設計基準事象を大幅に超える事象であって,炉心の冷却又は反応度の制御ができず,炉 心損傷に至るもの。 2.59 炉心損傷頻度 (Core Damage Frequency, CDF) 単位時間・プラント当たりの炉心損傷事故の発生回数,又はその期待値。 11 RK003:201* 表 1 略語一覧 略語 英 語 日本語 Automatic Depressurization System 自動減圧系 AFW Auxiliary Feed Water 補助給水系 ASME American Society of Mechanical Engineers 米国機械学会 ATWS Anticipated Transient Without Scram スクラム失敗異常過渡 BWR Boiling Water Reactor 沸騰水型軽水炉 CCCG Common Cause Component Group 共通原因機器グループ CCF Common Cause Failure 共通原因故障 CDF Core Damage Frequency 炉心損傷頻度 CFF Containment Failure Frequency 格納容器機能喪失頻度 CR Control Rod 制御棒 CRD Control Rod Drive CRDM Control Rod Drive Mechanism 制御棒駆動装置 CUW Reactor Water Clean-up system 原子炉冷却材浄化系 CV Containment Vessel 原子炉格納容器 CVCS Chemical and Volume Control System 化学体積制御系 DG Diesel Generator ディーゼル発電機 ECCS Emergency Core Cooling System 公衆 審査 ADS 制御棒駆動系 非常用炉心冷却系 Error Factor エラーファクタ EPRI Electric Power Research Institute 電力研究所(米国) ESW Emergency Service Water 非常用補機冷却水系 ET Event Tree イベントツリー Fire Protection system 消火系 Fault Tree フォールトツリー FPC Fuel Pool Cooling system 使用済み燃料プール冷却浄化系 HEP Human Error Probability 人的過誤確率 HHSI High Head Safety Injection system 高圧注入系 HPCI High Pressure Coolant Injection 高圧炉心注入系 HPCS High Pressure Core Spray 高圧炉心スプレイ系 HPSI High Pressure Safety Injection 高圧安全注入系 HVAC Heating, Ventilating and Air Conditioning 換気空調系 LCO Limiting Condition for Operation 運転制限条件 LERF Large Early Release Frequency 早期大規模放出頻度 LHSI Low Head Safety Injection system 低圧注入系 LOCA Loss Of Coolant Accident 冷却材喪失事故 EF FP FT 12 RK00*:201* LPCI Low Pressure Coolant Injection 低圧炉心注入系 LPCS Low Pressure Core Spray 低圧炉心スプレイ系 LPF Low Pressure Feed 低圧注入系による冷却材の供給 LPSI Low Pressure Safety Injection 低圧安全注入系 MG セット MLE Maximum Likelihood Estimator 最尤推定量 MUWC Make-Up Water Condensate system 復水補給水系 MS Main Steam system 主蒸気系 MSIV Main Steam Isolation Valve 主蒸気隔離弁 NRC Nuclear Regulatory Commission 原子力規制委員会(米国) NUCIA NUClear Information Archives 原子力施設情報公開ライブラリ PCV Primary Containment Vessel 一次格納容器 PLR Primary Loop Recirculation system 原子炉再循環系(BWR) PORV Power-Operated Relief Valve 逃がし弁 POS Plant Operational State プラント状態 PRA Probabilistic Risk Assessment 確率論的リスク評価 PSA Probabilistic Safety Assessment 確率論的安全評価 PSF Performance Shaping Factor 行動形成因子 PSR Periodic Safety Review 定期安全レビュー 公衆 審査 MG(Set) Motor Generator (Set) PWD Plant Walkdown プラントウォークダウン PWR Pressurized Water Reactor 加圧水型軽水炉 RAW Risk Achievement Worth リスク増加価値 RCIC Reactor Core Isolation Cooling 原子炉隔離時冷却系 RCP Reactor Coolant Pump 一次冷却材ポンプ RCS Reactor Coolant System 原子炉冷却系 RCW Reactor Cooling Water system 原子炉補機冷却水系 RHR Residual Heat Removal system 残留熱除去系 RPS Reactor Protection System 原子炉保護系 RPV Reactor Pressure Vessel 原子炉圧力容器 RRW Risk Reduction Worth リスク低減価値 RWST Refueling Water Storage Tank 燃料取替用水タンク SG Steam Generator 蒸気発生器 SLC Standby Liquid Control System ほう酸水注入系 (BWR) SV Safety Valve 安全弁 TFI Technical Facilitator/Integrator 総合的な纏め役 THERP Technique for Human Error Rate Prediction THERP 手法 13 RK003:201* 技術的な纏め役 審査 Technical Integrator 公衆 TI 14 RK00*:201* 解説 AESJ-SC-RK003:201* 原子力発電所の確率論的リスク評価標準で 共通に使用される用語の定義:201* 審査 解説 この解説は,本体に規定・記載した事柄,及びこれらに関連した事柄を説明するものであ り,実施基準の一部ではない。 この解説は,一般社団法人日本原子力学会が編集発行するものであり,この解説に関す る問い合わせは,一般社団法人日本原子力学会へお願いします。 1. 適用範囲について 本標準において規定する用語及び定義,略語の適用範囲は,原子力学会標準委員会が発 行する原子力発電所の確率論的リスク評価標準であり,それらを使用する際に参照とする ことを期待する。 なお,本標準は,原子力発電所の確率論的リスク評価標準で使用されている用語につい 公衆 て,共通的な定義を規定したものであることから,個別のリスク評価標準と本標準の両方 で用語の定義がなされているものについては,本標準よりも,個別のリスク評価標準で規 定されている定義が優先される。 2. 安全機能について 安全機能として,次のような考え方がある。 ・安全機能を果たすべき構築物,系統及び機器は,(1)異常状態の発生を極力防止する,(2) 異常状態が発生してもその異常状態の拡大を防止する,又は,事故の影響を緩和するよ うに計画されている。 ・異常の拡大防止,事故の影響緩和のための機能として,(1)原子炉停止,(2)炉心冷却, (3)放射能閉じ込めの各基本的安全機能がある。 3. リスクについて JIS Z 8051:2004 (ISO/IEC Guide 51:1999) “安全側面-規格への導入指針”によると,リス クは次のように定義されている。 危害の発生確率及びその危害の程度の組合せ 15 RK00*:201* 解説 Kaplan and Garrick は,その著書“On The Quantitative Definition of Risk”において,リスクを 次の3つの質問に対する答えと定義した。 What can go wrong? 何が起こりうるか? What is the likelihood of that happening? それはどのくらい起こりやすいか? What are the consequences? それが起こったとして,その結果はどうなるのか? 最初の質問の回答は“シナリオ” ,2 番目の質問の回答は“シナリオの確率” ,そして 3 番 4. 外的事象,内的事象について 審査 目の回答は“結果”であり,三重項(Triplet)と呼ばれる。 内的事象は, 機器のランダム故障又は人的過誤によって生じるものである。 外的事象は, 内部ハザードと外部ハザード(自然ハザード,又は人為ハザード)によるものに大別され る。内的事象及び外的事象とハザードの例を,表に示す。 表 内的事象 事象の分類と例 外的事象 内部ハザード 機器のランダム故 人為ハザード 地震 発電所外の爆発 内部溢水 外部火災 発電所外での化学物 公衆 外部電源の喪失 自然ハザード 内部火災 障 人的過誤 外部ハザード 質放出 内部ミサイル 津波 航空機落下 内部爆発 強風 意図的な不法行為, 等 重量物落下 火山噴火,隕石落下 化学物質放出 生物学的現象 等 異常気象, 等 5. 確率論的安全評価(PSA)と確率論的リスク評価(PRA) 日本では,規制,産業界,学会,研究機関において PSA という用語を用いてきた。 国外へ目を転じれば,先駆的な PRA 研究である NUREG-75/014 を始め,米国では PRA という用語を使用している。1984 年に NRC より PSA の手順書が発行されている。ここで は PSA としているが,PRA の結果を決定論的評価と統合させて原子力発電所の安全性に 関する総合的評価を実施するための手順とあり,安全の総合評価を意識するがゆえの表題 である。原子力エネルギー協会(NEI)は,原子力発電所の運転や保守に伴うリスクを定量化 する手法が PRA(PSA ともいう)であると述べている。米国の 1995 年の政策声明書は, 規制に用いるものはリスクであるとする。 16 RK00*:201* 解説 米国原子力規制委員会の Apostolakis は,呼称は忌避事象(undesirable event)に依存するも のであり,炉心損傷や格納容器損傷を扱う限りは PSA がよかろうし,急性死亡あるいは晩 発生死亡を扱うなら PRA が適切と思うとする。PRA という用語は米国で主に使われてい る が , 他 の 国 で は PSA と さ れ て い る よ う で あ る 。 い ず れ の 用 語 も 許 容 さ れ る (Interchangeable)との考えを示した。 国際原子力機関(IAEA)は PRA を安全に係る決定に用いることを PSA と定義している。 また,PRA の結果を安全に関する意思決定に用いることが PSA であると述べている。 審査 リスク専門部会は,今後に策定するリスク評価関連の標準において確率論的リスク評価 (PRA)と呼ぶこととする。もちろん PSA という名称を否定するものではない。 参考文献 1) Stanley Kaplan, B. John Garrick, “On The Quantitative Definition of Risk”, Risk Analysis, Vol. 公衆 1, No. 1, 1981
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