現 場 を 訪 ね て このたびの東日本大震災により被災されました皆さまに 心よりお見舞い申し上げます。 川崎重工グループといたしましても、 できる限りの支援活動を 実施してまいります。 被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。 川崎重工業株式会社 KMM本社・リンカーン工場 (ネブラスカ州) 現場を訪ねて ジェットスキー®など 新モデルの生産ライン 米国ネブラスカ州で最大の生産工場である KMMリンカーン工場(CP部門)を訪ねて 82 イラストぎじゅつ入門−⃝ 航空機に周波数の安定した 電力を供給する、新開発の 発電装置「T−IDG®」のしくみ 5 川に見る・日本の四季⃝ 木曾川水系の「春」を追う み な も ダム湖の水面を彩る 絢爛たる桜の帯。 新製品・新技術 不思議な形のロボットが超高速で自在に動く 川崎重工の高速ピッキングロボットが食品工場などで活躍 ※都合により、 「最前線カメラルポ」は休載しました。 ●表紙説明● ベルトコンベヤ上を不揃いに流れてくる、色とりどりの CD (コンパクトディスク) ケースのひとつに、 複数のアームを 束ねた先端が素早く近づき、 エア吸引する−川崎重 工の高速ピッキングロボットの試験風景のひとコマです。 “電気炊飯器”の形状をした本体から突き出て先端で 結束された3本のアームが、 超高速で自在に動いて小物 の仕分けや箱詰めなどに威力を発揮する高速ピッキング ロボットは、パラレル(並列) リンク機構によるユニークな ロボットです。 カワサキ・パラレルリンクロボット 「YF03N」は、 2009年4月の発売以来、 食品工場や太陽電池パネルな どの生産ラインで活躍しています。 (詳しくは「新製品・新 技術」 をご覧ください)。 発 行……2011年4月 編 集 ……川崎重工業株式会社 広報部 発行人 広報部長 西野 光生 東京都港区浜松町2ー4ー1 世界貿易センタービル TEL 03-3435-2133 http://www.khi.co.jp 新モデル「ジェッ トスキー ULTRA 300X」の 生産ライン。 1 現 場 を 訪 ね て 多用途四輪車「MULE61 04x4」 (Spec i a lG r a ph i cEd i t i on) RUV「Te r y x750F I4x4LE」 ATV 「B r u t eFo r ce7504x4 iEPS」 品質・生産効率の向上を目指して 2 134万4, 000m という広大 な敷地を有するKMMリン カーン工場の全景。手前の 建屋群が1 975年に操業を 開始したCP部門。 ジェットスキー のシーズンを控えた、 米国ネブラスカ州で最大の生産工場である KMMリンカーン工場(CP部門) 操業開始以来35年、 米国社会に溶け込んで活動 米国ネブラスカ州。 米国のほぼ中央に位置するこの州の 州都、 リンカーンの郊外にKawasaki Mo tors Manuf ac tur i ng Corp. , U. S. A. (KMM 社長:朝野松弘) リ ンカーン工場がある。 1975年、 わが国の二・四輪車業界の トップを切って、 マーケットニーズに迅速 に対応するため、顧客に最も近いところ で生産するという思想のもとに、米国で モーターサイクルの生産を開始したとい う誇りある歴史を有している。 このリンカーン工場が先駆けとなり、 以後、 米国ではKawas ak i Ra i l Car, Inc(K . RC) ヨンカース工場(鉄道車両 の最終組立・艤装など、 ニューヨーク州) 、 KCMニューナン工場(建設機械の組 み立て、 ジョージア州)、 KMMメアリービ ル工場(汎用ガソリンエンジンの生産、 ミ ズーリ州) などが設立された。 また、 米国 以外での現地生産工場などの設立も続 き、川崎重工のグローバル化が着実に 進んでいった。 ちなみに現在、 川崎重工の海外事務 所は3か国4か所、海外関連企業は20 か国56社となっている。 リンカーン工場は操業開始以来35年。 米国社会にしっかりと根を下ろして活動 し、 ネブラスカ州における最大の生産工 場として現地経済の発展や雇用に貢献 している。 リンカーン工場には、 今回紹介 するCP (Consume r Produc t s :一般 消費者向け製品)部門と本誌前号(161 号) で紹介した車両部門があり、 従業員 数はそれぞれ約1, 100名と約550名で 合計約1, 650名。 このうち、 川崎重工か らの出向者は両部門で21名にすぎず、 経験豊富な米国人により自主的な運営 が進んでいる工場である。 「地域のボランティア活動や、 ネブラス カ大学をはじめとする地元の学校運営 をサポートするなど、 良き隣人として地域 に溶け込んで活動しています」 (リンカー ン工場CP部門の久留島正信ゼネラル マネージャー (GM)) 久留島正信ゼネラルマネージャー (右) とマイク・ ボイル副社長兼プラントマネージャー (左)。 2 Kawasaki News 162 2011/4 2010年に 累計生産300万台を達成 2 リンカーン工場は134万4, 000m(約 41万坪) という広大な敷地を持ち、 CP 2 部門の建屋面積も約17万m(約5万 2, 000坪) という巨大なものである。 「1975年の操業開始時に比べて建 屋面積は4倍近くに広がりました。この 35年の間には、 時代の要求に応える形 で生産品目に変遷があり、 現在は日本に も輸出しているパーソナルウォータークラ フト 「ジェットスキー」、 それにATV (四輪 バギー車) 、 レクリエーションユーティリティー ビークル (RUV)、多用途四輪車などが 主力で、 ほかに同業製造メーカーからの 依頼でタイヤホイールを生産しています」 (久留島正信GM) CP部門では2010年9月、操業開始 以来のATV、 ジェットスキーなど完成車・ 完成艇の累計生産が300万台に到達し、 リンカーン工場の全従業員が参加して 記念セレモニーを開いたという。 たゆまぬ努力 リンカーン工場(CP部門)は、大別 して5つの建屋で構成されており、 それ ぞれにジェットスキーやATVなどの生 産ラインなどが設けられている。KPS (Kawas ak i Produc t i on Sys t em= ジャスト ・イン・タイムを基本に、 徹底してム ダを排した川崎重工創案の生産管理シ ステム) に基づき、常に品質と生産効率 の向上に取り組んでいる。 その運営は、 “人財”の育成、 しくみ (KPS) の発展、 それに新しい技術と設 備の導入に支えられている。 例えば、 ジェットスキーの船体は、 専用 ローダ装置とSMCプレス機による成型、 およびカワサキロボッ トを活用したウォーター ジェットによる穴あけ加工などを適用する ことで生産性の向上と精度の高い製品 を生み出している。また、 ATVをはじめ とする四輪車の意匠部品に適用してい るグラフィック・ディッピングは、 予めデザイ ンが印刷されたフィルムを直接製品に転 写する。ここでもロボットを活用した効率 的な生産が行なわれている。ほかにも四 輪車の部品溶接やジェットスキーのボン ド塗布、 ホイール製造における工程間の ハンドリングなど、 多岐にわたる工程でそ れぞれの用途に合わせロボットを導入し ている。 さらに最新のRUV組立ラインでは、 リ フター付き組立台車により作業内容に 応じて自動的に高さ調整ができる仕組 みになっており、 常に作業者が最適な姿 (上) SMCプレス機からジェットスキーのボディ が成形されて出てきた。 (下) その巨大なSMC プレス機の全容。ジェッ トスキーのボディは次の 工程へ送られていく。 勢で作業できる環境を整備し、生産性 だけではなく安全確保にも積極的に取り 組んでいる。 「こうした取り組みのほか、 より一層の Qua l i t y (品質) 、 Co s t (コスト) 、 De l i ve ry (納期)の向上を目指して鉄道車両向 けも含め、完成品の生産に加えて部品 の内 製 化も積 極 的に進めています」 (久留島正信GM) (中) 2010年9月にリンカーン 工場の全従業員が参加して 開かれた“3 0 0万台達成記念 セレモニー”。 (右) セレモニー でスピーチを述べるKMMの 朝野松弘社長。 (左) 3 0 0万台 目となったRUV 「T e r y x7 5 0」。 グラフィック・ディッピングは、予めデザインが印 刷されたフィルムを水面に浮かべ、 カワサキロボッ トがボディを水中に沈めて引き揚げると転写さ れる仕組みである。 厳しい時期を切り抜け、 回復基調に確かな手応え 「工場がよりスムーズに、効率的に稼 働することに配慮し、 また、 経営目標に向 かって最善の努力をしています」 と話す マイク ・ボイル副社長兼プラントマネージャー はこう続けた。 「過去は右肩上りの業績が続いてい ましたが、 リーマン・ショックの影響などに よる低成長という厳しい経験もしました。 しかし、 ようやく厳しい時期も切り抜け、 今は回復基調にあり、 未来は明るいと信 じています」 ● KMMリンカーン工場(CP部門) では、 夏のシーズンを控えてジェットスキーの 生産ラインが活況を呈しており、 また、 ATVなどの生産ラインも回復基調を反 映して活気を帯びている。 3
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