三次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」

2015年
8月
暮らしを便利にしてくれる
さまざまな東芝製品。
一体どんな技術が使われているのか、
従来と同じサイズで大容量化を実現!
三次元フラッシュメモリ
BiCS FLASH
ニャンダローが先生に質問します!
東芝が世界一を目指す半導体メモリ事業。
次世代のメモリ大容量化技術として注目され、
競争が激化している三次元フラッシュメモリ
BiCS FLASHについて、島田先生に教えてもらいました。
微細化の限界に挑戦してきた
NAND型フラッシュメモリ
くの人が住む部屋を作れるかって話みた
微細化に代わる大容量化技術として検討
いだニャ。
されたのが「積層化」だよ。同じ土地面
先生:いい例えだね。
「微細化」は、部
積の上に、多階層のマンションを建てる
ニャンダロー:東芝はこれまで NAND
屋を小さくして、同じ土地面積の中でで
発想だね(図 1)
。もちろん NAND 型フ
型フラッシュメモリを半導体の主力製品
きるだけ多くの部屋(セル)を作って、
ラッシュメモリで培ってきた「多値化」
にしてきましたよね。今年 3 月に発表
多くの住人(情報)を入れようとしてき
の技術も同時に導入しているよ。
し た 三 次 元 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ BiCS
た。ただ、部屋が小さくなると隣の人と
ニャ:それだったら、部屋の単価も安く
FLASH は、NAND 型フラッシュメモ
の距離が近くなってしまって隣の部屋の
なりそうですね。
リとどう違うのかニャ? 先生、教えて
騒音が聞こえたり、時には部屋が小さく
先生:層をいくつも作ることで、同じ底
ください。
なり過ぎて、我慢できずに中の人が外に
面積のパッケージでもセルの数が増え
島田先生:BiCS FLASH というのは、
出てしまったりという、
危険も出てくる。
て、より多くの情報が入るようになった
これまでのフラッシュメモリと違って
メモリチップの中も同じで、部屋を小さ
んだ。さらに、
建物を多階層にするので、
ビット(セル)をどんどん上に積み重ね
くし過ぎると、情報となる電子同士が干
頑丈な柱は必要だよね。部屋を縦に積ん
ていくものなんだ。これまで、NAND
渉してエラーが起こってしまうんだ。
だ分、横には広い部屋が作れるようにな
型フラッシュメモリはメモリチップの中
ニャ:部屋を小さくして増やすのには限
るから、騒音や狭すぎて人が出て行った
のセル 1 つひとつの間隔を狭くする「微
度があるということですね。
りする危険性も少なくなったというわけ
細化」によるセル面積の縮小と、1 つの
セルの中に多数の情報を入れる
「多値化」
という技術を進めてきたんだ。
ニャ:同じ土地面積の中に、どれだけ多
まさに
別次元 の
メモリです!
今回の先生
▶
セミコンダクター&ストレージ社
メモリ応用技術第二部
島田俊樹さん
Toshiki Shimada
BiCS FLASHは「積層化」
で
容量・速度・信頼性をアップ
先生:そこで、極限にきているとされる
だ。つまり、セルの中で、大きな動きが
あっても隣のセルの干渉を受けることが
なくなり、データの高速処理が可能に
なって、信頼性まで向上したんだよ。東
● 図 1 BiCS FLASHとNAND型フラッシュメモリの仕組み
BiCS
積層構造で縦方向にも
電流が流れ、大容量化
電流方向
記録層
(窒化膜)
電極
芝では世界最多の 48 層のチップを作る
メモリセル
書き込まれた電子
ことができるんだ。今はもっと積層を増
やそうと頑張っているところだよ。
ニャ:この厚さで 48 階建てニャんて!
1 枚 1 枚はとっても薄そうだし、ずれな
いように積み重ねるのは大変そうですね。
先生:大変なのは、ずれないように層を
NAND
微細化や多値化による
大容量化
重ねた後、均一に穴を開けるところ。穴
電極
はシリコンを流し込んで電極層にするん
だ。これまでの半導体工程ではなかった
工程だから、新たな挑戦だね(図 2)
。
メモリセル
ニャ: BiCS FLASH は、1 つのメモリ
記録層
(フローティングゲート)
チップの中で縦にも横にもメモリが配置
されて、セルに情報を入れているんです
ね。新たな技術の陰には先生たちの挑戦
書き込まれた電子
電流方向
がたくさん詰まっているんだニャ。
同じ電力でより多くの
データの記録が可能に
先生:今回の BiCS FLASH では書き込
● 図 2 BiCS FLASH製造の鍵は穴あけ&埋め込み加工
積層
みのためのステップ数を減らしているん
だ。メモリチップが書き込みをする時に
穴開け
電力を消費するから、書き込む時のス
テップ数を減らすことができれば、同じ
情報量を書き込む時の電力も減らせるっ
てわけだ。
積層板状
埋め込み
ニャ:
「積層化」という新たな技術が確
立されたことで、今後ますますフラッ
シュメモリの大容量化と省エネが進むと
柱状電極
いうことですね! 楽しみだニャ。
先生、
今日はありがとうございました。
メモリセル