現 場 を 訪 ね て このたびの東日本大震災により被災されました皆さまに 心よりお見舞い申し上げます。 川崎重工グループといたしましても、 できる限りの支援活動を 実施してまいります。 被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。 川崎重工業株式会社 KMM本社・リンカーン工場 (ネブラスカ州) 現場を訪ねて ジェットスキー®など 新モデルの生産ライン 米国ネブラスカ州で最大の生産工場である KMMリンカーン工場(CP部門)を訪ねて 82 イラストぎじゅつ入門−◯ 航空機に周波数の安定した 電力を供給する、新開発の 発電装置「T−IDG®」のしくみ 5 川に見る・日本の四季◯ 木曾川水系の「春」を追う み な も ダム湖の水面を彩る 絢爛たる桜の帯。 新製品・新技術 不思議な形のロボットが超高速で自在に動く 川崎重工の高速ピッキングロボットが食品工場などで活躍 ※都合により、 「最前線カメラルポ」は休載しました。 ●表紙説明● ベルトコンベヤ上を不揃いに流れてくる、色とりどりの CD (コンパクトディスク) ケースのひとつに、 複数のアームを 束ねた先端が素早く近づき、 エア吸引する−川崎重 工の高速ピッキングロボットの試験風景のひとコマです。 電気炊飯器 の形状をした本体から突き出て先端で 結束された3本のアームが、 超高速で自在に動いて小物 の仕分けや箱詰めなどに威力を発揮する高速ピッキング ロボットは、パラレル(並列) リンク機構によるユニークな ロボットです。 カワサキ・パラレルリンクロボット 「YF03N」は、 2009年4月の発売以来、 食品工場や太陽電池パネルな どの生産ラインで活躍しています。 (詳しくは「新製品・新 技術」 をご覧ください)。 発 行……2011年4月 編 集 発行人……川崎重工業株式会社 広報部 広報部長 西野 光生 東京都港区浜松町2ー4ー1 世界貿易センタービル TEL 03-3435-2133 http://www.khi.co.jp 新モデル「ジェッ トスキー ULTRA 300X」の 生産ライン。 1 現 場 を 訪 ね て 多用途四輪車「MULE61 04x4」 (Spec i a lG r a ph i cEd i t i on) RUV「Te r y x750F I4x4LE」 ATV 「B r u t eFo r ce7504x4 iEPS」 品質・生産効率の向上を目指して 2 134万4, 000m という広大 な敷地を有するKMMリン カーン工場の全景。手前の 建屋群が1 975年に操業を 開始したCP部門。 ジェットスキー のシーズンを控えた、 米国ネブラスカ州で最大の生産工場である KMMリンカーン工場(CP部門) 操業開始以来35年、 米国社会に溶け込んで活動 米国ネブラスカ州。 米国のほぼ中央に位置するこの州の 州都、 リンカーンの郊外にKawasaki Mo tors Manuf ac tur i ng Corp. , U. S. A. (KMM 社長:朝野松弘) リ ンカーン工場がある。 1975年、 わが国の二・四輪車業界の トップを切って、 マーケットニーズに迅速 に対応するため、顧客に最も近いところ で生産するという思想のもとに、米国で モーターサイクルの生産を開始したとい う誇りある歴史を有している。 このリンカーン工場が先駆けとなり、 以後、 米国ではKawas ak i Ra i l Car, Inc(K . RC) ヨンカース工場(鉄道車両 の最終組立・艤装など、 ニューヨーク州) 、 KCMニューナン工場(建設機械の組 み立て、 ジョージア州)、 KMMメアリービ ル工場(汎用ガソリンエンジンの生産、 ミ ズーリ州) などが設立された。 また、 米国 以外での現地生産工場などの設立も続 き、川崎重工のグローバル化が着実に 進んでいった。 ちなみに現在、 川崎重工の海外事務 所は3か国4か所、海外関連企業は20 か国56社となっている。 リンカーン工場は操業開始以来35年。 米国社会にしっかりと根を下ろして活動 し、 ネブラスカ州における最大の生産工 場として現地経済の発展や雇用に貢献 している。 リンカーン工場には、 今回紹介 するCP (Consume r Produc t s :一般 消費者向け製品)部門と本誌前号(161 号) で紹介した車両部門があり、 従業員 数はそれぞれ約1, 100名と約550名で 合計約1, 650名。 このうち、 川崎重工か らの出向者は両部門で21名にすぎず、 経験豊富な米国人により自主的な運営 が進んでいる工場である。 「地域のボランティア活動や、 ネブラス カ大学をはじめとする地元の学校運営 をサポートするなど、 良き隣人として地域 に溶け込んで活動しています」 (リンカー ン工場CP部門の久留島正信ゼネラル マネージャー (GM)) 久留島正信ゼネラルマネージャー (右) とマイク・ ボイル副社長兼プラントマネージャー (左)。 2 Kawasaki News 162 2011/4 2010年に 累計生産300万台を達成 2 リンカーン工場は134万4, 000m(約 41万坪) という広大な敷地を持ち、 CP 2 部門の建屋面積も約17万m(約5万 2, 000坪) という巨大なものである。 「1975年の操業開始時に比べて建 屋面積は4倍近くに広がりました。この 35年の間には、 時代の要求に応える形 で生産品目に変遷があり、 現在は日本に も輸出しているパーソナルウォータークラ フト 「ジェットスキー」、 それにATV (四輪 バギー車) 、 レクリエーションユーティリティー ビークル (RUV)、多用途四輪車などが 主力で、 ほかに同業製造メーカーからの 依頼でタイヤホイールを生産しています」 (久留島正信GM) CP部門では2010年9月、操業開始 以来のATV、 ジェットスキーなど完成車・ 完成艇の累計生産が300万台に到達し、 リンカーン工場の全従業員が参加して 記念セレモニーを開いたという。 たゆまぬ努力 リンカーン工場(CP部門)は、大別 して5つの建屋で構成されており、 それ ぞれにジェットスキーやATVなどの生 産ラインなどが設けられている。KPS (Kawas ak i Produc t i on Sys t em= ジャスト ・イン・タイムを基本に、 徹底してム ダを排した川崎重工創案の生産管理シ ステム) に基づき、常に品質と生産効率 の向上に取り組んでいる。 その運営は、 人財 の育成、 しくみ (KPS) の発展、 それに新しい技術と設 備の導入に支えられている。 例えば、 ジェットスキーの船体は、 専用 ローダ装置とSMCプレス機による成型、 およびカワサキロボッ トを活用したウォーター ジェットによる穴あけ加工などを適用する ことで生産性の向上と精度の高い製品 を生み出している。また、 ATVをはじめ とする四輪車の意匠部品に適用してい るグラフィック・ディッピングは、 予めデザイ ンが印刷されたフィルムを直接製品に転 写する。ここでもロボットを活用した効率 的な生産が行なわれている。ほかにも四 輪車の部品溶接やジェットスキーのボン ド塗布、 ホイール製造における工程間の ハンドリングなど、 多岐にわたる工程でそ れぞれの用途に合わせロボットを導入し ている。 さらに最新のRUV組立ラインでは、 リ フター付き組立台車により作業内容に 応じて自動的に高さ調整ができる仕組 みになっており、 常に作業者が最適な姿 (上) SMCプレス機からジェットスキーのボディ が成形されて出てきた。 (下) その巨大なSMC プレス機の全容。ジェッ トスキーのボディは次の 工程へ送られていく。 勢で作業できる環境を整備し、生産性 だけではなく安全確保にも積極的に取り 組んでいる。 「こうした取り組みのほか、 より一層の Qua l i t y (品質) 、 Co s t (コスト) 、 De l i ve ry (納期)の向上を目指して鉄道車両向 けも含め、完成品の生産に加えて部品 の内 製 化も積 極 的に進めています」 (久留島正信GM) (中) 2010年9月にリンカーン 工場の全従業員が参加して 開かれた 3 0 0万台達成記念 セレモニー 。 (右) セレモニー でスピーチを述べるKMMの 朝野松弘社長。 (左) 3 0 0万台 目となったRUV 「T e r y x7 5 0」。 グラフィック・ディッピングは、予めデザインが印 刷されたフィルムを水面に浮かべ、 カワサキロボッ トがボディを水中に沈めて引き揚げると転写さ れる仕組みである。 厳しい時期を切り抜け、 回復基調に確かな手応え 「工場がよりスムーズに、効率的に稼 働することに配慮し、 また、 経営目標に向 かって最善の努力をしています」 と話す マイク ・ボイル副社長兼プラントマネージャー はこう続けた。 「過去は右肩上りの業績が続いてい ましたが、 リーマン・ショックの影響などに よる低成長という厳しい経験もしました。 しかし、 ようやく厳しい時期も切り抜け、 今は回復基調にあり、 未来は明るいと信 じています」 ● KMMリンカーン工場(CP部門) では、 夏のシーズンを控えてジェットスキーの 生産ラインが活況を呈しており、 また、 ATVなどの生産ラインも回復基調を反 映して活気を帯びている。 3 イラストぎじゅつ入門― 82 次期固定翼哨戒機「XP−1」 次期輸送機「XC−2」 ■「P−1」と「XC−2」に採用 「T−I DG」は、川崎重工がプライム (主担当)企業として開発した防衛省の次期固定翼哨戒機「P−1」 と次期輸送機「XC−2」に採用が決まり、 すでに試験飛行で性能が実証されている。 ■「T−IDG」の主要諸元 ●出力: 90kVA (90kW) ●周波数: 400±5ヘルツ (3相) ●電圧: 115/200V ●外形寸法:奥行き375×幅460 ×高さ330 (mm) 航空機は機体に 自家発電装置 を設置している 航空機は、駐機中(エンジン停止時)は機内 の補助電源装置からの電力を照明や放送シス テム、調理器具など各装置に供給している。そ して、エンジンが起動した後、エンジンの動力 を利用して発電する交流発電装置(設置位置 はイラストを参照)が作動し、 停電することなく、 補助電源装置とスムーズに切り替わる。 ところで、 エンジンの回転数は離陸前、 離陸中、 飛行中ではかなり異なり、大型ジェット機では 通常約4, 500〜約9, 200回転(1分間)の範囲で 変化する。発電装置はエンジンとつながってい るので、エンジンの回転数に応じて発電機の回 転数も変化するが、 これでは発電周波数が変 化して安定した電力にならない。そのため、エ ンジンの回転数が変化しても一定速度に調整 して発電機を回す、定速駆動機構(無段変速 機)と一体化した発電装置(IDG: I ntegrated Dr i ve Gene rator)になっている。 4 Kawasaki News 162 2011/4 ●周囲環境への対応 航空機のさまざまな飛行条件(飛行姿勢、−G 条件、高高度での低圧条件、周囲温度が−54 〜200℃、 など)に対応した設計をし、 それを試験 で実証した。 変速のため傾く 入力ディスク トラニオン パワーローラー 動力伝達の ため回転する R2 R1 姿勢試験:大きく傾けた状態で運転する。 R1 「T−IDG」 R2 出力ディスク 加圧装置 入出力速度比=R1/R2 減速モード 増速モード ●出力側の回転数を一定に保つ仕組みとは? 図のように、共に富士山型をしたインプットディスク (入力側) とアウトプッ トディスク (出力側) が向かい合っており、 その間に挟まれた伝導ローラー (パワーローラー)が回転することにより動力を入力側から出力側に伝 える仕組みになっている。その際、パワーローラーの傾き (入・出力ディ スクとの接触半径) を変えることにより、無段階の減速(左)、増速(右) が可能である。そのため、入力側のエンジン回転数が変化しても、出 力側の回転数(交流発電機の回転数) を一定に保つことができる。 ●トラクションドライブとは? トラクションドライブというのは、油の粘性を利用して動力を伝える機構 である。その油はトラクションオイルと呼ばれ、非常に高い圧力を受ける と高い粘性を生じるという特性がある。図の入・出力ディスクとパワー ローラーとの接触面にトラクションオイルが入り込むと接触面の圧力 で粘性を生じて動力を伝える (いわば歯車の役割を果す)のである。 「T−I DG」では、専用に開発したトラクションオイルを使用している。 航空機では世界初の 革新的な無段変速機を開発 定速駆動機構はこれまで油圧式だったが、川 崎重工がヘリコプター向けの研究・開発成果 をベースに、 独自の技術で新開発した「T−IDG」 (トラクションドライブ(Tract i on d r i ve) IDG) は、航空機の定速駆動機構では世界で初めて、 高速トラクションドライブ無段変速機を開発し 採用した(原理はイラストを参照)。 特殊なオイルの粘性抵抗を利用して動力を 伝達する方式のため、従来の油圧式より伝達 ロスが少ない、部品同士の接触摩耗がないの で耐久性が高いなどの特長を備えており、油圧 式に比べて軽量で、高効率・高耐久性と高度な 制御を実現させた革新的な無段変速機である。 ■高速トラクションドライブ式無段変速機の原理 バイパス動力 入力軸回転数 4500〜9200rpm バイパスギヤ 差動遊星機構 (2系統の動力を ひとつに合わせる) ■大型タイプも開発して民間機向け 販売にも注力 今回開発した「T−I DG」 (出力90kW) は、中型 旅客機(150〜200人乗り程度)に適用できるタイ プで、川崎重工は民間の旅客機向け販売にも力を 入れていく考えだ。また今後は、大型旅客機向けに より大出力タイプも開発する計画である。 ■電機工業技術功績者表彰の優秀賞 を受賞 「T−I DG」の開発で世界で初めて、革新的なト ラクションドライブ式を採用した成果が高く評価され、 川崎重工は (財) 日本電機工業会より「2010年度 電機工業技術功績者表彰」の優秀賞を受賞した。 ●交流電源とは 直流電源(乾電池など) とは異なり、電源の+極 と−極が入れ替わる電源。入れ替わりの速さを 周波数と言い、周波数が安定しないと機器が正 常に作動しない。 「T−I DG」では、 あらゆる状況で周波数が±1% の精度を実現している。 ●入力軸 エンジンに直結し ており、飛行状態 により回転数(1分間) が約4, 500〜9, 200回 転の範囲で変化する。 トラクションドライブ 動力 変速比 (Ratio:0.5〜2.0) + 入力ディスク 7500〜15000rpm 発電機ローター @24000rpm 一定 出力ディスク 15000〜7500rpm 合流動力@速度一定 − 周波数とは1秒間当たりの+と−の入れ替わる回数 ●交流発電機(出力: 90kW) 1分間に2万4, 000回転で発電し、周波数の安定 した電力を機内の各装置に供給し、安全な飛行を かげで支えている。 ※発電装置はエンジン1基につき1台設置されており、 万一の発電装置自体の不具合、 あるいはエンジ ントラブル時にも他の発電装置がバックアップと なるので、航空機への電力供給には支障ない。 ●パワースプリットシステムとは? ●出力ターミナル 「T−I DG」では、 1台にトラクションドライブとバイパスギヤの 2系統で動力を伝達するパワースプリットシステム(特許取得 済み) を独自に開発した。入力した動力を2つに分流すること でそれぞれへの動力が軽減されるため、 トラクションドライブの 寿命および信頼性が向上し、機構全体の効率も向上した。 ここから電力を出力する。 5 新製品・新技術 川崎重工の高速ピッキ ングロボットが食品工場などで活躍 名付けて パラレル(並列) リンクロボット 電気炊飯器 の形状の本体から3本のアームが突き出て先端で結束されている。 本体からニョキッと突き出た 3本のアーム(腕) 産業用ロボットにきわめてユニークな 形状の新顔が登場した。 電気炊飯器 をイメージさせる形状 の本体から複数のアーム (腕) が突き出て、 先端でつながっている。そのつながった 先端部で対象物(例えば包装された菓 子など) を捕捉し、 猛烈なスピードで正確 に仕分けや箱詰めなどを行なう−。 アームは3本なのだが、 よく見ると1本 のアームは2本の棒でひと組になっている。 一方で、 このロボットは、製造ラインのコ ンベヤ上にセットされることが多いので、 アームは3本の 脚 と表現されることも ある。そういわれてみれば、電気炊飯器 からニョキッと生え出た 脚 に見えなく もない−。 これまでの産業用ロボットは、人間の 腕を模した直線型の形状で、 肩やひじ、 手首など人間の関節に相当する部分に モータが設置してあり、関節部を曲げな がら人間の腕のように動いてさまざまな 作業を行なう。関節が多数あるので、 多 関節ロボットという。 また、 関節部分のモー タが直列(シリアル) につながっているこ とから、 シリアルリンク機構といわれている。 これに対して新型ロボットは、 各アーム を本体のモータでそれぞれ個別に制御 しながら、並列(パラレル) に接続して作 動させている。そこで、 この仕組みをパラ レルリンク機構と呼び、 パラレルリンクロボッ トといわれている。 パラレルリンク機構は、各アームを結 束した先端部に動力が集まるので、強 い力で高速の動作ができる。 また、 複数 のアームを協調させながら動かすことが できるので、 複雑な動きも可能だ。 多関節ロボットは自動車工場などで 溶接や塗装作業などに威力を発揮して いるが、 パラレルリンクロボットは、 コンベ ヤを流れる小物の仕分けや箱詰めなど、 今もその多くが人手、 あるいは専用設備 に頼っている作業の自動化に最適である。 ピッキングの対象物は太陽電池のパネル (左) 、 容器入り食品(オレンジゼリー、 中) 、 袋入り割箸(右) など大小、 硬軟を問わない。 とにかく動作が速く、 先端部の繰り返し精度が高い このロボット 「YF03N」は多くの特長 を備えているが、 まず、 とにかく動作が速 いことだ。アーム部分にCFRP (炭素繊 維強化プラスチック) を使用して軽量化 したので、 モータ動力の大部分を先端 部で利用できるため高速動作が実現し た。CFRPにより高強度・高剛性のアー ムになり、 可搬質量は3kgと大きい。 また、 直径1, 300mm、 上下方向500mmと動 作範囲が広いので、生産現場の多種 多様な作業に適用できる。 アームを結束した先端部に小型モー タと小型減速機を設置したので、先端 部の繰り返し精度が非常に高く、 正確な 作業と高い生産性をもたらす。またこれ により、 本体から先端部へ動力を伝える センターシャフト (スプラインシャフト)がな い構造になったので、 この部分の部品 交換などのメンテナンス不要という利点 が生まれた。 食品、薬品・化粧品、太陽電池などの 生産ラインに実績 食品工場での適用に備えて 万全の安全対策 食品工場などでは衛生管理のため、 生 産機材などを少なくとも毎日、 あるいは日 に何度も洗浄することがある。 「YF03N」 はその対策も万全だ。酸・アルカリ洗浄 液での丸洗いを想定して本体などの材 料を選んでおり、 また、 本体などの凹凸を できるだけ少ない形状にして洗浄液や ゴミが溜りにくいようにしている。さらに、 NSFインターナショナル[公衆安全衛生 の分野で国際的に認められた第三者 認証機関] よりクラスH1の認証を受けた オイル・グリースを使用しており、偶発的 に食品と接触しても安全である。 先端部での対象物の捕捉にはエア 吸引方式を採用しているが、 そのエア 機器の内蔵化など、 さまざまな要求に応 えられる十分な拡張性とオプション対応 性を有している。 「YF03N」の代表的な適用事例が、 ビジョンカメラとセットにしてランダムに流 れてきた製品を認識し、 コンベヤの位置 と同期させてロボットの動作を制御し、 例 えば、搬入コンベヤから搬出コンベヤに 移し替える・整列させる、 あるいは箱詰 めする作業などがあげられる。 「YF03N」は主に食品の生産ライン や薬品・化粧品の生産ライン、 さらには 太陽電池の生産ラインなどに適用され ており、川崎重工もこれらの分野を中心 に普及に力を入れている。 ● カワサキ・パラレルリンクロボット 「YF03N」は、 2009年4月の発売以来、 食品工場などの生産ラインへの導入例 が急増している。明石工場(兵庫県明 石市川崎町)では連日、引き合い企業 から提供された食品などを用いて厳し い適用試験を続けている。 照明 CCDカメラ 左:ベルトコンベヤ上を連続して不揃 いに流れてくる袋詰めされたCD (コ ンパクトディスク)ケースを、 エア 吸引で捕捉する。 中:持ち上げて移動する。 右:所定のスペースにきれいに並べて 置いていく。この一連の作業を猛 烈なスピードで的確に行なう。 3本 のアームが自在に伸縮して動い ているのが分かる。 ● P8・9で掲 載した写 真はすべて 川崎重工・明石工場で撮影した ものである。 8 ビジョンPC HUB ロボット コントローラ ロボット コントローラ ロボット コントローラ PLC ●適用事例 Kawasaki News 162 2011/4 9 スポーツモデル「W800」を新発売 「川崎式BK117C−2型 ドクターヘリ」を 朝日航洋(株)に納入 川崎重工は、 ヴィンテージモーターサイクルが 持つライディングフィールと美しさを追求したスポー 川崎重工は、 朝日航洋(株) に最新式の「川 ツモデルで、 カワサキ「W」シリーズの最新機種 「W800」 を新発売した。 「W800」は、 「W」シリーズ伝統の「バーチカ ルツイン」 (並列2気筒のシリンダが垂直に配列) を継承した、 ロングストロークの空冷4ストローク 並列2気筒SOHC4バルブエンジン (773cm3) を搭載。最大トルクを約2, 500回転/分で発生 し、 中低速回転域での力強さ、 扱いやすさと同 時に、 心地よい振動、 豊かな鼓動感を生み出し ている。燃料供給にはフューエルインジェクショ ンを採用し、 高度な空燃比制御により国内の新 排出ガス規制に適合する優れた環境性能を 実現。また、大径・細身のタイヤとトラディショナ ルなスタイルのサスペンションとの組み合わせに より、 軽快で扱いやすいハンドリングを実現した。 ヴィンテージモーターサイクルを思い起こさせる 独特のライディングフィールを楽しめる。 加えて、 クロームメッキ仕上げのエンブレムが 誇らしげな小ぶりの燃料タンクや、 深いタックロー ルが入ったシートなど、 シンプルでエレガントなデ お問合わせ先 (株)カワサキモータースジャパン お客様相談室 ザインが、 モーターサイクルの普遍的な美しさを 表現。フロントフェンダーをはじめ、車体各部に ふんだんに使われているメタルパーツは、 クロー ムメッキやポリッシュによる入念な表面仕上げ により、高い質感に加え深い艶と輝きを実現し ている。 「700T型」車両の納入などの実績に加え、 現在、 台北・桃園(旧称:中正)国際空港鉄道用車 両を製造中。今回のシステム受注は、 これらの 0120−400−819 川崎重工製車両の高い技術や信頼性とともに、 川崎重工グループの豊富な実績や技術力が 高く評価されたものである。 10 コンパクトで、 信号設備などに誘導障害を及ぼ さないのも特長のひとつである。 実証試験は、 東急電鉄・田園都市線つきみ 野変電所にBPSを設置し、 2010年8月から運 用している。今回の計測データに基づく試算で は、 省エネルギー量は年間約160万kWh、 CO2 圧安定化の効果が期待できることを実証した。 川崎重工が自社開発の大型ニッケル水素 電池「ギガセル®」を用いて開発したBPSは、 架線に制御装置なしで電池を直結できるのが 最大の特長。制御装置を用いないので低コスト ・ ※回生失効:鉄道車両の駆動モータをブレーキ時に発電機と して使い、発生した電力を回生電力という。回生電力は架 線に送るが、 その電力を使うほかの車両が近くにいないと安 全システムが働き、駆動モータは発電機として機能しない。 これを回生失効という。 Kawasaki News 162 2011/4 換算では年間約669t削減などのほか、電圧 補償などさまざまな効果が期待できることを確 認した。 ンパクトなボディと機動性のよさなどが高く評価 され、救急救命用ドクターヘリとして全世界で 使用されている。 コ ロ ネ ット 18万重量トン型ばら積み運搬船「FRONTI ER CORONET」を引き渡し 川崎重工は坂出工場において、 LUCKY HARVEST SHIPPING S. A. (ラッキー ハー ベスト シッピング エスエー)向け180型ばら積 み運搬船「FRONTIER CORONET」 を引 き渡した。 本船は、 川崎重工が開発した180型ばら積 み運搬船の第5番船で、 フランスのダンケルク 港に入港可能な船型としては最大級の積載 能力を有している。ばら積み運搬船の船体強 度に関する新規則(共通構造規則:CSR) を 適用し、安全性を一層向上させている。省燃 費型ディーゼル主機関および高効率タイプのプ ロペラ、 さらに川崎重工が開発したコントラフィ ン付きセミダクトや川崎フィン付きラダーバルブな ど最新の技術を採用し、推進性能を向上させ ることで燃料消費量を低減させている。また、 世界初、直流1, 500Vき電線に直結する「鉄道システム用地上蓄電設備」の実証試験に成功 川崎重工は、 東京急行電鉄(株) の田園都 市線において、 自社開発の「鉄道システム用地 上蓄電設備」 (BPS : Ba t t e r y Powe rSy s t em) の実証試験に成功した。試験は、 東京急行電 鉄(株)、 東急テクノシステム (株)、 富士電機シ ステムズ (株) の協力のもとに行ない、 一般的な 鉄道用電圧である直流1, 500Vき電線に直結 する鉄道システムでは世界で初めて、回生失 効※の抑制、 省エネルギーとCO2削減、 架線電 約30%向上、 騒音の低減などを図った最新機 種。機体後部に大きな観音開きドアを備え、患 者の搬出入が容易なことをはじめ、機内での 医療行為をしやすい広いキャビンスペース、 コ フ ロ ン テ ィ ア 台中市の都市交通システムの受注が内定 川崎重工は、仏アルストムトランスポート社お よび台湾CTCIと共同で、 台北市高速運輸部 から台中市都市交通システムの発注内示を受 けた。 2017年10月までにシステム全体を完工 させる予定。 ペイトン 受注が内定したのは、台湾・台中市内北屯 ウーリー 駅から烏日駅(台湾高速鉄道 台中駅) までの ウーリーウェンシンペイトン 18駅区間を結ぶ烏日文心北屯線(緑線) の新 規路線(路線総延長:約17km) に導入される、 無人運転型(2両編成) の都市交通システム。 今回の契約では、川崎重工はシステム全体を 統括するとともに、 車両36両(2両×18編成) を 製造し、車両基地設備を供給する。なお、 アル ストム社が信号システム、 CTCIが受変電シス テムを、 また、 通信システムおよび自動改札シス テム (AFC) は両社で担当する。 川崎重工は台湾では、台湾高速鉄道向け 崎式BK117C−2型ヘリコプター」 を納入した。 本件は、 「C−2型」ヘリコプターとしては国内 17機目の納入で、 救急救命用ドクターヘリとし て運用される。 「川崎式BK117ヘリコプター」は、 川崎重工 と欧州のヘリコプターメーカーECD社(ユーロ コプタードイツ社)が共同開発した中型双発機 で、 物資・人員輸送、 消防・防災、 警察、 ドクター ヘリなど幅広く活用されている。 「C−2型」は 「BK117ヘリコプター」の特長を生かしながら キャビンスペースの約30%拡大、航続距離の 燃料油タンクの二重船殻構造化および甲板機 器の電動化により、 万一の際の海洋汚染を防止。 さらに、 バラストタンクの腐食防止対策として定 められた新塗装基準(PSPC) を適用し、 塗装 の高品質化を達成した。 ベトナムにセメント製造プラントを引き渡し 川崎重工は、 ベトナム建設省のベトナムセメ ント公社(本社:ハノイ市)傘下のブットソンセメ ントジョイントストックカンパニーに、 セメント製造 プラントを引き渡した。 本プラントは、 ハーナム省キンバン地区にある 既設セメント工場の増設工事として受注したも の。ベトナムでは大型となる日産4, 000tのセメ ントプラントで、 原料受入から粉砕、 焼成、 セメン ト出荷までを一貫して行なえる。川崎重工は、 原料受入からセメント出荷までのプロセス機器 一式の設計、 納入および土木工事・据付工事・ 試運転の技術指導をすべて担当した。今回 の増設工事により、 ブットソンセメントジョイントストッ クカンパニーの生産能力は倍増し、 増大する同 国のセメント需要に応えられるとともに、 本プラン トは高性能集塵設備および低騒音・低振動機 器を採用しており、環境保全にも大きく貢献す ることになる。 世界最高水準の発電効率を誇る「カワサキグリーンガスエンジン」を受注 川崎重工は、 国内大手の化学メーカーが自 家消費する電力・蒸気・温水を供給するための コージェネレーションシステム用に、 世界最高水 準の発電効率を誇る「カワサキグリーンガスエ ンジン」 シリーズの最大機 (発電出力: 7, 800kW) を受注した。川崎重工はシステム全体の設計 から機器製作、据え付け、試運転までの工事 一式を請け負う。 川崎重工が自社開発した「カワサキグリーン ガスエンジン」は、発電効率が世界最高水準 の48. 5%で、 NOxの排出量は200ppm以下 (O2 =0%換算) という低さを誇る、 経済性・環境性 に優れた画期的なガスエンジンである。同じ出 力クラスのガスエンジンと比べて燃料費を5% 以上削減することが可能で、 また、 NOx排出 量が少ないため全国のほぼ全域で脱硝装置 が不要だ。 しかも、軽量・コンパクトで、電気着 火方式なので液体燃料を必要とぜす、 30%〜 100%という幅広い発電領域において高い発 電効率を維持できるなどの多くの特長を有して いる。 11 ロールス ・ロイス社の最新鋭旅客機用エンジン ト レ ント 「Trent XWB」の中圧圧縮機モジュールを初出荷 ー 川崎重工は、 「ジェットスキー」シリーズの最 現在、同社と共同開発を進めている。川崎重 工は同プログラムにおいて、 IPCモジュールの設 計・製造・組立を担当し、 2010年3月より部品単 位で納入していたが、 今回、 IPCモジュールの 部品製造から組み立てまでの工程を完了し、 モ ジュールとして初出荷したもの。最新の設計・製 造技術を取り入れているIPCモジュールは、 エ ンジンを構成する8個の主要なモジュールのひと つで、 ファンから送り込まれた空気を昇圧して高 圧圧縮機に送り込む機能と役割を持っている。 なお、 川崎重工がIPCモジュールの設計・製 造・組立を担当するのは、 「Trent 1000」に 続いて2機種目となる。 川崎重工は、 英国ロールス・ロイス社の最新 鋭旅客機用エンジン「Trent XWB」の中圧 圧縮機(IPC) モジュールの組み立てを完了し、 同社のダービー工場に初出荷した。 「Trent XWB」は、 現在8機がラインアップ されているロールス・ロイス社「Trentシリーズ」 の最新モデルで、 仏国エアバス社が開発中の 新型旅客機「A350XWB」への搭載が唯一 決定しているエンジンである。 川崎重工はこのエンジンの開発・生産プログ ラムに、 開発・製造コストやリスクを応分に負担し、 利益の配分を受ける 「リスク&レベニュー シェ アリング パートナー (RRSP)」方式で参画し、 オ 「ジェットスキー」シリーズの最上級機種 「ジェットスキー ULTRA 300X」を新発売 上級機種「ジェットスキー ULTRA 300X」 を 新発売した。 「ジェットスキー ULTRA 300X」は、水冷 4ストローク4気 筒DOHC4バルブエンジン (1, 498cm3) に、新型EATON製TVS (2個 のスクリュー型(四葉) ロータで連続的に過給 する方式) ルーツ式スーパーチャージャーを搭載。 従来モデルより出力を大幅に向上させるとともに、 スムーズなスロットルレスポンスを実現。船体には、 高剛性と軽量化を両立させた新設計のディー プV型ハルや、 ジェットポンプノズルの上下角度 が調整可能なエレクトリック・ トリム・コントロール を採用し、 荒れた水面でも優れた操縦安定性と、 高い旋回性能を備えている。 なお、 この「ジェットスキー ULTRA 300X」 と共通のエンジンと船体に、 ホールド性と快適 性に優れたラグジャリーシートを採用し、 外装に メッキパーツやメタリックペイントを用いて質感を 向上させた「ジェットスキー ULTRA 300LX」 も新発売する。 両機種とも、 燃費効率を優先したエンジンマッ ピングのフューエル・エコノミー・アシスタンス・モー ドや、 燃費効率のよい走行時に点灯するエコノ ミカル・ライディング・インジケーターなど、低燃費 運転を支援する新機構を採用。 また、 2011年 モデルから導入される (社) 日本舟艇工業会の 国内排出ガス二次規制をクリアするとともに、 世界で最も厳しいといわれる米国カリフォルニ ア州大気資源局 (CARB) の最高基準値 (スリー スター) にも適合する高い環境性能を実現して いる。 セ ン ト 新型ホイールローダ「AUTHENT50ZV−2」を新発売 川崎重工グループの (株) KCMは、 新型ホイー ルローダ「AUTHENT50ZV−2」 (バケット容 量: 1. 3m3) を新発売した。 本 機 は 、国 内 市 場 で 好 評を 得 ている 「AUTHENT50ZV」 をベースに、 第3次排出 ガス規制に対応した最新鋭機である。高出力・ 高トルクを実現するとともに、排出ガスに含まれ る窒素酸化物(NOx) および粒子状物質(PM) を大幅に削減した米国カミンズ社製の最新鋭 エンジン (排気量: 3. 26リットル) を搭載し、 国が 定める 「特定特殊自動車排出ガスの規制等に 関する法律」 (オフロード法) に適合している。 本機はこのほか、軽作業時などにエンジン 出力を抑えたモードを任意に選択することで燃 料を節約できるフューエル・エフィシェント (FE) モードを採用、 荷こぼれの少ない大きなバケット 後傾角(50度・運搬姿勢時) でロード&キャリー における実作業量を確保、 十分な高さのクリア ランスとリーチで余裕の作業能力を実現、 エア クリーナのダブルエレメント化によりフィルタ交換 時の異物混入を防止、 アルミ製ラジエータコア の採用によりラジエータの耐食性が向上する など多くの特長を備えている。 「ジェッ トスキー ULTRA 300X」 韓国石油公社に天然ガス圧縮機を出荷 お問合わせ先 株式会社KCM 079−495−2309 細胞自動培養ロボットシステム「オートカルチャー®」が、 「第3回ひょうごものづくり技術大賞」の兵庫県知事賞を受賞 川崎重工が開発した細胞自動培養ロボット システム「オートカルチャー」が、 (社)兵庫工業 会主催の「第3回ひょうごものづくり技術大賞」 の兵庫県知事賞を受賞した。 本システムは、 創薬研究(製薬企業における 新薬開発)や再生医療分野の研究に不可欠 な細胞培養をロボットシステムによって自動化し たもの。細胞の培地(培養液)交換や継代[増 殖した細胞を切り分け、 別のシャーレ (培養皿) に分植する作業] など人手がかかり、 熟練者の 技量が必要な作業をすべて自動で使い勝手 よく行なうことができ、 しかも作業の信頼性向上 が期待できるシステムである。 創薬用自動培養システムでは、培養が難し いi PS細胞(いわゆる万能細胞) の自動培養に 世界で初めて成功した実績がある。 また、 再生 医療用に、多人数の細胞を同時に高品質・高 効率で完全自動培養する実用機を開発して おり、新薬開発や再生医療への貢献が大きく 期待されている。 「カワサキワールド」の来館者が3月31日、 100万人を記録 川崎重工グループの企業ミュージアム「カワ サキワールド」 (神戸海洋博物館内)のオープ ン以来の来館者が3月31日、 100万人に達した。 100万人目となったのは尼崎市から来られたご 家族連れで、 「カワサキワールド」ではこれを記 念してセレモニーを実施。該当者に100万人目 の認定書とカワサキモーターサイクルの模型な どの記念品を贈呈した。 12 Kawasaki News 162 2011/4 「ジェッ トスキー ULTRA 300LX」 「カワサキワールド」 (2006年5月オープン) は、 川崎重工グループの歩みや陸・海・空に展開す る幅広い製品を実機を交えて紹介するとともに、 未来を担う子供たちが ものづくりの素晴らしさ と楽しさ を感じ、 科学技術への興味を持つきっ かけとなることを目指した、 見て・触れて・体感 できる ユニークな企業ミュージアムである。 川崎重工は、 韓国石油公社が韓国ウルサン 沖で推進する東海−1ガスプラットフォーム改修 工事 (第2期工事) 向けに、 既設のガスコンプレッ ションモジュールに増設される天然ガス圧縮機 2基を神戸工場から出荷した。 ガスコンプレッションモジュールは、限られた 洋上プラットフォーム上のスペースを有効に活 用するため、圧縮機を中心に駆動機・ガスクー ラー・スクラバー・バルブ・制御装置などの機器 をコンパクトにまとめた設備で、 洋上で昇圧した 天然ガスを海底パイプラインで陸上へ圧送す るものである。 出荷した天然ガス圧縮機は、 東海−1ガスプ ラットフォームの長年のガス生産による天然ガス 貯留層の圧力低下に対応して、 ガスコンプレッショ ンモジュールの昇圧能力を向上させるために 設置するものだ。同プラットフォームの既設の ガスコンプレッションモジュールは、川崎重工が 2008年に納入したもので、 当初から天然ガス 貯留地層の圧力低下を想定して圧縮機が増 設できるように設計・製造されており、 十分な安 全性とメンテナンススペースをモジュール内に 確保してある。 パキスタン最大規模の尿素製造設備が完工 川崎重工と双日 (株)は、 パキスタンの有力 財閥であるファティマグループのファティマファー ティライザー社(本社:ラホール市) の肥料工場 向けに、 中核プラントである尿素製造設備を完 工し、 引き渡した。 パキスタン中部のサディカバット市近郊に建 設したこの肥料工場は、近隣のマリガス田で 産出される天然ガスを原料にして、 アンモニア から尿素など各種の合成肥料を生産するもので、 1日当たり1, 500 tの尿素を生産する同国最大 級の設備である。 この案件では双日が契約の取りまとめを担 当し、川崎重工は尿素製造設備の納入や肥 料製造設備全体のエンジニアリングおよびプロ ジェクトマネジメントを担当した。 なお、 川崎重工と双日は、 中央アジアのトルク メニスタンで同国最大の肥料製造設備を受注 し、国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保 険(NEXI) のフルサポートのもとに事業を進め ている。 ふたつのプロジェクトとも、 それぞれの国の農 業振興・雇用促進に大きく寄与するものと期待 されている。 川崎重工の最新情報はホームページでもご覧いただけます。 http://www.khi.co.jp 13 金山平三の世界 《一番桜》 1954(昭和29)年 相 良 周 作 ︶ ︵ 兵 庫 県 立 美 術 館 学 芸 員 わ れ わ れ に 伝 え て い る か の よ う で あ る ︒ 花 開 く た く ま し い 生 命 力 を ︑ 喜 び を 持 っ て を 身 に ま と い ︑ 北 国 の 長 い 冬 を 越 し て 春 に 筆 致 で 表 現 さ れ た 桜 の 木 は ︑ 華 や か な 色 彩 40.7×53.0cm 半 生 に 特 に 顕 著 な ︑ 激 し さ す ら 感 じ さ せ る と 水 面 の 平 静 な 描 写 を 背 景 に ︑ 金 山 の 後 よ う な や や 鈍 い 灰 褐 色 で 示 さ れ て い る ︒ 空 大 半 を 占 め る 空 は ︑ 曇 天 の 様 相 を 呈 す る 入 念 な 筆 致 で 表 現 さ れ て い る ︒ 一 方 ︑ 画 面 の 油彩・布 映 し 出 す ほ ど に お だ や か な 水 面 の よ う す が ︑ 描 か れ て い る ︒ 遠 く の 山 の 稜 線 を 逆 さ ま に 水 面 を 望 む 情 景 と ︑ そ の 前 に 立 つ 桜 の 木 が 兵庫県立美術館蔵 こ こ で は お そ ら く 十 和 田 湖 畔 と お ぼ し き 乏 し い と 綴 っ て い る ︒ い 割 に 肌 寒 い 気 候 が 続 き ︑ 絵 に な る 情 景 に 人 に あ て た 書 簡 の 中 で ︑ こ の 年 は 雪 も 少 な み に 金 山 は ︑ 本 作 を 完 成 さ せ る 前 に ら く 夫 和 田 に 滞 在 中 描 か れ た も の だ と い う ︒ ち な ︵ 昭 和 二 十 九 年 ︶ 四 月 か ら 翌 月 に か け て ︑ 十 れ た 年 譜 に よ る と ︑ こ の 作 品 は 一 九 五 四 年 料 と し て 重 要 で あ る が ︑ そ の 末 尾 に 編 集 さ 今 も な お 金 山 研 究 に お け る 第 一 級 の 基 礎 資 り 刊 一 九 行 七 さ 六 れ 年 た ︵ 浩こう 昭 瀚かん 和 な 五 ﹃ 十 金 一 山 年 平 ︶ に 三 日 画 動 集 出 ﹄ 版 は よ ︑ 金山平三と川崎重工 金山平三画伯は、1883年(明治16年)神戸に生まれ、1964年(昭和39年)80歳で生涯を終えました。 1909年(明治42年)東京美術学校(現在の東京芸術大学) を首席で卒業した後、 欧州各地で制作を重ね、 1916年(大正5年) には、 第10回文展に出品した作品が特選第二席になりました。生涯にわたって旺盛な創 作活動を続け、 自然風土を相手に多くの名画を残し、 その業績は近代洋画史上に燦然と輝いています。 川崎重工は第11回文展に出品された「造船所」が縁となり、 その後、 交流を深めました。画伯の晩年には、 自選作品138点の永久保管の依頼を受け、 その作品を預かるほどでした。後になり川崎重工は、 一部の作 品を残して、 兵庫県立近代美術館(現・兵庫県立美術館) にすべて寄贈しました。 激十 し和 く田 華の や花 か曇 なり 桜の の下 木︑
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