システム工学概論 - システム情報科学専攻

北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科
システム情報コース担当講義
システム工学概論
Introduction to
System Engineering
平成23年 4月20日,27日 講義分
担当 小野里 雅彦
大学院情報科学研究科
システム情報科学専攻
システムとは
システム(System)とは
情報システム
解析システム
システム科学
機械システム
シミュレーションシステム
システム工学
通信システム
コンピュータシステム
システム設計
生産システム
制御システム
システム分析
金融システム
発電システム
システムマネジメント
教育システム
送電システム
システム開発
生体システム
冗長システム
システム制御
環境システム
空調システム
システムアナリスト
気象システム
監視システム
システム金融
宇宙システム
生命維持システム
システムアーキテクチャ
管制システム
ロボットシステム
システム管理者
CADシステム
分散システム
システム障害
オープンシステム
ソーラーシステム
システム情報コース
免疫システム
・・・・・・
・・・・・・
システム(System)とは
System (from Latin systēma, in turn from Greek
σύστημα sustēma) is a set of entities, real or
abstract, comprising a whole where each component
interacts with or is related to at least one other component
and they all serve a common objective. Any object which
has no relation with any other element of the system is not
part of that system but rather of the system environment.
A subsystem then is a set of elements, which is a system
itself, and a part of the whole system.
From Wikipedia
システム(System)とは(続)
Every division or aggregation of real entities into systems is
arbitrary, therefore it is a subjective abstract concept.
The scientific research field which is engaged in the
transdisciplinary study of universal system-based properties of
the world is general system theory, systems science and
recently systemics. They investigate the abstract properties of
the matter and mind, their organization, searching concepts
and principles which are independent on the specific domain,
independent of their substance, type, or spatial or temporal
scales of existence.
From Wikipedia
システム(System)とは
JIS Z8121
システム: 多数の構成要素が有機的な秩序を保ち,
同一目的に向かって行動するもの
「しくみ」
|
要素と要素の間の「関係」の認識が重要
|
「システム」は「実体」ではなく,「認識物」
|
対象を「システム」として見せているのが「システム概念」
|
「全体」としての「目的」(機能)を認識し,分析・設計・制御
システムの例 Apple iPod nano
外部システム
内部システム
液晶パネル
操作保護板
音楽再生
表カバー
FMトランスミッタ
カーオーディオ
入力シャトル
リチウムポリマ
充電池
PC / iTunes / Internet / Music Store
フラッシュメモリ
裏カバー
圧電スピーカ
PC / iTunes / PodCast/ LMS
インプレス PC Watch
システムの例 コンビニエンスストア
スキャナターミナル
グラフィック・オーダー
・ターミナル
店舗
情報
ストアコンピュータ
POSレジスター
セブンイレブンジャパン
システムの例:金融システムー札差金融
札差: 旗本・御家人のうちの蔵米取の代理人として、浅草蔵
前の御蔵から年3回に分けて支給される俸禄米を受け取り、
これを米問屋に売り払いその手数料を得ることを本業とする
商人のこと。日本の金融システムのルーツ
御張紙が規定する割合で支給
された米のうち、入米を除いた
払米を蔵前相場で米問屋に売
り払って現金化。そして、その
中からこれまで札差が札旦那
に貸し付けていた貸付金の元
金と金利を差し引いて、残りの
金を札旦那に届けるというのが
札差金融における回収の基本
システム
http://www24.big.or.jp/~stacks-v/hudasashi/huda00.html
スタックス
システム(System)についての概念
システム: 多数の構成要素が有機的な秩序を保ち,同一
目的に向かって行動するもの (JIS Z8121)
有機的な秩序
GOAL
同一目的
行動
多数の構成要素
システムとしての懐中電灯
懐中電灯の
|
目的とは?
|
暗いところを見えるようにする
行動等は?
|
暗いところに光を照射して明るくする
構成要素は?
National BF-775F-R
電球,電池,ケース,ハンドル,スイッチ,反射
板,透明板
|
それらの有機的な秩序とは?
電気的接続,構造組立,光軸調整,....
同じ目的に対するシステムの解
目的: 暗いところを見えるようにする
懐中電灯
屋内灯
スポットライト
ヘッドライト
ヘッドランプ
サーチライト
防犯灯
たいまつ
ストロボライト
暗視装置
目的の実現方法はさまざま
システムを設計するということ
デザイン (design)
語源: ラテン語 designare 計画を記号に表す
英語
designとデザイン
design
analysisとsynthesis
日本語
デザイン
設 計
意 匠
計 画
analysis
性質
(構造)
機能
(振る舞い)
synthesis
デザインと記述
デザイン:
「記号で表すこと」
原始の「製品」
現代の「製品」
藤江川添遺跡(明石市)出土
旧石器・メノウ製握斧
(約5~12万年前)
Boeing 787
•朝日新聞 1997.10.7
余談:人工物と人間
-2,000,000 -15,000 -5,000 -3,000 -2,000 -800 -150
-50
-30 -10
素材
石
土
青銅
鉄鋼
紙
火薬
合成
樹脂
半導 生体
材料
体
ナノ
材料
製法
衝撃
摩滅
熱変
転写
精錬
鋳造
鍛造
圧延
繊維
抄紙
精製
混合
精製
反応
結晶
光学
培養
分離
成長
界面
人工物
道具
容器
装飾
武器
道具
武器
本
手紙
砲弾
花火
衣料
用具
電子
通信
医療
美容
?
人間へ 身体の 物質の 延性の 剛性の 情報の 環境の 可塑性 物性の 身体の
?
の意味 拡張 移動と 獲得 獲得 記録と 破壊と の獲得 制御 代替
保存
移動
殺傷
デザインの領域
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建築設計
橋梁設計
都市計画
景観設計
空間設計
機械設計
カーデザイン
回路設計
論理設計
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WEBデザイン
グラフィックデザイン
パッケージデザイン
タイポグラフィ
フラワーデザイン
ファッションデザイン
ゲームデザイン
キャラクタデザイン
組織設計
| 業務設計
| 制度設計
| 人生設計
|
装丁
| 作曲
| 造園
| 編集
|
デザインの過程
M. アシモフのデザイン・モルフォロジ(design morphology)
ニーズ
設計解
フィージビリティ調査
廃棄計画
初期(概念)設計
使用計画
詳細設計
流通計画
生産設計
製造計画
設計対象の領域によらず共通に見られる設計の過程
システムに関する諸概念の整理
環 境(状況)
サービス
受益者
(物)
振る舞い
サービスを
受ける人(もの)
構造
(構成要素,関係)
状態
(属性)
システム
設計の過程
外部
サービス・機能
要求仕様
(やりたいこと)
挙動・現象
設計仕様
(やるべきこと)
内部
構造・属性
実現仕様
(できたこと)
一般設計学(General Design Theory)
設計行為を数学的構造で記述
一般設計学(General Design Theory) : 吉川 弘之
飛ぶ
走る
加熱する
・・・・
機能空間
(機能概念位相)
実体概念集合 “ありとあらゆるもの”
の集合
赤い
重い
・・・
属性空間
(属性概念位相)
設計とは機能空間から属
性空間への写像である
システムマネジメントのPDCAサイクル
W. E. Demingが、1950年代に業務プロセスの
継続的改善として提案. 別名 デミングサイクル
計画
目標を設定して、それを実現
するためのプロセスを設計
(改訂)する
Plan
是正処置
実施
Do
Action
プロセスの継続的改
善・向上に必要な措
置を実施する
計画を実施し、そのパ
フォーマンスを測定する
Check
点検
測定結果を評価し、結果を目
標と比較するなど分析を行う
システムへの要求仕様
目的: 暗いところを見えるようにする
| 条件:
|
片手で持ち運び可能
z 20度の角度で5mくらい先まで照らす
z 連続8時間使用可能
z 本体価格2000円以内
z スイッチのオン・オフが簡単に操作できる
z 雨の中で使うことができる
z 使用していて危険がない
・・・・・・・・・・・・・・・
満たすべき条件を連ねることで解候補は絞られてくる
z
要求仕様(Requirements Specification)
システムの機能的(外部)要求仕様
どういう環境(状況)において
| 誰に(何に)
| どういうサービスを提供するのか
|
要求仕様作成の工程
| 要求収集(関係者からのヒアリングなど)
| 要求分析(一貫性と整合性の検証)
| 要求定義(開発者向けの要求定義)
| 要求仕様記述(要求から設計への文書)
要求仕様の要件
„ 不明瞭でないこと
いずれの記述にもその解釈は1つしかないこと
„ 完全であること
重要な要求仕様がすべて含まれていること
„ 検証できること
指定された機能すべてに対し、テストが用意されていること
„ 首尾一貫していること
矛盾する用語、相反する必須処理、実行不可能な組み合わせがないこと
„ 修正作業が容易であること
重複部分がなく、索引や内容が正しいこと
„ 出所が明確であること
参照される要求仕様すべてが一意的に確認できること
„ 正確であること
記述された要求仕様すべてが、必要なものを示していること
IEEE 830 Documentation Standard for a Software Requirements Specification
要求仕様の重要さ
ソフトウェア開発にまつわる漫画
University of London, Computer
Center Newsletter, No. 53,
March, 1973.
as proposed by the
project sponsor
as specified in the
project request
as designed by the
senior systems analyst
as produced by the
programmers
システム開発の過程において,ユー
ザが真に求めているものからどんど
んと乖離していく様子を諷刺している.
この漫画が書かれた35年前とそれ
ほど事態は変わっていない!
「時間がないので,やりながら考え
よう!」
as installed at the
user's site
what the user wanted
要求仕様と設計の自動化
Q: 要求仕様から自動的にシステムを設計することは可能?
A: われわれの世界が単純ならば可能.しかしながら単純で
はないのでほぼ,不可能
ものが2つしかない世界
・・・・ 1bitの要求仕様で可
ものが1024個しかない世界 ・・・・ 10bitの要求仕様で可
ものが無限にある世界
・・・・ 無限bitの要求仕様が必要
要求仕様
要求仕様を充足する
潜在的な解システム
結果
B
?
設計解としての
システム
原因
A
A* A**
システムと機能
機能(Function)について
|
人工物には機能がある.
→ 機能を持つので人工物が存在する.
これらの機能は?
コーヒーカップ
機能の言語的表現:
はさみ
時計付き
レターオープナー
~を~にする(しない)
~に~をする(しない)
機能についてのいくつかの概念
|
主機能:
す)
製品(システム)の主となる機能 (ex. 部屋を冷や
|
副次機能: 主機能をよりよく発揮することを助ける機能 (ex.
室外機の温度上昇を抑える機能)
|
従属機能: 主機能の発現により従属的に現れる機能 (ex.
除湿する)
|
拡張機能: 主機能の質を高める機能 (ex. 省エネ運転する)
|
追加機能: 主機能の適用範囲を広げる機能 (ex. 飲み物を
冷やす)
|
あたりまえ機能:製品(システム)に備わっていてあたりまえの
(副次・拡張・追加)機能.無いことが製品(システム)の評価を
下げる. (ex. タイマー運転機能,遠隔操作,静音運転,…)
つぎの製品(システム)の機能とは?
1. 鉛筆
9. 自動ドア
2. 鉛筆けずり
10. エレベータ
3. 小銭入れ
11. プロジェクタ
4. 自転車
12. 銀行ATM
5. 電気ポット
13. 火災報知システム
6. 電子レンジ
14. 自動改札システム
7. デジタルカメラ
15. ETCシステム
8. プリンタ
16. 電力システム
“システム”の解剖
ステップラー(Stapler 通称:ホッチキス)
ステップラーの機能の実現
主機能: 針を紙束に貫通・折り曲げをしてとめる.
針
紙
実現方式: ドライバ(板)で針を押し込み,クリンチャの曲がり
に沿って針を折り曲げる
ドライバ
クリンチャ
|
|
|
|
ドライバを真下に正確に押し下げるには?
針がずれないようにするには?
次の針を供給するには?
折り曲げた後,紙束を容易に取り出すには?
主(全体)機能を実現する
ために構成要素の各部分
が副(部分)機能を持つ
システムの機能展開
F
f2
f1
f3
機能Fをより具体的な機能f1,f2,f3に展開する
実現手段をより求めやすい
機能の作用的展開
手を乾かす
=
赤外線を当てる
+
風を当てる
機能の時間的展開
機能の空間的展開
汚れを除去する
=
汚れを分離する
+
汚れを流し落とす
傾きを計測する
=
左の高さを測る
+
右の高さを測る
機能展開における問題点
|
人は「機能」だけを考えて展開できるのか?
具体的な「もの」のイメージが介在している?
|
展開した「機能」がもとの「機能」を実現することをどうやって確
かめるのか?
|
展開した「機能」の間で「干渉」が発生しないのか?(あるいは
どうしたら干渉が発生していることがわかるのか?)
|
どこまで細かく機能展開をすればよいのか?
|
システムの電気・機械・情報・エネルギなどさまざまな内容に
関する機能展開は誰ができるのか?
機能ー実体(構造)変換
|
機能モジュール:特定の機能を担う実体(構造)
例: モータ,コンデンサ,ネジ,ベアリング,..
電力→トルク
電荷蓄積
締結
回転支持
F
機能展開
F1
F2
F3
F11
F12
F31
F32
e11
e12
e31
e32
F33
e33
構造総合
e1
e2
e3
ひとつの機能に複数の実体
ひとつの実体に複数の機能
実体と実体とが相互作用
e
システムの構造表現
システムが機能モジュールの結合で
構成されている場合
ロボット
電子回路
システムを設計する観点
何に基づいてシステム設計をするのか
|
合理性(Rationality)
システムの持つ理(ことわり,Rationality)に従っ
て,目的とすることを実現する.
自然物
Ex. 理:物理法則
→ 最大速度
人工物
Ex. 理:物理法則,法体系,市場原理
→ 顧客満足最大
システムデザインの評価の視点
|
Quality
品質
|
Cost
コスト
|
Delivery
時間と量
Q
安全
|
Safety
|
Environment 環境
C
デザインがこれらの各項目
に関するシステムの性能の
大部分を決定する
E
D
S
相互に影響を与え合う
総合的にバランスのとれた
デザインが重要
システムと品質 ー 狩野モデル ー
顧客満足度
1970年代に東京理科大
学 狩野紀昭博士により
提唱
品質の概念を2つの異
なる軸からなる2次元上
で定義
製品開発,システム設計,
サービス設計などの分
野で広く参考にされる.
魅力品質
(興奮品質)
性能品質
(一元的性能)
要求充足度
(性能)
当たり前品質
(基本品質)
品質機能展開
(Quality Function Deployment: QFD)
要求B
9
要求C
3
重要度
品質特性D
9
品質特性E
要求A
品質特性C
顧客要求
品質特性B
品質特性
品質特性A
顧客要求を製品の機能や構造に反映するための手法.異な
る視点間の二元表(マトリックス)により半定量的に関係づける.
3
9
3
3
9
要求D
1
1
顧客要求
3
品質特性
3
1
9
部品構成
82 28 36 18 36
重要度
相対重要度[%]
41 14 18
9 18
基準機種
10
5 20
5
6
競合製品
12
5 20
6
6
目標値
12
5 20
5
7
9: 強い関係 (◎)
3: 普通の関係(○)
1: 弱い関係(△)
システムとコスト
|
システムに要するコスト(Cost)の分析
Life Cycle Costing (LCC)
製造コスト
内部コスト
当事者が負担
するコスト
使用コスト
廃棄コスト
総コスト
消費負荷(エネルギ,水,鉱物)
外部コスト
当事者以外(社
会等)が負担す
るコスト
環境排出負荷
社会資産
システムとLCCの例
|
乗用車(10年 95,000km走行,2000cc,4ドアセダン)
内部コスト
製造(購入)段階
2,287,340円(41.0%)
使用段階
3,277,353円(58.8%)
廃棄段階
13,209円( 0.2%)
外部コスト
125,341円
|
系統電力(水力・火力・原子力)
内部コスト
燃料調達
4.30円/kWh
発電
3.81円/kWh
電力流通
3.48円/kWh
外部コスト
0.71円/kWh
システムライフサイクル全体での収益
A:携帯電話
B:インクジェットプリンタ
C: ZIPPOライター(永久保障)
ハードウェア+サービス利用料金
ハードウェア+インクカートリッジ
ハードウェア+燃料
累積コスト
初期導入コスト
例:
サービス
提供コスト
使用期間
量産品の製造コスト
総生産コスト P = 固定費(生産量によらず一定)
+変動費(生産量により変動)
M: 固定費
= M + cx
c: 一個あたりの変動費
製品1個あたりの製造コスト p = p/x
x: 生産量
= c + M/x
多く製造するほど製
実線:固定費小;変動費大
点線:固定費大;変動費小
一個あたりコスト
総生産コスト
品1個あたりの固定
費分は小さくなる.
(量産効果)
M
実線が有利
点線が有利
生産設備増強
生産量
システムにおける時間と量-Delivery
|
|
注文(サービスの要求)から納品(サービスの実
施)までの時間は短いほどよい.(スピード)
注文(サービスの要求)の単位は小さいほどよい.
(ロットサイズ)
市場にタイムリーに商品を供給しないと販売機会
を失う
注文累積数
在庫量
時 間
需要量/供給量
|
欲しいけど買えない
時 間
システムデザインと安全
製造物責任(product liability: PL)
製造物責任法第一条(目的)
この法律は,製造物の欠陥により人の生命,身体又は財産に係る被害が
生じた場合における製造業者の損害賠償の責任について定めることにより,
被害者の保護を図り,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展
に寄与することを目的とする.
製造物責任法第二条(定義)
この法律において「欠陥」とは,当該製造物の特性,その通常予見される
使用形態,その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製
造物に係る事情を考慮して,当該製造物が通常有すべき安全性を欠いてい
ることをいう.
通常予見される使用形態
意図した
合理的に予見可能
使用形態
使用形態
予見可能
意図しない
使用形態
合理的に予見不可能
予見不可能
システムデザインと安全
システムの信頼性を高める設計手法
フェイルセーフ設計(fail safe design)
故障が発生した場合にでも,常に安全側にその機能が作用する設計.暴走せ
ずに停止するなど.
フールプルーフ設計(fool-proof design)
誤った用法や操作などで重大な事故が発生しないようにする仕組み.バカヨ
ケ,ポカヨケ(不良品防止)
フォールトトレラント設計(fault tolerant design)
システムの一部に問題が生じても全体が機能停止するということがなく,動作
し続けるようにシステム設計すること.(ex. 縮小運転:limp-home mode)
冗長設計(redundant design)
システムの故障発生時に,故障箇所の機能を代替できる仕組みをあらかじめ
用意しておくこと.二重化システム(duplex system).
安全性と効率性の二律背反
A) 安全を向上させると効率が低下する
B) 規則を強化すると創意工夫がなくなる
C) 監視を強化すると士気が低下する
D) マニュアル化をすると自主性を失う
E) フールプルーフは技能低下を招く
F) 責任をキーパーソンに集中すると,集団はバラバラになる
G) 責任を厳密にすると事故隠しが起こる
H) 情報公開すると過度に保守的になる
JCO事故調査委員会報告書(1999 吉川弘之委員長)
環境調和型設計
Environmentally Conscious Design
Design for Environment (DfE) 環境配慮設計
Design for X (DfX) Xを考慮した設計
Design for Maintenance
Design for Upgrade
Design for Reuse
Design for Recycle
Design for Disassembly
製品(システム)のライフサイクルアセスメント
(Life Cycle Assessment: LCA)
製品(システム)の一生を通じて発生する環境負荷を評価する手法
システムのライフサイクルオプション
小林英樹:「製品ライフサイクルプランニング」(オーム社)
直接的リデュース
リデュース
間接的リデュース
ライフサイクル
オプション
部品リユース
リユース
製品リユース
リサイクル(広義)
または
リカバリ
廃棄処分
リサイクル(狭義)
脱物質化
機能の合理化
構造の合理化
長寿命化
メンテナンス
高付加価値化
アップグレード
製品組込リユース
スペアパーツリユース
グローバルリユース
再生販売
リマニュファクチャリング
マテリアルリサイクル
ケミカルリサイクル
サーマルリサイクル
無害化・適正処理
焼却
埋立
リサイクル設計の例:エアコン室外機
現代のものづくり
コンピュータシステムの機能の飛躍的拡大
ENIAC 300FLOPS
高速演算
天河一号A 2.5 PFLOPS
PS3 $0.2/GFLOPS
機器制御
大量記憶
PICマイコン ¥100/個
LEXUS マイコン約100個/台
マルチメディア
Isilon OneFS 10.4PB
COST $5/TB (HDD)
コンピュータ
システム
1.5x1010 polygons/sec (PS3)
6048×4032画素 (NIKON D3X )
(2450万画素)
高速通信
9.08Gbps / 30,000km(東大)
¥50/Mbps (Flet’s光)
¥5000/GB(e-mobile)
2011-04
コンピュータ内に形成される世界
コンピュータの能力のめざましい向上
9CPUの高速化
9データ記憶コスト(円/バイト)の低減
9グラフィックス能力の飛躍的向上
93次元CADによる形状データの作成
93次元計測装置の普及
9メガポリゴンのハンドリング
9データビューワーの普及
9コンパクトな形状データ表現形式
93Dアプリケーションの増加
VirtualWorks/北海道大学
コンピュータ内に仮想世界を構築する
9詳細なモデル構築
9多面的で精度の高いシミュレーション
Geo-Element/日本SGI
コンピュータの中に世界を作る
対象とする実世界
橋梁/農地/発電機/...
株式市場/法人/教育/…
物理的な世界
論理的な世界
¾
¾
¾
物質/エネルギ
実体/自然環境
物理(化学)法則
¾
¾
¾
情報
組織/システム
論理/法規/制度
コンピュータの中の世界
¾
¾
¾
データ
モデル(オブジェクト)
ルール/プログラム
物理世界をコンピュータ内で表現するとは?
知覚情報(S)
データ(D)
視覚
触覚
聴覚
98AF0034FD12001
232FFEC65C76C0
00E3432E4540C3B
モデル化
実物
S→D 変換
ディジタル
モデル
D→S 変換
知覚情報とし
ての等価性
データとして
の等価性
ものづくりのディジタル化
設計・生産活動のディジタル化の進行により,概念
世界と物理世界の間にディジタル世界が介在.人
間とモノとの関与が「直接」から「間接」へ
概念世界
概念化
実体化
直接対峙
モデル化
0100101001010
1101101010001
0001010101010
0001010101010
Digital World
概念化
概念化
実体化
デジタル化
物理世界
machine
object
machine
object
ディジタルモデルを核とした技術の急展開
プロダクト
ライフサイクル
マネジメント
ナレッジ
マネジメント
3D形状モデリング
計算解析手法
プロダクトモデル
管理モデル
設備モデル
ビジネスモデル
分散計画・管理手法
オブジェクト指向
モデリング
バーチャル
マニュファクチャリング
サプライチェーン
マネジメント
おわりに
システムのデザインについて
デザイン(design)とは
z
世界を変えること (素材が部品に,部品がシステムに)
z
要求に具体的な形を与えること
z
頭の中のことを頭の外のことに(内在から外在に)
z
価値のない(低い)ものから価値のある(高い)ものに
z
不便を便利に
z
混乱から秩序へ
“理想のシステム工学者”のイメージとは
|
資質
判断の能力,客観的な評価のできる能力
z たくましい想像力
z チームワークにおける指導力
z 十分な表現力
z
|
正規の訓練
z
|
確率・統計/論理/経済学/心理学/言語
経験
z
実務における効果的な経験
A.D.ホール 「システム工学方法論」より
増幅器としてのシステム
システム:“知”によって情報・エネルギ・物質を増幅する仕組み
制約/制御
C
B
入力
トランジスタ
E
システム
出力
社会
機構/リソース
不適切な”知”によって構成されたシステムは,増幅された不
適切な出力を社会に与える.
社会にとって役に立つシステムほど,社会に対して被害を与
える可能性が大きい.
社会にとって役に立つシステムほど,適切な“知”で構成しなく
てはならない.
科学技術者が社会に対して負うべき責任
|
知ること・分かること / 無知の罪
専門家ならば知っているべきことを知らない
安易な「想定外」は無知の証
|
事実に正直であること / 偽りの罪
事実をねじ曲げる,都合良く解釈をする
計測データのねつ造,意図的なデータ選択
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社会に誠実であること / 不作為の罪
不正や不具合などを見て見ぬふりをする
自分は当事者ではない,余計なことを言って恨まれたら…