Install イ ン ス ト ー ル 1 第 章 Windows 98の概要 いわく、 「 Windows 95+IE4*1+Plus!+α」 。いわく、 「最後の Windows 9x シリー ズ」。Windows 98 にはさまざまな新機能が追加され、また改良が施されているが、 Windows 98 を形容する言葉には、常に「 Windows 95 の拡張」というニュアンスが含 まれている。両者が同シリーズの OS であることを考えれば当然のことだが、これに は「劇的な変化はない」というニュアンスも強く含まれている。Windows 98 の新機能 として取り上げられるシステムであっても、Windows 95 の後にリリースされた追加 パッケージをインストールすることで、Windows 95 でも同等の機能を利用できるこ とが多いからだ。しかし、OS の安定性や、すべての機能が 1 つのパッケージにまと められている利便性を考えれば、Windows 98 を採用するメリットは十分にある。も ちろん、新機能がコンピュータ環境のさらなる向上を提供してくれることは言うまで もない。 Windows 95 の後継である Windows 98 を理解するために、ここでは Windows 95 の前身である Windows 3.1 も含めて、Windows ファミリの発展の過程をアーキテク チャの観点から簡単にまとめる。また続けて、Windows 98 のアーキテクチャについ ても解説する。 *1 Internet Explorer 4.0 の略 15 ■ 第1章 Windows 98 の概要 1.1 Windowsファミリの系譜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Windows ファミリは、表 1-1 のように発展してきた。 表 1-1 Windows ファミリの進化 年 Windows Windows NT 1991 Windows 3.1 1992 Windows NT 3.1 1993 Windows NT 3.5 1994 Windows NT 3.51 1995 1996 1998 Windows 95 Windows NT 4.0 Windows 98 2000 Windows 2000 1.1.1 Windows 3.1まで Windows は、3.1 まで別途 MS-DOS を必要とした。それらは OS というよりも、 MS-DOS に被せる GUI シェルとしての性格が強く、MS-DOS のプロンプトから、あ るいは autoexec.bat から win.com を実行することで起動した。 Windows は、3.1 まで 16 ビットプログラムであり、32 ビットネイティブな環境を 活用することができなかった。また、マルチタスクに対応していたものの、タスクの 切り替えをアプリケーション側にまかせる協調的なマルチタスクを採用しており、パ フォーマンスと堅牢性に問題があった。 1.1.2 Windows 95 Windows 3.1 の後継として登場した Windows 95 は、32 ビット化され、別途 MSDOS を必要としない 1 つの独立した OS になった。しかし、内部には Windows 3.1 から継承した 16 ビットコードが多く残されている。具体的には、Windows を構成 するコアコンポーネントである User の大部分と GDI の一部( Windows 3.1 から受け 継いだ機能)が 16 ビットで記述されている。Windows 3.1 用に開発された 16 ビット Windows アプリケーションには API より下位レベルの内部構造に依存したものがあ り、それらとの互換性を要求されたためである。Windows 95 が内部的に win.com を 起動しているのも同じ理由からだ*2 。 *2 サーバー OS としての安定性を重視したために、API レベルでの互換しかサポートしていない Windows NT とは対照的である。 16 1.2 Windows 98 のアーキテクチャ ■ Windows 95 は、Windows 3.1 の 16 ビットコードをそのまま継承しているため制 限もある。たとえば Windows 3.1 は協調的なマルチタスクを採用していたため、再入 を考慮していない。このため、16 ビットコードの部分はプリエンプティブなマルチタ スクを行えず、パフォーマンスに悪影響を与える。 しかし、16 ビットコードには、同じ処理を記述した場合に 32 ビットコードよりも サイズが小さくなるというメリットがある。少ないメモリでも動作する必要があった という点も、Windows 95 に 16 ビットコードが使われた理由の 1 つである。 1.1.3 Windows 98 Windows 98 も、Windows 95 同様に 16 ビットと 32 ビットのコードが混在してい る。User の大部分と GDI の一部が 16 ビットだ。しかし、Windows 98 は 16 ビット コードを継承する Windows の“ 最終形 ”といわれている。 “最終形”の 1 つの意味は、Windows 98 が、Windows 95 をベースにシェルと IE4 を統合し、インターネットとの親和性を強化して、新しいハードウェアをサポートし た“究極の Windows 95 ”だということである。実際に、Windows 98 は見た目も機能 も IE4 を組み込んだ Windows 95 OSR2 に近いものとなっている。 “最終形”のもう 1 つの意味は、これが 16 ビットコードを継承する最後の Windows だといわれていることだ。Microsoft のロードマップによると、次のバージョンでは Windows 9x は Windows NT に統合され、個人向けの OS も Windows NT になると いう*3 。Windows 98 と Windows 2000 以降で共通に利用可能な WDM と呼ばれる デバイスドライバのモデルを導入したり、Windows NT に DirectX を組み込んだり しているのもパーソナルユーザーを意識しているためである。 1.2 Windows 98のアーキテクチャ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 前述のように、Windows 98 は Windows 95 の発展形であり、アーキテクチャ的に も大きな違いはない。次に 1 つ 1 つの要素について、少し詳しく見ていくことにする。 1.2.1 コアコンポーネント Windows 98 のコアの部分を構成するのは、ユーザーインターフェイスを担当する User 、グラフィック関係を担当する GDI 、仮想メモリやスケジューリングなどのシス テム機能を提供する Kernel という、Windows 95 でもおなじみの 3 つのモジュール だ。Windows 95 と同様に、User と GDI には Windows 3.1 から継承した 16 ビット *3 Windows 9x が統合される次期 Windows NT の名称は“ Windows 2000 ”だ。 17 ■ 第1章 Windows 98 の概要 コードが含まれている。 ■ User User はキーボードやマウスなどユーザーからの入力と、ウィンドウやメニュー の管理などを行うコンポーネントである。WindowsYSystem フォルダの user.exe と user32.dll がその実体だ。user.exe が 16 ビット、user32.dll が 32 ビットで記述さ れている。User コンポーネントの大部分の機能は user.exe で実現され、user32.dll は、32 ビットプログラムと 16 ビットの user.exe の間で橋渡しをするだけだ。 ■ GDI GDI は画面への描画やビットマップを取り扱うコンポーネントである。プリンタ への印字もこの GDI がサポートする。実体は、WindowsYSystem フォルダの gdi.exe と gdi32.dll だ。User コンポーネント同様、gdi.exe が 16 ビット、gdi32.dll が 32 ビットである。Windows 3.1 から継承した GDI 機能は gdi.exe が、TrueType ラス タライザやプリントサブシステムなど、Windows 95 以降で新しくサポートされた機 能は gdi32.dll がサポートする。 ■ Kernel Kernel は、ファイル I/O 、仮想メモリ管理、プロセスのスケジューリングなどの機能 を提供するコンポーネントである。実体は WindowsYSystem フォルダの kernel32.dll だ。名前からもわかるように、Kernel はすべて 32 ビットで実行されている。 1.2.2 仮想マシンマネージャ 仮想マシンマネージャは、プロセスに仮想マシンを提供し、プロセスのスケジュー リングと仮想メモリの管理を行う。仮想マシン内で動作するアプリケーションからは、 それぞれの仮想マシンが独立した PC のように見える。Windows 98 では、32 ビット Windows アプリケーションと MS-DOS アプリケーションに対しては、1 つのアプリ ケーションごとに 1 つの仮想マシンが与えられる。一方、16 ビット Windows アプリ ケーションの場合は、すべてのアプリケーションが 1 つの仮想マシン内で動作する。 Windows NT の場合で言えば、Windows NT 3.1 では Windows 98 と同様に 16 ビットアプリケーションはすべて 1 つの仮想マシン内で動作したが、Windows NT 3.5 以降では独立した仮想マシンで動作させることもできるようになった。 Windows 98 は、協調的なマルチタスクとプリエンプティブなマルチタスクを組み 合わせてプロセスのスケジューリングを行う。 18 1.2 Windows 98 のアーキテクチャ ■ 協調的なマルチタスクは、プロセスが自分からほかのプロセスに処理を明け渡すこ とでマルチタスクを実現する。このため、長時間処理を明け渡さないプロセスがある と、その間はほかのプロセスを実行できない。Windows 3.1 ではこのような協調的マ ルチタスクが使われていた。一方、プリエンプティブなマルチタスクでは、システム が強制的に 1 つのプロセスから別のプロセスに制御を移すことができる。 Windows 98 では、32 ビット Windows アプリケーションと MS-DOS アプリケー ションに対してはプリエンプティブなマルチタスクを行い、16 ビット Windows アプ リケーションに対しては協調的なマルチタスクを行う。これは、16 ビット Windows アプリケーションの一部に協調的なマルチタスクでの実行タイミングに依存したもの があり、Windows 98 がそうしたアプリケーションに対しても互換性を維持しなけれ ばならないからだ。ただし、16 ビット Windows アプリケーションが属する仮想マシ ン自体はプリエンプティブなマルチタスクの対象となるので、CPU を開放しない 16 ビットアプリケーションがあっても、影響を受けるのはほかの 16 ビットアプリケー ションに限られる。 一方、Windows 98 が Windows 3.1 から受け継いだ 16 ビットコードは再入を考慮 していないので、そのままの形でプリエンプティブなマルチタスクを行うことはでき ない。このため、問題になる部分で排他処理を行うことにより再入を防いでいる。こ れは Windows 98 全体のパフォーマンスを若干低下させると同時に、その箇所を実行 している間にアプリケーションがハングアップした場合、Windows 全体がハングアッ プする危険があることを意味している。 各仮想マシンには、32 ビットのリニアなアドレスを持つ 4G バイトのメモリ空間が 与えられる。32 ビットアプリケーション用の仮想マシンでは、このうち 0∼640K バイ トまでの部分はリアルモードのデバイスドライバや TSR*4 に使われる。2G バイト∼ 3G バイトまではシステムコンポーネントや DLL などの共有コンポーネントがロード される領域だ。メモリマップドファイルもこの領域に作られる。3G バイト∼4G バイ トの領域には Ring0 のコンポーネントがロードされる。32 ビットアプリケーション自 体は 4M バイト∼2G バイトの領域を使う。 1.2.3 ファイルシステム Windows 98 のファイルシステムのアーキテクチャは、Windows 95 と大きな違い はない。32 ビット化されたインストール可能なファイルシステム( Installable File *4 “ Terminate and Stay Resident ”の略で、常駐プログラムとも呼ばれる。起動してもプログラ ム本体をメインメモリにロードするだけで終了し、その後、特定のファンクションによって呼び 出されるプログラムのこと。 19 ■ 第1章 Windows 98 の概要 System;IFS )を搭載し、FAT ファイルシステム、CD ファイルシステム、ネットワー クリダイレクタをサポートするほか、あとからファイルシステムを追加することもで きる。IFS マネージャと呼ばれるコンポーネントが、これら各ファイルシステムの管 理やファイルシステム間の調停を行う。 Windows 95 からの主な変更点としては、FAT32 のサポートがあげられる。これ は Windows 95 の OSR2 から導入されていた機能だ。FAT32 は、クラスタアドレス を 32 ビット化することでより多くのクラスタを扱えるようにしている。このため、容 量が 8G バイト以下のドライブならば、クラスタサイズ(つまりディスクの最小容量単 位)を 4K バイトに抑えられる。扱えるドライブの容量も最大 2T バイトに増えた。 Windows 98 には、FAT16 でフォーマットされたドライブのデータを消去すること なく FAT32 に変換するドライブコンバータというツールが付属している。 1.2.4 WDM Windows 98 のアーキテクチャで目新しいのは、WDM( Win32 Device Model )だ ろう。これは、Windows 98 と Windows 2000 以降で共通して使えるデバイスドライ バのモデルである。WDM のメリットは、単に Win32 プラットフォームでドライバを 1 本化できるというだけではない。WDM では、ビデオデバイスや入力デバイスなど のクラスごとに、ドライバをデバイスによらず共通な部分とデバイスに固有な部分に 階層化し、共通部分は OS がサポートするようになった。このため、デバイスメーカー はデバイスに固有の部分だけを作成すればよく、ドライバソフトの開発に要するコス トや期間を抑えられる。 WDM は Windows NT に合わせて作られたため、Windows 98 では ntkern.vxd という仮想デバイスドライバを使い、WDM ドライバに対して Windows NT と同等 のサービスを提供している。 なお、Windows 98 は、Windows 95 で使われていた従来のドライバ( 仮想デバイ スドライバ)を使用することもできる。 1.2.5 レジストリ Windows 3.1 では、アプリケーションの設定を win.ini や、アプリケーション専用 の ini ファイルに保存していた。これを 1 つのデータベースにまとめたのがレジスト リである。多数の小さな ini ファイルをまとめることでディスクのむだを減らし、ま た複数のユーザーが 1 つの PC を使う際にユーザーごとの設定を変更する標準的な機 構を提供している。 アプリケーションは専用の API を使うことで、一方のユーザーはレジストリエディ 20 1.2 Windows 98 のアーキテクチャ ■ タを使うことでレジストリにアクセスできる。ネットワークで接続された別のコン ピュータ上のレジストリにアクセスすることも可能だ。 図 1-1 階層化されているレジストリデータベース レジストリ内では、図 1-1 のようにデータが階層化して管理されている。この構 造は Windows 95 と同じである。しかし、Windows 98 にはレジストリが壊れてい ないかどうかをチェックして、バックアップするレジストリチェッカーというツール ( scanregw.exe 、scanreg.exe )が追加されている。 図 1-2 レジストリチェッカー 1.2.6 シェル Windows 98 のシェルは Windows 95 同様エクスプローラだが、WWW ブラウザで ある IE4 と統合されたことで、さまざまな拡張が施されている。なお、Windows 95 では IE4 をインストールする際に、単なる WWW ブラウザとしてインストールする か、シェルとして機能させるデスクトップ統合かを選択できたが、Windows 98 では 無条件に後者のデスクトップ統合を行った状態でインストールされる。 21 ■ 第1章 Windows 98 の概要 この結果、IE4 をデスクトップ統合する以前の Windows 95 に比べると、Windows 98 のエクスプローラには次のような新機能が追加されている。 表 1-2 エクスプローラの新機能 22 機能 内容 メニューの編集 スタートメニューやお気に入りメニューなど、ドラッグ&ドロップに よってメニューの並び換えや削除などの編集が可能になった タスクバー 実行中のプログラムを表示するだけでなく、アプリケーションへの ショートカットや、アドレスバーを配置できるようになった アクティブデスクトップ デスクトップが HTML によってカスタマイズ可能になり、ActiveX コントロールを配置できるようになった フォルダの Web 表示 フォルダの表示形式を HTML によってカスタマイズできるようになっ た Web ページの縮小表示 フォルダの表示形式で [縮小表示] を選択すると、Web ページへのショー トカットが Web ページの縮小として表示される タスク スケジュールを設定しておくと、指定した時間に指定したアプリケー ションを実行できる 第 章 新機能 Windows 98 を導入する最大のメリットは、広範囲に渡って、最新のデバイスをコン トロールできる点にある。Windows 95 がリリースされてから、USB や IEEE 1394 と いった新たなインターフェイスに対する需要が高まり、また DVD や Super Floppy と いったデバイスが登場した。しかし、これらデバイスへのサポートは Windows 95 では 限られているか、もしくはまったく利用できなかった。これらのデバイスが Windows 98 によってサポートされたため、Windows 98 は今後 PC のハードウェア構成にも影 響を及ぼすだろう。 また、FAT32 による大容量デバイスへの対応や、アプリケーションの起動速度の 向上、新規ユーティリティの追加など、ソフトウェア面での改善も Windows 98 の大 きな魅力の 1 つである。 本章では、ハードウェアとソフトウェアに分けて、Windows 98 の新機能について 解説する。 2.1 ハードウェアサポートの拡充・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Windows 98 におけるハードウェアサポートの改善は、次の 3 点からなっている。 ● USB や IEEE1394 などの新インターフェイスへの対応 ● WDM による、将来的な Windows NT とのデバイスドライバの統合 ● 新たな電源管理システム 23 ■ 第2章 新機能 2.1.1 USB 新たなインターフェイスは、基本的に従来からあるインターフェイスを置き換え、補 完するために登場するが、USB( Universal Serial Bus )は、COM ポート(シリアルイ ンターフェイス)やキーボードポート、マウスポート、パラレルポートなど、中低速デ バイスをターゲットとしたインターフェイスである( 転送速度は 1.5Mbps と 12Mbps の 2 種類をサポートする) 。したがって、キーボード、マウス、ジョイスティック、モ デム、プリンタ、スピーカ、スキャナなどでの利用が想定されている。 これらデバイスを既存のインターフェイスから USB へと置き換えることによって、 まず配線が単純になる。従来はデバイスごとにコネクタの形状がばらばらだったが、 USB ではすべてのデバイスを単一のコネクタに接続できる。したがって、デバイス接 続時の混乱はなくなり、将来既存のインターフェイスを排した PC が登場すれば、背面 は非常にすっきりとしたものになるだろう。事実、コネクタ配置スペースがより大き な問題となるノート型では、一部の機種でこうした構成が使われている。また、USB デバイスは PC に直接接続するだけでなく、USB ハブを介してツリー状の接続が可能 だ。つまり、いったん PC から USB ハブへケーブルを接続し、USB デバイスは USB ハブへと接続する。これによって、ケーブル長を気にする必要はなくなり、PC に設 けられた USB ポートの数に縛られず、数多くの USB デバイスを接続できる。なお、 Windows 98 では 4 段までの USB ハブをサポートし、USB デバイスは 127 個まで接 続可能である。USB ハブは単体の製品以外にも、ディスプレイやキーボードに組み込 まれた形でも製品化されている。USB デバイスは電源を入れたままでの抜き差し(ホッ トプラグ)が可能であるため( デバイスドライバは自動的にロード/アンロードされ る)、これらユーザーの手元にあるデバイスに USB ハブが組み込まれると、USB デバ イスの一時的な利用が簡単になる。また、USB 経由で設定可能なディスプレイも登場 するなど、さまざまな可能性を秘めたインターフェイスである。 USB ホストコントローラ用のインターフェイスとしては、Intel が定めた UHCI ( Universal Host Controller Interface )と Compaq 、Microsoft 、National Semicon ductor が定めた OHCI( Open Host Controller Interface )があるが、Windows 98 は そのどちらもサポートしている。 2.1.2 IEEE 1394 IEEE 1394 は USB に比べて高速なデバイスをターゲットとした、高速シリアルバ スである。具体的には、デジタルビデオなどの AV 機器、ディスク装置、スキャナな どがターゲットとなる。転送速度は 100/200/400Mbps が定義されているが、将来 は 800Mbps およびそれ以上の速度も計画されている。 24 2.1 ハードウェアサポートの拡充 ■ バス上に異なる速度のデバイスを混在でき、その場合でも個々のデバイスがサポー トする最高速で通信可能だ。また、USB 同様、ホットプラグに対応している。 USB と異なり、IEEE 1394 はネットワーク状に構成できる。1 つのバスには 63 台 までのデバイスを接続可能で、さらに最大 1023 個のバスでネットワークを組める。ま た、IEEE 1394 のデバイスは通常複数のポートを搭載しており、これを使って 16 台 までデイジーチェーン接続が可能だ。 IEEE 1394 は、アップルの FireWire と同じものだ( FireWire が IEEE に採用され て 1394 になった) 。また、デジタルビデオ製品で使われている DV ポート/ケーブル も IEEE 1394 に準じたもので相互接続可能になっている。ただし DV では IEEE 1394 にある電源ラインが省略されており、コネクタ形状も異なっている。 2.1.3 複数モニタのサポート Windows 98 では、PC に複数のビデオカードを搭載し、それぞれにモニタを接続 して、全体を 1 つの大きなデスクトップとして扱える。各モニタの解像度や色数をそ ろえる必要はなく、たとえば 1024×768 ドット/6 万色のモニタと 800×600 ドット/ 256 色のモニタを並べて使うことも可能だ。最大 9 台までのモニタを接続できる。 2.1.4 HID HID( Human Interface Device )は、キーボード、マウス、ジョイスティック、ゲー ムパッドなどの入力デバイスのクラスを規定する新しい標準だ。Windows 98 の HID クラスは、USB Implementers' Forum の仕様に基づいている。この仕様は USB 接続 のデバイスに対するものだが、Windows 98 の HID は特定のバスに依存しない。これ は特定のデバイスをサポートするドライバと、特定のバスをサポートするドライバが 階層構造になっている WDM によるものだ。 HID デバイスの中でも一般的なキーボード、マウスその他のポインティングデバイ ス、ジョイスティック/ゲームパッドは Windows 98 が標準でサポートしているため、 接続するだけで使え、特別なドライバを用意する必要はない。 WDM でない従来の仮想キーボードドライバや仮想マウスドライバを介して HID キーボード/マウスを扱える仕組み( VxD-to-WDM マッパ)が用意されるため、HID 対応でないアプリケーションでも HID キーボード/マウスを従来のキーボード/マウ スと同様に扱うことができる。一方、HID API を使って直接 HID デバイスを扱うこ とも可能だ。Direct Input 5.0 は HID API に対応している。 25 ■ 第2章 新機能 2.1.5 静止画 Windows 98 はスキャナやデジタルカメラなどの静止画( Still Image:STI )デバ イスをサポートする。ハードウェアとアプリケーションの間に STI Device Driver Interface( DDI )と呼ばれるインターフェイスを定義し、デバイスの機能の認識や、 データ/コマンドの入出力などを行う。STI DDI により、ハードウェアベンダーはデ バイス固有のドライバを用意すればよく、またアプリケーションは特定のデバイスに 依存しない共通のインターフェイスを利用できる。現在スキャナの標準インターフェイ スとして使われている TWAIN もこのアーキテクチャの一部としてサポートされる。 STI DDI はまた、デバイス上のイベントの通知もサポートする。この機能を使うと、 STI 対応のデジタルカメラを接続したり、シートフィードスキャナに紙をセットした ときに、その通知を受けて自動的にアプリケーションを起動することも可能になる。 静止画デバイスの設定は、Windows 98 でコントロールパネルに新しく追加された [ スキャナとカメラ]アプレットを使用する。このアプレットを開いて[スキャナとカ メラのプロパティ]ダイアログボックスを表示すると、インストールされている静止画 デバイスの一覧が表示される。特定のデバイスを選んで[プロパティ]ボタンをクリッ クすれば、そのデバイスの情報を参照したり、設定を変更できる。イベント通知機能 に対応したデバイスなら、 [イベント]タブを選んで特定のイベントが発生したときに 起動するアプリケーションを指定できる。 2.1.6 動画キャプチャ Windows 98 は、WDM のストリームクラスを利用して動画キャプチャをサポート する。USB または IEEE 1394 接続のカメラのドライバが標準で提供される。また、従 来の Video for Windows と下位互換性がある。 動画キャプチャにはリアルタイムキャプチャとステップフレームキャプチャの 2 種 類のモードが用意される。 リアルタイムキャプチャは、文字どおり連続するビデオストリームをリアルタイム にキャプチャするものだ。そのため、高速な CPU とディスクが必要で、処理が間に合 わない場合にはコマ落ちが発生する。 ステップフレームキャプチャは、再生デバイスを操作して 1 コマずつキャプチャす るモードだ。MCI( Media Control Interface )対応の再生デバイスならば、PC から再 生デバイスを制御して自動的に 1 コマずつキャプチャできる。そうでないデバイスで は、手動で 1 コマずつ再生しながらキャプチャする必要がある。ステップフレームキャ プチャで音声もキャプチャする場合は、映像をキャプチャし終わってから巻き戻して 音声のみリアルタイムキャプチャを行う。 26 2.1 ハードウェアサポートの拡充 ■ 2.1.7 IrDA IrDA ( Infrared Data Association ) は、Intel 、Hewlett-Packard、IBM 、Microsoft 、 シャープなどが参加する赤外線を利用した通信に関する標準化団体によって策定され たソフトウェア/ハードウェアの規格である。 Windows 98 は標準で IrDA をサポートしており、IrDA 準拠の赤外線デバイスを 搭載した PC で赤外線を使ったデータ通信が可能になる。機能的には、Windows 95 の追加モジュールとして提供されていたもの、あるいは Windows 95 OSR2 に標準で 含まれていたものと同等で、 ● IrDA に対応した PC 同士で、シリアル/パラレルケーブルの代わりに赤外線通 信を使ったケーブル接続 ● IrDA に対応したプリンタへの印字 ● IrDA に対応した LAN アダプタに接続してネットワークにログイン などの機能を実現する。 ( Win32 Device Model ) 2.1.8 WDM Windows 98 のデバイスドライバは、WDM( Win32 Device Model )と呼ばれるアー キテクチャを採用している。このモデルは Windows NT の将来のバージョン( 5.0 以 降)でも採用されるため、1 つのデバイスドライバで Windows 98 と Windows NT の 両方をサポートできる。 WDM のアーキテクチャでは、ドライバは 6 層の階層構造をとる。クラスドライバ は HID 、DVD 、デジタルオーディオなど特定の種類のデバイス、または USB 、IEEE 1394 など特定種類のバスに共通の機能を提供する。一方ミニドライバは個々のデバイ スに固有の機能を提供する。デバイスのベンダーは、そのデバイスのミニドライバの みを提供すればよい。 また、クラスドライバはプラグ&プレイや電力管理の基本アーキテクチャも提供する。 WDM のアーキテクチャは Windows NT のカーネルサービスを利用している。Win dows 98 ではそのサービスをエミュレートするために ntkern.vxd という仮想デバイ スドライバが提供されている。 2.1.9 OnNow 従来の省電力機能は、APM( Advanced Power Management )規格に従っていた。 APM は BIOS がサポートする機能なので、BIOS によって機能や操作性が異なる、マ ザーボード上のデバイスしかコントロールできない、などの弱点があった。 27 ■ 第2章 新機能 これに対して、Windows 98 がサポートする ACPI( Advanced Configuration and Power Interface )では OS とマザーボード、周辺機器との電力管理についてのインター フェイスを定めている。Windows 98 は ACPI によって、BIOS ではなく OS が集中的 に電力管理を行う。このため、操作性を統一できるほか、プリンタなど外付けの周辺 機器も管理できる。Windows 98 では、ACPI を通じてユーザーの使用状況を監視し、 不要なときはスタンバイ状態で電力消費を抑え、必要になったらすぐに電源が入って オ ン ナ ウ 使える状態にするOnNowを実現する。 OnNow ではアプリケーションも対応を期待される。OnNow 対応のアプリケーショ ンでは、PC がスタンバイ状態に入る前に情報をディスクに保存したり、スタンバイ状 態の間にユーザーがハードウェア構成を変更しても対応できるようになる。 ただし、ACPI を利用するには、マザーボードやビデオカードなどの拡張カード、そ してそれらを制御するデバイスドライバなど、すべての要素において ACPI 対応が実 現されていなければならない。現状ではこの条件を満たす機種はごく一部のメーカー 製 PC に限られており、ほとんどの PC では利用できないと思われる。 2.2 ソフトウェア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Windows 98 は巨大な 1 つのプログラムではなく、膨大な数のモジュールから構成 されているため、モジュールの追加や置き換えによって容易に OS の機能を部分的に 拡張することが可能だ。この機構を通じて Windows 98 に標準搭載された機能の一 部は、Windows 95 でも利用可能だった。しかし、ここではそれらの機能も含めて、 Windows 98 の新機能として解説する。また、Windows 98 には各種のユーティリティ が追加され、メンテナンス作業の自動化やシステム全体のパフォーマンス向上がはか られている。 ( Windows Scripting Host ) 2.2.1 WSH これまで、Windows 上でまとめて一連の処理を行う場合に標準で用意された手段 は、昔ながらの MS-DOS のバッチファイルしかなかった。WSH( Windows Scripting Host )はそれに代わるスクリプトを提供する。WSH の実体は、IE のスクリプトエン ジンを独立させたものだ。スクリプト言語として JScript( JavaScript )と VBScript が 搭載されているが、WSH は特にスクリプト言語を限定せず、サードパーティなどが 提供するエンジンを導入すれば、Perl や REXX などのスクリプト言語も利用可能に なる。WSH を使えば、Windows のファイルシステム、ネットワーク、レジストリや、 Word や Excel などの OLE オートメーションに対応したアプリケーションをコント ロールできる。 28 2.2 ソフトウェア ■ スクリプトは Windows 上からも、MS-DOS プロンプトからも実行できる。WSH のメッセージは、Windows 上から実行した場合はメッセージボックスに、MS-DOS プロンプトから実行した場合はコンソール内に表示される。 2.2.2 アプリケーション起動の高速化 Windows 98 では、実行モジュール(拡張子が.exe や.dll のファイル)がまとめて メモリにロードされるわけではなく、実行に必要なコードがそのつど読み込まれる。 それらはまたファイルの先頭から読み込まれるとは限らず、EXE ファイルの一部が読 み込まれた時点で、関連する DLL やプラグインが読み込まれることある。したがっ て、ディスク上にはファイルの先頭から連続して配置するよりも、ロードされる順に 配置したほうが余分なシークが減り、アプリケーションの起動時間を短縮できること になる。 これを実現するのがタスクモニタとデフラグだ。タスクモニタはシステムに常駐し、 アプリケーションを起動したときのロードプロセスを記録する。デフラグはこの情報 を元にして、よく使うアプリケーションのロード時間を最小限に抑えるようにファイ ルを再配置する。 デフラグによるファイルの再配置はクラスタ単位で行われる。一方、実行モジュー ルの読み込みはページ単位で行われる。x86 系 CPU のページサイズは 4K バイトなの で、クラスタサイズも 4K バイトであればもっとも効率がよくなる。クラスタサイズ が 4K バイトよりも大きい場合、連続して読み込まれるページが異なるクラスタに含 まれるとすれば、そのページを連続して配置できず、クラスタに含まれる残りのペー ジをスキップするために余分なシークが発生して動作効率が低下する。 2.2.3 メモリ利用の効率化 Windows 95 では、EXE や DLL などの実行モジュールがメモリに読み込まれる際、 各ページはいったんキャッシュに読み込まれたあとで対応するプロセスのメモリ空間 にコピーされ、実行されていた。このため、同じページがメモリ上の 2 か所に存在し、 メモリを余分に消費していた。 Windows 98 では、ページをプロセスのアドレス空間へコピーするかわりに、キャッ シュのページを直接アドレス空間にマップすることでメモリの消費を抑えている。こ れを MapCache という。それに合わせて、プロセスにマップされている限りはペー ジがキャッシュ内に保持されるようにシステムが変更されている。 MapCache が有効なのは、実行モジュールのセクションがページの境界に揃ってい る場合だけだ。ページサイズは 4K バイトだが、通常セクションは 512 バイト単位で 29 ■ 第2章 新機能 配置されるため、必ずしもページの境界に揃うとは限らない。揃っていない場合は従 来どおりキャッシュからプロセスのメモリ空間にコピーされて実行される。 Windows 98 には WinAlign という、実行モジュールを書き換え、セクションを 4K バイト単位に配置し直すユーティリティが存在する。Windows 98 は、WinAlign を自 動的に実行する。しかし、プログラムの中には、自分自身のチェックサムを検査してい るものや、パッチを当てるものなど、書き換えてしまうと問題が生じるものが存在す る。このようなプログラムをすべて自動的に判別することはできないため、WinAlign は書き換えても安全なファイルのリストを元に処理を行う。このリストには、主に Microsoft Office のファイルが含まれている。また、今後出荷されるアプリケーショ ンについては、実行ファイルのセクションを 4K バイト単位で配置するように要請さ れている。 2.2.4 シャットダウンの高速化 Windows 95 では、Windows 終了時にすべてのデバイスの終了処理を行っていたた め、シャットダウンに時間がかかることがあった。これは、特にネットワークを使用 していたときに顕著だった。 Windows 98 では、終了処理を省略することで、シャットダウンにかかる時間を短 縮している。しかし、デバイスによっては、終了処理を行わないと次に起動したとき 正常に初期化できないなどの問題が発生するかもしれない。このため、シャットダウ ン時に通知を送るようシステムに要求する API も用意されている。 2.2.5 バージョン競合マネージャ アプリケーションをインストールするとき、コピーしようとするドライバがシステム にインストールされているドライバより古いことがある。このような場合、Windows 98 は元からあった新しいドライバを WindowsYVCM フォルダに待避し、アプリケーショ ンに含まれる古いほうのドライバをインストールする。 Windows 98 には、バージョン競合マネージャというツールが用意されている。バー ジョン競合マネージャを使うと、インストールされているドライバと待避されている ドライバのバージョンを確認できる。また、インストールされているものと待避され たものを入れ換える機能も備えている。古いドライバをインストールして万一不具合 が生じた場合は、この機能を使って新しいドライバに書き戻すことができる。 30 2.2 ソフトウェア ■ 2.2.6 システムファイルチェッカー システムファイルチェッカーを使うと、Windows フォルダや Program Files フォル ダにあるシステムファイル(拡張子が exe 、dll 、sys 、ocx などのもの)が変更された かどうかをチェックできる。Windows 98 は、チェック対象のファイルのタイムスタン プ、サイズ、CRC によるエラー訂正の情報を記録しており、そのデータと実際のファ イルを比較して変更があったかどうかを判断する。変更があった場合は、その変更を 受け入れて情報を更新するか、元のファイルに戻すかを選択できる。 2.2.7 レジストリチェッカー Windows 95 では、起動するたびにレジストリのバックアップを取っていた*1 。し かし、1 世代前のバックアップしか残らないため、不具合が起きたときに再起動する と、正常なバックアップの上に不具合のあるレジストリが上書きされてしまうことが あった。 Windows 98 では、起動時にレジストリチェッカーがレジストリをチェックしてい る。異常がなければそれをバックアップする*2 。またレジストリと同時に system.ini と win.ini もバックアップする。バックアップは、windowsYsysbackup フォルダに CAB 形式で 5 世代前まで保存される。チェックした結果、レジストリに異常があれば 直前のバックアップから正常なレジストリが自動的に復元される。チェックで発見で きなくても、設定した内容が不適切などの理由で以前のレジストリを復元したい場合 は、ユーザー自身が復元することも可能だ。 レジストリチェッカーには Windows 版の scanregw.exe と MS-DOS プロンプト版 の scanreg.exe がある。どちらもチェック機能とバックアップ機能を持っているが、 復元機能は MS-DOS プロンプト版だけが持っている。Windows 98 起動時に実行さ れるのは Windows 版だが、チェックして異常が見つかったら MS-DOS プロンプト版 を実行して復元する。 2.2.8 Windows Update Windows 95 でも、サービスパックや修正モジュールがマイクロソフトの Web サイ トに登録され、ユーザーはそれをダウンロードしてインストールすることで OS をアッ プデートできた。しかし、自分に関係のあるドライバが更新されたかどうかをチェック し、ダウンロードしてインストールするのはユーザーの責任であった。Windows 98 *1 system.da0 と user.da0 がそれぞれ system.dat と user.dat のバックアップである。 *2 1 日 1 回、最初に起動したときのみバックアップを行う。 31 ■ 第2章 新機能 では、この作業を自動化する Windows Update が搭載されている。 アップデート用のサイトにアクセスすると、ActiveX コントロールがユーザーの PC にインストールされたシステムモジュールやドライバをスキャンし、サイトに登録さ れているものと比較して更新できるアイテムをリストアップする。ユーザーがその中 からモジュールやドライバを選んでアップデートを指示すると、必要なファイルが自 動的にダウンロードされ、インストールされる。万一トラブルが起きたときに備えて、 アップデート前の状態に戻すことも可能だ。 2.2.9 日本語環境 Windows 98 は、シフト JIS で規定された 6,355 文字に加えて、JIS X 0212 で規定 された JIS 補助漢字 5,801 字のフォントを搭載する。これらのフォントはシフト JIS コードには対応していないため、通常のアプリケーションでは使用できず、Microsoft Office 97 や一太郎 8 などの Unicode 対応アプリケーションが必要になる。ただし、 Windows NT とは異なり、Windows 98 の内部コードはあくまでシフト JIS だ。 2.2.10 仮想プライベートネットワーク Windows 98 は、PPTP( Point-to-Point Tunneling Protocol )を使用した VPN(仮 想プライベートネットワーク)のクライアント機能をサポートする。 VPN は、インターネットをあたかも社内 LAN などの専用線であるかのように使え る機能だ。通信内容や社内の IP アドレスを隠すため、ファイヤウォールなどにより 社内 LAN のパケットを暗号化したうえで、インターネットのパケットにカプセル化 して相手の事業所やモバイル PC に送る。これをトンネリングプロトコル( Tunneling Protocol )という。PPTP は、PPP を拡張したプロトコルである。 2.2.11 マルチリンク接続 Windows 98 では、複数のモデムや TA( ターミナルアダプタ)を使って同じ相手に ダイヤルアップ接続するマルチリンク接続をサポートしている。 TA の中には、2 つの B チャネルを同時に使ってマルチリンク接続を行う機能を持っ たものが存在する。Windows 98 のマルチリンク機能も本来は TA 用のものだが、複 数のモデムによるダイヤルアップ接続をまとめてマルチリンク接続を実現することも できる。この場合の通信速度は、接続に使ったモデムや TA の通信速度の和になる。 なお、マルチリンク接続を行う場合には、ISP 側も同種のマルチリンク接続をサポー トしている必要がある。 32 第 章 インストール Windows 98 のインストールは、Windows 95 に比べて手間がかからないように改 良されている。特に、Windows 95 からアップグレードする場合には、最初にいくつ かの設定を行えば、あとは放置しておいても Windows 98 のインストールが完了する。 このため、この章ではインストールの手順には重点を置かず、インストールの準備 やインストール時のオプションによる手順の違いなどを中心に解説する。 3.1 インストール方法の選択・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Windows 98 には、製品版とアップグレード版が用意されている。アップグレード 版は Windows 3.1 または Windows 95 のユーザー向けのパッケージであり、ハード ディスクにどちらかの Windows がすでにインストールされているか、またはどちら かの提供メディア( フロッピーディスクまたは CD-ROM )がないとインストールでき ない。製品版には、こうした制限が存在しない。 3.1.1 起動ディスク 製品版には、OS を持っていない状態でもインストールできるように「起動ディスク」 が付属している。しかし、アップグレード版はすでに OS を持っていることが前提で あるため、 「起動ディスク」は付属していない。 Windows 上からインストールする場合には「起動ディスク」がなくても問題はない が、ハードディスクをフォーマットしてからインストールする場合は自分で「起動ディ スク」を用意する必要がある。特に、Windows 3.1 や OSR2 以前の Windows 95 を使っ 33 ■ 第3章 インストール ていて FAT32 を使用したい場合は、Windows 98 の「起動ディスク」を用意しなけれ ばならない。 「起動ディスク」の作成方法については、あとで解説する。 3.1.2 新規インストールとアップグレードインストール 製品版でもアップグレード版でも、Windows 98 のインストールには、Windows 3.1 /95 をアップグレードするアップグレードインストールと新規にインストールする新 規インストールという 2 種類の方法が存在する。 Windows 3.1/95 がインストールされている状態で、同じフォルダに Windows 98 をインストールするとアップグレードインストールになり、それ以外の方法をとれば 新規インストールになる。どちらの方法にも次のようなメリットとデメリットがある。 ■ アップグレードインストール アップグレードインストールの場合は以前の Windows の環境がそのまま引き継が れる。普段使用しているアプリケーションの再インストールや再設定の必要がない点 は大きなメリットになる。特に、プリインストール PC で標準の Windows 95/98 に は含まれないデバイスドライバやソフトウェアを使用している場合は、アップグレー ドインストールすればそれらをそのまま利用できるため簡単だ。また、Windows 98 をアンインストールして元の状態に戻すことも可能になる。 しかし、アップグレードインストールでは、新たな環境では不要なものまで引き継 いでしまうというデメリットもある。また、以前の環境を残しておくため、インストー ルするハードディスクに対して対象のパーティションを作成し直すこともできない。 ■ 新規インストール 新規インストールの場合は逆のことがいえる。Windows 98 がプレーンな状態でイ ンストールされるため、必要なアプリケーションを再度インストールしたり、各種設 定をし直す必要がある。プリインストール PC に含まれていた標準以外のデバイスド ライバやツールはインストールされないので、別途メーカーから対応したバージョン を入手する必要がある。また、アンインストールのための標準的な手順が用意されて いないため、以前の状態に戻すにはブートセクタの書き換えやファイルの削除などを すべて手作業で行う必要がある。 新規インストールのメリットは、必要なものだけをインストールすることで、結果 的に Windows 環境をシェイプアップできることだ。C ドライブが狭く領域を再構成 したいという場合にも、新規インストールをすることになる。 34 3.1 インストール方法の選択 ■ 3.1.3 現在使用しているOSとインストール方法 現在使用している OS によって、利用可能なインストール方法が異なる。表 3-1 に、 その関係をまとめておく。 表 3-1 現在使用している OS とインストール方法 OS アップグレード Windows 95 W ( D) Windows NT − −(*1 ) Windows 3.1 D D MS-DOS − D OS/2 − −(*2 ) なし − D W D *1 *2 新規 ( D) :Windows 95 上からインストール :MS-DOS/Windows 95 の MS-DOS プロンプトからインストール デュアルブートの設定で Windows 95 または DOS 領域へ デュアルブートの設定で DOS 領域へ それぞれの OS を使用している場合のインストールについて、簡単に説明する。 1. MS-DOS MS-DOS を使用している PC には、そのまま Windows 98 をインストールで きる。インストール後は、Windows 98 と MS-DOS を選択して起動できる(デュ アルブート)。PC の起動時に何もしないと Windows 98 が起動する。PC の起 動時に Ctrl キー( PC によっては F8 キー)を押しつづけると「スタートアッ プメニュー」が表示され、そこから“ Previous version of MS-DOS ”を選ぶと MS-DOS が起動する。 2. Windows 3.1 Windows 3.1 を使用している PC に Windows 98 をインストールする場合は、 Windows 3.1 を終了して MS-DOS 上でインストールする。 Windows 3.1 と同じフォルダにインストールすると、MS-DOS にインストー ルした場合と同じ方法で、Windows 98 と MS-DOS をデュアルブートできる。 Windows 98 を Windows 3.1 とは別のフォルダにインストールすると、Win dows 98 と Windows 3.1 を選択して起動することができる。デュアルブートの しかたは同じで、 “Previous version of MS-DOS”を選択すると Windows 3.1 が 起動する( autoexec.bat で Windows 3.1 が起動するよう設定していた場合) 。 3. Windows 95 Windows 95 を使用している PC に Windows 98 をインストールする場合は、 Windows 95 上でセットアップコマンドを実行すると自動的にアップグレード 35 ■ 第3章 インストール インストールになる。 コマンドラインモード( PC の起動時に Ctrl キーを押しつづけると「スター トアップメニュー」が表示され、そこから“ Command prompt only ”を選択す る)で起動して Windows 98 をインストールすれば、Windows 95 とは別のフォ ルダにインストールできるが、Windows 98 と Windows 95 をデュアルブート することはできない。また、Windows 98 のアンインストールもできないので、 これらをわざわざ別のフォルダにインストールする意味はない。 また、コマンドラインモードでインストールした場合も Windows 95 と同じ フォルダにインストールすることができるが、こうしても結果は Windows 95 上でインストールする場合と変わらない。 “システムファイルが壊れて Windows 95 の GUI 環境が起動しなくなっているが、レジストリは生きている”というよ うな場合に、救済できる可能性があるという程度の意味しかない。 4. Windows NT Windows NT がインストールされている PC に Windows 98 をインストール する場合は、直接アップグレードインストールできないので、Windows NT の ブートローダを使って Windows 95 または MS-DOS を起動可能ならば、その環 境にインストールする。インストール後は、ブートローダから以前の Windows 95 または MS-DOS に代わって、Windows 98 が起動できるようになる。 なお、C ドライブは NTFS ではなく FAT16 でフォーマットされている必要 がある。 5. OS/2 OS/2 がインストールされている PC に Windows 98 をインストールする場合 は、OS/2 のブートマネージャを使用して MS-DOS を起動し、MS-DOS 上で インストールする。インストール後は、ブートマネージャで以前の MS-DOS に かわって Windows 98 が起動できるようになる。 なお、C ドライブは HPFS ではなく FAT16 でフォーマットされている必要 がある。 6. OS なし OS がインストールされていない PC で、新規に Windows 98 をインストー ルする場合は、Windows 98 の「起動ディスク」で PC を起動してインストール する。 ほかの OS を使っている場合でも、ハードディスクをフォーマットしなおし て新規に Windows 98 をインストールするには、Windows 98 の「 起動ディス ク」を用意して、そのディスクに含まれる FORMAT コマンド( format.exe )を 使ってフォーマットする必要がある。 36 3.1 インストール方法の選択 ■ 3.1.4 大容量ハードディスクにインストール 最近では、ハードディスクも 4G バイト以上の容量をもつものが主流になっている。 しかし、OSR2 以外の Windows 95 は FAT32 をサポートしておらず、FAT16 では 2G バイト以上の領域を 1 ドライブとして作成することができなかった。このため、4G バイト、6G バイトという容量のハードディスクでも、2G バイトごとの領域にパーティ ションを区切って使用しなければならなかった。 2G バイト以下のハードディスクでも、クラスタサイズが大きくなってディスクの利 用効率が悪くなるのを嫌い、1G バイト以下の領域に分割している場合がある。また、 OSR2 をインストールした PC でも、MS-DOS などほかの OS や FAT32 に対応して いない一部のソフトとの互換性を考慮して、FAT32 を使用せずにハードディスクを 分割していることがある。 ■ フォーマットの種類を確認する このような事情があるため、Windows 98 をインストールする前に、ハードディスク がどのようにフォーマットされているかを確認する必要がある。まず Windows 95 の バージョンだが、パッケージとして市販されているものはすべて OSR2 以前のものだ。 OSR2 は名前が示すとおりプリインストール PC 専用のバージョンだからだ。PC に 付属する Windows 95 の CD-ROM のラベル面で、Windows 95 のロゴの下に“ With USB Support ”と書いてあれば OSR2 である。また、Windows 95 を起動してコント ロールパネルの[ システム]アプレットを開いても Windows 95 のバージョンを確認 図 3-1 Windows 95 のバージョンの確認 37 ■ 第3章 インストール できる。 [ システムのプロパティ]ダイアログボックスの[ 情報]タブにある「 システ ム」に“ 4.00.950 B ”または“ 4.00.950 C ”と書かれているものが OSR2 だ。それ以外 の“ 4.00.950 ”や“ 4.00.950a ”という記述なら OSR2 以前の Windows 95 ということに なる。 OSR2 でなかった場合には、確認するまでもなくすべてのハードディスクが FAT16 である。OSR2 だった場合は、次のようにして起動ドライブとなるハードディスクが FAT32 なのかどうかを確認する。 1. デスクトップの[マイコンピュータ]アイコンを開く 2. ブートドライブのアイコンを右ボタンでクリックしてショートカットメニュー を表示する 3. ショートカットメニューから[プロパティ]を選択して[ドライブのプロパティ] ダイアログボックスを表示する 4. [ドライブのプロパティ]ダイアログボックスの[情報]タブを選択する 5. 「種類」に“FAT32”と書いてあれば FAT32 、単に“FAT”と書いてあれば FAT16 だ 図 3-2 ファイルシステムの確認 ■ FAT32 への移行 ハードディスクが FAT16 でフォーマットされていた場合は、FAT32 を使って領域 を作成し直すかどうかを選択することになる。単純に FAT32 を使用するだけなら、 Windows 98 をインストールしたあとで、 「ドライブコンバータ」を使用して変換可能 38 3.1 インストール方法の選択 ■ であるが、2G バイト以上の容量を持ったハードディスクを前記の理由から、現在複数 の領域に分けて使用していて、Windows 98 の導入を機に 1 つの領域にまとめたいな ど、領域の再構成を伴う場合は FDISK コマンドを使って FAT32 で領域を作成し直 す必要がある。 OSR2 を使用している場合には、Windows 95 の「起動ディスク」に含まれる FDISK と FORMAT を使って FAT32 の領域を作成することでフォーマットできる。当然、 作成した FAT32 領域へのアクセスにも問題はない。しかし、Windows 3.1 や OSR2 以前の Windows 95 を使用している場合には、Windows 98 の「起動ディスク」を使っ て FAT32 領域を作成する必要がある。OSR2 以前の「起動ディスク」では FAT32 領 域を作成することもアクセスすることもできないからである。アップグレード版の Windows 98 のパッケージには「 起動ディスク」が含まれないので、ユーザー自身が 「起動ディスク」を作成しなければならない。 「起動ディスク」の作成方法については後 述する。 現在の起動ドライブをフォーマットし直せば、新規インストールすることになる。 どの方法を選択するかは前述のアップグレードインストールと新規インストールのメ リット/デメリットを考慮したうえで決定する。 また、FAT32 自体にもメリット/デメリットがある。メリットは、2G バイトから 2T バイトのハードディスクを 1 ドライブとしてフォーマットできること、512M バイ トから 2G バイトのハードディスクでも FAT16 より効率良く管理できることだ。 一方、デメリットとしては、現時点では OSR2 以降の Windows 95 と Windows 98 からしかアクセスできないことと( Windows NT からはアクセスできない)、ドライ ブスペースでディスク領域を圧縮できないことがあげられる。 Windows 98 を使うなら、FAT32 でフォーマットするのがもっとも効率がよい。し たがってデータのバックアップ/リストア、Windows の再設定、アプリケーションの 再インストールの手間を我慢できるのであれば、FAT32 へ移行するのがよいだろう。 3.1.5 必要なディスク容量 Windows 98 を標準セットアップで新規インストールした場合は、約 260M バイトの ディスク領域を使用する。選択可能なすべてのコンポーネントを選んだ場合は約 343M バイト、インストールの選択ができるコンポーネントをすべての省いた場合は約 231M バイトだ。 Windows 95 上からインストールした場合は、一部のファイルが上書きされるため、 ディスク領域の増加分はこれより少なくなる。標準セットアップで新規インストール した Windows 95 に、同じく標準セットアップで Windows 98 をインストールした 39 ■ 第3章 インストール 場合、ディスク領域の増加は 217M バイトだ。この中には Windows 98 をアンインス トールして Windows 95 の環境を復元するためのバックアップファイル約 46M バイ トが含まれる。Windows 95 にアプリケーションなどがインストールされていた場合 は、バックアップする情報が増えるため、バックアップファイルのサイズはより大き くなる。 必要なディスク容量の目安は以上のようになるが、実際にはその容量に対して十分 な余裕が必要だ。Windoows 98 をインストールしたあとに、少なくとも数十 M バイ トの空き領域が残ることが望ましい。これは、アプリケーションをインストールする たびに Windows 98 をインストールしたフォルダに DLL などのコンポーネントが追 加されるためだ。 3.1.6 インストール元の選択 Windows 98 のインストールは、通常 CD-ROM ドライブから行う。CD-ROM ドラ イブを内蔵したデスクトップ PC やノート PC なら、この方法がもっとも簡単だ。ただ し、ドライバやコンポーネントを追加するたびに Windows 98 CD-ROM を CD-ROM ドライブにセットしなければならなくなる。 また、CD-ROM ドライブを内蔵しない PC の場合は、ネットワークで接続した PC の CD-ROM ドライブからインストールすることもできる。この場合も、ドライバや コンポーネントを追加するたびにネットワークに接続し、接続先 PC の CD-ROM ド ライブに Windows 98 CD-ROM をセットしなければならなくなる。 図 3-3 追加するたび表示されるダイアログボックス この問題は、ハードディスクに Windows 98 CD-ROM の Win98 フォルダの内容を コピーして、そこからインストールすることで回避することができる。途中でインス トールに失敗する、あるいは再起動したあとに CD-ROM ドライブにアクセスできな くなるという場合には有効な方法だ。とくにノート PC などにインストールする場合 で、PC カードのドライバと CD-ROM ドライブまたはネットワークアダプタのドライ バを組み込んだ状態ではメモリが不足してインストールできないという場合も、いっ たんハードディスクにコピーしてから、PC カードや CD-ROM ドライブ用のドライ バを外した状態で起動し直せばインストールできる。ハードディスクからインストー 40 3.2 インストールの手順 ■ ルすると、あとでドライバやコンポーネントを追加するときも必要なファイルがハー ドディスクから読み込まれるため、わざわざ Windows 98 CD-ROM を用意する必要 がない。デメリットは、ハードディスクを消費することだ。Win98 フォルダ内のファ イルをすべてコピーするには、約 130M バイトの空き領域が必要になる。 これらのファイルは、インストールが終わったら削除することも可能だ。その場合、 レジストリエディタで HKEY_LOCAL_MACHINEYSoftwareYMicrosoftYWindowsYCurrentVersionYSetupYSourcePath の値を Windows 98 CD-ROM 上の Win98 フォルダのフルパス名に書き換えておく。 書き換えなくても障害が出るわけではないが、Windows 98 CD-ROM が必要になる たびに“ファイルが見つからない”というメッセージが出て、正しいフォルダを指定し 直さなければならないため、めんどうだ。 3.2 インストールの手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 次にインストール方法ごとに実際に Windows 98 をセットアップする手順を説明し ていくことにする。 3.2.1 アップグレードインストール Windows 95 上から Windows 98 をアップグレードインストールする場合は、CDROM ドライブに Windows 98 CD-ROM をセットすると自動的にセットアッププロ グラムが起動する。 ■ アップグレードインストールの手順 Windows 95 上からインストールした場合の大まかな作業の流れを次に示す。 1. 使用許諾契約書の確認 2. 既存の OS のシステムファイルの保存 3. プロダクト ID の入力 4. コンピュータ名やワークグループ名などの入力 5. アクティブチャンネルを設定するための地域の選択 6. 「起動ディスク」の作成 7. ファイルのコピー 8. ハードウェアの設定 41 ■ 第3章 インストール インストール先やユーザー名、インストールするコンポーネントなどは Windows 95 の設定がそのまま引き継がれるので、ユーザーが指定する必要はない。ファイルの コピーが始まれば、ハードウェアの設定で問題がない限り、あとは放置しておいても インストールが完了する。 3.2.2 新規インストール Windows 95 上でアップグレードインストールする場合は、ほとんど特別な手間は かからない。しかし、MS-DOS や Windows 95/98 の「起動ディスク」からのインス トールでは、CD-ROM ドライブの準備などが必要になる。 ■ CD-ROM ドライブの準備 Windows 95 上からインストールする場合、Windows 95 から CD-ROM ドライブ にアクセスできていれば、特に準備することはなく、そのままインストールできる。 しかしそれ以外の場合には、MS-DOS または Windows 95/98 のコマンドラインか ら CD-ROM ドライブにアクセスできる環境を用意する必要がある。 Windows 98 の「起動ディスク」には、ATAPI 方式の CD-ROM ドライブのための 汎用ドライバと、Adaptec および BusLogic の SCSI ホストアダプタに対応したドラ イバが入っている。したがって、これに対応した CD-ROM ドライブを使っている場 合には、この「起動ディスク」を使えばよい。 しかし、この「起動ディスク」もすべての環境をサポートしているわけではない。た とえば、Sound Blaster に接続された CD-ROM ドライブには対応していない。こう した場合には、ユーザーが CD-ROM ドライブ用のデバイスドライバを用意する必要 がある。 MS-DOS、あるいは Windows 95/98 の MS-DOS プロンプトから CD-ROM ド ライブにアクセスするには、config.sys で CD-ROM ドライブに対応したデバイ スドライバを組み込み、autoexec.bat で mscdex.exe を組み込む。mscdex.exe は、 MS-DOS や Windows に標準で含まれているほか Windows 98 にも収録されている が、CD-ROM ドライブのデバイスドライバは各ドライブメーカーが提供するものを 用意する必要がある。 ATAPI 方式の CD-ROM ドライブの場合は、そのドライブに対応したドライバがあ ればいい。たとえば、ミツミ製の ATAPI CD-ROM ドライブの場合は、config.sys に次のように記述する。 “ /d ”オプションは引数のドライブ名の指定であり、単なる一 例である。 device=C:YMTMCDAI.SYS /D:CD001 42 3.2 インストールの手順 ■ 一方、SCSI 方式の CD-ROM の場合は、一般に SCSI アダプタに対応した SCSI マ ネージャとそのマネージャ上で動作する CD-ROM ドライバの 2 つを組み込む必要が ある。たとえば Adaptec 製 SCSI ホストアダプタの場合は、config.sys に次のよう に記述する。 device=C:YASPI2DOS.SYS device=C:YASPICD.SYS /D:CD001 ノート PC に PC カード経由で CD-ROM ドライブを接続する場合は、CD-ROM ド ライブ用のドライバだけでなく PC カード用のドライバ( カードサービスとソケット サービス)が必要になる*1 。これらのドライバがノート PC に付属していない場合は、 日本 IBM の PC DOS 6.x や Play At Will などに収録されているものを入手しなけれ ばならない。 たとえば、Play At Will でパイオニアの SCSI 方式 CD-ROM ドライブを使用する 場合は、config.sys に次のように記述する。 device=SSDPCIC1.SYS device=IBMDOSCS.SYS device=RMUDOSAT.SYS /SH=1 /NS=1 /MA=CA00-D1FF device=MPS110.SYS device=MIRA_CD.SYS /D:MIRA-CD 前半の 3 行が PC カードのためのドライバ、後半の 2 行が SCSI カードと CD-ROM ドライブのドライバだ。 前述したように、PC の CD-ROM ドライブからインストールする代わりに、ネッ トワークで接続された別の PC の CD-ROM ドライブからインストールすることも可 能だ。その場合、Windows 98 をインストールする PC には CD-ROM 用デバイスド ライバの代わりにネットワークアダプタのドライバと、接続先の PC と互換性のある ネットワークプロトコルのドライバを組み込む必要がある。 ノート PC に MS-DOS から Windows 98 をインストールすると、ハードウェアを 検出する段階で PC カードウィザードが起動する。PC カード経由で Windows 98 を インストールしている場合は、ここで使用している PC カードを指定し、ドライバを コピーしておかなければならない。PC カードウィザードはそれまで使用していた 16 ビットドライバを外して、代わりに 32 ビットドライバをロードするが、その際一時的 に PC カードが使用できなくなる。このため、事前にドライバを確保しておかないと *1 PC カード経由で接続するポータブル CD-ROM ドライブの一部の機種には、ノート PC の PCIC を直接コントロールするドライバが付属していることがある。このようなドライバを使用でき るのであれば、カードサービスおよびソケットサービス用のドライバは不必要である。 43
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