システム設計の反響

プレストンホロー長老派教会
システム設計の反響
by Daniel Keller, Sound & Video Contractors, November 2002
経験豊かな設備施工業者なら、内装設計と完
成度の高い音響的条件が仲良く同居できること
はごくまれだと言うだろう。そして伝統的な教会
の設計を新世紀に導くプロジェクトほどこの二
分化がはっきりしていることはない。細長くて反
響の多いスペースは聖歌隊やパイプオルガン
には愛されるが現代の増幅システムにはうまく
対応できず、その結果すべての仕事が無駄にな
りかねない。
プレストンホロー長老派教会の礼拝堂
新しいシステムの導入は決まったものの、ダラスのプレストンホロー長老派教会の場合は設計技術者のスティーブ・ホイット
ルとホイットロック・グループに普段よりも多くの課題を持ち込んできた。
「建物といい空間といい、とても難しい仕事でした」ホイットルは言う。
ホイットルの言う空間、つまり大礼拝堂は、2700 人という教会員に合わせて大幅に拡張するため設計し直されていた。新し
い礼拝堂は変形十字のような形をしていて壁面にはガラスが多用され、丸みを帯びた天井は高さが 10m もあった。
「以前のシステムでは何をしゃべっているのかわからないことも時々ありました」ホイットルは言う。さらに何ごとにも発言力の
ある装飾委員会が、幅の広い通路に敷かれた手入れの面倒なカーペットをはがしてタイル敷きにすることを決めた。これで常
に定在波体感できる状態になった。
「実際のシステムはミルウォーキーにあるスコット・リーデル・アソシエイツのクリス・キャッセルが設計したもので、それはす
ばらしいものでした」とホイットルは言う。
「しかし私たちが施工業者として呼ばれたとき、
委員会の人たちがきいてきたのです。
『このシステムで何か変更できる部分はありますか ?』
。明らかに彼らはシステムをさらにレベルアップしようとしていたのです」
ホイットロック・グループが最初に提案したのは大礼拝堂にあるスピーカーの入れ替えだった。このスピーカーが指向性を
制御できていなかったからだ。
「このスペースはパイプオルガン向けに設計されていて、残響は 2 秒を超えています」ホイッ
トルは言う。指向性を的確に制御するスピーカーを入れて座席に音を放射し、可能な限り壁
や天井に音をあてないようにすることが不可欠だったのだ。
「次に見つけたのは、施設の中にある大礼拝堂とチャペル、いくつかのホールの間を古いア
ナログケーブルの束が行ったり来たりしていたことです」ホイットルは言う。
「本当にシステ
ムの機能を制限するものでした。建物の反対側にある小さなホールに 8 チャンネルレコー
ダーを置いたためにケーブルを引き回したようですが、実際にはどの部屋からも 1 チャンネ
ルしか送れない状態だったのです。
私たちが提案したのは、もう少しお金を出して今のプロセシングシステムを Audia に取り
替えてはどうか、ということでした。元設計の頃には Audia はありませんでしたが、その時
点ではその実力を見せることができ、彼らも好印象を持ちました。Audia にはかなりの馬力
があるので、教会全体のデジタルシグナルプロセシング (DSP) 構造を設計し直すことがで
きました。このため大礼拝堂のスピーカーはクロスオーバー内蔵のものからバイアンプ駆動
に変更できたし、最後にはマイクごとにイコライザーをかけるだけの DSP パワーがありまし
プレストンホロー長老派教会
た。またネットワーク対応の Audia と CobraNetTM によって全室をまとめることができたのです」
大礼拝堂には ALLEN & HEATH の 32 チャンネルコンソールが 2 台入り、ハウスフロントと地元の FM 局向けのミキシングを
受け持っている。マイクロフォンはほとんどが SHURE の UC システムで、
コンデンサーマイクも吊り下げられた。QSC のパワー
アンプが Renkus Heinz の C5s をドライブしている。
「このスペースで興味深かったことの 1 つは、何しろライブだったのでタイミングが重要だということです」ホイットルは言う。
「天井がとても高くスピーカーもかなり高い位置に吊られたため、CobraNetTM のレイテンシーが大きな意味を持つようになった
のです。Audia はディレイ補正を OFF にすることができるのでタイミングのずれをかなり短くでき、CobraNet TM のホップが生
み出す 12 ないし 15msec のずれだけになりました。舞台からの生音に対して再生音の遅れを感じるぎりぎりのところですね。
BIAMP には先見の明があって、ユーザーがコントロールできるようにしてくれていたのです」
新しいシステムは、多くのメディア機能を教会内で一元化した。すべて Audia でプロセシングしているため、あらゆるスペー
スが一元管理されることになったのだ。放送用ブースでもホールからでも、パソコンでシステムのどのポイントにでもアクセス
できる。
「もちろんシステム全体は全館に敷かれた LAN に接続されているので、
Audia ソフトウェアを入れたラップトップパソコンでどの部屋からでも制御で
きます」ホイットルは言う。
もちろん教会内のさまざまな部屋やホールには他の機能もたくさんある
ので、手動での制御は少なくする必要があった。
「Audia はすごいですね。何にでも接続できるので誰でも使えます」ホイット
ルは言う。
「マイクはすべて Audia のオートマチックミキサーに送られて自動
的にレベルが調整され、プリセットの DSP で操作されています。
Audia は少ないコストでより柔軟性を高め、システムの制御を可能にして
くれました。私たちは目の前の問題ばかりではなく、気づいてさえいなかっ
た問題を解決することまでできたのです」
残っている課題は 1 つ、2 台目のパイプオルガンが 2 年の納期を迎えて
来年到着することだ。舞台奥の平らな壁面に設置されると音響条件がまた
変わる。ホイットルは楽天的だ。
「パイプオルガンがデフューザーの役割を果たしてくれてスペースが少し安
定するでしょう。
」
コーラス席
すでに克服したハンディと同様、これも彼の言う通りになるだろう。