草花と野鳥 これは「NPO・平城宮跡サポートネットワーク」の機関紙 「天平のひろば」に春・夏・秋・冬それぞれの季節に見られる草 花や樹の花、野鳥を「世界遺産を彩る脇役たち」と題して掲載さ れたものをまとめ再編集したものです。 其々の寄稿は以下の方たちです。 長期にわたり有難うござい ました。 平城宮跡の野草 平城宮跡隠れファン 平城宮跡野鳥 宮跡の野鳥を愛する会 典B 井 上 英 子 山 縣 正 幸 曽 我 宜 規 (敬称略) NPO・平城宮跡サポートネットワーク 中 井 啓 二 世界遺産を彩る脇役たち -春 夏 秋 せんが、今は工事のため均されてしまいました。平 冬- 城宮跡の主役はあくまで古代遺跡であり、脇役にす ぎないヒガンバナが遺跡の復原や調査のために消え 平城宮跡秋の野草 平城宮跡隠れファン 典B http://homepage2.nifty.com/tenb/ てしまうのも仕方ありません。もっとも、他の場所、 たとえば東院庭園駐車場の北側斜面付近とか近鉄線 路沿いでは今後も毎年咲き続けることでしょう。 秋も中頃になると景色もカラフルになります。こ の写真は黄色いセイタカアワダチソウが目立ちます 平城宮跡の大部分は草っ原になっています。そこ を訪れる人のほとんどは遺跡見学やスポーツが目的 で、草っ原に関心を持つ人は少ないでしょう。それ でも、たまには偶然目についた可憐な花を見て、「こ の花はなんだろう?」と思うことがあるかも知れま せん。 実は、私の野草についての関心もかつてはその程 度のものでした。数年前定年退職してヒマになり、 年甲斐もなく流行に乗って(笑)、ホームページなるも のを作って遊ぶことにしました。そしてテーマのひ とつに平城宮跡の野草を取り上げることにしたのが 深入りのきっかけでした。 しかし素人の悲しさ、花の名前ひとつ調べるのも 実に大変です。それに種類の多い事! 今まで「名 も知らぬ雑草」と気にもしていなかった花でも、皆 それぞれに名前があるんですよね(当然ですが) 。 九月初めはまだまだ残暑が厳しいですが、「暑さ 寒さも彼岸まで」と言われるように彼岸の頃には秋 の気配も濃厚になってきます。ヒガンバナはまさに その名のとおりこの頃に真っ赤な花を咲かせます。 現在、第一次大極殿復原工事が行われている敷地 99.09.26 撮影 の東端に、南北方向に昔の農道跡らしき土の高まり がありました(昭和農業遺跡!?) 。それに沿ってた くさんのヒガンバナが咲いていました。もしかした ら何百年かにわたって毎年咲いていたのかも知れま が、毎年このような風景が出現するわけではありま 99.10.21 撮影 せん。秋に限らず、平城宮跡では、花の咲く場所が 前の年と違うことがよくあります。大規模に行われ る草刈りと、草の種が落ちる微妙なタイミングの影 響でしょうか。 秋の代表的な花であるハギもあちこちに咲いてい ますが、草むらの中で夏の終わり頃からよく見かけ るこの花は ナンテンハ ギでしょう か。薄紫の かわいい花 で、マメの ような実が 生り、歩い 00.09.09 撮影 ているとス ニーカーや ズボンにびっしりとくっつきます。ススキやミゾソ バやフジバカマに似た花(サワヒヨドリ?)も、秋 にはよく目にする花です。 秋も深まってくると、イチョウやサクラの葉もき れいに色づいてきます。そして、朱雀門の東西に延 びる生垣に赤いサザンカがちらほら咲きはじめると 平城宮跡ももう冬です。 -1- 世界遺産を彩る脇役たち -春 夏 秋 これはホトケノザです(春の七草のホトケノザと 冬- は別物だそうです) 。春暖かくな ってからよく見られる花ですが、 平城宮跡冬の野草 まだ寒い間から咲いていること もあります。 ナズナも早くから見かける花 冬の平城宮跡で目につく花は、 “野草” ではありま せんが、サザンカ ホトケノザ 00.01.08 撮影 です。朱雀門付近 が一番多いのです が、他にもあちこ ちで咲いています。 サザンカは常緑樹 だと思うのですが、 今年の秋にはまる サザンカ 00.01.08 撮影 で落葉樹のように なっているものがありました。異常気象か何かのせ いでしょうか。ツボミが ついているので枯れては いないと思いますが。 ょうけれど、今はナズナの葉を見分けられる人も少 ないでしょうね。 下の写真は菜の花に似た花で すが、何でしょうか。図鑑で見 るとハナナというのに似ていま す。宮跡資料館の前の水路脇で 冬の日差しを浴びていました。 ナズナ おそらく、本来はもっと暖かく 00.02.12 撮影 なってから咲く花でしょう。 多くの野草にとって冬 は休眠の季節です。しか し、ちょっと探してみる と、案外咲いている花も 多いことに気づきます。 サザンカは落葉樹? いくつかをご紹介しまし 03.10.30 撮影 ょう。 これは小さなスミレです。何スミレなのかよくわ 小さなスミレ 99.12.26 撮影 かりません。第二次大極殿の北隣にある内裏跡で、 溝の石組の間に咲いていました。こんな養分の少な そうな場所でよくがんばって咲いているものだと思 いましたが、溝掃除のときに容赦なく抜かれてしま いました。石組の間に植物の根がはびこることは遺 跡保全のためには好ましくないのかも知れません。 です。昔の人は花の咲く前の葉 を摘んで七草粥を作ったのでし ハナナ? 00.01.27 撮影 寒風の吹き抜ける冬の 野の片隅でこのように健 気に咲いている花を見つ けると、元気がわいてき ます。ただ、ここでご紹 介した花は、何かの条件 や偶然が重なって咲いた のかも知れません。毎年 同じ花が咲くかどうかは わかりません。逆に言え ば、もっと他の花にお目 にかかるチャンスもあり そうです。 冬の野草の定番と言えばオオイヌノフグリでしょ う。“冬の野草”と いうより、“冬の 間から咲き始める 春の野草”と言う べきでしょうか。 草むらの中で控え めに春の訪れを告 げるこの花のファ オオイヌノ ンは意外と多いよ フグリ うです。 00.02.12 撮 オオイヌノフグ 影 リの咲くころには、 ハコベの仲間も白 いツボミをのぞかせて春の到来を待っています。 -2- 世界遺産を彩る脇役たち -春 夏 秋 冬- げている人も少なくありません。これは図鑑で調べて みたらセンダン(栴檀)のようです。 平城宮跡春の野草 春は野草も百花繚乱です。スミレ、タンポポ、ナ ノハナなら子 どもでも知っ ていますが、 ムラサキサギ 日本の春といえばやはり桜。平城宮跡の桜もなか なかきれいです。奈良公園ほど多くはありませんが、 まわりは広々していて、鹿のふんを気にする必要も ないので、子ども連れの花見にはおすすめです。 第二次朝堂院跡の桜 00.04.09 撮影 今年ちょっと気になるのは、昨年の「朝集殿院東 南部の調査」で根の太いところをすっぱり切られた 東南隅の桜です。はたして花をつけるでしょうか。 変わった桜としては、ウワミズザクラ(上溝桜) があります。佐伯門の近くの桜並木の南側の列、西 から4、5本目だったと思います。花期がほかの桜 より遅いのと、 花の付きかた が右の写真の ように、ビン を洗うブラシ のような形で すので、桜だと 思わない人も ウワミズザクラ(上溝桜) あるかもしれ 00.04.27 撮影 ません。 (注: 2010年4月に枯れて切られてしまいました) ゴケなどを知 っていると、 子どもさんか ら尊敬される かもしれませ ん。ミヤコグ サという、ま スミレのいろいろ 00.04.09~00.04.16 撮影 ことに平城宮 跡に似つかわ しい名前の花もあちこちにたくさん咲いています。 私は個人的 にはマツバウ ンラン(松葉 海蘭)にちょ っと思い入れ ムラサキサギゴケ ミヤコグサ があります。 00.05.30 撮影 00.05.21 撮影 十何年か前、こ の花を見て「何の花だろう?」と思ったのが平城 宮跡の野草に関心を持つきっかけとなったからです。 年によって生える場所や規模に違いはありますが、 かなり大きな群生になることがあります。ここ数年 は東院庭園の中やその前の芝生の中でもよく咲いて います。東院庭園の中は、奈良時代に生えていた花 や木を植えるのが原則だそうですが、そんなことに おかまいなしに、マツバウンランの細かい種は風に 乗って飛んでくるのでしょう。 桜が終わった後、ちょっと人目を引くのが資料館 マツバウンラン 00.05.09 撮影 春の終わりから夏の初めにかけて、平城宮跡では センダン 02.05.13 撮影 から大極殿復原工事現場へ行く途中に咲いている花 です。「この花は何だろう?」というような顔で見上 多くのイネ科の植物が実をつけて枯れていきます。 その風景は、麦があまり作られなくなった最近では 忘れられている「麦秋」という言葉を思い出させま す。 -3- 世界遺産を彩る脇役たち -春 夏 ムラサキカタ 秋 冬- バミも可愛らし い花です。庭の 平城宮跡夏の野草 花壇に侵入する と駆除が困難だ ということで、 平城宮跡で春から夏への季節の移り変わりを告げ る花のひと つがブタナ (豚菜)で す。タンポ ポの背を思 いっきり高 くしたよう ブタナ 00.06.06 撮影 な花で、晩 春から、あちこちに群生しています。この写真は第 二次大極殿基壇の斜面を埋め尽くして咲いていると ころです。 大きな群生を作る花としては、ハルジオン(春紫 苑)があります。 また、これと似 た花で夏の終わ りから秋にかけ て咲くヒメジョ オン(姫女苑) というのがあり ますが、見た目 ハルジオン 00.06.30 撮影 での区別は難し いです。茎が中空なのがハルジオンだそうです。 奈良盆地の夏は暑さもひとしおです。高く伸びた 夏草を見るとなおさら暑苦しく感じます。しかし、 訪れる人の中には何かの花をみつけて、夏草をかき わけてそこへ行こうという方があるかも知れません。 そのとき注意しなければならないのは、あちこちに 走っている溝です。下手すると「平城宮跡遭難事件」 になりかねませんので気をつけましょう。 そんな背の高い草むらのわきに、キキョウソウや ヒナギキョウなど、意外と可憐な花が咲いていたり します。右の 写真では同じ 大きさになっ ていますが、 実際にはヒナ ギキョウの花 キキョウソウ ヒナギキョウ 径はキキョウ 01.06.12 撮影 00.06.18 撮影 ソウの半分ぐ らいしかありません。 ムラサキカタバミ 00.06.18 撮影 園芸愛好家には あまり好まれな いようですが、 平城宮跡ではやや控えめに咲いています。 6月下旬から7月上旬の比較的短い間、平城宮跡 のあちこちで咲いているのがネジバナです。この花 を予期せず見つけた人はたいてい大喜びしているよ うです。別名はモジズ リですが、百人一首に ある「陸奥の しのぶも ぢずり 誰故に…」 とい う歌とは関係ないのだ そうです。 花期の短さ故に人目 につきにくいネジバナ に対して、咲いている 場所が少ないために目 につきにくいのはノア ネジバナ 00.07.01 撮影 ザミです。私の知って いる範囲では、宮跡内でこの花が咲くのは2箇所し かありません。その場所は……すでにご存知の方も 多いでしょう。 さて、ムラサキシキブと言えば、秋に生る紫色の 実がよく知られていますが、そ の花は夏に咲きます。花が小さ いせいか実ほどは目につきませ んがが、近づいてよく見るとな かなかきれいな花です。これは 東院庭園前の花壇で撮ったもの アザミ です。このように、秋の準備は 00.07.01 撮影 夏の早い時期 から静かに進んでいるのですね。 4回にわたった連載も今回が 最後です。つたない文章を我慢 してお読みくださった皆様、 ムラサキシキブ どうもありがとうございました。 00.07.09 撮影 またいつか平城宮跡の草むらの中 でお目にかかることがあるかも知れませんね。 -4- 世界遺産を彩る脇役たち -春 夏 秋 冬 カワセミ(留鳥) 平城宮跡秋の野鳥 御陵の堀で「チィー」 と鋭い鳴声を聞いたらそ の方向から水面すれすれ 野鳥を愛する会 井 上 英 子 にコバルトブルーに輝く 宝石のような小鳥が飛ん 前回までの可憐な野草の数々を楽しませていただ いた後を受けて、今回から宮跡の留鳥、渡鳥、旅鳥 たちを紹介させて頂きます。このような機会をいた だきとても嬉しく、野鳥共々お礼を申し上げます。 11月から2月にかけて45種を超える鳥たちが 来ます。野鳥を見て、声を聞いて、感動し共感して 心豊かになりましょう。ご案内いたしますので是非 宮跡にお越しください。 できます。「あれ、あれ」と指差すのが精一杯です。 ノビタキ(旅鳥) 9月中旬、宮跡の草原 に北から涼風を伴って来 るノビタキを待ちます。 澄んだきれいな声で「ヒ ッヒッ」と鳴きながら飛 んで来て背の高い夏草の 穂先に止まりユーラユラ揺れています。 ツバメのネグラ入り 宮跡で夏の終わりを告げる鳥はツバメ。8月に入 ると子供を連れて南に帰る長旅に備えて親達は大忙 し。既に新聞、テレビでご存知でしょうが広大な芦 原で真っ赤な夕焼けをバックに万を越す数のツバメ たちが大集合して展開するショー?は圧巻です。命 をかけた大冒険の旅立ちを見送ってやってください。 サギとの出会い 左:アオサギ 右:ダイサギ アリスイ(渡鳥) キツツキ類ですのに地面で朽木の根本のアリや昆 虫などを食べます。 宮跡では芦を刈って 並べた畝の間に入り、 地面のアリをついば んでは首を上げて飲 み込みます。保護色 に包まれたこの鳥は唯一この繰り返す動作で見つけ ることが出来ます。 キジ(留鳥) 日本の国鳥。威風堂々、真っ赤なトサカに鋭い黒 目に金のアイライン、コバルト色に光沢を放つ衣装 に長い尾羽。宮跡の北にある農耕地でキジを見つけ るとみんな喚声をあげます。鳥の器量が悪かろうが 良かろうが「百聞は一 見にしかず」 、出会えた ときは感動します。 鳥は行けば必ず会 えると言うわけにはい きません。それだけに 出会えたときの感激は ひとしおです。是非一緒に歩いてみませんか。 水辺や湿地の草原で小魚や昆虫をねらっている姿を 一年中見ます。右は若鳥らしく遠慮がちの姿勢です。 -5- 世界遺産を彩る脇役たち - 春 夏 秋 冬 平城宮跡 冬の野鳥 ジョウビタキ(冬鳥) ヒッヒッヒッ・カカカ という声を目当てに、木 の枝や杭の上を探すと、 今回は、平城宮跡とお隣の水上池周辺に訪れる冬 の野鳥をご一緒に見て回りましょう。 平城宮跡周辺では11月から2月にかけて、45 ジョウビタキがとまっ ています。まん丸な目が 印象的な紋付き鳥です。 種を超える鳥たちが観察され、一年中で一番多種類 の鳥が見られる季節です。 ヨシガモ(冬鳥) 多くのカモたちの中でオシドリとならんで美しい モズ(留鳥) カモのひとつでナポ レオンハットと鮫小 紋の衣装に枝垂れ尾 羽(本当は3列風切 羽)の、しゃれもの です。 ベニマシコ(冬鳥) 宮跡や、水上池周辺の 芦原のなかの枯れたヨモ ギやセイタカアワダチソ モズは周年観察できますが、なかでも餌の昆虫の ウの花穂にとまって種子 少なくなる冬には、キチキチと高鳴きをして縄張り を食べている赤い鳥を見 を主張するのでよく目立つようになります。 つけると、胸が高鳴り寒 宮跡の梅園を縄張りとしている雄のモズです。 さを忘れてしまいます。 オシドリ(冬鳥) ルリビタキ(留鳥) 近くの御陵で見られる のは冬から春先までで、夏 になると大台ヶ原などの 高原にゆき繁殖します。 ジョウビタキとよく似た 声でヒツヒ・ヒッヒとさえ ずります 日本野鳥の会奈良支部では毎月第3水曜日に平城 宮跡のすぐ近くの水上池には冬になると多くのカ 宮跡探鳥会を実施しています。奈良文化財研究所の前 モたちがやってきます。 の駐車場に9時に集合、12時解散です。 美しい銀杏羽に着替えた雄のオシドリや、円らな瞳 鳥の好きな方はどなたでも歓迎です。ぜひ、ご一緒に のかわいい雌の姿が間近で見られるのは朝早くか夕 どうぞ。 方で、日中は芦の間でお昼寝です。 -6- 春 世界遺産を彩る脇役たち - 夏 秋 冬 平城宮跡 春の野鳥 宮跡に梅や桜が咲き、ヒバリやウグイスなどの留 鳥が高らかに春を告げ繁殖の準備を始める頃には、 ツグミやカモたちが北に帰り始め、替わってツバメ やオオヨシキリ等の夏鳥たちが南から渡ってきます。 また、春は、普段見られない珍しい旅鳥たちが、渡 りの途中に羽を休めているのに出会える季節でもあ ります。 コムクドリ(旅鳥) ウグイス(留鳥) 冬の間、葦原の中や、御 陵の茂みの中から笹鳴き が聞こえるだけの地味な 存在だったウグイスも春 の深まりと共に、美しい 調べを聴かせてくれます。 メジロ(留鳥) 冬の間は、サザンカ、 ツバキ、ウメと花を求 めてきたメジロも桜を 最後に昆虫食中心へと 切替えて子育てに励む こととなります。 セッカ(留鳥) コムクドリは東南アジアから、大陸や日本の北部 に渡る途中で宮跡に姿を見せる旅鳥で、クヌギの花 が咲く頃にやって来て、小さな群れで花をついばん でいる姿が見られるのは年に数日の間です。 セッカも繁殖期を迎え、 盛んに囀り飛翔を行い目 につくようになります。 ヒッヒツヒツという鳴き 声を目で追ってゆくと、 細い枯れ草や、柔らかい スイバの穂先にちょこん と止まっている姿が見つ かります。 ヒバリ(留鳥) 訪れる人たちに長閑な 春を感じさせてくれる 宮跡のヒバリたちです が、繁殖に適した場所 は案外限られているよ うで、天空でも地上で も縄張りを巡る雄たち の争いは熾烈なようです。 バン(留鳥) 繁殖期を迎えて、きれいな繁殖羽に着替えて尾羽 を立てて、下尾筒の両脇の白い羽を広げてプロポー ズをしている雄のバンです。 黒くて丸い体に小さな赤い嘴の可愛い雛たちの姿が 見られるのもまもなくです。 日本野鳥の会奈良支部では毎月第3水曜日に平城 宮跡探鳥会を実施しています。平城宮跡資料館横の 駐車場に9時集合、12時解散です。鳥のお好きな 方はどなたでも歓迎です。ぜひ、ご一緒にどうぞ。 写真:曽我宜規、鳥コメント:山縣正幸 -7- 世界遺産を彩る脇役たち - 春 夏 秋 冬 平城宮跡 夏の野鳥 ヤツガシラ(平城宮跡初渡来?の旅鳥) 初夏の渡りに先駆けて訪れた珍鳥ヤツガシラ1羽 が近畿のバーダーやカメラマン数百人を引き寄せ、 平城宮跡が探鳥地として豊かな条件を備えた場所で あることを人々に知って頂きました。 ヤツガシラも宮 跡が気に入ったと 見えてスターのよ うにカメラマンに 追われながらもヒ ラヒラと飛行を楽 しみ草地のミミズ や昆虫を食べて10日間も滞在して南へ帰って行き ました。またきてネ! カイツブリ(留鳥) オオヨシキリ(夏鳥) 葦原で行行子、ギョウ ギョウシと、にぎやかに 夏の間一杯、鳴き続けな がら子育てをするおなじ みのウグイス科の鳥です。 アマサギ(夏鳥) 宮跡の池のアマサギです。 渡って来た当初は、ほと んど白い冬羽のままの個 体もいますが、やがてオ レンジ色の婚姻色に染ま ります。宮跡近くの畑で トラクターの後をついて 歩く姿も良くみられます。 ケリ(留鳥) 子育ての時期、巣に近 づくと激しく鳴いて急上昇 急下降を繰り返し威嚇さ れます。母親は雛を叢に 隠し鳴き続け危険を知ら せます。双親の情愛の深 さに感動させられます。 宮跡近くの小さな池では、浮き巣で孵ったばかり の雛を背中に乗せて泳ぐカイツブリの姿が見られま すが、すぐに大きくなってやんちゃぶりを発揮する ので、親たちは大変です。 カルガモ(留鳥) 四季に亘って貴重な資料の一頁をご提供頂き 24 種の野鳥を紹介し大勢の方々に「宮跡にこんなに鳥 が居るの」と改めて認識して頂き、やさしさも共感 して頂き有難く厚く御礼申し上げます。世界遺産に なりました宮跡の地下遺構は水田で守られて来たの です。近年周辺が都市化して水田も溜池も宮跡中央 部の菰川の流れも消え、池も湿地も葦に奪われてし まいました。渡りのシギ、チドリが姿を見せなくな りました。鳥や植物の生態から推察しても未発掘の 地下遺構の乾燥風化を懸念します。野鳥も人も地球 の仲間、宮跡の自然環境が失われないよう多くの 方々のご支援をお願い致します。有り難うございま した。 写真:曽我宜則、山縣正幸 宮跡の周辺で冬を過ごした多くのカモたちも皆、 北に帰りますが、カルガモは宮跡やその周辺で子育 てをします。子供達が大きくなり親子の見分けが難 しくなった宮跡のカルガモ一家です。暑い夏、ちょ っと避暑に行くこともありますが留鳥です。どうぞ よろしく。 -8- 平城宮跡・鳥の楽園 秋の鳥 冬の鳥 寄稿:宮跡の野鳥を愛するつどい 宮跡のツグミ 宮跡の草原に、餌を探しながらトコトコと歩いて はスックと胸を張り、 ノビタキ 宮跡の草原にセイタカアワダチソウの花穂が秋風 に揺れる頃、各地の高原等で繁殖を終えたノビ タキがやって来ます。 のんびり風に揺られ ているように見えま すが南国への長い渡 りに備えて体力をつ けるための虫取りに 皆な一生懸命です。 モ ズ 一年を通して見ら れる宮跡のモズです が、秋には若鳥も加 わって数が増えます。 同じ時期に飛来する ノビタキと共に、セ イタカアワダチソウ の花群を賑わせます。 チョウゲンボウ 毎年、中秋の頃になる と宮跡へやってくる ハヤブサの仲間。鳩よ りひと回り大きく、高 木の上で休む姿や、上 空でホバリングして地 上にいるバッタなど襲 う姿が秋冬に見られま す。 セイタカシギ 名前の通りすらりと背が高 く、気品のあるシギです。 秋の渡りの時期の 9 月末頃、 水上池の桟橋に休む姿が何度 も見られます。運が良ければ、 この秋も? あたりを見回してい る鳥を見つけたらツ グミです。大陸から 渡ってきたツグミた ちの姿が目立つよう になると宮跡にも木 枯らし一番の吹く季節となります。 シマアジ来訪 昨年、宮跡の池を訪れた シマアジです。オシドリ やヨシガモのような華や かさはありませんが、白 とブラウンのシックな装 いはカモの中でもひときわ洒落ていて滅多にお目に かかれないこともあって大勢の人々を集めました。 ミヤマホオジロ 歌舞伎役者の隈取り (くまどり)を思わせる 顔が特徴です。 毎年、宮跡近くの御陵 の周りなどで越冬して いる姿が見られます。 3月中旬、日本を離れ て大陸で繁殖する渡り鳥です。 アリスイ 地面のアリの巣の穴 に長い舌を差し込んで アリやアリの卵を食べ る珍しい習性からつけ られたた名前です。 キツツキの仲間で、 毎年、晩秋に平城宮跡を 訪れ冬を過ごします。 -9- シロハラ ホトトギス 大型のツグミの仲間で 4 月の終わり頃、宮跡 す。 大陸のウスリーア ムール川流域などで繁殖 し、冬は宮跡や水上池周 の桜並木で渡りの翼を 休めている姿が見られ ます。宮跡の初夏を感 辺にやってきて越冬しま す。 じさせる鳥です。 春には、再び大陸を目指 して旅立っていきます。 残念ながら以前に比べてその姿をみる機会が少なく なったようです。 カワセミ 「水辺の宝石」と呼ばれ るカワセミは一年を通じ て宮跡の池や近くの御陵 の水辺を行き来して、魚 を狙っています。根気よ く探していると、いつか、 きっと良い出会いがある でしょう。 春の鳥 宮跡のキジ 宮跡の葦原が芽吹いて 青々と伸び出すと、精 一杯きれいになったキ ジの雄たちがやってき て、幌うちをしながら ケンケーンと鳴く声が 響き渡り、子育ての季節が始まります。 ウ 夏の鳥 オオヨシキリ ソ 今年は珍しく、ウソ の当たり年で宮跡近く の御陵などでフィーフ ィーという口笛のよう な鳴き声とともに美し い姿が観察されていま す。今年はきっと宮跡 の桜の蕾を食べに来る に違いないと楽しみに しています。桜の蕾にご注目を! コチドリ 春はシギやチドリたちの 渡りの季節です。宮跡の草 原は、渡り鳥たちに適した 休憩地です。 4月の雨上がりの草原をの ぞくと、鳥たちとの思いが けない出会いが待っているかも… 宮跡の夏を最もにぎやかに 謳歌している鳥はなんとい ってもオオヨシキリです。 青々と伸びた葦原で行行子、 ギョギョシと大きな声で縄 張りを主張するのは子育て が始まったからです。 Topics:レンカク 飛来(6、7月) 15 年前に宮跡の池 に訪れたことのある 珍鳥のレンカクが水 上池周辺に2週間ほ ど滞在し関西だけで なく全国のバーダー やカメラマンを引き 寄せ、改めて宮跡周辺の自然の豊かさと魅力を多 くの人が知ることとなりました。 -10- チュウサギ 番 外 編 (水上池にて) 撮影:中井啓二 5月は鳥たちの 繁殖の季節。コロ ニーと呼ばれる集 団繁殖地が近くに カルガモの着水 あるらしく、宮跡 でも飾り羽をつけ たチュウサギやコ サギの雄たちの姿 が見られます。 アオバズク 小型のフクロウの仲 間で、青葉の季節に渡 ってきて、西大寺周辺 の森などで繁殖します。 日暮れ時に 「ホッホッ」 と明るい鳴き声を響か せ、私たちに夏の訪れ を告げてくれます。 ウグイス ウグイス色はどんな色? 答え:こんな色。 どうやらメジロと見間違えたらしい。 ヒバリのひな 宮跡の緑が濃く なる初夏はヒバ リのひなの巣立 ちの季節です。 あどけない顔と おぼつかない足 取りで餌を捜し ている姿が草む らのあちこちで 見られます。 超番外編 ウシガエル (食用蛙) 寄稿:「宮跡の野鳥を愛するつどい」 長期にわたり珍しい鳥の紹介や、貴重な写真の提供 を頂き有難うございました。 -11-
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