検索ワードを用いた情報検索支援システムの提案と実装< Proposal and

検索ワードを用いた情報検索支援システムの提案と実装
Proposal and
development of a support system for information retrieval using
a search word
製品デザイン計画分野
09124022 竹本竜乃介
指導教員 藤戸 幹雄 教授
木谷 庸二 助教
1. 研究背景と目的
また、吉岡(2007)の研究では、インターネット情報検索
現在、インターネットの普及は進み、誰もが簡単に求め
における知識構築に有効なメタ認知(注 1)を促す支援を与
る情報を得ることができるようになった。既存の情報を使
えることによって、既有知識やサイトから得た情報を検索
って新しい知識を生み出そうとする場合、インターネット
テーマに合った知識に構成して検索のリソースにするこ
は大きな力となる。総務省の調べでは、インターネット情
とが可能になるとしている[4]。
報の情報源としての重要性が広く認識されている。一方で、
その信頼性はテレビや新聞の半分にも満たない低い水準
3. 提案
にある[1]。インターネット情報はユーザーの情報検索スキ
インターネット情報検索の過程で、メタのレベルから自
ルに依存するため、以上のような結果になったことが考え
身の情報検索過程をモニタリングし、それをフィードバッ
られる。様々な情報が溢れる情報化社会の中で、ユーザー
クすることで情報検索支援を促すシステムを提案する。
は検索エンジンに頼りすぎた情報検索を行なっているこ
とが示唆される。
3.1 システムの概要
検索ワードの可視化とその利用によってユーザーの情
インターネット情報検索において忘れてはいけない点
報検索の支援を図る。情報検索において最も重要な点とし
として、野崎氏(2007)は、
“検索エンジンのみに頼りがち
て挙げられるのが、検索エンジンで検索をかける検索ワー
な検索”、
“検索エンジンでヒットした情報の信頼性”
、
“地
ドである。この情報検索時の検索ワードの履歴を可視化す
道な情報検索による付加情報の取得”の3つを挙げており、
ることで、自身の検索行動をモニタリングすることができ、
検索スキルの取得こそが高度な情報検索環境を使いこな
その検索過程、その結果が効果的であるか点検することが
[2]
すための近道であるとしている 。
できる。また、既有知識の想起や、別の方法をプランニン
近年のインターネット情報検索において、情報検索スキ
グするためのきっかけと創出することができる。検索ワー
ルの必要性が示唆されていることから、本研究では、情報
ド履歴を検索のリソースとしながら、検索を建設的に進め
検索について広く研究した上で、ユーザーの情報検索スキ
ることができる。
ルの向上に焦点を置いた、情報検索支援システムの提案を
行なう。
本研究では、この提案するシステムをウェブブラウザ
Firefox の拡張機能として実装した。ZUL により GUI のレ
イアウト構成を行ない、JavaScript により動作の拡張を
2.
先行研究
行なった。
斎藤・三輪ら(2004)の研究では、ウェブ検索において自
己のプロセスをフィードバックすることによって、リフレ
クションが促進され、さらにそれが探索活動の理解に繋が
ることを明らかにしている[3]。
4. 評価実験
4.1 試作による実験(1)
検索ワードの履歴表示をメインにした試作システムを
ユーザー自身の検索ワード履歴のフィードバックから
用いて実施した。被験者は本学の学生3名。被験者は、与
新たな検索ワードを検討、実行することを本システムが促
えられた検索テーマ「日本の美しい自然」、「中国」の2つに
すことで、検索ワードの実行パターンを増やした。これは、
ついて 20 分間インターネット検索を行なった。その情報
ユーザーの“メタ認知的モニタリング”
、
“メタ認知的コン
検索過程を観察し、終了後アンケート調査を実施し、シス
トロール”を支援した結果だと言える。本システムはユー
テムの評価を行なった。
ザーに対してメタ認知的活動を促進することで、有用な情
検索ワードの履歴を表示する機能に関して好評価を得
報検索に繋げることができた。
ることができた。ただ、本システムの検索ワード履歴をモ
ニタリングすることで、直接フィードバックを受けて、新
たな検索が起きるための工夫がさらに必要である。
4.2 本実装による実験(2)
5. まとめ
これまでの結果を踏まえて、本システムが果たした役割
は主に次のようなものになると考えられる。
実験(1)の結果から、機能を拡充させたシステムを構築し
・ウェブブラウザの既存の履歴機能に比べ、検索履歴をモ
た。検索ワードを単語ごとに分けてサイドバーに表示させ、
ニタリングしやすい。
それを選択し、組み合わせることで新たな検索ワードを導
・検索ワードの履歴から、潜在知識、興味を掘り起こす。
き出す機能を持ったシステムである。このシステムを用い
・検索ワードの履歴を組み合わせることで、新たな検索を
て、実験(1)と同様の手続きで本学の学生3名の被験者を
生むことができる。
対象に実験を行なった。
・ユーザーの活発な検索ワードの検討、実行を促す。
これらの役割により、インターネット情報検索の過程に
おいて、メタ認知的活動を促すことができ、ユーザーの情
報検索スキルの支援を図ることができたと考えられる。こ
のシステムをきっかけにユーザーが様々な検索手段を身
につけ、検索スキルが向上できることを期待する。また今
後、システムの機能の改善や、ユーザーインターフェース
を検討し、アドオンとしての公開を目指したい。
補注
(注 1)メタ認知とは、認知(知覚、記憶、学習、言語、思考)す
図1
システムのインターフェース
ることをより高い視点から認知するということである。
主要参考文献
[1]総務省「ICT インフラの進展が国民のライフスタイルや社会環
境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」,2011
[2] 野崎篤志「第 203 回
情報検索環境の変化と検索スキル
(INFOSTA Forum)」,情報の科学と技術 57 巻 11 号,p547,2007
図2
検索ワード数と検索ワード内の単語数
[3]斎藤ひとみ、三輪和久「Web 情報検索におけるリフレクション
の支援」,2004
実験の結果から、実験(2)の被験者の検索ワード数、単
語数が実験(1)に比べ大きく増えた。つまり、ユーザーが
検索を多く試みるよう、実験(2)のシステムによって支援
された結果だと考えられる。
[4]吉岡敦子「インターネット情報検索における知識構築を促進
させるメタ認知の検討」,2007