名称:N-結合型糖鎖の精製・検出方法 用途:生体内に含まれる N-結合型糖鎖を精製後蛍光標識し、HPLC で検出する。 特徴:約 2fmol の感度で検出することが可能。 方法:1~6の手順で行う。 1.アセトン沈殿:糖タンパク質の濃縮、乾燥 2.ヒドラジン分解:糖タンパク質からタンパク質と糖鎖を遊離させる。 3.グラファイトカーボンカラム:不純物の除去、再アセチル化 4.ピリジルアミノ化:ピリジルアミノ基による蛍光標識 5.セルロースカラム:未反応のピリジルアミノ基の除去 6.HPLC による検出 Copyright©2012 NIPS Technical Division. All Rights Reserved. 実験プロトコル (1) アセトン沈殿 1. 組織検体に 9 倍量(v/w)の-20℃アセトンを加える。 (ホモジナイザーで破砕が必要な場合は氷上で 1 分×2-3 回) 2. -20℃で 2 時間~over night 静置 3. 10,000g、20 分、4℃で遠心 4. 上清を捨て、沈殿物に 1)と同量程度の-20℃アセトンを加える。 (ホモジナイザーで破砕が必要な場合は氷上で 1 分×2-3 回) 5. -20℃、60 分間静置 6. 10,000g、20 分、4℃で遠心 7) 上清を捨て、沈殿物を乾燥する (2) ヒドラジン分解 準備 ・無水ヒドラジン (東京化成) ・ヒドラジン用チューブねじ口試験管(iwaki TE32) ・100℃高温槽 ※ヒドラジンの取り扱いは特に注意(ドラフト内で操作し、防護めがね、手袋を着用すること) 1. 乾燥したサンプル 2mg を測り、ヒドラジン用チューブに入れる。 2. ドラフト内でサンプルに無水ヒドラジンをパスツールピペットで 200μl 加える。 200μl の水を入れたチューブを準備し、この高さを目安に滴下する。200μで約 8 滴 ヒドラジンは危険なので、1 チューブに 500μl 以上のヒドラジンを入れない。 3. ドラフト内の 100℃の沸騰した湯浴で 10 時間反応する。 4. 水で冷却し、遠心機でスピンダウンする。 (-20℃で保存可能) Copyright©2012 NIPS Technical Division. All Rights Reserved. (3) グラファイトカーボンカラム 準備 ・A 液:50mM 酢酸アンモニウム ・B 液:50mM 酢酸トリエチルアミン水溶液(pH7.0), 60%アセトニトリル ※A,B 液は冷蔵庫でストックを保管。使用前に常温に戻しておく。 ・吸引マニフォールド ・カラム:GL-Psk CARBOGRAPH 300mg/6ml または GL-Psk CARBOGRAPH 150mg/3ml(GL サイエンス) ※ゲルからの回収時には小カラムを使用する。 ・溶出時の試験管チューブ(SARSTEDT 製 55.516) 以下、大カラム使用時の方法を示す。小カラムの時は溶媒量を半分にする。 1. 吸引マニフォールドにグラファイトカーボンカラムを接続する。 2. カラムの洗浄:カラムに B 液を 6ml 通液し、次に A 液 6ml を 2 回通液する。A 液の液面が充填剤の 上面にきたところで通液を止める。 3. サンプルの添加: 3-1) ヒドラジン反応液 200μl に対し、2ml の A 液を加えてボルテックスする。 3-2) スピンダウンした後、ヒドラジン反応液をパスツールピペットでカラムにゆっくりと添加し、通液 する。 3-3) 再度 A 液 3ml でサンプルの入っていたチューブを洗い、その溶液をカラムに添加し、通液する。 3-4) A 液を 6ml 添加し、通液する。 4. 糖鎖のアセチル化・溶出: 4-1) 溶出液を分取するための試験管をセットする。 4-2) 溶出溶媒(1 サンプル当たり B 液 5ml+無水酢酸 100μl を用時調整する)を通液し、回収する。 4-3) 溶出した溶媒はエバポレーターで有機溶媒を取り除いた後、濃縮遠心機で乾燥させる。(Overnight) Copyright©2012 NIPS Technical Division. All Rights Reserved. (4) ピリジルアミノ化 準備 ・A 液:2-アミノピリジン(関東化学)69mg を酢酸 25μl に溶解する。 ・B 液:ジメチルアミノボラン(wako)200mg に milliQ 水 50μl、酢酸 80μl を加え、溶解する。 ※用時調整、サンプル本数によって量を調節する。 ※2-アミノピリジン、ジメチルアミノボランは吸湿しやすいため、注意を払う。 溶液調整前に冷蔵庫から取り出し、常温に戻しておく。 ・ヒートブロック ・チューブふた(SARSTEDT 製 65.806) 1. 1 サンプル当たり 20μl の A 液を加え、ふたをしてヒートブロックで 90℃、60 分間反応させる。 2. スピンダウン後、1 サンプル当たり 70μl の B 液を加え、ふたをしてヒートブロックで 80℃、35 分 間反応させる。 ※酸が外れやすいため、すぐに次の精製を行う。 Copyright©2012 NIPS Technical Division. All Rights Reserved. (5) セルロースカラム 準備 ・A 液:1-ブタノール:エタノール:0.6M 酢酸溶液=4:1:1 の割合で混合する。 ・B 液:エタノール:75mM 重炭酸アンモニウム=1:2 の割合で混合する。 ※用時調整、サンプル本数によって量を調節する。 ・セルロース:Cellulose microcrystalline for column chromatography (Merck) ・吸引マニフォールド:グラファイトカーボンカラム参照 ・オープンカラム:ルアーチップカラム(SARSTEDT 製 CC.11) ・溶出時の試験管チューブ(SARSTEDT 製 55.516) 1. セルロースの調整 1-1) 3L のビーカーにセルロース 50g を入れる。 1-2) 約 1.5L の MilliQ 水をビーカーの淵に沿わせて静かに加える。 ビーカーを傾けてゆっくり回して混ぜ、数分間静置する。 1-3) 上澄に浮いているセルロースを水流アスピレーターで吸引する。 1-4) 2-3 を 2 回繰り返す。3 回目に MilliQ 水を加えた時は冷蔵庫で 1 時間以上静置する。 1-5) 上澄が透明なことを確認し、上澄をアスピレーターで吸引する。 1-6) B 液を約 500ml 加え、静かに攪拌する。500ml 瓶に移し替える。 1-7) 約 30 分間静置後、上澄をアスピレーターで吸引する。 1-8) 再度 B 液を加えて同様の操作を行う。 1-9) A 液を約 500ml 入れて静かに攪拌後、30 分間静置する。上澄をアスピレーターで吸引する。 1-10) 再度 A 液を加えて同様の操作を行う。 1-11) A 液をセルロースの 3 倍量程度加えて冷蔵庫で保存する。 2. カラムの準備 2-1) 吸引マニホールドにオープンカラムを取り付け、MilliQ 水を流してフィルターの空気を抜く。 2-2) コックを閉じて A 液を 1ml 程度添加する。 2-3) 調整したセルロースをセルロース粒子が壊れないように静かに攪拌し、十分懸濁する。 2-4) 懸濁液 2ml をカラムに添加する。沈殿せずに残っている上澄を取り除き、15 分間静置する。 2-5) A 液をゆっくり加え、舞い上がったセルロースを再度取り除く。 2-6) A 液をセルロース体積の 3 倍量(3ml)通液する。2 回行い、2 回目はセルロースの上端ぎりぎりで 止める。 3. サンプルの添加 3-1) ピリジルアミノ化済みのサンプルに A 液を 2.5ml 加えてボルテックス、スピンダウンする。 3-2) 調整したサンプルをカラムに添加し、通液する。 3-3) A 液 3ml をサンプルの入っていたチューブに加え、ボルテックス、スピンダウンしてカラムに通す。 3-4) カラムに直接 A 液 3ml を通液する。 Copyright©2012 NIPS Technical Division. All Rights Reserved. 4.糖鎖の溶出 4-1) カラムの溶出液を分取するための試験管チューブをセットする。 4-2) B 液を 2ml 加えて通液し、回収する。 4-3) 溶出した溶媒はエバポレーターで有機溶媒を取り除いた後、濃縮遠心機で乾燥させる。(Overnight) (6) HPLC で検出 精製後のサンプルは HPLC 蛍光検出器で検出できる。 Copyright©2012 NIPS Technical Division. All Rights Reserved.
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