米国 IT 業界動向 2008 年 6 月 JETRO, New York 1. 企業動向 (1)アップル 調査会社大手フォレスター・リサーチは、アップルが今後5年間の間に“一般家庭の居 間を制する”と予測している。同社のアナリストは、一般家庭が向かっている方向性とア ップルが目指している方向性が重なっている点を指摘している。また、アナリストは、ア ップルが今後、(1)自社製品を含む家庭内のすべての AV 機器を一括操作できるリモコ ン(2)サーバに接続するデジタル写真立てと目覚まし機能付きラジオ(3)AV 機器のイ ンストール・サービス(4)家庭用デジタル・ライフ関連商品を取り扱う小売店の展開 (5)i チューンズの機能拡張(遠隔操作など)— を展開していくとみている。【5 月 23 日】 アップルは、太陽電池を携帯機器に組み込む技術「携帯機器用の太陽電池」の特許を申 請した。申請書によると、この太陽電池は、i フォンや i ポッド・タッチへも搭載できる。 携帯機器は太陽電池用パネルを搭載できる面積が限られているため、これまで搭載が難し かった。また耐久性も問題の1つだった。これに対して、アップルは、液晶ディスプレイ 画面の後ろ側にソーラー・パネルを組み込むことでこの問題を解決した。これは、周辺光 が液晶ディスプレイ画面を通過し、ソーラー・パネルに吸収される仕組みだ。【5 月 28 日】 アップルは、9月の新学期に合わせた販促キャンペーンを開始した。販促内容は、マッ クブック、マックブック・エアー、マックブック・プロ、i マック(20 インチまたは 24 インチ)、マック・プロを購入する学生や教師、学校関係者が、同時に i ポッド・タッチ を買う場合に 299 ドルの割引、i ポッド・ナノを買う場合に 199 ドルの割引を提供すると いうもの。期限は、9月 15 日まで実施する。i ポッド・タッチの一番安い製品の場合、割 引価格と販売価格が同額のため、事実上の無料提供ということになる。【6 月 3 日】 アップルは、第3世代(3G)対応の i フォンを7月 11 日から発売開始する。同社は、 新製品の価格を従来の半分に下げ、199 ドル(8GB)と 299 ドル(16GB)の2種類を提供 する。バッテリの寿命は、ウェブサイト閲覧で6時間、通話なら5時間となっている。ま た、今回は、第3者がアプリケーションを開発して提供できる「アップ・ストア(App Store)」機能を搭載する。同社はすでに、SDK(ソフトウェア開発キット)を公開してお り、これまで 25 万回ダウンロードされたという。 一方、通信業界の専門家によると、AT&T は、3Gi フォン1台当たり 425 ドルの補助金を アップルに支払う見通しだ。この額は、通常、携帯電話会社がスマートフォン・メーカー に払う金額の倍以上になる。内訳は、AT&T がアップルに i フォン1台当たり 325 ドルを支 払い、さらに、アップルが i フォンを1台販売する度に AT&T が 100 ドルを支払う仕組み。 一方、高額の補助金を相殺するために、AT&T は i フォン加入者の料金プランを高めに設定 している。加えて、加入契約期間が2年間となるため、長期的に他機種よりも売り上げが 高くなる。一方、補助金の額が1台当たり 466 ドルと推測するアナリストもいる。【6 月 9 日、20 日】 (2)シスコシステムズ シスコは、デンマークのデジタル・ビデオ管理ソフトを開発するディビテックを買収す る。買収金額などの詳細は明らかにされていない。ディビテックの管理支援ソフトは放送 事業者向けで、特定地域にニュースを配信するネットワークの管理を支援する。シスコは、 ディビテックの買収により、ビデオ分野への事業拡大を図っていく。買収手続きは5〜7 月期中に完了する予定。【6 月 10 日】 (3)デル デルの2〜4月期決算は、アナリストの予測を上回る増収となった。主力製品となるノ ート型パソコン(ラップトップ)やサーバの売り上げが好調だったことが奏功した。また、 過去1年間で人員を5%削減したリストラ効果も見られた。売り上げを地域別に見ると、 日本を含むアジア・太平洋地域が 18.6%増と好調だった。一方、米州地域は 0.6%増とほ ぼ横ばいだった。機種別に見ると、ラップトップの売り上げが 22%増、企業向けサーバの 売り上げが4%増だった。【5 月 30 日】 (4)ヒューレット・パッカード(HP) HP の2〜4月期期決算は増収増益となった。海外市場、特に BRIC(ブラジル、ロシア、 インド、中国)を中心とした新興市場が好調だった。売り上げは、米国外が全体の 70%を 占めている。【5 月 21 日】 HP は、プラスチックを再利用したインクジェット・プリンタおよび関連サービスを発表 した。環境に重点を置く事業戦略の一環。新型プリンタでは、筐体に使用するプラスチッ クの 83%が再利用素材となっている。また、包装にも 100%の再利用素材が使われている。 HP はさらに、企業各社が印刷用紙の使用量を削減するための支援サービス「エコ・プリン ティング・アセスメント(Eco Printing Assessment)」を提供する。同サービスでは、 最新プリンタと旧式プリンタの電力消費量を比較できる計算機を提供する。また、省エ ネ・プリンタに対しては、認証として「エコ・ハイライト(Eco Highlights)」と呼ばれ る表示を製品に貼り付ける。同表示を受けた製品は、環境保護を重視した製品やサービス として連邦政府が認める「エナジースター(EnergyStar)」と格付けされたことを証明す る。HP は今後、プリンタを自動的にスリープ・モードにするオート・オン/オート・オフ 機能を 2009 年に下位機種に導入する予定。その後は、高位機種にも導入していく。HP は、 印刷用紙に計画的森林伐採によって生産された製紙用の木だけを使用している。来年から は、写真印刷用紙でもその割合を現在の 80%から 100%に引き上げる。 一方、HP は、プリンタ部門の再編に取り組む。その一環として、プリンタ部門の部署数 を従来の5つから3つに減らすとともに、グラフィック部門の責任者を交代する。プリン タ事業は 2007 年上半期に 23 億 8000 万ドルの利益を計上している。【5 月 23 日、6 月 19 日】 HP は、2008 年第1四半期(1〜3月)における世界のサーバ市場(売り上げベース) で IBM を抜き首位に立った。調査会社ガートナーが発表した。HP の売上高は 40 億ドルに 達し、市場全体の 29.6%を占めた。最大の要因となったのは、同社の人気サーバ製品「プ ロライアント(ProLiant)」と「インテグリティ(Integrity)」の好調な売り上げだっ た。一方、2位となった IBM の売り上げは 39 億ドルで、市場シェアが 28.9%だった。世 界のサーバの売上高は同 4.3%増の 136 億ドルだった。【5 月 27 日】 HP は、2009 年1月以降に北米で出荷するパソコンにマイクロソフトの検索サービスの ライブ・サーチ向けツールバーを標準搭載する方針を明らかにした。ツールバーはパソコ ン画面上部に表示される検索機能。利用者が検索語を打ち込むと、結果が一覧表示される 仕組み。現在、米国ではグーグルが検索市場のシェア 61.5%(4月、コムスコア社調べ) を占めて独走中だ。これに対してマイクロソフトのシェアはわずか 9.1%。HP とのて提携 によって自社サービスの普及に弾みを付けたい考えだ。【6 月 3 日】 HP は、台湾のパソコン大手である宏碁電脳(エイサー)との特許紛争で和解したことを 明らかにした。これにより、両社はこれまで訴えてきた件に関する法的措置を取り下げる。 これまで、両社の間には、米連邦地裁に起こされた3件と、国際貿易委員会(ITC)によ る2件があった。双方の法廷争いは、逆提訴による逆提訴などで泥沼化しつつあった。 【6 月 9 日】 HP は、タッチ・スクリーン型ディスプレイを標準装備したパソコン「タッチスマート PC」を7月 13 日に米国や日本、中国、インドで発売開始する。製品は、指先で画面に触 れることで表示画面をスクロールできるのが特長だ。OS にはビスタを採用している。価格 は 1299 ドルから。HP は、使い勝手の良さで売り出し、パソコン市場の掘り起こしを狙う 考えだ。また、薄型でもあることから、アップルが発売したマックブック・エアーを意識 しているとの見方もある。【6 月 10 日】 (5)IBM IBM は、新開発したスーパー・コンピュータ(スパコン)「ロードランナー」が世界最 速の演算処理能力を記録したと発表した。今回、ソニーのプレイステーション3に使われ る半導体「セル」を搭載して挑んだところ、演算速度は、1ペタフロップス(毎秒 1000 兆回の演算処理を行う)に達したという。演算処理能力は、これまで首位だった同様に同 社製のスパコン「ブルージーン L 」の2倍以上になる。ロードランナーは、今後米エネル ギー省傘下のロス・アラモス国立研究所に納入され、老朽化した核兵器の性能を調べる模 擬実験に使われる予定だ。開発費は1億ドルとなっている。【6 月 11 日】 IBM は、スウェーデン通信機器大手のエリクソンの社内の IT 関連の作業を外部委託する。 業務内容には、アプリケーションの開発や保守管理などが含まれている。【6 月 19 日】 (6)インテル インテルは、5月に行われた年次株主総会の席上で、次世代超小型プロセッサ 「Nehalem(開発名:ネヘイレム)」の販売を予定通りに今年下半期から開始すると発表 した。また、今後は、最新の 45 ナノメートル超微細加工技術で製造したプロセッサの供 給も増やしていくと説明している。今年第3四半期には半分以上が同技術で生産した製品 になる見込みだ。【5 月 22 日】 欧州連合(EU)の競争政策当局は、インテルの販売慣行に対して今夏の遅くに正式な決 定を公表する見通しだ。EU 関係筋の話によると、EU がインテルの競争法違反を認定した 場合には、最大で年間売上高の 10%に相当する 26 億ユーロ(41 億ドル)の制裁金が科さ れる可能性があるという。また、EU 側は既に行動を起こすのに十分な証拠を集めたと自信 満々だ。EU はインテルがプロセッサをパソコンメーカーに値引き販売することを禁止する ほか、インテルの小売業者への広告費用補助にも制限が課していくとみられている。【5 月 27 日】 連邦取引委員会(FTC)は、独占禁止法違反の疑いでインテルの公式調査に着手した。 すでに、日本、韓国、欧州で同様に当局による調査が行われており、同社はさらに厳しい 状況に追い込まれそうだ。FTC に対しては、競合のアドバンスト・マイクロ・デバイシズ (AMD)が以前からインテルの調査を要請していた。AMD は、インテルがパソコン向けプロ セッサの独占的地位を乱用し、リベート供与などを通じ自由な競争を阻害していると主張 していた。【6 月 7 日】 インテル、太陽電池モジュール製造会社向けに太陽電池を製造し供給する新会社「スペ クトラワット(SpectraWatt)」を立ち上げる。新会社は、インテルから完全に独立した 形で運営される。資本は、インテルの投資部門インテル・キャピタル(Intel Capital) が初期投資として 5000 万ドルを投資している。新会社の手続きは6月中に完了する見込 みで、今年後半には事業を開始し、2009 年中頃には太陽電池を出荷し始める計画だ。 【6 月 16 日】 (7)マイクロソフト マイクロソフトは、次期パソコン用 OS「ウィンドウズ7(開発コード名)」でタッチ機 能を充実させる。タッチ機能は、ディスプレイに直接触れて操作する機能で、I フォンの ような携帯機器などで採用されている。同社は現在、ウィンドウズ・ビスタを販促してい るが、ウィンドウズ7の市場導入時期は 2010 年になる見込みだ。同社によると、ウィン ドウズ7の開発は従来の計画通りに進んでいると語った。一方、他の機能については明ら かにされていない。【5 月 29 日】 マイクロソフトは、HMO(会員制健康医療団体)最大手のカイザー・パーマネンテと共 同で、医療記録管理プログラムの開発を進めている。これは、患者自らが医療記録を管理 するのを促し、必要に応じて情報を共有できるようにするもの。まず、カイザーが保管す る検査結果などの個人医療記録がマイクロソフトのウェブ・サービス「ヘルスヴォルト (HealthVault)」にコピーされる。そこで、患者は情報の一部共有を許可する仕組みだ。 現在は、試験プログラムとなっており、カイザーの従業員のみが対象となっている。一方、 競合のグーグルはすでに、レボリューション・ヘルス・グループと提携し、今年2月から 同様のサービス「グーグル・ヘルス」を導入している。【6 月 10 日】 (8)グーグル グーグルは、サンフランシスコで開催した開発者向け年次会議で、携帯電話機向けプラ ットフォーム「アンドロイド(Android)」公開した。同会場には、およそ 3000 人の開発 者が参加していた。アンドロイドを利用することによって、パスワードを入力する代わり にタッチ・スクリーンに独自の模様を書き込み電話のロックを解除したり、機器自体のホ ームページにお気に入りウェブサイトをブックマークできる。また、サイト・ページを拡 大できる機能も注目を集めた。また、i フォンと異なり、アンドロイドは、トラッキン グ・ボールにも対応する。すでに 34 社がアンドロイドの普及で同社と提携しており、ア ンドロイド対応機種の登場も現実味を帯びてきた。グーグルによると、アンドロイドが市 場に登場するのは、早くても今年末になる見込みだ。ただし、一部の専門家は、他社製の アンドロイド携帯電話機が今年の年末商戦期に間に合うかどうか疑問視している。 グーグルはまた、第3者によるオンライン対応アプリケーションの開発の促進を目的と して、新規無料サービス「アップ・エンジン(App Engine)」を開始した。これは、コン ピュータの演算処理およびストレージを提供するもので 500 メガバイトのストレージおよ び月 500 万人の訪問者を処理できる。容量を追加する場合には、1ギガバイトあたり月額 15〜18 セント課金される。同社は、年次会議の参加者全員に同サービスを提供している。 【5 月 29 日】 グーグルの4月におけるペイドクリック数は前年同月比で 19.6%増となった。2月、3 月の伸び1桁台だったことから、大幅な伸びを見せている。米調査会社コムスコアが報告 した。この結果を受けて、アナリストらは第2四半期の売り上げが好調になるとの見方も ある。【5 月 29 日】 グーグルは、米ナスダック市場などを運営するナスダック OMX グループと提携した。 提携により、グーグルは、リアルタイムの株価情報の配信を開始した。このほか、ケーブ ルテレビ CNBC、ウォール・ストリート・ジャーナルも同様の提携を結んでいる。これま で提供してきたナスダックの情報は最新のもので 15 分遅れていた。【6 月 2 日】 グーグルは、ヤフーとオンライン広告配信に関する非独占契約を結んだ。提携により、 ヤフーは北米の自社サイトの一部でグーグルの検索連動型オンライン広告を表示する。こ れにより、年間8億ドル規模の増収効果を期待する。非独占契約にしたのは、独禁法抵触 を避けるためだという。これに伴い、ヤフーは、4ヵ月以上に及んだマイクロソフトとの 身売りおよび業務提携交渉を打ち切った。【6 月 13 日】 主な企業の決算報告: 企業名 四半期売上高 前年同期比 四半期純益 前年同期比 デル 75.12億ドル 9.2% 7.84億ドル 3.7% HP 282.62億ドル 11% 20.57億ドル 16% 2. パーソナル・コンピュータ、携帯機器とソフトウェア(OS) (1)文具小売りチェーン大手のステイプルズは、フレックスプレイ・エンタテインメント (Flexplay Entertainment)が開発した使い捨て DVD を今月から販売する。この DVD は、 開封すると 48 時間で自動的に壊れてしまい、データの再生ができなくなる。パッケージ を開けなければ1年間は使用可能。映画会社はこの DVD を使って映画ディスクを販売する。 作品には、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(There Will Be Blood)」「ライラの冒険 黄金の羅針盤(The Golden Compass)」「トランスフォーマー(Transformers)」「ドリ ームガールズ(Dreamgirls)」などが含まれており、価格はブロックバスターのレンタル 料と同額の 4.99 ドルに設定している。 同 DVD は、2枚の半月状プラスチック板を特許 技術の接着剤でつなげて造り上げたものだ。ディスクを特殊なパッケージから取り出すと、 酸素にさらされて素材が化学反応を起こし、その結果、レーザーでの読み取りができなく なる仕組みだ。また、材質には、再生プラスチックが使われている。10 年ほど前にも、家 電チェーン大手サーキット・シティおよびエンタテインメント業界の著作権を扱う法律事 務所が共同で同様の DVD を使った DVD レンタル・システム「DIVX(デジタル・ビデオ・エ クスプレス)」を開発した。しかし、消費者から不評だったためすぐに市場から姿を消し た。【6 月 5 日】 (2)最近では、パソコンとデータ共有できるペンや、デジタル録音ができるスマートペンが 登場しつつある。例えば、ライブスクライブ(Livescribe)が開発した「パルス (Pulse)」は、紙に書いたイメージそのまま記録し、パソコンに転送できる。また、内 蔵マイクを搭載しているので、書いている最中に音も記録し、再生も可能だ。製品は1ギ ガメモリを搭載して価格は 149 ドル。高音質で 35 時間の録音が可能だ。2ギガメモリ版 は 199 ドル。ただし、使用するには専用のノートを購入しなければならない。一方、ノキ アが開発したスマートペン「SU-27W」は、携帯電話機メーカーらしい機能を搭載している。 専用の小さなノートに書いたメモをブルートゥースで携帯電話機に転送して画像あるいは テキストとして送信できる。価格は 299.95 ドル。ただし、録音はできない。さらに、IO ギアのスマートペン「モバイル・デジタル・スクライブ」は、液晶表示装置(LCD)スク リーン付きの小さなクリップを付けることによりどんな紙でも利用でき、手書きをそのま まコンピュータにデータとしてアップロードできる。ペンの動きは、クリップが超音波と 赤外線で認識する仕組み。価格は 129.95 ドル。【6 月 10 日】 (3)ミネルバ・ネットワークス(Minerva Networks)は、10 社におよぶ米電話会社に、同 社の IP テレビ(IPTV)技術「iTV マネジャー(iTVManager)」を提供する。iTV マネジャ ーは、高精細テレビ(HDTV)やデジタル動画録画(DVR)、ビデオ・オン・デマンド (VOD)、音楽、ゲーム、そして通信アプリケーションなどのテレビ配信サービスと管理 を行うためのミドルウェア・プラットフォーム。複数のベンダーから供給される HD/DVR セットトップ・ボックス(STB)と互換性があるのも特長だ。ミネルバによると、iTV は、 テレビ・サービスの迅速な導入を可能にし、基幹設備と運営コストを抑えることができる という。中規模電話会社がケーブルテレビ会社に対抗するための強力な武器となりそうだ。 【6 月 16 日】 3.インターネットとメディア・ビジネス (1)米国のスマートフォン利用者は、月当たり平均で4時間 38 分をウェブサイト閲覧に費 やしている。その中でも、人気があるのは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS)と e コマースだ。調査会社Mメトリクス(M:Metrics)が報告した。同社の調べに よると、アクセス人気ランキングでは、地域情報サイトのクレイグスリスト (Craigslist)が首位となっている。次いで、e ベイ、マイスペース、そしてフェイスブ ックの順だ。M メトリクスによると、米国では、過去1年わたりスマートフォンを使った ウェブの閲覧ページ数は前年比 127%増を記録した。【5 月 23 日】 (2)ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェイスブックは、自社プラッ トフォームのコードをオープンソース化(フェイスブック・オープン・プラットフォー ム)した。これにより、サードパーティの開発者や企業は、フェイスブックのプラットフ ォームを利用した独自のプログラムを開発できるようになる。今回の戦略転換は、競合グ ーグルを追随したものと考えられている。グーグルは昨年の 11 月にオープンソース型の SNS イニシアチブ「オープン・ソーシャル」を発足した。デベロッパは、同イニシアチブ に参加する SNS に対して共通のプログラムを開発し提供することができる。同イニシアチ ブには、マイスペースやリンクドインなど大手 SNS も名を連ねている。【6 月 2 日】 (3)携帯向けビデオ配信サービスを提供するザネル(Zannel)は、ベンチャー・キャピタル (VC)から新たに 1000 万ドルの資金を調達した。ザネルは、最近投資が増えている携帯 機器向けのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を提供する。同社のサービ スは、携帯電話機を使って写真やビデオをアップロードしたり、自分のブログを更新でき る。外出先で SNS を利用できるほか、電話での会話に切り替えられるという利点もある。 現在、携帯機器向け SNS 開発が盛んだ。VC 業界では昨年の1〜9月期におよそ 92 社が総 額4億 3120 万ドルの資金を調達している。ザネルは今回が2回目の資金調達で、以前に 600 万ドルの資金を得ている。同社の競合には、RivalKyte.com がある。【6 月 2 日】 (4)オンライン広告のマッチメーカー、ネクストメディアム(NextMedium)が注目を集めて いる。同社のサービスは、オンライン広告を希望する広告主と掲載先をつなげるのが役目 だ。しかし、通常のオンライン広告ではなく、同社が手がけるのは、“プロダクト・プレ イスメント”と呼ばれる商品広告だ。プレイスメントは、例えば、映画やテレビドラマの 中にロゴ入りの商品を使用することで、そのブランド名を広く浸透させる手法。ネクスト メディアムは、プロダクト・プレイスメント専門のマーケットプレイス「エンベッド (Embed)」を設置。広告主は、このマーケットプレイスでショー、ミュージック・ビデ オ、映画などを検索する。一方の制作会社は、広告主と広告料を検索することができる。 現在、同社のマーケットプレイスには、120 社の制作会社と数百の広告主が登録している。 また、視聴率などを調査する調査大手ニールセン・メディア・リサーチが処理したデータ によって、製品がどのくらいスクリーン上に表示されているのか、その商品がどのような 形(背景あるいはアップなど)で表示されているのかを追跡できるのも特長だ。エンベッ ドの使用料は年間2万 5000 ドル。ネクストメディアムの収入源は、広告料の一部から受 け取る手数料でまかなわれている。【6 月 3 日】 (5)米国の経済低迷を受けて、2008 年はあらゆる情報媒体で広告売り上げが減る可能性が 高いが、その一方でオンライン広告が収入を拡大し続けると見られている。調査会社大手 IDC が報告した。同社によると、2008 年第1四半期(1〜3月)の米ネット広告支出は前 年同期の 57 億ドルから 23.9%も増の 71 億ドルを記録した。最大手のグーグルでは、主力 の検索結果連動型広告市場が成熟しつつある中、国内売り上げの増加率が減速している。 それでも、ほとんどの競合社よりは大きな伸び率を維持している。同社の米市場シェアも 23.1%から 24.8%に拡大した。IDC のアナリストは、広告主がより効果的なマーケティン グ・チャンネルを模索し、その結果、ニューメディアに予算が移行していると現状を指摘 している。今年は景気後退への懸念によって広告支出が全体として7%縮小するとみられ ている。一方、オンライン広告は逆に 15〜20%増を維持する見込みだ。【6 月 10 日】 (6)企業の給与体系の情報を提供する Glassdoor.com が登場した。同サイトは、特定の企業 の給与情報を提供すると同時に従業員による匿名のコメントを掲載する。現在、同サービ スは試験段階だが、すでに 250 社以上から 2000 件の給与情報および 1300 人のコメントを 集めている。表示される企業の多くは、金融もしくはハイテク企業に集中しているという。 今のところ企業からの評判はまずまずのようだ。例えば、同サイトに掲載されているウィ ンド・リバー・システムズの場合、システム・アドミニストレーション・アーキテクトの 年棒が 10 万ドル、上級技術者の年棒が 13 万 5000 ドルと表示されているが、情報が正確 だという。また、従業員のリポートも非常に好意的だったという。同社は、従業員などか ら寄せられる情報に依存している。このため、情報の信頼度を高めるために、自社の5人 の担当者によって確認作業を行っている。サイトを利用するには、自社企業の情報を提供 するのが前提条件となる。 また、掲載されている役職に応募することはできない。同社 は今後、広告によって収入を得ていく考えだ。【6 月 11 日】 4.電子商取引と IT サービス (1) 楽曲や携帯電話、住宅の購入およびアパートの賃貸にネットが与える影響力は、実際 の店員や友人による影響より小さい。ピュー・インターネット・アンド・アメリカン・ラ イフ・プロジェクト(PIALP)が報告した。同団体が、2007 年8〜9月に 2400 人の成人 (うち 1684 人がネット利用者)を対象に実施した調査では、不動産や携帯電話の購入時 に「ネットが決定的に大きな影響を与えた」と答えた割合は約 10%で、音楽では7%にと どまっていた。【5 月 23 日】 (2) ウォルマート・ストアーズは、無料のオンライン掲示(クラシファイド)サービスを 開始した。自社製品の販売に留まらず、消費者が希望する商品やサービスを提示できる。 取り扱う商品はおよそ 3000 万点におよび、中にはコンサートのチケットや抵当入りした 住宅の売買などが含まれている。サービスは、Oodle.com を通じて提供している。売り手、 買い手とともに Walmart.com を通じて無料で利用できる。サービスは現在、パイロット・ プログラムとして提供されているが、その期間などの詳細は明らかにされていない。同様 のサービスを提供する大手としては、e ベイ傘下のクレイグスリスト(Craigslist)など がある。【6 月 3 日】 (3)Amazon.com は、ビデオのストリーミング配信サービスを開始する予定であることを明 らかにした。アップルの i チューンズへ対抗し、デジタル配信事業の強化を図るのが狙い。 詳細については明らかになっていない。【5 月 29 日】 (4)ガソリン代の値上げが、商品価格や車の運転に影響を与える中、無駄な買い物を避けよ うとする消費者の間で、オンライン・クーポンの人気が高まっている。例えば、調査会社 ヒットワイズ(Hitwise)の調べによると、6月1日の週におけるクーポン・サービスを 提供するサイトへの訪問者数が前年同期比 56%増を示している。人気のサイトとしては、 Coupons.com, CouponMountain.com、Eversave.com、CouponMom.com、SmartSource.com な どがある。これらのサイトでは、大手チェーンの割引商品情報を掲載したり、印刷できる クーポンを提供している。また、ギフト券の安売りを提供するなどのサービスもある。 【6 月 15 日】 5.半導体とハードウェア技術 (1)2008 年第1四半期(1〜3月)における世界液晶テレビ市場でサムスン電子が 22.1% のシェア(売上高ベース)を占めて首位となった。次いで、ソニー(18.1%)、シャープ (10.1%)の順になっている。調査会社のディスプレイサーチが報告した。同社によると、 2008 年第1四半期中のテレビ全体の出荷台数は、前年同月比1%増の 4610 万台にとどま った。一方、売上高では、比較的高価格のフラットパネル・テレビの販売が反映され8% 増の 248 億ドルとなっている。テレビ全体のシェア(売上高ベース)を企業別に見ると、 1位がサムスン(20.8%)、次いで、ソニー(13.2%)、韓国 LG 電子(11.6%)、シャ ープ(7.3%)、松下電器産業(7.0%)となっている。【5 月 21 日】 (2)半導体大手オムニビジョン・テクノロジーズ(Omnivision Technologies)は、携帯電 話カメラの画質を最新デジタル・カメラ並みに向上させる画期的なイメージ・センサー技 術を開発した。現在の携帯電話カメラに搭載されているイメージ・センサーはほとんどが 3メガピクセル以下。しかし、オムニビジョンの開発した極小チップを使えば、画素数を 一気に増やすことができる。同社によると、3メガピクセル分のスペースで画素数を8メ ガピクセルまで引き上げることができるという。2009 年には9メガピクセルの高性能カメ ラ・フォンが登場する可能性があるという。技術開発の最大の課題は、大量の光を吸収で きる薄い半導体層をいかに開発するかだった。そこで同社は、台湾セミコンダクター・マ ニュファクチャリングと共同で取り組んだという。【5 月 28 日】 (3)半導体大手テキサス・インスツルメンツ(TI)のデジタル・シグナル・プロセッサ (DSP)事業が好調だ。特にバイオメトリクス(生体認証)に使用する DSP の需要が増え たのが奏功したようだ。同社の昨年における総売上 138 億ドルのうち、DSP 事業が 38%相 当の 52 億 4000 万ドルに達していた。同事業の中でも高性能 DSP 事業が伸びている。例え ば、直前四半期には、バイオメトリック・セキュリティ機器に使われる特殊 DSP の売り上 げが、前年同期比で 63%増加していた。TI はこれまで携帯電話市場を中心に、デジカメ や MP3 プレーヤ向けに DSP を出荷してきたが、最近は、高性能マルチコア DSP を軸に、医 療分野をはじめとする利益率の高い分野を強化している。【6 月 2 日】 (4)4月における世界半導体市場の売り上げは、前年同月比 5.9%増の 212 億 5000 万ドル となった。主パソコンや携帯端末向け半導体の需要が強かったが反映された格好となった。 米半導体工業会(SIA)が報告した。SIA によると、今年のパソコン販売は前年比で約 10%、携帯端末販売は約 12%の伸びが見込まれている。地域別に見ると、日本市場が 42 億 9000 万ドルで 11.3%増と好調。米州が 6.0%増の 34 億 6000 万ドル、欧州が 3.8%増の 34 億 2000 万ドル、アジア太平洋が 4.5%増の 100 億 8000 万ドルだった。【6 月 3 日】 6.その他(通信、政府・議会動向など) (1)米国国防高等研究事業局(DARPA)は、現在の移動ワイヤレス・ネットワークをさらに 高速化する技術を開発した。DARPA は、BAE システムズと共同で、ネットワークの効率を 従来のものに比べて5倍高めるプロトコルを開発。バージニア州で近く野外実験を行う予 定だ。新しいプロトコルは、データそのものを転送する前にデータを供述したコードを転 送する。受信先はそのコードを基にデータを再構築することができる。このため、使用す る帯域を少なくし、データ通信速度が低下するのを防ぐことができる。これは、圧縮ソフ トを使ってデータを圧縮・解答する原理に似ているという。プロトコルはすでに Wi-Fi ネ ットワーク上で試験され、その効率化が無事証明されている。実用化に対するロードマッ プなどは明らかになっていない。【5 月 21 日】 (2)家屋に配線されている電線を使ったネットワーク技術を推進する業界団体「ホームプラ グ電線連盟(HomePlug Powerline Alliance)」は、次世代の高速通信網規格「ホームプ ラグ・ネクストジェネレーション AV」の開発を進めている。すでに、米国電子電気学会 (IEEE)には申請済みだ。同規格は、現在、策定間近の IEEE1901 標準規格を利用する。 それによって、配線通信網のデータ転送速度を引き上げると同時に、HD-PLC という既存規 格に準拠する製品と同一通信網上で干渉せずに利用できる。予定では、最終草案を年内に まとめあげ、2009 年にはサンプル・チップの出荷にこぎ着ける。ホームプラグ電線連盟は、 新規格のデータ転送速度をどこまで引き上げるのか明言していないが、毎秒 400 メガビッ トを超えると見られている。現行規格「ホームプラグ AV」のデータ転送速度は毎秒 200 メ ガビット。【6 月 3 日】 (3)シスコシステムズ、インテル、サムスン電子、スプリント・ネクステル、アルカテル・ ルーセント、クリアワイヤーの6社は、公開特許同盟(OPA=Open Patent Alliance)を 結成し、ワイマックス(WiMax)に関する一連の特許使用権をまとめてライセンス提供す る制度を策定していく。障害となる特許使用料を低く抑えるのが狙い。同団体は、携帯電 話の第3世代(3G)技術のように各社が別々に特許使用料を課すような事態を避けたいと 考えている。3G では、クアルコムやノキア、エリクソンといった企業が特許使用料を別々 に課しており、それが技術の普及を妨げていると言われる。【6 月 10 日】 (4)ワイマックス(YMax)が販売する通信機器「マジックジャック(MagicJack)」が人気 を博している。同機器は、マッチ箱大の USB 接続機器で、コンピュータに差し込んで普通 の電話をつなげば、通常どおりに電話をかけたり受けたりできるようになるという。価格 は本体が 39.95 ドルで、購入後1年間は米国とカナダへの通話が無料、その後は1年間 19.95 ドルになる。現在、1日 8000〜9000 個が売れているという。6月末までには利用者 が 500 万人に達する見込みだ。【6 月 17 日】 (5)スプリント・ネクステルは、今年9月からメリーランド州ボルチモア市でワイマックス (WiMAX)サービスを開始する。サービスは、ワイマックスサービス事業者のクリアワイ ヤー(Clearwire)との合弁会社を通じて提供していく。また、スプリントは、今年末を めどにワシントン DC とシカゴでも同サービスを開始する。同社は、サービスを今年前半 に開始する予定だったが、過去数回にわたり延期してきた経緯がある。そのため、ボルチ モアが初めての導入となる。【6 月 19 日】
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