LCC で旅行に行こう FSA と LCC の共存は可能か等

LCC で旅行に行こう
FSA と LCC の共存は可能か等
森ゼミナール B
高杉 孝紀
平野 雄己
安逹 恵太郎
石橋 美希
辻 香織里
三戸 春香
中山 千絵
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第一章 LCC とは
現在日本で就航している LCC は 4 社。1 社目は元祖 LCC といわれている、ス
カイマーク。2 社目はジェットスター・ジャパン、3 社目はエアアジア・ジャパン、
4 社目はピーチ・アビエーションである。スカイマークは 1996 年に設立されてい
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て、航空運賃の規制緩和と同時に作られた会社である。ピーチは 2011 年の 2 月に
主に全日本空輸からの出資をうけ設立された。ジェットスター・ジャパンは 2011
年 9 月オーストラリアのカンタス航空と日本航空が出資し設立された会社。
エアアジア・ジャパンは 2011 年、全日本空輸とエアアジアが共同で出資し 8 月
に設立された。いわばスカイマーク以外の会社は 2011 年に設立され、2011 年は
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「LCC 元年」といわれた。
ここで、各会社の運賃、サービス、経営戦略について、述べる。
まずは運賃について 4 社とも共通しているのは、格安航空会社ということで、格
安料金にこだわっており。各会社「大手の半額」や格安キャンペーン料金など様々
な種類がある。このコストパフォーマンスが実現できるのは、各会社のコスト削
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減はもちろん、コスト削減のなかに各会社の持ち機体数が少ないため、
1機体で1日何往復も行っているという、事実もある。
次はサービスについて、LCC は大手の会社と異なったサービス形態である。
例えばドリンクは大手は無料提供だが、LCC は有料である。しかし、有料とい
っても 100 円~200 円くらいなので、それほど高くはない。
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次にオプション料金だがこれが運賃とは別に料金がかかる。まず荷物を預ける
だけで、最低 1,000 円くらいはかかる会社が多く、変更手数料、その他細かくオ
プション料金がかかる。LCC は運賃こそ格安だがサービス料金で利益を増やすと
いう傾向もある。
最後に経営戦略について、正直スカイマーク以外の会社はいわば新参者である。
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そのためスカイマークは新参者がきたからといって、そこまで戦略を変えずに大
手から顧客を引き抜くということである。残りの 3 社は現状では第一にローコス
トであり、次にマーケティング(ブランド戦略)である。そのため出来るだけの
コスト削減を行い下げたコストにあった運賃を提供していくという考えである。
現在、日本の交通機関にはさまざまな種類がある。飛行機、新幹線、バスそして
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その 3 つの中からさらに各々格安料金プランがある。LCC はいかにこの各々の交
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通機関に対抗できるか今後の見ものである。
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2.LCC の活用法
LCC を利用する際に従来の飛行機との不便さが気になる方もいるであろう。少
し、待っていただきたい、LCC の価格は今までの飛行機とは全くことなり確実に
安い。そこを踏まえあえてここでは、LCC は大手航空会社とはあくまでも別物と
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述べておきたい。LCC 活用のポイントは大手航空会社での常識にとらわれず、飛
行機のイメージを変えること、又、賢く使い分けることにあろう。
ここでは、LCC の賢い活用法や利用する時の留意点を考えていきたい。
考えてみれば、当たり前のことだが、安く飛行機を利用するのであるから、大
手航空会社と比べること自体ナンセンスなのである。価格の高い大手と比べれば、
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LCC はどうしても劣化版になってしまう。しかし、今まで、高い飛行機に乗らず
使用していた交通手段、例えば高速バスや電車、新幹線、乗用車に新しい手段が
加わったと考えれば、これ程便利なものはないのでは無いだろうか。なにより、
早く目的地に着けることは、疲労やストレス解消につながる。ある程度の不便は
割り切り、目をつぶる必要があるだろう。高速バスの狭い座席に何時間も座って
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おくことを考えれば、LCC は格段に快適である。
海外旅行で LCC を利用する場合は片道航空券を購入し復路便は現地で購入した
ほうが、お得である。LCC の運賃は全世界で横並びでは無く、購入する国の経済
状況や通過価値に大きく左右される。ゆえに、言葉で多少苦労しても、現地で購
入したほうが、半額以上もお得という場合もある。
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LCC の活用法として、長距離になるとどうしても、乗り換えや飲み物、毛布の
有料のサービスが必要になるし、狭いシートも気になる。なので、短距離の移動
にむいていると思われる。又、急ぐ移動で使うには向いていない。と、言っても
高速バス、新幹線を利用するよりは速く移動できるが、大手の航空会社より時間
がかかる場合があったり、到着する空港が成田などで、空港から目的地までの移
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動が必要な場合が多い。
超距離の移動で向いてない LCC だが、このところ異常に高額な燃油サーチャー
ジを徴収しない会社が LCC には多いので、少し我慢をして、海外旅行に行くのも
お得な手である。
又、欠航や遅れに対してのフォローが十分で無い以上スケジュールにはある程
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度余裕をもつ必要がある。スケジュールに余裕を持つことで、LCC の利点が一つ
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出てくる、それは、予約を早めにすることで、さらに安くチケットを手に入れる
ことが出来ることである。又、時期に応じてキャンペーンを行なっていることが
多いので、その情報を早く手に入れることが出来ればさらにお得に利用すること
が出来よう。又、LCC を使う場合は急な変更は NG である。変更には手数料が取
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られるので、結局高くついてしまい、大手を利用したほうが良いという場合があ
る。厳密な計画も必要であろう。
LCC を利用するのであれば、航空会社に予約をしたからと言って全てを委ねる
のでは無く、ある程度自分でも準備・心構えをしておく必要がある。万が一欠航
になった場合の代替え案を用意したり、空港の周辺のホテルや一夜を過ごせる場
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所を事前に調べておくことも必要であろう。目的地と空港が遠い場合が多いので、
移動手段とそれにかかる時間も考えておかなければならない。
又、荷物は最小限、厳密にいうと、一つにまとめ、できるだけ機内に持ち込め
るようにしておきたい。ここに、ある人物の LCC 利用のチケットがあるのだが、
これを見ていただくと分かるように、各種手数料が細かくかかっている。そう、
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我々が今まで大手で当たり前のように行なっていた、荷物をあずけることにも、
手数料が発生するのである。大きな荷物が必要な移動には LCC は適さない。
あまり知られてない注意点として、LCC は大手より機種数を多く持っていない
場合が多い、これは一つ欠航、遅れがでると他の便にもズルズルと影響が出てく
る可能性があることを指している。一つ頭に入れておいて頂きたい。
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そして、初心者が失敗しがちなのは、LCC を利用することで、手数料諸々を取
られた結果、かえって時間もお金も大手と同じ又、それ以上かかってしまいさら
に、キツイ移動を強いられてしまうということである。LCC が本当にお得かどう
か、事前調査やシュミュレーションが必要であろう。安い航空券の値段だけを見
て、飛び付き予約をしてしまわないことだ、最終的にかかる値段を冷静になって
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計算することが必要である。
このように利用にコツのいる LCC だが、コツと注意点さえ抑えてしまえば、賢
く利用できるのでは無いだろうか。
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第2章 LCC の旅行例から見る長所・短所
FSA を使って旅行会社が作った既存の旅行プランを利用して東京ディズニーランドにい
った場合の長所と短所を記していきたい。今回参考にした資料は H.I.S.が記載している
『JAL で行く 福岡発 東京ディズニーリゾート シーズン(夏・秋)ディズニーアンバ
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サダーホテル(ディズニーホテル)3 日間』である。
(図表1)
初 日
福岡空港(JAL)⇒羽田空港⇒マジカルファンタジー号⇒ホテル
2 日目
終日フリー
3 日目
出発までフリー⇒マジカルファンタジー号⇒羽田空港⇒福岡空港
オプション
● 1DAY パス付き
● 2000 円分ギフトカードプレゼント
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● ホテル・ルーム無料グレードアップ(数量限定)
このようなプランを利用して実際に友達 4 人で旅行したとする。9 月の 1 番安い時期に旅
行するならば 23 日から 26 日が最安値で行くことができる期間になる。その中から今回は
23 日から 25 日を利用してウェブで見積りを出してみた。
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ゆとりをもって出発は 12 時の便にした。JAL の飛行機なら 1 時間に 1 本のペースで東京
に行く便があるので出発時間は自分の都合に合わせて決めることが出来る。その便に乗っ
て東京に着くのが 13 時 40 分。そこからマジカルファンタジー号に乗ってディズニーラン
ド内にあるホテルに行き、そのあとは自由なので辺りを探索したりゆっくりすることが出
来る。今回のプランはディズニーランドだけで 2 日間遊ぶとなると 2 日目の 1DAY パス代
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の追加料金が発生するが、2 日目をディズニーランドで遊び、3 日目はディズニーシーへ行
くなど、違うところで使う 1DAY パスであれば、追加料金はかからず遊ぶことができるプ
ランだったのでそれを利用して 2 日目はディズニーランドへ行き、3 日目はディズニーシー
にいけるように予約した。もちろん、2 泊ともホテルはディズニーアンバサダーホテルであ
る。3 日目も少しでも長く遊べるように帰りの飛行機は 20 時に出発する便にし、3 日間フ
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ルに遊べるようにプランを立てた。3 日間思う存分ディズニーリゾートを満喫できるこのプ
ランで料金は 1 人あたり 58,800 円となった。今や、LCC を使えば海外である韓国釜山まで
約 20,000 円で行ける時代である。なので、国内旅行でこの料金だと少し高いように感じる
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だろうが、これだけのオプションがついており、H.I.S.に予約しお金を支払えばあとの手続
きはすべて旅行会社が行ってくれ、約 1 時間 40 分の空の旅も JAL なのでゆとりのある座
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席と無料のドリンクサービスにもてなされとてもリラックスできる旅になることは間違い
ない。航空券に関しては、JAL の航空券をとるより旅行会社を通して買ったほうが安くな
ることが多い。なぜなら、旅行会社と FSA の間では IT5 運賃という運賃制度が設けられて
おり、5 人以上の団体を対象とした団体料金が適用される様になっている。しかし、この制
度ではもし利用者が 5 人集まらず、4 人以下となってしまった場合、安くなるどころか逆に
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高くなってしまう恐れもある。
従来のように、旅行会社にお願いして FSA に乗り、旅行すれば手続きも簡単に出来、楽
して旅をすることが出来る。しかし、上記したような影響をもっとも受けやすい。また、
既存の旅行プランでは、一緒に行く人数が少ないほど値段はあがり、連休などになると 1
万から 2 万ほどすぐに料金が上がってしまう。また、このように旅行会社を経由している
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ため、自分で FSA を利用して同じような待遇で行くとすればかなり安くはなるが、LCC を
利用した時には発生しない航空会社と旅行会社間での手数料などもこの金額に含まれてい
るのでその分損をしていることになる。
それでもこのように旅行会社を通して FSA を利用するのは、やはり LCC を利用する理
由とは違う理由が存在するからである。その理由となるものは旅行者の価値観の違いから
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生まれるものである。価値観の違いとは、重点をどこに置くのかということであるとわた
しは考える。LCC を利用すれば、1 から自分好みに自由なプランをつくることが可能であ
り、そのプランを作るという楽しみがある。また、旅行会社を利用し FSA に乗って旅行す
る場合はとにかく楽に目的を実行でき、堪能することができるというメリットがある。LCC
と FSA はその時と場合によって用途が違うものとしてみるのが妥当な考えではないだろう
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か。次の章では用途の違う LCC と FSA はどのように今後存在し利用されていくのか述べ
ることになる。
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2.LCCの長所・短所
東京(成田)~福岡が 5,000 円で行けるというコストの安さが売りのLCC。
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2012 年は空のビックバンと呼ばれる程、今までの航空界が劇的に変化した年であ
る。ピーチ、ジェットスター、エアアジアという3社が出揃い、価格競争に奮闘
している。
これらのLCC会社は徹底的なコスト削減を行っているために、従来のレガシ
ー会社に比べると圧倒的な差がある。それは、
「サービス」だ。今まで JAL、ANA
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などの飛行機に乗る際に受けている一般的には「当たり前」となっていることが
全て有料化されているのだ。そして、「不便さ」。価格を重視しているために、普
段利用されない時間帯でのフライト。空港自体が都市部から離れた郊外にあるた
め、アクセスが悪いという面がある。これら2点について詳しく説明をしたいと
思う。
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我々が旅行でLCC会社を使って福岡から東京ディズニーランドに 2 泊 3 日で
旅行に行くと仮定したとき、旅費はどうなるのか?通常より不便さを感じる場面
をピックアップしながら考えてみよう。今回はジェットスターのホームページを
利用する。航空券の予約はインターネット。現代は情報社会となり、国内のイン
ターネットの利用者は 1 億人近くまで昇っており 10~50 代までの使用率は 9 割を
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超えている。しかし、60 代以上の世代の利用率は依然として低く、2 割程度であ
る。そのため、インターネット環境に慣れていない人がLCCを使う際は、予約
の段階で大幅なタイムロスや労力を使ってしまう。9 月の 3 連休(23~25 日)を
使って東京(成田)に行くとする。すると、11:55、15:30、20:30 福岡発の便が 3
便表示され、価格は 9,490 円となっている。LCCは、常に価格が大幅に変動し、
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休日やお盆・正月にはレガシーとあまり差のない価格にまで上昇することがある。
これを 1 日遅らせて、24 日に福岡を出発するとすれば価格は 6,990 円まで落ちる。
そして、フライトの時間は朝が早かったり、夜遅くだったりするので、現地に着
いてから自由な時間が制限されてしまうこともある。実際、往路の便は、6:10、
12:50、18:00 成田発となっており、時間帯が極端である。次に、11:55 の便を選択
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するとオプションの設定画面が表示される。手荷物を預けるのも有料化されてい
る。1 人当たり 15 キロの手荷物で 900 円を支払わなければならない。実際の旅行
の準備を行っていない時点で、荷物がどのくらいになるのかを予想しなければな
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らない。予約完了後に荷物の量や重さが増えた場合は、更に割高の料金が別途発
生してしまう。更に、座席指定、日時の変更手数料をしたい場合は 690 円、もし
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もフライトが欠航になった時の払い戻しを利用する時は 4,500 円の追加料金とご
予約手数料として 200 円が発生する。オプションを利用しなければ、もしも欠航
になった場合は自分で他の便を探さなければならない。特にLCCは全ての旅客
機を常に稼働しているため、整備不良などがあった場合はすぐに欠航となる。レ
ガシー旅客機でもよく整備不良は起こることであるが、レガシーは、予備機を駐
220
在させてあるために対応可能なのだ。往復合わせて今回は 19,080 円かかった。ま
だ終わりではない。座席指定の画面となり、ゆったりと足を伸ばせることのでき
る「エクストラ・レッグルーム」を選択すると 850 円が最大かかる。そして、国
内旅行傷害保険の加入に 1,129 円と結局予約完了までにはかなりの追加料金を払
っていることになる。
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旅行当日、福岡の場合は特に問題はないが、LCCは通常第 2 空港と呼ばれる、
都市部から比較的離れており、交通のアクセスの悪い地方や郊外に立地している
空港で離着陸を行っている。なぜなら、都市部の空港を使うと離着陸の際の手数
料が高くかかるため、需要の少な目の空港を使用しているのだ。そのため、空港
に行くまでと、現地に着いてから目的地に行くまでの時間がかなりかかってしま
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う。しかし、今回の目的地は「東京ディズニーランド」なので、羽田からは 45 分、
成田からは 70 分と大きく支障をきたす訳ではない。続いて、飛行機へのチェック
イン。レガシーでは通常 15 分前に締め切られるところが、LCCでは 30~45 分
前と随分早い。これは、飛行機までバスで移動する必要があるからである。チェ
ックイン締め切りに間に合わなければ、館内での呼び出し放送をすることもなく、
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容赦なく締め切るため飛行機に乗れなくなってしまう。このように、飛行機が離
陸する時間の相当前から拘束時間が始まってしまうのである。飛行機内は出来る
限りの席数を確保するために、座席は大人 1 人が座ると窮屈さを感じる程の広さ
である。レガシーでは、無料の機内での飲料サービスもLCCでは有料。LCC
は徹底的なコスト削減を行っているため、本当に客を目的地へと運ぶだけの役割
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を果たしていると言ってもいいだろう。
ここまで、LCCの短所をいくつか挙げてきたが、LCCの利用者は平均搭乗
率は 9 割を超えており大盛況である。さらに、LCC利用経験者の 9 割近くが、
「ま
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た利用したい」と考えているという調査結果もある。なので、様々な不便さはあ
るがやはり少しでも安く抑えたいと思う人(例えば、学生などの若者)にとって
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は最大の魅力であり、交通費で浮いた分をショッピングに費やすこともできる。
全て自力で手配しなければならない点も、各社多様なサイトを比較検討しながら
選べて、自分の経験値や時には語学力が試されることもあり日程の計画を立てる
こと自体を楽しむこともできる。まだまだLCCが就航して日が浅いので、LC
Cに乗ること自体も話の話題となり、知人に長所も短所も紹介することで、更な
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る新規LCC利用者を増やすきっかけともなるだろう。
上記で挙げてきた通り、LCCにはレガシーキャリアの会社と比べると、劣る
所は非常に多く存在する。しかし、そもそもLCCとレガシー会社を比較するこ
とが間違いであり、顧客が「安く」を目的にするのか、
「サービス」を目的するの
かで異なる。LCCでの移動は、安い分時間が余計にかかってしまうのでゆっく
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り時間がある時に使用する。レガシーは、時間が比較的少ない時や不慮のトラブ
ルを避け、より安全に速く移動をしたいビジネスシーンなどで利用する。と言っ
たように上手く使い分けをすることが大事なのである。
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265
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9
第3章 LCC と FSA の今後の課題
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1.
LCC の今後の課題
国内 LCC 企業が今後発展していくためには、各社が自分の利点をどれだけ活か
していくことができるかにかかっている。LCC において重要な要素の一つはアジ
アから日本に訪れるインバウンド需要を取り入れることであり、その点ではエア
アジア・ジャパンとジェットスター・ジャパンには利がある。ピーチ・アビエー
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ションは国際線を展開する LCC として、他社と競合せずにハブ空港を持っている
点が強みである。関西空港と成田空港は4時間フライト圏内の距離が微妙に異な
り、関西空港は香港、マニラ、ハノイまで圏内に入るため、この点でもピーチは
有利である。
しかし、世界の中で極東に位置する日本は地理的に LCC の運営が不利である。
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北も東も真南も海に囲まれているため、4時間圏内の近距離で国際線を展開でき
るのは西から南西に限られるからである。このハンディキャップを克服しつつ、
どれだけ自社の利点を発揮するかが LCC の今後の課題である。
2.
290
FSA の今後の課題
一方で、JAL や ANA といった FSA は、今後国際線のネットワークを有効活用
していくことで LCC との差をつけようとしている。
JAK は4月22日に新規開設路線として、「JL8便」と呼ばれる成田―ボスト
ン線の運航を開始した。この JL8 便の最大のウリはアジアで唯一のボストン直行
便ということである。よって日本人だけでなく、アジアの顧客を取り込むことが
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できると期待される。
また、2011年4月に ANA はユナイテッド航空と、JAL はアメリカン航空との
共同事業を開始した。これにより、パートナー同士が保有する成田空港の発着枠
は、就航先やダイヤの調整によって、両者共有の発着枠であるかのように活用で
きるようになり、発着枠の拡充が可能となった。
300
新規路線にしろ、共同事業にしろ、もはや FSA のターゲットは日本人だけでな
く、アジアなどの外国人も含まれている。国内 LCC の本格化によって、FSA の今
後は内需非依存型の国際エアラインへの転換を迫られている。日本の FSA が欧米
10
やシンガポール、タイといったライバルとどのように勝負していくかが今後の課
題である。
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3.国内 LCC と FSA の将来
日本では今年(2012年)が LCC 元年と言われ、今後の発展に注目されている
が、海外では LCC の歴史は深く、1970年代に米国のサウスウェスト航空に始
まり、米国では多くの LCC が登場・破綻を繰り返した後に、1990年代以降に
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複数の LCC が利益を出し始めた。
さらに21世紀に入って欧州、オーストラリア、
南米、アジアなど世界各地でも LCC が活躍し始めた。それら世界の LCC の先人
たちが誕生してからどのように発展していったかを知ることで、今後の国内 LCC
の傾向を推測することができる。
LCC が発展した地域では、LCC と FSA が短距離市場のシェアを分け合うのが一
315
般的な傾向である。そこからさらに市場の成熟が進むと、LCC と FSA の差がしだ
いになくなってくると言われる。FSA は LCC の体制に近づいていき、LCC も格
安のみの勝負は厳しくなり FSA へと近づいていく。よって、市場が成熟すると
LCC と FSA の差別化が難しくなっていくのである。現在も低運賃を徹底している
LCC は米国ではスピリット航空のみである。
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LCC と FSA の戦いだけではなく、LCC 間の競争も激化し、海外では LCC は幅広
い航路のネットワークを持つ「メガ LCC」と特定の地域へのネットワークのみを
持つ「ローカル LCC」の2つに分離されてきた。
主な各地域のメガ LCC とローカル LCC
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<北米・中南米>
メガ LCC:サウスウェスト航空(米国)
、ジェットブルー航空(米国)
、ゴル航空
(ブラジル)
ローカル LCC:エアトラン(米国)
、スピリット航空(米国)
、ウエストジェット
(カナダ)
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<欧州>
メガ LCC:ライアンエア(アイルランド)、イージージェット(英国)
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ローカル LCC:フライビー(英国)
、ノルウェーエアシャトル(ノルウェー)
、ブ
エリング航空(スペイン)
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<アジア・オセアニア>
メガ LCC:エアアジア(マレーシア)、ジェットスター(オーストラリア)
ローカル LCC:タイガー航空(シンガポール)、ライオンエア(インドネシア)、
セブパシフィック航空(フィリピン)、ノックエア(タイ)、春秋航空(中国)、チ
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ェジュ航空(韓国)
これらの事例から判断するに、日本国内でも現在は格安料金で簡素なサービスの
みを行う LCC と、従来通りの料金でサービスが完備されている FSA が明確に区
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別されているが、今後の市場の成熟につれて両者の差が小さくなっていき、LCC
の中でも役割が変わっていくことが推測される。
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2.LCC と FSA の共存はできるのか?
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全日空(NH)などが新会社を設立して年内の運航をめざし、ますます注目を集
めている「LCC(格安航空会社)」
。需要拡大の期待がかかるが、従来型の「FSA
(フルサービス航空会社)
」とは戦略はもちろん、そもそも方法論が異なるため、
2 章でみられるように、ユーザーの航空会社の使い分けや旅行会社にとっても悩み
の種となっている。
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片道 4000 円で世間を湧かせた春秋航空(9C)の茨城就航や、エア・アジア X(D7)
の羽田就航、さらには NH の新会社(A&F アビエーション)設立など、日本にも
LCC の波が押し寄せてきていることは間違いない。
ここで FSA と LCC との経営戦略の違いについてみてみる。
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LCC モデルは、サービスの簡素化と費用削減によって特徴づけられる。まず、サ
ービスはノーフリル戦略をとる。ノーフリル戦略は、特に、旅客サービスにかか
わる費用の削減につながる。一方、定時に出発し、遅れが少なく、また便数が多
い、利便性のよいサービスを提供している。運賃については、安く、かつわかり
やすい運賃を設定している。低価格で利便性のよいサービスは、他の航空会社や
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バス、自動車、鉄道などの他の交通機関からシフトしてきた旅行者ならびに新た
な旅行者の獲得につながる。その結果、座席利用率の上昇と平均費用の低下につ
ながる可能性があるといえる。流通については、LCC は、チケットレス化や、旅
行代理店や GDS を通さない航空券の直販を通じ、販売費を削減している
一方、FSA は、多様で付加価値の高いサービスを提供している。また、利用者の
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支払い意志額とニーズを踏まえ、イールド・マネジメントと呼ばれる戦略をとり、
収入の最大化と在庫費用の最小化につながる可能性もあるといえる。また、FSA
はサービスのひとつである FFP を強化し、利用頻度の高い利用者のロイヤリティ
の形成と収入の安定化をめざしている。流通については、FSA は、旅行代理店な
らびに GDS を通じ、航空券を販売している。ただし、近年においては、販売手数
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料を削減するため、直接利用者に航空券を販売する傾向にある。
このように、LCC と FSA の経営戦略は大きく異なっている。
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また旅行会社と格安航空券の扱いも異なっている。格安航空券とは普通運賃のチ
ケットから割引されたことをいう。普通運賃とは IATA が定めた料金のことである。
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現在 FSA が取り扱う格安航空券は 2 種類ある。1 つ目は航空会社が発売している
航空券で、通称 PEX と呼ばれる。これは航空会社が直接販売しているので、旅行
代理店でなくても、航空会社の HP などで購入することができる。
2 つ目は、旅行代理店が仕入れる格安航空券である。旅行代理店は航空会社から
まとまった席分のチケットを団体旅行用として大量に仕入れる。大量に仕入れる
400
ことができれば、旅行代理店ではこの大量に仕入れた席を PEX よりも安い価格で
販売することができる。
これに対し、LCC の料金は IATA が定めた料金ではなく、航空会社が独自に定
めた運賃を基準にしている。また LCC の中には、そもそも普通運賃を定めておら
ず、空席状況に応じた価格設定をしており、空席が多いときは安く、空席が少な
405
いときは高い料金にしたりと、臨機応変に価格を変動させる方式をとっている。
LCC は消費者への直販や直接的なプロモーションを志向するものであり、契約
の条件面が FSA と異なるため、旅行会社にとっても危機と言える。そのため旅行
会社と LCC が共存するために必要なものは協調だといえる。
410
LCC はフェリーや鉄道等の他の交通機関から客を獲得したことや、今まで高い
料金で飛行機が選択肢になかった層の需要を掘り起こした"新規開拓"で、FSA と
共存できる2つの選択肢の1つになった。また、FSA の多くがイールドの高い客
層に注力するなかで、IT 座席の減少や発券条件の厳格化などもあり、旅行会社も
いかにこうした環境下でビジネスモデルを再構築するかが問われている。
415
このように LCC と FSA では戦略が違うため、ユーザーの使い分けが大きく左
右してくる。日帰りの需要が増えれば LCC の利用客が増加し、その反面手厚いサ
ービスを求めれば FSA の利用客が増加する。共栄はないが共存はするはずだとい
える
420
14
第4章 まとめ
我々森ゼミは今まで、LCC について色々と述べてきた。第一章の活用法で述べ
425
たように、我々消費者は LCC を今までの FSA とは別物と考え、うまく、使い分
けていくことが重要になってくると思われる。
LCC 利用には事前の準備、調査が必要である。LCC に不満を述べる人の多くの
共通点は「知らなかった」ということでは無いだろうか。実際に利用する時に色々
な手間や料金が発生し、それが不満に通じるのであると私は思う。私自身初めて
430
LCC を利用したときには想像以上の座席の狭さ、サービスのなさ、空港やターミ
ナルまでの遠さ、手数料に驚いた。しかし、事前にそれらを知っておき、心構え
をし、当たり前のこととして、受け入れることが出来れば、さして問題になるこ
とも無いだろう。それが、問題になる場合、料金がかえって高く付く場合、受け
入れられない、したくない場合は、LCC を利用しなければいいのである。又、事
435
前調査、準備の苦労をしたくない場合も LCC 利用は控えた方がいいであろう。あ
くまでも、ワケありの安さという位置づけは必要である。それが出来ないのであ
れば、FSA を利用するのも、一つの手であろう。
心構えをして、いかに「こんなはずじゃ無かった」を減らし、賢く使い分けて
利用するかが大切である。不満が残る旅になったとしても、責任は自分でとるし
440
かなく、言って行く場所はない、むしろクレームを付けるのはお門違いである。
固定概念にとらわれず。新しい手段として、LCC を賢く楽しく利用していきたい
ものである。
しかし、使い分けが必要なのにもかかわらず、三章の1では、LCC と FSA は今
後差がなくなってくると言われている。私個人の考えとしては、三章の2でのべ
445
たように、共存は可能で共栄は不可能であるのならば、LCC、FSA はお互いの真
似をするだけではなく、二章で述べたような、LCC、FSA のそれぞれの長所つま
り強みを伸ばしていき、さらに差別化をはかっていって欲しいと考えている。必
ずそれぞれの良さを求める消費者はいるはずである。
そして我々消費者は目的・価値観にあった選択をして、LCC・FSA を上手く使
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い分けていくことが今後さらに必要とされていくであろう。
字数 11462
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[参考文献]
大坪 雅子、須賀 彩子、鈴木 洋子、津本 朋子、深澤 献 「LCC を使い
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倒せ!」
『週間ダイヤモンド』2012 年 7 月7日 26 ページから 61 ページ
野村 明弘、山田 雄大、中原 美絵子、土肥 可名子、大阪 直樹、高橋 志
津子、福田 恵介 「航空大革命」
『週間東洋経済』2012 年4月7日 34 ページ
から 83 ページ
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