北海道製パン業界の最大手、日糧製パン (http://www.nichiryo

北 海道製パ ン業界 の最大手 、日糧製 パン
(http://www.nichiryo-pan.co.jp/)は、1946年の創立
以来、安心 でき るおいし さを目指し 地域に密着した 独自
の商 品作りを展開 してきた。 同社では、 10年前より取 り
組んできた業 務改善活 動による業 務の効率 化や、米 国
製パン研究所(American Inst itute of Baking)が開
発した AIB食品 安全プログラム に基づく食 品安全衛 生管
理体 制の構築など、企 業の体 質改善と食 品の安全 確保
にも積極 的だ。
「私た ちは『い つも
安心でき るおい しさと信頼 感で人と環 境にや さしい企業 』という
企業ミッシ ョンのもと、北海 道の活性 化に貢 献する真の 北海道
企業へ の成長を 目指し、 市場適合 と変革に日々取 り組んでいま
す」と吉田勝 彦代表取 締役社長 は同社の 指針を話 す。 同社の
言う 「市場適合 」と「変革」とは 、「激しい 企業間競 争による販 売
単価の 下落や原 材料価格 の上昇に対応するだけでなく、社 会
が求める食の安 全にもいち早く対応 し、信頼 される企 業に進 化
するこ と」(吉田社長 )と説明する。楽観でき ない状況が 続く食
品業界 におい て、市場の 変化を的 確に捉 え、 それに適合する営
業・商品 戦略で勝負 しよう としている。その 戦略を支えてい るの
が、同 社の製 品規格情 報管理シ ステムだ 。
代表取締役社長 吉田 勝彦 氏
「製 品規格情 報」とは簡単 に言う とパンや菓子 のレシ ピにかか
わる諸々のこ とだ。 その製品 規格情報 管理システ ム導入 に踏
み切った背景には、ある出来事があった。「2003年に、商品の
原材 料表示に誤りがあり、商品回 収に奔 走したこ とがありまし
た。 原因は原 材料規格 のデータの 転記ミスでした 」と執行役 員
の布 施幸秀氏がその 時の 状況を語 る。当 時、製品 や原材料 の
規格データは 、 紙の書類 で原料メ ーカーから入手していた 。そ
の情 報は仕入担 当の購 買部から、製 造サポート室、商 品開発
室、 マーケティング室 などの 各部署に渡され 、それぞれの やり
方で管理 されていた 。「普通、 パンや 菓子だと 10~ 20種類、 弁
当だと 50~80種類の 原料規格 書が1製品の下 に存在 し、それ
を手作 業で編集し 伝達してい た為、情 報が行き違 ってし まった
のです。幸 いこの事 故で健康被 害は起こ りませんでしたが、 食
品メーカーとして決して起こしてはならないこと。これを教訓に
人為ミスを 徹底して抑 止する新しい システム が必要だ と考えま
した」と 食品安全 管理室次 長の沖昇 平氏も振り返る。この 当時
同社が 考えていたシ ステムの 目的は、 パンや 弁当、惣 菜などの
製品に使わ れる原材 料の情 報を管理し 、製品の 包装やラ ベル
に間違 いなく表示 させることだった。
執行役員 布施 幸秀 氏(写真上)と食品安
全管理室 次長 沖 昇平 氏(写真下)
シ ステムの 開発業者 選びを始めた同社 は、10数社 にシ ステム
の提案 を依頼し た。システ ムをゼロから構築する、 既存パ ッケ
ージをその まま導入する、 既存パッケージをベースにカスタマイ
ズするなど、 さまざまな提 案を受け た。「単に紙の情 報の電子
化だけ が目的では ありません。原 材料や製 品データ の信頼性
を確保 したり、トレーサビリティーの観 点もシステム には必 要で
した。 はじめての試 みなので提案 の評価は 困難でした 」と管理
部電算 チーム係長 の武山敏 也氏は言 う。沖 氏も「お得意先様
からの要望 に応えた り、法律の 改正や社 会の要請 に対し て迅
速に対応しなけ ればなりません。また 、業務内 容を導入するシ
ステム に合わ せて変えるのは本末 転倒なので避 けたかった」と
管理部 電算チーム
係長 武山 敏也 氏
言う 。そんな中、「ゼロから自由に作り上げ、 自分たちに合 った
最適の システム を作ろう 」という 布施氏の 意見が方 向を決め
た。パッケージを そのまま 導入 したり、カスタマイズ するのではなく、 自分たちのやりたい ことをすべ
て叶えるべく、ゼロから構築できる実力を 持った企業を開 発パートナーに選 ぼう、という 決 断が下さ
れた。
同 社は、原 材料規格 と製品規 格とを一元 管理して表 示に適 確
に反映 するこ とを目指した 。しか し一方で社 内外の多 数の部署
と関与 するシステ ムなので、 現場の使いやすさにも 十分 配慮を
したか った 、と沖氏 は言う 。そこで選 ばれたの が、自由 な発想で
提案した 東芝ソリューショ ンだ。 2004年 5月、プロジ ェクトが 立ち
上が り、 製品規格 情報管理 システム 開発が スタートした 。「社内
のあちこ ちに膨大な情報 が散らばっているの で取りまとめや調
整に苦労すると 思うが 、最後まで付 き合ってほしい と言いまし
た。そして 、約1年 間、東 芝ソリューショ ンの 技術者が 私たちの
もとに足 繁く通い、 現場のニ ーズ を拾って具体的 なもの にまと
めてくれたの です」(布 施氏)。原 価計算を担 当する、 製造部製
造企画 チームリーダーの諸澤 英治氏は 「従来 の複数 存在した
原価計算 の方 法を、どこまで一 元化するか など、 悩むことが 多
製造部
製造企画チームリーダー 諸澤 英治 氏
かった」と話 す。 例えば同社 の製品の パン・菓 子と米飯 類では、原 価計算の 単位が異 なる。パ ンは
原材 料の重量だが 、米 飯では重量 のほかに枚、個 などの 単位が出 てくる。そう いった細かな部 分を
システ ムに取り込むため、 東芝ソリューシ ョンは専任スタ ッフを常駐 させ、 同社の 現場とともに地道
に作業 を進めてい った 。
2005年3月、製品規格情報管理システムの稼動・運用が部分
的にスタートし た。全面 スタートではなか った 理由を、 システム
の基 礎となる原 料規格を 受け持つ購買部係 長の吉川 敏博氏は
こう 説明する。「新しいシ ステムは 原料メ ーカー様に直接情 報を
入力していただく 仕組みを採っていました。そこで1000を越える
メーカー様に協力をお願 いして回りました 。全てのメ ーカー様の
ご理解とご協力 を得るまでには時間 が必要でし た」。結局 、す
べての原 料メーカーが情報 入力を完了 させるまで、約1年半 が
経過した。そして、2005年12月に本稼動が始まった。システム
の効果 は期待した 以上だ った 。「システ ム稼動以 後、表示 ミス
は一 切発生してい ません」と沖氏は 言う。 効果は、 それだけで
はなかった。 情報を一 元化した ため、開発 途上の試 作品であっ
購買部 係長 吉川 敏博 氏
ても全社の関 係者は情 報を共有 できた。また 、お得意 先様や社 会の新し い要望にも迅 速な対応が
可能となった 。その効 果を沖氏 は「仕事の 密度が高 くなって、 時代に対応 できるスピードが 持てた」
と評価 する。
加工 食品は、 原材料 やアレルゲン、添 加物、消 費期限、 栄
養成分 、カロリー、原 産国、遺 伝子組み 換えなど、さまざま
な情報の 表示が求 められ 、かつその求められる内容や 程度
も常に変 化している。同社 のパンや菓子も例外 ではない。
「システ ム構築を 経て、関わ った 者の意識 が向上し ました。
あるべき姿 をイメージし、 今何をすべき か、考えられるよう に
なった」と布施 氏は話す。同 社はその 後「データ承 認の厳格
化、既 に使用 されている原材料 の内容が 一部変更 された場
合の対 応、添加 物の使用 制限に対応するマスタ ーの 作成な
どの機能を 加えました。 」(武 山氏)と、 “市場適合 ”を果たす
ために自ら“変革”のスピードを速めて対 応していった。その
勢いを加速 させるべく、東 芝ソリューシ ョンも協 力して改修に
当たった。その結果、日糧製パンは「2007年度は約1000 点
の新製品と、800点の原料の変更に 伴う表示の修正に対応
できました 。この システム がなければ 、とてもなし得なかった
数字です」(沖氏 )と手応えを感 じている。「最初は 原料の規
格情報 を製品規 格に合 わせて単純 に表示 に落と し込むシス
テム を導入するつもりが、仕様 や設計を 詰めていく中で、商
品にかかわる様々な規 格情報を 根本のと ころから厳格 に管
理するシ ステムと なりました。また 運用を通じ て厳格な管理
の徹底 だけでなく、商 品の安心 安全につながるバックボーン
の構築 、新製品 開発の期 間短縮など業務 の効率化 、さまざ
まな成果が 得られました。 今後も食の安 全への志 向は高ま っていくでし ょう 。私たちも原料管理 や検
査データなど周辺システ ムとの 連携をは じめ、蓄積 データの 分析機能 など、さらにシステ ムを 進化 さ
せていき たい」(布施 氏)と引き続 きさらに安 心で安全な商 品作りに注力していく姿 勢を表明 した。
日糧 製パン株式会 社
●設 立: 194 6年 5月1 6日 (創業 19 43 年)
●代 表取締 役社長 :吉 田勝彦
●従 業員数 :5 09 名
●売上高: 16 9 億752 6 万円 (2 00 7年3月期 )
●所 在地: 札幌 市豊平区月寒 東 1条18 - 5- 1
●U RL:h t tp:/ /ww w.nic hiry o-pan .co .jp/
●事 業内容 :パ ン・菓 子等の 製造お よび販 売ならびにそ の他の 食料 品の販 売
北海 道製パ ン業界 の最大 手。「 いつも安 心でき るおい しさと信 頼感で人 と環境にや さしい 企業で ある こと」 を使命 と
して、地元 北海道 で支持 され 続け ている老 舗で、19 90 年に大ヒットさせ た「 チーズ蒸しパ ン」の メー カー としても有
名。現 在の 主力製 品、「絹 艶」 は、う るおい 熟成製 法による本 格食パ ン。生活 者調査 を繰り 返して、商品 設計にフィ
ード バックさせ商 品の完 成度を 高めていく など 、独自の アプ ロー チによる製品 づくり に定評が ある。
製品 規格情 報管理 システ ム
東芝 ソリ ューシ ョンが 自社 開発した 、食品業 界向け ソリューシ ョ ン。「製 品情報 や原材 料情報 が各 部署で個 別管理
され、正 確な情報 を共有 ・把握 でき ない」 「取引 先から指定 フォーマットで製 品や 原材料 のデー タ提供を 求められ
る」 「消費 者や取 引先 からの由来 原料( アレ ルゲ ン、添加 物など )の 問い 合わせ に迅速に対 応でき ない」 「栄養 成分
情報 を調べ るのに時間 がかか る」「 過去 の製品 規格情 報を調 べる手段 がない 」といった 食品業 界の抱 える問題 を
解決 する、デ ータベ ース・ システム 。試作品 から現行 製品、過 去製 品の製 品規格 情報の 管理、 製品や 原料規 格の
情報 作成、 原料仕 入先か らの 情報入 力による一 元管理 体制 の確立 、表示ラ ベルの 版下 作成など 、製造 現場の か
ゆいところ に手が届 くソリ ュー ショ ンだ 。現在 はトレ ーサビ リティ ー機 能を持った E RP環境 への発 展が進 められ てい
る。
東 芝ソリューシ ョン株式会社
経営 企画部 広報担 当
電話: 044-331-1100
※社名、商品名等は各社の登録商標です。
※この記事は、2008年2月に制作されました。記事内における数値データ等は取材時のものです。