第2部 授業をつくる 小学校 3 ブックトーク:日系アメリカ 人の経験を読もう キーワード 共感的理解,歴史的経験,ブックトーク,児童図書 小学校 3 ブックトーク:日系アメリカ人の経験を読もう 教科領域との関連性 国語科(高学年・図書),社会科(6 年),総合的な学習の 時間 実施時期および総時数 3 時間∼(弾力的に運用) トランクキット内の資料との関連 • 児童図書 • 強制収容やリトル東京に関するビデオ・写真 • 紙芝居「海を渡った日本人」 「ハワイに渡った日系移民」 本単元で使うトランクキット内の資料 単元(活動)目標 • 日系アメリカ人の歴史的経験について書かれた図書を読み,その経験について想像しながら共感的に理 解を深める。 • 自分が選んだ本について,その内容や感想を友達に伝える。 • 読んだ図書についての感想を文章や絵,手紙に表現する。 単元について(教材観・単元設定の理由など) 本学習活動は文学作品を読むことを通して日系 アメリカ人の歴史的経験を知り,また登場人物の 心情に迫ることで共感的な理解を深めることを目 的としている。国語科学習において,戦争をテーマ にした文学教材を扱う学習活動の発展学習として 本活動を位置づけ,戦争中の日系アメリカ人の様 子や人々の生活について読み深めることができる。 また, 「図書紹介」などの読書活動を広げる学習の 一環でブックトークとして本活動を位置づけるこ ともできる。その他,社会科学習において第二次 世界大戦に関する学習や日本と関係の深い国々に 関する学習の発展として取り組むこともできる。こ のような国語科や社会科における既存の学習単元 を横断的に再編し,総合的な学習の時間と関連づ けて単元として設定することも可能である。 本学習活動はまず,紙芝居「海を渡った日本人」 「ハワイに渡った日系移民」を読み,日本人移民 の歴史的概要をつかむところから開始する。「海 を渡った日本人」はハワイ,北米,南米へ移民し た日本人の全体的な解説を写真資料を用いて構 成されたもので,「ハワイに渡った日系移民」は 日本人の小学生と日系アメリカ人の親戚の二人を 取り巻く日米の家族の物語である。次に,日本人 が移住した初期の頃の物語や人種差別と闘った物 語,強制収容体験についての物語である以下の図 書について紹介するブックトークを教師が行い, その中から興味をもった本を子どもが選び,読み 16 進める。 1 .ケン・モチヅキ作,ドム・リー絵(ゆりよう こ訳) 『かこいをこえたホームラン』岩崎書店, 1993 年 2 .M.O. タンネル &G.W. チルコート(竹下千花 子訳)『トパーズの日記−日系アメリカ人強 制収容所の子どもたち−』金の星社,1996 年 3 .ヨシコ・ウチダ(吉田悠紀子訳)『夢は翼を つけて』ひくまの出版,2003 年。 4 .上坂冬子文,かこさとし絵『ユタ日報のおば あちゃん 寺澤国子−海を渡った日本人−』 瑞雲舎,2004 年 5 .加藤晴巳『ここが私の故郷です−コロラド・ サンルイスバレー日本人移住者の物語−』新 風社,2004 年 6 .エイミ・リー・タイ作,フェリシア・ホシ ノ絵『 砂 漠にさいたひまわり』Children Book Press, 2006 年。 それぞれが読んだ図書について紹介する時間を 設けて理解したことや共感したことを伝え合い, 最後に感想文や図書紹介カード,筆者や登場人物 への手紙などに表現をする。学習活動全体を 3 時 間で設定しているが,ゆとりがあれば,読む時間 の確保や紹介する時間を 1,2 時間加えて 4,5 時 間扱いで構成したい。 展開計画 時 主な学習活動と子ども(学習者)の意識 1時 1.紙芝居「海を渡った日本人」 「ハワイに渡った日系移 民」を読もう • 江戸時代が終わってすぐハワイで暮らしていた日本人 がいたなんて驚いた! 明治元年に行った人たちは「元 年者」と呼ばれたらしい。 • 夢をもってハワイやアメリカに行ったけれど生活は厳 しかったようだ。 • 言葉も生活習慣も違うのに大変だっただろうね。 • 戦争中の様子が少し分かったけれど,もっと詳しく知 りたい。 2時 3.読んだ本について紹介し合おう。 • 私が読んだこの本は,同じ年の子が主人公でした。も し自分がこの主人公の立場だったら,きっと………。 •「アメリカに行く」というのは現代の旅行とはかなり 違って厳しい生活が待っていたことが分かった。でも当 時の人たちの勇気がすごいと思った。 • 差別を受けるなど戦争中のつらい出来ことがよく分 かった。 • 日本に来ている日系の人にインタビューをしてみたい。 紙芝居 ⃝紙芝居「海を渡った日本人」は内容や 文言から教師が読むとよいが, 「ハワイに わたった日系移民」は物語風なので子ど も同士での読み聞かせをしてもよい。 紙芝居の後に写真資料を使用 ⃝本の紹介をするブックトークでは,司 書教諭の協力や保護者の協力を依頼して もよい。 ⃝『 砂漠にさいたひまわり』は日本語と英語 が併記されているので,ALT との連携や 英語活動の時間と関連づけて読む事も効 果的である。 ⃝紹介の方法として,口頭発表だけでな く,図書紹介カードの作成や感想文,筆 者への手紙など多様な方法で作品化させ ることで,考えを明確にさせたり伝え合 う機会を増やしたりしたい。 評価 • 日系アメリカ人の歴史的経験についての図書を読み,想像しながら共感的に理解を深めることができたか。 • 自分が選んだ本について,その内容や感想を友達と伝え合うことができたか。 • 読んだ図書についての感想を文章や絵,手紙などに豊かに表現することができたか。 授業づくりのための参考資料 坂井俊樹監修『日本の歴史−明治維新(5)国境をこえた人びとの歴史−』ポプラ社,1999 年 他 (中山京子) 小学校 3 ブックトーク:日系アメリカ人の経験を読もう 3時 2.読みたい本を選んでじっくり読もう • 本の紹介を聞いてじっくり読みたい本を選ぼう。 • 最初にアメリカに移住した頃の話を読みたい。 →『ここが私の故郷です−コロラド・サンルイスバレ− 日本人移住者の物語−』 • 差別されても頑張る話を読みたい。 →『夢は翼をつけて』 『ユタ日報のおばあちゃん 寺澤 国子−海を渡った日本人−』 • 強制収容された時の子どもたちの話を読みたい。 →『かこいをこえたホームラン』『トパーズの日記− 日系アメリカ人強制収容所の子どもたち−』 『 砂漠にさいたひまわり』 • 12 万人もの人たちが日本人やその子孫という理由で 強制収容されるなんておかしいと思う。 • 自分たちと同じ年頃の子どもたちの生活を知ると辛 かった ○留意点 17
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