CES2005 レポート(組込み型ユビキタスネットワーク訪米調査)

作成:’05.1.31(改)
MCR SI 推 渡邊
CES2005 レポート(組込み型ユビキタスネットワーク訪米調査)
1.開催地:Las Vegas HILTON(基調講演) Las Vegas Convention Center(展示)
2.日程: 2005 年 1 月 6 日∼9 日
3.出展社数: 2550 社(過去最大、前年 2400 社)
4.来場者数: 14 万人(過去最大、前年 13 万人)
5.全体の印象:
CES2005(Consumer Electronics Show)は、毎年初にラスベガスで開催される世界最大のデジタル家電分野
のイベント。 家電業界は、競争・盛衰が激しいが、一方で世界中どの企業にも常に成功チャンスがある。
全体の印象は、一時の勢いを無くしたネットワーク業界、成熟分野の CATV・放送・マルチメディア業界や Comdex
Fall(Computer Dealers Exposition)が中断してしまった計算機・PC 業界と比べ、家電業界はデジタルメデイ
ア技術を原動力に極めて好調で、大型薄型 TV をリビングに一台から、各部屋に 1 台というと市場を創り出し
つつある。 おのずからから、家庭内の高速通信が、次に必要となり、家庭内デジタルネットワークを巡るホームサー
バ、IP ネットワークの検討が進んでいる。 成熟社会でも経済成長を維持できる米国の姿勢は大したもの。
マイクロソフト、インテル、HP などコンピュータ屋は、虎視眈々と家電分野への進出(生残り)を窺っている。
ここ四半世紀の実感として、コンピュータ・通信・放送・家電の四分野が各々、世界最大規模の展示会を開催
してきた。 マーケットは、波動的な技術革新による市場変化、景気変動が起こり、各国の経済状況の浮き沈
みに一喜一憂(特に日本人)してきた訳である。
2005 年は、特に CES の家電分野で、興奮的なことが起こりそうな気配がする。
これまで、家電分野は、コンピュータやネットワーク分野の急成長を横目で眺めてきたが、いよいよ波が来た。
この波動の源泉技術は、間違いなくコンピュータとネットワーク技術だが、マーケットは家電分野である。
コンピュータ、ネットワーク業界は、挙って参入を窺っているが、所詮、家電分野の外来者である。これまでの業界
の成功が大きければ大きい程、逆に参入障壁は高くなる側面もある。 これから、群雄割拠的な家電業界
の新技術、新市場が拓けることが感じられる。
前回は、米国家電業界の成長力回復の方法で議論がされた。今回のCESでは、2004 年は前年比約
10%UP、$1135 億 4500 万(CEA 推定)が報告された。フラットディスプレイ市場が、2005 年に$150 億 市場に
成長(CEA 予測)など、米国家電市場の堅調・自信を表している。
以下に今年の CES2005 のトピックス、特徴を以下の 6 点にまとめる。
(1) メデイアセンターの登場
(2) 大型フラットディスプレイとデジタル小物が主役 ∼PC、PDA は衰退∼
(3) ホームネットワークの競争が始まる
(4) 韓国メーカの台頭 と日本の高品質戦略
(5) HD 対応の次世代光ディスクの規格競争が過熱
(6) 新たなコンセプト 『持出し可能:To Go』
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6.トピックス、特徴
(1) メディア・センターの登場
マイクロソフトのメディアセンターを筆頭に、主要各社が一斉に、統合メディア・サーバーを展示。
「トリプルプレイ:テレビ+インターネット+電話 の統合サービス」 と 「コンバージェンス:写真+音楽+映画 の統合管理」
大きな居間のホーム・シアターで楽しむメディア・サーバー製品が中心。 複数の部屋相互のネットワークサービスは未。
米国は、CATV、衛星放送などの番組を纏めるコンテンツ・プロバイダ(数百 ch:HD プログラム含)に各家庭が加
入するため、コマーシャル・コンテンツ(放映番組)とパーソナル・コンテンツ(個人の写真や音楽)の集約が容易。
日本では、地上波、衛星、デジタル放送など各種のチューナが必要となる。 加え TV パソコンが普及して、複雑
な構造になっている。 単純にメディアセンターが、そのまま日本市場に普及するとは思えない印象。
(2) 大型フラットディスプレイとデジタル小物が主役
∼PCとPDAは衰退 ∼
従来から、日本と異なり、リア投影型プロジェクタ TV (50 インチ超)を中心に普及している。 プラズマ、液晶の HD
対応大型 TV の他に、壁面スクリーンにフロント投影するプロジェクタ TV を 3LCD コンソーシアム(F、H、松下、Sanyo、
Sony、HP)が注力していた。 米国では、投影>プラズマ>液晶の人気順で国内市場と全く異なる。
ここ数年、家電機能付きPCや映像編集 PC ソフトが多数展示されていたが、今年は全く無くなった。PC や
PDA を使った音声・映像処理は、家電ユーザに不向きと業界が判断した結果だろう。 『脱 PC 路線』製品が
随所で展示されていた。 今後は、デジカメ写真を直接カラープリントするのが常となりそうだ。
デジタル小物の音楽配信端末(アップル:iPod)が颯爽と登場。 映像配信、ホームネット接続(ベンダー)も可能。
(3) ホームネットワークの競争が始まる
これまで、ホームネットワークは、制御系の低速伝送だったが、今回は、無線 LAN(IEEE802.11 系)、PLC(電
力線搬送)とも 54∼200Mbos を競う高速伝送の製品で、デモンストレーションは HDTV コンテンツを対象とする。
(4) 韓国メーカの台頭と日本の高品質戦略
サムスン電子:プラズマ TV(最大 102 インチ)、LG電子:液晶 TV(最大 71 インチ)の韓国勢が規模的な意味で、
存在感をアピール。既に映画を中心にハイビジョン放送チャンネルが多い米国では「高精細対応」がAV機器
の絶対条件となっている。日本企業はシャープの 65 インチ液晶テレビや松下、東芝、パイオニなどプラズマ TV は、
高画質・高級感をアピールしていた。シャープはリアプロジェクター方式の発売開始を発表した。日本メーカの各社
ブース構成から、北米での大型テレビ市場には、リアプロジェクター方式で補完的な製品展開を行う戦略を打ち
出したかたちが読めた。
(5) HD対応の次世代光ディスクの規格競争が過熱
「ブルーレイ陣営」へ新規4社加入の発表に対し、「HD‐DVD陣営」は、CES に合わせて映画 89 本の発売
時期を発表。 記録時間の長さをアピールする「ブルーレイ陣営」に対し、「HD-DVD 陣営」は、製造コストの安さ
を強調。 現時点の競争は、ほぼ互角という印象。
(6) 「持ち出し可能」という新たな流れ
HP が、ハードディスク取り出し可能なビデオディスクレコーダーを展示。 家電業界の常識を破るコンピュータ業界的
発想。 また「To Go」(持出し可能)という新たなサービス(発想)を発表。
デジタル・ビデオ・レコーダ(DVR)のメーカ兼プロバイダーであるTiVo社は、番組を携帯ムービープレーヤへ転送し
て持運べる「TiVo To Go」サービスを開始した。衛星加入形ラジオ放送局は、「XM2go」で音楽やスポーツ
番組を携帯端末で聴けるようにした。パイオニアが、「XM2go」対応の新端末を発表。
大ヒットが続くアップルの携帯型MP3プレーヤ「iPod」では、動画再生できる機器をベンチャーが発表し、音楽、
画像に加えて動画も持ち運ぶ時代が始まった。
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7.各企業 CEO のキーノート・スピーチ概況
(1) マイクロソフト: ビル・ゲイツ 会長兼 CSA
コナン・オブライアン(コメディータッチのバラエティー・ショーで有名な司会者)との対談形式の講演。
・デジタル・ライフ・スタイル と 「メディア・センター」
ゲイツのキャッチフレーズ「デジタル・ライフ・スタイルから始めよう」で話を始めた。家庭の電子メール、デジタル写真、
ダウンロード音楽などを、自由自在に扱えるのがデジタル・ライフ・スタイル。その中心がPC、即ち「メディア・センター」。
また、デジタルコンテンツ流通の DRM(デジタル著作権管理)に注力、整備していることを説明。
・ デジタル・ミュージック について
昨年のクリスマス・シーズンは、携帯デジタル音楽プレーヤ(クリエイティブメディア、リオなど)が好調だった。
デジタル・ミュージックの技術や音楽配信ビジネスは起動したばかり。5 年以内にはマスマーケットが形成され、マイクロ
ソフトが中心的存在で活躍すると言明した。
・ 失敗続出のデモンストレーション
肝心のデモンストレーションは、失敗場面の続出で苦笑。 カメラから無線 I/F 経で、写真データをメディア・センター
へダウンロードする際、ゲイツ 「ボタン一つで、撮った写真が見えるよ!」で、、、写真は表示しなかった。
マイクロソフトの MSN 機能を使い、メディア・センターの予約録画をデモしたが、画面が立ち上がらずデモは中止。
新ゲーム「Xbox:フォーザモーター」の紹介では、メモリー不足で画面がフリーズした。
不慣れな家電分野に積極的に挑戦しているマイクロソフトの姿を如実に示している光景。
・ コンテンツ・プロバイダ との積極的な提携
メディア・センター関連では、強力コンテンツ・プロバイダ(ディスカバリー・チャンネル、MTV グループ)との提携を発表。
ポータブル・メディア・センター分野で、デジタル・ビデオ・レコーダ最大手 TiVo 社と提携発表(前述の「To Go」)。
マイクロソフトのストリーミング放送戦略の要となる IP 番組配信(IPTV プロジェクト)で、全米最大の CATV 会社コムキャ
スト、同 2 位:電話会社 SBC コミュニケーションズ、同 3 位:ベルサウスで採用されたことを発表。
SBC の FTTH プロジェクト「Light-speed」は、マイクロソフトの IPTV 映像配信が中心になると発表した。実際に
SBC 担当者が舞台に登場。 野球放送を好きなアングルから鑑賞できる、マルチ・チャンネル、HD、オンデマンドサービ
ス、4ch ストリーミング放送などを紹介した。
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(2) HP: カーリ・フィオリーナ 会長兼 CEO
・ デジタル・デモクラシーの実現
「デジタル革命は、一人々が自由自在にコンテンツをあやつり楽しむ世界...それは見方を変えればデジタル
によって、人々が自由を手に入れるデジタル・デモクラシーの実現になるでしょう」と HP 社のコンセプトを紹介。
2002 年コンパック買収で、同社再建に成功。シリコンバレーを代表する女性エグゼクティブとして家電業界へ参入。。
デジカメ、プリンター、プロジェクション TV、HP 版 iPod(アップルと提携)をビデオで紹介して自信振りを示した。
・ メディア・センターPCと モバイル製品 に注力
昨年、メディア・センター PC や音楽配信ビジネス(iPod)の商品化で家電ビジネス参入戦略を発表。
クリスマス商戦でも、HP 家電ビジネスは確実に伸びていることを実証した。「全てのコンテンツをモバイルに集約」。
即ち、写真+音楽+映像を統合管理するコンバージェンスを更に発展させ、音楽や写真などを持ち歩いて楽し
める「モバイル製品」に注力して行く。
・ クリエーション- >ディストリビューション >エンジョイ
昨年は、デジタル・ライフ・サイクル のクリエーション部分を中心に取組んだ。今年は、ディストリビューション、エンジョイ
部分に注力し、「シンプル、アフォーダブル(苦労知らず)。低価格で提供」を戦略コンセプトにする。
・ 映像コンテンツ企業との提携について
ジェフリー・カッツェンバーグ会長(最大手映画スタジオ:ドリーム・ワークス)がアニメ制作の現場状況を説明。
同社作品(リトル・マーメイド、シュレック、シュレックⅡ)は、米国アニメ・ビジネスは人気トップ。 アニメ業界は、半年毎に
激しく変化(ストーリー、キャラクター、ユニーク描写)する。 最新、ベニス映画祭事務局の要請で、制作を 1 ヶ月に工
期短縮が必要になった。 HP サーバー 250 台(500CPU)を急遽、調達。普通 3 ヶ月の納期を 3 日間で納品
させた。アニメーション制作は、コンピューターパワーが最重要。 人件費の増加を、計算機性能向上による生産性改
善で、この数年、制作予算を抑制している。
・ デジタル・エンターテイメント・センター の仕様差別化 について
HP のメディア・サーバーは、マイクロソフト(メディア・センター)/インテル(エンターテイメント PC)と同じ製品類だが、番組案内
が充実、音楽DBによる聴曲の情報表示、ソフトウェアの自動バージョンアップなどの特長を強調した。
年末商戦で 17 種 TV を投入、「ビジュアル・フィディリティ・テクノロジ」 搭載で解像度を 2 倍に向上させた。
iPod で、デジタル写真に対応した機種を投入。HP 製PCに iTune を標準搭載することを発表。
具体的な製品や技術スペックを多数紹介したことが今年の講演の大きな成果。
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(3)インテル: クレイグ・バレット CEO 会長
・ パーソナル指向の高性能チップ開発
「デジタル・ホームとシリコン(半導体チップ)」の関連性を説明した。80 年代の個人消費者は、PC を購入した。
これからのデジタル・ホーム消費者は、パーソナル志向が強く、クリスマス商戦でデジタル・ガジェット(玩具)を買込ん
でくれる。デジタル・ホーム革命は「個のエンターテインメント、自分だけのコンテンツ」を追求する。 その結果、高品位
なビデオ、オーディオ、双方向高速通信が必要になるため、マルチ CPU、マルチ・スレッドなど更なる高性能・高機能
チップの開発を継続する。
・ エンターテイメントPC で必要な機能
写真+音楽+ビデオの統合管理はあたり前で、今回は、リモートレス機能の紹介を実施した。
各種ビデオ・コンテンツアイコンを球状に配置、画面の前で、人が手を左右に振るだけで番組選択ができる。
使い勝手・操作性の良さを実現するために、この機能を年内にも商品化する予定。
CPU チップのデュアル・コア/マルチ・スレッド機能を最も活用するのがゲームソフト。米国で流行るアクションゲーム(プリン
ス・プリージャー)を例に、従来に比べて格段に良くなった表情の描写性能をアピールした。
・ エンターテイメント の取組み
実際のスタジオ行うように、楽器・ボーカルをマルチ・チャンネルでミキシングを行い、デジタル・ミュージック・コンテンツ
(有名ロックバンド:エアロスミスの曲)を楽しむデモを実演した。 ベース、ギター、、、の各チャンネルを取り出し、練習に
利用、ミキシング機能で自分の曲を作曲、アレンジしたり、カラオケにも使える。
・ 世代毎のデジタル・ホーム製品
「ウィメンズ・リサーチ」に」よると、デジタル・ホーム消費者のデジタル・ガジェット購入量は、女性が多い。性別、年代、
地域によって PC も変るべきで、中国で販売する大人/子供切り替えスイッチ付き PC のデモを実施。
これから増えるシニア層向けのデジタル・ホーム製品をインテル研究所(ソーシャル・ハウス・システム Pj)が実施中。
人と接して頭を使うことがアルツハイマー病の予防に効果があることから、シニア層が毎日どれだけのソーシャル活
動を行ったかをグラフやテキストでわかりやすく表示するシステムの開発を報告した。
最後に、「サンダース映画際」を主催する名優ロバート・レッドフォードと『クリエーションとテクノロジーの関係』につ
いて対談。 新技術やコンピューター・パワーの向上で、CG やアニメーションなどが、急速に進歩してい。
それにあわせて映像表現が広がり、いまや映画はコンピューター技術なしでは成り立たない程になっている。
最後に、レッドフォードは、技術に依存しすぎると創造性が失われる危険もあると述べた。
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(4)モトローラ: ロン・ギャリックス上席副社長
・「シームレス・モバイル戦略」
携帯端末を中心に著しく業績回復。携帯電話を軸としたモトローラ社の「シームレス・モバイル戦略」を
解説した。 2004 年のクリスマス商戦に超軽量薄型 GSM 端末「レーザー」を投入し注目を浴びた。
・ 携帯は個性を重視する商品戦略が重要
携帯は一時なコモディティー商品と言われたが、そう思わない。様々な周波数、通信方式(CDMA、GSM)、
OS(シンビアン)などに注目し、個性を重視する商品戦略が重要。個性は「コンバージョン:融合」と表裏一体であ
るコンセプト。写真機能(MMS)、チャット機能(SMS)、音楽再生、ブラウザー機能を融合させて、個性を引き出
商品を開発する。 「日本人は毎日、通勤電車で、スクリーン重視のマルチメディア携帯端末」
「米国人は朝晩、車通勤で、音声操作やコミュニケーションが携帯に重要」 個性があってあたりまえ。
・ 「コンテンツの可搬性」
家中で見ていた DVD 番組を途中で止め、そのまま車内で見続けるという「コンテンツの可搬性」概念を
同社の戦略として「シームレス・モビリティーの実現」と説明。 コンテンツの可搬性を実現する「リキッド・メディ
ア」プロジェクトのデモを行った。家庭内 TV、車中 TV、携帯電話、PC を並べて手のひらサイズの小型デバイ
スを使用して、自動的に見ていた映画が次々と異なるデバイスに転送されてゆく。
(5)テキサス・インスツルメント(TI): リチャード・テンプルトン会長 CEO
・高精細技術「DLP」を軸としたデジタル家電
同社が誇るデジル TV 向け高精細技術「DLP」を軸としたデジタル家電のビジネスについて述べた。
最近まで次世代携帯電話関連に注力していたが、今回はデジル TV、HDTV など、リビングルームへの進出
が重要な戦略。 DLP チップは、画像信号を高精細な液晶画面に表示する部品で、プロジェクター TV はこの
チップをライトで照らし反射映像を表示。同社は、フロント・プロジェクター市場の 4 割を押さえるトップ・メーカーで、
総出荷ユニット数が 500 万個。
・ パーソナル・ブロード・キャスター
DLP を使ったスリング・メディア:パーソナル・ブロード・キャスター(約$200)は、ボックス形状で、ラップトッ
プ、DVR、インターネットを使い、個人で IPTV 放送を行う。DVR 録画した番組をストリーミングに変換して IP ブロー
ドキャストを行い、出先から好きな番組を見たり、親戚や友人にビデオを見せることができる。
・ 大量・高速画像処理の開発
米陸軍の委託研究で、オート・ドライブ社の無人操縦車両プロジェクトが始まる。2015 年に輸送車両の
無人・実用化を目指し、自走ロボット・カー開発を受託。軍研究に加え、自動操縦技術を使った一般車向
け交通事故防止技術開発も取組中。このプロジェクトは、大量・高速の画像処理が必要で、1GHz の高速
TI 製 DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)がコア部品として用いられる。
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(6)SBC コミュニケーションズ: エド・ウィッテカー会長
SBC は、家電業界で騒がれているメディア・コンバージェンス(メディアの融合)を影から支える立場。
・ライトスピード・プロジェクト
SBC コミュニケーションズ、ベライゾン・コミュニケーションズ、ベルサウスの大手通信社が光ファイバー網の共同調達プロ
ジェクトを 2003 年発表。明確な目標値、投資額不明確だったが、昨年 11 月 FTTH の具体計画を発表。
建設目標:1800 万世帯、投資額は$約 50 億・年、ネットワーク 9 割は FTTN(fiber-to-the-node)
幹線網は光ファイバー、末端の家庭・オフィスに電話線や同軸ケーブルを利用してサービスを展開
全米 2 ヶ所に総合管理センター(スーパー・ハブ)を建設し、コンテンツ管理を行う。
SBC U-verse(ユーバース)サービス: ビデオ+電話+データ を融合統合する
末端のスピード(下り系):20∼25Mbps、 映像信号:HDTV を含め映像 4ch 確保
・SBC U-verseのサービス内容
CATV と違い、全て IP ネットワークのストリーミング放送を行い、ch 数が少なくて多数の番組配信ができる。
ユーザーのリモコン操作の度、素早く配信センターから流すコンテンツ切替えが必要。これに高信頼性が要求
されるが、今回のデモは「違和感なく」切り替えが実現できていた。スポーツ番組で見る角度を切替えるマル
チ・アングル放送などの高度双方向番組を投入も紹介。携帯電話会社(シンギュラー:SBC、ベルサウス合弁会
社)の端末から予約録画操作を行えるなど、モバイル機能も加える。
・IPネットワークによる統合映像サービスの展開
実際に、主要都市で利用できるようになるのは 2007∼08 年の予定。
統合サービスでは、CATV 業界が先行しているが、デジタル・ホームに繋ぐブロードバンド・パイプは CATV
だけでなく、IP ネットワークの存在を示した。
(7) 松下電器産業: 大坪文雄専務(パナソニックAVCネットワークス社社長)
「水が流れるように、ビジネスも自然でなければならない」 松下幸之助の水道哲学で始まる。
・ ホームネットワークの時代がやってきている
「快適であること」、「時間を有効に使うこと」、「人々の望む商品をつくれ」とする松下の物作りコンセプトを
交え、多彩な家電商品が互いに結びつくホームネットワークの時代がやってきていることを述べた。
・ 多彩な新商品の紹介
「簡単に使えることが最重要」として、掌サイズのビデオレコーダ「D スナップ」、鉛筆サイズのユニバーサル・
リモートコントロールのデモンストレーションを行った。
家庭内ネットワークとして電灯線を使った次世代PLC技術(最大 170Mbps)で、複数 HDTV プログラムを複数
の部屋で対応できる。 ユニバーサル・リモートコントロールで、ワイヤレス技術も併用し「無線と有線の使分け」を提示。
未来技術として掌サイズの HD ビデオ・レコーダ、HDTV 対応のホームネットワークサーバーの紹介。
・CATVセットトップボックスの標準化
CATV 最大手のコムキャストが準備している次世代インタラクティブ・テレビを紹介。
FCC による「プラグアンドプレイ」規制、即ち、電話機の如く一般メーカが CATV セットトップボックスを製造し、店
頭販売できるようにする。 現在、CATV 共同研究機関のケーブルラボが中心になって進めている規格化
の紹介があった。松下は、コムキャストと提携し、業界初のプラグアンドプレイ規格に適合した次世代双方
向デジタル CATV 用セットトップボックスを開発したことを披露した。
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(8)FCC: マイケル・パウエル委員長(父は、コリン・パウエル国務長官)
米国放送通信行政を管轄する FCC(連邦通信委員会)と CEA(全米家電協会)の関係は極めて重要。
デジタル放送移行問題で、家電業界がデジル・テレビ販売で FCC に協力、 一方、デジタル著作権管理問題
で、家電業界に厳しい規制をしないように CES は働きかけている。
・著作権問題に話題が集中
放送番組の規制、HDTV 録画方式、ダウンロード・コンテンツ販売など著作権管理問題に直面している。
消費者の人気から、著作権は制限しない方針のほうが家電業界は有り難いが、コンテンツ業界から素材提供
が無くなる。著作権専門の政府機関と共に、問題解決に注力するも、過去経験ない膨大コンテンツ流通の時
代を迎え、如何なる方向を示すべきか、難儀している。 明確な方向性を示されなかった。
・ デジタル放送への移行問題
放送事業者はデジタル放送局(1307 ヶ所: 04/9 現在)の整備は山場を越えた。しかし、「2006 年アナログ
停波目標:連邦議会、FCC」は実現されない。 現時点の DTV チューナ普及率(1∼2%)は、停波の条件の
普及率(85%)にほど遠い状況。 DTV 販売数は 730 万セット( 04CEA 推定)で伸びていない。TV 購入時
の店頭で「何時アナログ放送は終わる?」 分からなければ、デジル TV を買う人はいない。
デジタル CATV、やデジタル衛星放送のアナログ TV を DTV チューナに加算して、85%問題の解決を検討中。
・ ブロードバンド普及の遅れ
速度、人口あたりの普及数だけが問題でない。BB コンテンツ流通量、利用度が重要、米国はトップ。
FCC は DSL、ケーブルモデム、PLC、UWB、WiMAX などネットワーク技術を広く承認、啓蒙してきた。消費者は、
各種のブロードバンド・サービスから好きなものを選択することが出きる。FCC は「道具箱(ツールボックス)」を用意
する任務。 いずれにしても「2010 年までに全世帯に 100Mbps を提供するのが目標だ」。
CATV 業界のデジタル放送配信の遅れ、CATV 関連機器のオープン化の遅を指摘。
※ 05.1.25 同氏は任期半ばで退任発表
(9)EA(全米家電協会)上級産業アナリスト: シーン・ワーゴ氏
2004 年度の液晶 TV は前年比 204.5%(生産額)に急増、単価下落加味
しても成長を続ける。昨年CEAの「欲しいもの(Wish list)アンケードで、
第1位:プラズマ TV、同 2:デジタルカメラ、同 3:大画面 TV。
米国家庭も大型 TV をリビングに1台から、薄型 TV を各部屋に置くようになる。
一方、中長期的にはプラズマ TV はシェアを低下する方向と推定し、昨年末のソニーのプラズマ TV 撤退に
興味を示した。今後の成長予測で、個人所有の画像・映像などコンテンツの爆発的増加で、
DVDレコーダーを挙げた。「無線LAN対応のカメラ、プリンターが普及して脱 PC が一般的にあると予測。
次世代光ディスクのブルーレイとHD-DVDの規格争いは、対立が続けば普及が遅れるかもしれない。
「最後は市場が決めるだろう」と述べた。
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