参照 - 物理探査学会

物理探査データのアーカイブ化を目的とした標準書式案の検討について
高橋亨*(公益財団法人 深田地質研究所)
物理探査書式検討研究委員会(物理探査学会)
On the suggested standard format of geophysical data for their archives in
future
Toru Takahashi (Fukada Geological Institute)
SEGJ Digital Standard Format Consortium
ABSTRACT: The SEGJ Digital Standard Format Consortium has worked since 2009 in collaboration with
the Public Works Research Institute for proposing the digital standard formats of geophysical data.
XML-based formats for presenting 2D geophysical profiles have been proposed for P- and S-wave velocity
profiles of the seismic refraction method, an S-wave profile of the surface wave method and a resistivity
profile of the electrical method. This standard format and a free application software for presenting a 2D
profile have been opened on the geotechnical database KunJiban. The SEGJ Consortium continues to discuss
about the standard format of geophysical data including a profile for their archives for reuse of the data in
future. This paper presents recent activities of the consortium and an example of the proposed standard
formats of geophysical data which have been discussed and summarized until now.
1. はじめに
物理探査学会では,2009 年度より物理探査書式検
討研究委員会(以後,委員会と呼ぶ)を組織して,(独)
土木研究所と共同で,
物理探査データの標準書式の検
討を進めてきた.その第一段階として,屈折法地震探
査,表面波探査,電気探査の二次元断面の標準書式案
をまとめ,2011 年 3 月に第1バージョンをリリース
した(稲崎他,2011;中塚他,2011;山下他,2011).
委員会では,同時に,標準書式で記載された断面の表
示 ソ フ ト と し て GeoExViewer と そ の Web 版
GeoEXNet ならびに一般の解析ソフトの出力(テキス
トファイル)を標準書式としての XML 形式のファイ
ルへ変換するためのソフト SEGJFormatConverter も製
作した.GeoExViewer や標準書式に関する説明書やフ
ァイル例は,(独)土木研究所の国土地盤情報検索サイ
ト KuniJiban 上に公開され,誰でも自由に利用できる
ようになっている.
2011 年度からは引き続き,探査断面の標準書式に
加えて,
探査で得られたオリジナルデータのアーカイ
ブ化のための標準書式の検討も行っている.
現在まで
のところ,屈折法地震探査,表面波探査,電気探査,
牽引式電気探査について検討を行い,
標準書式案をま
とめた.今後も,引き続き,反射法地震探査,PS 検
層,
微動アレイ探査等の他の手法についても検討を進
める予定であるが,
各手法とも書式案をまとめた段階
で随時公開し,
関係する多くの方々のご意見をいただ
いた上で最終案をまとめていきたいと考えている.
そ
こで本稿では,主に 2011 年度に検討した結果につい
てその概要を報告する.
2. 委員会の活動状況
現状,委員会では,表1に示す委員により,主に土
木建設関連分野での浅層を対象とした物理探査デー
タの書式を中心に検討を行っている.
この分野では未
だ 3 次元探査は一般的には利用されていないため,
現
状 2 次元データを主な対象にしているが,3 次元デー
タへの拡張性も考慮した書式の検討を行っている.
表1 委員会構成(2012 年 3 月末現在)
氏 名
所 属
委員長
高橋 亨
(公財)深田地質研究所
委員
相澤 隆生
サンコーコンサルタント(株)
委員
今里 武彦
(株)日本地下探査
委員
杉本 芳博
(株)ダイヤコンサルタント
委員
鈴木 敬一
川崎地質(株)
委員
高市 和義
伊藤忠テクノソリューション(株)
委員
中塚 正
日本物理探鑛(株)
委員
三木 茂
基礎地盤コンサルタンツ(株)
委員
山下 善弘
応用地質(株)
委員
横田 俊之
(独)産業技術総合研究所
委員
渡辺 文雄
日本物理探鑛(株)
2011 年度は,前年度までに断面に関する標準書式
の検討が終了した屈折法地震探査,電気探査,表面波
探査と電気探査の一種で河川堤防調査でよく利用さ
れている牽引式電気探査のオリジナルデータを含め
た標準書式の検討を行い,案としてまとめた.
3. 標準書式の検討結果
委員会では,
物理探査データの将来の利用促進を図
るためには,
地盤情報データベースとして広く利用さ
れている KuniJiban において標準書式が利用されるこ
とが重要と考え検討を進めてきた.そのため,データ
は XML 形式で記載し,使用言語は英語だけでなく日
本語も利用できる仕様とし,
将来のデータベースとの
連携を考慮したタグも設定した.
図 1 に標準書式の全体構造,
図 2 に具体的なタグ名
と記載例を示す.
保存するデータは測線毎にまとめる
ことにした.測線タグの下に,
「標題情報」,
「断面」,
「探査測定解析データ」の 3 つの主要タグを設けた.
「標題情報」には,「調査情報」として調査目的など
の調査基本情報,「位置情報」として測線の終端位置
等の位置データや座標の設定法,「探査管理データ」
として,探査手法や測定,解析の基本情報を記載でき
るようにした.
「断面」には,断面 ID の管理の下,断面の書式と定
義方法(節点か要素)を指定し,節点や要素の番号や
位置,物性値を記載する.物性値の種類や単位も記載
する.
合わせて断面を図化する場合に重要な配色など
を指定する描画情報も記載できるようにしている(詳
細は,林他,2010 参照).
「探査測定解析データ」タグの下に,オリジナルデー
タに関する情報を記載する.具体例として,現時点で
の表面波探査データの書式案を図 3 に示す.
表面波探
査の場合,
収録した波形データは最も基本的なデータ
として収録時の野帳とともに,「表面波探査_波形」
に保存する.
探査結果は 2 次元断面として表示される
が,基本データは 1 次元データと考え,各測点におい
て解析で得られた分散曲線と 1 次元速度構造を
「表面
波探査_データ」に保存する.また,測点の位置情報
は「表面波探査_測点」に,調査地で設定した測線等
のローカル座標での位置と GPS 等で絶対位置が測量
されている場合には,その情報も収録可能とした.
4. おわりに
上記書式案のうち,「探査測定解析データ」部分以
外の書式は 2 次元断面を記載するための書式として,
「はじめに」
の項で記載した第 1 バージョンとして公
開され,試験的に利用されている.しかしながら,委
員会では,それらすでに公開している書式も含めて,
今後検討,改訂を進め,最終案としてまとめていきた
いと考えている.本稿では紙数の制限があるために,
書式案の一例しか記載することができなかったが,
今
後検討が終了した書式案から順に学会のウェブサイ
ト等に掲示し,
会員からの意見を広く募集する予定で
ある.
物理探査結果
言語
データベース情報
データベース形式
データ流通関連メタデータ
メタデータ項目
測線数
測線
標題情報
調査情報
位置情報
探査管理データ
断面
探査測定解析データ
測線
測線
・
・
・
測線
共通描画情報
図 1 標準書式の全体構造
<物理探査結果 DTD Version=”2011.01”>
┣<言語>日本語
┣<データベース情報>
┃┗<データベース形式>SEGJ/PWRI.STANDARD.FORMAT.2011.01
┣<データ流通関連メタデータ>
┃┗<メタデータ項目>
┣<測線数>1
┣<測線>
┃┣<標題情報>
┃┃┣<調査情報>
┃┃┃┣<事業工事名>平成 24 年度○△川 999 号地区地質調査業務
┃┃┃┣<調査名>999 号地区 S 波構造調査
┃┃┃┣<発注機関名>北西地方整備局×××工事事務所
┃┃┃┣<調査会社>○○探査コンサルト
┃┃┃┣<調査目的>斜面安定性評価
┃┃┃┗<調査地>北西市○△地先
┃┃┣<位置情報>
┃┃┃┣<XY座標系
┃┃┃┃┣<XY座標系ID>JTM-07
┃┃┃┃┣<XY座標系_座標定義>
┃┃┃┃┣<座標_原点_緯度>36.000000
┃┃┃┃┣<座標_原点_経度>137.166667
┃┃┃┃┣<座標_原点_Xオフセット>0.000000
┃┃┃┃┗<座標_原点_Yオフセット>0.000000
┃┃┃┣<座標点数>2
┃┃┃┗<座標点 座標点番号="0">
┃┃┃ ┣<座標点 緯度>33.884701
┃┃┃ ┣<座標点 経度>130.679993
┃┃┃ ┣<座標点_標高>12.3
┃┃┃ ┣<座標点 断面水平座標>0.00
┃┃┃ ┣<座標点_X座標>78123.5
┃┃┃ ┣<座標点_Y座標>-123750.0
┃┃┃ ┣<座標点_位置取得方法コード>02
┃┃┃ ┗<座標点_精度コード>1
┃┃┗<探査管理データ>
┃┃ ┣<探査手法>表面波探査
┃┃ ┣<探査管理_断面 ID>0
┃┃ ┣<測定情報>
┃┃ ┃┣<測定者>物探太郎
┃┃ ┃┣<測定日>20120126
┃┃ ┃┣<測定方法>ランドストリーマー
┃┃ ┃┗<測定器>McSEIS-SXW
┃┃ ┗<解析情報>
┃┃
┣<解析者>音波響子
┃┃
┣<解析方法>非線形最小二乗法
┃┃
┗<解析ソフトウェア>SeisImager/SW
┃┣<断面>
┃┃┣<断面 ID>0
┃┃┣<断面_書式>四角形格子
┃┃┣<物性値_定義方法>節点
┃┃┣<物性値_定義場所>節点定義
┃┃┣<四角形格子>
┃┃┃┣<水平方向要素数>338
┃┃┃┗<鉛直方向要素数>15
┃┃┣<節点定義>
┃┃┃┣<節点_節点数>5424
┃┃┃┗<節点 節点_X 番号="0" 節点_Z 番号="0" 節点_属性="地表">
┃┃┃ ┣<節点_番号>0
┃┃┃ ┣<節点_水平座標>-18.07
┃┃┃ ┣<節点_鉛直座標>0.0
┃┃┃ ┣<節点_物性値>281.4
┃┃┃ ┗<節点_物性値番号>
┃┃┣<要素定義>
┃┃┃┣<要素_要素数>5070
┃┃┃┗<要素 要素_X 番号="0" 要素_Z 番号="0">
┃┃┃ ┣<要素_番号>0
┃┃┃ ┣<要素_節点数>4
┃┃┃ ┣<要素_物性値>
┃┃┃ ┣<要素_物性値番号>
┃┃┃ ┗<要素_節点番号 節点順番="0">86
┃┃┣<物性値定義>
┃┃┃┣<物性値_物性値数>
┃┃┃┗<物性値>
┃┃┃ ┣<物性値_番号>
┃┃┃ ┗<物性値_値>
┃┃┣<物性>S 波速度
┃┃┣<単位>m/s
┃┃┗<描画情報>
┃┃ ┣<軸>
┃┃ ┃┣<軸_X_最小値>10.0
┃┃ ┃┣<軸_X_最大値>90.0
┃┃ ┃┣<軸_X_目盛間隔>10.0
┃┃ ┃┣<軸_Y_最小値>-16.0
┃┃ ┃┣<軸_Y_最大値>4.0
┃┃ ┃┗<軸_Y_目盛間隔>2.0
┃┃ ┗<コンター>
┃┃
┣<コンター方法>コンター
┃┃
┣<コンター線>有
┃┃
┣<コンター数>21
┃┃
┗<コンター境界 コンター番号="0" 赤="255" 緑="0" 青="255">
┃┃
┗<境界値>50.0
┃┣<探査測定解析データ>
┃
┗<共通描画情報>
┣<縮尺>2500
┗<縦横比>2.5
図 2 標準書式のタグ名と記載例
参考文献
林宏一・稲崎富士・倉橋稔幸・物理探査書式検討研究
委員会(2010):土木地質調査分野における物理探査
結果の標準書式の提案,
物理探査学会第 123 回学術
講演会論文集,13-16.
稲崎富士・倉橋稔幸・物理探査書式検討研究委員会・
北尾馨(2011):標準書式に基づいた物理探査断面
DB の構築(その 1)-データベースの概要-,物
理探査学会第 124 回学術講演会論文集,251-254.
中塚正・林宏一・稲崎富士・倉橋稔幸・高橋亨・物理
探査書式検討研究委員会(2011):標準書式に基づい
た物理探査断面 DB の構築(その 2)-Web 版図化
表示ソフトウェア-,
物理探査学会第 124 回学術講
演会論文集,255-258.
山下善弘・林宏一・稲崎富士・倉橋稔幸・物理探査書
式検討研究委員会(2011):標準書式に基づいた物理
探査断面 DB の構築(その 3)-普及のためのツー
ル整備-,
物理探査学会第 124 回学術講演会論文集,
259-262.
表面波探査_データ
物理探査結果
言語
表面波探査_データ数
データベース情報
表面波探査_1Dデータ
データ流通関連メタデータ
表面波探査_測点番号
測線数
分散曲線
測線
位相速度数
標題情報
位相速度
断面
周波数
表面波探査
速度
位相速度
表面波探査_断面 ID
1D速度構造
表面波探査_測点
表面波探査_データ
層数
表面波探査_波形
層
P 波速度
測線
S 波速度
密度
層厚
層
表面波探査_測点
表面波探査_1Dデータ
表面波探査_測点数
表面波探査_測点位置
表面波探査_測点番号
表面波探査_波形
表面波探査_測点水平位置
表面波探査_波形ファイル数
表面波探査_測点高さ
表面波探査_測点オフセット
表面波探査_波形ファイル
表面波探査_測点絶対位置 X
表面波探査_波形ファイル参照番号
表面波探査_測点絶対位置 Y
表面波探査_野帳ファイル参照番号
表面波探査_測点絶対位置 Z
表面波探査_波形ファイル
表面波探査_測点位置
図 3 表面波探査の標準書式案