UNEP FI 年次概観 2015 25 MEMBERS 53 63tr DOLLARS IN ASSETS INVESTMENT EXCHANGES BANKING 61 INSTITUTIONS TRAINED U N E P F I につ いて 国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)は、世界が持続可能であるために、金 融にシステミックな変化をもたらすことを使命としています。目指すべき持続可能な世 界とは、低炭素、資源効率的で、かつ包括的な社会です。 UNEP FIは国連システムと金融業界の両者に属 するユニークな立場を活用して、その使命を果 たしています。 そして、 ステークホルダーにとって 中立で競合しない場所を設けることで、金融、科 学、政策間の節点における対話の場を形成して います。 また、それらに積極的に対処するにはどうすれ ばよいのか、それらを理解するためにUNEP FI は活動しています。UNEP FIのパートナーシップ は、現在、50カ国以上・200機関以上の銀行、保 険、投資家のグローバルなネットワークにより構 成されています。 1992年のリオ・デ・ジャネイロで開催された地球 このような組織において、UNEP FIは金融と環 境に関する非常に広範な研究を行ってきました。 サミットで発足して以来、今日の環境上の課題 グリーン経済の移行において求められる について、なぜそれらが金融と関係があるのか、 また、 2 UNEP Finance Initiative MEMBERS 57 MEMBERS 48 根本的な変化を担う実務家に役立つ画期的な ツールやトレーニングを開発してきました。 さら に、UNEP FIには、責任投資原則(PRI)や持続可 能な保険原則(PSI) を設立するなど、規範を生 み出す役割もあります。UNEP FIの活動では、政 策も重視しています。金融に携わる実務家、規制・ INSURANCE SUPPORTING INSTITUTIONS 監督者、政策立案者間の国内での対話を奨励し、 そして、国際的には、気候変動や持続可能な開 発目標(SDGs)などグローバルな交渉プロセス に積極的に関与すること推し進めてきました。 Annual Report 2015 3 グローバルな イベント・会議 外観 09 /15 03 ◼◼ United Nations Sustainable Development Summit – Agreement of Sustainable Development Goals ◼◼ Principles for Responsible Investment in Person Conference (London, UK) ◼◼ Launch of Fiduciary Duty in the 21st Century (Also in New York and Toronto) ◼◼ Launch of SSE Model Guidance on Sustainability Reporting /15 ◼◼ 3rd UN World Conference on Disaster Risk Reduction (Sendai, Japan) 07 /15 05 /15 04 ◼◼ World Bank’s Advancing Natural Capital Accounting in Government, Business, and Finance: (Washington DC, USA) ◼◼ Expert Dialogue on Understanding and addressing environmental and social drivers of systemic risk in banking (Cambridge, UK) ◼◼ UNEP FI event ◼◼ UNEP FI supported/contributed event 4 UNEP Finance Initiative 11 /15 ◼◼ Third International Conference on Financing for Development (Addis Ababa, Ethiopia) ◼◼ Insurance 2030 Roundtable (Rüschlikon, Switzerland) ◼◼ Climate Finance Day (Paris, France) /15 ◼◼ World Forestry Congress (Durban, South Africa) 06 /15 ◼◼ First UN Climate Resilience Initiative expert workshop by the UN Secretary-General's Climate Change Support Team (Geneva, Switzerland) ◼◼ Global Insurance Forum of the International Insurance Society (New York, USA) ◼◼ Launch of Insurance 2030 report ◼◼ Convention on Biological Diversity Business & Biodiversity Forum 2015 ◼◼ World Forum on Natural Capital (Edinburgh, Scotland) 10 12 /15 /15 ◼◼ UNEP FI Annual General Meeting (Paris, France) ◼◼ Launch of Positive Impact Finance Manifesto ◼◼ COP21, 2015 United Nations Climate Change Conference (Paris, France) ◼◼ Private Finance session – Investor Actions on Climate Change side event ◼◼ Action Day – Capital markets session ◼◼ Resilience Day ◼◼ Buildings Day ◼◼ REDD Day ◼◼ Energy Day ◼◼ Global Landscapes Forum ◼◼ Caring for Climate Business Forum ◼◼ CCAC High Level Assembly ◼◼ Sustainable Stock Exchanges Leaders Luncheon 概要 2015 5 地域別 イベント・会議 外観 MONGOLIA ◼◼ November 2015: Mongolian Sustainable Finance Forum (Ulaanbaatar) UNITED STATES ◼◼ October 2015: Natural Capital Risk and Opportunities Workshop (New York) COLOMBIA ◼◼ Green Protocol April 2015 - Ciclo Siete: Sustainability Week Latin America 2015 ◼◼ August 2015 - PSI Market Event and Sustainable Insurance Seminar (Bogota) BRAZIL ◼◼ September 2015: PSI Roundtable on Insurance 2030 in Brazil: Policies and partnerships for sustainable development (Sao Paulo) UA E ◼◼ May 2015: National Roundtable on Financing and Investing in Green Economy (Dubai) ◼◼ November 2015: co-organised with the Ministry of Environment and in association with the Central Bank (Dubai) ◼◼ CEO Roundtable of Financial Institutions ◼◼ Workshop on Environmental & Social Risk for Banking Industry TURKEY ◼◼ May 2015: 3rd Sustainable Finance Forum Turkey (Istanbul) ◼◼ March 2015: Responsible Property Investment Roundtable (Tokyo) ◼◼ March 2015: 4th AGM of the Japan Principles for Financial Action Towards a Sustainable Society (Tokyo) INDIA KOREA ◼◼ May 2015: ESG Integration training for Investors (Mumbai) ◼◼ March 2015: Sustainable finance seminar with Korean National Assembly (Seoul) ◼◼ December 2015: Partnership exchange meeting with Korea Environmental Industry and Technology Institute (KEITI) (Seoul) MOROCCO ◼◼ May 2015: Bank al Maghrib CEO Roundtable on Sustainable Finance (Rabat) JAPAN ASIA PACIFIC ◼◼ 2015 Sustainable Stock Exchanges South East Asia Regional Dialogue (Bangkok, Thailand) NIGERIA AUSTRALIA ◼◼ July 2015: Nigerian Sustainable Banking Principles (Abuja) ◼◼ Sustainable Finance Workshop for the Financial Services Regulation Coordinating Committee ◼◼ April 2015: Multi-partnered workshop on responsible investment (Sydney) PARAGUAY ◼◼ July 2015: Environmental & Social Risk Analysis workshops (Asunción) ◼◼ UNEP FI event ◼◼ UNEP FI supported/contributed event 6 UNEP Finance Initiative ONLINE TRAINING ◼◼ Complementing the national and regional outreach activities are the online training. Started in 2006, UNEP FI has run over 100 courses, training over 2,000 professionals from the financial sector all over the world. In 2015, the multi-lingual Environmental & Social Risk Analysis course was offered four times in English and Spanish respectively and once in French. The annual Spanish Corporate Eco-Efficiency in Financial Institutions course also took place. In 2016, further developments to its online training are planned with the extension of the ESRA training course for financial regulators and an upgrade of the Climate Change course. 概要 2015 7 2 0 1 5 年のUN E P F Iについて 序文 2015年はUNEP FIにとって画期的な一年となりました。気候変動と持続可能 な開発における2つの合意で、約200の政府が持続可能な世界を目指すロード マップに同意しました。特にパリ会議に向けての、そうした過程におけるUNEP FIの貢献は重要なものであったと言えます。 これが私たちの任務の終わりでは なく、実際のところ、終わりの始まりでもありません。 もしかしたら、始まりの終わり であるのかもしれません。 まず、私たちが達成してきたことを振り返り、そし 20年間の活動を通じて、そして金融がしばしば 悪者扱いされやすい世の中において、UNEP FI て残された課題の克服に目を向けることで、 こう は実際に、金融機関が真に求められる行動を取 したことの最適な説明ができるでしょう。 ご存じ ってきたことを示すことができました。 それは当 の通り、1992年のリオ・デ・ジャネイロにおいて 然のことながら、何年もの間、活動にご協力いた 初めて、気候に関する議論が行われました。当 時、合意に至ることは比較的容易であると考えら だいた非常に多くの方々のおかげです。 れ、それには必要な資金を調達するための金融 業界の改革が必要である、すなわちUNEP FIの しかし私たちの任務はまだ完了していません。な ぜならば、パリ協定は世界を安全に保つ最終的 必要性を多くの人が感じました。 しかし実際に は2015年にようやく合意に至った訳です。25年 な協定ではなくむしろ、各国政府、民間セクター、 もの年月がかかりましたが、最終的に合意に至り、 そして金融セクターが行動するためのロードマッ プであるからです。つまり、2015年にすべての人 それこそがパリ会議の重要な意味なのです。 々のための包括的な持続的な開発目標(SDGs) が採択されたことにより、サステナブル・ファイナ その間、UNEP FIは精力的に活動して参りまし た。UNEP FIのメンバーをはじめ、私たちが立ち ンスの分野において新しい考え方を生み出し革 新的な概念を打ち出すというUNEP FIの使命は 上げたり、支援したりしたイニシアティブは、パリ そして、持 協定における中心的な存在でした。強固な合意 さらに重いものになったと言えます。 続可能な世界の実現を目指してグローバルな を得るために、25兆米ドル相当もの運用資産を 金融にシステミックな変化を起こすという私たち 持つ機関投資家同士が団結する支援を致しま の試みに、2015年、大きな進展がありました。銀 した。UNEP FIによって作られたグループは、運 行業、 またそれを超える範囲でインパクトをもつ、 用ポートフォリオを脱炭素化すると宣言しまし た。UNEP FIが設立支援した責任投資原則(PRI) マーケット主導の新しいパラダイムを築くという 思惑から、 「ポジティブインパクト金融」が打ち出 も、UNEP FIグループの一つである持続可能な されたのです。 保険原則(PSI)が行ったのと同様の貢献をしま した。持続可能な保険原則(PSI)は、設立3年後 にしてすでに世界の保険料の20%を代表する までに成長しています。UNEP FIの銀行メンバー は、ニューエコノミーのための資金提供開始を 約束するにあたり、その代表者らを据え、 また、 グ リーンボンド市場の成長の中でそれを示すこと ができました。 8 UNEP Finance Initiative に新たにモンゴルやアラブ首長国連邦など、新 PSI「グローバルレジリエンス」 プロジェクトによ しい国々へも活動領域を拡げ続けています。 り、保険会社は、その専門知識を政府や地域社 会と共有することで自然災害によるリスクを減ら すパートナーシップを形成できるようになりました。 実際に、気候や持続可能な開発に関する政府間 協定は重要な節目です。 しかしそれらは、 あらゆ 「21世紀の受託者責任」 プロジェクトは、環境上 より長い の問題、社会の問題、 ガバナンスの問題(ESG問 る産業において着実に前進し得られる、 この2015年概要 題)が受託者責任としてこれまで考慮されてこな 行程の一部にしかすぎません。 をお読みいただいている皆様には、私たちのメ かったことに対処しなければならないと政策立 ンバーが従事する金融業界で既に起きた、 ある 案者や投資家を動かしました。私たちは持続可 いは今まさに起きている、そして今後起こさなく 能な金融システムに関する ”UNEP Inquiry” も 支援しており、それはまた同様に世界中の多くの てはならない変化の厚みを感じ取っていただけ ましたら幸いです。 そして、 この年次報告書の作 政策イニシアティブに参加しG20をも支援して います。不動産の評価査定にサステナビリティが 成に際しまして、2015年におけるUNEP FIのメ 考慮されるようにすることから、世界中で持続可 ンバーとUNEPとの協力から得られた成果に感 謝しつつ、持続可能な発展に寄与する金融業を 能な水供給を保証するために必要な適正価格 追求する機会をより多くの皆様を提供させてい を把握するなど、様々な方法を通じて金融業界 ただけましたら幸甚です。 の改革に協力しています。 そして、世界のサステ ナブルファイナンスのコミュニティを継続的に拡 大させており、過去10年間には3,000人を超え る人々のトレーニングを実施し、 さらに2015年 「金融がしばしば悪者 DAVID PITT-WATSON & DENISE HILLS UNEP FI 共同議長 デビッド・ピット・ワトソン デニス・ヒルズ 扱いされやすい世の 中において、UNEP FI は実際に、金融機関 が真に求められる行 動を取ってきたことを 示すことができた。」 ERIC USHER UNEP FI代表 エリック・アッシャー 概要 2015 9 年次外観 UNEP FIの「金融の変化」 と 「変化のための金融」 という目的は、持続可能な金 融システムによって支えられる持続可能な世界経済のビジョンを反映していま す。 金融の変化: 持続可能性に関する問題を通常業務やガバナンスのみ にならず、すべての市場においてメインストリームの金融システムなら びに金融機関の経営および意思決定に統合することを推進すること。 変化のための金融: 持続可能な経済をより一層発展させるためにお 金の流れをつくること。 環 境 適 切な この目的に従い、UNEP FIは金融機関の間で持 ら、UNEP FIは、新しい金融商品やサービスと 続可能な金融に関する専門知識を深めること、 いう枠を超えた新しい金融市場の創出を目指す、 つまり金融システムの中にパラダイムシフトを それらを浸透させることを支援しています。同 起こすことを最終的な目標にしています。UNEP 時に、持続可能な金融を可能にするより強固 FIでは2015年、3つの分野(専門性、環境整 な環境整備のため、UNEP FIは署名機関が政 備、市場開発)において非常に大きな進展があ 策当局や規制当局との対話ができる中立的な 場としての機能も果たしています。 こうした事か りました。 の整 備 市 ◼◼ 経済政策 ◼◼ 金融規制・監督 ◼◼ 国家のプロセス 場 専 門知識 発展 ◼◼ パラダイムシフト 10 UNEP Finance Initiative ◼◼ ◼◼ ◼◼ ◼◼ ◼◼ 調査・研究 意識 能力強化 原則および基準 ツール 金 融 業 界の市 場 発 展に サステナビリティを統 合する試 み 2015年は、金融業界が金融市場の発展とサステナビリティ課題 とを調和させ始めた転換点として後に記憶されることでしょう。 ポジティブインパクトファイナンス 10月に開催されたUNEP FIの年次総会での ポジティブインパクト宣言を以って、2015年は UNEP FIの銀行部門、そして部門を超えて検討す べき課題が設定された重要な節目となりました。 銀行業においてリスクとなる環境的社会的要因は 何か、 また逆に環境や社会のリスクとなる銀行業務 とは何かという長年の検討を経て、 ようやくビジネス として議論すべき時が来ました。SDGsが策定された 今、サステナビリティ課題の対処に必要な資金がメ インストリームの金融で調達可能であるのか、それ とも単にリスクとリターンの面からそれは不可能で あるのか?先駆者である10の銀行は、後者ではない という立場からこのマニフェストに賛同しています。 ソシエテ・ジェネラル銀行、ING銀行、 トリオドス銀 行を中心に、UNEP FIの銀行メンバーはポジティブ インパクトロードマップを作成しました。 その中に は、顧客との協力によって得られる新しいビジネス モデルの試行(ポジティブインパクトインキュベータ ー) とすべての参加者の共通言語となるポジティブイ ンパクト原則の策定が含まれ、それらはいずれもポ ジティブインパクト市場の創出を実現することを目 標としています。 持続可能な開発を実現するためには、 グローバルな 資金の流れに大きな変化が必要である: ◼◼ 持続可能な開発目標を実現するためには年間5−7兆米ドルが必要である1 ◼◼ 2029年まで年間300億米ドルの投資を脱炭素化する必要がある2 1 UNCTAD (2014). World Investment Report 2014 - Investing in SDGs – page. xi 2 IPCC (2014). Climate Change 2014 Synthesis Report - Section 4.4.4 Investment and finance. 保険開発目標 リスク管理、 リスク移転、投資家の機能をもつ保 険業界には、持続可能な開発を達成する上で戦 略的な役割を果たせる可能性があります。 2015年、持続可能な保険原則(PSI)は、保険業 界を中心に持続可能な開発の実現を目指す保 険開発目標(IDGs)の策定を議題とすることを 提案しました。 UNEP事務局長による昨年の発表を受けて、 こ のIDGsについての案はPSIとUNEP Inquiryによ る2015年 のレポートInsurance 2030: Harnessing insurance for sustainable developmentでも、国連グロー バルコンパクトとKPMGの2015年のレポート SDG Industry Matrix for Financial Servicesでも取り上 げられています。 エネルギー効率向上のためのファイナンス 世界の温室効果ガス エネルギー効率向上は、4,000億ユーロを上回 総排出量 るEUのエネルギーの輸入依存度を低減するた めに最も費用対効果の高い方法です。UNEP FI は欧州委員会と協力し、住宅・建築物や中小企 業のエネルギー効率向上のためのファイナン スを提供しようとする100以上の参加者を集め、 Energy Efficiency – the first fuel for the EU economyとい 住宅・建築物に うレポートを公表しました。 このレポートは、急務 起因する世界の 温室効果ガス の課題のみならず、エネルギー効率向上のため 総排出量 のファイナンスの需要と供給の両方を牽引する 要因について分析を行っています。EU域内のエ ネルギー効率向上を促す投資規模拡大に向け て、政策当局と金融機関に対して事業別に提案 に、COP21では、UNEP FIが中心となって結成し がなされました。 た連盟がIntegrating Climate Risks in Real Estate とい う文書の公表でもって政府交渉団を支持するシ 住宅・建築物部門の温室効果ガス排出量は世 また、投資家に対してエネルギー 界全体の排出量の約3分の1を占めることから、 グナルを送り、 エネルギー効率向上のためのファイナンスでは、 効率の高い持続可能な住宅・建築物への投資 エネルギー効率の良い住宅・建築物への投資額 を拡大するよう呼びかけを行いました。 を2020年までに現在の水準よりも年間で3,000 億米ドル増加させる必要があると試算されてい ます。 そうした背景から、気温上昇2度未満という 目標に向けて住宅・建築物部門が貢献するため 1/3 12 UNEP Finance Initiative サステナブルファイナンスの 専 門 性による金 融 機関支援 UNEP FIの活動の中核をなすのは、金融機関が持続可能な開発を支える上 で重要な役割を果たせるよう、持続可能性に関わる問題に取り組む金融、す なわちサステナブルファイナンスの専門性を高め、 また広く普及させることで す。2015年、UNEP FIは、署名機関とステークホルダーと共に専門知識をさらに 深めました。 持続可能な保険原則(PSI)– 協力機関を通じた関係強化 2012年の設立以来、持続可能な保険原則(PSI) は、世界の保険料収入の20%に相当し、14兆米 ドルの資産を運用する保険業界と国連との最大 の協力関係を構築してきました。57の署名機関 と48の協力機関の合計105の機関により構成 されています。世界の最大手の保険会社も含め、 全体としては100カ国以上における数億人規模 の顧客基盤と数十万人規模の従業員への影響 力を持つことになります。 ーシップや影響力を発揮する多くの協力機関が PSIの活動にご貢献いただいています。PSI ブラ ジル保険連盟や カリフォルニア州保健局あるい はフィリピン保険委員会などがその例で、そうし た州や国の先進的な保険当局の大きな協力を 得ています。PSIの中心は保険会社ですが、協力 機関として参画する主要なステークホルダーに より、PSIは多様性に富んだ「エコシステム」 として 機能しています。 保険会社以外で保険業界に関する活動を行う 協力機関がPSI のネットワークをさらに強化 していおり、保険規制・監督機関、保険協会、保 険連合、研究機関や学術機関などが含まれま す。保険業界への発信の際には、保険協会や 保険連合などが重要な役割を果たします。例 えば、Inter-American Federation of Insurance Companies (FIDES)を介してPSIは18カ国の約 8,500の保険会社とつながることができます。 そ の他にも持続可能な保険の分野においてリーダ 自然資本宣言(Natural Capital Declaration) も協 力機関の支援を得て活動するイニシアティブの 一つです。UNEP FIのユニークな価値提案力や 影響力を強化するため、UNEP FIでは引き続き 銀行業界をはじめとするステークホルダーとの 関係構築に注力します。 1 協力 機関 18 メンバー 国 コネクションの威力 一つの協力機関(FIDES) によりもたら されるグローバルに広がる企業ネット ワークの一例 8,455 保険会社 適切なツールやガイダンスにより金融業界でのESG統合を強化 金融業界においてESG 統合は明らかに加速して います。UNEP FI署名機 関の約8割がここ5年間サ ステナビリティ課題に対す る取り組みに大きな進展 があったと答えています。 昨今のニーズの高まりを 受け、今後もこうした勢い をさらに加速させるため に、UNEP FIは、署名機 関のみならず金融業界 全般が高まる環境や社会 のリスクや機会に備えら れるよう実用的なツール を開発してきました。 そし て2015年にも様々なツー ルやガイダンスが発表さ れました。 過去5年間貴機関のサステナビリティ課 題への取り組み状況の進展について最も よく表しているのはどれですか? 3% 11% 3% 3% 55% 24% 2010年時点で比較的進んでお り、それ以降も、顕著な進展が あった 。 2010年時点では進んでいなか ったが、それ以降、顕著な進展 があった。 2010年時点で比較的進ん でいたが、それ以降、進展 が殆どあるいは全くない。 2010年時点でも進んでおらず、 それ以降も進展が殆んどあるい は全くない。 その他 分からない、 あるいは答えられない。 Source: Membership survey undertaken as part of the UNEP Evaluation of UNEP FI started from Q4 2015. The final Evaluation Report is due in the summer of 2016. 持続可能な証券取引所イニシアティブ 投資家のためのESG情報開示ガイダンスのモデル mation to Investors: A Voluntary Tool For Stock 持続可能な証券取引所イニシアティブ Exchanges to Guide Issuersは、2016年末までに (SSEI)は、 ナスダック・グループやユーロネ 国際取引所連合およびSSEの参加取引所 クスト・グループといった影響力の大きな 取引所に加え、 ブルサ・マレーシアやカサブ の全てのメンバーが企業のサステナビリテ ィ情報開示における独自のガイドラインを ランカ証券取引所やインド国立証券取引 採用するよう働きかけを行うグローバルキ 所などの新興市場の取引所などが新たに 加わったことで、参加取引所の数が48機関、ャンペーンの支援に活用されています。 時価総額の合計で48兆米ドル規模にな りました。2015年、SSEIはステークホルダ ーとの対話のための、 また、気候変動や持 続可能な開発目標に関するガイダンスや ツールを公表しました。特に、上場企業の 指導用の証券取引所のための任意のツー ルであるModel Guidance on Reporting ESG Infor- 14 UNEP Finance Initiative 気候戦略と指標に関するガイダンス UNEP FI は脱炭素化に向けたポートフォ リオ再調整のための選択肢となりうる実践 的な方法を投資家に提供してきました。投 資家の多くがポートフォリオの「気候配慮 (“climate friendliness”) 」こそが、変化する 経済システムの中において長期的な成功 要因となるだろうと認識しています。2015 年 UNEP FIは World Resources Institute (WRI) と協力して Carbon Asset Risk: Discussion Framework(CAR) を出版しました。 そ こでは、金融機関によって明らかにされ た、優先劣後構造に沿った炭素に係る財 務上のリスク、それらの質的・量的な評価 やそれらを管理・軽減する方法が議論され ています。 このレポートと同時に、”Climate Strategies and Metrics”シリーズの2番目のレポ ートも発表されました。 こちらは、低炭素経 済のより一層の発展を目指すポートフォリ オレベルでの調整に向けて、資本配分、エ ンゲージメント、ポジショニングおよびシグ ナリング、情報開示の選択肢など包括的な 戦略を実施する投資家のためのガイドラ インとなっています。 水ストレスのツール 水不足と干ばつの問題は、企業、投資 家、政府にとって優先度の高いテーマで す。 この分野の議論を進めやすくするた め、 自然資本宣言(NCD)は 水ストレスに 関する2つの実用的なツールを発表しまし た。Corporate Bonds Water Credit Risk Tool は水制約下にある地域における水アクセ スの依存の高い企業をアナリストが特定 できるようにするためのツールです。電力、 採掘、飲料セクターを対象とし、水コストを 内部化することで当該セクターの企業の 信用格付けの低下の可能性を示します。一 方、Water Risk Valuation Toolはブルームバ ーグ社と共同で開発されたツールで、 アナ リストや資産運用者が銅や金の採掘業に ついて水リスクを企業評価に含めることを 可能にするためのツールです。 概要 2015 15 ソフトコモディティの サプライチェーンにおける森林減少リスク の最初の成果がソフトコモディティのサ プライチェーンにおける森林減少リスク に関する共同研究であり、それにより、2 つの補完的な成果物が2015年に出され ました。UNEP FIは こうした重要な課題 を政策と金融機関の両方に対して同時 に非常に有効に問題提起することができ ました。 2015年は、生物多様性、生態系サー ビス、水というテーマ別の活動分野 に、REDD+と持続可能な土地利用に関 する部門がプログラムレベルで統合され ました。新しい部門では、知識の共有を図 り互いに有益な形でプロジェクトに協力 することになります。 このような強化された協力体制のもとで 金 融機関 向け の ツ ル ー 自然資本宣言(NCD)がソ フトコモディディに係るリスクに 関して銀行と投資家向けにまとめた UNEPの報告書では、各金融機関がそれ らのリスク指針を策定・更新・強化するのに 役立つ具体的なエクセルのアセスメントツー ルが併せて公表されました。 16 UNEP Finance Initiative けの 政 策 UN REDDプログラム による政策分析結果で は、対象国の政府に対して、 金融業界が変化をもたらすた めの手段になり得るかを評価す る第一歩として4つのステップを示 しました。 ング フィ リー ブ この取り組みの中では、 インドネシア のパーム油生産に関係のある森林 減少リスクによる予想最大損失額 算出手法の開発や、小規模農 家に対する長期融資の機会 を増加させることが可能 なモデルの検討も始ま っています。 政策 立 案 者 向 第14回世界林業会議に先立ち、UNEP FI とUN REDDプログラムが協力して発表し たFiscal incentives for agricultural commodity production: Options to forge compatibility with REDD では、途上国における森林の減少や劣化に伴う温室 効果ガス排出に関する削減方法を検討していま す。農村開発や農産物生産と、長期に持続可能 な農業生産、健全な生態系システムと地域 社会の厚生を確保しようとするREDD+ の目的がより整合的なものとなる 必要性が訴えられていま す。 最先端の研究によりサステナブルファイナンスの可能性を広げる 金融機関の経営環境における自然環境と社会 両方の変化により、サステナブルファイナンスの 対象範囲は広がり続けています。UNEP FIは、や がて業界標準となるようなサステナブルファイナ 自然資本への依存と 影響の対応付け 環境リスク管理の分野の先進的な 活動計画においては、具体的な指 標の開発を念頭に置き、 自然資本へ の依存と影響に関する幅広い視点 からの分析も進んでいます。 この研 究は自然資本への実質的な依存と 影響とをグローバルなレベルで対 応付けを行うもので、将来的には銀 行や投資業務における信用分析に 組み込まれることを意図するもので す。 プロジェクトは国際的なリスクの 定量化手法の開発を支援するもので、 南アフリカ、 インドネシア、 コロンビア、 ペルーなどの新興市場に重点を置 いています。研究分野を絞り込むた めの調査Towards Including Natural Resource Risks in Cost of Capitalでプ ロジェクトの作業計画が定められて います。 ンスの新しいテーマをこれまでにも幾度となく 提起してきました。以下が2015年に提示した最 先端の研究です。 銀行ビジネスと人権 に関する法的分析 UNEP FIとフォーリーホーグ法律事 務所は銀行ビジネスと人権について の理解が深まるよう共同でBanks and Human Rights: A Legal Analysisという 報告書を公表しました。 この報告書 は既存の銀行ビジネスと人権問題 の状況について分析を行い「国連 のビジネスと人権に関する指導原 則」の概要を示すもので、その中で 銀行業界への意味合いについて検 討がなされています。銀行ビジネス と人権に係る拘束力をもつ規則と行 動規範の両方の側面から、 また、両 者の関連性について調査していま す。 この報告書は、UNEP FIが作成 し金融機関のためのHuman Rights Guidance Tool を補完するものです。 (2014年12月改定) 概要 2015 17 サステナブルファイナンスを 発 展させるための環境整備支援 金融機関の行動は経済政策や金融規制に大きく影響を受けます。UNEP FIは この点を踏まえ、サステナビリティに関する問題が規制・監督方針に組み込ま れるよう金融監督当局に関与し、 また、効果的な施策のために政策当局を支援 してきました。以下が、UNEP FIの2015年の政策や規制に係る活動事例です。 銀行業とサステナビリティ課題: 統合の機会 2014年に公表したレポートStability and Sustain ability in Banking Reform – Are Environmental Risks Missing in Basel III? に続き、UNEP FIはケンブリ ッジ大学サステナビリティ・リーダーシップ・イ ンスティテュートとUNEP Inquiryと共にExpert Dialogue on Understanding and Addressing Environmental and Social Drivers of Systemic risk in Bankingという専 門家による協議の場としての会合を開きました。 21世紀の受託者責任 投資家が自らの投資判断にESGを体系的かつ 適切に組み込むことは過去10年間に大きな 進展があったものの、未だに重要な課題も残っ ています。 フレッシュフィールズ・レポートに立 脚し、UNEP FIはPRI、UNEP Inquiry、国連グロ ーバルコンパクトと共にFiduciary Duty in the 21st Centuryと題した報告書を公表しました。 そこでは 「投資実務において、環境上の問題、社会の問 題および企業統治の問題など長期的に企業価 値向上を牽引する要素を考慮しないことは、受 託者責任に反することである」 と結論づけられま した。 オーストラリア、 ブラジル、 カナダ、 ドイツ、 日本、南アフリカ、英国、米国の8カ国において、 政策、規制動向、投資実務に関して法に照らした 分析を行い、課題に対処するために機関投資家 や政策当局が取るべき実行可能な行動を推奨 しています。報告書は、受託者責任が21世紀の 投資家にふさわしいものとなるよう、現代的な定 義や解釈がなされるためのアクションが必要で あると結んでいます。 18 UNEP Finance Initiative この会合やその他多くの銀行監督当局との二 者会議などを通じて得られた主な知見はBanking & Sustainability: Time for Convergenceと題した進捗報 告書が公表されました。 これは、金融市場の安定 とサステナビリティ課題の関連性についての現 在の考え方をまとめ上げた政策ブリーフィング で、政策当局との知見の共有や関与に役立てる ことを意図しています。 持続可能な保険政策および規制 PSIとUNEP Inquiryは、2030年までに保険業界 と持続可能な開発との間の継続的な協調を強 化するような保険業に係る政策や規制について 大々的なグローバルでの協議を行うことが重要 であるとしてInsurance 2030: Harnessing insurance for sustainable developmentと題する報告書を公 表しました。提言の一つにある持続可能な保険 政策フォーラム (SIPF)の設立は2016年に実現 が見込まれています。 加えて、PSIはその保険政策に関する専門性を 以って、中国政府、UNEP Inquiry、IISDその他の 協力機関と共に中国の金融システムグリーン 化に向けた革新的な政策の取り組みに協力し ました。詳細については、Establishing China's green financial system and Greening China's financial systemとい う報告書をご覧ください。 気候と災害に対するレジリエンス強化の支援 PSIは持続可能な保険政策および規制に関する 活動をはじめるにあたり、気候変動や自然災害 のリスク軽減に係る公共政策の改善に保険業 界の専門知識が生かされるよう働きかけを行っ てきました。2014年に始まったPSI「グローバル レジリエンス」 プロジェクトは、政府、NGO、社会 そして産業界において、災害後の救援および復 旧活動以上に災害リスク軽減に役立つ予防手 段への投資がより重視されることで、災害に対 して回復力のある社会と経済のシステムを形成 することを目指した、世界中の保険会社と主要 なステークホルダーを中心としたプロジェクトで す。2015年にPSI Global Risk Map and the Collaborating for Resilience: Partnerships that build disaster-resilient communities and economiesと題する報告書の公表を 以ってこのプロジェクトは完了しました。 グロー バルレリジエンスプロジェクトの後続として、PSI は都市における気候変動レジリエンスというテ ーマでの活動に重点的に取り組み始め、都市や 中小企業への調査Business unusual: Why the climate is changing the rules for our cities and SMEsを世界で初 めて行いました。 民間セクターにおける気候ファイナンスの解明 気候変動に対するもう一つの重要な側面が、気 候変動の緩和と適応のために政府が民間から 十分な資金を動員する必要があるという点で す。 この気候課題を周知させ解決を後押しする ために、UNEP FIは協力機関と共に民間セクタ ーの気候ファイナンスについて明らかすること に重きを置いた調査活動を立ち上げました。次 の3つの質問に対する回答を提示することを目 的としてます。1. 民間資金の現状とはどのような ものか?2. それは気候変動の緩和や適応とどの ような関連があるのか? 3. 公的セクターによる 動員の最善の方法とはどのようなものか? これ らの問いに沿い、UNEP FIは2015年にDemystifying Private climate financeシリーズを創刊しまし た。2016年には、i) 民間資金と気候変動への適 応 と ii) REDD+ と持続可能な土地利用への民 間資金の動員というより具体的な問題を扱う出 版物の刊行が予定されています。 G20エネルギー効率向上ファイナンス・タスクグループ G20 エネルギー効率向上ファイナンス・タス クグループ(EEFTG)の事務局の一部を担う UNEP FIは、異なる地域においてマルチステー クホルダーとの協議会を5回実施しました。それ らの活動については、エネルギー効率向上のた めの投資に関する一連のケーススタディと共に 2015 Activity Reportの中で報告されています。 ま た、 より一層の投資喚起につながる政策環境の 整備を支援することを目的としたEnergy Efficiency Investment Principles for countriesという出版物を刊行 しました。 この投資原則は2015年10月のG20 エネルギー大臣会合の声明においても取り上げ られ歓迎されました。 概要 2015 19 政府のサステナビリティ課題への取り組みを 支援するための民間金融セクターの団結 2015年は、世界の気温上昇を2度未満に抑えるという最終的な合意に至っ た年として、その環境面における意義は後世にまで記憶されることになるでし ょう。 この成果は、1992年のリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミット以 来、2009年のコペンハーゲンでの交渉決裂を経て、世界が長い間その時を待 ち望んでいたということからも、決して過小評価されるべきではありません。 動に対処するために必要な迅速さや規模の拡大 2015年のUNEP FIの重点的な取り組みの多く には民間の気候ファイナンスが非常に大きな役 がCOP21に向けた準備であったことは必然で 割を果たすものであるという理解が広がったこと あったと言えます。 ポートフォリオ脱炭素化連 もあり、金融機関の積極的な支持がパリ協定の 盟(PDC)の下、UNEP FIは金融機関に温室効 成功に寄与したことは間違いありません。 果ガス排出削減におけるリーダーシップ発揮を 求めてきました。年初の段階でも1,000億米ドル こうした観点から、UNEP FIの署名機関はPDCに の運用資産に対して脱炭素化の約束を得ると 限らず持続可能な開発に関する主要な政府間 いう、それだけでも十分野心的な目標を掲げて 交渉プロセスを支持するために団結することで いましたが、COPの段階ではPDCは実にその目 強力なリーダーシップを示してきました。以下が 標をはるかに凌ぐ総額6,000億米ドルを超す運 その他の事例です。 用資産の脱炭素化の約束を得ました。 こうした PDCの成果は、PDCはオランド仏大統領、潘基 ◼◼ COP21において、UNEP FIの多くのメンバ 文国連事務総長、COP議長のロー ーが18のイベントに参加し金融の可能性 ラン・ファビウス仏外相、セゴ やリーダーシップを示しました。UNEP FI レーヌ・ロワイヤル環境相 が共同事務局を務める 「 のスピーチの中でも言及 持続可能な証券 されました。 取引所イニ PDCは、政府が民間セク ターに持続可能な開発 について支持を呼びか けるという、 ここ近年の顕 著な傾向の高まりを浮き 彫りにしています。重要な 転換点は2012年のリオ+20(国連持続 可能な開発会議) との見方もあるかも しれませんが、2015年アディスアベ バで開催された第3回開発資金国 際会議と明言できる のではないでしょ うか。COP 21が 開催されるま 2015 でに、気候変 年の目標 額 1,000億米ドル 20 UNEP Finance Initiative 2015年のポート フォリオ脱炭素化 6,000億米ドル シアティブ」 (SSEI)に、ユーロネクストやイ ンド国立証券取引所などを含む新たな9つ の取引所がイニシアティブに参加したこと はその一例です。 ◼◼ The Global Investor Statement on Climate ChangeはUNEP FIとグローバルな投資家グ ループとのイニシアティブで24兆米ドルの 運用資産をもつ409の機関が参加しました。 ◼◼ 持続可能な保険原則(PSI)のメンバーは この声明は、低炭素および気候レジリエン 国連事務総長直轄の気候レジリエンス— トな投資拡大を通じた投資家の貢献を目 Anticipate, Absorb, Reshape — A2R イニシア 指す一方で、各国政府が目標とする行動を ティブの立ち上げにおいて中心的な役割 通じてUNEP FIがいかにしてより大きな貢 を果たしました。 このイニシアティブと並ん 献をすることが可能か提示しています。 で、国連持続可能な開発目標(SDGs)の実 現を支援するための保険開発目標(IDGs) ◼◼ 2015年パリ会議において、42カ国100以 策定についての提案も行いました。 上の銀行と4兆億米ドル近い資産を運用 する投資家がエネルギー効率向上のため のファイナンスの拡大を訴える2つの声明 第3回開発資金国際会議のUNEPのサイドイ ベントであるRedesigning Finance for Sustainable に賛同したことが発表されました。 これらは、 Developmentでは、よりグリーンでよりサステナブ 前例のない規模の金融機関の団結を示す ルな世界経済への移行に必要な数兆ドルの資 ものでした。持続可能な開発目標の実現に 金を動員できるような金融システムの再設計が 寄与するのみならず2度未満シナリオにお 必要であるという 「大改革」 を呼びかける金融監 けるエネルギー効率の重要性が金融業界 督当局および金融業界の意見が出ました。 さら の中でも急速に高まっていることを表して に多くのUNEP FIのメンバーが、政府による行 いると言えます。 動を求める様々な国際的な合意や呼びかけに 応じました 。 ◼◼ U NEP FIの持続可能な保険原則(PSI)のメ ンバーでもあるトップクラスの保険会社は、 リスクを引き受け管理することを中核業務 とする保険業界であるからこそ災害による 経済的および社会的な影響を理解するこ とができる適切な立場にあると強調しつつ、 政府に 「ポスト2015年防災枠組み」の採 択を促すThe United for Disaster Resilience Statementを発表しました。 概要 2015 21 COP 21 12月の 気候変動会議 (COP21)の 成功が何年も の苦節を経て 得られたもの であったことを 否定する人は いないだろう。 22 UNEP Finance Initiative そして、合意に至った。 より高い目標設定にするために、5年毎に各国の排 出ガス削減に対する貢献度合いが見直される。 経済力のある国は経済力のない国が気候変動に適 応し再生可能エネルギーへの転換を図れるよう 「気 候ファイナンス」 を提供すべきである。 地球の気温上昇は摂氏2度(華氏3.6度) を「十分に 下回る」水準に抑え、 さらに、1.5度に 「抑える努力」 をする。 2050年から2100年までの間に、温室効果ガスの人 為的排出を森林・土壌・海洋が自然に吸収できる量 に抑えるようにする。 持 続 可 能な開 発目標 何年にもわたるハイレベルの交渉を経て、9月 に持続可能な開発目標(SDGs)の最終合意に至 った。 ミレニアム開発目標を基礎に未達成の課 題への継続的な取り組みを目指しつつ、17の 目標と169のターゲットは全ての人々にとってよ りサステナブルな将来となることへの各国政府 の熱意と約束を包括的に示している。重要なの は、SDGsが経済、社会、環境という3つの側面で の持続可能な開発のバランスを取っていること である。 UNEP FIのグローバル・パートナーシップは、金 融システムを持続可能な開発という 「目的に かなう」 ものにすることであるので、UNEP FIの SDGsへの重要な貢献とは目標17においてであ ると言える。 「持続可能な開発の ための実施手段を 強化し、 グローバル なパートナーシップ を活性化させること」 概要 2015 23 U NE P I N Q U I RY持続可能な金融 システムのデザインに向けた調査 持続可能な開発へ向けた大きな転換の中で、低炭素、 レジリエントかつ包摂 的な経済への移行には金融システムの活用が不可欠です。過去2年にわた り、UNEP Inquiryは持続可能な開発の趣旨と整合的な金融システムでの取り組 み事例と可能性を調査し、対応付けを行いました。 国家単位の革新的な取り組みが国際的な枠組 み、目標、熱意に統合されることで、 より広い意味 においてグリーンファイナンスを促進するための 新たな道筋を示す機会を提供しています。 主な調査結果 調査により金融市場当局が導入した5つのタイ プの政策が判明しました。 また、調査からは合計100以上の個別の施策が 明らかにされました。 ◼◼ 情 報開示の向上、責任の明確化、商品基 ◼◼ 中国: 情報共有、法的な枠組み、財政イン 準の改善を通じて市場慣行の質を高める。 センティブおよびその制度設計など中国の グリーンファイナンスシステムを発展させ ◼◼ 財政インセンティブ、公的金融機関や中央 るための14の提言 銀行の行動を通じた国のバランスシート ◼ ◼ フランス : エネルギー移行法の一環として の活用。 機関投資家に課されることになった気候 ◼◼ 優先貸付業種、法定要件、負債管理などの 変動に関する新たな情報開示要件の導入 政策を通じて金融に指示する。 ◼◼ ケニア:モバイル決済サービスの拡大によ ◼◼ 能力開発、市場構造とインセンティブの見 る金融包摂の進展とグリーンファイナンス 直しを通じて金融市場における行動様式 の後押し を変換する。 ◼◼ ペルー: 社会や環境の外部不経済の減少 に役立つよう銀行に課される新しいデュー ◼◼ 指針となる原則、監督義務、パフォーマン ディリジェンス基準の導入 ス測定を通じてシステムのガバナンス機能 を高める。 ◼◼ 米国: 情報開示や投資家行動における大 きな進歩を受け、 グリーンファイナンスを 加速化させるための財政措置を強調 24 UNEP Finance Initiative UNEP convenes financial community IMF/World Bank annual meetings, Lima 8th October 2015 – Launch of the Inquiry’s Global Report with Governor of the Bank of England, Mark Carney, Deputy Governor of Peoples Bank of China Yi Gang, Governor of Bangladesh Bank, Atiur Rahman and UNEP Executive Director Achim Steiner. UNEP Inquiryの報告書では、具体的な施作40 例ほどが集められたツールボックスや、銀行・債 券市場・株式市場・資産運用・保険5分野に及ぶ 政策パッケージ、国際的な金融協調を次の段階 に進める上で優先すべき 10の措置、など行動 枠組みを提示しています。 UNEP Inquiryの調査結果に対する非常に肯定 的な反応や、今日までの影響の大きさ、 また、 さ らなる発展に向けてUNEP Inquiryへの関与や支 援を望む声が大きくなっていることなどが主な 理由となり、UNEP Inquiryへの要請は延長され 第二段階に入りました。 UNEPは、UNEP金融イニシアティブによるサス テナブルファイナンス分野での20年以上の活動 実績を踏まえ、UNEP Inquiryを通じて、サステナ ブルな金融システムの実現に向けた課題や可能 性を探るために必要な政策当局と市場双方の 関与を促す上でも、啓発および知識の普及を図 る上でもリーダーシップを発揮してきました。 そ れを示す一例が、2016年G20議長国を務める 中国が中国人民銀行とイングランド銀行を共同 議長として設立した Green Finance Study Group (G20 GFSG) において、UNEP Inquiry がその事 務局を付託されたことです。 概要 2015 25 SECRETARIAT Head Eric Usher Programme Manager Yuki Yasui Banking Careeb Abb Teresa Hartmann UN E P F I N A N C E I N I TI AT I V E Insurance Butch Bacani Diana Almoro STEERING COMMITTEE 2015 Investment Elodie Feller Katharina Luetkehermoeller CO-CHAIRS David Pitt-Watson Inflection Point Capital Management Climate Change Remco Fischer Lisa Petrovic George Scott Ecosystem Management Anders Nordheim Sudeep Rathee REDD+ Iain Henderson Jacinto Coello Jonathan Gheyssens Robert Wilson Anna Creed Energy Efficiency Annie Degen Sarah Challe Social Issues Sabina Timco Training Carolina Lopez Communications Robert Bartram Ravenna Nuaimy-Barker IT Richard Hansen Regional Outreach Geeda Haddad Matias Gallardo Dae Woong Lim Kaori Nomura Ryan Cunningham Mengqi Cai Rubi Hernandez Administration Ken Maguire Lydia Beaujois Laurie Cruz Denise Hills Banco Itau Holding Financeira S.A. REGIONAL REPRESENTATIVES Africa Omobolanle Victor-Laniyan Access Bank Asia Pacific Vacant UNEP Ligia Noronha Europe James Vaccaro Triodos Bank NV INDUSTRY REPRESENTATIVES Latin America Denise Hills Banco Itau Holding Financeira S.A. Banking Commission Portia Bangerezako Standard Bank Group Insurance Commission Andreas Speigel Swiss Reinsurance Company North America Susan Miller The Bank of TokyoMitsubishi UFJ, Ltd Investment Commission Frank Hovorka Caisse des Dépôts OPEN POSITIONS THEMATIC REPRESENTATIVES Climate Change Karsten Löffler Allianz SE Namita Vikas YES BANK LTD Social Issues David Pitt-Watson Inflection Point Capital Management Ecosystem Management Rosemary Bissett National Australia Bank Philippa Birtwell Barclays Group Guido Cordero Banco Pichincha C.A 時 代の変化を掴 む。 グローバル ラウンドテーブル 2016 2016 年10月25・26日 アラブ首長国連邦・ドバイにて 今年で14回目を迎えるグローバルラウンドテーブル(GRT)は、サステナブルフ ァイナンスに関する検討すべきグローバルな課題を設定する極めて重要なイ ベントの一つとなりました。市民団体、学術機関、政府、国連の首脳や代表のみ ならず金融システムのあらゆる分野のリーダー数百名が一堂に会することにな ります。 2015年、世界の国々が最終合意することに成功 した持続可能な開発目標(SDGs) とパリ協定を 踏まえ、2016年のGRTは世界中のグリーン経済 に関わるリーダーが集う極めて重要な会合とな るでしょう。 それは、持続可能で気候レジリエン トな開発を促進させるための金融機関の役割 やその道筋を明らかにすることになるからです。 2016年のGRTは今日金融業界が直面する差し 迫った課題について議論します。 ◼◼ 持続可能な開発および気候変動に関わる 新たな課題は金融セクターにとってどのよ うな意味合いがあるのか? ◼◼ 金 融業界が持続可能な開発を牽引するた めにはどうすればよいのか? ◼◼ グリーン・イスラム金融とはどのようなもの か?いかにして規模拡大が可能か? ◼◼ どのような最新のビジネス機会が生まれよ うとしているのか? ◼◼ 政策や技術面でのイノベーションがサス テナブルファイナンスの将来をどう変えつ つあるのか? ◼◼ 金融業界におけるサステナビリティへの移 行はいかにして加速できるか? ◼◼ 新たに発生する環境面および社会面のリ スクをより適切に定量評価する方法とは? お申し込み・プログラムおよび 講演者・その他詳細はこちらから: www.unepfi.org/grt2016 概要 2015 27 CHANGING FINANCE, FINANCING CHANGE www.unepfi.org UNEP Finance Initiative [email protected] International Environment House 15 Chemin des Amenomes CH-1219 Chatelaine Geneva, Switzerland /UNEPFinanceInitiative @UNEP_FI
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