地図の歴史に関するウェブページの構築 Construction of Web Pages

地図の歴史に関するウェブページの構築
小口
高・高野誠二
Construction of Web Pages Summarizing the History of Cartography
Takashi OGUCHI, Seiji TAKANO
Abstract: One of the major backgrounds of GIS is cartography. Students learning GIS should also
learn basics of cartography. Cartography has been developed since long time ago, because even
ancient people produced maps. Therefore, learning the history of maps is an effective way of
understanding cartography. We have constructed web pages that list many components of the history
of maps. Some web links to the map images relevant to the components have also been provided.
Keywords: 地図学(cartography),地図(map),歴史(history),ウェブページ(web page),
GIS 教育(GIS education)
1. はじめに
GIS は比較的新しい学問分野であり,地理学や
ほか(1998)では,冒頭部で地図学に関する解説
情報学に関連した多数の既存分野を踏まえて発
地図学は,日本では地理学や測量学の一部とみ
展したという経緯がある.このため,GIS の教育
なされる傾向があるが,世界的には独立した学問
を効果的に行うためには,関連が強い古典的な学
分野と位置づけられることが多い.たとえば,地
問分野に関する教育も必要となる.たとえば地域
図学の国際組織である International Cartographic
論などの地理学の基礎論は,GIS の意義を理解し,
Association(ICA)は,50 年以上にわたって多様な
有効に活用するために重要である.学生が GIS を
活動を展開している.日本においても地図学の一
学ぶ前に,関連分野を既に学んでいる場合には問
層の普及がのぞまれ,それは GIS 教育の観点から
題がないが,そうでない場合には,GIS 教育の冒
も重要である.
頭部で関連分野の教育を行うことになる.
が行われている.
地図は古代から作成されており,プトレマイオ
GIS の背景となる諸分野の中で,とりわけ重要
スによる正距円錐図法を用いた地図作製のよう
なものは地図学(Cartography)である.たとえば,
に,地図学上の非常に重要な成果が古い時期に得
地図学の主要な課題である地図投影法の理解は,
られた場合も多い.したがって,地図の歴史は,
GIS のデータを利用する際に必須である.実際,
地図学の主要な要素とみなされる.
GIS に関する書籍の中で,地図学の内容が重視さ
以上の背景を考慮し,筆者らは地図の歴史を学
れている場合も多い.たとえば,日本で比較的早
ぶ際に有用なウェブページを構築することにし
期に出版された GIS 教育のための書籍である中村
た.具体的には,地図の歴史の中で生じた重要な
事項を年表の形式でまとめ,各事項に関連する地
小口:〒277-8568 千葉県柏市柏の葉 5-1-5
東京大学 空間情報科学研究センター
Center for Spatial Information Science, The University of Tokyo
5-1-5 Kashiwanoha Kashiwa-shi, Chiba, 277-8568
TEL: 04-7136-4301
Email: [email protected]
図の画像にリンクを張った.本稿では,ウェブペ
ージの作成過程と,作成されたページの概要につ
いて述べる.
2. ウェブページの作成過程
2.1. 収集した情報
2.3. 情報の記述方法
作成した年表では,
「世界」
(日本を除く)と「日
上記のように,今回作成したウェブページには, 本」のそれぞれについて,項目を年代順に並べた.
地図の歴史における重要事項を収録した.事項に
項目は以下のスタイルを用いて記述した.
は,地図や地図帳の出版,地球や土地の形状に関
1)西暦年.
わる観念,地図作成の技術や知識に関する理論の
2)タイトル:場所(国,都市,地域)
,人名(+
発表や書籍の出版,航海や探検,測量・天文観測・
職業などの付帯情報)
,地図・地図帳・書籍な
地籍調査などのプロジェクトが含まれる.
どの標題を含む.
3)項目の特徴や内容の簡単な説明.
2.2. 情報収集作業
上記のうち,国・都市・地域に関する情報は,
最初に,既にインターネット上にある地図の歴
地図や書籍類の出版された場所や,作成者の国籍
史に関する日本語のウェブページを検索・閲覧し
に基づいて記述したが,全ての項目について表記
た.その中から,内容が詳細で,ある程度の信頼
したわけではなく,現時点で確認できたもののみ
性が確保されていると思われる次の 3 つのウェブ
を記載した.人名についても,姓・名・ミドルネ
ページを選んだ.
ームのうち,確認できたものを記載した.また,
1)
「おもしろ地図と測量」 地図にかかる歴史年
地図や地図帳のタイトルは「 」でくくり,それ
表
http://www5a.biglobe.ne.jp/~kaempfer/otona/
map-history.htm
2)
「三角点の探訪」 日本の測量史年表
http://uenishi01k.at.infoseek.co.jp/s950nenpyou.html
3)
「地図と測量の歴史」
http://www17.plala.or.jp/plus51/S/chizu/801.html
以外の書籍のタイトルは『 』でくくった.各事
項の説明は,極力簡潔に記すようにした.
記載した情報について異説がある場合には,そ
の旨を併記した.年代などについて情報が不確か
だったり意見が分かれる場合には,
「?」を付記
するか,諸説を併記した.
これらのウェブページに記載された情報を基
また,一つのウェブページが長大にならないよ
本情報とみなし,さらに他のウェブページや地図
うに,年表を 13 世紀以前,14~16 世紀,17 世紀,
学に関する書籍などから入手した情報を追加し,
18 世紀,19 世紀以降の 5 つに区分し,それぞれを
仮の年表を作成した.次に,年表の個別の事項に
一つのウェブページに掲載した.なお,現時点で
ついて,インターネットでの一般的な検索を用い
は年表は作成途上であり,とくに 20 世紀以降につ
て複数の情報源にあたり,情報の確かさを確認し
いては候補となる項目が非常に多く,その絞り込
た.
みが終わっていないため,ごく少数の項目のみを
次に,各項目に対応する地図の画像のうち,イ
仮掲載している.
ンターネット上で公開されているものを検索し,
画像の解像度やウェブサイトの恒久性などの点
から最良と思われるものにリンクを貼った.ウェ
3. 結果
現時点までに作成された年表のうち,~13 世紀
ブページが対象となる地図に関連した情報のみ
に関するものと,18 世紀に関するものを表 1,2
で構成されている場合には,そのページの URL
に示した.下線が引かれた項目はリンクを持つも
をリンク先とした.一方,リンク先のページが複
のであり,ウェブページ上でクリックすると,ウ
数の地図や話題などで構成されている場合には,
ェブブラウザの別ウインドウが開いて地図画像
項目に対応する画像ファイルの URL をリンク先
等が表示される.ブラウザ上に表示された画像の
とした.なお,掲示板形式のサイトやブログサイ
例を図 1,2 に示した.各年表の右上には,別の時
トへのリンクは避けた.
代の年表へのリンクが置かれている.
表 1 地図の歴史年表(その 1: ~13 世紀)
地図の歴史 年表
(その 1: ~13 世紀)
14~16 世紀 17 世紀 18 世紀 19~世紀
年
25000 年前ころ
13000 年前ころまで
11000~12000 年前ころ
8200 年前ころ
5000 年前ころ
?
?~20 世紀初頭
BC2500~2300 年ころ
BC2000~1500 年ころ
BC1550~1085 年ころ
BC1500~1400 年ころ
BC1500~1300 年ころ
BC8 世紀ころ
BC700~550 年ころ
BC7 世紀ころ
BC6 世紀ころ
BC500 年ころ
BC430 年ころ
BC355 年ころまで
BC350 年ころ
BC350 年ころ
BC334~323 年
BC300 年ころ
BC3 世紀
BC239
BC230~195 年
BC170~130 年ころ
BC168~110 年ころ
BC150 または 110 年ころ
BC100 年ころ
BC1世紀
BC27~14 年
世界
チェコ パブロフ村で発見 マンモスの牙に描かれたパブロ
フ図
ウクライナ
キエフ市のキリロフ街で発見
マンモスの牙に描かれたキリロフ図
ロシア カニュフスク地区で発見 マンモスの骨に描かれた
メジュイリチ図
古代アナトリア(トルコ) チャタル・ヒュユックの壁画地図
カフカス マイコプ古墳で出土 銀製壷の線刻地図
エスキモーによる流木地図
マーシャル諸島 スティックチャート
メソポタミア 粘土板に描かれた初期アッカドのメソポタミ
ア地域地図
北イタリア 石刻のカモニカ渓谷集落図(ベトリナ地図)
エジプト パピルスに描かれたヌビアの金鉱地図
エジプト アメノフィス 3 世重臣の墓で発見の庭園図
メソポタミア 粘土板に描かれたニップール地区などの都市
図
粘土板に描かれたバビロニア世界地図 最古の世界地図
ギリシャ アナクシマンドロスによるギリシャ初の世界地図
現存せず
ギリシャ ホメロスによる『詩編』の世界観
ギリシャ ピタゴラス学派による地球球体説
ギリシャ ヘカタイオスによる世界地図 現存せず (概念
図)
ギリシャ ヘロドトスによる『歴史』の世界地図 現存せず
(概念図)
ギリシャ クニダスのユードクスによる世界最初の地球の大
きさの計算と天球儀の製作
ギリシャ アリストテレスによる『気象学』の地球球体説と
地球の大きさの計算
エジプト 石に彫刻したコスロモロジカルマップ(天文と地
球の世界観を示す地図)
マケドニア アレクサンダー大王による北インド遠征での歩
測者を使った距離推測
中国 銅板に描かれた地図 中国最古の地図
ギリシャ アルキメデスによる地球の大きさの計算
中国の甘粛省天水市放馬灘 秦代古墓出土の松板に描かれた
地図
エジプト エラトステネスの地球の大きさの計算と世界地図
(概念図)
中国 馬王堆 3 号墳墓出土の絹布に描かれた與地図
ギリシャ ヒッパルコスによる天文観測での経緯度測定の提
案
ギリシャ クラテスによる世界対称説(対蹠論)と地球儀の製
作 (概念図)
ギリシャ ポセイドニオスによる地球の大きさの計算
ローマ帝国 アウグストゥス帝の命を受けた将軍アグリッパ
による最初の道路地図 現存のものは 3 世紀ころに作られ
11~12 世紀頃に写本されたもの
ローマ帝国 アグリッパによる世界図。ヨーロッパ、アジア、
アフリカに分けた最初のものとされるが現存せず
日本
(表 1,つづき)
BC63~AD24 年
1 世紀
150 年ころ
250 年ころ
391 年
400 年ころまで
440 年
450 年ころ
540 または 550 年ころ
543 年以降
6 世紀
630 年ころ
646 年
738 年
759 年
776 年
805 年
820 年ころ
1000 年ころ
11 世紀頃
1136 年
1154 年
1155 年
1193 年
1271~1295 年
1279 年
1280 年ころ
1290 または 1310 年ころ
ローマ帝国 ストラボンによる地理書に、エラトステネスに
よる世界地図の引用
中国 漢の張衡による直交一定距離方眼の座標の地図への応
用(方格図)
エジプト プトレマイオス(トレミー)による『アルマゲスト』
「地理学入門』の世界図 最初に経緯線を使用した正距円錐
図法を考案
中国 司空(建設省長官)の裴秀による地図作成の 6 条
『日本書紀』 仲哀天皇 9 年 10 月の条に、新羅王
が日本に降伏したしるしに地図と戸籍を差し出し
たと記述。日本最古の地図に関する記述
フランス 南部のオランジュで測量した、ローマ時代の測量
原図を彫刻した大理石の破片。ローマ時代に大規模な土地区
画調査が行われる
中国 中国最初の天球儀
ローマ帝国 軍用道路地図のポイティンガー図
エジプト コスマスによる地球球体説を否定した『キリスト
教的地誌』
ヨルダン マダバの聖ジョージ教会のモザイク地図
倉吉市 上神 48 号古墳の壁画
セビリヤ イシドールによる『語源誌』にTO地図を記載
『日本書紀』 朝廷が諸国の国司に命じて地図を作
る
『続日本紀』 聖武天皇が諸国に命じて地図を作る
東大寺正倉院所蔵の「東大寺領懇田図」 日本最古
の地図、世界最古の地籍図
スペイン ベネディクト派修道士ベアトゥスによる『聖ヨハ
ネ黙示録』注釈書の世界地図
「延暦二十四年改正輿地図」 この 805 年のものを
江戸時代の写筆したのが行基図形式の日本地図の
最古とされるが異説もあり
アラビア アル・フワリズミによる『地理書』と地球の大き
さの計算
ノルウェー人(ヴァイキング)によるグリーンランドを経由
した北アメリカ東岸への到達
中国 磁石の発明(宋の沈括による『夢渓筆談』
)
中国 唐代の賈耽による「海内華夷図」を宗代に西安碑林の
石碑に刻んだ中国全土の「禹跡図」
アラビア アル・イドリーシーによる円形の世界地図
現存する世界最古の印刷地図「地理之図」
極心平射図法の円形星図
イタリアのベネチア マルコ・ポーロによる東方旅行と『東
方見分録』
ペルシャ アルウルダイが現存する世界最古の天球儀を作成
イギリス ハーディンガムの僧侶リチャードによる羊皮紙に
描かれたヘレフォード図。マッパ・ムンディの代表
最古のポルトラノ海図、通称ピサ図
表 2 地図の歴史年表(その 4: 18 世紀)
地図の歴史 年表
(その 4: 18 世紀)
~13 世紀 14~16 世紀 17 世紀 19~世紀
年
1700 年
1701 年
1701 年
1708 年
1710 年
1717 年
世界
ジローム・ドゥリールによる世界地図 両半球型の平射方
位図法
イギリス エドモンド・ハレーによる現存する等値線図と
して世界初の大西洋の磁針偏角図
イタリアのベネチア コロネリによる球儀の製作と、球儀
の子午線帯の印刷地図帳「球儀の本」
石川流宣による「万国総界図」
浪華子による「南瞻部洲萬国掌菓之図」
中国 清の康煕帝の委嘱でフランスのイエズス会宣教師に
よる中国全土の実測地図「皇輿全覧図」 1753 年に宣教師
の送った資料をもとにブルギニョーヌ・ダンヴィルによる
中国地図
1717 年
1718 年
1720 年
1720 年頃
1725 年
1728 年
1729 年
1734 年
1736 年
1737 年
1737 年
1740 年
1740 年
細井広沢による『秘伝地域圖法大全書』 日本で初
めて測量という語が登場
フランス カッシニ父子による子午線測量が完成 地球は
偏長楕円体と結論
イギリス エマニュエル・ボーエンによるイングランドと
ウェールズのポケットサイズ道路地図
ジョナサン・シッソンによる望遠鏡付き経緯儀の発明
江戸幕府が建部賢弘に命じた「享保日本図」 元禄
国絵図の改訂 高山の山頂などを目標に磁石などを
用い交会法による正確な図が完成したと思われる
が原本が現存せず
ロシア ベーリングによるベーリング海峡の発見
オランダ 技師クルクヴァイウス(クルキウス)による等深線
を用いた地図作成 最初の等値線使用の地図
ロシア キリロフによる「ロシア帝国全図」
ピエール・ブーゲーによる重力異常の発見
北島見信による「紅毛天地二図贅説(せいせつ)
」
我が国最初の地理書の翻訳 星図や地図の解説
フランス モーペルテュイによる「天体形状論」 地球は
偏平楕円体を証明 北極圏で基線測量を行う
琉球 元文検地に図根点としてハル石を使用
フランス ジャックの息子のセザール・フランソア・カッ
シーニによる偏長楕円説の原因となった弧長の再測量
1744 年
1745 年
1745 年
1747 年
1749 年
1751 年
1754 年
1755 年
1761 年
日本
徳川吉宗による「簡天儀」の考案 神田に天文台を
作る
フランス 地理学者ジローム・ドリールによるドリール図
法(2標準緯線円錐図法)の発明
フランス セザール・フランソワ・カッシーニによるカッ
シーニ図法の発明
フランス セザール・フランソア・カッシーニによる地形
図の作製開始 1818 年完成
フランス ミレ・ドゥ・ミュロウによる等高線の地形表現
ディグスによる平板とアリダートで地図作成を行なう平板
測量を報告
森幸安による「日本分野図」 経緯線を引いた地図
フィリップによる「中国地図」
イギリス ハリソンによる航海用クリノメータの発明 1773
年に英国政府から賞金を受ける
(表 2,つづき)
1766 年
1767 年
1771 年
1772 年
1776 年
イギリス ジェームス・クックによるエンディバー号での
探検出発 オーストラリアの発見
イギリス 海図の本初子午線にグリニッジ子午線採用
本木良永による「阿蘭陀地図略説」 ヨハン・ヒュ
ブネルの地理書、地図用法の部分訳
ヨーハン・ハインリッヒ・ランベルトによる横メルカトル
図法、ランベルト正角円錐図法、正積方位図法の考案
イギリス ジェームス・クックによるハワイ諸島からベー
リング海峡を越え北氷洋への航海。帰途ハワイ島で原住民
に襲撃され死亡
1779 年
長久保赤水による日本最初の経緯度線入り地図「改
正日本輿地路程全図」
1783 年
1785 年
1786 年
イギリス 三角測量開始
1787 年
イギリス 王立協会のウィリアム・ロイによるパリ、グリ
ニッジ間の三角測量
1788 年
1790 年
1791 年
1791 年
1791 年
長久保赤水による「改正地球万国全図」
林子平による「蝦夷国全図」 我が国初の刊行され
た北海道図
長久保赤水による「地球万国山海輿地全図説」
長久保赤水による「蝦夷松前図」
イギリス 陸地測量局設立
フランス 学士院科学アカデミーが地球の子午線第 1 象限
弧長の 1/1,000 万を 1 メートルと定義
フランス 陸軍測量技師が等高線による地図試作を行い、
ジャン・ルイ・ジュバン・トリエルが地形図で等高線を用
いる
1792 年
司馬江漢による日本初の銅版印刷地図「地球全図」
東西両半球の図
ロシア 使節ラックスマンが通商を求めて根室に来
航 蝦夷地調査の重要性高まる
古川古松軒による「亜細亜一大洲東極之大略図」伊
勢の漂民大黒屋幸太夫の見取り図に基づく
1792 年
1795 年
1795 年
ドイツ ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウスによる最
小二乗法の発見
1796 年
1798 年
橋本宗吉(直政)による「喎蘭新訳地球全図」 両
半球図の周りに『隋書』
,
『三才図会』
,
『泰西輿地図
説』
(朽木昌綱)
,
『紅毛雑話』
(森島中良)などに依
拠する地誌的概説 司馬江漢の「地球全図」よりも
古い世界地図に依拠
ドイツ ゼネフィルダーによる石版印刷術の発明 オフセ
ット平版の基礎
1798 年
1799 年
ドイツのザクセン 地形測量技師ヨハン・ゲオルク・レー
マンによるケバ表現の体系化
18 世紀
マードックによる正距円錐図法の発明
18 世紀後半
フランス 地理学者リゴベール・ボンヌによるボンヌ図法
の発明
18 世紀後半~19 世紀初頭 ラグランジュによる球状図法の発明
最上徳内と近藤重蔵による蝦夷地から千島への探
検
図 1 石に彫刻したコスロモロジカルマップ(BC350 年頃,エジプト,表 1 参照)
図 2 司馬江漢による日本初の銅版印刷地図「地球全図」
(1792 年,表 2 参照)
表 3 は,現時点で年表に掲載されている項目の
数を,時代別に示したものである.日本では前半
ェブページが正式公開を経て,実際の教育の場で
広く活用されることが望まれる.
の項目が非常に少ないが,西洋の影響を受け始め
今後,年表に掲載するデータを増やす必要があ
た 16 世紀以降に数が急増している.一方,世界で
る.まずは,20 世紀以降に関する年表の整備が早
は紀元前に多くの項目があり,その後は一旦減少
急に必要である.同時に,データの信頼度につい
するが,大航海時代に入った 15 世紀からは再び増
て年表に何らかの表記をしたいと考えている.筆
加している.これらの時代による変化は,歴史的
者らは個々の事項の確実度を複数のウェブサイ
な背景から見て妥当と考えられ,今回の項目の選
トや書籍を閲覧して調査しており,その内容を手
定が全体として適切に行われたことを示唆して
元には記録してあるが,今のところ年表には反映
いる.
できていない.さらに,地図学に関する書籍や資
リンク付きの項目の数は,全体としては項目の
数に対応して増減しているが,対応は必ずしも単
料で未入手のものもかなりあるため,それらの入
手と調査も必要である.
純ではない.たとえば世界についてみると,16 世
また,地図の画像については海外のサイトに掲
紀についてはリンクを持つ項目の比率が全体の
載されたものも適宜使用したが,項目の収集作業
半分弱であるが,17~19 世紀については 1/4 未
や確実度に関する調査は,基本的には日本語のサ
満になっている.これは,16 世紀には地図帳の出
イトのみを用いて行っている.一方,英語などの
版や地球儀の作成が相次ぎ,それらの画像がイン
主要言語によるサイト全体の情報量は,日本語の
ターネットで多く公開されていることを反映し
サイト全体よりもかなり多いはずである.この点
ている.
を考慮し,今後は海外のサイトを活用した資料の
収集や確認を行う予定である.
表 3 時代による項目数の変化
世界 うちリンク付 日本 うちリンク付
紀元前
33
13
0
0
5世紀まで
6
2
1
0
10世紀まで
5
3
5
1
13世紀まで 10
4
0
0
14世紀
5
2
2
1
15世紀
17
6
1
0
16世紀
44
20
6
2
17世紀
25
6
25
16
18世紀
35
3
29
11
19世紀
36
6
41
16
20世紀以降
4
未完了
18
3(未完了)
本ウェブページの公開中に,リンクが張られた
ウェブページや画像の URL などが変化し,リンク
が切れてしまう可能性もある.したがって,白石
ほか(2008)が導入したような,リンク切れを自
動的に管理者に通知するシステムを搭載するこ
とが望ましい.この点も今後の検討課題である.
謝辞
本研究は,科学研究費補助金基盤研究(A)課
題番号 17202023(研究代表者:村山祐司)の助成
4. おわりに
上記のように,本ウェブページはまだ作成途上
を受けている.
にあり,正式には公開していないが,仮公開を下
参考文献
白石 陽・小口 高・藤稿亜矢子・岡部篤行・齊
藤忠光(2008)デジタル地図学博物館ポータ
ルサイトのプロトタイプの構築と改良.日本
地理学会国立地図学博物館設立推進員会
(編)
「デジタル地図学博物館の形態と運営,
活用のあり方」シンポジウム報告書,27-34.
記の URL で行っている.
http://ogu.csis.u-tokyo.ac.jp/temp/maphist/
本ウェブページは,地図の歴史に関する既存の
年表とは異なり,多数の地図画像へのリンクを持
つため,地図学の学習に有効と考えられる.本ウ
中村和郎・ 寄藤 昂・村山祐司(編)
(1998)
「地
理情報システムを学ぶ」古今書院.