中東白物家電市場調査 概要

中東白物家電市場調査 概要
1.中東諸国のマクロ市場動向
3.各国における白物家電の消費性向
トルコは7,770万人と豊富な人口を有し、国内需要も底堅く、白物家電市場は伸長傾向にある。
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)は、単独での市場規模はトルコに劣るものの、1人あたりGDPはトルコより
高く、潜在的購買力は高いと想定される。
【人口】
トルコは7,770万人、サウジアラビア、UAEはそれぞれ2,940万人、945万人(各2014年)で、今後各国とも安定的に成長する
見込み。
【GDP成長率】
今後、各国の実質GDP成長率は、トルコは年平均2~4% 、サウジアラビア、UAEに関しては、2015年以降の油価下落により
2016年1.2% 、 2017年1.9%で推移する見込み。
【関税】
トルコはEUと関税同盟があり、原則無関税、さらにEU以外に24か国とFTAを締結。サウジアラビア、UAEはGCC諸国内無
関税(GCC:湾岸協力理事会-サウジアラビア、UAE 、バーレーン、カタール等中東諸国6か国が加盟)。
【労働環境】
トルコは原則として外国人1人につき現地人労働者5人の雇用義務があり、サウジアラビアも「サウダイゼーション」と呼ばれる
一連のサウジ人雇用義務の強化策を実施している。UAEも自国民の雇用義務が存在するが、当該規制の運用は緩やかで
ある。
表1 中東主要国の概要
国名
人口
トルコ
7,770万人
サウジ
アラビア
2,940万人
UAE
945万人
国土
780,576㎡
(日本の約2倍)
2,150,000㎡
(日本の約5.7倍)
83,600㎡
(日本の約1/4)
1人当たり
GDP
GDP
通貨
為替レート
言語
8,001億ドル
10,404ドル
トルコ・リラ
1リラ
=50.93円
トルコ語
7,525億ドル
24,454ドル
サウジアラ
ビア・リヤル
1リヤル
=29.06円
アラビア語、
英語
ディルハム
1ディルハム
=29.54円
アラビア語
4,016億ドル
42,522ドル
出所)外務省ウェブサイト、その他公開情報をもとにNRI作成、データは2014年
2.中東諸国の白物家電市場(調査対象5品目)の概況
トルコは、過去5年間で順調に伸長している。
表2 中東主要国の白物家電市場規模
サウジアラビア、UAEは、2011年までは安定的に成長継続
しており、2011年以降は堅調な伸長がみられる。
白物家電
市場規模
【流通構造】
白物家電市場規模 (千台)
(百万現地通貨)
ルーム
エアコン
表3 中東主要国の消費性向
国名
トルコ
サウジ
アラビア
・
UAE
家の特徴
使用環境
家電に求める
要素・ブランド認知
省エネ意識
• 120~200㎡の集合住宅
• 主婦自らが使う
• 購入したら修理でき
なくなるまで使う
• シンプルで使いやすい機能、耐久
• サウジアラビア、
性、容量、メンテナンス体制を重視
UAEより高い
• 欧州(特にドイツ)ブランドが高評価
• 電気代高騰を
• 現地ブランドにも安定した信頼あり
背景に、近年
• 日系ブランドの認知度が非常に低
高まりつつある
い
• 現地人富裕層:
Villa(100~200m四方の
敷地内に建てられた個人
住宅、サウジアラビアは
200㎡以上の集合住宅の
ケースも多い)
• 高所得の外国人:100~200㎡
の高層集合住宅
• メイドに使い方を教
えて使わせることが
多い
• サウジアラビアは
UAEよりも主婦自ら
が使うことが多い
• 使用期間は数年~
10年程度
• シンプルで使いやすい機能、耐久
性、容量、メンテナンス体制を重視
• 高級品に対するマインドが低い
• 韓国ブランドの評価が高まっている
• 日系ブランドについては「最新の商
品が置かれていない」、「最近余り
見ない」と捉えている
• 相対的に
低い
出所)現地調査をもとにNRI作成
4.中東白物家電市場の将来展望と日系メーカーの方向性
【地域戦略】
各国を単独の市場と捉えず、欧州、北アフリカ、中央アジアも含めた広域市場を面的に押えるための橋頭堡と捉え、
特に、トルコは上記広域市場に対応する拠点、サウジアラビア、UAEはGCC諸国向けの拠点として有効と考える。
トルコは、2000年代前半まで GDPが低く、ヨーロッパ文化の影響を受け現地および欧州メーカーのプレゼンスが高かった
ため、日本企業が注力していなかった市場であるが、人口の多さ、GDPの高さから、日系メーカーが市場参入・伸長する
余地が残っていると考える。
洗濯機
16,751
977
2,917
1,975
8,268
1,063
609
592
UAEではハイパーマーケット等の近代小売店が主流である。
2,845
335
232
202
トルコ
UAE
小売(B2C)市場では、トルコへの市場参入初期は代理店経由販売も視野に入れ、ブランド認知度向上、ネットワーク構築
が進んだ後、ブランドショップを展開することが効果的である。サウジアラビア、UAEでは代理店活用に加え、大型家電
小売店への直接営業を行うことが必要である。
高級機種販売とブランド浸透のために、B2Bルートの中でも、建設・設計事務所向けの営業が有効である。
冷蔵庫
サウジアラビアでも伝統的小売店での販売が約7割を占めるが、 サウジ
近年、大型の家電小売専門店等の近代小売店も伸長している。 アラビア
各国ともビルトイン市場を狙った高級家電販売等、B2B市場も
重要である。
省エネ意識は、トルコは全般的にサウジアラビア、UAEより高いと推測される。
【流通戦略】
【家電市場規模】
トルコではブランドショップ等の伝統的小売店での販売が7割と
主力であり、量販店を通じた販売は限定的である。
シンプルな機能、耐久性、容量、メンテナンス体制を重視する傾向にあり、複雑な機能、デザイン等は重視されない。
出所)Euromonitorデータより作成、 データは2014年
【商品戦略】
最高級機種は日本国内向けと同レベルの製品を日本から投入、他の機種は、アジアの生産拠点を活用して、
中東向けに最小限の仕様変更を行い、フルラインナップで投入できる体制を整えることが効果的である。
表4 中東主要国における流通戦略
市場
欧州、北アフリカ・中央
アジア広域市場
最高級機種
【競合環境】
B2C
トルコでは、ルームエアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジについてはArcelik等現地メーカーがマーケットシェアの約半分を
占める。Arcelikは高級機種から下位機種までを、Arcelikの廉価ブランドであるBEKOは中級機種から下位機種までを押え
ている。高級機種ゾーンでは欧州メーカーも多くみられる。中でも、超高級機種はMiele(独)が、その他高級機種はBSH
(独)の力が強い。日系メーカーのシェアは非常に限られている。
サウジアラビア、UAEでは、韓国メーカーのLG 、 Samsungのシェアが高く、特に近年はSamsungがシェアを伸ばしている。
トルコにおいてMieleが押えているような超高級機種の市場はほとんど存在しない。下位機種は中国メーカーも一定のシェア
を確保している。またUAEではGeneral、サウジアラビアではZamir Airconditionerという現地メーカーが、エアコンにおいて
一定のシェアを確保している。
流通戦略
トルコ
• メーカーのブランドショップを立ち上げ
る(複数メーカー共同で「ジャパンブラ
ンドショップ」も視野に入れる)
サウジ
アラビア
・UAE
• 販売を代理店に任せきらず、大規模
小売店にメーカーが直接営業する
赤道
現地向け
仕様変更機種
B2B
• 富裕層向け住宅を建築する建設・設
計事業者を対象とする
• エアコンを核に、日本ブランドの完成
品を納入して認知度を上げ、他品目
(大型家電)の営業力も高める