2 9.ソーラーカー(太陽電池自動車) 1 ソーラーカーのしくみ ソーラーカーは太陽の光を受けて電気を起こす太陽電池をエネルギーとして走行します。最近では世界各地 で自動車メーカー、材料メーカー、大学などが制作したソーラーカーによるレースが行なわれ、日本の自動 車メーカーが制作したソーラーカーも活躍しています。ソーラーカーはまだ性能の点で実用化は困難ですが、 きわめてクリーンなエネルギーを使用するのが大きな魅力となっており、今後の太陽電池の性能向上が期待 されます。 モーター 太陽光 ソーラーカーの特徴 ソーラーカーは太陽のエネルギーで走るクルマですが、太陽のエネルギーといっても屋根に置く太陽熱温水 器のように熱のかたちで利用するのではなく、太陽の光をクルマの上面に貼った太陽電池により電気に変え、 その電気でモーターを回しクルマを走らせるのです。 太陽電池という名前からすると電気を蓄えられそうに思えますが、実は光を電気に変換する能力しかないの で、クルマに太陽の光が当っている間はよいのですが、光が当らなくなると電気が流れなくなってしまいま す。太陽の光は雲がかかったり、雨天の場合ばかりでなくクルマがトンネルの中やビルの谷間を通る時もク ルマに当たらないので、太陽電池だけだとクルマが急に止まってしまいます。そのため、太陽の光が変化し てもクルマが一定の条件で走ることができるよう太陽電池で発電した電気を一時蓄えておく補助バッテリー をソーラーカーは積んでいます。 このようにソーラーカーには補助バッテリーが必要ですが、太陽の光は薄く分散したエネルギーであり、クルマ の上面で受けるエネルギー量が限られていますから、積むバッテリーを少なくして、クルマ自体を軽くしな いとソーラーカーを走らせることはできないのです。 ソーラーカー「RaRaⅡ」 太陽電池 減速 タイヤ バッテリー バッテリー トラッカー モーターコントロール 計器盤 モーター ペダル 資料:トヨタ自動車 ▲スタンフォード大学 サンサーファー号 ソーラーカーの太陽電池によって発電された電池は、太陽エネルギーの変動に伴って変化するが、変化する 電気をそのまま流してはモーターやバッテリーをうまく使うことができないので、太陽電池で発電した電気 をパワートラッカーを介して常に一定の条件の電気に調整してから、バッテリーやモーターに流すようにし ています。 また、バッテリーは太陽電池が発電する電気の過不足を調節する役目として、太陽電池とモーターの間の電 気回路に入れられています。太陽電池が発電した電気が余った時はバッテリーに充電しておき、太陽電池の 発電量だけで不足する時は、バッテリーから取り出して使うようになっています。 太陽電池からトラッカーを経由しバッテリーまでの間の電気は直流ですが、ソーラーカーは電力消費を少な くするため効率のよい交流モーターを使うことが多く、直流の電気をインバーターにより交流に変換し、モ ーターの回転を制御して使っています。 このように、電力系として必要なのは、クルマの上面に貼られた太陽電池と、内部に搭載されるトラッカー、 モータードライバーとモーター、そしてバッテリーであり、これらの部品は走行抵抗が少ないソーラーカー を動かすのに足る性能があればよいので、それぞれがたいへん小型で軽量となっています。 現在、ソーラーカーは未だ開発、実験段階ですが、ソーラーカーの特徴である走行システムや車体の軽さ、そ して電力源の小ささを等を考えた場合、将来的に一人または二人までを乗せることが限度のクルマとして、 歩行者や自転車と共存して走る住宅地やパーソナルユースのクルマに適しているといるといわれています。 資料:「ソーラーカー」後藤公司 日刊工業新聞社
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