ビデオによるビジネス価値の創出

ビデオによるビジネス価値 の創出
Maribel Lopez 著
2 0 1 2 年1 2 月
Lopez Research LLC
URL: www.lopezresearch.com
電話: (866)-849-5750
E メール: [email protected]
モバイル技術およびクラウドコンピューティング技術の浸透がビデオの普及を促進
モバイル技術およびクラウドコンピューティング技術の浸透は、2013 年およびそれ以降にビデオサービスの急速な普及を促進
するでしょう。より高品質なモバイルハンドセットやより安価なモバイル データ プランは、モバイルの爆発的な普及を促進する
要因となっています。米国において、モバイルデバイスは、人口の 88% にまで普及しており、そのほとんどが複数の接続され
たデバイスを活用しています。また、それらのデバイスには、あらゆる機能が搭載されるようになりました。Nielsen の調査によ
ると、2012 年 の第 2 四半期において、米国の携帯電話加入者の半数以上がスマートフォンを使用するユーザーです。
Apple によるタブレットの販売台数は、2 年間で 6700 万台に上っています。スマートフォンおよびタブレットの普及が引き
続き進めば、より多くの消費者がビデオ対応のデバイスを手にすることになります。クラウドコンピューティングの浸透により、
企業がデータを保存および処理する方法、さらには従業員がどこから、どのようにアプリケーションやサービスをアクセスするかが
変わりました。モバイルの普及および新しいクラウド コンピューティング ソリューションの登場によるビデオへの影響は以下のとお
りです。
• ユビキタスに利用でき、さまざまなデバイスに対応: ビデオは、会議室またはデスクトップコンピュータでの使用に留まらず、
スマートフォンやタブレットなどにより、会社、自宅、さらにはホテルや空港など、どこからでもアクセスできるようになりました。
これらのデバイスは、他のユーザーのデバイスの品質に影響を与えることなく、デバイスで使用可能な最高の品質をユーザー
に提供します。
• アプリケーションやサービスに統合: コラボレーションは、簡単なファイル共有から、ビデオ会議および Web 会議を含む
豊かなリアルタイムコミュニケーションヘと進化しています。ビデオはコラボレーションに使用されているだけではなく、顧客関
係管理 (CRM)、企業資源管理 (ERP)、および人材管理 (HCM) などの業務アプリケーションに統合されています。さら
に、ショッピングやカスタマーサポートなどのために、ビデオはモバイルアプリケーションにも統合されています。
• 企業の境界を越えて使用: 今までの企業用ビデオは、社内または同一のビデオ ソリューション プロバイダーを使用する
企業間の独自仕様のビデオ通話に限られていました。サプライチェーンと連絡を取りたくても、その企業が異なるビデオプロバ
イダーを使用している場合は、ビデオ通話を行うことはできませんでした。クラウド技術の進展および VaaS (Video as a
Service) ソリューションの登場により、この制限は解消されつつあります。VaaS では、ビデオ会議およびアドホックのビデオ
通話をサービスとして利用し、使用ごとまたは月単位に料金が請求されます。クラウド常駐ビデオサービスは、異なるビデオ
技術を統合し、企業が顧客、パートナー企業、およびサプライヤーと安全に相互接続できるようにします。
ビデオソリューションで過去に経験した技術問題のほとんどは、クラウド常駐サービスまたは相互運用性規格に準拠した最新
の構内ツールによって解決することができます。
ビデオによる業務プロセスの変革
会議室用ビデオ会議システムおよびテレプレゼンスシステムによってコストを削減できることは、多くの大企業にとって導入を
促進する要因となりますが、モビリティ技術の進展は、ビデオサービスの新たな価値提案を実現します。モバイルビデオが広く
普及することにより、ビデオのユースケースは変わります。IT リーダーおよびビジネスリーダーは、業務プロセスを向上するために
ビデオサービスを使用するようになります。ビデオは、フェース to フェースの会議の域を超えて拡張されています。会社の業務
プロセスにビジュアル要素を統合する「Video on the go」の概念が浸透し始めています。たとえば、保険会社は、ビデオソリ
ューションを使用して被災地の状況をキャプチャーすることができます。また、フィールド技術者は、現場で機器を修理するプ
ロセスをキャプチャーすることができます。
Lopez Research LLC
W: www.lopezresearch.com
T: (866) 849-5750
E: [email protected]
業務プロセスに変革をもたらすには、ほぼリアルタイムで価値のある洞察を提供する必要があります。企業は、モバイル、クラ
ウド、およびビデオ技術を統合して、Lopez Research が定義する「Right-time Experience」 (RTE) を提供するように
なるでしょう。RTE とは、必要な時に従業員または顧客に適切な情報を提供する拡張された業務プロセスまたはサービス
です。業務プロセス内でビデオを活用することによって、コミュニケーションの提供方法と影響力の向上、およびそれと同時に
リアルタイムデータのキャプチャーと共有を可能にする RTE を実現することができます。ビデオにより、さまざまな方法で業務
プロセスを向上し RTE を実現することができますが、以下に最も推奨するビデオ対応プロセスの 3 つのカテゴリーを示します
(図 1 を参照)。
• ケア - モバイル技術およびビデオ技術により、さまざまな産業でカスタマーケアを向上することが可能になります。たとえば、
大手医療機関では、患者のケアを向上するためにビデオを活用しています。たとえば、Orlando Health では、モバイル技
術およびビデオ技術を組み合わせて患者のケアの向上に役立てています。神経科医は、タブレットを使用して患者のベッド
のそばにあるカメラを操作し、必要な場所から遠隔診療を行っています。Washington Hospital Center では、救急車で
患者を搬送しているときなど、危機的な状況において使用できるリアルタイム ビデオ ストリームを提供するモバイルアプリケー
ションを開発およびカスタマイズしました。また、医師がタブレット上でトレーニングビデオを使用し、患者に治療に関する教育
を提供しています。住宅ローンや株式のブローカーなどを含むその他の専門職では、ビデオを使用して、支社の無い地域に
専門家によるサービスを提供することができます。
• コマース (商業): Tesco などの小売業者では、モバイル技術およびビデオ技術を使用して、商業、カスタマーケア、および
従業員の最適化で Right-time Experience を実現しています。Tesco は、店舗に農産物の棚をモニタリングするための「ブロ
ッコリーカメラ」を設置しています。必要なときに農産物を補充するよう従業員が通知されます。それによって、在庫の回転率を
向上し、スタッフの効率を高めることができます。また、新しいビデオ分析技術により、カメラの前にいる顧客の性別、年齢、およ
び滞在時間を特定し、広告を自動的に変更することもできるようになります。
Lopez Research LLC
W: www.lopezresearch.com
T: (866) 849-5750
E: [email protected]
• コミュニケーション: ビデオは、社内および企業間のコラボレーションに引き続き活用されることが予想されますが、従業員と
顧客との間のコミュニケーションにも変化をもたらします。たとえば、トルコの Ziraat Bank では、セルフサービス店舗のネットワ
ークを設置し、ビデオ会議により顧客を銀行のコンタクトセンターにいる窓口係に接続しています。Ziraat によると、窓口係は
通常 1 日あたり 76 件の取引を処理できますが、ビデオ端末を使用することにより 140 件の取引を処理することが可能に
なります。将来は、ビデオと拡張現実ブラウザ (Augmented Reality Browser) を使用して、モバイルデバイスのカメラで
映し出した物体の映像の上にデジタルデータを重ねて表示することが可能になります。たとえば、フィールド技術者がタブレッ
トのカメラを機器の上にかざすと、機器の保守記録、およびよくある問題の解決方法に関するビデオチュートリアルへのリンク
や専門家に連絡を取るためのリンクがタブレット上に表示されるようにすることができます。
ビデオを活用するための準備 - 3 つのステップ
上記は、銀行、小売、医療、政府などにおいて、ビデオを業務プロセスに活用しているほんの一例にすぎません。ビデオは、
あらゆる産業において、必要な時に適切なサービスを提供する Right-time Experience を実現するために使用できます。
企業は、幅広いデバイスによるビデオサービスを管理し、サポートするためのビデオ戦略を策定する必要があります。それには、
ビデオをどのアプリケーションまたはプロセスに活用できるか、企業間で安全なビデオ通信をどのように実現できるかなどを検討
する必要があります。ビジネスリーダーには、以下の 3 つのステップを含む計画に従ってビデオ戦略を策定することを推奨します
(図 2 を参照)。
ステップ 1. ビデオを活用できるプロセスを定義: 企業のビデオ戦略を成功させるには、業務プロセスでビデオをどのように
活用することによって業績を高めることができるかを評価する必要があります。ほとんどの業務プロセスは、ビデオの使用を
考慮して設計されていないので、ビデオを活用し、かつモバイルデバイスへの制限を軽減できるようにプロセスを再設計する
必要があります。コミュニケーションおよびリアルタイムのデータキャプチャーを活用できる業務フローやアプリケーションから開始
することが論理的です。企業は、アプリケーションの活用を検討する際に、それらのアプリケーションをビデオ対応にするかどうか
を決定できます。CXO は、業務プロセスおよびビデオソリューションをあらゆるデバイス、場所、およびネットワークで使用できる
ようにする必要があります。
ステップ 2. Video as a Service (VaaS) を検討: 規模を問わず、すべての企業は、セキュアで、かつ相互運用性が高く、
高い音声品質を提供するエンタープライズクラスのソリューションを必要としています。現在、企業は、構内ベースのビデオサー
ビスに加え、クラウドベースのビデオサービスを利用できるようになりました。一部の企業は、すでに投資を行っており、全体を
管理でき、高いセキュリティと信頼性を提供できるという利点もあるので、構内ベースのソリューションを引き続き使用するでし
ょう。その他の企業 (特に中小企業) は、月ごともしくは利用ごとの料金を支払うことによって使用できるので、クラウドサービス
を利用するでしょう。
ステップ 3. 新たなユースケースの作成: 企業は、ビデオを活用することによって、カスタマーサービスをどのように向上できるか、
企業の認知度をどのように高められるか、およびより高度なビジネスインテリジェンスをどのように提供できるかを検討する必要が
あります。たとえば、小売業者は、ビデオ分析技術を使用して、店舗内の買い物客の行動を把握したり、商品のディスプレイ
などが購買を促進しているかどうかを確認したりすることができます。ロシアの最高裁判所では、罪状認否手続きや宣誓証言
にビデオを活用しています。それにより、裁判所は、1 日あたり 800 の刑事事件の審理を実施し、刑務所からの移送費で年
間 5000 万米ドルを節約することができます。
Lopez Research LLC
W: www.lopezresearch.com
T: (866) 849-5750
E: [email protected]
まとめ
ビデオをモバイル技術およびクラウドコンピューティング技術 (またはそのいずれか) と組み合わせることにより、必要なときに
効率的かつ効果的なコミュニケーションを可能にする Right-time Experience を実現することができます。ビデオは、企業と
顧客、従業員、およびパートナー企業との間のコミュニケーションを変革します。ビデオへの移行に前向きに対応するために、
IT 部門のリーダーおよびビジネスリーダーは、さまざまなモバイルプラットフォームでビデオを活用することによって向上できる業
務プロセスを特定する必要があります。IT 部門は、複数のプラットフォームへの対応および相互運用性に基づいてビデオソリ
ューションを評価する必要があります。さらに、IT 部門は、クラウドベースのビデオソリューションと構内ベースのビデオソリューシ
ョンを比較調査し、さまざまなビデオ ソリューション プロバイダーおよびモバイルプラットフォームと相互運用可能なビデオソリュー
ションを選択する必要があります。ビデオはビジネス世界に無限の可能性を提供します。ビジネスリーダーの役割は、ビデオの
使用によりコミュニケーションを向上する方法、およびこの技術を活用して最大のメリット得る方法を見つけることです。
Lopez Research LLC
W: www.lopezresearch.com
T: (866) 849-5750
E: [email protected]
ALL RIGHTS RESERVED.
Lopez Research LLC
本書は、細心の注意を払って作成、用意、および出版されました。本書には誤りがないことを確認しましたが、誤りが生じる
可能性があります。誤りが見つかった場合、当社はあらゆる努力を払って誤りを訂正します。出版社は、本書に含まれる
資料および情報の使用によって生じた結果について責任を負いません。書評や記事などでの簡単な抜粋を除き、方法、
形態の如何を問わず、本書のいかなる部分も Lopez Research の書面による明示的な許可無しで複製することを禁じま
す。本書は再版可能です。すべての質問は、[email protected] または (866) 849-5750 までお寄せください。
Lopez Research について
Lopez Research は、2008 年に設立され、モバイル技術、ビッグデータ、およびクラウドコンピューティングにより「Right-time
Experience」を実現する方法を専門的に研究する市場調査および戦略的コンサルティング会社です。会社の使命は、
上記のトレンドの進化を理解してソートリーダシップを提供し、成功する市場戦略を構築するための支援を企業と技術ベン
ダーの両方に提供することです。当社は、業界への直接的な関与および取引先とのコミュニケーションにより企業向け市場に
関する認識を深めています。Lopez Research は、アンケート調査に基づいた研究と予測解析を使用して最新トレンドに
関する洞察を得ています。ビジネスおよび技術の最新のトレンド、音声およびデータネットワーキング技術、ベンダーおよびサー
ビスプロバイダーの選定に関する経験を有する Lopez Research は、ビジネスリーダーシップおよび技術の導入に役立つ
専門知識を取引先および読者に提供します。
連絡先情報
2269 Chestnut Street #202
San Francisco, CA 94123
電話: 866-849-5750
著者のメールアドレス: [email protected]
www.lopezresearch.com
「ビデオによりビジネス価値を創出」
Copyright Lopez Research LLC
6