基礎電子回路(デジタル回路)

基礎電子回路(デジタル回路)
1.実験目的
プロジェクトⅠおよびⅡで電圧・電流の測定と増幅回路、および PIC マイコンによる信
号処理について学んできた。自動車の制御には、これらの素子を用いて電子回路が構成さ
れ、信号処理がおこなわれている。本実験では、基本的な情報処理のための素子の特性に
ついて実験で確かめ、さらにこれらの素子で構成された電子回路の動作を学び、アナログ
とデジタルの信号処理について修得する。
2.アナログ信号とデジタル信号
電子工学では増幅素子を中心とした回路により、情報交換、物理・化学量の計測と記録、
制御や計算といった仕事をさせる。さまざまな物理量を電気信号に変換する素子をセンサ
ーまたはトランスデューサーと呼び、変換された電気信号で情報を伝達したり処理をする
が、この信号には、アナログ信号とデジタル信号がある。
一般に人間の五感、すなわち、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚という感覚器官により測
定される信号はアナログ量であり、連続した物理量として計測(知覚)されている。 これ
に対して、モールス信号のように、長短の符号で数字や文字を表すことにより、物理量を
情報として伝達することができる。この場合の情報は時間的に連続ではない。このように、
時間的に連続した「量」を取り扱うのがアナログで、時間的に離散な「符号」を扱うもの
をデジタルという。すなわち「アナログ信号は連続的に変化する情報(continuous quantity)
、
デジタル信号は離散的な情報(discrete quantity)
」といえる。
図1は例えば音声のようなアナログ信号で横軸は時間、縦軸は信号の大きさを表してい
る。これをデジタル信号に変換するには、横方向の時間軸について、ある間隔で信号の強
さを「サンプリング」
(あるいは標本化)して観測する。例えば、コンパクトディスク(CD)
では、44KHz の周波数でサンプリングされている。このときサンプリングの間隔はその逆
数で、約 23μs である。 さらに、この信号の大きさについて、ある間隔で観測することを
「量子化」と呼び、この間隔を「量子化ステップサイズ」 と言い、信号の最大振幅とビッ
ト数で決まる。量子化された値を 2 進数で表すことを符号化と呼び、CD の場合 16 ビット
(216=65536 レベル)で表現されている。この量子化の操作により、実際のアナログ信号と
の間に誤差が生じる。これを量子化雑音と呼ぶ。 十分に細かいサンプリングにすれば、も
との連続した信号により忠実になるが、それだけデータ量が多くなる。一方で図中の丸印
のように荒いサンプリングをすると、もとの信号を再現することができなくなる。最低で
も原信号の周期の半分以下でサンプリングをすることで信号の再現が保証されることを、
サンプリング定理と呼ぶ。人間の可聴範囲の上限は20kHz といわれているが、CD のサ
ンプリングは理論的にこれを再現することができることになる。
6-1
符号化 10110010
量子化
サンプリング
図1 デジタル変換
アナログ信号をアナログ処理すると、それぞれのプロセスで雑音が混入し、処理が複雑に
なるほど SN 比が劣化するが、デジタル処理では、アナログ信号をデジタル信号に変換する
部分で量子化雑音が発生するが、その後はビット誤りが発生しない限り、同じ SN 比を確保
することが可能である。
3.デジタル IC
デジタル処理する信号は2進数の符号として扱うことができる。電子回路では1と0の符
号を電圧の大小(H または L)または電流が流れているかいないかで対応させる。このよ
うな論理回路を構成する素子を TTL-IC と呼ぶ。TTL は電源電圧(Vcc と表記することが
多い)として直流5V を用い、信号は電圧で3.5V 以上5V 以下を「H」
、0V 以上0.
8V 以下を「L」と定められている。消費電流は一般的に広く用いられているローパワーシ
ョットキーTTL ファミリー(74LS○○○シリーズ)ではIC一個あたり10~100
mA程度である。入出力の信号はグランド(GND)を基準として3.5V以上であれば
「H」すなわち1の状態で、0.8V以下であれば「L」すなわち0の状態を表す。AN
DやORなどの簡単なゲート回路では、一個のICの中に数個のゲート回路が収められて
いる。図2に示す回路図は74LS00と呼ばれるNANDゲート素子で、4個のNAN
Dゲートの入出力端子が両側に配置されたピンに配線されている。このように両側に足の
並んだ形式をDIP(Dual inline package)と呼び、IC チップの上面切欠きの下が1番ピ
ンで反時計回りにピン番号が振られている。
図2 74LS00 のピン配置
6-2
4.論理代数
幾つかの入力情報(0,1の組合せ)をもとに、定められた論理判断をおこない、その
結果を出力情報として0(0V)または1(5V)で出力する回路を論理回路という。この
ような論理判断を論理代数では演算と呼び AND(論理積)
、OR(論理和)
、NOT(論理否
定)の3種類が基本である。論理代数という名称が示すように、O、1の二値をとる変数 A、
B、論理演算 AND を「・」、OR を「+」、NOT を「 ̄」で記述すると、次の法則が成り立つ。
交換法則 A+B=B+A 、A・B=B・A
分配法則 (A+B)・C=(A・C)+(B・C)、(A・B)+C=(A+C)・
(B+C)
単位元
A+0=A、A・1=A
補元
A+A=1、A・A=0
結合則
(A・B)・C=A・(B・C) 、(A+B)+C=A+(B+C)
吸収則
(A・B)+A=A 、(A+B)・A=A
巾等律
A+A=A、A・A=A、A+1=1、A・0=0
ド・モルガン
A+B=A・B、A・B=A+B
また、具体的な演算を場合にわけて記述したものを真理値表(論理表)と呼ぶ。
図3 MIL 記号と論理表(A,B 入力 C 出力)
6-3
5.実験
5-1実験装置
デジタル回路実験盤
1台
可変抵抗器
1台
定電圧電源
1台
デジタルテスタ
1台
パッチコード
1式
5-2 NAND ゲートの入出力特性
図4に示す回路を構成し、GND(接地)に対する入力電圧 Ei および出力電圧 Eo を測定
し入出力特性図を描きなさい。さらに、特性図の出力電圧が論理1および0になる入力電
圧から遷移電圧幅を求めよ。
なお、電源電圧は直流5V にセットし、電圧測定にはデジタルテスタを用いる。
Vcc = 5V
5-3 NAND による等価回路構成
下記の回路について、入力組み合わせ
に対する出力の真理値表を作れ、さらに
NAND ゲートにより等価回路を構成し
て動作が同じになることを確かめよ。
Ei
Eo
1)NOT 回路
2)NOR 回路
3)図5に示すゲート回路
4)Q = A・B+A・B
となる回路
図4NAND ゲート測定回路
A
C
Q
B
図5 ゲート回路
6-4