論文の 論文の内容の 内容の要旨 Titel of Thesis: Catalytic Asymmetric Synthesis of Non-natural Amino Acids using Homodinuclear Schiff Base Catalyst 論文題目: 論文題目:新規ホモ 新規ホモ二核 ホモ二核シッフ 二核シッフ塩基触媒 シッフ塩基触媒の 塩基触媒の開発と 開発と 四置換不斉炭素中心を を有する非天然 四置換不斉炭素中心 する非天然アミノ 非天然アミノ酸 アミノ酸の触媒的不斉合成への 触媒的不斉合成への応用 への応用 氏名: 氏名: 陳 志華 【目的 目的】非天然型アミノ酸は医薬品や生理活性化合物の設計のために有用な合成素子である。 目的 しかし、四置換不斉炭素中心を有するアミノ酸の触媒的不斉合成法は限られている。博士課 程では、私は独自の手法による非天然アミノ酸(四置換不斉炭素中心を有するα-アミノ酸、 β-アミノ酸、γ-アミノ酸、α,β-ジアミノ酸)の合成法の確立と応用に取り込んできた。 【触媒設計 触媒設計】触媒中に 2 つの金属を組み込むことで、2 点相互作用によって求核剤と求電子 触媒設計 剤との位置関係を精密に制御するというコンセプトに基づき、独自触媒の設計と開発に着手 した 1)。そして、触媒のジアミン部の配座や両金属間の位置関係を分子モデルにより検討し、 選択性や反応性との相関関係を実験により検証した結果:ビナフチルジアミン型シッフ塩基 二核配位子が有効であることを見いだした。最終的に空気中でも安定な Fig 1 Structures of bimetallic Schiff base complexes 新規ホモ二核 Ni2 触媒 1 と Co2 触媒 2 を開発した(Fig 1)。触媒の構造は ESI-MS 実験と元素分析で確認した。種々の検討で、市販の化合物から 二工程で、カラム、結晶化などの精製を必要としない触媒調製法を確立 した。またホモ二核シッフ塩基触媒は従来型のサレン触媒と異なる性質 N N M をもち、様々な反応で高い有用性を示したため、Ni2 触媒は 2009 年夏か O O ら和光純薬より市販化された。 M O O 1: M=Ni(II) 2: M=Co(III)-(OAc) 【結果 結果 1】ホモ ホモ二核 ホモ二核 Ni2-Schiff 塩基触媒を 塩基触媒を用いた 4 置換不斉炭素中心を 置換不斉炭素中心を 有するα,β アミノ酸前駆体 するα,β-ジアミノ α,β ジアミノ酸前駆体及 ジアミノ酸前駆体及び 酸前駆体及びβ -アミノ アミノ酸前駆体の 酸前駆体の合成 四置換不斉炭素中心を有するα,β-ジアミノ酸に関しては、研究開始当時、唯一 Jørgensen ら により報告例があるものの、一般性の高い手法とは言えなかった。私はホモ二核 Ni2 触媒を 用いることで、α-置換ニトロ酢酸エステルを求核剤とする不斉マンニッヒ型反応によるα位 に 4 置換不斉炭素中心を有するα,β-ジアミノ酸の合成法を確立した 2)(Scheme 1)。Ni を一つ だけ含む従来型のサレン触媒では低い選択性と反応性しか得られず、新規ホモ二核 Ni シッ フ塩基触媒における、配位環境の異なる Ni 同士の特異的な協奏効果が重要であることが示 唆された。推定している触媒サイクルを Fig 2 で示した:まず、ニッケル触媒によって、ニ トロ酢酸エステルが脱プロトン化される。そして、もう一つのニッケルがイミンを活性化し、 anti-periplanar のような遷移状態から反応が進行することで、anti 体の生成物を与え、プロト ン化を経て触媒が再生されると考えている。また、Ni2 触媒はβ-ケトエステル、β-ケトホスホ ネート、マロネートにも適用可能で、対応する四置換不斉炭素中心を有するβ-アミノ酸の前 駆体を与えた 3) (Scheme 2)。 Scheme 2 Mannich-type reactions of other donors Scheme 1 Asymmetric synthesis of α-tetrasubstituted anti-α,β-diamino acid surrogates N Boc + R R1 2 Boc cat. Ni2-1 Boc NH CO2tBu (1-10 mol %) THF, 0oC NO2 CO2Et Ph CO2tBu R1 2 MeOC β-keto ester NO2 R 96-67% yield dr: >97:3-86:14 >99-91% ee R1 = aryl, heteroaryl, alkyl R2 = Me, Et, n-Pr, Bn Boc NH Boc O NH NH CO2Me Ph Ph (EtO)2OP MeO2C β-keto phosphonate malonate 83% yield dr: >15:1 96% ee 83% yield 96% ee 99% yield dr: >20:1 99% ee Fig 2 Postulated Catalytic Cycle N N N O2N Ni O O Boc R1 O OtBu NH CO2tBu R2 NO2 anti product R2 O R1 H N O O Ni O O HO O N OtBu R2 O OtBu N O O R2 Ni O CO2tBu N Ni Boc N Ni R1 Ni O Transition state 【結果 2】 】ホモ二核 アミノ酸前 ホモ二核 Co2-Schiff 塩基触媒を 塩基触媒を用いた 4 置換不斉炭素中心を 置換不斉炭素中心を有するγ するγ-アミノ アミノ酸前 駆体の の合成及び ケトエステルの 駆体 合成及びβ -ケトエステル ケトエステルのアルキノンへの アルキノンへの不斉 への不斉 1,4 付加 次に、私は他の金属や他の反応へと私のコンセプトを拡大することを目指した。種々条件 検討の結果:ホモ二核 Co2 触媒を用いることで、従来にない温和な条件下(室温、solvent-free、 空気存在下)、β-ケトエステルのニトロアルケンへの不斉 1,4 付加に成功し、四置換不斉炭素 中心を有するγ-アミノ酸前駆体の合成を達成した(Scheme 3)。本反応において、Co 触媒は 再利用が可能で、触媒量は 0.1 mol %まで低減できる。また、アトムエコノミーは 98%に達し、 非常に実用性の高い反応と言える 4)。単核の Co Schiff 塩基触媒では選択性が低いことから二 核 Co の重要性が同様に示唆された。また触媒の速度論実験と線形効果実験から、ホモ二核 シッフ塩基触媒は従来型のサレン触媒と異なる性質を示した。 さらに、私は次の基質としてアルキノンに注目した。アルキノンの反応性は高く、強い求 核剤を用いた場合は生成物の制御が困難である。私は Co エノラートの温和な求核力を活か し、極めて温和な条件下下β-ケトエステルのアルキノンへの 1,4 付加にも成功した 4)(Scheme 4)。 Scheme 4 Asymmetric 1,4-addition of β-keto esters to alkynones Scheme 3 Asymmetric synthesis of α-tetrasubstituted γ−amino acid surrogates cat. Co2(OAc)2-2 O O O O R1 O 4 (0.25-2.5 mol %), rt O R O C + 2 cat. Co (OAc) -2 2 2 MeO2C 1 R3 then, Ph MeP O2N O N R 2 (0.1-2.5 mol %) 2 R3 R1 R1 + R2 solvent-free R4O2C R2 MeO2C n solvent-free,rt n 1 (1.1 eq) R1 = aryl, 3c,3d: R2,3 = -(CH2)3 or 4-, R4 = tBu 96-83% yield >99-77% yield R = aryl, heteroaryl, 3a n = 1 heteroaryl, 3e: R2 = Me, R3 = Me, R4 = tBu dr = >30:1-9:1 E/Z = >30:1 alkyl alkyl 3b n = 2 99-92% ee 3f: R2 = Et, R3 = Me, R4 = tBu 99-91% ee α-二置換 二置換アミノ 【結果 結果 3】ホモ ホモ二核 塩基触媒を用いた変換可能 いた変換可能な 変換可能なα,α 二置換アミノ酸前駆体 アミノ酸前駆体の 酸前駆体の合 ホモ二核 Ni2-Schiff 塩基触媒を 成 α,α-二置換アミノ酸は(-)-sphingofungin F、kaitocephalin、 、(-)-manzacidin c など様々な生理 活性物質に多く存在する骨格である。例えば、(-)-sphingofungin F に見られるユニットの合 成に有効と考えられる化合物 4 は、ニトロ酢酸エステルの 1,4 付加反応によって合成可能で はないかと考え検討に着手した(Fig 3)。 私はまずホモ二核 Ni 触媒を用いることで、極めて温和な条件下でα-置換ニトロ酢酸エステ ルとアルキノンへの 1,4 付加に成功した(Scheme 5)。しかし、様々なホモ二核触媒を用いて も、α-置換ニトロ酢酸エステルの propiolate への付加は反応が進行しなかった。これは propiolate がアルキノンに比べて求電子性が低いことに問題があると考え、そこでより反応性 の高い alkynoate 等価体でこの問題を解決できないと考えた。種々条件検討の結果、ホモ二核 Ni 触媒を用いることで、室温条件下でα-置換ニトロ酢酸エステルと propynoylbenzimidazole の 1,4 付加を達成し、変換可能な官能基をもったα,α-二置換アミノ酸前駆体が得られた (Scheme 6) 。また得られた変換可能なα,α-二置換アミノ酸前駆体のイミダゾル部位はエステ ル等価体として、温和な条件下でエステル、アミドへと変換が可能である(Scheme 7)。 Fig 3 Structure of (-)-sphingofungin F and synthetic plan of α,α-disubstitued amino ester precursor with functional groups OH nC6H13 O OH CO2H (CH2)5 O CO2tBu X CO2tBu + X NO2 alkynoate equivalent Scheme 5 Asymmetric conjugate addition of α-methyl Scheme 6 Asymmetric synthesis of convertible α,α-disubstituted nitroacetate to alkynone amino acid surrogates O O CO2tBu CO2tBu O O CO2tBu cat. Ni2-1 + CO2tBu cat. Ni2-1 Ph N + (10 mol %) (10 mol %) NO Me Me 2 N NO2 N Ph NO2 95% yield NO2 solvent-free, DME/tol, N 93% yield E/Z: 6:1; rt alkynone MS5Å, rt alkynoate E/Z: 13:1; 90% ee (E) 91% ee (E) equivalent O OH (-)-Sphingofungin F NO2 NH2 Scheme 7 Transformation of imidazole moiety O O CO2tBu N MeOH O NO2 ester rt, 12h N 97% yield 4 O CO2tBu NO2 N N CO2tBu O NO2 O NH THF, rt, 12h O N CO2tBu amide NO2 95% yield 【まとめ まとめ】 まとめ 私は空気中安定で、調製容易な新規ホモ二核 Schiff 塩基触媒を開発した。そして、 ホモ二核 Schiff 塩基触媒の特徴を活かして、一般性が広く、実用的な四置換不斉炭素中心を 有するα-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、α,β-ジアミノ酸の前駆体の構築法を確立した。 本触媒は従来型のサレン触媒と異なり、非天然アミノ酸の合成にのみならず、様々な反応で の高い有用性を示した。現在本触媒系を用いて、生理活性物質合成への応用を検討している。 【参考文献】 参考文献】 (1) Matsunaga, S.; Shibasaki, M. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2008, 81, 60–75. (2) a) Chen, Z.; Morimoto, H.; Matsunaga, S.; Shibasaki, M. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 2170. b) Patent Number: WO2009075291-A1, Inventors: Shibasaki, M; Matsunaga, S.; Chen, Z. (3) Chen, Z.; Yakura, K.; Matsunaga, S.; Shibasaki, M. Org. Lett. 2008, 10, 3239. (4) Chen, Z.; Furutachi, M.; Kato, Y.; Matsunaga, S.; Shibasaki, M. Angew. Chem., Int. Ed. 2009, 48, 2218.
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