2010年5月号

Master-piece of Machine-tools
歴史をつくって来た工作機械達から学ぶ機械の基礎
工作機械のマスターピース
Key word 技術で儲ける
新日本工機 RBシリーズ 門型マシニングセンタ 立中ぐりフライス盤からの進化を辿る
私達の業界には技術者の誰からも「定評」を得ている「良い機械」というものが存在します、それでは「良い機械」とは
いったい何だろう、こう考えてみたいと思います。 機械だけを何十年も仕事にしてきた実感を申し上げてみましょう
Key Word 「良い機械とはその機械の稼ぎが実感できる機械」 こう断言したいと思いますが、如何でしょう
まずその機械の価格が性能に比較して安いと感じられること 設置費やランニングコストもよく考えられていて負担
感がなく 使ってみて構造がシンプルで動きが分かりやすく、大きさが適切で 作業アプローチがとりやすいこと
加工指令に対して忠実に動いてくれること よく削れ、納得できる精度であって 頑丈で長持ち こうなるのでしょう
こんな不安で不確実な時代だから、工場にどんなことが押し寄せて来るかわからない、「あてになる」「なんとかなる」
「頼りになる」「むりがきく」「ながもちする」 工作機械ではここが大切になってくるのです
今回、ご紹介する新日本工機RBシリーズは皆に 「こいつ」とか「ニエヌ」とか「アールビー」 などと愛称で呼ばれる機械だ
この機械のルーツは1943年製造の精密立て中グリフライス盤RB-Ⅱ型で、歴史的価値のある工作機械に選ばれている
50年以上、時代とともに進化を遂げて来た、通算製造販売台数で4000台を超えるベストセラーである
この機械の進化の土台となって来た技術の勘所は自社遠心鋳鋼の丸コラム構造だ、この「基礎である丸コラム構造を変え
ていない」ここが最も重要なところであって、この技術はただものではない、実はよそには絶対にまねが出来ない技術なのだ
不変の土台があるからこそ安く造ることが出来る、事実この機械は安い、そしてよく稼ぎ、その評判でよく売れたのである
本田宗一郎さんは「売ってよし買ってよしにしなくちゃーだめだ」 「技術屋は技術とカネの天秤だ」こう言っている
造り上げた技術の成果を其々が長期にわたって受け取ることができるようにするには、変えなくてもよい不変の土台の
上に、たえず時代の要求に応えられる改良と造り方の改善を積み重ね、性能を落とさずコストを下げる方法しかない
だから、工作機械は長いスパンで、変えるべきところ 変えてはならないところをわきまえて、時代とともに進化してもらいたい
工作機械は「それを生みだしたメーカーも、その機械を買ったお客様も共々にその技術で儲かるものでなくてはいけない」
お互いに儲からないと次の開発が出来ない、身を切って奉仕する「零戦」の闘い方では負けは自明である
新日本工機 RBシリーズ の進化
Key Technology 自社製 遠心鋳鋼管丸コラム
ラジアルボール盤⇒補助コラム付きボール盤⇒門型立て中グリフライス盤⇒門型マシニングセンタ⇒門型5面加工機
中グリ可能な主軸技術
NC制御
ATC
クロスレール同期制御
ヘッド交換
新日本工機のルーツ
先覚者 若山滝三郎氏が明治31年(1898年)
若山鉄工所を創業
大阪若山鉄工所を経て昭和13年(1938年)
信太山工場建設 当時、日本最大のラジアル
ボール盤の製造工場であった (左図)
昭和24年(1949年)新日本工機株式会社発足
昭和33年(1942年)の丸コラム門型
立て中グリフライス盤 RB-Ⅱ型
この機械は歴史的価値のある工作機
械として顕彰された日本を代表する
工作機械です
昭和33年から44年の間に269
台、シリーズ全体として737台を
製造販売し、現在でも現役で活躍し
ている機械があるそうです
コラム間有効内幅 2340mm
(コラム径500/300)
テーブル 1,900 x 1,100mm
主軸 23~1,500rpm 7,5Kw 無段
テーブル送り/早送りあり
この機械の技術
1)丸コラムの採用
2)クロスレール同期送り機構
3)主軸送りと回転の同期による
タップ加工の新技術
4)ボーリング加工とフライス加工
を両立するため主軸軸受にテー
パーローラーべアリングを採用
し予圧変化を特殊合金間座で少
なくする新技術
5)光学読み取りによってジグボー
ラ並みの位置決め精度を実現
新日本工機/オーナー山口久一氏はこのように言っている
「新しいニーズと技術を忘れて我々の将来はありません、おたがいに知恵を出し
合って明日への道を切り開いて行こうではありませんか」
大型の金型加工で従来の横中グリ
加工を立て中グリ加工へ転換
大型プレス金型の精度と製作効率が
飛躍的に向上し、日本の自動車発展
の支えとなりました
丸コラム門型構造マシンはこのように進化した
高速輪郭制御への進化
5軸加工機への進化
門幅の拡張=5Mまで
AAC アタチッメント交換
5面加工 アタッチメント割出
クロスレール上下(W軸)連続制御
SNKの独自技術 丸コラム
1)丸コラム外周をクロスレールが抱きついて、どちらにも傾かず、精度よく
スムースに摺動する連続W軸制御もまたSNKの独自技術である
2)SNKは鉄工部をもち、遠心鋳鋼の素材から自社製作できる
3)丸コラムは摺動面積が大きくとれ、摩耗が少なく振動減衰効果が大きい
4)丸コラムは円筒構造で熱対称
5)コラム円筒とクロスレール孔の最適な嵌め合いや潤滑にはノウハウが
必要である、経験がなければ造れない
6)据え付けヤードで2本の丸コラムを真っすぐ建て、クロスレールを
上から嵌めこむ、据え付けの華である
コラム中心線から主軸中心の距離が小さい
諸外国の丸コラム例
ドイツ シャーマン社の横中グリ盤
スイス エリコン社の立中グリ盤
フランス GSP社の例
SNKの独自技術
ミラーサーフ フィニッシュ <精度が必要な面の機械仕上げ>
工作機械の最も重要な技術として摺動面(スライドウェイ)の形成と構造物の接合部の仕上げがある
工作機械の摺動面も接合部の平面仕上げも熟練技能者によるキサゲ仕上げが最良であるのは論を待たない
だが、キサゲは誰にでも出来ない仕事で、膨大な時間とコストを要する、大型機ともなれば気が遠くなる仕事なのだ
SNKは技能から技術へをモットーにキサゲの精度を機械加工で実現し機械造りを効率化する独自の工法を持っている
この技術をもとに部品やユニット精度を上げることで組立調整をしない「積み木方式」の機械造りを実践している
精度/スピード/コストで他を圧倒している所以がここにある
調質鋼の摺動面加工
切り込み0,02mmで高切削速度 大きなノーズRで
高送りする、ワークの熱歪が少なく経済切削が可能
面粗さ1,5μ Rmax
うねり 10μ 以下
真直度 0,025mm / 4m
摺動面に応用した場合、規則的な無数のオイル
スポットが全面に形成されるから、上に載る
テーブルは油膜に載って摩耗が無くダンピングが
利いた滑るように滑らかに動く
焼き入れ鋼(SKD11 HRC45)の平面加工
加工段差0,5μ
面粗さ 0,8μ Rmax
マシニングセンタなどの切削加工で最も難しいのは平坦度を要求される
平面加工だ 機械のジオメトリーも、熱変位も、主軸の伸びや傾きも
すべてに高い精度が要求されるし、経時変化が少なく、振動減衰性能
が高くなければこの様な加工は困難だ